第24回 神経行動薬理若手研究者の集い (YNBP2015名古屋)

第24回
神経行動薬理若手研究者の集い
(YNBP2015名古屋)
プログラム・要旨集
大会長 大澤 匡弘
名古屋市立大学大学院薬学研究科神経薬理学分野
平成27年3月17日(火)
名城大学名駅サテライト(MSAT)
後援:公益社団法人 日本薬理学会
公益社団法人 日本薬学会
第24回
神経行動薬理若手研究者の集い (YNBP2015)
『Generation Shift: From molecular to systems
(時代の変遷 ~分子から回路へ~)』
平成27年3月17日(火)
名城大学名駅サテライト(MSAT)
大会長 大澤 匡弘
事務局:名古屋市立大学大学院薬学研究科
神経薬理学分野
〒467-8603 愛知県名古屋市瑞穂区田辺通 3-1
TEL/FAX:052-836-3410
目
次
世話人会名簿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
会場案内・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
お知らせとお願い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
タイムスケジュール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
講演要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
一般演題要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
謝
辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40
開催軌跡・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41
-1-
世 話 人 会
名誉会長
小野寺憲治
(疾病薬学研究所・てんかん専門病院・ベーテル 臨床薬部門)
アドバイザ一
阿部 康二
石毛久美子
成田 年
山田 清文
(岡山大学医歯学総合研究神経病態内科学)
世話人代表
稲津 正人
(東京医科大学 医学総合研究所)
世 話 人
淺沼 幹人
石塚 智子
大澤 匡弘
小澤 寛樹
桂 昌司
金子 雅幸
北市 清幸
小嶋 純
小菅 康弘
佐藤 信範
島添 隆雄
十川 紀夫
丹野 孝一
辻 稔
津田 誠
西山 信好
野田 幸裕
松田 佳和
溝口 広一
森 友久
山口 拓
(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 神経情報学分野)
(日本大学 薬学部 薬理学ユニット)
(星薬科大学 薬理学教室)
(名古屋大学 大学院医学系研究科 医療薬学・病院薬剤部)
(大阪歯科大学 歯学部 薬理学講座)
(名古屋市立大学 大学院薬学研究科 神経薬理学分野)
(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 精神神経科学分野)
(明治国際医療大学 医学教育研究センター 薬理学部門)
(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 分子細胞情報学講座)
(岐阜大学 医学部付属病院 薬剤部)
(日本大学 医学部 脳神経外科教室)
(日本大学 薬学部 薬理学ユニット)
(千葉大学 大学院薬学研究院 臨床教育学研究室)
(九州大学 大学院薬学研究院 臨床育薬学分野)
(松本歯科大学 歯科薬理学講座)
(東北薬科大学 薬理学教室)
(国際医療福祉大学 薬学部 薬理学)
(九州大学大学院薬学研究院 ライフイノベーション分野)
(兵庫医療大学 薬学部 薬理学分野)
(名城大学 薬学部 病態解析学I研究室)
(日本薬科大学 臨床薬学教育センター)
(東北薬科大学 機能形態学教室)
(星薬科大学 薬品毒性学教室)
(長崎国際大学 薬学部 薬理学研究室)
第 24 回神経行動薬理若手研究者の集い事務局 〒467-8603 名古屋市瑞穂区田辺通 3-1
名古屋市立大学大学院 薬学研究科神経薬理学分野内 TEL&FAX 052-836-3410
E-MAIL: [email protected] URL: http://www.phar.nagoya-cu.ac.jp/ynbp2015/
第 24 回神経行動薬理若手研究者の集い
会長 大澤 匡弘
山本 昇平
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会 場 案 内
名城大学名駅サテライトキャンパス(MSAT)
〒450-0002 名古屋市中村区名駅 3-26-8
KDX 名古屋駅前ビル 13 階
多目的室
地上より … JR 名古屋駅桜通口より
桜通を東に徒歩 2 分
地下より … ユニモール地下街
4 番出口を出てすぐ
駐車場はございませんので、
公共交通機関にてお越しください。
名城大学名駅サテライトキャンパス(MSAT)フロアマップ
-3-
ご案内
参加者の方々へのご案内
1. 受付 (名城大学名駅サテライトキャンパス(MSAT) エレベーターホール)
午前 9:30 より開場致します。既に事前登録および参加費の払い込みのお済みの方は、ネームカ
ードおよび要旨集をお渡しいたしますので受付においで下さい。当日に会への参加ご希望の方およ
び懇親会参加ご希望の方は、受付にてお申し込み下さい。
2. 口演会場
口演会場は、名城大学名駅サテライトキャンパス(MSAT)多目的室です。
3. 参加費 (当日参加)
受付にて 9:30 より行います。
一般:6,000 円、大学院生:2,000 円、学部生:無料
4. 懇親会費(当日参加)[会場:KDX名古屋駅前ビルB1 お気がるワイン食堂 ばかなる桜通店]
受付にて 9:30 より定員に達するまで行います。参加できる人数に限りがございますので、出来る
限り、事前にお申込みくださいませ。
一般:6,000 円、大学院生・学部生:2,000 円
5. 神経行動薬理若手研究者の集い 世話人会
12:00 から開催いたします。会場は受付にてご案内いたします。昼食をご用意しております。
6. 昼 食
周辺の食堂・レストラン、コンビニエンスストアなどをご利用ください。
7. 飲食禁止と禁煙のお願い
会場内は飲食禁止・禁煙となっております。
8. 写真・ビデオ撮影
演者の許可を受けずに口演スクリーンの撮影を行うことは、ご遠慮下さい。なお、開催記録のため
に、スタッフが会場内の様子を撮影する場合がございますが、ご了承下さい。
9. その他
会場内では、必ずネームカードのご着用をお願いいたします。
会場内では、携帯電話・スマートフォン等の音を出さないようにお願いいたします。
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座長の方へのご案内
受付にて、担当セッションの30分前までに受付をお済ませ頂き、担当セッションの5分前までに次座長
席にお着き下さい。1演題あたり発表10分、質疑応答5分となっております。活発な討論となりますよう、
ご配慮願いますとともに、時間厳守にてよろしくお願い申し上げます。
発表する方へのご案内
1. 発表時間
発表 10 分 質疑応答 5 分
発表の 10 分前には、演台付近の次演者席にお着き下さい。
2. 発表受付
当日発表するデータを USB メモリにてお持ちください。発表予定時刻の 30 分前までに、スライド受付
にて試写用パソコンで発表データの確認、登録を行ってください。
3. 発表について
・発表はすべて液晶プロジェクタを使った口演とします。
・当日、事務局にて用意するコンピューターは Windows OS の PC のみです(Windows7、
PowerPoint2013)。発表データは Windows OS/PowerPoint2002 以上で作製、編集されることを
おすすめいたします。
・文字化けや文字送りのズレを防ぐため、下記のような多くの OS バージョンで標準インストールされ
ているフォントを用いてスライドを作製することをおすすめいたします。
(A)日本語フォント-MS ゴシック、MS P ゴシック、メイリオなど
(B)英語フォント-Arial、Century、Helvetica、Verdana など
・動画をご使用される場合、ファイルのサイズによって事務局が準備する PC のグラフィックパフォー
マンスでは再生時に問題が起こることがあります。ファイルサイズにご注意ください。
・発表に用いる PowerPoint ファイルと他のデータファイルをリンクする際に、動作しない可能性もあり
ますので、事前に事務局にご相談ください。
・事務局では基本的に Macintosh は準備いたしません。発表に Macintosh をご利用の方はご自身の
コンピューターをご持参ください。外部出力用のコネクタは D-Sub15 ピン(mini)です。Macintosh で
は写真のような変換コネクタが必要になりますので、ご自身でご準備ください。
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優秀発表賞について
1. 優秀発表賞
大学院生もしくは学部生の演題の中から、優秀発表賞を選考することにいたします。複数の評価者
による厳正な審査により、選考結果は閉会の辞の際にお知らせし、懇親会にて表彰をします。
評価の基準 :研究内容の新規性・発展性、プレゼンテーション全般、質疑応答に対する対応
2. 評価される先生方へのお願い
当日の受付の際に、審査用紙をお渡しいたします。審査が終了しましたら、速やかに一般演題受付
までご提出いただきますよう、よろしくお願いいたします(一般演題 4 視覚・脳虚血・睡眠のセッション
をご担当される先生方、特によろしくお願いいたします)。
その他のお願い
本研究会は、若手研究者が活発に、自由な発想のもと、討論をすることを目的としております。自然
発生的にできたルールがありますので、ここに記させていただきます。お守りいただくかにつきまして
は、ご参加の皆様のご判断にお任せいたしますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
・参加者であるお互いの呼称は「先生」を使わず、「さん」づけで呼ぶこと。
・発表の終わりには、必ず拍手をして、その音の大小で発表の評価に変えること。
・若手の定義は、年齢によるものではなく、自称若手であれば何歳でも構わない。
-6-
タイムスケジュール
9:30
開場 [名城名駅サテライト(MSAT)多目的室]
10:00~10:05
開会の辞
10:05~10:20
一般演題 1 認知機能・脳高次機能
10:20~10:35
座長:辻
10:35~10:50
稔
(国際医療福祉大学
薬学部)
10:50~11:05
休憩
11:05~11:15
教育講演
11:15~12:00
津田
誠
座長:山口
(九州大学大学院
薬学研究院)
拓(長崎国際大学 薬学部)
昼食
12:00~13:00
(神経行動薬理若手研究者の集い 世話人会)
13:00~13:15
一般演題 2 疼痛
13:15~13:30
座長:島添
13:30~13:45
隆雄
(九州大学大学院 薬学研究院)
13:45~14:00
14:00~14:15
一般演題 3 ストレス障害
14:15~14:30
座長:間宮
14:30~14:45
隆吉
(名城大学 薬学部)
14:45~15:00
休憩
15:00~15:15
15:15~15:30
一般演題 4 視覚・脳虚血・睡眠
15:30~15:45
座長:永井
15:45~16:00
拓
(名古屋大学大学院 医学研究科)
16:00~16:15
16:15~16:30
16:30~16:45
一般演題 5 摂食・ストレス障害
16:45~17:00
座長:松田 佳和
(日本薬科大学)
17:00~17:15
17:15~17:30
