Zostera marina

別紙参考資料
【研究の背景】
アマモ場は海の草原とも呼ばれており
海の草原とも呼ばれており、陸上の森林と同様に二酸化炭素を吸収・固定
陸上の森林と同様に二酸化炭素を吸収・固定することで
温暖化や海洋酸性化を抑制したり、栄養塩の吸収や浮遊物を沈殿させることで水質を改善したりす
温暖化や海洋酸性化を抑制したり、栄養塩の吸収や浮遊物を沈殿させることで水質を改善
る機能を有しています。また、海のゆりかごとして、稚魚や多くの
る機能を有しています。また、海のゆりかごとして、稚魚や多くの海洋生物にとっての
にとっての生育の場とし
ての機能もあり、沿岸生態系の
の重要な構成要素となっています。その一方、アマモ場は
アマモ場は、沿岸開発
や環境変動が原因となって世界中で
世界中で著しい減少が報告されており、早急な対策が必要
早急な対策が必要とされていま
す。そのため、アマモ場の造成や保全
造成や保全・再生活動が世界各地で行われています
再生活動が世界各地で行われていますが、上述のような本
来のアマモ場の機能を回復させるまでに至った成功例は
を回復させるまでに至った成功例は 30%に満たないと言われています。アマモ
に満たないと言われています。アマモ
を植えても持続的に成育せずに消失してしまう例 アマモ場が復活しても変動が激しく以前のような
を植えても持続的に成育せずに消失してしまう例、アマモ場が復活しても変動が激しく以前のよう
状態に戻らない例、あるいはアマモ場は回復しても
アマモ場は回復しても期待する魚類生産までつながらない
魚類生産までつながらない例など、ア
マモ場として健全性が低い例が
が多く報告されてきました。その原因の一つとして、
その原因の一つとして、私たちの国際的な
研究グループ(Zostera
Zostera Experimental Network、米国スミソニアン研究所
Network
J. E. Duffy 博士が設立)は、
アマモ場に生息する小型の無脊椎動物の多様性が減少していることに着目し、その減少がアマモ
アマモ場に生息する小型の無脊椎動物の多様性が減少していることに着目し
場を衰退させるという仮説を立てました
場を衰退させるという仮説を立てました(図
1)。
図 1.小型無脊椎動物の多様性が高い
小型無脊椎動物の多様性が高い健全なアマモ場生態系の姿(左)と、小型無脊椎動物
、小型無脊椎動物の多
様性の減少によるアマモ場生態系の衰退
減少によるアマモ場生態系の衰退イメージ(右)
【研究の概要】
この仮説を証明するために、地球の北半球上に広範囲に拡がるアマモ(Zostera marina)の分布域
を網羅するように北米、欧州、わが国に及ぶ
北米、欧州、わが国に及ぶ 15 ヵ所の実験サイトを設置し(図
実験サイトを設置し(図 2)、アマモ場内の栄
養塩濃度、小型無脊椎動物の現存量と多様性を
小型無脊椎動物の現存量と多様性を人為的に変化させた大規模な
な野外実験を、すべて
の実験サイトで同時に実施しました。世界各地での実験結果を集計して解析したところ、ヨコエビや
の実験サイトで同時に実施しました。世界各地での実験結果を集計して解析したところ、
巻貝などの小型無脊椎動物が、
、アマモを被覆してしまう藻類を食べて減少させることでアマモの
減少させることでアマモの成
長を促し、アマモが枯れるのを防いでいること、その効果は小型無脊椎動物群集の多様性が高い
を促し、アマモが枯れるのを防いでいること、その効果は小型無脊椎動物群集の多様性が高い
ほど強くなること、人為的に富栄養化させて付着藻類の増加を促した場合でも、小型無脊椎動物が
たくさんいれば、その影響は緩和されることが
は緩和されることがわかり、この仮説が成り立つことが
成り立つことが証明されました。
図2:北半球のアマモの分布(緑色
緑色)と本研究の同時野外操作実験を行った実験サイト(黄色)
と本研究の同時野外操作実験を行った実験サイト(黄色)
【成果の意義】
アマモ場には前述したような重要な機能があり、減少した地域では保全・再生の試みが行われて
います。本研究の成果は、アマモ場の保全
アマモ場の保全・再生計画の新しい進展に寄与することが期待されま
再生計画の新しい進展に寄与することが期待されま
す。
【発表論文】
Biodiversity mediates top-down
down control in eelgrass ecosystems: A global comparative-experimental
comparative
approach
(生物多様性が介在するアマモ場のトップダウン制御:世界規模の比較実験手法による結果)
Ecology Letters
Volume 18,
Issue 7,
pages 696–705, July
2015.
