イチゴのポット栽培実験による竹破砕物の養液栽培培地としての評価

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H27 農業農村工学会大会講演会講演要旨集
イチゴのポット栽培実験による竹破砕物の養液栽培培地としての評価
Evaluation of the crushed bamboo as an agricultural organic material
growing Strawberry
○荻原
雅周*、丸居
篤**、工藤
明**、泉
完**
Ogiwara Masahiro,Marui Atsushi,Kudou Akira,Izumi mattashi
1.
はじめに
竹はバイオマス資源としての役割を持ち、農業にも利用され ている。中でも竹をすり
つぶした竹破砕物は、マルチ資材、土壌改良材など様々な用途で利用され、高い効果があ
るとされている。本研究では、竹破砕物の新しい農業利用法として、養液栽培の培地に利
用できないかと考えた。 課題として、竹破砕物を養液栽培培地として利用する場合、十分
な保水性・透水性を有しているか、竹破砕物に含まれる成分 が作物の生長にどのような影
響を与えるかが不確定である。そのため、 土壌物理試験によって竹破砕物の保水性・透水
性を明らかにするとともに、 ポット栽培実験を行い、竹破砕物からの溶出成分を分析し 、
竹破砕物が作物の生長へ与える影響を評価することを目的とした。
2.
竹破砕物の土壌物理実験
竹破砕物の保水性と透水性を明らかにするために 加圧板法、土柱法、変水位透水試験を
行い、竹破砕物の水分特性曲線及び飽和透水係数を求めた 。試料は、ロックウール(以下
RW)、殺菌、固化させることでくずれにくく、利用しやすくするために 熱処理した竹破砕
板法では pF0.0 から 3.0、土柱法では pF0.0~2.0 の範
囲の体積含水率を求めた。その結果、竹破砕物と RW
の飽和透水係数は 0.08 から 0.29 の範囲にありとほぼ
同等の透水性であることが分かった 。Fig.1 は土柱法
により求めた水分特性曲線である。飽和状態での体積
含水率は CB が最も高かったが、有効水分量(pF1.5 か
ら 2.0)の水分は、RW が 21%、DB が 17%、CB が
7%となり、RW が最も大きい値を示した 。
3
RW
CB
DB
2
pF
物(以下 DB)、竹破砕物(以下 CB)を用いた。加圧
1
0
0
20
40
60
80
100
体積含水率(%)
Fig1 Soil moisture characteristic
curve on soil column method (n=3)
3. 栽培実験
2014 年 11 月 15 日から 2015 年 3 月 3 日の 109 日間、イチゴ(章姫)の栽培実験を行
った。栽培培地には RW、CB、DB それぞれ栽培ポットを 3 つずつ計 9 個用意した。測定
項目として栽培期間中は質量、気温、日射量、葉面積、蒸散量、 排水の成分分析、実験終
了後は果実、葉、茎、根の生体質量、乾燥質量を測定した。果実に関しては、収量を測定
した。ここでは実験期間中の評価項目は、葉面積指数と総蒸散量の関係、水収支、成分分
析とし、実験終了後は果実、葉、茎、根の質量、果実の収量を評価項目として報告する。
*弘 前 大 学 大 学 院 農 学 生 命 科 学 研 究 科 Hirosaki Univ.Agriculture and Life Science graduate course
**弘 前 大 学 農 学 生 命 科 学 部 Hirosaki Univ.Faculty of Agriculture and Life science
キ ー ワ ー ド : 竹 破 砕 物 、 養 液 栽 培 、 LAI、 蒸 散 量
− 344 −
4. 結果
は高い相関を有し、総蒸散量が大きくなるに従
って、葉面積も比例的に増加した。RW 培地と
DB 培地での総蒸散量が大きく、葉面積も同様
5.0
4.0
3.0
2.0
y = 0.0009x + 2.9258
y = 0.0006x + 2.9813
R² = 0.8675
R² = 0.8381
1.0
RW
0
1000
し た 各 培 地 で の水 量 は DB 培 地 が最 も 大 きか
2000
総蒸散量(mm)
ったが RW 培地との差はあまりなかった 。一
Fig2 The relation between Leaf Area
Index (LAI) and total transpiration on
each material (n=3)
方、成長速度を表す傾きには差が見られ、RW
培地の成長率が最も高かった。Fig3 は実験終
50
こ ち らも DB 培地 の総質 量 が最 も大 きく なっ
40
総質量(g)
了後の果実・葉・茎・根の総質量を示している。
はイチゴの果実の総質量と個数を示している。
CB
0.0
な結果となった。また、灌漑と排水量から計算
た が 培 地 間 に 有 意 差 は み ら れ な か っ た 。 Fig4
DB
30
20
果 実 1 個 体 あ た り の 生 体 質 量 に 関 し て は RW
10
培地と DB 培地間に有意差がなかったが、CB
0
培地と他の培地との間では有意差がみられた
( p<0.05)。果 実の 質量に 関 して は竹 破砕 物の
RW
50
も同様の変化がみられた。
総質量(g)
ける EC の変化である。DB 培地と CB 培地は初
していった。これは T-N、T-P、K + などの成分で
CB
Fig3 Total mass of fruit and leaf, stem,
root on each material (n=3)
影響を受けたと考えられる。Fig5 は各培地にお
期の排水の EC が高く、日が経つにつれて低下
DB
5.まとめ
竹破砕物の有効水分量は乾燥させたほうが高
生体質量
DB 培地が大きく、これらは培地内の水分量が多
8
30
6
20
4
10
2
0
0
RW
培地と他の培地では有意差がみられた。よって竹
破砕物を培地として利用する場合、熱処理を行っ
CB
6.0
EC(mS/cm)
の有意差はみられなかったが、果実の質量では CB
DB
Fig4 Fruit mass and yield on each
material (n=3)
いからだと考えられる。果実・葉・茎・根の総質量
に関しては、DB 培地が最も高くなったが培地間で
10
40
い値を示した。ポット栽培実験では、乾燥させた
竹破砕物は、葉面積、蒸散量ともに RW 培地と
個数
個数
らどの培地においても葉面積指数と総蒸散量
葉面積指数(LAI)
Fig2 は各培地における葉面積指数と総蒸散
量の関係を示したもの である。Fig2 の結果か
y = 0.0006x + 3.7471
R² = 0.8827
6.0
4.0
RW
CB
DB
灌漑養液
2.0
0.0
て乾燥させてから培地に利用すると高い効果が得
7 13 18 25 31 37 52 63 74
られると考えられる。また、培地として利用する場
日数(日)
合は、初期に高濃度の成分が流出するため、水で何
度か洗浄してから利用するのがよいと考えられる。
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Fig5 Change of electric conductivity
(EC) on each material (n=3)