1. 経緯

1. 経緯
当事業団の活動の柱である「MOA 自然農法ガイドライン - 営農
の手引き -」
(以下、
ガイドライン)
は、
昭和 62 年に制定されました
「自
然農法技術普及要綱」がその礎となっています。この要綱が定めら
れた当初の目的は、それまで個人に委ねられ、実践されていた自然
農法が、多くの農業者に、体系的かつ永続性のある農法として受け
入れられ実践していただけるよう、家畜糞堆肥の使用などの技術上
の許容範囲を明確にし、現場における技術指導や農産物の認定に関
する基準(枠組み)を統一することにありました。これによって自
然農法の生産性が向上し、多くの人が自然農法に取り組むと共に農
産物のマーク表示によって消費者の拡大が進み、全国に 300 余りの
産地支部(現、普及会等)が発会しました。
その後、国民の有機農産物への関心が高まる中、私どものガイド
ラインを参考に、地方自治体、さらには国が有機農産物の栽培指針
や表示のルールを定めるようになり、平成 12 年には、有機 JAS 法
が制定され、有機農産物の基準が明確になりました。一方、自然農
法の生産者には認可資材に依存する傾向が強くあり、有機農業と自
然農法の違いが不明療になりました。そのような状況に鑑み、平成
19 年、自然農法の現代的意義を明らかにし、岡田茂吉が示した本
来の自然農法(以下、本来の自然農法)の実践に向かって生産者が
努力していただけるよう、
ガイドラインの大幅な改定を行いました。
近年、生産現場では、資材に依存した栽培では品質低下や病虫害
などの問題を解消できないことから、各地で生産者が本来の自然農
法に取り組み始めています。加えて、
消費者、
特に子育て世代の方々
の農産物の安全・安心への関心が高まる中で、栽培に使われた資材
を確認するなど、
より自然なものを求める方々が増えつつあります。
7
MOA 自然農法ガイドライン
さらに、化学物質過敏症やアレルギー症に悩む消費者も急増してお
り、健康志向の高まりも相まって、より良いものを求める消費者は、
今後益々増えることでしょう。
しかしながら、現行のガイドラインでは、例えば、家畜糞堆肥を
使用しないことを原則としているものの暫定的な使用を認めていま
すし、表示による区分もないことから、消費者が誤認する可能性が
あります。また、国や地方公共団体によって環境保全型農業が推進
されてきた結果、店頭に有機 JAS 表示、各自治体による特別栽培
やエコファーマーの認証、大手スーパーの独自ブランド(PB)表
示が乱立し、現行のマーク表示では、消費者に自然農法農産物の特
徴が理解されない実態もあります。
こうしたことから、当事業団では、本来の自然農法を目指す生産
者の拡大と消費者がそのような農産物を選びやすくすることを願
い、ガイドラインの新しい枠組みと表示について検討しました。
本来の自然農法とは
自然農法は、土の偉力を発揮させることで資材に頼らなくて
も作物が健全に育つことを基本としている。
このため自然観察に心がけ、自然の豊かな仕組みを農地に取
り入れ、適地適作を基本に愛情をもって作物の特徴に合わせた
栽培を行う。
最終的には、自家採種、連作をはじめ根伸びが良く固まらな
い土壌になれば、堆肥等の資材を入れなくても栽培が可能にな
るとしている。
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2. 改定案
(1)考え方
今回のガイドラインの新しい枠組みは、消費者の要望と国の動き
等(P18「参考資料」を参照)から土壌に施す資材について枠組み
を考えました。
(2)内容
①自然農法に次のようなA、B、Cの3種を設ける。
②自然農法A(仮称)は消費者の要望から、植物性資材のみを使
用したものとする。
③自然農法Bは消費者がわかりやすいことと自然農法の普及拡大
に加え、新規参入を視野に入れ、有機農産物と同じ基準のもの
とする。
④MOA特別栽培の名称を自然農法Cに改変し、削減割合を表示
する(例えば、農薬8割減)
。
⑤農産物に貼付する現行のマーク表示ではわかりにくいという消
