スイッチ数の低減を目的とした 永久磁石同期発電機

スイッチ数の低減を目的とした
永久磁石同期発電機向けスターデルタ巻線切替回路
学生員
谷向
一馬
正
員
伊東
淳一
(長岡技術科学大学)
Star-Delta Winding Changeover Circuit for Permanent Magnet Synchronous Generator
Aiming to Reduction of the Number of Switches
Kazuma Tanimukai, Student member, Jun-ichi Itoh, Member (Nagaoka University of Technology)
This paper proposes a circuit which can changeover windings of the generator from star connection mode to delta connection
mode by circuit operation. In this paper, the fundamental operation of the proposed circuit that consists of a PWM rectifier, diode
bridge rectifier and three additional switches is confirmed by simulation results. From simulation results, transition from star
connection mode to delta connection mode is also confirmed, and it takes successive generator current. In addition, on the delta
connection mode of proposed circuit, it is confirmed that THD of generator current is 3% at the condition of 30% reactance.
キーワード:永久磁石同期発電機,巻線切替,混合ブリッジ整流回路
Keywords:Permanent magnet synchronous generator, Winding changeover, Hybrid bridge rectifier circuit
1.
はじめに
2.
提案回路の動作
近年,災害時の電源用途として注目されている永久磁石
図 1 に従来のスターデルタ巻線切替回路の構成を示す。
同期電動機を用いた小型のエンジン発電機は効率を上げる
図 1(a)に示す電磁接触器を用いた巻線切替法は,電磁接触器
ために,負荷電力に応じて回転数を変化させる(1)。低速時の
2 台を使用することによりスター結線とデルタ結線を切り
発電効率を重視して,速度起電力を大きく設計すると,高
替えることが可能である。しかしながら巻線の切替時に,
速域では弱め磁束制御が必要になる。しかし弱め磁束制御
発電機が負荷から切り離される停電期間が存在する。図 1(b)
で制御すると,d 軸電流による銅損が増加する。
に示す回路は動作モードの切替により,巻線の切替を実現
この問題を解決するため,発電機の巻線切替が提案され
(2)
可能であるが,スイッチ数の増加が問題となる。
ている 。巻線切替の手法としては,電磁接触器を用いたス
図 2 に提案回路を示す。提案する発電機システムは PWM
ターデルタ巻線切替が広く使用されている(3)。しかし,電磁
整流器とダイオード整流器,これらの直流部を結ぶスイッ
接触器を使用する巻線切替は発電機の短絡を防止するため
チ S1,S2 並びにダイオード整流器の直流部を短絡する S3,
に停電時間を設ける必要がある。この停電時間は出力電圧
オープン巻線発電機により構成され,図 1(b)の PWM 整流器
の低下を招き,これを補償するため,出力側に大容量のコ
の一つをダイオード整流器に置き換え,S3 を追加した構成
ンデンサが必要となり,結果として回路の大型化を招く。
となる。以下に詳細な動作を説明する。
そこで,回路の動作モードを変えることにより,停電時間
なしでスターデルタ巻線切替を行うモータ駆動回路が提案
(4)
〈2・1〉 スター結線モード
図 3(a)に発電機巻線がスター結線となるモードの等価回
されている 。本手法を発電機に適用することにより,発電
路図を示す。このとき,S3 をオンすることによりダイオー
機電流の連続性を保ったまま,巻線を切り替えることが可
ド整流器と併せて中性点をつくり,発電機をスター結線と
能である。しかしながら,回路を構成するスイッチ数が多
する。ただし,このとき発電機の中性点と直流部の短絡を
いといった問題がある(5)。
防止する目的で S1 と S2 をオフにする必要がある。スター結
本論文では発電機用途に特化し,スイッチをダイオード
に置き換えたスターデルタ巻線切替回路を提案する。次に
基礎検討として従来から用いられる電磁接触器を用いた手
法と提案回路をシミュレーションにより比較する。最後に,
線モードでは PWM 整流器の動作により,発電機の線間出力
電圧を整流し,直流電圧 Vdc を得る。
〈2・2〉 デルタ結線モード
図 3(b)に発電機巻線がデルタ結線として動作するモード
デルタ結線モード時における同期リアクタンスの大きさに
の等価回路図を示す。図 2 における S1 と S2 をオンすること
対する電流の増加について明らかにしたので報告する。
により PWM 整流器とダイオード整流器の直流部は共通と
Magnetic
contuctor
S1
Diode bridge rectifier
PWM Rectifier 1/2Vdc
Load
1/2Vdc
D1
D3
D5
+
+
+
S3
D2
+
D4
D6
Generator
S2
-1/2Vdc
Fig.2. Proposed circuit.