休憩
17:30~17:40
17:40~18:20
特別講演
池谷 裕二
座長:大澤 匡弘
(東京大学大学院
(名古屋市立大学大学院
薬学研究科)
閉会の辞
18:20~
18:30~
薬学系研究科)
懇親会
[お気がるワイン食堂
ばかなる桜通店(KDX 名古屋駅前ビル B1)
]
-7-
プ ロ グ ラ ム
プ ロ グ ラ ム
○印:発表者
開会の辞
大会長 大澤匡弘 (名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
10:00~
一般演題 1 認知機能・脳高次機能 1
10:05~11:05
座長:辻稔(国際医療福祉大学 薬学部)
1.Scabronine G-methylester attenuates hippocampal neurogenesis impairment and the memory
deficits induced by olfactory bulbectomy
○ Jia Rong Lin1, Osamu Nakagawasai1, Wataru Nemoto1, Yutaro Obara2,
Fukie Yaoita1, Yu Kobayakawa3, Masahisa Nakada3, Koichi Tan-No1
1
Department of Pharmacology, Tohoku Pharmaceutical University,
2
Department of Pharmacology, Yamagata University,
3
Department of Chemistry and Biochemistry, Faculty of Science and Engineering,
Waseda University
2.統合失調症ラットの CaMKII 機能低下と認知機能改善薬の効果
○ 矢吹 悌,福永 浩司
東北大学大学院薬学研究科 薬理学分野
3.Fischer 344 系ラットにおける methamphetamine 誘発報酬効果の不形成機構
◯ 鷹箸 飛鳥,森 友久,相川 大介,野田 友人,岩瀬 祥之,佐伯 朋哉,
増川 太輝,芝崎 真裕,鈴木 勉
星薬科大学 薬品毒性学教室
4.Histamine N-metyltransferase ノックアウトマウスの行動解析
○ 長沼 史登,吉川 雄朗,中村 正帆,三浦 大和,堀米 愛,谷内 一彦
東北大学大学院医学系研究科 機能薬理学分野
休憩
11:05~11:15
-9-
教育講演
11:15~12:00
座長:山口拓(長崎国際大学 薬学部)
「グリア細胞から探る神経障害性疼痛のメカニズム,そして創薬への展開」
九州大学大学院
津田誠
薬学研究院 ライフイノベーション分野
昼食・世話人会
12:00~13:00
一般演題 2 疼痛
13:00~14:00
座長:島添 隆雄 (九州大学大学院 薬学研究院)
5.脳内長鎖脂肪酸受容体 GPR40/FFAR1 シグナルは下行性疼痛抑制系の調節に関与する
○ 西中 崇 1,中本 賀寿夫 1,相澤
風花 1,山下
琢矢 2,万倉 三正 3,
小山 豊 4,糟谷 史代 2,徳山尚吾 1
1
神戸学院大学薬学部 臨床薬学研究室,2神戸学院大学薬学部 毒性学研究室,
3
くらしき作陽大学,4大阪大谷大学薬学部 薬理学講座
6.TRPA1 チャネルのオキサリプラチン誘発急性末梢神経障害における役割
○ 三宅 崇仁 1,中村 彩希 1,趙 萌 1,宗 可奈子 1,浜野 智 2,井上 圭亮 2,
沼田 朋大 2,3,高橋 重成 2,白川 久志 1,森 泰生 2,中川
貴之 1,4,
金子 周司 1
1
京都大学大学院薬学研究科 生体機能解析学分野,
2
京都大学大学院工学研究科 合成生物化学専攻分子生物化学分野,
3
福岡大学医学部 生理学教室,4京都大学医学部附属病院薬剤部
7.神経障害性疼痛発症における脊髄グリア―ニューロンシャトルの関与
○ 宮本 啓補,飯尾 彩加,石倉 啓一郎,大澤 匡弘,粂 和彦
名古屋市立大学大学院 薬学研究科 神経薬理学分野
8.糖尿病誘発性アロディニアに対する脊髄アンジオテンシン系の関与
○ 小潟 佳輝 1,根本 亙 1,中川 西修 1,八百板
富紀枝 1,只野 武 2,
丹野 孝一 1
1
東北薬科大学 薬理学教室,2金沢大学医薬保健学総合研究科 環境健康科学講座
- 10 -
一般演題 3 不安障害・うつ
14:00~15:00
座長:間宮 隆吉 (名城大学 薬学部)
9.母子分離・社会隔離ストレスによる情動機能障害の出現および神経障害性疼痛の増悪に
対する青斑核領域アストロサイトの関与
○ 木下 恵,西中 崇,中本 賀寿夫,徳山 尚吾
神戸学院大学薬学部 臨床薬学研究室
10.リゾホスファチジン酸シグナル伝達系の情動行動に及ぼす検討
○ 塚越 麻衣 1,2,山田 美佐 1,後藤 玲央 1,岡
淳一郎 2,斎藤 顕宜 1,
山田 光彦 1
1 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
2 東京理科大学薬学部
精神薬理研究部,
薬理学研究室
11.ストレス負荷が惹起するうつ様行動に対する PKC リン酸化制御の関与
○ 山本 文哉 1,肥田 裕丈 2,森 健太郎 1,毛利
彰宏 1,石原 歩実 1,
尾崎 紀夫 3,野田 幸裕 1,2
1 名城大学薬学部
病態解析学Ⅰ,2名城大学大学院薬学研究科 病態解析学Ⅰ,
3 名古屋大学大学院医学系研究科
精神医学
12.幼若期社会的敗北ストレス負荷による社会性行動障害におけるモノアミン作動性神経の
関与
○ 三宅 裕里子 1,長谷川 章 1,谷口 将之 1,毛利 彰宏 1,2,肥田 裕丈 3,
吉見 陽 1, 4,尾崎
1 名城大学薬学部
紀夫 4,鍋島 俊隆 2,5,野田 幸裕 1,2,3
病態解析学Ⅰ,2特定非営利活動法人医薬品適正使用推進機構,
3 名城大学大学院薬学研究科
5 名城大学薬学部
病態解析学Ⅰ,4名古屋大学医学部 精神医学,
地域医療薬局学
休憩
15:00~15:15
- 11 -
一般演題 4 視覚・脳虚血・睡眠
15:15~16:15
座長:永井 拓 (名古屋大学大学院 医学研究科)
13.Cholecystokinin-A 受容体を介する光刺激伝達経路に関する研究
○ 徳永 孝子,山川 裕介,小林 大介,窪田 敏夫,土持 有希,島添 隆雄
九州大学大学院薬学研究院 臨床育薬学分野
14.脳虚血性神経障害の発現に対する脳内 sodium-glucose transporter-1 の役割
○ 有田 恭子,山﨑 由衣,原田 慎一,徳山 尚吾
神戸学院大薬学部 臨床薬学研究室
15.脳虚血性神経障害の発現増悪機序におけるに対する脳内 sodium-glucose transporter を
介した Na+の細胞内流入の影響
○ 山﨑 由衣,原田 慎一,徳山 尚吾
神戸学院大学薬学部 臨床薬学研究室
16.ショウジョウバエによる摂食行動と睡眠の関係
○ 長谷川 達也 1,橋本 梨菜 2,林
粂
里花 1,冨田 淳 1,井田 隆徳 3,
和彦 1
1 名古屋市立大学大学院薬学研究科
2 熊本大学発生医学研究所
神経薬理学分野,
多能性幹細胞分野,
3 宮崎大学フロンティア科学実験総合センター
生理活性ペプチド探索分野
一般演題 5 摂食・ストレス障害・睡眠
16:15~17:30
座長:松田 佳和 (日本薬科大学)
17.神経系アミノ酸トランスポーターによるショウジョウバエの睡眠-覚醒制御
○ 冨田 淳 1,上野 太郎 2,山本 昇平 1,中根 伸 1,粂 昭苑 3,粂 和彦 1
1 名古屋市立大学大学院薬学研究科
2 東京都医学総合研究所
神経薬理学分野,
運動・感覚システム研究分野,
3 東京工業大学大学院生命理工学研究科
生命情報専攻
18.白血球 mRNA を指標にした抑うつ症状マーカーの同定と動物モデルへの応用
〇 宮田 茂雄, 福田 正人, 三國
雅彦
群馬大学大学院医学系研究科 神経精神医学分野
- 12 -
19.Mecp2 ヘテロ欠損雌マウスにみられた CCK 腹腔内投与による摂餌抑制の低下
○ 滝口 旗一 1,三枝 禎 2,青野 悠里 2,白川 哲夫 1
1 日本大学歯学部
小児歯科学講座,2日本大学松戸歯学部 薬理学講座
20.幼若期薬理学的ストレスによる成長後の行動学的応答性
○ 山口 拓 1,吉岡 充弘 2,山本 経之 1
1 長崎国際大学薬学部
薬理学研究室,
2 北海道大学大学院医学研究科
神経薬理学分野
21.リン酸化 Girdin による神経可塑性の制御
○ 永井 拓 1,中井 剛 1,田中 基樹 2,浅井 直也 3,榎本 篤 3,
曽我部 正博 2,高橋 雅英 3,山田 清文 1
名古屋大学大学院医学系研究科
1 医療薬学・附属病院薬剤部,
2 メカノバイオロジー・ラボ,3 腫瘍病理学
休憩
17:30~17:40
特別講演
17:40~18:20
座長:大澤匡弘(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
「記憶は未来に贈るメッセージ」
東京大学
閉会の辞
池谷裕二
大学院薬学系研究科
薬品作用学教室
大会長:大澤匡弘(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
18:20~
- 13 -
特別講演
時間 : 17:40 ~ 18:10
演題 : 「記憶は未来に贈るメッセージ」
講師 : 東京大学大学院薬学系研究科
薬品作用学教室 教授
池谷 裕二 先生
座長 : 大澤匡弘(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
特別講演
池谷裕二 先生 (東京大学大学院 薬学系研究科 薬品作用学教室 教授)
「記憶は未来に贈るメッセージ」
脳は可塑性を持ちます。可塑性は、環境からの刺激に応じて変化し、環境の変化に適応
するために必要なプロセスです。生来的な(より平たい言葉でいうのならば、「遺伝子に書
かれた」)生命プログラムだけでも、十分に生存してゆくことができることは、多くの生物が
脳を持たないという事実からも明らかです。しかし、予期せぬ環境に直面したときに、効果
的に適応するためには、可塑性を持っていたほうが有利です。つまり、可塑性とは「遺伝子
で決まっているデフォルト状態から、どれだけ自由に羽ばたくことができるのか」という能力
のことです。脳は、この可塑性を通じて、学習し、記憶し、経験を次回に活かすことができま
す。
このように突き詰めて考えれば、脳の本質的な役割は「予測し準備すること」であることが
理解できます。次に何か起こるかを予期することができれば、それに対して先手を打つこと
ができます。予想が的中し、対応策が功を奏すれば、淘汰の危険率は減少します。この予
測のために必要な要素こそが、過去の経験、つまり「記憶」です。
記憶は来歴(経験の蓄積)そのものですから、一般に、過去を指向したものだと思われが
ちですが、実際には、過去を未来へと橋渡しするためツールです。予測の参照点となるネタ
の詰まった辞書、いわば、未来の自分に贈るプレゼントです。そんな観点から、私は可塑性
を研究しています。可塑性を十全に発揮すれば、脳に秘められた潜在能力を啓くことがで
きるはずです。脳はどこまで強化できるのでしょうか。「脳力」の臨界点を探ってみたい――
これが研究のモチベーションです。当日は、私の研究室で稼働している「脳創発プロジェク
ト」の中から、1.新規感覚の獲得、2.失われた過去を回復、という2つの未発表テーマに
ついてお話します。
- 15 -
教育講演
時間 : 11:15 ~ 12:00
演題 : 「グリア細胞から探る神経障害性疼痛の
メカニズム,そして創薬への展開」
講師 : 九州大学大学院薬学研究院
ライフイノベーション分野 教授
津田 誠 先生
座長 : 山口 拓(長崎国際大学 薬学部)
教育講演
津田 誠 先生 (九州大学大学院薬学研究院 ライフイノベーション分野 教授)
「グリア細胞から探る神経障害性疼痛のメカニズム,そして創薬への展開」
