日本連盟前副会長 岡智子さん NHK で「国際理解教育」を語る ガールスカウト日本連盟の前副会長 岡智子さんが、2014 年 7 月 27 日 NHK World で放映され た TV 番組「Living Beyond Boundaries」に出演しました。番組では「国際理解教育」のテーマの元、 教育の現場で活躍する 3 名のヒーローを取り上げ、彼らの体験や言葉に対し、ゲストとして登場す るアグネス・チャンさん(以下 C)、岡さん(以下 O)、そして司会のモーリー・ロバートソンさん(以下 R)がディスカッションし、国際理解を深めるための教育とはどのようなものかを探りました。 青年海外協力隊や国連児童基金(ユニセフ)で活躍されていた岡さんが、初めて海外へ出たの は 17 歳の時、ガールスカウトの国際交流プログラムで訪れたクロアチア(当時のユーゴスラビア) でした。このプログラムに参加し、さまざまなバックグランドを持つ人たちと出会い、心を開いてコミ ュニケーションをとることの大切さを実感したそうです。そして、国籍が違ってもわかり合えること、 物事の見方は多様だということを、身をもって学んだといいます。こうした経験が、岡さんが国際協 力の道を歩むきっかけになりました。 最初のヒーロー、浅見さんは中国で日本式の幼児教室を立ち上げました。自分のことは自分で するということを中国の子どもたちに教えるこの教室は大変人気があります。また、その教室には 日本の子どももいるので、日中両国の子どもが一緒に遊び学ぶ場となっています。岡さんのお嬢 さんはまだ 1 歳半ですが、日本でイギリス式幼児教室に週 1 回 1 時間通っています。 O:「娘はいろいろな国籍の先生のもと、さまざまなバックグラウンドのお子さんたちと一緒に遊ん だり、違う文化に触れたりしています。」 R:「そうした体験はお嬢さんにどんな影響を与えているでしょう?」 O:「誰とでもお友だちになれるようになっていると思います。」 C:「そういう異文化体験をしたお子さんは、見た目で他人を判断しませんよね。」 R:「そうやって大きくなっていくでしょ、それはすばらしいですね。実は、ぼくは正反対の経験をして るんです。小学校 5 年生の時、インターナショナルスクールから広島の公立小学校に転校したん ですけど、そこの学校にアメリカ人は僕しかいなかった。そして僕に対して『帰れコール』が起こっ たんです。この出来事の後、校長先生が全校生徒にこう言ったんです。『この学校には外国人の 生徒がいます。校長先生はみなさんに、どんな国の人とも友達になってほしいと思っています。』 その日から誰も僕に帰れなんて言わなくなり、仲良くしてくれるようになりました。校長先生がみん なの考え方を変化させたのです。広島という土地柄、戦争のこともあったと思うのですが、偏見や 国境を越えて、みんなで一緒に学校生活をやっていくっていうことが、これをきっかけにできるよう になったんです。その学校の生徒たちにとってはこれが外国人を受け入れる初めての経験だった のだと思います。僕もこの学校で生涯の友達に出会うことができました。」 2人目のヒーローはスリランカ出身のにしゃんたさん(以下 N)。社会学者として日本の大学で教 鞭をとり15年になります。にしゃんたさんは経済大国日本に憧れ、日本の文化に魅了され、日本 国籍を取得しましたが、その生活が長くなるにつれ、外国人に対する日本人のあり方に歯がゆさ を感じるようになりました。そしてにしゃんたさんは、社会に出ていく日本人学生たちに外国への固 定観念なくしてほしいと、身近なところからの国際理解を提案する意味で、献血ルームに連れて行 きます。「人間社会にはいろんな垣根がありますが、血っていうのはそういうことを気にしない。外 国人も日本人も、人間は人間なんだと気付かせてくれるんです。」 R:「にしゃんたさんは献血で国境を超えさせているんですね。」 N:「献血はたまたまそういう活動なんですが、国際理解は行動を通してこそ育まれると思ってます。 僕の大学には留学生がたくさんいますが、教室の中では何も言わないと、留学生と日本人学生が 別々のグループになっちゃうんです。それは日本社会の縮図みたい。だから、僕は無理やり日本 人学生と留学生を隣同士に座らせます。混ぜ混ぜにならないとだめなんです。」 O:「そういう環境を与えて、生徒はいい影響を受けているんじゃないでしょうか。」 N:「同質なものが一緒になったところでは量的な膨張しか生まれない。そこに異質なものが入って くると進化、変化、イノベーションが生まれるんです。」 C:「さっきも言ったように、できるだけ早い年齢でというのも大事ですね。」 N:「大学まで待たずに、それこそ早ければ早いほど、国際理解というのは身体で覚えると思いま す。」 3人目のヒーローは横浜の市立小学校で働く菊池先生(以下 K)。この学校では、全生徒のおよ そ半数が、ベトナム、中国、カンボジアなど10カ国からの子どもたちです。菊池先生は11年間、 外国からの転入生に日本語を教えています。この学校をハブとして、地域でも日本人と外国人が 自治会などで一緒に活動する機会が生まれています。 R:「この学校はまさに将来の移民大国ニッポンの姿を見ているような気がしました。