2015年経済見通し

日本記者クラブ
研究会「2015 年経済見通し」
デフレからの脱出
アベノミクスを信用するが確認も必要
ロバート・フェルドマン
モルガン・スタンレーMUFG証券チーフエコノミスト
2015年1月28日
フェルドマン氏は 2015 年の日本経済について楽観的な見方を示した。米国や途上
国の経済は総じて良い見通しで、円安や原油価格の下落も日本経済を後押しする。賃
金も労働力不足を背景にすでに上昇しはじめ、日本の株価にも楽観的だ。最大の課題
は生産性の向上を実現することだという。
アベノミクスの第 3 の矢と言われ生産性の向上に直結する成長戦略の分野では、農
業改革などを評価する一方、雇用改革では「進捗がない」と厳しく批判。3 年目に入
ったアベノミクスは「正念場を迎えている」と指摘した。(大信田)
司会:大信田雅二
企画委員(テレビ東京報道局次長兼ニュースセンター長兼解説委員)
日本記者クラブ
Youtube チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=si2MTNTNKzI&list=UU_iMvY293APrYBx0CJReIVw
文末に会見で使用した資料があります
C 公益社団法人 日本記者クラブ
○
ください。きょうは言いませんから、大丈夫で
司会 大信田雅二 企画委員(テレビ東京報
す。
道局次長兼ニュースセンター長兼解説委員)
毎年 1 月の恒例で、経済見通しの講演をして
もう一つ、大事なポイントですけれども、や
いただきたいと思います。きょうのゲストは、
っぱり日本ほどおもしろい経済はありません。
モルガン・スタンレーMUFG証券マネージン
ことしに入って、ますますおもしろいなあと思
グディレクター、チーフエコノミストのロバー
います。
ト・フェルドマンさんです。フェルドマンさん
まず、国際状況、どういう状況に日本は置か
は今回で 13 回目の登壇ということで、最多記
れているのかということに関して話をさせて
録を更新されています。私は企画委員の大信田
いただきたいと思います。
と申しますが、去年もこの司会をさせていただ
特に、原油安によって何が変わるのか。日本
きました。一つ非常に印象に残っていることが
も、ほかの国と同じような動きをするのか、違
あります。「消費増税の税率アップの後の 7-
う動きをするのかということもちょっとおも
9 月期に、消費がV字回復するという政府の見
しろいテーマだと思います。実は、社内でかな
通しは甘過ぎる」と、去年フェルドマンさんは
り大きな激論になっています。原油安はデフレ
はっきりおっしゃっていましたが、実際そのと
要因かインフレ要因かということであります。
おりの経済動向でありました。
その次は、景気です。日本の景気はいまどう
ことしはどうなるかということについて、フ
なっているのか、これからどうなるのかという
ェルドマンさんにこれからご講演いただきま
ことは相当重要です。それに関して、簡単に、
す。それでは、フェルドマンさん、よろしくお
幾つか指標を紹介させていただきたいと思い
願いいたします。
ます。
もちろん、一番大きなテーマはアベノミクス
ロバート・フェルドマン・モルガン・スタン
レーMUFG証券チーフエコノミスト
の今後です。本当に成功するのか。ことしのテ
本日
ーマは、結局、アベノミクスの正念場だという
お招きいただいたこと、まず感謝申しあげたい
ことではないかと思います。ことし、かなり強
と思います。13 年目ということで、最多とい
く進めていかなければ、多分将来的に大変だな
うことのようです。26 回までいこうかなとい
と思います。金融政策、財政政策、成長政策、
う気持ちで、皆さん、今後 13 回も聞いてくだ
この 3 つが本当に進んでいるかに関しては、幾
さるようにお願いしたいと思います。
つか意見を申しあげたいと思います。
簡単に自己紹介をさせていただきたいと思
特別テーマとして、やっぱり労働市場が進歩
います。初めて来日しましたのは、1970 年で
しているかどうか。エネルギー問題、これもま
す。16 歳のときで、交換留学生プログラムで
た正念場に来たなと思いますけれども、これに
あるAFSで 1 年間、名古屋の南山大学の附属
関して幾つかの観察を申しあげたいと思いま
高校、南山高校男子部で勉強させていただきま
す。
した。そこから、やっぱり日本のことを好きに
米国の利上げは 2016 年
なって、恋に落ちたということではないかと思
います。文化がおもしろい、あるいは言葉がお
まず、国際環境のお話をさせていただきたい
もしろいとか、そういうこともいっぱいあった
と思います。各国の政策移行、すなわちこれま
のです。
でうまくいかなかったやり方を、うまくいくや
私が生まれ育った家族は、駄じゃれが大好き
り方に変えていくかどうかということがテー
な家族でした。日本語ほど駄じゃれできること
マです。もちろんこれは成長率と絡み合ってき
はないということで、ずうっとここ 40 年間い
ます。
ろんな駄じゃれを考えてきましたが、安心して
米国に関しては、青信号だなと思っています。
2
米国の政治環境は良い
もちろん機械受注の数字があまりよくなかっ
たんですけれども。労働市場はかなりしっかり
あとは、2016 年は大統領選になりますけれ
しているということもあります。原油安はもち
ども、もうすでに大統領候補として手を挙げて
ろん投資案件、特にシェールガスとかシェール
いる人が出ています。共和党、民主党、いろい
オイルとか、そういうところに対しては影響を
ろ戦いは続くと思います。ことしに入っての共
与えます。一方、消費者がものすごく得をしま
和党、かなり変わったなという感じがします。
す。で、余ったお金で、すなわちガソリン代で
なぜかというと、ずうっと大統領を出していな
使っていないお金をどう使うかということが
いのです。前回、オバマに勝てると思っていた
天秤になって、かなりいろんなところで使うの
んですけれども、負けてしまったのです。結局、
ではないかと思います。米国の景気に関しては、 何でも反対だ、妨害しているという評判になっ
かなりいい数字が出るのではないかなと思っ
て、そういう評判をなくさなければ大統領はと
ています。
れないということをようやく理解したようで
弊社の実質GDP予想では米国では 2.8%
す。
という数字が入っています。これは若干上方修
加えて、景気が回復している状況、特に雇用
正できるのではないかと思います。なぜ若干か
状況がよくなっています。ティーパーティーが
というと、やっぱり時間のラグもあって、悪い
ちょっと弱くなってきています。環境問題に関
ニュースが先に出て、よいニュースが後で出る
しては、共和党の中の 50%を超えた人たちは、
ということもあると思います。かなり強い成長
本物で、人間がこうしているという世論調査も
を期待できるのではないかと思っています。
出ています。これまでの共和党と違う立場をと
では、その中で連銀が何をするのが問題です
らないといけないということです。
けれども、連銀は、ちょっと難しい立場に置か
ティーパーティー関連の人たちでさえ、いま
れているなという点もあります。消費者物価の
環境問題をどう思いますか、と聞かれたら、
「い
上昇率、本来は、ことし 1.8%とか 1.9%ぐら
や、私は科学者ではない」と答える人が多いの
いになったはずですけれども、原油が下がって、 です。すなわちいままで言ってきたことはあま
連銀が一番強調しているPCE、コアのPCE
りもう強調しません、という答えです。それで
は、多分 1.2%とか 1.3%とか 1.1%とか、そ
は済まないということになっていますから、若
ういう数字になっていくのかなと思います。一
干、状況が建設的になっているというところで
見はデフレに近づいているようにみえますけ
はないかと思います。
れども、原油安がネットで米国にとってプラス
日米関係に関しては、非常によいところはあ
かマイナスかというと、プラスです。一時的な
ると思います。すなわち、TPPを進めること
要因でドーンと物価が下がったとしても、イン
ができるようになっているということです。こ
フレ目標から外れているということかという
の前の中間選挙の結果、アメリカの自動車業界
と、そうではない。若干様子をみるという期間
が言ってきた日本に対する要請のトーンがち
が長くなるかもしれませんけれども、これまで
ょっと弱くなっています。
弊社が言っている予測、すなわち 2016 年に入
すなわちサイドミラーを固定のものにして、
ってから最初に金利を上げるだろう、というこ
安全基準を緩めてほしいということをやめた
とにあまり変化はありません。金利を上げる時
そうです。なので、若干日米関係がこれによっ
期が 1 月から 3 月になったりするとか。いずれ
てよくなってくるのかなと思います。TPPも
にしても、2016 年の話です。その間、米国が
もっと早く進めるようになってくるというこ
ちゃんと回復すれば、為替に影響を与えるだろ
とです。米国は結構よくなっていくのかなとい
うと思います。着実に米国は改善しているなと
う背景に日本が置かれているわけです。いいこ
いうことではないかと思います。
ともあるかなと思っています。これは米国の話
3
です。
いい成長を起こすのか。刺激するのかというこ
とが問題です。昨年と同じように、汚職問題を
欧州経済は弱含み
絶対直さないといけないという議論があるの
次はヨーロッパですけれども、ここは黄色信
です。高い成長の中では、どうしても汚職が出
号になっています。指標は決していいというわ
てしまう。一方で、低い成長も困るので、かな
けではないのです。
りナローパスだということは一つの課題だと
思います。一つ、昨年と違うことがあります。
ただ、昨年、AQR(Asset Quality Review)
これは政策の決定メカニズムが早くなったと
は、意外に厳しい査定結果でした。日本の経験
いうことです。日本で言えば、経済財政諮問会
を背景に、おそらくあまり厳しくやらないだろ
議というようなものをつくりました。党のかな
うと思っていました。ただ、幾つかの銀行が、
り高いポストの人たちを 7 人集めて、一番大き
AQRが出る前に、すぐに資本調達をしていま
な経済政策をそこで決めて、すぐ実行するとい
した。加えて、しっかりやらなければ、金融制
う機関というか、委員会もつくりました。これ
度に対する信頼が上がらないということをよ
まで、かなり官僚的にいろいろ決まっていたも
くECB当局もわかったようで、結構厳しく査
のを今度はもっと積極的にいろいろと決めて
定を行ったということです。だから、貸し渋り
いきましょうということになった。昨年前半の
を外す条件が大体できたということです。これ
ように、あまり指標の結果がよくない場合に、
はプラス要因です。
対応策が決まらず長く議論してようやく決め
一方、エネルギー問題もあります。東ヨーロ
る、というのが変わるだろうと思います。問題
ッパの問題もある。どうも消費者マインドもよ
がたまっていますから大変です。一応これ以上
くならない。幾つかデフレっぽいことが本当に
悪化しないものの、恐らくまだ黄色信号のまま
起きて、指標の改善が思ったより早いというわ
かなということです。成長率を見てみますと、
けではないということです。欧州の回復はおく
7%を維持するのではないかと思っています。
れるだろうなということがポイントではない
かと思います。
途上国の経済は悪くない
実は、先週、ロンドンで 1 週間、投資家訪問
途上国ですけれども、これはまだら模様です。
をしました。一番多かった質問は、日本が長い
昨年は、かなり赤に近い状況だったのです。も
デフレ期間をどうやって生き抜いたかという
ちろん原油価格がいろんな国に全然違う影響
ことです。日本の経験を教えてほしいと。すな
を与えるということもあります。加えて国内政
わち「日本化」、あまりいい言い方ではないと
