家康公の さと 愛知県豊田市 【郷】 天下人を生んだ松平氏ゆかりの山里を歩く 愛知県豊田市 東海環状自動車道の豊田松平ICから約15分、山間 に国道301号を走り松平郷に着いた。緑に囲まれ た清涼な空気や、梢を渡る鳥のさえずりが何とも心 地よい。 「しかし冬は寒いところでね。昔は氷池が あって、天然の氷を氷室に保存し、夏に出荷していた くらい」。笑顔で語るのは、祖先が松平郷で勘定奉行を代々勤めていた という、松平観光協会の加藤勝信さん。案内してもらった松平東照宮 ちか うじ は、家康公と松平家初代の親氏公を祀る神社で、境内には産湯の井戸 が残る。 「1542(天文11)年の家康公誕生の際は、 ここの水を竹筒に入 れて早馬で届けたそうです。昔は、戦の前に井戸の水位や水の濁り具合 などを見て戦勝を占っていたといい、 周辺は土足で入ることも禁じられて いるほど神聖な場所でした」。 松平郷は散策道が整備されており、 水辺の風景が安らぐ天下池の先を歩 けば親氏公の像に行き着く。 「親氏公は松平郷の人々をとても大切にし、 心から泰平の世を願っていた人物と父、祖父から伝え聞いています」 と 加藤さん。 その夢は、子孫の家康公が戦のない世の中を築いたことで叶 えられた。野を駆け、山を越える力強い姿を写した 像の前に立つと、小さな郷から大きな夢を追って懸 命に生き抜いた人々の姿が目に浮かんだ。 N Note 立身出世の神としても親しまれている 松平東照宮 愛知県豊田市松平町赤原13 ☎0565-77-8089 (松平観光協会) http://www.matsudairagou.jp (松平郷ふるさとづくり委員会) 東海環状自動車道 豊田松平ICより約15分 1619(元和5)年に家康公を1965(昭和40)年に親氏公を合祀した。立身出 世の神、政治の守神、安産の神、厄除けの神としても知られる。境内には松平 家の屋敷跡や、松平家と徳川家ゆかりの品々を展示する松平郷館もある。 34 産湯の井戸 35
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