著者:J. Emmett Duffy1,2, Pamela L. Reynolds1, Christoffer Boström3, James A. Coyer4, Mathieu
Cusson5, Serena Donadi6, James G. Douglass7, Johan S. Eklöf8, Aschwin Engelen9, Britas Klemens
Eriksson6, Stein Fredriksen10, Lars Gamfeldt11, Camilla Gustafsson3, Galice Hoarau12, Masakazu Hori13,
Kevin Hovel14, Katrin Iken15, Jonathan S. Lefcheck1, Per-Olav Moksnes11, Masahiro Nakaoka16, Mary I.
O'Connor17, Jeanine L. Olsen6, J. Paul Richardson1, Jennifer L. Ruesink18, Erik E. Sotka19, Jonas
Thormar10, Matthew A. Whalen200, and John J. Stachowicz20
1. Virginia Institute of Marine Science, Gloucester Point, VA 23062-1346,
23062 1346, USA.
2. Tennenbaum Marine Observatories Network, Smithsonian Institution, Washington, DC 20013-7012,
20013
USA.
3. Åbo Akademi University, Department of Biosciences,
Biosciences, Environmental and Marine Biology, 20520
Åbo, Finland.
4. Shoals Marine Laboratory, Cornell University, Portsmouth, NH 03801, USA.
5. Département des sciences fondamentales & Québec-Océan,
Québec
Université du Québec à Chicoutimi,
Chicoutimi (Québec), G7H 2B1 Canada.
6. Centre for Ecological and Evolutionary Studies, University of Groningen, 9747 AG Groningen, The
Netherlands.
7. Florida Gulf Coast University, Fort Myers, FL 33965, USA.
8. Department of Ecology, Environment and Plant Sciences, Stockholm University, 106 91
Stockholm Sweden.
9. Centro de Ciências do Mar do Algarve (CCMAR), University of Algarve, 8005 139 Faro, Portugal.
10. University of Oslo, Department of Biosciences, 0316 Oslo, Norway.
11. Department of Biological and Environmental Sciences, University of Gothenburg, SE-405 30
Göteborg, Sweden.
12. Faculty of Biosciences and Aquaculture, University of Nordland, 8049, Bodø, Norway.
13. Fisheries Research Agency, 739-0452 Hiroshima, Japan.
14. Department of Biology, San Diego State University, San Diego, CA 92182, USA.
15. School of Fisheries and Ocean Sciences, University of Alaska Fairbanks, AK 99775, USA.
16. Akkeshi Marine Station, Field Science Center for Northern Biosphere, Hokkaido University,
Aikappu, Akkeshi, Hokkaido 088-1113, Japan.
17. Department of Zoology and Biodiversity Research Centre, University of British Columbia,
Vancouver, B.C., Canada V6T 1Z4.
18. Department of Biology, University of Washington, Seattle, WA 98195, USA.
19. Grice Marine Laboratory, College of Charleston, Charleston, SC 29412, USA.
20. Department of Evolution and Ecology, 1 Shields Ave, University of California, Davis CA 95616,
USA.
用語:
【アマモ場】ここでは温帯に分布する海中顕花植物のアマモ(Zostera marina)が優占する藻場のこ
とを言う。
【小型無脊椎動物】ここでは、端脚類(ヨコエビ、ワレカラ類)、等脚類(ヘラムシ、コツブムシ類)、アミ
類、巻貝類などを言う。