治もちょっと大変になっている国が幾つか出
思いますけれども、いわゆる日本化はむしろい
ています。
い結果でしょう、という意見がちょっと出てい
もちろん、一番心配するのはロシアです。い
ます。欧州が雰囲気的によくなろうということ
ろいろ制裁を受けて政治が不安定になってい
ではないかと思います。
ます。弊社の予測をみてみますと、いま、
エネルギー問題もありますが、原油が安くな
-1.7%になっていますがもっと悪くなる可能
ったということはもちろんプラス要因です。た
性は否定できません。ブラジルもそうです。そ
だ、本当にロシアからのガスは大丈夫なのかと
ういう国がある一方で、インドは決して悪くな
か、そういう不安があります。あまりいい話は
い。原油輸入国で、かなりプラスということで
できないなと思います。
すから、途上国は混在状況ではないかと思いま
す。
政策決定を早める中国
では、この状況は日本にとってどういう意味
では、中国はどうか。習近平さんは国内問題
を持つのかということです。昨年とほぼ同じよ
で精いっぱいということです。どうやってほど
うな状況ですが、日本にとって、悪くない。と
4
いうのは、一番の貿易相手国である中国、米国、
にくいのです。ただ、米国の改善とか景気回復
成長率はそんなに悪くないのです。実際に中国
がありますから、米国の 2 年債、5 年債、10
が 7%成長できたら、これは悪くないのです。
年債とも多分上がるだろうというのが弊社の
加えて、米国が 2%台後半ということであれば、 いまの考え方です。
一番大きな貿易相手国はかなり成長する。加え
そうすると、日本は債券がどんと下がってい
て、中国以外の途上国の中で、よくなっている
ますが、また長期金利が上がって日米の金利格
国、すなわちインド、インドネシアなど、アジ
差が開いていくでしょう。これが基本的なポイ
アにありますから、そんなに悪くない。すなわ
ントです。加えて、もちろん原油安によって日
ち、貿易ウエートで計算した世界の成長率は、
本の貿易収支は改善しますけれども、黒字には
あまり悪くない。加えて円安もありますから、
ならないでしょう。貿易赤字が続き、金利格差
そんなに悪い世界ではないのかなと思ってい
が開くという状況は、もう少し円安になっても
ます。
おかしくないなと思います。
昨年のいまごろ、円相場が1ドル=150 円と
原油安は日本にプラス
か 200 円になるとか、そういう話がかなりあり
あとは、原油の影響です。これは日本にとっ
ましたが、いまはもうなくなっています。なぜ
てかなりプラスではないかと思います。全体と
かというと、貿易収支が若干改善したというこ
して、産油国は大変だと思います。原油をかな
とが一番大きいのではないかと思います。とに
りためている国、ためていない国の違いが非常
かく金利格差が開いて、円相場が若干いまより
に大きいということではないかと思います。サ
安くなっていくかなということです。リスクが
ウジとか、ためている国は全く問題ない。ノル
あるとすれば、ほとんどこれ以上安くならない。
ウェーもそうです。あまりためていない国は本
リスクが強くなることはあまりないと思いま
当に大変なことになってしまうのかもしれま
すけれども、これ以上安くなることは多分ない
せん。
だろうと思います。
米国が、キューバと仲良くしようと言い出し
この中で、株価がどうなるのか。昨年 11 月
ているのは一つの背景です。ロシアをちょっと
時点で、TOPIX が 1,409 と予想していました。
気にしている面もあるかもしれません。キュー
基本ケースで 1,680 という一番パフォーマン
バを支えてきたのはベネズエラですよね。ベネ
スがいい国だということです。
ズエラはいまお金がないから、米国とキューバ
ただ、これは各国の自分の通貨ではかって一
の関係を改善する背景ができた、基盤ができた
番いいということです。ドルに直しますと、S
ということではないかと思います。これはちょ
&Pの上昇と、ドル建ての TOPIX 上昇、ほとん
っとおもしろいことではないかと思います。
ど同じだということになります。日本に大量に
とにかく、日本にとって世界が、経済的にそ
海外のお金が入ってきて、もっと株価が上がっ
んなに悪いところではないということも言え
ていくようなことがあるかというと、たぶんな
るでしょう。
いかなと思います。なので、日本株もほどいい
上昇はあるでしょう。そういう結論です。
やや円安が進行し株価は上昇へ
もっとよくなる可能性はあると思います。と
では、市場動向はどうかということですけれ
いうのは、この日本の予測は、11 月の時点で
ども、まず利回りをみてみましょう。各国の物
出していますので、原油価格がまだ 80 ドルだ
価指数の動き、インフレ、デフレの動きをみて
という前提で計算しています。これが 50 ドル
みますと、ぐんぐん物価が上がっている先進国
台がかなり続くことになれば、当然、日本の企
はありません。むしろかなりまだまだ低いとい
業収益が上がります。結果、いまの基本シナリ
うところが多いです。債券市場の性質から言い
オでは TOPIX1,680 になっていますけれども、
ますと、物価が上がっていないと金利が上がり
5
これより若干高くなってもおかしくないなと
の一つです。
いうことも言えるのかなと思います。
もう一つは、あまり輸出として取り上げられ
では、全体の結論を申しあげますと、いまの
ないのですけれども、非常に大事な、いわゆる
世界経済は、日本経済にとって悪いところでは
インバウンドの観光客です。皆さん、新聞を読
ない。原油価格も安いし、貿易相手国が成長し
んでいらっしゃるかと思いますけれども、ほぼ
ている。そんなに悪い状況ではない。その結果、
観光収入は倍増です。
若干円安が起きて、株価が上がるだろう、そう
この前、岡山に行ってきましたけれども、新
いうような結論になっています。これが世界の
しい大きなショッピングモールができました
話と市場の話です。
ね。年間 2,000 万人が訪れるそうです。岡山に
住んでいる友人に話を聞きました。あの大きな
円安が日本経済を支え始めた
新しいモールに一番人が並んでいる、行列がで
次は、日本の景気に入りたいと思います。実
きているところはどこかというと、消費税を返
は先週、ヨーロッパを回ったとき、若干苦しか
す窓口だそうです。すなわち、観光客がダーッ
ったんです。というのは、大体 11 月までの予
と並んでいるんですよね。
想数字しかないので、景気動向指標があまりよ
私の社内の友だちは、かなり香港にいます。
くなっていない。景気ウォッチャーズがちょっ
買い物のために日本に来るんですよ。そういう
とよくなっていますけれども、ぐんぐん上がっ
人たちはアジア中にいるわけです。こういう観
たわけではない。指標をみる限りは、あまりよ
光の伸びがとまらないだろうなと思います。
ろしくないということは事実です。
加えて、先週ちょっとびっくりしましたけれ
一方、昨年年末からことし 1 月に入って、か
ども、ロンドンにいる友だちが、今度スキーに
なり雰囲気もよくなっていますし、ガソリン価
行くそうなんですね。スイスの中央銀行が新し
格が安くなって得したお金を使っている人が
い金融政策に移ってから、もちろんスイスフラ
結構出ていますから、むしろ 11 月の数字はも
ンがぐんと強くなりましたから、スイスでスキ
う古いと思っております。
ーに行くとかなり高くなってしまう。文化が違
幾つか指標をとってみましょう。輸入と輸出
う、ちょっと遠いんですけれども、日本にスキ
の数量です。ずうっとアベノミクスの円安政策
ーに行こうかなということを言っていたので
は失敗だということを言っていた人がかなり
す。
いました。なぜかといいますと、輸出量が上が
オーストラリアから来るお客さんも多いの
っていないから。ここ数カ月の数字をみると、
ですよ。この前、品川の駅で大きなスキーを背
日銀の指標ですけれども、実質ベースの輸出の
負っている家族がいました。京急線からJRで
指数はかなり上がっています。ようやく円安が
品川へ行こうとしていて、ちょっと迷っている。
効いてきたということです。
いま新しい趣味があるんです。迷った観光客を
例として、私が出ているテレビ東京の経済番
助けるのです。特に新宿が大変ですけれども、
組「WBS」に、フグの話が出ました。これま
とにかくこの家族を助けようと思ったのです。
では中国にフグの工場がありました。そこでつ
JRに乗りかえて新宿へ行けるよということ
くって日本に輸出する。いまの円相場からいう
を言いましたけれども、改札口を通ったらピピ
と、もう採算が合わない。損をして輸出をして
ッと鳴るのです。彼らが持っている切符は京成
いるということです。逆に、今度は日本のフグ
から地下鉄に乗りかえていく切符だったので、
を中国で売るということになるそうです。これ
JRに行かれない。オリンピック開催の頃は大
はちょっとおもしろいですね。すなわち、よう
変だなと思いました。
やく円安が日本経済を実質ベースで支え始め
まあ、とにかく乗せましたが、オーストラリ
ているかなと思います。これはグッドニュース
アからかなりそういうお客さんが来日してい
6
る。これがぐんぐん伸びる。特にいまの円安が
グラフ(資料編 5 ページ)では、総合指数、生
続くとすればぐんぐん伸びるということだと
鮮食料品を除く指数が赤い方、及び食品・エネ
思います。
ルギーを除く総合指数、これは緑色です。下が
伸びるということだけでもいい。もう一つは、 り方が全然違いますね。なので、いま「総合」
あるいは「生鮮食料品を除く総合」を使うのは
観光客が使う日本国内のサービスは、かなり労
働集約的です。すなわちホテルとか、そういう
ちょっとミスリーディングだなと思います。む
ところのサービスが多い。加えて都市部ではな
しろ、「食品及びエネルギーを除く指数」をみ
くて、地方によく行きます。だから、これは金
たほうが正しいと思います。
額以上に影響が強い面があります。かなり期待
もう一つ、大事なポイントですけれども、東
したいなと思います。
京大学が発表している日次消費者物価指数が
あります。全体の消費者物価指数とかなり違う
原油安も日本経済を支える
伸び率の水準になっています。全体の指数が動
次は、原油です。原油価格が 10 ドル下がり
く前に反応するというところがあります。食料
ますと、同じ原油を買っても、大体 1 兆円ぐら
品が多いとか、そういうことはあります。ポイ
い使うお金が少なくなります。結構得します。
ントは、若干改善し始めています。すなわち、
100 ドルから 50 ドルになっているわけですか
原油が下がって、余ったお金を、若干よいもの
ら、5 兆円です。原油だけで 5 兆円、GDPの
を食べましょう、あるいは若干高いものを買っ
1 ポイントです。加えて、若干時間がかかるか
てもいいという動きをするようにこの指数か
もしれないけれども、ほかのエネルギー価格が
らはみえるということです。
下がってきます。原油は日本の輸入エネルギー
なので、物価は指標として、あるいは指数と
の中の4割ぐらいだと思います。ほかのエネル
してみると下がっていると思いますが、本流は
ギーが下がってきますと、当然、さらに得しま
全然違って、むしろ改善し始めていると思いま
す。よくわからないのですけれども、多分 7
す。
兆、8 兆円ぐらいの節約になります。だとすれ
労働不足が賃金にあらわれてきている
ば、GDPの 1.5 ポイントですけれども、昨年、
消費税を 3 ポイント上げましたよね。1 ポイン
賃金。これもすごく大事ですけれども、ここ
ト当たり 2.5 兆円ですから、7.5 兆円。すなわ
1 年間、賃金がかなりよくなったと思います。
ち昨年消費税を上げて損したお金が今度、原油
ただ、賃金というと、概念がちょっと曖昧にな
が下がって得するお金です。かなりの刺激です
るので、総所得額ですね。及びその構成要因に
ね。なので、原油が下がったことによって、日
