Neue Fahne Journal

No.115
2015.12.14
ノイエ・ファーネジャーナル
Neue FahneJournal
[発行元]株式会社ノイエ・ファーネ
〒101-0046 東京都千代田区神田多町2-7-3 三好ビル2F ℡.03-5297-1866
http://www.n-fahne.jp
個人の育成においても
通用するブランディングのセオリー
― 独自の強みの明確化+そのわかりやすい翻訳 ―
株式会社 クリエイティブ・ユニティ
コミュニケーションデザイン
河井
良治(かわい
りょうじ)
コピーライター、クリエイティブディレクターを経て、現在はプランナーとして、教育・住宅など各種業界でのブラ
ンディング・プロモーションにおける戦略プランニングや設計のためのメソッド開発を中心に活動。エリアサービス
や商店街などでの集客施策・ツールの企画・プロデュースにも携わる。「ブランディング」領域でのワークショップ
セミナー、心理学での経験と知見を活かした「プレゼンテーション」講演、学校での講座等も担当。
ブランド力の強化が求められるのは、単に企業に限られたことではなく、個々人の育成や成長の領域においても同じであ
る。マネジメントは「一人ひとりが有している強みや長所の部分を、仕事の現場や日常の環境の中でどう活かしていくの
か?」と掘り下げて行く必要がある。
マネージャーや人事担当者が部下との面談では、相手が自覚しているミッションや今の状況、さらに今後の変化などに関
する情報を整理することでもある。そして一緒に考えながらアドバイスすることである。
ition」の略語であり、広告の世界で
にフィットし、かつ競合と差別化でき、
は50年以上も前から大切にされている
古典的な概念とされてきた。企業のブ
オリジナリティを感じさせる「独自の
強み」。あるいは、もっとシンプルに、
ランディングやPR改善のサポートを進
めるうえで外せないキーワードとなっ
自分たちの“ならでは感”とか“らし
さ”とも表現することがある。いずれ
がいわば鉄則となっている。ところで、 ているものだ。
ブランド力の強化が求められるのは、
簡単に表現するならば“商品などの
単に企業に限られたことではなく、個々 訴求をより強く効果的におこなおうと
にせよ「独自の強み」をきちんと見定
め、発信する内容のど真ん中に据える
ことがブランドとして良いPRの鉄則と
人の育成や成長の領域においても同じ
する場合に必要なもの”がUSPという
いうことだ。
ではないだろうか。つまり、他者より
ことになる。直訳するならば、「独自
も秀でた「力」が、個人のエンプロイ
の売りとなる提示要素」をはっきりさ
アビリティ(雇用に値する能力)を表
せ、アピールのコアとすることが重要
出させることになってくると思うから
だ。
という意味だ。
具体的な定義としては、以下の3つ
そこで、先ず「ブランド力強化」と
いう点について広告のフィールドで用
が挙げられている。
1.提示された側が利益や良い結果を得
はじめに
企業のブランド力強化の決め手は、
「独自の強み」の明確化とその「翻訳」
いられている二つのポイントとなる考
え方について述べ、人材育成への展開
を考えてみる。
一つ目のポイントは
USPという考え方
USPとは、「Unique Selling Propos
るものであること
二つ目のポイントは
「翻訳」すること
USPをよりわかりやすく伝えるため
にしなければならないことは、「翻訳」
である。USPは、「独自の強み」を上
2.他にない独自性の高いものであるこ
と
手く抽出されたとしても、あくまでも
それはキーワードであり“自分”を主
3.提示された側を動かせるパワフルな
ものであること
語にした“ことば”であることが多い。
このため、ターゲットに向けてのコミュ
私は、これを図解(図1)とともに
ニケーションでは、よりリアルに理解
意訳して一文にまとめて使っている。
し共感してもらうために“受け手の側
USPとは、ターゲットのニーズや期待
から見た具体的な「メリット」がはっ
- 1 -
きりと感じられる”フレーズでなけれ
ず自分の自信につながる。自分が“自
ば響かない。
信を持ってできること”で自分と関わ
や目標・課題検討のミーティングの席
である。新人や若手との面談において
自分の“売りであるUSP”を相手に
とってのメリットや付加価値に置き換
る人たちに喜んでもらえる。自分の
“持ち味と行為”でみんなが嬉しく幸
「君のセールスポイントは何?」「ど
こが自分の長所だと思っている?」な
え、メッセージとして相手に届くよう
に整えていく必要がある。この相手に
せな気分になる。そんな個人としての
客観性のある魅力づけが、「パーソナ