神経の障害や機能不全により,既存の鎮痛薬に抵抗性を示す神経障害性疼痛が発症する。神経
障害性疼痛の発症維持メカニズムは依然として不明であるため,有効な治療薬の開発も遅れてい
るのが現状である。
従来の研究では,神経の障害が原因で発症する慢性疼痛であることから,神経細胞での変化が
主に注目されてきた。しかし我々は,ATP 受容体の研究から,神経障害性疼痛動物モデルの脊髄後
角で,P2X4 受容体がミクログリアに高発現し,その受容体の遮断によりアロディニアが抑制され
ることを見出した。さらに,アロディニア発現に重要なニューロン機能異常がミクログリア由来
因子で起こることも明らかにした。ミクログリア細胞は,神経損傷などに応答してさまざまな遺
伝子を発現し,活性化状態へと移行する。我々は,神経損傷後に脊髄で発現増加する遺伝子とし
て数種類の転写因子を特定し,その中で IRF8 がミクログリア特異的であること,さらに IRF8 の
欠損により ATP 受容体や炎症性サイトカインなど神経障害性疼痛に関連する遺伝子発現が抑制さ
れ,アロディニアの発症も抑制されることを見出した。また,IRF8 は他の転写因子 IRF5 の発現も
直接制御しており,IRF8-IRF5 転写因子カスケードが P2X4 受容体陽性のミクログリアを作り上げ,
活性化状態へと誘導し,神経障害性疼痛の発症に寄与することを明らかにした。一方,ミクログ
リアの P2X4 受容体を刺激する ATP の放出源は長らく不明であった。最近我々は,ATP の放出に重
要な小胞型ヌクレオチドトランスポーターVNUT の欠損やノックダウンにより神経障害性疼痛が抑
制されることを見出した。
これまで,
VNUT を介した ATP 放出は様々な細胞種で想定されていたが,
我々は脊髄後角ニューロン特異的な VNUT 欠損マウスで ATP 放出および神経障害性疼痛の抑制が
認められることを明らかにし,脊髄後角ニューロンが神経障害性疼痛を引き起こす ATP の放出源
である可能性を示した。以上の成果は,活性化ミクログリアが神経損傷によるニューロンの機能
異常および神経障害性疼痛に非常に重要な役割を果たしていることを一貫して示している。
本講演では,上記の成果に加えて,最近スタートした研究についても紹介し,さらに P2X4 受容
体を標的にした創薬に関する九大の取り組みにも触れたい。
- 17 -
一般演題要旨
一般演題1
Scabronine G-methylester attenuates hippocampal neurogenesis impairment and
the memory deficits induced by olfactory bulbectomy
〇 Jia Rong Lin1, Osamu Nakagawasai1, Wataru Nemoto1, Yutaro Obara2, Fukie Yaoita1,
Yu Kobayakawa3, Masahisa Nakada3, Koichi Tan-No1
1
Department of Pharmacology, Tohoku Pharmaceutical University,
2
Department of Pharmacology, Yamagata University,
3
Department of Chemistry and Biochemistry, Faculty of Science and Engineering,
Waseda University
Aims : Our previous reports suggested that a newly synthesized scabronine G (SG)methylester (ME) which enhances the secretion of neurotrophic factors such as brainderived neurotrophic factor (BDNF) and nerve growth factor (NGF) from 1321N1 human
astrocytoma cells. BDNF is a potent modulator of neuronal functions in the
hippocampus, including neurotransmission, memory formation and neurogenesis. The
aim of this study is to explore the effects and the underlying mechanism of SG-ME
on memory impairment in olfactory bulbectomized (OBX) mice using experimental
depression and dementia animal models.
Methods : Adult male ddY mice were subjected to bilateral olfactory bulbectomy or
sham operation. Passive avoidance task was used for assessing long-term memory of
mice. SG-ME was administered intracerebroventricularly. The passive avoidance test
was carried out at 30 minutes, 24 hours, or 48 hours after the SG-ME treatment. The
influence of anti-BDNF antibody, ANA12 (TrkB antagonist) or U0126 (ERK1/2 inhibitor)
on the memory improvement elicited by SG-ME was investigated. Neurogenesis was
assessed by analysis of cells expressing NeuN, a neuronal marker, and 5-bromo-2’deoxyuridine (BrdU) uptake.
Results and Discussion : In this study, we observed that the memory impairment in
OBX mice was improved at 24 hours after SG-ME injection (20 µg/mouse). The memory
improvement effect by SG-ME was prevented by treatment with anti-BDNF antibody,
ANA12 or U0126. Immunohistochemical analysis showed that the number of BrdU/NeuN
double-labeled cells in the dentate gyrus of the hippocampus significantly decreased
in OBX mic and their cells were increased by SG-ME. In conclusion, the results from
the present study suggested that SG-ME has anti-dementia effect characterized by
enhancement of hippocampal neurogenesis via BDNF and ERK1/2 cascades.
- 19 -
一般演題2
統合失調症ラットの CaMKII 機能低下と認知機能改善薬の効果
○ 矢吹 悌,福永
浩司
東北大学大学院薬学研究科
薬理学分野
【目的】
統合失調症患者の QOL 向上のために、認知機能障害を改善しうる薬剤の開発が必要である。
統合失調症モデルである新生仔期腹側海馬(NVH)損傷ラットの prepulse inhibition(PPI)
障害は抗精神病薬の投与により改善する。私達は NVH 損傷ラットの内側前頭前皮質と海馬に
おいて Ca2+/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ II(CaMKII)の活性が低下することを
報告した(Yabuki et al., Neuroscience 2013;234:103-115)。本研究では新規アルツハイマ
ー病治療候補薬 ST101(piro[imidazo[1,2-a]pyridine-3,2-indan]-2(3H)-one)の NVH 損傷ラ
ットの認知機能改善効果とそのメカニズムについて追究する。
【実験方法】
生後 7 日目の新生仔期ラット両側腹側海馬にイボテン酸を注入し、破壊した。生後 70 日
以降に認知機能と統合失調症関連行動を評価系として、リスペリドン(0.30 mg/kg, i.p.)
及び ST101(0.01, 0.1, or 0.5 mg/kg, p.o.)投与により NVH 損傷ラットの認知・行動障害
が改善されるか検討した。行動薬理試験終了後、免疫組織化学染色法及び免疫ブロット法に
よる CaMKII 活性を解析した。
【結果】
生後 70 日以降の NVH 損傷ラットに認められる PPI 障害はリスペリドン投与(0.30 mg/kg,
i.p.)により改善されるが、認知機能障害は改善されなかった。このリスペリドン投与によ
り、海馬内のドパミン受容体依存性シグナルは改善されたが、CaMKII 活性は改善されなかっ
た。CaMKII 活性亢進作用を有するアルツハイマー病治療候補薬 ST101 投与により、NVH 損傷
ラットの認知機能障害が有意に改善された。同時に、海馬で低下した CaMKII 活性も有意に改
善した。
【考察と結論】
NVH 損傷ラットは思春期以降に、PPI などの感覚運動障害に加えて、認知機能障害を示すユ
ニークなモデルである。リスペリドン投与で PPI 障害は改善されるが、認知機能障害は改善
されない。PPI 障害改善作用はドパミン受容体シグナル改善作用とよく相関した。一方、新規
認知機能改善薬 ST101 は認知機能を有意に改善し、この作用は内側前頭前皮質および海馬に
おける CaMKII 活性促進効果とよく相関した。本研究により、CaMKII 活性化薬 ST101 の統合
失調症モデルラットの認知機能障害に対する有効性が確認できた。
- 20 -
一般演題3
Fischer 344 系ラットにおける methamphetamine 誘発報酬効果の不形成機構
◯ 鷹箸 飛鳥,森 友久,相川
芝崎
真裕,鈴木
大介,野田 友人,岩瀬 祥之,佐伯 朋哉,増川 太輝,
勉
星薬科大学 薬品毒性学教室
覚せい剤である methamphetamine(METH)は精神依存を形成することが知られている。精神依
存は遺伝因子と密接な関連があると考えられており、遺伝的に均一な近交系の動物を用いて
薬物反応性の相違を検討する実験が行われてきた。特に、近交系である Lewis 系ラット(LEW)
は同じく近交系である Fischer 344 系ラット(F344)と比較して METH による各種行動変化
に対して、より感受性が高いこと、また、LEW では METH による報酬効果が形成され易いのに
対し、F344 では形成され難いことが報告されている。しかしながら、何故 F344 において報酬
効果が形成され難いのかについては全く明らかにされていない。そこで本研究では LEW およ
び F344 を用いて METH による報酬効果と弁別刺激効果の関連を検討し、さらに神経科学的手
法を用いて報酬効果形成における各種因子の関与について検討した。まず、薬物弁別試験を
用いて LEW および F344 における METH(1.0 mg/kg)による弁別刺激効果について検討したと