費者の意見を勘案し、文字を加えた表示に全面的に変更する。
(マーク表示案参照)
9
MOA 自然農法ガイドライン
(3)マークの表示変更例
改定案
現行
MOA 自然農法 A
栽培期間中 農薬・化学
肥料を使わず栽培をして
います。
動物性資材不使用
MOA 自然農法 A
(仮称)
MOA 自然農法
一般社団法人 MOA 自然農法文化事業団
MOA 自然農法 B
有機 JAS に準じた栽培
をしています。
MOA 自然農法 B
(仮称)
一般社団法人 MOA 自然農法文化事業団
現行
改定案
転換期間中
MOA 自然農法 A、B
転換期間中
転換期間中
一般社団法人 MOA 自然農法文化事業団
現行
改定案
MOA 特別栽培
MOA 自然農法 C
(仮称)
MOA 自然農法 C
農薬 ○○減
化学肥料 不使用
一般社団法人 MOA 自然農法文化事業団
※名称及び表示のデザインは、今回の改定案が決定した後に募集し、決定する。
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(4)自然農法表示を取得するまでのタイムスケジュール例
基本例
慣行農法
自然農法 C
転換期間中
(MOA 特別栽培)
自然農法 B
自然農法 A
(有機 JAS レベル)
ヶ月
自然農法マーク
開始後
転換期間中マーク
開始後6ヶ月
自然農法開始日
24
自然農法 B から A へ
移 行 す る 場 合、転 換 期
間を設けない。
有機 JAS 法の認証を取得している場合
有機 JAS の認証を
取得している圃場
自然農法 A
自然農法 B
有機 JAS 法の認証を取得している場
合、生産者登録した段階で、自然農法
A もしくは B となる。
※ 有機 JAS 法の認証を取得していない無化学肥料・無農薬の圃場から移
行する場合は、基本例と同等のタイムスケジュールとなる。
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MOA 自然農法ガイドライン
(5)使用できる資材一覧
① 肥料及び土壌改良資材(○は使用可、× は使用不可)
現行
項目
従来の
基準
×
○
醗酵鶏糞、牛糞
堆肥、豚糞堆肥
○ ×
○
魚かす
△(要審査) ×
○
蒸製骨粉
△(要審査) ○
○
野菜、おから
△(要審査) ×
○
肉類、魚類
△(要審査) ○
○
動物性資材を添
加したものはA
では禁止
× ×
○
2
発酵、乾燥又は焼
成した排せつ物由
来の資材
重金属の高い資材
は認められない
3
食品工場及び繊維
工場からの農畜水
産物由来の資材
魚かすのみ
4
と畜場又は水産加
工場からの動物性
産品由来の資材
バーク堆肥
○ ○
△(要審査)
7
メタン発酵消化液
8
グアノ
△(要審査) ×
○
9
乾燥藻及び
その粉末
△(要審査) ×
○
○ ○
○
10
12
草木灰
備考
落葉、野菜くず、
米ぬか、大豆か
す、油粕、緑肥
植物及びその残さ
由来の資材
6
自然農法 自然農法
A
B
○
1
発酵した食品廃棄
5
物由来の資材
改定案
① 肥料及び土壌改良資材
現行
項目
従来の
基準
改定案
自然農法 自然農法
A
B
○ ×
○
×
○
硫酸加里
× ×
○
14
硫酸加里苦土
× ×
○
15
天然りん鉱石
× ×
○
16
硫酸苦土
× ×
○
17
水酸化苦土
× ×
○
× ×
○
× ×
○
○ ×
○
11
炭酸カルシウム
12
塩化加里
13
18
19
20
石こう
(硫酸カルシウム)
硫黄
生石灰
(苦土石灰を含む)
△(要審査)
(苦土石灰)
21
消石灰
× ×
○
22
微量要素
× ×
○
23
岩石を粉砕した
もの
○ ○
○
24
木炭
○ ○
○
泥炭
△(要審査) ○
○
△(要審査) ×
○
25
26
ベントナイト
(客土)
(客土)
pH の低いピ
ートモスのみ
備考
13
MOA 自然農法ガイドライン
① 肥料及び土壌改良資材
現行
項目
従来の
基準
改定案
自然農法 自然農法
A
B
備考
27
パーライト
△(要審査)
×
○
28
