ザイリンクス会社 | LEADER'S VOICE 写真(左より) ザイリンクス株式会社 マーケティング部 シニアマネージャー 神保 直弘 氏 チップに入っていることが「Zynq-7000」の最 7000」に実装しようとしたとき、課題になるのが 大の特徴で、ビデオ/ビジョンやADASのように、 開発効率です。Cortex-A9プロセッサで処理す 映像をリアルタイムで取得し、その映像をベース る部分とFPGAファブリックで処理する部分とをい に高度な処理や判断をして、システムにフィード かに切り分けるかという問題と、それらを高位言 バックするような用途がひとつの典型になると考 語でいかに効率よく記述するかという問題、そし えています。具体的には、産業分野におけるマ て、ハードウェア化された部分をどのようにして シンビジョンや防衛、ビデオ監視、高機能ドロー メインプログラムに組み込むのかという問題があ ンなどが挙げられます。 り、開発ツールがきわめて重要になってきます。 山本:当社ではザイリンクスさんがターゲットと 黒田(ザイリンクス):ザイリンクスで開発ツール する分野を見据えながら設計サービスに取り組ん のプロモーションを担当している黒田です。いま でいますが、なかでもADASをはじめとするオー 神保から話がありましたように、ハードウェアと トモーティブは動きが活発だと感じます。当社で ソフトウェアの両方が 関係する「Zynq-7000」 も2年ほど前から、従来のDSPシステムのソフト の 開 発はツールが 鍵を握ると考えていて、 「使 ウェア設計者を「Zynq-7000」の設計にシフトす いやすい」かつ「高機能」なツールをユーザー るなど、取り組みを強化しているところです。ま に提供できるよう、積極的な投資を行っていま た、そうした背景を受けて、ADASに対応した す。まず、ハードウェアエンジニア向けに提供 FPGA IPを開発しているクロアチアのザイロン社 しているFPGAファブリック部分の開発ツールが (Xylon)の日本国内における独占使用契約を (ビ バド)です。 従 「Vivado® Design Suite」 2014年12月に同社と締結しました。歩行者検 来提供してきた「ISE® Design Suite」に代わる 神保:OKIアイディエスさんは全世界で10社し 出や車線検出に代表される同社のIPやFPGAデ ツールで、今後見込まれるFPGAの大容量化に -7000 All Programmable か認定されていない弊社のプレミアパートナー ザインサービスは欧米のADAS市場で豊富な実 も対応できるようなスケーラビリティを特徴とし、 SoC」の採用がオートモーティブを筆頭に広がっている。そうした躍進の陰には、設計支援やコンサルテーションを通じて顧客システムの です。エンジニアの皆さんのスキルが高いだけ 績があり、ADASを手掛けられている国内のお客 実装の高速化、ロジックエレメント使用率の改 TTM(Time-to-market)を支援する、ザイリンクスのアライアンスパートナーの存在がある。今号のLEADER'S VOICEでは、その最上位 ではなく、弊社と共にマーケットの拡大にも努 様にザイロン社のソリューションをご提案したとこ 善、性能向上および低消費電力化など、次世代 となる「プレミアパートナー」の称号を国内で唯一得ているOKIアイディエスを迎え話を聞いた。 めていただいているので、安心してお客様にご ろ、すぐに採用が決まったこともあります。 レベルの優れた生産性をもたらします。 「Vivado 株式会社 OKIアイディエス 開発部 部長 山本 康雄 氏 ザイリンクス株式会社 グローバルセールス アンド マーケット ツール メソドロジー アプリケーション部 シニア エンジニア 黒田 成一 氏 株式会社 OKIアイディエス 開発部 第4チーム 長岡 俊一 氏 ザイリンクス株式会社 グローバルセールス アンドマーケット エンジニアリング本部 フィールド アプリケーション エンジニア 友杉 伸一朗 氏 をいただきました。その後、おかげさまでFPGA の設計サービス事業も順調に伸びています。 デュアルコアのARM ® Cortex ® -A9プロセッサとFPGAファブリックを統合したザイリンクスの「Zynq ® Design Suite」に含まれる高位合成ツールが 紹介させていただいています。 Zynq SoC ならソフトウェアエンジニアでも、 ハードウェアを活用した システム高速化を容易に実現 オートモーティブ市場が活発化 ADASが キラーアプリケーションに 神保(ザイリンクス):今日は、当社のプレミア 友杉(ザイリンクス):FAEの友杉です。OKIアイ 「Vivado HLS」で す。C/C++/SystemCで 記 山本:はい、とても多くのお客様とビジネスさせ ディエスさんと一緒にオートモーティブのお客様 述されたIPをハンドコーディングと同等レベルの ていただいています。分野としては基本的に全 を回ることも多いのですが、このところ、お客様 VHDLコードまたはVerilog RTLコードに効率 方位で対応していますが、画像処理、音声処理、 の要求仕様がすごく高くなってきているのを感じ 的に合成するツールです。 