ころ、LEW と F344 において差異は認められなかった。このことから、遺伝的背景が感覚では
なく依存の形成そのものに影響を与えていることが示唆された。そこで、RT-PCR 法により
METH(2.0 mg/kg)または saline を 48 時間間隔で計 10 回投与した LEW および F344 を用い
て、中脳辺縁ドパミン神経系の投射先である側坐核における各種 mRNA 発現量の相違について
検討した。その結果、F344 においてのみ METH の処置により prodynorphin、glutamic acid
decarboxylase 1 の mRNA の上昇が認められた。このことから、これらの因子が METH 誘発報
酬効果の系統差に関与していることが考えられるため、CPP 法を用いて F344 における METH 誘
発報酬効果に対するκオピオイド受容体および GABA A 受容体拮抗薬の影響について検討した。
その結果、κオピオイド受容体拮抗薬である nor-binaltorphimine(nor-BNI; 5.0 mg/kg)の
前処置は METH 誘発報酬効果に影響を与えなかったのに対し、GABA A 受容体拮抗薬である (+)bicuculline(2.0 mg/kg)の前処置によって、METH 誘発報酬効果の発現が認められた。以上
の結果より、F344 において METH 誘発報酬効果の形成し難い背景には GABA 作動性神経の亢進
の関与があることが示唆された。
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一般演題4
Histamine N-metyltransferase ノックアウトマウスの行動解析
○ 長沼 史登,吉川 雄朗,中村
東北大学大学院医学系研究科
正帆,三浦 大和,堀米 愛,谷内 一彦
機能薬理学分野
【目的】
ヒスタミンは脳内で神経伝達物質として働き、睡眠覚醒、摂食調節といった様々な生理作
用に関与している。ヒスタミンを不活化する酵素として、Histamine N-methyltransferase
(HNMT)が脳内で発現していることが知られていたが、HNMT の生理的な役割については十分
に検討されていなかった。そのため、本研究では、HNMT ノックアウトマウス(KO)を作成し、
解析することで、HNMT の生体における機能と、その重要性をより詳細に明らかにすることを
目的として実験を行った。
【方法】
KO を、HNMT 遺伝子の代わりに LacZ 遺伝子を挿入することで作製した。まず LacZ レポータ
ーアッセイにて HNMT の脳内局在を検討した。その後、HPLC を用いてヒスタミン濃度の測定
をし、野生型マウス(WT)と比較検討した。その後、HNMT 欠損が生体に与える影響を種々の
行動薬理学的実験にて解析を行った。
【結果・考察】
LacZ レポーターアッセイの結果、HNMT は脳全体に広く分布し、特に大脳皮質、扁桃体等に
強く発現している事が明らかとなった。次に、脳のホモジネートサンプルを作成し、ヒスタ
ミン量を測定したところ、WT に比べ KO では、約 8 倍に増加していた。次に、マイクロダイア
リシス法を用い、細胞外ヒスタミン量を測定したところ、こちらも 4 倍ほどに増加している
事が明らかとなった。これまでの結果から、HNMT は脳内ヒスタミン除去に極めて重要な役割
を果たしている事が確認された。高架式十時迷路、明暗試験を用いた不安様行動、Y 迷路を用
いた作業記憶等に WT と差は認められなかった。一方、Open field test では、KO において移
動距離、平均速度、行動時間について優位な減少が認められた。さらに、ホームケージにお
ける自発運動量を測定した結果、KO における暗期の自発行動量の減少および無動時間の増加
が認められた。この結果から、暗期における睡眠時間の増加や睡眠覚醒のリズムの変化が示
唆された。また、KO では、fighting による創傷が多く、resident-intruder test でも、KO に
おいて優位に攻撃回数が多い事が確認された。本研究により HNMT の欠損は脳内ヒスタミン濃
度を著しく上昇させ、自発運動量低下及び攻撃行動増加をもたらすことが明らかとなった。
従って、HNMT は脳内においてヒスタミン濃度調節に重要な役割を果たしており、ヒスタミン
神経系を介して行動を制御している可能性が示唆された。
- 22 -
一般演題5
脳内長鎖脂肪酸受容体 GPR40/FFAR1 シグナルは下行性疼痛抑制系の調節に関与する
○ 西中 崇 1,中本
糟谷
賀寿夫 1,相澤
風花 1,山下 琢矢 2,万倉 三正 3,小山 豊 4,
史代 2,徳山尚吾 1
1
神戸学院大学薬学部 臨床薬学研究室,2神戸学院大学薬学部 毒性学研究室,
3
くらしき作陽大学,4大阪大谷大学薬学部 薬理学講座
【背景】
我々はこれまでに、ドコサヘキサエン酸(DHA)などを含む長鎖脂肪酸によって活性化され
る G 蛋白質共役型受容体 GPR40/FFAR1 が、内因性の疼痛制御機構において重要な役割を担っ
ていることを提唱してきた。本研究においては、ノルアドレナリン・セロトニン神経系によ
る下行性疼痛抑制機構に対する脳内 GPR40/FFAR1 シグナル関与について検討を行った。
【方法】
疼痛評価には、ホルマリン試験を用いた。GPR40/FFAR1 アゴニス GW9508(1 µg)はホルマ
リン試験の 10 分前に脳室内へ投与した。GPR40/FFAR1 アンタゴニスト GW1100(10 µg)
、α 2
アドレナリン受容体拮抗薬のヨヒンビン(4 µg)およびセロトニン(5-HT)1A 受容体拮抗薬
の WAY100935(10 µg)は GW9508 投与の 10 分前に脳室内または脊髄腔内へ投与した。Dopamine
beta hydroxylase ( DBH 、 ノ ル ア ド レ ナ リ ン 作 動 性 神 経 マ ー カ ー ) お よ び tryptophan
hydroxylase(TPH、5-HT 作動性神経マーカー)と GPR40/FFAR1 または c-fos タンパク質との
共局在解析には、蛍光二重免疫染色法を用いた。ノルアドレナリン(NA)および 5-HT は LCMS/MS にて測定した。
【結果】
GPR40/FFAR1 は青斑核および大縫線核領域で DBH および TPH と共局在を示した。GW9508 の
脳室内投与によって、ホルマリン誘発疼痛行動が抑制され、この抑制はヨヒンビンや
WAY100635 を脊髄腔内へ前処置することにより抑制された。また、青斑核および大縫線核領域
で c-fos 陽性タンパク質の発現増加が認められ、これらの発現増加は DBH および TPH 陽性細
胞上で認められた。さらに、脊髄中の NA および 5-HT 量は GW9508 の脳室内投与によっていず
れも増加した。一方、GW1100 の脳室内投与はホルマリン誘発疼痛行動(第 2 相)を有意に増
強した。
【考察】
青斑核および大縫線核領域における GPR40/FFAR1 は、下行性疼痛抑制機構に関与する神経
上に発現していることが明らかとなった。また、これらのシグナルは疼痛刺激によって活性
化されることで、痛みを抑制することが示唆された。
- 23 -
一般演題6
TRPA1 チャネルのオキサリプラチン誘発急性末梢神経障害における役割
○ 三宅 崇仁 1,中村 彩希 1,趙
沼田
朋大 2,3,高橋
萌 1,宗 可奈子 1,浜野 智 2,井上 圭亮 2,
重成 2,白川 久志 1,森 泰生 2,中川 貴之 1,4,金子 周司 1
1
京都大学大学院薬学研究科 生体機能解析学分野,
2
京都大学大学院工学研究科 合成生物化学専攻分子生物化学分野,
3
福岡大学医学部 生理学教室,4京都大学医学部附属病院薬剤部
【目的】 第三世代の白金製剤であるオキサリプラチン(エルプラット®、OHP)には、特徴的
な副作用として、投与直後から見られる急性末梢神経障害があると知られる。当研究室では
以前、この急性末梢神経障害への transient receptor potential ankyrin 1(TRPA1)とよば
れるチャネルの関与を報告した(Zhao et al., 2012)
。しかしそのメカニズムは未解明であ
ったため、本研究ではそのメカニズムの検討を行った。
【方法】 ヒト由来 TRPA1(hTRPA1)を強制発現させた HEK293T 細胞株またはマウス由来後根
神経節ニューロン(DRG ニューロン)を用い、細胞内 Ca2+蛍光イメージング法・電気生理学的
手法による解析を行った。またマウス足底内に過酸化水素(H 2 O 2 、5%、20 µL/paw)を投与し
た際に見られる疼痛様行動についての解析も行った。
【結果】 hTRPA1 は OHP(1 mM)によって開口することが観察され、それは抗酸化剤によっ
て抑制された。一方、OHP(100 µM)では hTRPA1 は開口しなかったものの、OHP(100 µM)存
在下で hTRPA1 発現細胞を 2 時間培養することで、H 2 O 2(10 µM)への hTPRA1 の感受性が増大
し、これはプロリン水酸化酵素(PHD)の作用を遺伝学的に阻害すると消失した。野生型マウ
ス由来 DRG ニューロンにおいてもこの感受性増大は観察されたが、TRPA1 欠損マウス由来の
DRG ニューロンを用いた場合には観察されなかった。H 2 O 2 足底投与によるマウスの疼痛様行動
は OHP(5 mg/kg)腹腔内投与によって増加し、TRPA1 阻害薬 HC030031(100 mg/kg)の前投与
(腹腔内)で抑制された。また PHD 阻害薬である DMOG(400 mg/kg)を腹腔内投与すると、
OHP と同様に H 2 O 2 誘発性疼痛様行動の増加が見られ、これは HC030031 の前投与で抑制された。
【考察】 OHP(1 mM)による hTRPA1 の開口は、処置時に発生した活性酸素種が hTRPA1 へ作
用したために引き起こされたと考えられる。OHP(100 µM)による TRPA1 の感受性増大は、2
時間培養中に細胞内の PHD が阻害され、それにより TRPA1 にある Pro 残基の定常的な水酸化
が解除されたためと考えられる。
【結論】 TRPA1 の阻害は OHP によって引き起こされる急性末梢神経障害に対して有効な治
療戦略となり得る。
- 24 -
一般演題7
神経障害性疼痛発症における脊髄グリア―ニューロンシャトルの関与
○ 宮本 啓補,飯尾 彩加,石倉
啓一郎,大澤 匡弘,粂 和彦
名古屋市立大学大学院薬学研究科 神経薬理学分野
【目的】
神経障害性疼痛は、脊髄や脳内でのグリア細胞やニューロンの機能変化により引き起こさ
れると考えられており、特に神経系の可塑的変化による中枢内での痛覚情報伝達の亢進に起
因すると考えられている。また、神経障害性疼痛の発現には、脊髄アストロサイトの活性化
が関与すると示唆されている。アストロサイトは細胞内に貯蔵するグリコーゲンを L-乳酸
に分解しニューロンへと供給する。この L-乳酸は神経伝達を亢進し、海馬における長期増
強反応にも必須であると報告されている。これらのことから、神経障害性疼痛の発現に、脊
髄アストロサイトからの L-乳酸の過剰放出が関与すると考えられることから、本研究では
神経障害による痛覚過敏に対する L-乳酸の役割を検討した。
【方法】
実験には、6-8 週齢の ddY 系雄性マウスを用いた。神経障害性疼痛モデルは Seltzer らの
方法に従い、左後肢の坐骨神経を 1/3-1/2 程度部分結紮して作製した。痛覚閾値は機械刺激
疼痛試験(von Frey test)により評価し、up-down 法により 50%閾値を計算した。
【結果および考察】
坐骨神経部分結紮後 3 日目から出現した機械刺激に対する反応閾値の低下は、グリコーゲ
ンリン酸化酵素阻害薬である 1,4-dideoxy-1,4-imino-D-arabinitol hydrochloride(DAB)
