Chapter 4 人材育成とキャリア・マネジメント

Chapter 4
人材育成とキャリア・マネジメント
※Chapter 4を受講する際に、あらかじめ次の2つのスライ
ド:「経験的学習スタイル調査票」と「キャリア・アンカー調査
票」に回答して出席してください。その回答結果を授業中に使
用します。
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経験的学習スタイル調査票
以下の4つの単語で構成される9つのセットごとに、最も自分に当てはまる単語に「4」、その次にあてはまる単語に「3」、
その次が「2」、最もあてはまらない単語に「1」を、順位が重ならないようにそれぞれ記入してください。
1)
識別的
暫定的
込み入った
実際的
2)
受容的
適切な
分析的
公平な
3)
感じる
よく見る
考える
行動する
4)
受容的
冒険的
評価的
意識的
5)
直観的
生産的
論理的
懐疑的
6)
抽象的
観察的
具体的
活動的
7)
現在志向的
内省的
未来志向的
実用的
8)
経験
観察
概念的
実験的
9)
強烈な
控え目な
合理的
理性的
AC
AE
縦列の太枠の数値だけを合計してください。
CE
RO
出所)Kolb, D. A., et al., (1974) Organizational Psychology : an experiential approach , Prentice-Hall, p.23
下 の選択肢から該当する点数を白い空欄のセルにつけてください
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キャリア・アンカー調査票
そう思うことも
全然そう思わない たまにはある よくそう思う いつもそう思う
1 2 3 4 5 6
No.
1 「このことならあのひとに聞け」と絶えず専門家としてのアドバイスを求められる分野でうまくやっていくことをめざす。
2 他の人びとのやる気をまとめあげ、チームをマネジメントすることによって大きな成果を上げることができたときに、最も大きな充実感を仕事に感じる。
3 自分のやり方、自分のスケジュールどおりに、自由に仕事ができるようなキャリアをめざす。
4 自由や自律を勝ち取るよりも、将来の保障や安定を得ることが、自分にとってはより重要なことだ。
5 常に自分の事業を起こすことができそうなアイデアを探している。
6 社会に本当に貢献できていると感じられるときにこそ、キャリアがうまくいきそうだと感じる。
7 難題を解決したり、とてつもない挑戦課題にみまわれた状況を打破したりできるようなキャリアをめざす。
8 家族とともに楽しみにしていることが犠牲になってしまう仕事に異動させられるくらいなら、その組織をやめた方がましだ。
9 キャリアを通じて専門技能や職能分野の技能をすごく高度に磨きあげることができるならキャリアがうまくいきそうだと感じる。
10 複雑な組織を率い、大勢の人びとを左右する意思決定を自分で下すような立場をめざす。
11 どのような課題をどのような日程と手順でおこなうのか、について自分の思いどおりになるとき、最も大きな充実感を仕事に感じる。
12 安定した職務保障もなしに仕事に配属させられるくらいなら、すっぱりとその組織を離れるだろう。
13 他人の経営する組織でマネジャーとして高い職位につくよりも、むしろ自分の事業を起こすことを重視する。
14 キャリアを通じて、他の人びとのために自分の才能を役立てることができたときに、最も大きな充実感を自分のキャリアに感じる。
15 非常に難しい挑戦課題に直面し、それを克服できたときにこそ、キャリアがうまくいきそうだと感じる。
16 自分が家族がらみで悩んでいることと、仕事から要請されることとがうまく両立できるキャリアをめざす。
17 ゼネラル・マネジャー(部門長)になるよりも、自分の専門職能分野で上級マネジャーになる方が、より魅力的に感じられる。
18 何らかの組織でゼネラル・マネジャー(部門長)の立場で仕事をするときにこそ、キャリアがうまくいきそうだと感じる。