分けて考えるべきではないかと思います。総報
本の景気がかなりよくなっていくのかなと思
酬(資料編 5 ページ表右)は、このブルーの曲
います。
線ですけれども、前年同月比で大体 2%になっ
正式に、12 月に出した新年度の弊社予測は
ています。では、構成要因はどうなっているの
1.4%の成長ですけれども、原油価格は 80 ドル
かというと、構成要因は、雇用、1 人当たりの
という前提だったわけですから、本当に 50 ド
時間、最後は 1 時間当たりの賃金、つまり時給
ルで続くとすれば、2%超えてもおかしくない
です。この 3 つの決定要因です。
なという、まだ正確に計算していませんけれど
赤い曲線は雇用ですけれども、これはよくな
も、そうだろうなという感じがいたします。
っています。かなりよくなっています。残業な
問題があるとすれは、物価です。物価が下が
ど、よくなっています。一方、パートタイムへ
ったらとか、原油が下がったら、消費者物価指
の動きも続いているわけですから、1 人当たり
数は下がりますよね。ただ、原油が入っている
の労働時間がまだ若干マイナスになっていま
か、入っていないかによって指数の動きがかな
す。
り違うということは忘れてはいけません。この
7
一方、時給、1 時間当たりの賃金がどうなっ
ようと言っている数字です。このGDPの伸び
ているのかということが一番おもしろいとこ
は、生産性の伸び+労働の伸びになるわけです。
ろです。消費税増税の前に加速しましたね。導
これはもう簡単です。
入されて、ドーンとまた下がってしまった。そ
では、労働の伸びはどうかということですと、
の後、GDPが夏以降、秋にも、悪いというと
伸びていない。だって、高齢化社会で結構大変
きだった。それでも時給がむしろ加速したので
です。むしろ今後、少なくとも平均して 0.5%
す。これはもちろん名目ベースですから、よか
のマイナスですよね。そうすると、労働の伸び
ったというわけではないのです。何か違うなと。 がマイナスだとすれば、GDPが+2%になる
すなわち、労働不足が賃金にあらわれてきてい
とすれば、労働生産性を年間 2.5%にしないと
るということが言えるのかなと思います。
いけない。言うのは簡単、やるのは大変。
すなわち、輸出がようやく伸び始めて、イン
このグラフ(資料編 6 ページ)ですが、縦軸
バウンドの観光客がふえている。物価がむしろ
は成熟先進国のここ 10 年間の生産性の伸び率
よくなり始めている兆しが表れ、賃金が上がり
です。横軸は、R&D、すなわち研究開発の総
出している。こういう兆しをみると、新年度は
額。企業、国全体が使っている研究開発費の対
悪くないなという感じがします。これは景気の
GDP比率です。何が生産性の決定要因かとい
話です。
うことは、理論的にはわかりやすい。数値化す
るとかなり大変です。教育は絶対大事ですね。
本当の宿題は労働生産性の向上
どの国の経験も同じです。教育をよくすれば成
次は、アベノミクスになりますが、まずアベ
長はよくなるということです。統計的にそれを
ノミクスの大きな仕事というのは何ですか、と
計算しようとすると、本当に至難の業です。
いうことから始めたいと思います。
一方、研究開発費の計算はそう難しくない。
このグラフ(資料編 6 ページ)は、昨年 9
なので、研究開発費だけをここに入れてみた。
月につくりましたが、12 月になって、香港の
先進国の中、すなわち成熟先進国の中、日本が
ボスと話をしました。ボスに厳しいことを言わ
アンダーパフォームしているかというと、そう
れました。
「アベノミクスの応援ばかりせずに、
ではないのです。すなわち、ここでは本当に単
もっと冷静に書きなさい」と。「応援ばかりし
純な回帰分析の曲線しか描いていない。この曲
ているわけではないです。こういうグラフも出
線の上に日本が乗っているのです。低くないし、
しています」ということでこの図で説明しまし
高くない。これはいいのです。すなわち、使っ
た。これは大きな仕事でしてね。「信用するけ
ているお金は、他国に比べて下手に使っている
れども、確認する」ということをずうっと言っ
わけではない。そういういいニュースもありま
てきている。何を確認すればいいかというと、
すが、一方、目標は、さっき申しあげましたよ
このグラフでわかると思いますが、生産性です。 うに、労働生産性の伸び率を 2.5%にしないと
このグラフは、アベノミクスの本当の宿題を、 いけない。だとすれば、研究開発費を大きくふ
やすこと、あるいはみんなと同じぐらいでいい
この数式で書きました。数式はそう難しいもの
ではないのです。YはGDPです。総生産です。
かなというのではなくて、むしろアウトパフォ
Lは労働者の数です。そうすると、GDPは、
ームする。そういうようなことにしないと間に
1 人当たりの生産×労働者の数になります。本
合わない。これがアベノミクスの本当の仕事で
日、ゆとり教育の被害を受けている方はいらっ
す。これは大変な仕事です。
しゃらないので、多分この式はよくわかると思
第三の矢の話をするときに、ここに戻ります
います。簡単ですね。ただ、L分のYというの
けれども、まだまだ安心できるような状況は遠
は何かというと、労働生産性です。伸び率に直
いということです。
していきますと、右側の方程式になります。G
DPの伸び率、安倍さんが実質成長率 2%にし
8
衆院選の結果がアベノミクスを後押し
数はこれだけ下がるということです。なぜそれ
では、今後の安倍政権、どういう政策をとる
が気に入らないかというと、これは経済が上が
のか。金融政策、財政政策、成長政策あります
るのは、足し算だと。足し算エコノミストはも
けれども、まず基本的にこれは国会が決めます。 ういいということを言ったのです。ちょっとお
もしろい。そのとおりだと思います。すなわち、
この前の選挙がどのような影響を与えるのか
ということですけれども、ある程度、もちろん
この物価が下がったら、所得効果もあります。
アベノミクスは正しいと国民が判断を下しま
ほかのものを買います。ほかのものを買うわけ
した、これはいいんですね。
ですから、ほかのものの物価が上がるはずです。
実は、私の出ているテレビ番組の中にこの話
ただ、問題は、国民よりも、むしろ国会の中
で、アベノミクスがあまり好きじゃない人が多
題が出てきて、記者にちょっと聞いてみました。
い。すなわち、自分の政治基盤が緩くなるとか、
「車、持っていますよね」、「はい、持ってい
弱くなるから、あまりアベノミクスを進めたく
ます」。
「ガソリン、安くなっていますよね」、
ないという人たちがかなり多いということで
「はい、安くなっています」。「かなり得して
す。そうすると安倍総理が頻繁に「経済、経済」
いますよね」、
「はい、いっぱい得しています」。
と言わないと、議題が進まないのかなと思いま
「余ったお金はどう使っているの」、「うん、
す。選挙の結果として、経済をもっと強調する
外食へ行っていますよね」と答えたんですよね。
確率が上がったと私は思います。
そうすると、ガソリンが下がった分、外食の物
もちろん、集団的自衛権の問題がまだ残って、
これを取り組まないといけない。一方、選挙の
価が上がるはずです。では、全体のデータをみ
て、この現象があるのかということは、第一の
ものです。
結果の中で、私にとって一番おもしろいなと思
ったのは、次世代の党と共産党の逆転といって
ちょっと数字をみてみましょう。この左側の
もいいと思いますね。一番右派的なことを言っ
グラフ(資料編 8 ページ 表左)です。横軸は、
てきた次世代の党が大きく負けて、一番左派的
原油価格の対数です。すなわち、数字が小さく
なことを言ってきた共産党がかなり議席を伸
なればなるほど原油が下がっているというこ
ばしました。これは外交政策を組むときに、ち
とです。縦軸は、幾つかの物価指数が入ってい
ょっと影響を与えるのではないかなと思いま
ます。内容は生鮮食料品を除く総合指数。時給、
す。
すなわち賃金。そしてGDPデフレーターです。
この 3 つをここに描きました。緑色の点々(△)
すなわち、やみくもに憲法改正と言うことは
と、ちょっと回帰で計算した直線が書いてあり
多分できないでしょう。集団的自衛権はやると
ます。これは生鮮食料品を除く総合物価指数で
思いますけれども、それ以上やる必要も多分な
す。おもしろいですね。原油が下がって、消費
いし、やっても支持率が下がるだけですから、
者物価はほとんど上がらない。でも、下がらな
恐らく経済のことをもっと強調するのではな
いのです。すなわち、原油が下がったから物価
いかと思います。おもしろいですね。すなわち、
は下がるでしょうということは、これまでの動
アベノミクスの経済の面をもっと進めていく
きからみれば、違うということです。前述の記
ような選挙結果ではないか、というのが私の結
者の方のようにいっぱい外食へ行っている、と
論です。
いうことだと思いますけれども、とにかくこう
いう現象は事実です。
経済は単純な足し算ではない
では、金融政策、まず見てみましょう。ある
原油価格が下がると賃金が上がる
日銀幹部の方の話をこの前聞きましたけれど
一方、もっとおもしろい現象があります。赤
も、この方には、一つ、気に入らないことがあ
い点線(資料編 8 ページ 表左)がありますね、
ります。それは、原油価格が下がったら物価指
これは時給です。すなわち、原油価格が下がる
9
と、時給が上がります。賃金が上がるというこ
忘れていないということが本当にわかったな
とです。青い曲線をみていただきますと、もっ
というのがいまの私の印象です。すなわち、ア
と急な勾配になっていますけれども、これはG
ベノミクスの中で金融政策はうまくいってい
DPデフレーターです。すなわち、原油価格が
るなと思います。
下がりますと、GDPデフレーターはぐんと上
賃金上昇は続く
がっていくということです。
これはどういう意味かということですけれ
もう一つは、賃金のこれからの動きはどうか
ども、ご存じのとおり、国民経済計算から言い
ということです。よく需給ギャップの話があり
ますと、GDPデフレーターは、実は賃金と企
ますよね。需給ギャップを使って、これから物
業収益の加重平均です。すなわち、海外に流れ
価はどうなるかと計算すると、あまりいい結果
ていないお金がまず企業収益に入ります。企業
は出ないのです。むしろデフレギャップの変化
がそのお金をある程度賃金に回す、そういう現
をみて、物価の伸び率の変化をみると、若干説
象がこのグラフできれいにみえます。
明力があります。でも、若干ですよ。1 割ぐら
い。もっといいものはないかなと当然思います。
きのう、実は韓国のソウルにいましたけれど
も、このことを言ったら、「日本の企業は優し
あります。日銀短観の中にあるのです。おもし
いよね」ということを言われました。とにかく
ろいことにね。
これは事実ですよね。原油価格が下がると、賃
これは日銀短観の中の数字(資料編 9 ペー
金が上がり、企業収益が上がるということです。 ジ)です。雇用判断DIです。あるいは雇用人
おもしろいですね、原油が下がって、日銀が
員:判断DIです。もちろん製造業、非製造業、
大好きな生鮮食料品を除く指数が上がらない
大企業、中小企業、中堅企業、小企業、全部あ
という中で、実は、金融とかゼロ金利政策から
ります。全体はこの真ん中にあります。かなり
脱出する時期が早くなったということです。賃
労働不足になっています。この数字、すなわち
金が上がって、GDPデフレーターが上がるな
雇用人員DIを使って、時給の前年同期比を予
ら、当然、デフレ脱却ですよね。これは、ある
測すると、かなりの説明力があります。同時の
程度皮肉というか、おもしろい現象ではないか
説明力ではなくて、1 期、2 期、3 期先までの
と思います。ことしは、日銀がゼロ金利解除は
説明力があります。時間がかかりますけれども、
しない、むしろいまの政策が続くだろうと思い