(a) Using magnetic contactors.
PWM Rectifier
S1
-1/2Vdc
PWM Rectifier 1/2Vdc Load
Diode bridge rectifier
PWM Rectifier 1/2Vdc Load
D1
D3
D5
+
+
+
+
D2
D4
D6
Generator
Generator
S2
-1/2Vdc
-1/2Vdc
(a) Star-connection mode.
(5)
(b) Using two rectifiers and two additional switches .
PWM Rectifier 1/2Vdc Load
Diode bridge rectifier
Fig.1. Conventional circuit of winding changeover.
なる。ただし,スター結線モード時とは異なり,デルタ結
線モード時は S3 をオフしておく。図 3(b)より,本モードに
D1
D3
D5
+
おいては片側レグがダイオード,もう一方のレグをスイッ
チとした単相の混合ブリッジ整流回路が 3 並列に接続され
る構成であることがわかる。各相の整流器はそれぞれ整流
+
D2
D4
D6
Generator
動作を行い,直流電圧が出力可能である。各相の整流器の
-1/2Vdc
入力は発電機の相電圧となるため,等価的にデルタ結線の
(b) Delta-connection mode.
ようにみなせる。
3.
Fig.3. Equivalent circuit of proposed circuit.
制御方法
図 4 に制御のブロック図を示す。図 4 より,本回路の制
御は整流器の入力電流制御(以下 ACR)及び出力電圧制御(以
下 AVR)により構成される。発電機の磁石位置を用いて回転
iq*
Vdc*
+
-
Vdc
x
-1
i d* +
-
iq* +
AVR
-
座標変換し,d-q 座標上で制御する。d 軸電流が無効電流,q
軸電流が有効電流を表す。ここでデルタ結線モード運転時
に d 軸電流指令 id*を 0 とすると,同期リアクタンスの電圧
+
+
ACR
dq
ACR
uvw
vv*
+
+ + vw*
+
vD2
vD4
vD6
uvw
iu
iv
iw
dq
id
La id
vs  La iq
iq
降下により誘起電圧と発電機電流の間に位相差ができ,結
果として電流歪みが大きくなるため動作できない。そのた
め,デルタ結線モード運転時には発電機の端子電圧に対し
て力率を 1 として制御し,さらにダイオード電圧 vD2,vD4,
vD6 をフィードフォワード項として入力することにより,外
q
Fig.4. Control block diagram of proposed circuit.
q
q
eLaig
eLaig
乱を補償する。
図 5 に一般的な混合ブリッジ整流回路と提案回路のデル
vg
vs
タ結線モード運転時のベクトル図を示す。一般に混合ブリ
ッジ整流回路では図 5(a)に示す様に q 軸上に定義される発
電機の誘起電圧 vs に対して発電機電流 ig が力率 1 になる様
に電流を制御する。しかしリアクトルの電圧降下の影響に
vu*
ig
d’
vs
vg
d
(a) General PFC circuit
ig
d
iq
d
id
(b) Proposed circuit
Fig.5. Vector diagram of hybrid bridge rectifier circuit.
より,発電機端子電圧 vg と発電機電流 ig の間に位相差がで
Table 1. Simulation parameter.