ゼオライト
△(要審査)
×
○
29
バーミキュライト
△(要審査)
×
○
30
けいそう土焼成粒
△(要審査)
×
○
31
塩基性スラグ
× ×
○
32
鉱さいけい酸質
肥料
× ×
○
ケイカル
33
よう成りん肥
× ×
○
ヨウリン
34
塩化ナトリウム
×
○
にがり
35
リン酸アルミニウ
ムカルシウム
× ×
○
36
塩化カルシウム
× ×
○
37
食酢
○ ○
○
38
乳酸
○ ○
○
ヨーグルト
39
製糖産業の副産物
△(要審査)
○
○
糖蜜
40
肥料の造粒材及び
固結防止剤
△(要審査) ×
○
41
その他の肥料及び
土壌改良資材
△(要審査) ×
○
14
△(要審査)
(糖蜜のみ)
塩カル
② 農薬
現行
項目
従来の
基準
改定案
自然農法 自然農法
A
B
備考
1
除虫菊乳剤及び
ピレトリン乳剤
× ×
○
2
なたね油乳剤
× ×
○
3
マシン油エアゾル
× ×
○
4
マシン油乳剤
○ ×
○
スプレーオイル、
トモノールS、ハー
ベストオイル
5
デンプン水和剤
× ×
○
粘着くん
6
脂肪酸グリセリド
乳剤
× ×
○
サンクリスタル
乳剤
7
メタアルデヒド
乳剤
× ×
○
ジャンボタニシ
退治粉剤
8
硫黄くん煙剤
× ×
○
サルファグレン
9
硫黄粉剤
× ×
○
硫黄粉剤 50、
硫黄粉剤 80
10
硫黄・銅水和剤
× ×
○
園芸ボルドー
11
水和硫黄剤
○ ×
○
硫黄フロアブル
12
石灰硫黄合剤
○ ×
○
石灰硫黄合剤
13
シイタケ菌糸体
抽出物液剤
× ×
○
レンテミン
14
炭酸水素ナトリウ
ム水溶剤及び重曹
△(要審査) ×
○
ハーモメイト
永年作物のみ
永年作物のみ
永年作物のみ
ガーデントップ、
除虫菊乳剤3
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MOA 自然農法ガイドライン
② 農薬
現行
項目
従来の
基準
改定案
自然農法 自然農法
A
B
備考
15
炭酸水素ナトリウ
ム・銅水和剤
× ×
○
ジーファイン
16
銅水和剤
× ×
○
Zボルドー、IC
ボルドー
17
銅粉剤
× ×
○
撒粉ボルドー
18
硫酸銅
× ×
○
ボルドー調製用
19
生石灰
天敵等生物農薬
○
○
ボルドー調製用
20
× ×
○ ○
21
性フェロモン剤
○ ×
○
コナガコン
22
クロレラ
抽出物液剤
× ×
○
クロレラ、
スペースエイジ
23
混合生薬
抽出物液剤
△(要審査) ×
○
アルムグリーン
24
ワックス水和剤
× ×
○
25
展着剤
△(要審査) ×
○
アビオン、
ペタンV
26
二酸化炭素
くん蒸剤
× ×
○
炭酸ガス
27
ケイソウ土粉剤
△(要審査) ×
○
コクゾール
28
食酢
○ ○
○
29
燐酸第二鉄粒剤
× ×
○
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BT 剤は禁止
在来天敵のみ
天敵、
BT剤、
微生物農薬
ナメトール、ス
ラゴ、ナメクジ
キラー
② 農薬
現行
項目
30
炭酸水素カリウム
水溶剤
31
従来の
基準
改定案
自然農法 自然農法
A
B
備考
△(要審査) ×
○
カリグリーン
炭酸カルシウム
水和剤
× ×
○
クレノフ
32
ミルベメクチン
乳剤
× ×
○
コロマイト乳剤
33
ミルベメクチン
水和剤
× ×
○
コロマイト
水和剤
34
スピノサド水和剤
× ×
○
スピノエース顆
粒水和剤
35
スピノサド粒剤
× ×
○
スピノエース
箱粒剤
36
還元澱粉糖化物
液剤
× ×
○
アメンコ、
エコピタ液剤
③その他
現行
項目
ナス科、ウリ科の
果菜類購入苗
1 (用土にJAS禁
止農薬不使用
2
紙マルチ
再生マルチ
従来の
基準
改定案
自然農法 自然農法
A
B
× ×
○
× ×
○
備考
連作等で接ぎ木
苗が必要で入手
困難な場合
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