ここまで労働力不足が悪化というか、厳しくな
ます。実際に、賃金物価が 2%になるまでは、
っている。賃金の加速は続くだろうということ
脱出はできません。だから、ゼロ金利は解除で
は十分言えると思います。
きませんが、むしろいま日銀が言っている、
「こ
すなわち、日銀が思うほど、2%の目標から
れは短期的な現象ですから、いずれまた戻りま
遠くないということが言えます。ことしは、金
すよ」ということは、そのとおりだと思います。
融政策を変えない。ただ、16 年に入っていつ
なので、金融政策は、物価指数が下がってい
変えるかということがエグジット問題になり
るから動いていないでだめだとは、むしろ全然
ます。その問題が 16 年に入ってからかなり早
違って、日銀はいま正しいことをやっていると
い段階で議論されるのではないかなと思って
思っております。すなわち、やろうとしている
おります。これは金融政策です。
ことを途中で忘れていない。問題は、消費者物
国の予算だけで財政問題はわからない
価指数の動きではなくて、デフレ脱却になって
いるかどうか。デフレ脱却は、物価指数をみる
財政。これは大変です。この前、国の予算が
のは、原油価格が動いていないところはいいの
出ましたよね。予算の枠組みが出る前の日、ち
ですが、物価指数をみてわかるものではない。
ょっとテレビに出演する日だったので、「どう
賃金をみる、GDPデフレーターをみる、そう
ですか」ということをキャスタ-に聞かれたの
いうのが大事ですから、日銀がそういうことを
で、かなりよくやっているなと言いました。つ
10
増税と歳出カットのバランス
まり、税制改革も結構しっかりしているし、新
聞情報ですけれども、かなり社会保障歳出を抑
奇跡じゃないかもしれないけれども、非常に
える、2%以下かなという雰囲気ですから、結
おもしろい数字が 5 月末に出ました。財政審議
構頑張っているな、ということを言いました。
会が数字を公表しました。消費税が 10%にな
次の日、新聞に数字が出ました。社会保障歳
っても、公的債務の対GDP比率を安定化させ
出は 3.3%増という数字だったのです。がっか
るために、GDP12 ポイントですけれども、
り。なぜがっかりかというと、こういうことで
約 60 兆円のさらなる財政調整が必要である。
す。
という計算が財政審議会から発表されました。
国の予算では何もわからない。国民経済計算
60 兆円ですよ。すごい数字ですね。計算をし
でみないとわからない。なぜかというと、国の
ますと、60 兆円は、大体消費税で言いますと、
予算は当然、親会社だけです。連結ベースにな
24%ポイントです。すなわち、10%になっても、
っていない。社会保障基金が入っていません。
さらなる 24%ポイントの消費税増税が必要だ
地方は入っていません。なので、全体をみない
ということです。34%の消費税に賛成する方は
といけない。これが連結ベース、国民経済計算
あまりいません。
からとった数字ですけれども、残念ながら 13
では、それが嫌だったら、どういう歳出をカ
年までしかないのですが歳出がぐんぐん上が
ットするか。幾らカットするかということが問
って、歳入がそんなに上がっていない。こうい
題になるのです。いろんな場所で投資家アンケ
う状況で歳出の中の分け方をみると、結構怖い
ートをとりました。これは正式にアンケートを
のです。何が怖いかというと、社会保障がぐん
出して、数字として回答をいただきました。幾
ぐん上がって、それ以外が抑えられてきたので
つかの選択肢を挙げました。いま申しあげまし
す。すなわち、社会保障をふやすために、研究
たように、60 兆円を全て 100%増税でやる、歳
開発、教育、防衛等々、そういうことをどんど
出はカットしない、これは一つの選択肢です。
ん削っているのです。この形の財政歳出構造、
もう一つは、消費税を 10%に抑えておく、
新しい来年度の予算で変わるかというと、あま
全て 100%を歳出削減でやる。これも一つの選
り変わらないのではないかと思いますね。
択肢です。
すなわち、社会保障を 3.3%ふやして、それ
ほかに選択肢がありますけれど増税
以外を減らしているわけです。歳出面の基本的
100%・歳出ゼロ、増税 75%・歳出 25%、真ん
な問題は、残念ながら、ことしはあまり取り組
中は五分五分。次は、増税は 25%・歳出は 75%、
んでいないなという感じがします。もちろん、
最後は全て歳出からとる。そういうような選択
介護保険の改革も絶対進めるべきです。ですけ
肢の中で、世界中の投資家から回答をいただき
れども、ちょっと全体としてあまり進まなかっ
ました。半分日本人、半分海外の投資家です。
たということがポイントだと思います。ちょっ
国籍は、結局答えにほとんど関係ないです。た
とがっかりという感じがします。
だ、答えをみてみますと、非常におもしろいの
では、日本国民が何を望んでいるのかという
です。五分五分と言った人は結構多い。もっと
ことがようやく問題になってきます。ことしと
小さな政府にすべきだという人が圧倒的に多
昨年の議論は何が違うかというと、ようやく財
いのです。これは投資家の気持ちです。
政議論に算数が入ったのです。昨年のいまごろ、
ただ、投資家と国民は違いますよね。アンケ
増税するかしないか、増税すれば、財政再建だ
ートをとったときに、回答者の属性、幾つか聞
という雰囲気だった。何となく、財政再建は増
きましたけれども、大半は男性、海外経験が多
税だけでできないでしょう。つまり、算数的な
い、所得が割と高い、病気したことがない、そ
事実が認められてきたということです。
ういう人たちばかりです。もちろん、金融市場
は小さな政府が欲しいということですけれど
11
も、金融市場が欲しいからといってやるという
できるようにする、これは非常にうまくいって
ことはないので、国民の気持ちはどうなってい
いると思います。
るかというのが問題です。
特に、海外投資家が喜ぶのは、企業統治です。
そこで、私がボスのところへ行きまして、日
JPX日経インデックス 400 は、もう抜群にい
本国民の気持ちを聞きたいのでアンケート調
いと思います。指標として使う投資家はあまり
査をやりましょう、と言ったら、「だめだ。高
いませんけれども、ポイントは、やはり各会社
過ぎる」と言われました。だめだったのです。
の取締役会があの指数に入りたいという気持
きょうみたいに一般のグループにも、いろんな
ちが強くなっていることですね。それによって
プロフェッショナルグループにも講演をしま
資本の効率をよくする等々ありますから、非常
す。必ず同じ質問を聞きます。結果は非常にお
によい影響があると思います。
もしろいのです。全て増税でやろうと思う人た
もう一つは、やっぱりスチュワードシップ・
ちはほとんどいません。全て歳出でやる人は、
コードですね。大きなスキャンダルが 2~3 年
若干いますが、そんなにいない。真ん中、五分
前にありましたけれども、機関投資家がちゃん
五分という人が多いです。
とみていなかった、ということが金融庁の判断
おもしろいことに、若干偏って歳出削減すべ
です。
きです。すなわち、正規分布になっていないの
それと、ではコードをつくりましょう。すな
です。国民の気持ちは、正確に言えないかもし
わち、機関投資家はこういうことをやるべきで
れないけれども、いまより小さな政府にしよう
すよね、ということを書いて、認めていただい
というところではないかと思います。
て、それを実行する。そういうようなことを進
とにかくこういう世論調査があれば、今度の
んでやる。これは非常に大きいのです。ここ 2
財政議論は非常に活発になってきます。最近の
~3 ヵ月で投資家の態度がちょっと変わった
自民党の党の役員たち、特に政調会長の話や発
ような気がします。すなわち機関投資家は最初
言を聞きますと、「やっぱり歳出抑制、特に社
の段階ではあまりやりたくない、ということを
会保障の抑制も必要です」ということもはっき
言っていたのですけれども、いまはむしろ「よ
り言っています。1 年前は、そういうことは全
かったなあ」ということを言っている大きな機
くなかったのです。
関投資家が多いです。
だから、数字的に予算がそんなによくなった
なぜかというと、当然自分たちがやるべきこ
とは思わない。かなり真面目な議論ができるよ
とはいままでいろいろあって、このスチュワー
うなことになったのかなと思っています。これ
ドシップ・コードができたおかげで、当然やる
は財政の話です。
べきこと、すなわち絶対議決権行使をする、常
に議論をする、どうやってよい企業をつくるか、
成長戦略は評価できる
そういうことができるようになってきたので
す。だから、よかったなあと思います。
次は、第三の矢です。(資料編 12 ページ)
昨年も似たようなグラフを使いましたけれど
もちろん、今度発表される、まだ最終的に決
も、ちょっと事情が変わって、おおむねよくな
まっていないですけれども、企業統治コード、
ったと思います。第三の矢というのは、本当に
コーポレート・ガバナンス・コードが決まりま
把握しにくいところです。うまくいっている分
す。これは非常に進歩しているのです。
野は幾つかあります。本当にうまくいっている
農業改革も前進が期待できる
のは、まず企業統治です。割とというか、かな
り農業改革も進んでいると思います。行政は、
農業改革は、非常にうまくやっているなと思
人事院ができたこと。教育は、大学と産業がも
います。地方へ行きますと、農業の可能性はも
っと密接に一緒になって、いろんなものを開発
のすごくあると思いますね。将来性がすごいと
12
思いますが、いまの流通構造ですと、それが実
目からみれば、けしからんですよね。だって、
現しにくいですね。
ただ乗りですね。なので、そういう問題を解決
この前の佐賀県の選挙がありました。よくメ
しなくてはいけないということは、米国の中で
ディアにも出ていますけれども、なぜ自民党が
も大きな問題になっています。でも、日本の場
負けたのか。これは農業政策がポイントだった
合は、ソーラーはちょっと抑えようという方向
ということが最初の解釈だったんですけれど
で動いています。あまり建設的ではないのかな
も、全然そうじゃないんですね。むしろ、勝っ
と、いうのが私の印象です。
た山口祥義知事が農業に関しておっしゃった
ちょっとエネルギー政策に関して、心配だな
のは、安倍さんのおっしゃっていることとほと
あというところがあります。
んど同じです。すなわち、地方が自分たちのや
雇用改革は不十分
りたいことを自分たちで決めて、国際ブランド
をつくって世界に売りたいと。これこそ、いま
雇用がもっと大きな心配です。この前、労働
安倍さんがやろうとしているんですよね。
政策審議会が、ホワイトカラーエグゼンプショ
結局、自民党の組織問題とか、そういうこと
ン、すなわち残業問題に関する、あるいは残業
が問題で、そういう結果になった。このJA改
時間を短くしてもいい制度をつくろうという
革はすごいなと思います。JAさんの方々とお
案を出しました。条件をみると、疑問を感じま
話をしますと、必ずしも反対している人が多い
した。だって、1,070 万以上の所得、厚生労働
というわけではない反応を受けます。むしろ、
省が選ぶ業界、本人の同意を得て、加えて、は
もっと自由に動けるから、いいことだろうと思
っきりした業務内容、この 4 つの条件がそろっ
う人はかなり多いようです。今回、どういう法
ていなければだめだというのです。当てはまる
案が国会に提出されるかちょっとわかりませ
人たちの数はものすごく少ないです。ほとんど
んけれども、かなりこれは進むだろうと思いま
使えない制度を出して、改革しましたというこ
す。TPPも進むということですから、期待し
とは、私はふざけていると思いますね。
たいなあと思います。
では、どうすればいいのか。法律を読みます
では、問題はどこかということですが、幾つ