19 完全な自由や自律を獲得したときにこそ、キャリアがうまくいきそうだと感じる。
20 将来が安定していて安心感のもてる会社での仕事を求めている。
21 自分自身のアイデアと努力だけによって何かを創り上げたときに、最も大きな充実感を自分のキャリアに感じる。
22 マネジャーとして高い職位につくことよりも、自分の技能を生かして少しでも世の中を住みやすく働きやすくする方が、もっと大切だと思う。
23 一見解決不可能だと思われた問題を解決したり、どうにもならないような局面を打開したとき、最も大きな充実感を自分のキャリアに感じる。
24 自分の個人的な要望、家族からの要望、キャリアに求められることをうまくバランスさせることができたときにこそ、キャリアがうまくいきそうだと感じる。
25 自分の専門領域からはずれてしまうような人事異動をローテーションとして受け入れるくらいなら、むしろその組織をやめる。
26 今の自分の専門職能領域で上級マネジャーになるよりも、ゼネラル・マネジャー(部門長)として仕事をする方が魅力的だと思う。
27 将来が保障された安心なことよりも、規則や規正にしばられず、自分のやりたいように仕事できるチャンスが大切だと思う。
28 収入面、雇用面で完全に保障されていると感じられるときに、最も大きな充実感を感じる。
29 自分自身の生み出した製品やアイデアで何かを創り出し、軌道にのせたときこそ、キャリアがうまくいきそうだと感じる。
30 人類や社会にほんとうの貢献ができるキャリアをめざす。
31 自分の問題解決能力、競争に打ち勝つ能力をフルに生かせる挑戦機会を求めている。
32 マネジャーとして高い地位につくことよりも、自分の個人的な生活と仕事生活の両方をうまくバランスさせる方が大切だと思う。
33 自分独自の技能や才能を活用できたときに、最も大きな充実感を仕事に感じる。
34 ゼネラル・マネジャー(部門長)になるコースから外れてしまいそうな仕事をやらされるくらいなら、そんな組織はやめてしまう。
35 自律して自由に行動できないような仕事につくくらいなら、そんな組織はやめてしまう。
36 将来が保障され安心感をもって仕事に取り組めるようなキャリアをめざす。
37 自分自身の事業を起こし、それを軌道にのせることをめざす。
38 他の人びとの役に立つために能力を発揮できないような配属を拝受するぐらいなら、その組織をやめたいと思う。
39 ほとんど解決できそうにない問題に挑戦できるということは、マネジャーとして高い地位につくことよりももっと大切である。
40 自分個人や家族の関心事にあまりマイナスの影響がないような仕事の機会をいつも求めている。
TF GM AU SE EC SV CH LS
TF GM AU SE EC SV CH LS
40項目の中で最高得点をつけた項目の中から最もフィットする項目を3つ選んで、3項目それぞれに4点を加算してから縦軸の点数を合計してください。
※出所)エドガーH.シャイン『キャリア・アンカー』白桃書房、2003年より
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一般的な教育体系のフレームワーク
人材教育の内容
<短期的需要充足>
<長期的先行投資>
職能専門的
職種専門的な知識やスキルに関する教育 長期的な高度専門領域の教育
(技術教育,営業教育など)
(大学院での研究開発など)
組織運営的
階層別教育(新入社員教育,管理者教育)
企業側の視点
従業員の視点
幅広い経営管理教育
(MBAなどの幹部候補教育)
キャリア開発教育
出所)今野浩一郎、佐藤博樹(2002) 『人事管理入門』日本経済新聞社、pp.100-109より作成
階層別教育と職能専門教育および自己啓発/キャリア開発の関係
階層別教育
経営トップ層
(社長、事業部長クラス)
経営者教育
ミドルマネジメント層
(部長、課長クラス)
自己啓発/キャリア開発
中間管理職教育
初級マネジメント層
(係長、主任)クラス
監督者教育
一般従業員層
新入社員教育、中堅社員教育など
開発
製造
生技
営業
経理 ・・・etc.
職能専門教育(ブラックボックス化?)