き,電流が歪む。通常,混合ブリッジ整流回路ではインダ
クタンスを小さく設計するため,図 5(a)より位相差は小さく
なる。しかしながら,本論文で提案するシステムは発電機
Inductance of generator, La
1 mH
Synchronous Reactance, %Xa
6.28%
Back EMF of Generator,Vac
100 Vpeak
の同期リアクタンスを使用するため,パーセントリアクタ
Frequency of Back EMF, femf
100 Hz
ンスは最大で 30%程度が想定される。そこで図 5(b)に示し
Carrier Frequency, fsw
15 kHz
た様に負の d 軸電流を流し,発電機の端子電圧 vin に対して
Output Voltage,Vout
350 V
力率 1 にすることにより歪みの問題を解決する。図 5(b)より
Response angler frequency of ACR
4000 rad/sec
Response angler frequency of AVR
400 rad/sec
位相差dは(1)式に示される。
La id
d  tan 1
(1)
v s  La iq
ここで,e は電気角周波数とする。(1)式と図 5(b)より,無
効電流指令値 id*は iq*を用いて(2)式に示される。
id 
*
La id
*
iq (2)
v s  La iq
Output voltage of generator (LPF: fc=1 kHz) [V]
173 V
100 V
Star connection
Delta connection
Back EMF of the generator [V]
以上より,デルタ結線モード運転時の発電機電流 ig の大
きさは,(3)式に示される。
 La id
2
2
ig  id  iq  iq 
 vs  La iq

2

  1 (3)


Current of the generator [A]
12 A
(3)式から,スター結線モード時の q 軸電流から,デルタ
結線モード時の電流の大きさを計算することができる。
4.
Output Voltage of the rectifier [V]
Dead-time of magnetic
contactor(2 ms)
シミュレーション結果
Voltage drop
表 1 にシミュレーション条件を示す。整流器のキャリア
[sec]
周波数は 15 kHz,ACR を 4000 rad/sec,AVR を 400 rad/sec
で設計する。出力電圧は 350 V とする。巻線の切替時にはス
イッチまたは電磁接触器のスイッチングの間にデッドタイ
ムを設ける必要がある。デッドタイムは提案回路と従来回
路でそれぞれ 0.5 s,2 ms とした。
〈4・1〉 定常特性
図 6 に電磁接触器を用いたスターデルタ巻線切替回路,
Fig.6. Simulation result of the winding changeover using
magnetic contactor.
Output voltage of generator (LPF: fc=1 kHz) [V]
173 V
100 V
図 7 に提案回路時の巻線切替時のシミュレーション結果を
示す。はじめはスター結線モードで運転し,0.60 sec におい
てデルタ結線モードに巻線を切り替える。図 6,7 より発電
Star connection
Back EMF of the generator [V]
Delta connection
機の出力電圧はスター結線モード時には 173 V,デルタ結線
モード時には 100 V となる。スター結線モード時にはデルタ
結線モードの 1.73 倍の電圧が出力されているため,巻線切
Current of the generator [A]
替動作が正しく行われていることがわかる。
提案回路では一般的なデルタ結線とは異なり,相電流の
1.73 倍の大きさとなる線電流が存在しない。そのため,発
電機の同期リアクタンスに流れる相電流により比較する。
Output Voltage of the rectifier [V]
相電流は巻線切替の前後で電流振幅は変化しない。また発
電機の誘起電圧も変化しないため,巻線切替の前後で電力
は一定となる。また従来回路では常に誘起電圧に対して力
率 1 となっているが,提案回路はデルタ結線モードにおい
て出力電圧に対して力率 1 となる。スター結線モード,デ
ルタ結線モードどちらの場合においても定常時においては
一定の出力電圧 350 V が得られている。
[sec]
Fig.7. Simulation result of the winding changeover using
proposed circuit.