「Zynq-7000」では、 通信制御関連のIP開発と、それらIPを使ったデ ます。高い性能を得るために複数のプロセッサ Cortex-A9プロセッサ上のソフトウェアアルゴリ ザインサービスを提供しており、マーケットとして を組み合わせるヘテロジニアス アーキテクチャと ズムをハードウェア化する際に有用です。ただ はオートモーティブと医療機器に注力しています。 いったキーワードも頻繁に聞くようになってきまし し、 「Vivado HLS」で合成したハードウェアIPを た。従来、パフォーマンスを上げようとすればプ Cortex-A9プロセッサ上のソフトウェアから呼び 神保:ザイリンクスは2010年に、デュアルコア ロセッサのクロックを速くするという考え方が当た 出すには、デバイスドライバの作成やAPIの定義 のCortex-A9プロセッサとFPGAファブリックと り前でしたが、消費電力や熱の問題が生じてしま などが必要で、エンジニアが人手で作りこまなけ を統合した「Zynq-7000 All Programmable います。そこで、 「Zynq-7000」のようなデバイ ればなりません。また、合成したハードウェアIP SoC」 (以下、 「Zynq-7000」)を発表しました。 スを使って、プロセッサやFPGAロジックをヘテ と他のハードウェアブロックとのインターコネクト 高度なシステムを高性能かつコンパクトに実現 ロジニアスに結合して性能を上げていきたい、と についてもエンジニアが人手で対応する必要が SDSoC)」を実際に使っていただいた感触を含 近く一緒にお仕事をさせていただいていますね。 できるということで、市場での評価も高く、採用 いった発想が生まれてきているように感じます。 あります。そうした付帯的な設計作業には、多く めて、ソフトウェアエンジニア目線から色々とお 山本:はい。当時、これから主流になっていく 事例もかなりの数になっております。現在は、次 の工数が掛かってしまうのが実状でした。この課 話を伺いたいと思います。 であろうFPGAの設計サービスを立ち上げたい 世代システムの実現に必要な「スマート」、 「コネ 題に対してザイリンクスは、それらの作業を自動 と考え、ザイリンクスさんのPCI Expressハー クト」、 「ディファレンシエイト」という三つのメッ 化する「SDSoC」という新しいツールを開発し、 山本(OKI):OKIアイディエスで開発のとりまと ドコアに特化した「iDMAC®」というDMAコン セージを掲げて、ビデオ/ビジョン、インダスト めをしています山本です。本日はお招きありがと トローラIPを開発しました。 「Virtex®-5 LXTに リア ルIoT(Internet of Things)、ADAS(先 うございます。 iDMACを組 み 込 めばPCI Expressを介してき 進運転支援システム)などを重点マーケットとし パートナーであるOKIアイディエスさんをお招き システムレベル設計を支援する SDSoC開発環境が一般リリース 2015年7月から一般への提供を開始したところ です(図1)。 わめて高いデータ転送を実現できます」という触 て取り組んでいます。ソフトウェアプログラマブ 友杉:2015年3月に「SDSoC」のコンセプトを して、2015年3月に発表したザイリンクスの革 神保:OKIアイディエスさんとは、前身である沖 れ込みで、ザイリンクスさんのご協力もいただき ルなARM Cortex-A9プロセッサと、ハードウェ 発表した後、山本さんから、 「Vivado HLS」で 新的ツールである「SDSoC™ 開発環境(以下、 情報システムズの頃からのお付き合いで、10年 ながらお客様にご提案して、ずいぶんとご好評 アプログラマブルなFPGAファブリックとがワン 2015.8 4 Volume.11 APS MAGAZINE 神保:ADASに代表される複雑な機能を「Zynq- アルゴリズムをハードウェアに落とし込むところ Volume.11 2015.8 APS MAGAZINE 5 ザイリンクス会社 | LEADER'S VOICE ザイリンクス会社 | LEADER'S VOICE まではいけるのだが、その先のソフトウェアとの セス版をお願いして使ってみましたら、月単位 クに置き換えたものです。前述のように、既にラ できる16nmの最新プロセスで製造する「Zynq 連係のところで苦労している、というお話を伺っ で苦労していたハードウェアとソフトウェアの繋 イブラリにあるコードを活用したり、オリジナル Ultrascale+ MPSoC」の 開 発 を 進 めてい て、 て、 「SDSoC」なら問題を解決できるのではと思 ぎの部分が「SDSoC」で自動生成されるので(図 記述をリファクタリングしたり、そして「SDSoC」 2015年7月1日にテープアウトを行いました。 い、アーリーアクセス版をご紹介しました。 