と、非常におもしろいんですよ。労働政策審議
かあります。
会は、実は大臣が任命するのです。すると、2
つの手があります。1 つは、みんな刷新する。
ソーラー発電に抑制的なら問題
ただし、新しい人にすると面倒くさい。本当に
面倒くさいんですね。一方、大臣の個人的な、
一つはエネルギーですね。どうも、ソーラー
をもうやめようという雰囲気が広がっていま
あるいは私的審議会をつくるという手もあり
す。どうせ、原発を早く戻せないので、何でそ
ます。この手はこれまでうまくいった例が幾つ
ういうことをやったのかと考えると、多分、既
かあります。
得権益が政策を乗っ取ったんじゃないかなあ
例えば、2001 年、2002 年あたり、金融制度
とちょっと思いますね。
調査会というのがありました。いわゆるNPL
実は、米国のアリゾナ州に全く同じ問題が発
問題、不良債権問題を果敢に取り組むやり方を
生しています。結局、自分で自分の電気を発電
提案できなかったのです。これではまずいと小
しているところ、すなわち自分の家だけで発電
泉純一郎総理が竹中平蔵さんを大臣に迎え入
しているところは、ほかの人たちと同じ値段で、 れて、私的審議会を竹中さんがつくったのです。
1 カ月だけで竹中プランを出して、それを実行
電気も、グリッド(電力供給網)から買いたい
のですね。すなわち、グリッドを維持するお金
したのです。今度、それを例にして、塩崎恭久
を払わずに、みんなと同じような値段で買いた
厚生労働大臣が似たようなことをやれば、もっ
い。これは、グリッドをやっている電力会社の
と早く雇用改革が済むのではないかなと思い
ますが、そういう話が出ているかというと、ま
13
だ出ていないのです。
す。だけど、結果が出ていないのです。労働市
そういう方向で、もっと早く、もっと大きく
場は成果主義でいいですけれども、これは成果
労働改革をしようということになればいいな
がまだ全然みえない。なので、こういう分野に
あと思います。残念ながらまだ進歩があるとい
進んでいただくということがもしできれば、進
うことは言えない。これが心配要因です。
んでいくのではないかなと思います。
ちょっと戻りますけれども、いま申しあげま
選挙制度改革では国民軽視
した話をしますと、若干進歩があって、研究開
もう一つ、ちょっと心配しているのは、選挙
発はわかりませんけれども、若干アウトパフォ
改革です。ことしぐんとよくなっていくという
ームすることはあるかもしれません。まだまだ
可能性はあると思います。ただ、残念ながら、
アベノミクスが成功できるぐらい生産性が加
いまの状況はよくわからないのです。衆議院議
速するような政策になっているかというと、多
長の下でやりましょうということになってい
分まだちょっとそうなっていないのが、いまの
るんですけれども、議長が今度かわりました。
結論です。
新しい議長の町村信孝さんも、この問題をほっ
すなわち、アベノミクスは信用します。ただ、
とくわけにいかないよね、という発言もしてい
やっぱり確認しないといけないところはたく
ますけれども、どういう進捗状況になっている
さんあります。常に毎日、毎日、確認しようと
か、さっぱりわからないのです。
いう状況が続いていると思います。
これは政府が動いていないようですね。国会
正念場迎えるアベノミクス
でやっているのです。だから情報開示の義務が
全くないのです。選挙制度ですからね、そんな
あとは、労働市場と、簡単にエネルギー市場
密室の中で曖昧に議論するということはよろ
を申しあげたいと思います。
しくない。国民を軽視しているということでは
これも昨年、若干話したかと思いますが、男
ないかと思うのです。
性の労働力参加率(資料編 13 ページ)がぐん
むしろ、町村さんが力を出してリーダーシッ
ぐん下がっています。年齢別の参加率をみると、
プを発揮して、政府の普通のルール、いつ集ま
ほとんど変わっていないです。すなわち男性は、
って、どういうことを議論して、どういう議論
怠けていないです。高齢化しています。年寄り
だったかという議事要旨を発表して、国民の議
が多くなってきますと、当然、参加率が下がっ
論の参加を促しましょう。そういうやり方をと
ていきます。そういう現象がきれいにみえます。
っていただきたいなと思います。これも残念な
これはいいんですけれども女性の参加率を
がら、まだ進んでいないのです。
みると、ちょっとなぞがあります。すなわち、
一方、この前の 12 月の選挙、当然最高裁判
ここ 40 年間ぐらい、女性の参加率がほぼ 50%
所まで訴訟行きますよね。多分 1 年とか 15 カ
のままですね。男性の参加率が下がっているの
月以内に憲法違反かどうかが決まるのです。だ
は高齢化のためだということですが、女性の参
から、時計が回っているわけですね。この委員
加率が、下がっていないのはなぜでしょうか。
会、特に衆議院の選挙改革委員会が早く決めて、
何が起きているのかというと、これをみれば
早くこれを実行しようということになります。
わかるんですけれども、女性の年齢別の参加率
ほかの改革がぐんと早くなると思います。だか
がぐんぐん上がったのです。すなわち、参加率
ら、これはちょっと注視しておかないといけな
を上げましょうという話は、そのとおりだった
いなと思います。
と思います。そんなに余地はない。これからぐ
これは、ここではかなり低い点数を上げてい
んぐん賃金が加速して、65 歳から 74 歳の間の
ます。F(落第)ではないですが、Dマイナス
人たちにもっと働いていただいて、ようやく労
です。委員会をつくったということはいいので
働市場が安定化してくるということだと思い
14
ます。これが、成功できなければ、賃金がぐん
いまの報道ですと、今度、政府が発表すると
ぐん生産性以上に上がってしまうということ
思われている新しいエネルギー政策の中に、原
になります。この分野も、もうちょっと政策も
発を何%にするかということが焦点だと言わ
企業も動くべきでないかなと思います。賃金が
れています。それが焦点だったら失敗だなあと
上がってみんな動くということもあると思い
思います。むしろ、どうやってエネルギー節約
ますけれども、これももう一つことしの大きな
の技術革新等々、どうやってそれを早く開発で
テーマになるかなと思います。
きるか、これが本当の政策だなと思います。こ
れもことしの一つの大きなエネルギー政策の
最後のテーマは、エネルギーになります。日
正念場ではないかなと思っています。
本はほかの国に比べて、GDP1 単位当たりに
使っているエネルギーの量はかなり低いほう
ことしはアベノミクスの正念場だなと思い
です(参照:資料編 15 ページ)。CO2 を出し
ます。やっぱり財政、特に社会保障歳出を抑制
ているのもかなり低いほうですが、これから原
できるかどうか。第三の矢で一番難しい労働政
発がもし戻らない場合、やはりもっとぐんぐん
策、税制改革、移民、選挙改革等々進めること
エネルギー効率を高くしなければいけないと
ができるかどうか。加えて労働政策、女性だけ
いうことになります。いろんな新しい技術、ア
ではなくて高齢者、65 歳というのはあまり高
イデアもいま出ていますよね。短期的には、や
齢と思わないのですが、65 歳から 74 歳の人た
っぱり天然ガスしかないなあということでし
ちの労働参加率を上げること。及びこのエネル
ょう。
ギー問題。これは本当に取り組めるかどうか、
これは正念場です。幾つかの正念場があるので、
ただ、もうちょっと長期的にみれば、ソーラ
ー対水素という議論が進んでくると思います。
結構おもしろい年だなと思います。まあ関が原
最近は、水素と言っている人が多くいます。実
合戦だと思えば、誰が小早川秀秋さんになるの
は、この前ちょっと本を読んでいましたら、10
かということはちょっと知りたいなと思って
年前ぐらい、ブッシュ大統領の 2003 年の所信
おります。
演説の中で、水素社会ということを言っていた
<質疑応答>
のです。それにお金をつけて、720 ミリオンド
ルですから、720 億円ぐらいの金を費やしたん
司会
まず司会者から質問させていただき
ですが、全然だめだったのですね。進まなかっ
ます。金融政策のところで、来年には引き締め
た。
の議論が出るのではないかとおっしゃってい
で、オバマ政権になって何をしたかというと、 ました。引き締め議論がどう始まるのか、この
辺を具体的にご説明いただけるとありがたい
では、同じお金を今度電池技術、蓄電技術に充
です。
てましょう。これはかなりうまくいっていると
ころもありますが、まだ開発がちょっとおくれ
ている。すなわち、まあ 10 年たっているから
フェルドマン まず、アベノミクスがここ 2
もっとよい技術が水素社会にしても、電気とか、 年間、特に第三の矢、どこまで進むかというこ
ソーラー技術にもあると思いますけれども、こ
とが一番大きいと思います。なぜ 17 年 4 月 1
れらの技術がものすごく競争化しているので
日に税を上げるということを総理がおっしゃ
す。
っているかというと、それまでに第三の矢をぐ
すなわち、原発ばっかりをみて、何%にする
んと進めなければ、また大変な不況になる。す
かよりも、むしろ原発がもし使えない場合にど
なわち自民党を背水の陣にする、そういうよう
ういう技術が一番よいのか、または、開発にど
な戦略があったということではないかと思い
ういうふうにお金を使っていくのかというこ
ます。「背水の陣」という表現は、実は甘利明
とを決める、これが本当のエネルギー政策では
経済再生大臣が、12 月 26 日、ブルームバーグ
ないかと思います。
さんのパネリストディスカッションで 2 回も
15
使っている。そういう気持ちだったと思うんで
は政策運営をすべきなのか、また、移民につい
すね。
てどうお考えになるか教えてください。
うまくいくとすれば、消費税を上げても問題
ないのですね。加えて、17 年までにおそらく、
フェルドマン まず、介護に関してはやっぱ
労働市場はかなり逼迫になって、賃金が上がっ
り労働力不足だと思っています。ケアが必要だ
ているはずです。賃金がもう 12%ぐらいにな
という方も多くなっているし、悲鳴を上げてい
っているということであれば、消費税を上げて
るところがたくさんある。これは絶対、市場が
も上げなくても、やっぱり日銀が目標を達成し
動けるような形の介護の業界をつくらないと
ているということです。だんだん出口というか、 いけない。いまは制度上、賃金を上げられない、
テーパリング(量的緩和の縮小)が始まっても
非常に官製市場だということが問題だと思う。
全然おかしくない。逆に、そうしなければ債券
もっと自由に業界が動けるようなルールをつ
市場は大変だということですね。いずれにして
くっていけばいいのかなと思います。医療のほ
も大変だということかもしれません。結構、そ
うは、本当に人が足りないということは正しい
れも正念場の一つではないかなと思いますね。
のか、ちょっと疑問ですね。需要が多過ぎると
もう一つ、ちょっとおもしろいのですけれど
いう問題もあると思うんですね。
も、昨年、10 月 31 日、日銀が第二弾のQE(量
すなわち、例えば、もうそろそろ 20%にな
的緩和)をやりましたね。GDPもひどくて、
っていきますけれども、高齢者ですと 1 割しか
物価がちょっと悪くなっているという状況の
払いませんよね、自己負担。そうすると、需要
中で緩和した。その後消費税を延期し、原油が
曲線、供給曲線が交差するところに量と価格は
ぐーんと下がってしまったことがありました。
決まらないのですね。どこで決まるかというと、
ちょっとやり過ぎたという結論ですね。
量は個人たちが決めるんです。医者に行きます。
いま債券市場の人たちに、なぜこれだけ日本
価格は、供給曲線で決まるんですけれども、ど
の金利が下がっているのかということを聞き
こで決まるかというと、需要者、すなわち患者
ますと、まあ日銀が買い過ぎているからかな?