そういう未来 の現実を先取りしているこの子どもたちは貴重ですね。」 C:「今までの国際化って、人種のるつぼみたいにみんなで集まって、ひとつのスープにするという ものだったと思いますが、これからはサラダだと思うんです。トマトはトマト、レタスはレタス、みん なのいいところが集まって、良さを保ちながらサラダができればいい。ベトナム人はベトナム人らし く、日本人は日本人らしく、サラダの中で輝けばいいんだという、そういうアイデンティティ教育が大 切だと思います。みんな自信つきますし。」 R:「サラダを作る時に、日本はボウルなんだから、日本はその器を広げないとダメだと思います。 どうやったら日本は柔らかくできるんでしょうか。」 K:「ヒントは(地域)住民のみなさんのインタビューにあったと思います。20年くらい前は『郷に入 れば郷に従え』という日本人もいたし、『日本人だってだめなところがあるじゃないか』という外国人 もいた。でも、今や『外国の人がいるからこの団地は楽しいんだよ』『外国の若い人たちに助けら れてるんだよ』という思いが住民にも根付いてきていて、学校も参画し、地域ボランティアや行政 がひとつになって多文化共生の街づくりができてきていると思います。」 R:「混ざるの、いいですよね。」 O:「わたしの夫はエクアドル人で、初の外国人社員として日本の会社に入りましたが、外国人と日 本人が一緒に仕事をすることで生まれる良い影響があったようで、今ではその会社にも多くの外 国人社員が働くようになりました。一人の人でも変化を生み出すことはできるし、一歩踏み出すこ とで違った価値が生まれることはあると思います。」 日本の国際理解教育は、違う環境や文化、人それぞれのもつアイデンティティを受け入れ、理 解することを柱に、少しずつ進化しています。岡さんは、幼い頃からガールスカウト活動を通してさ まざまな異文化理解を深めてきました。そうした経験が礎となりイギリス・アメリカへ留学し、社会 人になって青年海外協力隊のボランティアとして南米のエクアドルに駐在後、国連児童基金に勤 務しました。ガールスカウト経験があったからこそ、今の岡さんがあり、今回の番組出演につなが ったのだと思います。また、国際理解を深め、互いを引き立てあうのに大切なことについて、岡さ んはこう表現しています。「国連ではさまざまな国の人々が一緒に働きます。国籍に関係なく、気 が合う人もいれば、そうでない人もいます。プロフェッショナルとして、どんな人とも上手くやってい かなければなりません。最終的には国籍ではなく、その人の人間性が大切なのだと思います。」 ガールスカウトの皆さんは、日頃、どのような「国際理解・多文化理解」を試みていますか? 番組内で、にしゃんたさんが研究の一環で日本の外国人コミュニティの現状を調べにいくと、日 本で暮らしていてもなかなか日本人の友だちができないと悩む外国人がいるというお話がありまし た。例えば、ガールスカウトの強みである地域での活動の一環として、みなさんも、地域に住む外 国人の方を地域のお祭りにお誘いしたり、集会に招いたりしてその方の国の文化について学ぶ機 会をもつなど、ガールスカウト活動を通してできる身近な多文化理解を団で考えて、日頃実践して みてはいかがでしょうか? 岡さんは、ガールスカウトのみなさんから、こうした「国境を越えて活躍する人々」がたくさん生ま れていくことを願っています。 放送終了後、岡さんは番組出演の感想をこう語っていました。「ガールスカウトのお蔭で、テレビ 番組に出演するというありがたいお話を頂き、感謝しております。素晴らしいスタッフと出演者の方 に囲まれた素敵な時間でした。久しぶりに英語を話したので、ちょっとつまってしまった時、アグネ スさんが可愛い小声で「がんばれ」と言ってくださり、優しいお人柄に感激しました。ガールスカウト の皆様、特に若い女性と少女たちの中から、さまざまな機会を捉えて社会に意見を発信していく 人が増えて欲しいと思います。」 撮影当日の様子はアグネス・チャンさんのブログでも紹介しています。 http://s.ameblo.jp/agneschan/entry-11890358032.html 2015 年 1 月 24 日放送の NHK World「Living Beyond Boundaries」は「国際結婚」がテーマで、今 度は岡さんご夫妻がヒーローの立場で出演されます。 ※4 回放映予定 1 月 24 日 13 時 10 分 / 19 時 10 分/ 25 時 10 分/ 1 月 25 日(日)7 時 10 分 ※放送はウェブサイトで視聴できます http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/ ※アプリをダウンロードすると携帯電話でも視聴可能です 番組 URL http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/tv/special/living_beyoud.html
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