1)、わずか数日の作業で動くようになり、今ま を使用してさまざまな調整をしながらシステム 最初のサンプルは予定どおり2015年内に完成 での苦労は何だったのだろうというぐらいに驚 に最適に組み込むことができました。その結果、 する 予 定 です。 「Zynq Ultrascale+ MPSoC」 山本:いくつかのお客様から、画像処理や信号 きました。今日同席している長岡は「SDSoC」 元のソフトウェア処理に比べ処理時間を30倍以 は、クワッドコアのARM Cortex-A53プロセッ 処理の性能を高めたいというご要望があり、そ を担当したエンジニアです。 れであれば 「Zynq-7000」を使ったアクセラ 上向上させることができました。これを弊社のソ サをはじめ、リアルタイム処理用のデュアルコ フトウェアエンジニアが一人で実現したのです。 アARM Cortex-R5プ ロ セ ッ サ、2Dお よ び 3Dなどのグラフィクス処 理 用 のARM Mali™- レーション化が適当だろうと考えて取り組んでい 長岡(OKI):私はもともとDSP向けを中心とし たプロジェクトがありました。元々のソフトウェ たソフトエンジニアで、FPGAに触れるのは今 黒田:「SDSoC」はハードウェアIPの準備がで 400MP、パワーマネージメントプロセッサ、セ アアルゴリズムはOpenCV、 行 列 演 算、お 客 回が実は初めてでした。まず手始めに「Vivado きた後の全ての工程を自動化しますので、ツー キュリティエンジンなどが内蔵されます。次世代 様のオリジナル記述の混在するコードで実現さ HLS」を使って高位合成の勉強をしていたとき ル操作自体は全然難しくありません。ハードウェ のADASなど、さらに高度かつ高性能なシステ れていました。ザイリンクスさんから提供されて に、山本から「SDSoC」をやるように指示され、 ア化の対象としたい関数にクリックしてチェック ムを実現するSoCとして、個人的にも登場を期 いる「Vivado HLS」の中で対応するハードウェ この新しいツールを担当することになりました。 を入れてビルドを実行するだけで、ハードウェ ア化向けライブラリが存在するものは、そのライ ア・ランタイムの生成までを自動で行ってくれま 図2:ZC706ベースのビデオソリューションに「SDSoC」を用いてパフォーマンスの向上を実現。 待しているところです。 ブラリに置き換えることで簡単にできました。ま 山本:長岡もそうだったように、FPGAの使用経 す。むしろ大事なのは、アクセラレーションの 山本:神保さんのお話にあったようなザイリンク た、オリジナル記述の部分については性能を満 験がないというのが一般的なソフトウェアエンジ ためにコードをリファクタリングする部分(主に スさんの次のデバイスの情報や「SDSoC」のよ たすようにある程度のリファクタリング(プログ ニアの感覚だと思います。ソフトウェアで実装さ ハードウェアIPの部分)で、そこは従来であれば り幅広いレンジの粒度でアクセラレーションを実 だとか、いままではシステムアーキテクトの方 うな新しいツールのアーリーアクセスをいかに早 ラムの書き換え)が必要でしたが、C++記述の れたアルゴリズムをハードウェアアクセラレータ RTLやFW設計に相当するのですが、 「SDSoC」 現するためのリファクタリングも含めて、長岡さ が考えていたシステム的な発想が必要なので、 く得るか、というのは日本のお客様をサポートし まま設計を進められるのでソフトウェア設計の延 に落とし込みたいというとき、ソフトウェアエン と「Vivado HLS」の自動生成機能によるアシ んをサポートさせていただきました。 実際には難しいところはあると思います。ただ、 ていく上で我々にとってとても大切で、同時に、 長線上で済ませることできました。しかし、大変 ジニアがRTLで組めるかといったら無理なわけで ストによって、C/C++記述の書き換えと若干の ソフトウェアエンジニアの方がシステム全体の最 先ほど「Vivado HLS」で合成した次の段階で苦 だったのはその後の工程で、IPが出来てもそれ す。ところが、今回のプロジェクトで長岡が図ら #pragma文 挿 入で済ませられるようになりま 長岡:逐次で実行されるソフトウェアと、クロッ 適化まで考えられるようになる「SDSoC」はチャ 労したという話をご説明しましたが、私たちの悩 をCortex-A9プロセッサ上で走るメインプログ ずも証明してくれる形になりましたが、 「Vivado した。長岡さんは「Vivado HLS」を使った高 クに同期して並列に実行されるハードウェアとの レンジに対するリターンがとても大きいツールだ みをザイリンクスさんと共有することも重要です。 ラムから呼び出せる状態に持っていくのがなか HLS」と「SDSoC」を使えば、ソフトウェアエン 位合成の手法をある程度習得されていましたの 違いなどを教えていただきましたが、その他は なと感じます。長岡さんのようなエンジニアの方 ザイリンクスさんとコミュニケーションをより一層 なか上手くいかないわけです。担当者は休日返 ジニアでもハードウェアロジックを組めるという で話が早かったです。