が 1 割払うところで決まるので……。需要が多
ということですね。で、もし消費税を延期して
過ぎるのです。これは一つの解決策ですね。だ
いない、原油価格が下がっていないということ
から、自分がお願いしているところに、自分で
であれば、あの政策は絶対正しいということで
お金を出すということは一つの解決策です。
す。私は正しいと思いましたけれども、状況が
もう一つは、65 歳から 74 歳の人たちにもっ
変わったわけですから、80 兆円がちょっと多
と労働市場に参加していただくことです。なぜ
くて、早くテーパリングしてもおかしくないと
かといいますと、働いていると頭が回ったり、
思います。もちろん、テーパリングはしないと
やりがいがあって元気になるんです。これは事
思いますが、ちょっと 17 年までにテーパリン
実だろうと思います。何か論文を読んでいるわ
グしてもいいよね、という雰囲気は、消費税が
けではないのですが、たぶんそうだろうなと思
あってもなくても、あるだろうということでは
います。働いて動いていると病気しない。加え
ないかなと思います。
て、本当に正しいかわかりませんけれども、働
いている限りあまり医者に行けないでしょう、
質問
いまほど。だって、クリニックがサロンになっ
人手不足の問題を何回か指摘されま
した。それに対して、経済政策がどうあるべき
ているという話をよく聞きますよね。なので、
かということでちょっとお聞きしたいんです。
元気になっていただいて、社会に貢献して、需
要も減ります。加えて、価格メカニズムを使っ
いま日本で人手不足が非常に深刻な介護です
て需要を減らすという面も非常に大事ではな
ね、介護とか医療はメディカルスタッフ非常に
いかなと思います。
足りないですね。人手不足の問題に関して日銀
16
あとは、やっぱり予防、治療をもっと強調す
いう構造改革をやるべきだよね、ということを
るとか、そういうようなこともあります。若い
もうちょっと言ってほしい。そういうことをや
人たちは、何となくわかっているようですね。
っていないからといって、金融政策を怠けよう
いま、弊社のあるアナリスト、30 歳代半ばぐ
ということはないと思います。政府が、もう政
らいの方に聞きましたけれども、「高齢化で、
府のやるべきことをやっていなければ、物価上
あなたの世代、大変だよね。どうするの」と聞
昇率 2%になったら、もう引き締めるべきだと
いたら、この方、すごくいいことを言ったんで
思います。そうしないと、全体がおかしくなっ
すね。「まず、健康をうまく管理する。病気に
てしまう。ハイパーインフレになってしまうの
ならないような生き方をします」。だって、働
です。
けなければ本当に大変だと、若い人もわかって
いるわけですね。だから、医者に行かなくても
質問
いいような社会をつくって、医者たちが本当に
ITが、そしてグローバル化が資本の
回転を実態以上にものすごいものにしている。
大事なところへ行けるような需要の管理、それ
貯蓄より投資へと導こうとしている。日本には
が一番いいやり方ではないかなという感じが
シリコンバレーのような発想力もなければ、移
します。
民を受け入れる度胸もない。先ほど上司とのお
高齢者と移民の話もありましたけれども、さ
話がございましたが、あなたにも若い連中から
っきちょっと申しあげましたけれども、高齢者
慕われて、さまざま聞かれる状況もあるだろう
の参加、賃金が上がったら、高齢者がもっと適
と思う。あなたご自身の世代論的な感覚で、そ
材適所のところに行けるようにする。
れが日本をちゃんと道を切り開いてくれるだ
移民の話ですけれども、私も移民ですが、も
ろうかというところをお伺いします。
っと入れるべきではないかなと思います。犯罪
がふえるのかなとか、そういう問題もあります。
むしろ、いま外国人労働者か移民かということ
フェルドマン
生活水準を守りたい、すなわ
ち高齢者の世代を支える技術と若者をつくっ
が議論になって、外国人労働者、すなわち短期
ておかないといけないですね。これが生産性で
間来日して、働いていただいて帰る、そういう
す。生産性が上がらなければ高齢者を支える社
ような仕組みでやりましょうということにな
会はできない。そういうことを慎重に慎重に少
っています。専門家に聞きますと、これは逆だ
と。すなわち短期的に来て稼いで帰る人たちは、
その国の社会をあまり考えない。むしろ長くい
て、根をおろして、この国のために何かやる、
自分の将来もある、彼らのためにそういうよう
しずつやっていこうということは、むしろ高齢
者の生活水準を落とすような結論になってし
まうんですね。だから、やるかやらないかじゃ
なくて、どうやってうまくやるかということが
むしろ問題だと思いますね。
な政策をとっている国はうまくいっている。そ
この議論をアメリカ、欧州の人たちに話をし
うではない国はうまくいっていない。
ますと面白いです。自分の将来は若者にかかっ
まあ、全てがいい、悪いところは全くないと
いう移民政策はもちろんありませんけれども、
介護問題を考えると、ロボットだけではちょっ
ているよ、ということを言うと、日本の高齢者
はわかってくれるんです。一方、欧米の人たち
はわからない。だから、議論が進んでいるとい
と無理でしょう。むしろ日本に来て、長く働き
うことです。とにかく、日本人とは何かという
たい人たちを呼んで、働いていただく、そのほ
難しい議論があります。日本ほどどんどん変わ
うがむしろいいのかな、と思います。
っていった国はあまりない。あまり心配するこ
日銀の政策運営についてです。日銀はこうい
とはないと思います。むしろ変わっていく国だ
うことを考えて政策を決めるかということで
ということが日本の体質ということを信じて、
すけれども、そうではないと思います。日銀は、
そういう国をつくって、ちゃんと高齢化できる
やっぱり金融政策ですから、政府に対してこう
17
国をつくっておくということがむしろ正しい
まうのです。それはいいんですけれども、では、
やり方ではないかなと思いますね。
とめた人たちのかわりに、お金を使う人がすぐ
世代論的な感覚ももちろんあります。それで
出るかというと、そんなにすぐ出ない。米国の
よかったなと思うんですよ。息子にいつも言っ
消費者はすぐ使ってしまう面もありますけれ
ている。とにかくおやじの失敗を繰り返すな、
ども、下がった原油価格が普通の人たちに流れ
自分の失敗をすればいい、そういうことを言っ
てくるまで時間がかかってしまう。なので、ず
ているんですね。
れが出来てしまうんですよね。ずれが問題であ
だから、彼らが考えてやっていかなければ、
創造力なくて、私たちを支える力がなくなって
るから、じゃ、下方修正しましたということだ
ったらまだわかる。どうもいまエコノミストの
人たちの中で、あ、原油価格が下がって、物価
しまうんですね。なので、かなり若い人たちを
指数が下がって、これはデフレだ、よくないと
尊敬しているんですよ。40、50 歳代はまあま
いうことが言われていますね。
あと思いますが、20 歳代はすごい。本当にす
で、先週、ECBの総裁のドラギさんと一緒
ごいんですよ。
だったんですけれども、物価水準が下がると、
まず英語力が上がっているんですよ。5 年前
企業が物価を下げて、さらに賃金が下がる。そ
に比べて、かなり上がっていると私は思うんで
ういう悪循環が発生するから、金融緩和しない
すね。いろんなレストランに行ったりしますけ
れども、すぐ英語を話し出す人もいるんですよ。
私は若い人たちを尊敬して、かなり頑張ってい
といけない。欧州は、昔はそういうメカニズム
があったんですね。大きな組合がいろんなこと
を考えて交渉して、全体の賃金を決めるという
るとむしろ思っています。
ことがあった。いまの時代、果たしてそうなの
かと疑問です。日本は全然そうなっていません
質問 原油価格の低落について、お伺いした
ね。むしろ、原油価格が下がって、原油輸入国
い。IMFとか、世界銀行は、前回の見通しか
は上方修正すべきだと私は思うんですね。
ら、今回、成長率見通しを上げるかと思ったら、
逆に下げている。アメリカだけは上げています
たら、ちょっと議論しようかなと思っておりま
けれども、この点はどういうふうにお考えです
す。何やってんだと、ちょっと思います。
か。
フェルドマン
だから、今度、世銀、IMFの方が日本に来
質問
国によって全然違うという
アベノミクスの第三の矢のところで、
雇用のところで、サラリーマンエグゼンプショ
こともあります。例えばロシア、われわれの言
ンのお話をなさいました。正規と非正規の雇用
っている-1.7 じゃなくて、もっとひどいマイ
の問題ですね、非正規の方の解雇があまりにも
ナスになってしまうのではないか。原油を輸出
たやすくでき過ぎている。もう少し解雇規制を
している国々はもちろん大変なことですね。こ
少しかけて、やっぱり準社員とかいうような形
れでは成長が下がってしまいます。ただ、日本
にして、あるいは保険や年金も少しつける。そ
及び欧州は上げるべきだと思っています。IM
れは企業の生産性ということから言うと逆行
Fはちょっと間違っている。世銀、間違ってい
なのかもしれません。非正規の雇用形態を少し
る。そういう国に関しては間違っていると思う
上げて、それから終身雇用の正規のほうは、エ
んですよね。
グゼンプションというような形で、少しコスト
ただ、なぜそういうことを言うかというと、
を下げる。そうしたことは、国全体の消費とか、
例えば弁護しようとすれば、米国が一番はっき
社会保障もある程度充実したほうが日本の将
りしている。原油価格が下がると、当然原油な
来にもいいのではないでしょうか。やはり生産
どエネルギー業界に投資している人たちはす
性とかいう面からみると、なかなかこれは難し
ぐプロジェクトをとめます。怖いからとめてし
いんでしょうか。
18
フェルドマン 私はむしろ、本当に若い人た
10 人はいわゆる公的代表、10 人が労働者代表、
ちの将来を考えているということであれば、逆
10 人が使用者代表になりますけれども、公的
のことをやったほうがいいと思います。だから、 代表は、10 人の中 8 人で、東京周辺の大学の
いま規制されていない人たちにもっと規制を
先生です。地方はいない。労働者代表は、全員
かけるよりも、規制で無理に守られている人の
組合の人です。使用者代表は 10 人の中 7 人が
規制を緩くするということです。
経団連の人です。経団連に入っている会社です。
グラフが 1 つあります(資料編 14 ページ参
すなわち、この労働政策審議会は、このブルー
照)。やっぱり労働市場は、二重構造ですね。
の人たちの固まりです。若い人たちを考えてい
これは財務省の法人企業統計からとった数字
ない。
です。横軸が雇用者の数で、縦軸が年収です。
なので、あのやり方を刷新して、もっと広く
大企業、すなわち資本金 10 億円以上の企業。
みんなの労働市場を把握できるような政策提
10 億円以下の企業、ラーメン屋さんとか小さ
案のできるところをつくるべきだと思います。
いのは入っていませんけれども、中堅企業をみ
この人たちは自分の生産性より高い賃金をも
てみると、こうですね。大企業の雇用が 703
らっているんですね、平均的に。誰が犠牲者に
万人、中堅は 2,790 万人ですね。この 2 つの雇
なるかというと、この 8 割の人たちです。これ
用の違いです。
がアンフェアですよね。なので、規制をもっと
年収はどうかとみてみますと、大企業は、1
かけるということ、全体のパイが縮小するだけ
人 704 万円です、
中堅のほうは 418 万円ですね。
だから、むしろこの人たち、もうちょっと頑張
大企業の平均的な人が、中小企業の平均的な人
っていただきましょうということで、みんなが
間より 75%ぐらい生産性が高いのかというこ
労働同一賃金の市場をつくる、そういうような
とですと、信じにくいですね。
ことがむしろ若い人を育てる、フェアな社会に
なる、ということになるのかなと思います。
だから、問題は、この人たちが守られていな
いというよりも、この人たちが守られ過ぎてい
るということだと思います。なので、ホワイト
司会
恒例ですけれども、クラブにフェルド
カラーエグゼンプションをもっと広げて、適材
マンさんからいただきましたメッセージをご
適所の労働市場をもっと徹底すべきだと。
紹介いたします。「アベノミクスの正念場」と
書いていただきました。本日はどうもありがと
なぜそうならないのかということですと、私
うございました。
は労働政策審議会が問題だと思います。労働政
策審議会の構成をみてみますと、30 人います。
19
(文責・編集部)
2015年1月
日本経済
日本経済
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
Japan
デフレからの脱出:信用するが、確認もする
Morgan Stanley MUFG Securities Co., Ltd.