を髄腔内投与(i.t.)することにより有意に抑制された。また、乳酸をアストロサイトから
ニューロンへ輸送するモノカルボン酸トランスポーター阻害薬であるα-cyano-4hydroxycinnamate(4-CIN)を i.t. 処置することによっても痛覚閾値の低下が抑制され
た。これらのことから、神経障害性疼痛の発現にはアストロサイトから放出される乳酸が必
要であることが示唆された。次に、L-乳酸の痛覚閾値に対する影響を検討するため、健常マ
ウスへ L-乳酸(50-100 mg)を i.t. 投与して検討を行ったところ、投与後 60 分をピーク
として、用量依存的に機械刺激に対する反応閾値が低下した。これらの結果より、神経障害
により、脊髄におけるアストロサイトの活性化に起因する L-乳酸のニューロンへの過剰な
供給が起こるため、痛覚過敏が発現する可能性が示唆された。
- 25 -
一般演題8
糖尿病誘発性アロディニアに対する脊髄アンジオテンシン系の関与
○ 小潟 佳輝 1,根本 亙 1,中川 西修 1,八百板 富紀枝 1,只野 武 2,丹野 孝一 1
1
東北薬科大学 薬理学教室,2金沢大学医薬保健学総合研究科 環境健康科学講座
【目的】 糖尿病性神経障害は 1 型糖尿病患者の 60%以上に認められる合併症で、その多く
の場合、神経障害性疼痛を伴い、これが患者の QOL 低下を招く一因となっている。糖尿病の
ような高血糖状態では、アンジオテンシン(Ang)系が活性化しており、糖尿病性腎症および
網膜症などの合併症の原因となっている。しかしながら、糖尿病誘発性神経障害性疼痛にお
ける Ang 系の関与については未だ検討が行われていない。一方、本研究室ではこれまでに Ang
II が脊髄において痛みの伝達物質あるいは調節因子として機能している可能性を示唆してい
る[Mol. Pain, 9:38 (2013), Neurosci. Lett., 585:17-22 (2015)]。そこで、本研究では糖
尿 病 性神 経障 害性 疼痛に お ける 脊髄 内 Ang 系 の 関与 の可 能性 を明ら か にす るた め、
streptozotocin(STZ)誘発性 1 型糖尿病モデルマウスを用いて検討を行った。
【方法】 実験には、ddY 系雄性マウス(体重 26-30g)を用いた。1 型糖尿病モデルマウス
は、STZ(200mg/kg)を尾静脈投与にて作製し、von Frey filament 法により疼痛閾値を測定
した。脊髄内 Ang 系関連遺伝子の発現量は、リアルタイム RT-PCR 法により解析した。さらに、
脊髄内 Ang 系関連タンパク質の発現分布は、灌流固定後マウスの脊髄標本を作製し、
MapAnalyzer および共焦点顕微鏡を用いて解析した。
【結果・考察】 STZ 誘発性糖尿病モデルマウスでは血糖値の上昇に平行して、対照群と比較
して疼痛閾値の低下、すなわちアロディニアが認められた。最も顕著な疼痛閾値の低下が認
められた STZ 投与後 14 日目において、Ang II タイプ 2(AT 2 )受容体拮抗薬 PD123319 は抗ア
ロディニア作用を示さなかったものの、AT 1 受容体拮抗薬 losartan は対照群に影響を与えな
い用量で抗アロディニア作用を示した。糖尿病マウスの脊髄背側部における Ang 系関連遺伝
子の発現量を解析したところ、アンジオテンシノーゲン(AGT)
、Ang 変換酵素(ACE)および
AT 1A 受容体の mRNA 量が有意に増加していた。次いで、糖尿病マウスの脊髄後角における AT 1
受容体、AGT、Ang II および ACE の発現分布を解析したところ、AT 1 受容体および AGT の発現
量に変化は認められなかったが、Ang II および ACE に関しては対照群と比較して STZ 群にお
いて有意な発現量の上昇が認められた。さらに、ACE の発現分布を共焦点顕微鏡により解析し
たところ、ACE はグリア細胞ではなく、神経細胞特異的に発現していることが確認された。以
上の結果より、STZ 誘発性糖尿病マウスでは脊髄後角の神経細胞における ACE の発現量増加
に起因して Ang II の生合成が促進され、Ang II は AT 2 受容体ではなく AT 1 受容体に作用する
ことでアロディニアを引き起こしている可能性が示唆された。
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一般演題9
母子分離・社会隔離ストレスによる情動機能障害の出現および神経障害性疼痛の増悪
に対する青斑核領域アストロサイトの関与
○ 木下 恵,西中
崇,中本 賀寿夫,徳山 尚吾
神戸学院大学薬学部 臨床薬学研究室
≪背景≫
長期間におよぶ痛みは不安や抑うつなどの情動機能障害を引き起こし、また、これらの障
害によって更なる痛みの増悪が引き起こされることが知られている。このように、痛みは感
覚的および情動的な要因が互いに影響し合い制御されているが、その関係性についてはいま
だ不明な点が多い。そこで本研究では、情動機能障害による疼痛増悪のメカニズム解明を目
的とし、疼痛制御に密接に関わるとされているアストロサイトに着目した検討を行った。
≪方法≫
実験には ddY 系雄性および雌性マウスを使用し、母子分離・隔離飼育(MSSI)ストレスを
負荷した(Nishinaka T., Life Sci., 2015)
。不安様行動の評価には、高架式十字迷路試験
(EPM)を使用した。神経障害性疼痛モデルは坐骨神経を 1/3〜1/2 部分結紮(PSL)すること
で作製した。疼痛行動の評価に von Frey 試験(機械的刺激)を用いた。アストロサイトのマ
ーカータンパク質である glial fibrillary acidic protein(GFAP)発現変化は、ウエスタン
ブロット法および免疫組織染色法で検討した。生理食塩水またはリポポリサッカライド(LPS,
1 µg/mL)をラット大脳皮質由来培養アストロサイトへ添加した 24 時間後の培養上清は、両
側の青斑核領域へ 0.2 µL の容量で局所投与した。
≪結果≫
MSSI ストレス負荷によって、雌性マウスにおいてのみ不安様行動の増加が認められた。こ
の条件下において、雌性マウスでは青斑核領域の GFAP 発現量が有意に増加した。一方、雄性
マウスでは何らの変化も認められなかった。
PSL 処置後、機械的刺激に対する反応回数は、対照群に比較して MSSI ストレスを負荷した
雄性および雌性マウスとも有意な増加が認められた。同条件下において、青斑核領域の GFA
発現量は、ストレス負荷+偽手術群に比較して、雌性マウスにおいてのみ有意に低下した。
さらに、LPS 処置培養アストロサイト上清の青斑核領域への局所投与は、対照群に比較し
て、雄性・雌性マウスとも不安様行動を増加させた。
≪考察≫
MSSI ストレス負荷による青斑核領域のアストロサイトの活性化は、情動機能障害に関与し、
PSL 処置後の機械的アロディニアの増悪に影響を与える可能性が示された。また、この機構は
雄性および雌性マウスともに存在するものの、MSSI ストレス負荷に対しては雌性マウスにお
いて強く関与することが示唆された。
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一般演題10
リゾホスファチジン酸シグナル伝達系の情動行動に及ぼす検討
○ 塚越 麻衣 1,2,山田 美佐 1,後藤 玲央 1,岡 淳一郎 2,斎藤 顕宜 1,山田 光彦 1
1
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
2
東京理科大学薬学部 薬理学研究室
精神薬理研究部,
【目的】 これまで抗うつ薬・抗不安薬のセルトラリンを 4 週間慢性投与したマウス脳内に
おいて発現変化する遺伝子を探索してきた。その結果、リゾホスファチジン酸(LPA)シグ
ナル伝達系に関連する複数の遺伝子を得た。LPA は、G タンパク質共役型受容体(LPAR 1-6 )
を介して細胞内情報伝達系を亢進する脂質性メディエーターであり、末梢や中枢において、
多彩な生理活性を示す。しかし、情動行動に及ぼす LPA の影響は解明されていない。そこで
本研究では、LPA が情動調節に関与しているという仮説をたて、行動薬理学的手法により検
討した。
【方法】 実験には、雄性 C57BL6/N(6-8 週齢)マウスを用いた。LPA の情動行動への影響を
調べるために、LPA を脳室内投与し、投与 30 分後に自発運動量測定試験、ホールボード(HB)
試験、高架式十字迷路(EPM)試験、Y 字迷路試験を行った。また、LPA により引き起こされ
た情動行動変化が LPA 受容体を介するかを調べるために、LPA 受容体拮抗薬である BrP-LPA を
併用投与し、情動行動を検討した。次に詳細なメカニズムを調べるために、情動に重要な脳
部位である腹側海馬にガイドカニューレ留置手術をし、手術 7 日後に LPA または BrP-LPA を
局所微量投与し、EPM 試験を行った。
【結果】 ①脳室内投与による検討 :HB 試験において LPA 投与群では、投与 30 分後に穴覗
き回数が有意に増加し、穴を覗くまでの潜時が有意に短縮した。EPM 試験において LPA 投与
群では、投与 30 分後に open arm 滞在時間が有意に減少した。また、BrP-LPA 併用投与により
これらの LPA により引き起こされた情動行動変化は完全に消失した。自発運動量測定試験、
Y 字迷路試験において LPA 投与群は、薬物対照群に比べて変化がなかった。
②腹側海馬微量投与による検討 :EPM 試験において LPA 投与群では open arm 滞在時間率に変
化がなかった。また、BrP-LPA 単独投与群では、open arm 滞在時間率が有意に延長した。
【考察・結論】 脳室内投与による検討では、LPA は自発運動活性や記憶に影響することな
く LPA 受容体を介して不安様行動を惹起させることが明らかとなった。さらに、腹側海馬微
量投与による検討では、LPA は予想に反して情動行動に影響を与えなかった。これは、手術
により脳内で増加した LPA が、投与された LPA の作用をマスクした可能性が考えられる。一
方、BrP-LPA 単独投与は抗不安様作用を示すことが明らかとなった。これは、増加した内在
性 LPA の作用を拮抗することにより引き起こされた可能性が考えられる。本研究により、腹
側海馬における LPA シグナル伝達系が不安様行動の調節に重要な役割を果たしていることが
示唆された。
- 28 -
一般演題11
ストレス負荷が惹起するうつ様行動に対する PKC リン酸化制御の関与
〇 山本 文哉 1,肥田 裕丈 2,森
野田
健太郎 1,毛利 彰宏 1,石原 歩実 1,尾崎 紀夫 3,
幸裕 1,2
1
名城大学薬学部 病態解析学Ⅰ,2名城大学大学院薬学研究科 病態解析学Ⅰ,
3
名古屋大学大学院医学系研究科 精神医学
【目的】 セロトニントランスポーター(SERT)は SSRI に代表される抗うつ薬の主要な標的
分子であり、細胞膜上に存在する SERT はリン酸化されることによって細胞内に取り込まれ
る。SERT のリン酸化を促進する機構としてプロテインキナーゼ C(PKC)の活性化の関与が示
唆されているが、SERT の PKC リン酸化制御とうつ様症状との関連性については未だ明らかに
されていない。本研究では、マウスにおけるストレス負荷によって惹起されるうつ様行動に
SERT の PKC リン酸化制御が関与しているかどうか、行動学的および生化学的に検討した。
【方法】 行動学的検討:8 週齡の C57BL/6J 雄性マウスに強制水泳ストレスを 15 分間[PKC
活性化薬(PMA)および三環系抗うつ薬(イミプラミン)投与群]あるいは 5 分間[PKC 阻害
薬(チェレリスリン)投与群]負荷し、ストレス負荷マウスを作製した。翌日に強制水泳試