一方「SDSoC」ではハー FPGAということをあまり意識せずにアルゴリズ が増えてもらえれば嬉しく思います。 密にすることで、お客様にも貢献していきたいと 上で頑張ったりもしたのですが、残念ながら予 ことが分かった。これはとても大きいと思ってい ドウェア・ランタイム生成だけでなく、従来 の ムの落とし込みができました。今まで意識してこ 考えています。一方で、 「SDSoC」の活用による 定したスケジュールでは作りきれませんでした。 ます。今回お持ちしたビデオソリューションのデ 「Vivado HLS」単体では及ばなかった高い 粒 なかったアーキテクチャを考えるという工程が新 設計期間の短縮は当社にとってもビジネスチャン そんなときに、友杉さんから「SDSoC」の説明 モシステム(図2)は、ソフトウェアによるビデオ 度でのアクセラレーションも実現することができ しく学んだ部分で、その習得に少し時間が掛かり スになると考えていて、コンサルティングを含め を伺う機会があって、まさにこれだと。さっそく デコード処理の内、処理の重いアルゴリズムの ます。ここは長岡さんにとっては新しい部分にな ましたが、そこが分かればソースコードのリファ ザイリンクスさんに「SDSoC」のアーリー・アク 部分を「SDSoC」を使用してハードウェアロジッ ります。 「SDSoC」のツール操作だけでなく、よ クタリングはそれほど難しくはなく、私のような 初めての人間でもソフトウェアを開発している感 C、C++ベースのHW/SW開発環境【ターゲット:ZYNQプラットフォーム】 アルゴリズムをソフトウェアのみで構成 void main(){ func1(…) func2(…) func3(…) func4(…) … } 「SDSoC」を使用し、アルゴリズムをHWに置き換えた構成 Algo C Algo C App C Algo C Application OS/BSP Software OS/BSP Hardware (ZYNQ) PS Hardware (ZYNQ) PS I/O PL HLS C 神保:OKIアイディエスさんをはじめとするア ど高速化できたのでとても楽しかったです。ある ライアンスパートナー各社様の強みは、お客様 関数はソフトウェア処理だと180msecもかかっ と密な関係を持たれているところなので、ザイ ていたものが4msecまで高速化できました。こ 神保:正式に「SDSoC」がリリースになったこと リンクスとしても今後のニーズやトレンドを共有 れは自分でも信じられなかったです(笑)。 で、 「Zynq-7000」の採用がさらに加速すると してい た だけると嬉しいです。それと同 時に、 期待しているのですが、ザイリンクスでは並行し ザイリンクスの SoCは 次 世 代 のプラットフォー 友杉:セールスの現場では、 「Zynq-7000」の て新しいデバイスの開発にも取り組んでいます。 ムとして安心して使えることを市場に広く伝え 開発は基本的には簡単ですよと売り込むのです すでにプレスリリースなどを通じて発表していま ていただければ幸いです。本日はありがとうご が(笑)、ソフトウェアとハードウェアの機能配置 すが、 「Zynq-7000」の5倍以上の価値を提供 ざいました。 IP IP I/O I/O PL Custom Driver ソフトウェア担当は、時間との戦いである。いかにアルゴリズムを縮められるか?いかに早く実行可能かどうか?そ I/C I/C DMA DMA Algo Algo んな声に応えたのが、SDSoCだ。単にアルゴリズムを置き換えるだけではなく、強力なプロファイリング機能により 最適なH/W化が行われる。しかも、プロセッサやバスとのI/Fも最適化され、適切なドライバが生成される。アプリ IP ケーションは、このドライバから制御を行う。これはソフトウェア担当者にとって朗報でしかない。アルゴリズムをソフ I/O 図1: 「SDSoC」の画面からハードウェア化したい関数(アルゴリズム)を指定すると、赤色で示したハードウェア部のアルゴリズムだけでなく、DMAやインターコネクトの生成や、ソフトウェア部 のカスタムドライバも自動的に生成される。 2015.8 6 Volume.11 APS MAGAZINE 役に立てるようにさらに努めていきます。 Application Software IP HLS C App C てデザインサービスの拡充を図り、お客様のお 覚の延長で取り組めました。しかもやればやるほ Algo C void main(){ func1(…) func2(…) func3(…) func4(…) … } Zynqの次世代品の開発も順調 パートナーとSoC市場 の拡大を目指す トウェア的手法でチューニングするのは、生易しいものではないが、それを可能にするSDSoC。今回は、そんな生 の声が届いてくれればいいと思う。 Volume.11 2015.8 APS MAGAZINE 7
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