ロバート・アラン・フェルドマン、Ph. D.
チーフエコノミスト
改革速度
世界経済の概況
日本経済
政策見通し
金融見通し
財政見通し(短期・長期的)
ミクロ経済改革
市場見通し
労働力: 問題はここに
グローバル・エネルギー問題
CRICサイクルの位相図
改善
反応
経済反応
曲線
怠慢
日本経済、市場見通し
経済見通し
GDP、暦年
年度
消費者物価* 暦年
年度
市場見通し
円相場
10年国債利回り
TOPIX**
2014e
%
2015e
2016e
0.2
-0.9
0.6
0.6
0.6
1.4
0.7
0.8
1.8
2.1
1.4
1.6
127
1.10
1680
125
年末
120
0.70
1410
* 食料、エネルギー、消費税を除く
危機
改革反応
曲線
** 1410は現時点、1680は15年12月予想
e = モルガン・スタンレー・リサーチ予測
2014年12月1日時点
出所:モルガン・スタンレー・リサーチ。
成長率
重要な開示事項は本レポート巻末の情報開示セクションをご参照ください。
本レポートにおいて推奨または論じられている発行体または当該発行体の債券は、債券市場の性質上、継続的な調査対象とはならない場合があります。投資家各位には、本レポートは単独の分析
結果を提供するものであり、かかる発行体または当該発行体の債券を対象とした継続的な分析や追加レポートの発行は予定されていないことをご理解のほどお願い申し上げます。
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
世界経済の見通し: 低インフレとの闘い
各国の政策移行は進んでいるか?
移行
米国: 量的緩和からフォーワード・ガイダンスへの移
1
行は継続。
14年
14年
14年
14年
3月
6月
9月
12月
⇗
薄緑
2
日本: 14年後半の懸念材料はあるが、デフレからイ
ンフレへの移行は進む。
緑
⇗
黄
3
ユーロ圏: 銀行監督制度の統合、金融制度の資本充
実への進歩。
途上国: 一部の国(インド、インドネシア、トルコ)では、持続
性のある成長モデルへ移行始めている。
黄
オレンジ
黄
⇒
黄
↑↓
オレンジ
薄緑
⇘
⇗
⇗
赤
⇒
⇗
⇘
緑
薄緑
黄
黄
5
⇒
⇗
中国: 市場中心への移行はあるが、予想以上に成長
は減速している。
⇒
緑
薄緑
オレンジ
4
⇒
黄
↑↓
オレンジ
オレンジ
結論: ゆっくりながらも、進歩はしている。
出所: モルガン・スタンレー・リサーチ
2
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
市場予想: 利回りは上昇、円安は進み、株価は上がる
マクロ動向の見通し
1.日米金利格差が開くと思われる。
2.その結果、円安が進む可能性が高い。2015年末は1ドル127円と弊社は
予想している。
3. 景気回復は続くが、企業収益が上昇し、株価も上昇すると思われる。
58bp
115bp
160bp
220bp
195bp
215bp
出所: モルガン・スタンレー・リサーチ
3
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
円安効果がインバウンドの活性化を高め始めている
実質輸出入(2010年=100)
実質輸出
インバウンド・ツーリズム
実質輸入
12か月移動平均
観光収入(年換算、兆円)
125
2.5
120
2.0
115
輸 入
1.5
110
105
1.0
100
輸 出
0.5
出所: 内閣府、日本銀行、経済産業省、モルガン・スタンレー・リサーチ
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
0.0
2001
05/15
01/15
09/14
05/14
01/14
09/13
05/13
01/13
09/12
05/12
01/12
90
2000
95
出所: 内閣府、日本銀行、経済産業省、モルガン・スタンレー・リサーチ
4
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
物価: 2015年度に物価上昇率2%に達成するには早期の加速が必須
2.5
全国 消費者物価(消費税効果を除く)
総合
2.0
生鮮食品除く総合
1.5
食品・エネルギー除く総合
1.0
食品・エネルギーを除
く総合の消費者物価
指数は停滞気味。
0.5
0.0
-0.5
しかし、東大日次物価
指数では改善し始め
ている。
-1.0
-1.5
01/2015
05/2014
09/2013
01/2013
05/2012
09/2011
01/2011
05/2010
-2.0
出所: 内閣府、モルガン・スタンレー推計
東大日次物価指数と物価指数(消費税効果を除く)
2.0
東大日次物価指数
1.5
物価指数(消費税除く)
1.0
4
総報酬、雇用、時間、賃金(12か月移動平均、前年同月比%)
3
2
1
企業収益は好調(前年
同月比2%) な一方、
時間当たり賃金は同
比0.7%前後(12か月
移動平均)と緩やかに
上昇している。物価に
わずかな上昇圧力が
示されている。
0
-1
-2
0.5
-3
0.0
-0.5
総報酬
雇用
時間(1労働者あたり)
賃金(1時間あたり)
-4
-1.0
-1.5
2009
01/2015
09/2014
05/2014
01/2014
09/2013
05/2013
01/2013
-2.0
2010
2011
2012
2013
2014
2015
出所: 内閣府、モルガン・スタンレー推計
出所: 内閣府、UTokyo Price Project (http://www.price.e.u-tokyo.ac.jp)
モルガン・スタンレー推計
5
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
アベノミクス: 難題は生産性の伸び
Y = (Y/L) * L
労働生産性の伸び率 (%), 2004-13年
2.5
中期的に、成熟したOECD諸国では、
研究開発費の対GDP比率が1%ポイント
上昇すると生産性の伸びが約0.4%ポ
イント上昇することになる。この計
算が示唆するのは、高齢化問題を克
服し2%の実質成長に必要とされる年
間2.5%の労働生産性の伸び率を達成
し、アベノミクスを成功に導くには
、研究開発費の対GDP比率を現3.3%か
ら約6.5%に引き上げなければならな
いということである。これは年間約
16兆円の追加的な研究開発費に相当
する。
%Y = %(Y/L) + %L
研究開発費と生産性の伸び
y = 0.4065x - 0.1606
R² = 0.437
2.0
米国
1.5
日本の生産性の伸びはいくつか
の要因から生じている:
より多くの資本ストック
より良い資本ストック
より良い労働の質
より良い技術
より良い資源利用
日本
1.0
0.5
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
これら全ての生産性資源は将来
にも同様に利用するために必要
となるだろう。
-0.5
研究開発費の対GDP比 (%), 2004-11年
出所: 日経NEEDS、OECD、モルガン・スタンレー推計
6
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
政治がアベノミクスを止める?戦いは自民党内部で
外交政策
積極的
自民党
改革派
経済政策
守旧派
その他
右派
公明党
大きな政府
小さな政府
民主党
その他
左派
消極的
合計
右派
連立与党
自民党
公明党
その他*
左派
民主党
その他**
その他
衆議院
475
368
325
290
35
43
98
73
25
9
参議院
242
152
134
114
20
18
74
58
16
16
* 維新(41)、次世代(2)
** 生活第一(2)、共産(21)、社民(2)
出所: モルガン・スタンレー・リサーチ
7
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
金融政策: エネルギー価格を除くCPI指数の導入を日銀が行う可能性が高いとみる
GDPデフレーター
vs. 各種CPI (%, 年次データ),
1990-2014
GDPデフレーター
vs. 各種CPI指標
(1990-2014年)
歴史は明らかだ: (1) 原油価格の下落は日本にと
ってインフレ要因、(2) エネルギー価格を除いた
CPI指数はエネルギー価格を合わせたCPI指数より
も賃金とGDPデフレーターの先行きを予想するのに
適している。
4
GDPデフレーター (%)
LN(時間当たり賃金)
LN(CPI生鮮食品を除く総合)
CPI.xffxe(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)
y = 0.6906*CPI.all + 0.6084
R² = 0.6784
y = 0.6645*CPI.xff + 0.5955
R² = 0.6654
2
y = 0.7559*CPI.xfe + 0.5111
R² = 0.8219
1
y = 0.774*CPI.xffxe + 0.5893
R² = 0.8231
0
-1
4.8
ln(時間当たり賃金) =
-0.0245* ln(原油価格) + 4.8334
R² = 0.5758, 1995-2014
4.7
-2
-3
4
4.6
4.6
4.5
7.5
8.0
8.5
9.0
9.5
10.0
Log 原油価格 (円)
出所: 内閣府、日経NEEDS、モルガン・スタンレー推計
10.5
11.0
11.5
0
1
2
3
4
5
6
7
時間あたり賃金
vs. 各種CPI指標 (1990-2014年)
時間当たり賃金 vs. 各種CPI (%, 年次データ), 1990-2014
ln(CPI生鮮食品を除く総合) =
-0.0033* ln(原油価格) + 4.642
R² = 0.0143, 1991-2014
7.0
-1
出所: 内閣府、日経NEEDS、モルガン・スタンレー推計
ln(GDPデフレーター) =
-0.0923* ln(原油価格) + 5.3855
R² = 0.8079, 1980-2014
4.7
-2
CPI変化率 (%)
時間当たり賃金の変化率 (%)
Log GDPデフレーター,
Log 時間当たり賃金, Log CPI
CPI.xff(生鮮食品を除く総合)
CPI.xfe(食料及びエネルギーを除く総合)
3
vs. GDPデフレーターと時間当たり賃金
原油価格 vs. 原油価格
GDPデフレーター
と時間あたり賃金
LN(GDPデフレーター)
CPI.all(総合指数)
12.0
CPI.all(総合指数)
CPI.xff(生鮮食品を除く総合)
CPI.xfe(食料及びエネルギーを除く総合)
CPI.xffxe(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)
y = 0.4327*CPI.all - 0.0609
R² = 0.7407
3
y = 0.4332*CPI.xff - 0.06
R² = 0.7865
2
y = 0.4602*CPI.xfe - 0.2125
R² = 0.8472
1
y = 0.4687*CPI.xffxe - 0.1498
R² = 0.8393
0
-1
-2
-3
-1
1
3
5
7
9
11
13
CPI変化率 (%)
出所: 内閣府、日経NEEDS、モルガン・スタンレー推計
8
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
雇用判断DI は、優れた景気判断指数を持ち、賃金の加速を示唆
日銀短観: 雇用人員DI
日銀短観と雇用人員DI
(DI)
40
賃金伸び率と雇用人員DI(短観)
(対前年同月比, %)
-60
50
8
プラス値は人余りを、マイナス値は人手不足を示す。
-50
30
過剰
20
-30
10
-20
0
-10
-10
0
-20
労働不足
6
-40
不足
4
過剰
2
0
10
-2
-30
2000
2001
2003
2004
2006
2007
2009
2010
2012
2013
2015
20
出所: 日本銀行、モルガン・スタンレー・リサーチ
日銀雇用人員DI(左目盛)
2015
2013
2011
2009
2007
2005
2003
全産業合計
2001
非製造業、小
1999
非製造業、中
非製造業、大
1997
製造業、小
1995
製造業、中
1993
製造業、大
-4
1991
30
賃金伸び率(右目盛)
出所: 日本銀行、厚生労働省
DependentHourly wage increase YTYPCT(mave(WSI10T00@/HWI10T00@,2))
Explanatory
Labor shortage DI
-esjgtem
Explanatory
Labor shortage DI
-esjnsem
Equation: wage.hryy = a + b * shortage [t-x]