〈4・2〉 切り替え時の挙動
30
図 6 より従来回路では電磁接触器のデッドタイム期間中,
ドタイム期間終了後の再通電時において発電機電流 12 A ま
で上昇していることが確認できる。これは停電期間中に出
力電圧が低下した影響である。この問題を防ぐため,電磁
接触器を用いた切替では出力のコンデンサの大容量化が必
要である。これに対して提案回路では図 7 に見られる様に
巻線切替時においても発電機電流を連続に保ったまま,シ
ームレスに巻線切替が可能である。しかしながら,デルタ
Generator current THD [%]
発電機が電流経路を失うため,停電期間となる。またデッ
結線モード時は定常状態においても発電機電流が(2)式に示
図 8 に同期リアクタンス%Xa に対する入力電流 THD(Total
Harmonic Distortion)を示す。ここでは d 軸の同期リアクタン
で発電機が 30%の同期リアクタンスの場合,電流 THD は
19%となる。電流 THD の増加により発電機損失の増加やト
ルクリプルの増加に伴う駆動時の騒音の影響が懸念され
11
Sim. value (id≠ 0)
Sim. value (id=0)
Cal. value (id≠ 0)
Cal. value (id=0)
7
5
時の電流と等しい。図 9 より,d 軸電流 id=0 の場合におい
5%
8
3%まで低減可能である。
機の有効電力が一定とする。q 軸電流 iq はスター結線モード
Rated torque
9
6
ーション結果を示す。ただし,発電機の回転数および発電
40
10
る。しかし,無効電流を流すことにより発電機電流 THD を
図 9 に同期リアクタンスに対する発電機電流のシミュレ
20
30
%Reactance [%], %Xa
12
Generator current [A], ig
アクタンスの大きさの自乗に比例して増加している。ここ
10
the generator.
ミュレーションにより導出している。発電機電流 THD は発
た。図 8 より,id=0 としたとき,発電機電流 THD は同期リ
10
Fig.8. Generator current THD versus synchronous reactance of
スを 3% ~ 40%まで変化させたときの発電機電流 THD をシ
電機誘起電圧の周波数 100 Hz の 40 次の高調波まで考慮し
20
0
した無効電流分上昇する。
〈4・3〉同期リアクタンスの影響
Sim. value (id=0)
Sim. value (id≠ 0)
50% torque
0
10
20
30
40
%Reactance [%], %Xa
Fig.9. Amplitude of generator current versus synchronous
reactance of the generator.
て同期リアクタンスが大きくなると,位相差dが大きくなる
ことにより歪みが大きくなるため,計算結果との誤差は大
きくなる傾向がある。対して無効電流を流している場合は
歪みが小さくなるため,(3)式による計算結果とよく一致し
ている。図 9 より,同期リアクタンスが 30%かつ定格トル
クの場合には,スター結線モードの場合と比較して発電機
電流が 5%上昇する。
4.
まとめ
本論文では発電機巻線の結線をスター結線からデルタ結
線モードにシームレスに切替可能な発電機システムを提案
した。提案回路ではスター結線モードでは線間電圧,デル
タ結線モードでは相電圧が発電機の出力電圧となる。電磁
接触器を使用した従来巻線切替は 2 ms のデッドタイム期間
中は停電期間となることを確認した。さらにデルタ結線モ
ード時に 30%の大きな同期リアクタンスを持つ発電機を使
用する場合でも,無効電流を流すことにより発電機の端子
電圧と電流の位相を一致させることで発電機電流の歪みを
3%に抑制できることを示した。ただし,発電機電流は 5%
増加する。今後は突極形 PM モータでの検討および実機実験
で本提案回路の有用性を確認する。
文
献
(1) 金井潤一 他:
「エンジン駆動型インバータ発電機の制御方法,及び
エンジン駆動型インバータ発電機」,特開 2013-164023(2013)
(2) Min-Fu Hsieh 他:
「Winding Changeover Permanent-Magnet Generators
for Renewable Energy Applications 」, IEEE Trans. on Magnetics
Vol.48,No.11 (2012)
(3) 加藤尚和 他:「巻線切替とインバータの併用による織機駆動システ
ムの高速始動」,電学論 D,Vol.134,No.5,pp.526-534(2013)
(4) 沢俊裕 他:「巻線切替機能付インバータ」,特開平 01-34198 (1989)
(5) Mahesh M. Swamy 他:「Extended High-Speed Operation via Electronic
Winding-Change Method for AC motors」,IEEE Trans. on IA Vol.42,No.3
(2006)