山 岳 と 植 物

山
岳
と
植
物
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飯豊連峰
「磐梯・朝日国立公園」
(深田久弥氏日本百名山 飯豊山)
飯豊連峰は、山形、福島、新潟と三県の県境にまたがり、標高2,000m前後
の山々が連なっています。雄大な山容と深い渓谷から、男性的な雄姿に例え
られています。
地質構造をみると、朝日連峰といくつかの共通性をもっている双生児山地
です。古い花崗岩の隆起山塊からなりたち、標高1,500m位までは、どの登山
口から登っても急斜面であります。
植生は、ブナ林を抜け出すと針葉樹のある亜高帯が見られず、いきなり低
木と雪窪や草原が現れる第一線の山稜であります。
石転び沢の雪渓は本邦屈指のものであり、平面距離は約2km、実長2.5km、
(スプーンカット)
高度差900mを越すものであり、雪の表面は凸凹のある波形
がみられます。雪渓を伝わる冷風は心地よい感じがします。
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Iide Mountains
稜線添いには、砂礫階段や条線砂礫がみられ“舟窪”(二重山稜)が数多く
あり、他に例の少ない魅力をもっています。
主峰 飯豊本山(2,105m) 山頂に飯豊神社が祀られ、信仰の山でもありま
す。白雉3年(652)、知道和尚と役小角(えんのおづの)が飯豊山に登り、そ
(いいで)
山と名付け、五王子を祀ったといいます。その後は、
の山容から伊比天
あまりにも山が険しく登ることは困難でしたが、天正18年(1590)、会津藩主
蒲生氏郷が北会津郡蓮華寺の宥明に再び道を開かせ、文禄4年(1595)、社殿
を修め中興開山となり、信仰登山が行われるようになりました。信仰登山は
出羽三山の影響を受け、先導が若者を連れて参拝する習わしがあります。
御西岳(2,013m) 広い草原(秋田見平とも言う)が続き、随一のお花畑が美
しいところです。
大日岳
(2,128m)
急峻で変化に富んだ山容をみせてくれます。
北股岳(2,025m) 晴れた日は佐渡や粟島を望む展望のよい山頂であります。
杁差岳(1,636m) 連峰北端の山で、山頂部は台地で、お花畑と湿原、池が
あります。
地神山
(1,819m)
・烏帽子岳
(2,017m)
・地蔵山
(1,485m)
・三国岳
(1,631m)
・
種蒔山(1,791m)。こうした魅力に、登山者の数は年々増加の傾向にあります。
ふもとにある温身平は、飯豊山荘から歩いて約40分、ブナの原生林が広がり、
散策を楽しむ絶好のところといえます。
厳しい冬のあとにやってくる春、残雪を背景に木々の新緑が目にまぶしい
くらいで、ニッコウキスゲやチングルマ、ヒメサユリなどの高山植物が、花
を咲かせ彩りを添えてくれます。秋の紅葉は美しく、四季折々に私たちを楽
しませてくれます。
小国の里から望む春の雪形はおもしろいものがあります。雪形には、「やせ
馬」
「種まきじいさん」
「鯉のぼり」
「高砂のじじとばば」などがあります。山稜に
「オトミ雪」といいます。
残る万年雪のことを
(深田グラフ日本二百名山 杁差岳・二王子岳)
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朝日連峰
「磐梯・朝日国立公園」
(深田久弥氏日本百名山 朝日岳)
朝日連峰は、越後山脈の最北端に位置し、北日本における最大の峻峰群で
あることから、飯豊連峰とともに東北のアルプスと呼ばれています。
朝日連峰は山深く、野生動物の安住の地であります。お花畑におおわれた
主稜、大雪渓や変化に富む渓谷など、魅力的な原始的自然景観を誇っています。
こうした原始的自然性と雄大な山容が全国的に知られ、登山者は増えています。
大朝日岳(1,870m) 中岳や御影森らから見る山容は重厚さを備え、朝日連
峰の代表にふさわしい雄姿をみせてくれます。
祝瓶山(1,417m) 標高は低いのですが、鋭い三角形の山稜で、展望のよい
山であります。
西朝日岳(1,814m) 袖朝日岳へ続く尾根の南面、荒川源流へ削ぎ落とす岸
壁は圧倒的な迫力をもっています。
寒江山(1,695m) 連峰中央部の山で、山頂は三峰に分かれています。尾根
沿いにお花畑、池などがあり展望もよいところです。
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Asahi Mountains
以東岳(1,771m) 最も雄大な山容を誇ります。中腹には大鳥池があり、連
峰屈指の景勝であります。
北大玉山(1,468m) あたりに広がる展望に驚かされます。魅力的な山ひだ
が一層の迫力をみせてくれます。
朝日連峰の魅力は、南北60km、東西30kmの広大な面積と、中部山岳の
3,000m級に比肩する高山植物、深く浸食された渓谷の原始的景観であります。
山麓から標高1,200m付近までは、ブナ原生林の樹海がはいあがり、やがて
ハクサンシャクナゲ、ナナカマドの潅木帯、さらにはお花畑の高山帯が広が
っています。
山地帯での植生は、クリ・コナラ帯ではヤナギ類の群生や自然植生がいま
なお残存し特色づけるものであります。海抜700mから1,200mまでは、山腹
を覆うブナの原生林で壮観な樹海をつくっています。海抜1,200mを越すあた
りから変形ブナ林へと移行し、1,400mの高所まで分布域をもっています。林
床植物は、ユキツバキ、エゾユズリハ、ヒメモチ、ヒメアオキ、ハイイヌガヤ、
ハイイヌツゲ、ツルシキミ、チャボガヤなどの伏条化した常緑の小低木が分
布しています。
稀産する植物としては、タカネセンブリ、ホロムイソウ、タカネマツムシ
ソウ、ミヤマウスユキソウ、ミヤマキヌタソウ、タカネヨモキ、リシリシノブ、
エゾイブキトラノオ、ハクサントリカブト、リンネンソウなど学術的価値を
はじめ、原始景観を象徴する植物群であります。
湿原や湖沼群は少ないですが、木々の新緑、色とりどりに咲き競う花々、
そして紅葉の艶やかさを誇る秋の渓谷というように、朝日連峰は四季折々に
訪れる人々を楽しませてくれます。
日本山岳会編日本三百名山 祝瓶山
都道府県別人気の山(山形県)
No.1 鳥海山 No.2 月山 No.3 飯豊山 No.4 朝日岳 No.5 神室山
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