験、および社会性行動試験を連続して行い、各試験における無動時間を意欲の指標、および
社会行動時間を社会性の指標として、うつ様行動の発現程度を評価した。両行動に対する PMA
[片側脳内投与(急性)
、40 分後に強制水泳試験開始]、イミプラミン[腹腔内投与(急性)
、
30 分後に強制水泳試験開始]およびチェレリスリン[10 日間連続皮下投与、最終投与 60 分
後に強制水泳試験開始]の作用を検討した。
生化学的検討:行動学的検討と同様の動物種、投与時間・経路にて PMA とイミプラミン、チ
ェレリスリンを投与し、行動試験は行わずに前頭前皮質を摘出した。前頭前皮質におけるリ
ン酸化 PKC タンパク質の発現量をウェスタンブロット法にて測定した。
【結果】
強制水泳ストレス負荷マウスでは、強制水泳試験における無動時間の延長(意欲
低下)、および社会性行動試験における社会行動時間の短縮(社会性行動低下)を示し、うつ
様行動が認められた。これらの情動行動障害は、PMA やイミプラミンの急性投与により緩解さ
れたが、チェレリスリンを連続投与しておいたマウスでは増悪された。緩解作用を示した薬
物を投与したマウスの前頭前皮質におけるリン酸化 PKC タンパク質の発現量は増加しており、
増悪作用を示した薬物では発現量は減少していた。
【結論】 ストレス負荷によって惹起されるうつ様行動の発現には前頭前皮質における SERT
の PKC リン酸化制御が関与しており、PKC 活性化薬は新規抗うつ薬としての可能性が示唆さ
れた。
- 29 -
一般演題12
幼若期社会的敗北ストレス負荷による社会性行動障害におけるモノアミン作動性神
経の関与
○ 三宅 裕里子 1,長谷川 章 1,谷口 将之 1,毛利 彰宏 1,2,肥田 裕丈 3,吉見 陽 1, 4,
尾崎 紀夫 4,鍋島 俊隆 2,5,野田 幸裕 1,2,3
1
名城大学薬学部 病態解析学Ⅰ、2特定非営利活動法人医薬品適正使用推進機構、
3
名城大学大学院薬学研究科 病態解析学Ⅰ、4名古屋大学医学部 精神医学、
5
名城大学薬学部 地域医療薬局学
【目的】過度のストレスは、脳内モノアミン作動性神経に影響を与え、精神機能を障害し、
発達過程における環境的ストレスは精神疾患の発症リスクを高める。しかし、幼若期におけ
る環境ストレスが成体期の高次精神機能や脳内モノアミン作動性神経にどのように影響を与
えているかについては、不明な点が多い。本研究では、環境的ストレスとして社会的敗北ス
トレスを幼若期のマウスに負荷し、成体期における社会性行動や脳内モノアミン作動性神経
に及ぼす影響を検討した。
【方法】3 週齢の C57BL/6J 系雄性マウスを攻撃性の高い ICR 系雄性マウスと 1 日 10 分間、
10 日間連続して物理的に接触させることにより幼若期社会的敗北ストレス負荷マウスを作
製した。成体期における高次精神機能に及ぼす幼若期社会的敗北ストレス負荷の影響は、ス
トレス最終負荷の翌日と 29 日後の社会性行動試験における標的マウスへの社会性行動によ
り評価した。脳内モノアミン作動性神経に及ぼす影響は、高速液体クロマトグラフィーを用
いてモノアミン含量とそれら代謝物含量を測定し、モノアミン代謝回転(代謝回転率:対応
するモノアミン代謝物含量/モノアミン含量の比)により評価した。
【結果・考察】ストレス最終負荷の翌日と 29 日後の社会性行動試験において、対照群の標
的マウス存在下における交流区域滞在時間は、標的マウス非存在下のそれと比較して有意に
延長しており、社会性行動が認められた。しかし、ストレス負荷群では、交流区域滞在時間
の有意な延長は認められず、対照群のそれと比較して有意に短縮し、社会性行動障害を示し
た。社会性行動障害に対する三環系抗うつ薬や選択的セロトニン再取込み阻害薬の作用を検
討したところ、単回および 15 日間連続投与のいずれにおいても社会性行動障害に対して改
善作用は認められなかった。一方、ストレス最終負荷の翌日のストレス負荷群の前頭前皮質
や側坐核におけるセロトニン代謝回転は低下しており、側坐核ではドパミン代謝回転も低下
していた。しかし、幼若期社会的敗北ストレス負荷は、ノルアドレナリン代謝回転には影響
を与えなかった。
本研究により、幼若期社会的敗北ストレス負荷による社会性行動障害には、モノアミン作
動性神経の機能変化が関与している可能性が示唆されたが、その障害はモノアミンに作用す
る抗うつ薬に対して抵抗性であった。今後は、社会性行動障害に対するドパミン関連化合物
の作用や増強療法の反応性、さらに、新たな発現機序について検討する予定である。
- 30 -
一般演題13
Cholecystokinin-A 受容体を介する光刺激伝達経路に関する研究
○ 徳永 孝子,山川 裕介,小林
九州大学大学院薬学研究院
大介,窪田 敏夫,土持 有希,島添 隆雄
臨床育薬学分野
【目的】哺乳類の様々な生理現象には約 24 時間周期で変動するリズムが認められ、この概日
リズムを外界に合わせる機能を同調機能と呼ぶ。光による同調機能は体内時計の調節におい
て重要な役割を担っているが、光同調機能に関する因子や経路については未だ不明な点が多
い。我々は、これまで神経伝達物質として働く cholecystokinin(CCK)の受容体の一つであ
る CCK-A 受容体の光同調機能への関与について報告したが、その伝達経路は不明である。一
方、Ca2+結合蛋白質である Calbindin(CalB)は、光同調に関わる視交叉上核(SCN)に存在し、
神経線維を通って他の細胞に Ca2+を輸送するため、SCN 内の CalB の動態が光同調に関与する
と考えられる。c-fos 遺伝子は光刺激により神経細胞核内で発現誘導される重要な転写因子
である。しかしながら、光刺激伝達において CCK-A 受容体と SCN 内の CalB、Fos の関連性は
明らかになっていない。そこで本研究では、CCK-A 受容体欠損型マウスを用いて、SCN 内 CalB
陽性線維伸長および Fos 陽性細胞数を評価し、
CCK-A 受容体を介した光刺激伝達機能と CalB、
Fos の関連性について検討を行った。
【方法】雄性 C57BL/6J 野生型(WT)および CCK-A 受容体遺伝子欠損型(KO)マウスは、自由
摂食・摂水、12 時間明暗周期条件下で 1~2 週間飼育し、周辺環境へ同調させた。
CalB 陽性線維伸長の測定 :同調完了後、WT マウス、KO マウスともに Zeitgeber Time(ZT)
1, 4, 7, 10, 14, 18, 22 に脳を摘出し、免疫染色を行い、CalB 陽性線維が格子(50µm グリ
ッド線)を通過した回数を計測した。
Fos 陽性細胞数の測定 :同調完了後、2 日間恒暗条件下で飼育し、脳摘出 1 時間前に 10, 20,
100 lux の光を 15 分間照射し、Circadian Time(CT)14 に脳を摘出し、免疫染色を行い、SCN
内 Fos 陽性細胞数を測定し、コサイナー法で解析した。
【結果】CCK-A 受容体遺伝子欠損による CalB 陽性線維伸長の日内変動に与える影響 :WT マ
ウスでは CalB 陽性線維が格子を通過した回数に ZT 13.0 をピークとする日内変動がみられ
た。一方、KO マウスでは日内変動がみられなかった。
CCK-A 受容体遺伝子欠損が光刺激による Fos 発現に与える影響 :WT マウスと KO マウスとの
間に光刺激後の SCN 領域内の Fos 陽性細胞数に有意な差は認められなかった。
【考察】マウス SCN 内での CalB 陽性繊維の伸長の日内変動に、CCK-A 受容体が関与している
ことが示唆された。CCK-A 受容体は、グリシン作動性網膜アマクリン細胞上に多く発現してい
ることから、光情報はこのアマクリン細胞を経由し SCN 内で CalB に伝達され、他の細胞へ
Ca2+を伝達する経路が存在する可能性が考えられる。一方、光刺激による Fos の発現促進には
CCK-A 受容体が多く発現するグリシン作動性網膜アマクリン細胞とは関連のない経路が関わ
っている可能性が考えられる。
- 31 -
一般演題14
脳虚血性神経障害の発現に対する脳内 sodium-glucose transporter-1 の役割
○ 有田 恭子,山﨑 由衣,原田
慎一,徳山 尚吾
神戸学院大薬学部 臨床薬学研究室
【背景】
現在、脳梗塞の発症において、糖尿病または高血糖状態が重要な危険因子になることは良
く知られている。その一方で、脳梗塞発症後の糖代謝異常が、その予後の悪化に関与するこ
とは、一部臨床報告されているものの、その機序は依然として不明である。これまでに我々
は、局所脳虚血モデルマウスを用いて、脳虚血誘導性耐糖能異常の発現を介した神経障害の
発現に、脳内 sodium-glucose transporter(SGLT)が関与することを明らかにしてきた。し
かしながら、それに関与する脳内 SGLT のアイソフォームは不明である。本研究では、脳神経
上に発現することが報告されている SGLT-1 に着目し、脳虚血性神経障害の発現への関与につ
いて検討を行った。
【方法】
実験動物は 5 週齢の ddY 系雄性マウスを用いた。SGLT-1、NeuN および glial fibrillary
acidic protein(GFAP)のタンパク質発現は、二重免疫蛍光染色法または western blot 法を
用い解析した。脳内 SGLT-1 ノックダウンマウス(KD)は、SGLT-1 siRNA(2.5 µg/mouse)を
脳室内投与することで作成した。一過性局所脳虚血モデルは、2 時間の中大脳動脈閉塞法
(middle cerebral artery occlusion; MCAO)によって作成した。偽手術(sham)は、塞栓
子を挿入しないものとし、その他は MCAO と同様に行った。MCAO 1 日後の血糖値変化として
空腹時血糖値を測定し、MCAO 3 日後の梗塞巣形成および行動異常の発現は、2,3,5triphenyltetrazolium chloride 染色および神経学的欠損スコアを評価した。
【結果】
SGLT-1 は、虚血コア領域である大脳皮質および線条体において神経のマーカーである NeuN
と共局在したが、アストロサイトのマーカーである GFAP とは共局在しなかった。MCAO 6 時
間後の線条体において、sham 群に比較して、SGLT-1 発現の上昇傾向が認められ、MCAO 1 日
後の大脳皮質および線条体における SGLT-1 の発現は、有意に増加した。MCAO 1 日後におい
て、空腹時血糖値の有意な上昇が認められたが、SGLT-1 KD はその上昇に何ら影響しなかっ
た。一方、MCAO 3 日後に認められた梗塞巣形成および行動異常の発現は、SGLT-1 KD で有意
に抑制された。
【考察】
以上の結果から、脳虚血ストレス負荷後に上昇した糖が神経上に発現する SGLT-1 を介し
て、脳虚血性神経障害の発現増悪に関与する可能性が示唆された。
- 32 -
一般演題15
脳 虚 血 性 神 経 障 害 の 発 現 増 悪 機 序 に お け る に 対 す る 脳 内 sodium-glucose
transporter を介した Na+の細胞内流入の影響
○ 山﨑 由衣,原田 慎一,徳山
尚吾
神戸学院大学薬学部 臨床薬学研究室
【背景】
これまでに我々は、脳虚血ストレス負荷後に生じる血糖値の上昇が、脳虚血性神経障害の
発現を増悪させることを報告している。さらに、この増悪機序の一部に、脳内 sodium-glucose
transporter(SGLT)が関与することを示唆しており、SGLT を介した Na+またはグルコースの
過剰な細胞内流入が神経細胞死を誘導する可能性を見出してきた。しかしながら、脳虚血性
神経障害に対する細胞内に流入した Na+ またはグルコースの直接的な関与については不明で
ある。そこで今回、SGLT を介した Na+の細胞内流入のみに着目して検討するために、非代謝性