どのやりとりは、新人や若手とって就
職活動の中で何度となくなぞってきた
届くようにしていくことが「翻訳」と
ル・ブランディング」ということだ。
ところだ。
いうことになる。
さて、この「翻訳」というオペレーショ
従って、これらの問いかけに対して
自らの主観的な強みは、受け手目線
ンを自身に施すことは思いのほか難し
に「翻訳」することにより「魅力」へ
と進化することになる。【図1参照】
いものである。自分のことを逆サイド
から眺め、“自分にできることの成果”
は、恐らく澱みなく、しかもそれなり
に的を射た答えを返してくるだろう。
このため、単にこの段階でとどまって
をちゃんと想定することは、ベテラン
社員であっても器用にできる人は少な
いるならば極めて一般的なことで終わっ
てしまうはずだ。そこで、面談では
い。まして、職歴も浅く経験則の乏し
「その強みや長所としている部分を、
い新入社員や若手社員にとっては、
仕事の現場や日常の環境の中でどう活
「翻訳のシミュレーション」はなかな
かしていくのか?」という具合に掘り
下げていくことで、話の流れに血が通
「パーソナル
ブランディング」
あえて本稿の結論を先取りするなら
ば、“企業のブランド力強化のふたつ
かハードルが高い。
い出すことになる。
マネージャーや人事担当者が面談で
行う「翻訳」とは、面談の相手が自覚
しているミッションや今の状況、さら
に今後の変化などに関する情報を整理
することでもある。そして一緒に考え
ながらアドバイスすることである。例
えば、「会社でのいろいろな仕事の場
面で個々人の持っている強みがどんな
メリットとして成立するのか?」「取
引先や顧客の目線で照らしたときに、
どんなパフォーマンスとして使えるの
か?」という具合に客観的な立場から、
きちんと言い換えて自覚させてあげる
ことが重要だ。
この「翻訳」により、単に自分のア
の決め手である「独自の強み」の明確
そこで問われるのが、マネージャー
ピールだったことが、相手のニーズや
期待にフィットしたアクションとして
化とその「翻訳」は、個人の領域にお
いてもそのまま通用する“と断言でき
や人事担当者における「翻訳」機能と
いうことになる。特にマネージャーや
展開されることになり、必ず自信に繫
がっていくはず。こうすることで単な
るということだ。
私は現在、「ブランディング」と
人事担当者が「翻訳」機能を発揮する
場面は、新人や若いメンバーとの面談
る自己主張の域を出なかったことが、
相手や周囲から求められている事柄を
「プレゼンテーション」というテーマ
で講演やセミナーを行うが、「独自の
強み」の明確化とその「翻訳」という
事柄に大きくリンクしている。一人の
個人の“ユニークな取り柄”や“他人
よりも勝っている”と自慢できるパー
ソナルなUSPが、良いカタチで「翻訳」
されるならば、そこにはとてもチャー
ミングな自己PRのためのキャッチフレー
ズが生まれてくるものだ。
自分の“得意技”が周囲に対して
“こんな部分ですごく役に立つ”こと
になることを認知できれば、少なから
3頁に続く
- 2 -
意識した発言もできるようになる。ま
た、ちょっとした自己紹介の機会など
で具体的でリアリティのある表現をす
ることができるようになる。【図2参照】
いスパンで刻んで組んだ方がいい。成
果がわかりやすいし、自分でもその方
高くなる。
「翻訳」は働く一人ひとりが漠然とし
が何度も達成感を味わえるし…」
た長所と意識している事柄を単に自意
識に終わらせず、スキルやテクニック
「翻訳」の力が、
人を育てる
いくつかの「翻訳」例
に裏打されたものにするための学習意
欲につながる。「翻訳」による学習意
欲は自らの長所を「魅力」に変える魔
法といっても過言ではない。
■「リーダーシップに自信あり」
「後輩の相談を進んで受けてやろう。
自分の持ち味や行動に客観的視点が
加わることで、自分が「毎日おこなっ
ちゃんと聞いてもらって、自分の経験
や失敗を織り交ぜながら方向を示して
もらえたら、それってすごく頼もしい
ている仕事」「頑張ってやっている仕
事」に対する自己評価に変化があらわ
先輩…」
結果にスキル・テクニックとしての不
■「書くこと、整理する作業が好き」
足感がプラスされるということだ。
「ミーティングでの議事録担当を買っ
終わったすぐ後で参加者
この不足感が上手く渇望感として作
用することで、「もっと成長したい」
みんなに配信してあげたら、“即メモ”っ
て重宝がられるはず」
「もっと自分を伸ばしたい」という前
向きな思いに昇華されていく可能性が
■「周りからは聞き上手って言われる」
「思い切ってヒアリングのプロになっ
―若手・中堅社員対象―
て出たら?