Equation: wage.hryy = a + b * shortage.nmf.s [t-x]
t-stat on
DW (AR
t-stat on
DW (AR
lag
Coefficient
Adj R2
lag
Coefficient
Adj R2
shortage
1)
shortage
1)
0
0.034
1.923
0.904
1.655
0
0.043
2.153
0.904
1.648
1
0.053
3.179
0.908
1.737
1
0.058
3.061
0.906
1.743
2
0.071
4.567
0.915
1.869
2
0.081
4.634
0.913
1.775
3
0.079
5.187
0.918
1.800
3
0.080
4.536
0.910
1.800
4
0.048
2.855
0.905
1.682
4
0.064
3.483
0.906
1.656
5
0.013
0.709
0.895
1.631
5
0.030
1.439
0.895
1.631
6
0.005
0.254
0.885
1.658
6
0.004
0.180
0.885
1.663
Freqency:
Quarterly data
出所: モルガン・スタンレー・リサーチ
9
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
2匹のワニ: (1) 歳入と歳出、(2) 社会保障歳出と営業歳出
200
(兆円)
一般政府勘定
150
社会保障と営業勘定
(兆円)
190
180
125
170
160
100
150
140
75
130
120
2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015
歳入
歳出
出所: 内閣府、国民経済計算、モルガン・スタンレー推計
50
2001
2004
2007
社会保障
2010
2013
2016
営業歳出
出所: 内閣府、国民経済計算、モルガン・スタンレー推計
10
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
財政再建: 人生は選択だ
増税 vs 歳出削減: 何割ずつか
財政再建には、三つの選択肢がある: 1 財政審議会は、消費税が
10%になっても、公的債務
(1) 増税と歳出削減の割合、
の対GDP比率を安定させる
(2) 歳出構成の選択、
には60兆円の更なる財政
(3) 税収構成の選択、
調整が必要だと計算してい
である。
る。次の組み合わせのいず
投資家、及び一般国民はどう思って
いるのだろうか。
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
れかの中で、どれが望まし
いか。
2 2012年度は、公的部門の
歳出総額(連結ベース)は
191兆円。 社会関連は約
125兆円(65%)。
2020年に、公的歳出の構成
はどうすべきか。
日本人投資家の答え
一般国民の答え(およそ)
30%
増税の割合 (=大きな政府) / 歳出削減の割合 (= 小さな政府); 最終
消費税換算
税制構造
日本人投資家の答え
一般国民の答え(およそ)
60%
50%
25%
40%
20%
30%
15%
20%
10%
5%
10%
0%
0%
75%/25% 70%/30% 65%/35% 60%/40% 55%/45% 50%/50%
社会歳出の割合(大きな政府) / その他の歳出割合(小さな政府)
一般国民の答え(およそ)
100/0
75/25
50/50
25/75
0/100
=CTax: 34% =CTax: 28% =CTax: 22% =CTax: 16% =CTax: 10%
歳出構造
35%
日本人投資家の答え
90%/10%
80%/20%
70%/30%
60%/40%
50%/50%
3 2012年度の歳入総
額は139兆円。その
中で、消費税、生
産課税、資産課税
は27%、個人およ
び所得に対する租
税(含む社会負担)
は73%。2020年に
は、どの構成が望
ましいか。
直接税の割合(大きな政府) / 間接税の割合 (小さな政府)
出所: モルガン・スタンレー・リサーチ
11
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
第三の矢: 一部の分野ではそれなりの進展…
2013年4月4日
4
選挙改革
農業
2015年1月8日
一部の分野は進展しているが、 他の
分野では停滞している。3本の矢の改
革が加速するかは新内閣が決定づけ
よう。
医療
3
2
移民
エネル
ギー
1
0
税制
教育
企業統治
全ての分野で欠けている重要な要素
は財政面の議論-すなわち、歳出の
あり方をどの程度まで変え、新しい取
り組みの財源を捻出するために何を削
るのか。
行政
雇用
評価判断: A=4, B=3, C=2, D=1, F=0; + と – はそれぞれポイントの1/3として数える
出所: モルガン・スタンレー・リサーチ
12
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
労働市場: 女性の労働力参加率上昇は、高齢化の穴埋めには至らない
女性の労働力参加率: 日米比較
(%)
90
90
(%)
日本 '88年の労
働力参加率
労働力参加率: 男女の比較(15歳以上人口)
80
70
60
85
80
男性
75
日本 '12年の労
働力参加率
50
40
30
70
20
USA '11年の労働
10
力参加率
65
60
0
55
女性
50
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
~
19
~
24
~
29
~
34
~
39
~
44
~
49
~
54
~
59
~
64
~
69
~
74
75
~
日本 '88年の労働力参加率 16.3 73.3 58.1 51.2 62.1 67.4 68.7 63.6 50.9 38.3 26.5 16.5 6.5
45
日本 '12年の労働力参加率 14.6 68.9 78.1 69.0 68.0 71.6 75.0 73.3 65.1 46.5 28.0 16.6 5.3
40
1953
1961
1969
1977
1985
出所: 総務省、労働力調査、モルガン・スタンレー推計
1993
2001
2009
USA '11年の労働力参加率 34.6 67.8 74.4 73.4 73.7 75.6 76.5 74.3 67.8 50.3 27.3 14.6 5.4
資料: 労働政策研究・研修機構、
http://www.jil.go.jp/english/estatis/databook/2013/02.htm
様々な年齢層における女性の労働力率の上昇が女性全体の労働力率の低下に十分歯止めをかけている。
しかし、日本の女性の労働力参加率は米国のそれと同程度である。
13
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
二重労働市場: 企業の規模別
賃
金
Dl 大企業
労働力需
要曲線
Sl 大企業
労働力供
給曲線
704
万円
アベノミクスは目に見えない問題、すなわち労働
市場の二重構造問題を抱えている。大企業向け
労働市場を支援する政策(例えば円安政策)は
中小企業向け労働市場にとっては悪化要因とな
る。
二重構造の労働市場において、賃上げを達成
するには、需給曲線ともに上方にシフトさせるこ
とが求められる。
Dn 中小企業
労働力需要
曲線
Sn 中小企業
労働力供給
曲線
418
万円
値は2013年
703万人
2,790 万人
雇 用
出所: 財務省 法人企業統計、モルガン・スタンレー・リサーチ
14
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
日本はエネルギー効率の良い国であり、CO2排出量の低い国でもある
世界のエネルギー効率度
エネルギー効率: 日米比較
100
1.0
中国
米国: Btu/セント(2009年連鎖値)
C02 強度( tonnes/Th $ 2005 GDP)
0.9
90
日本: Btu/ 円 (2005年値)
0.8
80
0.7
米国
0.6
70
0.5
日本
60
0.4
0.3
50
0.2
40
0.1
0.0
2
3
4
5
6
7
エネルギー強度 (quads/$trl GDP)
出所: 米国エネルギー省, www.eia.gov.
8
9
10
30
1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012
出所: 米国エネルギー省, www.eia.gov.
日本は、世界比較ですでにエネルギー効率が高い国であるが、高エネルギー価格を相殺するために、エネルギ
ー効率をさらに大幅に改善する必要がある。
15
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
エネルギー: 過去20年と前提条件が変わる場合はどうなるだろうか?
暗雲シナリオ
Black Clouds Scenario
青空シナリオ
Blue Skies Scenario
1,400
1,400
1,200
1,200
1,200
1,000
1,000
1,000
800
800
800
400
400
200
200
R quantity
現在のトレンドが続く場合、 再生
可能資源はシェアを拡大、しかし
抽出型エネルギーの絶対使用量は
引き続き増加しよう。
X quantity
R quantity
すべてが悪い方向に動く場合、 再
生可能エネルギーはシェアを拡大
するが、その理由は抽出資源価格
が高いだけのこと。 生活水準は低
下するが、人口急増により全体の
エネルギー使用量は急増する。
X quantity (lhs)
2060
2055
2050
2045
2040
2035
2030
2060
2055
2050
2045
2040
2035
2030
2025
2020
2015
2010
2060
2055
2050
2045
2040
2035
2030
2025
2020
2015
2010
X quantity
2025
0
0
0
2020
200
600
2015
400
600
2010
600
quads
1,400
quads
quads
現在のトレンドが続く前提
Currentのシナリオ
Trende Scenario
R quantity (lhs)
すべてが良い方向に動く場合、抽出
資源の発見が迅速に行われても、生
産とエネルギー使用両方の効率が大
幅に改善されることで、再生可能資
源はシェアを拡大しよう。人口が横
這いにとどまることも理由の一部と
なり、生活水準は向上しよう。
出所: モルガン・スタンレー・リサーチ
16
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
情報開示セクション
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本調査レポートに掲載されている目標株価に関わるバリュエーション手法及びリスクについては、次のクライアント・サポート・チームまでご連絡ください:米国/カナダ +1 800 303-2495; 香港 +852 2848-5999; ラテンアメリカ
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資また投資戦略について、投資家ご自身が独自に評価されることをお勧めします。また、投資家各位にはファイナンシャルアドバイザーの助言を受けることをお勧めします。特定の投資あるいは投資戦略が適切か否かは、投資
家の個々の事情や目的によって異なります。Morgan Stanley Researchで論じられている有価証券、金融商品、投資戦略はすべての投資家に適合しているわけではなく、また一部の投資家はこれらのうちのいずれか、または
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ョンまたは特定のトレーディングデスクの収益性や収入と連動していません。
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いません。投資銀行部門の従業員を含む、Morgan Stanleyの他部門の従業員は、Morgan Stanley Researchで示されている事実や見解を検討していません。また、Morgan Stanley Researchで示されている事実や見解は、
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17
MORGAN STANLEY MUFG RESEARCH
デフレからの脱出: 信用するが、確認もする
2015年1月
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18
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