のグルコースアナログで、SGLT によって特異的に輸送されることが知られている alpha-Dmethylglucoside(α-MG)を用いて、SGLT を介した Na+の流入の神経障害発現への関与につい
て検討を行った。
【方法】
胎生 18 日齢の ddY 系マウスの大脳皮質神経初代培養を用いた。細胞播種後 5 日目にα-MG
(0.1, 1, 10, 100 µM)および SGLT 特異的阻害剤である phlorizin(PHZ; 50, 100 µM)を
添加し、24 時間後に細胞生存活性の評価を行った。一過性局所脳虚血モデルマウスは、5 週
齢の ddY 系雄性マウスに中大脳動脈閉塞(middle cerebral artery occlusion: MCAO, 2 hr)
を施し作成した。MCAO 1 日後に空腹時血糖値変化、梗塞巣形成および行動異常の評価を行っ
た。α-MG(2.5, 5.0 µg/mouse)は再灌流直後および 6 時間後に脳室内投与した。
【結果】
α-MG 処置によって濃度依存的な神経生存率の有意な低下が生じ、この低下は PHZ の共処
置によって濃度依存的に改善した。また、α-MG の脳室内投与は、MCAO 1 日後の空腹時血糖
値変化には影響せずに、用量依存的に神経障害の発現を増悪させた。
【考察】
以上の結果から、SGLT を介した Na+ の過剰な細胞内流入が、脳虚血性神経障害の発現を増
悪させる可能性が示唆された。
- 33 -
一般演題16
ショウジョウバエによる摂食行動と睡眠の関係
○ 長谷川 達也 1,橋本
梨菜 2,林
里花 1,冨田 淳 1,井田 隆徳 3,粂 和彦 1
1
名古屋市立大学大学院薬学研究科
2
熊本大学発生医学研究所 多能性幹細胞分野,
3
宮崎大学フロンティア科学実験総合センター 生理活性ペプチド探索分野
神経薬理学分野,
摂食行動と睡眠は、哺乳類やショウジョウバエで密接な関係があるといわれている。われ
われ人間は満腹のときには眠気を感じる。哺乳類では、オレキシンという摂食中枢(視床下
部外側野)に発現している生理活性ペプチドは、ナルコレプシーの病原遺伝子として知られ
ている。ハエは絶食時に睡眠量が減る。しかしながら、摂食が睡眠を調節するメカニズムは
まだ知られていない。われわれは、食物の栄養や味が睡眠の調節に重要であるという仮説を
立てた。本研究では、ショウジョウバエを用いて睡眠時における栄養や味の影響を調べた。
絶食により引き起こされる睡眠の低下は、アラビノースやスクラロースのような甘みがある
が栄養のない人工甘味料により戻される。一方では、ソルビトールのような栄養があるが甘
味のないソルビトールのような糖類では睡眠の低下は戻らなかった。これらの結果から、味
が睡眠において重要なファクターであることが示唆された。また、われわれは生理活性ペプ
チドの CCHamide-1、CCHamide-2 の関係も調べた。これらのペプチドは、ボンベシン受容体サ
ブタイプ 3(BRS-3)に似ている G タンパク質共役型のオーファン受容体のリガンドとして同
定されている。BRS-3 のノックアウトマウスは野生型のマウスよりも摂食量が増加すること
が報告されている。CCHamide-1、CCHamide-2 が摂食や睡眠に関係があると仮定し、ショウジ
ョウバエを用いてそれらの機能を調べた。以前行った実験結果から、CCHamide-2 を過剰発現
させたハエでは野生型と比べて日中の睡眠量が減少することが示唆されていた。さらに、今
回の実験では絶食により引き起こされる睡眠量の低下が野生型のハエと比較してより大きか
った。これらの結果から、CCHamide が摂食と睡眠において重要な役割を担っている可能性が
示唆された。
- 34 -
一般演題17
神経系アミノ酸トランスポーターによるショウジョウバエの睡眠-覚醒制御
◯ 冨田 淳 1,上野
太郎 2,山本 昇平 1,中根 伸 1,粂 昭苑 3,粂 和彦 1
1
名古屋市立大学大学院薬学研究科
2
東京都医学総合研究所 運動・感覚システム研究分野,
3
東京工業大学大学院生命理工学研究科 生命情報専攻
神経薬理学分野,
ショウジョウバエ Drosophila melanogaster で観察される 5 分間以上継続する不動状態は、
哺乳類の睡眠と行動学的に類似する。また、ショウジョウバエと哺乳類の間では、多くの共
通な分子が睡眠-覚醒制御に関わることから、ショウジョウバエは睡眠-覚醒制御の分子メカ
ニズム解明のモデル系として注目されている。
我々は、これまでに睡眠量が顕著に少ない fumin 変異体を単離し、その原因遺伝子として
ドーパミントランスポーターを同定した。さらに、脳の扇状体とよばれる部位に投射するド
ーパミンニューロンによって睡眠-覚醒が特異的に制御されることも示した。ドーパミントラ
ンスポーターが属する Na+/Cl- 依存性トランスポーターファミリーには、セロトニンや GABA
のトランスポーターが含まれ、それらの神経伝達物質もショウジョウバエの睡眠-覚醒制御に
関与することが報告されている。そこで本研究では、睡眠-覚醒制御に関わる新たな遺伝子の
同定を目的とし、このトランスポーターファミリーのメンバーで、中枢神経系に広範に発現
するアミノ酸トランスポーターに着目した。それらのアミノ酸トランスポーターをコードす
る遺伝子の一つを全神経でノックダウンしたところ、睡眠量が著しく減少した。さらに、特
定の神経細胞群でノックダウンした結果、グルタミン酸作動性またはコリン作動性ニューロ
ンのみで睡眠量が有意に減少した。このアミノ酸トランスポーターの哺乳類ホモログはプロ
リンやロイシンなどの中性アミノ酸を輸送することが報告されている。そこで、遊離プロリ
ン量が増加するプロリン異化酵素の突然変異体の睡眠量を調べたところ、顕著に増加してい
た。以上の結果から、プロリンによるショウジョウバエの睡眠-覚醒制御が示唆された。
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一般演題18
白血球 mRNA を指標にした抑うつ症状マーカーの同定と動物モデルへの応用
○ 宮田 茂雄, 福田 正人, 三國
雅彦
群馬大学大学院医学系研究科 神経精神医学分野
【目的】
現在の精神科診療において、臨床マーカーとして保険診療上利用可能なものは近
赤外線スペクトロスコピー(NIRS)によるうつ状態の鑑別補助診断のみであり、精神疾患バ
イオマーカーの更なる開発が求められている。一方、実験動物を用いた薬理学研究では、動
物が呈するある種の行動異常を抑うつ様症状と定義して抗うつ薬の薬効評価の指標にしてい
るが、その評価系の妥当性については否定的な意見も多い。これらの問題を解決するには、
ヒトと動物とで共用できる抑うつ(様)症状のバイオマーカーを見出す必要がある。本研究
では、うつ病患者と実験動物の白血球における遺伝子発現プロフィールを照合することで抑
うつ(様)症状マーカーの同定を試みた。
【方法】 50 歳以降にうつ病を発症した中高年齢のうつ病患者をリクルートした。また、精
神疾患既往歴の無い中高年者を健常対照群とした。実験動物には 8 週齢の雌性 C57BL/6J マウ
スを使用し、卵巣摘除後に慢性変動ストレスを 6 週間にわたり負荷したものを中高年発症う
つ病の病態の一側面を表現したモデルと定義した。ヒトおよびマウスの血液を採取し、白血
球から RNA を抽出してそれぞれマイクロアレイ解析した。ヒトとマウスそれぞれの遺伝子発
現プロフィールを照合し、増減が一致する遺伝子をバイオマーカー候補とした。バイオマー
カー候補遺伝子の発現量を定量的 PCR 法により解析し、その発現レベルを指標にして抑うつ
(様)症状の判別力を評価した。
【結果・考察】 ヒト白血球 RNA サンプルをマイクロアレイ解析した結果、3,066 プローブが
抑うつ症状依存的に発現変動することが明らかになった。次に、マウス白血球 RNA サンプル
をマイクロアレイ解析した結果、637 プローブがモデル動物特異的に発現変動することが明
らかになった。この 2 つの発現変動遺伝子情報を照合し、増減の一致した 14 種の遺伝子をバ
イオマーカー候補とした。これら候補遺伝子のヒト白血球における発現量について定量解析
した結果、抑うつ症状の有無を高い判別力で分類できる 4 種の遺伝子が同定された。これら
4 種のバイオマーカー遺伝子のうち、1 つの遺伝子はモデル動物の白血球において有意に発現
増加しており、抗うつ薬である escitalopram(2 mg/kg/day for 3 weeks)の処置により正常
化した。本研究により、抑うつ症状の有無を高い判別力をもって分類できるバイオマーカー
が同定された。また、このバイオマーカーは実験動物に対して応用可能であることを示した。
このバイオマーカーの利用により、うつ病の鑑別補助診断ならびに新規抗うつ薬の創製が可
能になると考えられる。
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一般演題19
Mecp2 ヘテロ欠損雌マウスにみられた CCK 腹腔内投与による摂餌抑制の低下
○ 滝口 旗一 1,三枝 禎 2,青野 悠里 2,白川 哲夫 1
1
日本大学歯学部 小児歯科学講座,2日本大学松戸歯学部 薬理学講座
【目的】 Mecp2 は、DNA のメチル化を介したエピジェネティクス機構で主たる役割を担う
メチル化 DNA 結合タンパク(MeCP2)をコードする遺伝子である。MeCP2 はおもに神経細胞
に認められ、選択的に視床下部の Mecp2 を除去したマウスでは摂餌量と体重が増加する
(Feyffe et al., Neuron, 2008)。また、Mecp2 ノックアウトマウスでは脳内モノアミン神経
の異常が認められる(Santos et al., Neuroscience, 2010)。我々はこれまで Mecp2 ヘテロ
欠損雌マウス(Mecp2+/-)は、生後 3 カ月頃から週間摂餌量が増すとともに肥満を起こす
ことを示している。視床下部外側野(LHA)のノルアドレナリン(NA)神経は摂餌行動を抑
制的に制御する可能性があるが、摂食抑制ペプチドの cholecystokinin(CCK)の腹腔内投与
によるこの NA 神経の促進作用が Mecp2+/-では wild type(WT)よりも弱いことも我々は
報告している(Takiguchi et al., J. Pharm. Sci., 2012)
。これらのことから Mecp2+/-
では CCK による摂餌抑制効果は低下していることが考えられる。そこで本研究では Mecp2+
/-の摂餌に対する CCK の効果について検討した。はじめに Mecp2+/-の一日の摂餌の特徴
について、WT と比較して解析した。さらに摂餌制限した Mecp2+/-で認められた摂餌促進
に対する CCK 腹腔内投与の効果について検討を加えた。
【方法】 実験には、約 50 週齢の Mecp2+/-(体重約 50 g)または WT(体重約 30 g)を用
いた。摂餌制限しない個体と 20 時間の摂餌制限をした個体を用い、暗期(19 時)と同時に摂
餌量の測定を開始した。あらかじめ計量した固形飼料をホームケージ内の動物に提示しこの
餌の減少量を摂餌の指標として 1、2、4、24 時間の各時点で計測した。食べこぼしの有無は
弱い照明下で目視にて確認した。CCK(10 µg/kg)は saline に溶解し、測定開始直前に腹腔
内投与した。対照として溶媒の saline を投与した。
【結果・考察】 摂餌制限しない場合、Mecp2+/-では餌提示から 4 時間以内の摂餌が WT よ
りも減少していた。24 時間摂餌量は Mecp2+/-の方が WT よりも多い傾向を示した。20 時間
の摂餌制限の結果、
餌提示から 4 時間以内に Mecp2+/-に WT と同程度の摂餌が認められた。
20 時間にわたり摂餌制限した個体に CCK を投与したところ、Mecp2+/-、WT とも餌提示から