れてくる。つまり、成長の実感という
[連絡先]
株式会社 クリエイティブ・ユニティ
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-17-14
MSD20ビル
TEL.03-6274-8900
Mail:[email protected]
■事業内容
ビジネスコミュニケーション最適化、
広報・PRに関する企画、施策設計な
らびに関連ツール・Webサイト等の
制作
「働きの意識」を再確立するワークショップ
てみよう。とにかく相手の思いや持っ
ている情報を全部聞いて、時系列や因
果関係だけでも整えてまとめて返して
企業内にて毎回2~3テーマに基づいて講師(ファシリテーター)による辻説法方式で参加
あげたら、きっと嬉しいと思う」
■「粘り強さと根気強さが自分のいいとこ
仕事をミッションとしてとらえる姿勢をつかんでもらう。
ろ」
「きちんと積み上げていけるスキルが
者相互の討議を通し、若手・中堅社員層に“これまで通りでは通用しない!”という意識、
[お問い合せ先]
株式会社ノイエ・ファーネ
℡.03-5297-1866
[email protected]
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日本の雇用システムは労働法令の改正を含めて大きな転換点を迎えています。この雇用システムの転換は、企業におい
てリスク管理視点からの労務管理の重要性が増してきます。また、人事マネジメントの在り方に大きな影響を及ぼして
くることは必定です。そこで、企業において人事・労務を担当する方々はもとより、現場でマネジメントに携わってい
る方々や広くヒューマンビジネスに携わる人びとによる不定期な集いを通して、忌憚のない本音の討議や意見交換を行
う“場”=サロンとして、“ミニ・フォーラム”を再開し今後の人事マネジメントの帰趨を考えて行きたいと思います。
人事マネジメント課題は現場において採用(入口)から出口(雇用調整)までのあらゆる過程で発生するものです。このた
め相互の経験や実例を踏まえたうえで広角的な課題の見極めや課題解決に向けた道筋の模索が有益になると考えます。
“ミニ・フォーラム”は各回とも問題提起に基づいて参加者相互が討議や意見交換の中で見地を高めあい、職場におけ
るマネジメントの新たな方向性や労務管理の視点を探求していく端緒になると考えています。
第15回
ミニ・フォーラム
フィリピンでの労務管理経験を語る
日本での労務管理の普遍性と
現地慣習との狭間で見えたもの
グローバル化という競争原理の転換の中で、多くの日本企業がアジアに進出したり、逆にアジア企業が日本人を採用
したりするケースがますます増えてきています。これは単に大企業だけの問題ではありません。中小企業のアジア進
出然りです。また、日本国内でもアジアの人びとを雇用する企業も増えています。一昔前は現地の人びとやアジアか
らの従業員に対する管理について「文化の違い、風習の違い」などで済まされ、時として笑い話として語られてきま
した。しかし、グローバル化の進展での人事管理の問題は単に牧歌的な対応でお茶を濁すことはできない時代になっ
ています。今回のミニ・フォーラムではフィリピンでの実例を参考にして、日本企業のアジア諸国での人事管理の方
向性や日本国内でのアジアの人びとに対する人事管理の在り方などを探っていきたいと考えています。
◎問題提起:フィリピン現地で感じたグローバル人事管理の行方
株式会社ココロラボ
野田 浩平
代表取締役
■フィリピン人社員と現地採用社員、本社社員の人事制度は
プロフィール
“統合”すべきか“併用”すべきか。
学術博士/産業カウンセラー。東京工業大学大学院博士課程
修了(認知科学)後、英米系のコンサルティング会社で人事
コンサルティング、ベンチャー企業で採用コンサルティング
や適性検査、人材育成サービスに携わる。専門はうつ、モチベ
ーション、EQに関係する人事・心理分野及び人事・人材評価、
グローバル人事、人材プロジェクトを手がける。フィリピン
にて2年にわたり、グローバル人材開発事業の立ち上げ、及
び現地では外資である日系企業の人事執行役員を務める。
■なぜ適応できない日本人社員の存在から見えてくる現地採
用・駐在日本人の悲哀
■フィリピン人の労働観、人生観、幸福観から日本人が学べ
るもの
[日 時]
[参加費]
[会 場]
12月15日(火)
2,000円
17:30~20:00(受付開始17:20~)
※当日会場で承ります。
ちよだプラットフォームスクウェア
(本館B1 ミーティングルーム002)
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3‐21
竹橋駅(東西線) 3b KKRホテル東京玄関前出口より徒歩2分
神保町駅(三田線・新宿線・半蔵門線) A9出口より徒歩7分
[申込欄]
申込欄にご記入の上、FAXでお申込み下さい。ホームページからもお申込みできます。
会 社 名
参加者名(ふりがな)
住
所
TEL.
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[主催/お問合せ先]㈱ノイエ・ファーネ
〒101-0046
東京都千代田区神田多町2-7-3
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FAX.03-5297-1880 http://www.n-fahne.jp
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