カンボジアにおける目録作業 スオン・ソフィー カンボジア国立図書館 翻訳:国立国会図書館書誌部 カンボジアの図書館 カンボジアにおける図書館の発展は、首都プノンペンに集中している。図書館の中で最も数が 多いのは専門図書館、すなわち政府機関の図書館とNGOに関係した図書館である。大学図書館 もプノンペンでは重要である。カンボジア国立図書館はプノンペンにあり、そのサービスの一部 として、市民への貸し出し用の蔵書を持っている。カンボジアの公共図書館は限られているが、 地方では寺院(pagoda)に置かれている公共図書館もある。学校図書館もまだほんの初期の段 階だが、「再建援助のための民間主導の支援」 (Soutien a l’initiative privée pour l’aidee a la reconstruction (SIPAR))と[日本の社団法人]シャンティ国際ボランティア会の支援を受けた とても良い小さな学校図書館が少なくない。 大部分の図書館は、3 つの言語、すなわちクメール語、英語、そしてフランス語の資料を所蔵 している。多くの場合、これらの言語の資料は、図書館の中で別々のコレクションの基礎を形作 っている。英語、フランス語資料の目録作業に役立つ資源は非常に多いのに対して、クメール語 資料のそれはほとんどない。ユニコードの進展は、オンラインシステムでクメール文字を使用す るのに非常に有望だが、それはまだ主なオペレーティングシステムに取り込まれていない。 正式な図書館教育プログラムは、カンボジアにはない。資格を他の国で取得したカンボジアの 図書館員はごく少数である。他の唯一のトレーニングは、カンボジア国内で時折行われる一連の ワークショップ、または短期コースである。中には、近くの国(例えばマレーシア)での短期コ ースに参加できる人もいる。結果的に、大部分の図書館員は「仕事を通して」学んでいる。そし て、図書館の資源不足のため、国外でのトレーニングの機会は限られてしまっている。 本レポートの情報源 本レポートに関する情報のほとんどは、プノンペンのカンボジア図書館員・ドキュメンタリス ト協会から2003年に刊行された『図書館・文書館総覧』 (Répertoire des bibliothèques et centres de documentation)から得た。この名簿は、85の図書館(プノンペン80、シェムリアップ5) をカバーしている。これらの図書館の多くは蔵書が非常に少なく、このことは、目録作業に関し 1/3 てなされる選択に影響を及ぼしている。そのほか、王立プノンペン大学フンセン図書館と提携し ている図書館コンサルタントであるマーガレット・バイウォーター氏からは、親切に、ここ15 年にわたるカンボジアの図書館での彼女の仕事に基づく情報を快く提供していただいた。 目録作業の基準 カンボジアにおいて専門図書館が多いことは、それらの図書館の多くが、スタッフが 1、2 名 程度で非常に小さいことを意味している。そのような図書館は、しばしば自館のシステムを開発 し、専門的な利用者グループと専門的な情報資源に対処している。そして、カンボジアの図書館 は例外なくこのようなことを実施している。 分類: 分類法 図書館数 デューイ十進分類法 41 館独自のシステム 20 国際十進分類法 7 Agris/Caris システム 2 米国国立医学図書館分類表 1 シソーラス/件名標目表 カンボジア国内で使用するためのクメール語の件名標目表やシソーラスは開発されておら ず、図書館間で普及しているものもない。下記のリストから分かるように、統制語彙の使用 は極めて少数である。 統制後彙 図書館数 BCDI 5 米国議会図書館件名標目表 3 Thesaurus Biomédical français/anglais 2 ユネスコ・シソーラス 2 データフォーマット基準 3 つの図書館の情報しか入手できなかった。それ以外の多くの(あるいは少なくない)図書 館が MARC21 を使用しているとは思えないが、WINISIS ソフトウェアを使っている図書館 が自館のレコードをコード化するために UNIMARC を使用している可能性はある。 MARC 図書館数 MARC21 2 UNIMARC 1 2/3 記述目録作業の基準類 書誌記述にどの基準類を採用しているかに関する情報は、容易には入手できない。AACR2R のような記述の基準に依拠しているのは、非常に少数の図書館に限られている。また、個々 の図書館では使用されているものがあるかもしれないが、国の記述基準として開発されたも のは存在しない。 カンボジアでの記述目録作業に影響を及ぼすもう一つの要因は、この国に出版の基準がな いことである。カンボジアの出版産業は現在急速に発展している。しかし、過去、カンボジ アの出版物に記載された出版情報の形式と水準には、非常に多くのバリエーションがあった。 現在の規則と、パリ原則および国際目録原則覚書草案との関係 目録作業のシステムは、カンボジアでは未だ発展途上である。そして、現在、全国に普及した 共通の目録作業基準は存在しない。したがって、特に[パリ原則もしくは国際目録原則覚書草案] どちらかの目録原則に関係しているようなものは何もない。基本的な記述の原則が多くの図書館 で適用されているように思われる一方、典拠コントロールという考え方は多くの図書館員にとっ て全く無縁のままである。 オンライン環境でクメール文字を用いることが、典拠コントロールの問題を複雑にしている。 また、クメールアルファベットのラテンアルファベットへの変換について一般的に適用される単 一の翻字法は存在しない。 協同目録作業の活動 共通の基準がなく、トレーニングの機会もなく、さらには資源の制約により、現時点では協同 目録作業の機会は限られてしまっている。カンボジア図書館員・ドキュメンタリスト協会は、将 来のそのような活動を促進する立場にある組織である。 結論 これまでの説明で分かるように、カンボジアにおける目録作業には多くの挑戦の場がある。ト レーニングの機会(の問題)は、国レベルの目録基準の発展にとって、大きな障害の一つのまま である。しかし、図書館員と利用者の教育レベルを徐々に向上させることに加え、オンラインシ ステムと資源の利用を増加させることで、目録作業の更なる発展が促されるであろう。 3/3
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