2 時間の摂餌が減少した。しかし、CCK 処置が Mecp2+/-の摂餌に示した作用は WT とは異な
り統計学的に有意ではなかった。
以上の結果から Mecp2+/-では、腹腔内投与された CCK による摂餌抑制が減弱しているこ
とが示唆された。また Mecp2+/-の肥満には、この CCK 処置で活性化される LHA における NA
神経活動の低下が関与している可能性が考えられた。
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一般演題20
幼若期薬理学的ストレスによる成長後の行動学的応答性
○ 山口 拓 1,吉岡充弘 2,山本経之 1
1
長崎国際大学薬学部 薬理学研究室,2北海道大学大学院医学研究科 神経薬理学分野
【目
的】
過度で持続的なストレスへの曝露はストレスに対する適応反応の破綻を誘引し、特に幼児・
児童期に受けるとその後の脳機能発達に影響を及ぼし、うつ病や不安障害などの精神疾患の
成因に深く関与することが指摘されている。本研究では、HPA axis の中心的なストレスホル
モンの一つである ACTH の幼若期反復投与処置による「幼若期薬理学的ストレス負荷ラット」
を作製し、幼若期に受けたストレスが成長後の行動学的応答性に及ぼす影響について検討し
た。
【実験方法】
離乳した幼若期(3 週齢)の Wistar 系雄性ラットに、ACTH の活性アナログである酢酸テト
ラコサクチド(30 あるいは 100 µg/rat)を 5 日間反復皮下投与した(ACTH 群)
。対照群とし
て生理食塩水を同様に投与した。ACTH の効果を検証するために血漿中コルチコステロン(CS)
濃度を酵素免疫測定法によって測定した。発達期(6 週齢)および成熟期(10 週齢)におい
て、行動学的検討として①自発的交替行動試験(Y-maze 試験)、②オープンフィールド(OF)
試験、③高架式十字迷路(EPM)試験を実施し、本モデルラットの行動学的応答性を評価した。
【実験結果】
3 週齢時における ACTH 100 µg の単回投与は、対照群と比較して血漿中 CS 濃度を有意に増
加させた。その後の ACTH の反復投与 5 日目では投与初日と比較して血漿中 CS 濃度は約 2 倍
まで上昇した。この幼若期 ACTH 反復投与ラットの成長後の行動変容について、①Y-maze 試
験:10 週齢時の ACTH 群にのみ自発的交替行動率の有意な減少が認められた。②OF 試験:6 お
よび 10 週齢時とも ACTH 100 µg 投与群では 30 分間の総移所運動量が有意に減少した。③EPM
試験:10 週齢時にのみ ACTH 100 µg 投与群における open arm の滞在時間が有意に減少した。
【考察および結論】
ACTH 群の成熟期では、Y-maze 試験から短期記憶障害、EPM 試験から不安様行動を発現して
いる可能性が考えられた。
いずれの場合も発達期では変化がなかったことから、幼若期の ACTH
による HPA axis の擾乱は、成長後に認知・情動行動障害を発現すること、またその行動異常
の発現には時期特異性があることが明らかとなった。
- 38 -
一般演題21
リン酸化 Girdin による神経可塑性の制御
○ 永井 拓 1,中井 剛 1,田中 基樹 2,浅井 直也 3,榎本 篤 3,曽我部 正博 2,
高橋
雅英 3,山田
清文 1
名古屋大学大学院医学系研究科
2
1
医療薬学・附属病院薬剤部,
3
メカノバイオロジー・ラボ, 腫瘍病理学
海馬神経細胞におけるシナプス可塑性は様々な記憶の形成に関与していると考えられている。
海馬のシナプス可塑性に関与するシグナル伝達として BDNF/TrkB/Akt 経路が重要であること
が報告されているが、リン酸化酵素である Akt がどのように神経可塑性を制御しているかは
不明である。一方、Girders of actin filament(Girdin)は、細胞骨格のリモデリングや細
胞運動性に関与するアクチン結合性タンパク質であり、Girdin のアミノ酸 1416 番目セリン
残基のリン酸化(Ser1416)が Akt の基質となることが同定されている。しかしながら、脳内
におけるリン酸化 Girdin の役割については未解明な点が多い。本研究では、神経可塑性にお
けるリン酸化 Girdin の役割について 1416 番目のセリン残基をアラニン残基に置換した
Girdin knockin(Girdin SA)マウスを用いて神経化学的および行動薬理学的に検討した。海
馬培養神経細胞を BDNF で刺激すると Girdin のリン酸化が亢進し、BDNF 刺激に伴うリン酸化
Girdin の亢進は Trk、PI3-K または Akt 阻害薬の前処置により抑制された。Girdin SA マウス
の海馬歯状回において顆粒神経細胞のスパインの萎縮が認められた。Girdin SA マウスの海
馬スライスでは、野生型マウスと比較して高頻度刺激により誘発される長期増強が有意に減
弱しており、NMDA/AMPA 比の減少が観察された。野生型マウスの海馬由来初代培養神経細胞に
BDNF を処置すると NMDA 受容体 NR2B サブユニット(Tyr1472)のリン酸化レベルが増加した
が、Girdin SA マウスでは BDNF を処置しても有意な変化は認められなかった。HEK293T 細胞
において、Girdin と NMDA 受容体 NR2B サブユニットおよび Src キナーゼとの共免疫沈降が認
められ、Fyn キナーゼでは Girdin との相互作用は認められなかった。さらに、新奇物体認知
記憶試験、恐怖条件付け試験およびモーリス水迷路試験において、Girdin SA は学習・記憶障
害を示した。野生型マウスの海馬では、恐怖条件付け試験の訓練試行後に、NMDA 受容体 NR2B
サブユニット(Tyr1472)および Girdin(Ser1416)のリン酸化レベルが有意に増加した。以
上の結果から、海馬における神経可塑性には Girdin のリン酸化が重要な役割を果たしてお
り、BDNF シグナルの下流で Girdin が NMDA 受容体を介した神経可塑性を制御していることが
示唆された。
Nakai T, Nagai T, Tanaka M, et al. J. Neurosci. 34:14995-15008, 2014.
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謝
辞
本会の開催にあたり、下記の企業より多額のご寄付をいただきました。
ここに深甚なる感謝の意を表します。
日本ケミファ株式会社
また、下記の企業よりご協賛をいただき、心より感謝の意を表します。
株式会社ケミカルサービス・スナダ
株式会社新薬リサーチセンター
株式会社ニューロサイエンス
株式会社矢沢科学
テルモ株式会社
ヤンセンファーマ株式会社
五十音順
下記の学会よりご後援をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。
日本薬学会
日本薬理学会
五十音順
公益財団法人 大幸財団より助成をいただきました。
ここに厚く御礼申し上げます。
第 24 回神経行動薬理若手研究者の集い事務局
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行動薬理若手研究者の集いの軌跡
開催日
世話人
所属
第 1 回 1992.3.21 小野寺憲治 東北大学・歯学部・
場所
テーマ
仙台・艮陵会館
脳内ヒスタミンと機能との関連
薬理学教室
第 2 回 1993.3.21
鈴木勉
について
星薬科大学・
東京・星薬科大学
脳内ドパミンニューロンと機能
大阪大学・医学部・
大阪・ライフサイエンス
食欲・性欲・睡眠欲
医用物理学研究室
センター
毒性学教室
第 3 回 1994.3.20 大和谷厚
第 4 回 1995.3.24 大熊誠太郎 京都・京都府立医科
京都・京都府立医科大学
アルコールと依存症
九州大学・薬学部・
福岡・福岡市健康つくり
病態モデル動物の特性と
薬理学教室
センター”あいれふ”
その薬理学的応用など
日本大学・歯学部・
東京・
脳内ドパミンと行動異常
薬理学教室
アルカディア市ヶ谷
愛媛大学・医学部・
大阪・大阪大学医学部・
モノアミンニューロンと
薬理学教室
銀杏会館
脳の基調活動
札幌医科大学・
札幌・
脳内神経系と学習・行動
医学部・精神科
北海道大学学術交流会館
東京医科大学・
東京・東京医科大学病院
薬理学講座
臨床講堂
日本大学・薬学部・
船橋・
薬理学教室
日本大学薬学部ホール
徳島文理大学・
福岡・九州大学コラボ・
行動する脳の
薬学部・医療薬学講座
ステーション・
機能解明を目指して
大学・薬理学教室
第 5 回 1996.3.19 山本経之
第 6 回 1997.3.21 越川憲明
第 7 回 1998.3.22 前山一隆
第 8 回 1999.3.21 斎藤利和
第 9 回 2000.3.22 武田弘志
第 10 回 2001.3.20 伊藤芳久
第 11 回 2002.3.12 岡野善郎
脳科学の新たな展開を考える
脳科学-世紀を越えて
視聴覚ホール
第 12 回 2003.3.23 島添隆雄 九州大学大学院・薬学 福岡・福岡市健康つくり 脳に挑む-脳機能解明の新たな
第 13 回 2004.3.7
福井博行
第 14 回 2005.3.21 溝口広一
研究院・薬効解析分野
センター”あいれふ”
る飛躍を目指して
徳島大学・薬学部・
神戸・神戸市立王子
創薬のために行動薬理を
薬物学教室
動物園・動物園ホール
どのように活用するか?
東北薬科大学・
横浜・横浜市教育会館
ミクロの世界で得られた情報を
機能形態学教室
マクロの世界において
有効に活用する
第 15 回 2006.3.7
上野光一 千葉大学大学院・薬学
千葉・千葉大学
医療安全を確保するための
研究院・
西千葉キャンパス
神経行動薬理学の展開
高齢者薬剤学教室
けやき会館
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開催日
世話人
第 16 回 2007.3.13 野田幸裕
所属
場所
テーマ
名城大学大学院・
名古屋・
モデルから分子を解き、
薬学研究科・
名古屋国際会議場
治療戦略を探る
日本大学・医学部・
横浜・
中枢神経系領域の
脳神経外科学教室
横浜情報文化センター
基礎と臨床の融合
東京医科大学・
横浜・
精神神経疾患における
病態解析学教室
第 17 回 2008.3.16
小嶋純
第 18 回 2009.3.19 稲津正人
薬理学講座
横浜情報文化センター グリアおよびトランスポーター
研究の重要性とその魅力
第 19 回 2010.3.15 十川紀夫
第 20 回 2011.3.
丹野孝一
第 21 回 2012.3.13 石塚智子
岡山大・院・医歯薬
岡山・
神経行動薬理-他分野との
総合・歯科薬理学分野
岡山国際交流センター
連携と融合
東北薬科大学・
東日本大震災により
神経行動薬理学による
薬理学教室
中止・誌上発表
医薬品の開発につい
大阪歯科大学・
京都・コープイン京都
疾患の治療戦略と QOL の向上を
歯学部・ 薬理学講座
第 22 回 2012.3.20
山口 拓
第 23 回 2014.3.18 櫻井映子
第 24 回 2015.3.17 大澤匡弘
目指したアプローチ
長崎国際大・薬・薬理
福岡・九州大学
次世代に向けての
コラボステーション
神経行動薬理学
いわき明星大学・
仙台・艮陵(ごんりょう)
再会;情動変化をとらえて
薬学部
会館(記念ホール)
次世代へつなぐ
名古屋市立大学
名古屋・
Generation Shift: From
大学院・薬学研究科・
名城名駅サテライト
molecular to systems
神経薬理
(MSAT)
~時代の変遷:
分子から回路へ~
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