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職場での人材育成サイクルの成立要件
「ナビゲーション型育成サイクル」の構成要素を明らかにする
To be: 将来のある
べき姿や到達目標
Story: 将来への道筋
=人材開発方法
As is: 現在の
能力状況や課題
As is: 現在の能力状況や課題
To be: 将来のあるべき姿や到達能力目標
現時点では何がどこまでできるのか、そして現
在の役割期待を遂行するための課題は何かを
明らかにする
いつまでに、何ができるように成長して欲しい
のか(将来的な役割期待)について、複数の
具体的な行動(イメージ・ショット)を列挙する
Story: 将来への道筋=人材開発方法
将来のあるべき姿や到達目標(将来的な役割期待)に至るための具体的な学習内容や経験な
どの学習機会の道筋(本人は、何を、誰から、いつ、どこで、どのように学習するのか)を明らか
にして本人と共有する
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中小製造業の教育訓練表の事例(栗田アルミ工業)
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何を教える(学ぶ)べきか?
教える(学ぶ)内容(学習成分)とは何か?
直接観察可能な領域
(目に見える領域)
間接的にしか観察で
きない領域
(目に見えない領域)
役割行動
形式的
知識
スキル
(知的技能/
運動技能)
学習対象の領域
価値観・態度(マインド)
基礎的能力・資質
学習領域
学習成分の内容と記述表現のポイント
形式的知識
スキル(技能)
特定の質問に対して答えられる事実の列挙や特定の情報
e.g.マーケティングの4P、○○の法則:「・・・を知っている」
知的ス
キル
特定の情報や概念知識を駆使して問題解決や何らかの行
動を実行する
e.g.課題解決能力:「・・・をすることができる」
運動ス
キル
繰り返しの練習が要求される精神活動を伴う筋肉運動
e.g. Å単位でガラス表面を研磨する技能:「・・・をすること
ができる」
価値観・態
度(マインド)
主な学習方法
フォーマルまたはインフォーマ
ルな職場教育などのOff-JT
職場での生産活動を通した訓
練教育(OJT)と実技を伴う訓練
教育(Off-JT)
特定の選択や判断をする傾向や心構え(その仕事に特有の
「~らしさ(way)」)
e.g.執着心,顧客サービス志向:「・・・する姿勢/態度」
上司や先輩の模範行動のモデ
リング(観察)学習や仕事の逸
話やエピソード(物語)の語り
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学習成分の分析と学習方法の関係:自動車の運転の事例
学習目標=「1か月で一人で自動車を運転して自宅と会社を往復することができる」
学習領域
具体的な学習成分内容リスト
主な学習方法
求められ
る知識
•一般的な自動車の仕組みや主な装置に関する知識
•使用する自動車の操作や装置(仕様)に関する知識
•自動車の運転操作に関する知識
•交通法規や規則(交通標識やキープレフトなどの規
則)知識
•自宅から会社までの道順・・・etc.
•自動車教習所での講習
•教科書やマニュアルによる知
識習得
求められ
るスキル
•ブレーキとアクセルの操作スキル
•ハンドルの操作スキル
•バックや方向転換の操作スキル
•駐車(縦列駐車など)のスキル
•高速道路走行のスキル・・・etc.
•運転シミュレータによる訓練
•教習コースでの運転個人指導
•路上での運転個人指導
求められ
る価値
観・態度
(マイン
ド)
•交通安全を優先する態度
•歩行者や他の車への配慮・・・etc.
•交通事故の悲劇に関するビデ
オ視聴
•本人の運転適性検査のフィー
ドバック
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看護師のグレード別人材像と学習目標(東北大学病院)
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4つの基本的な学習方法
Ⅰ概念的学習:教育者=「教師」
トレーナーが業務遂行に必要な知識や情報を教示し
て理解する(仕事の仕方を教授する)
Ⅱモデリング学習:教育者=「模範者」
トレーナーが業務遂行の模範を見せてイメージする
(仕事の模範を見せる)
Ⅲ経験的学習:教育者=監督者
トレーニーに実際の業務を経験させて体得する(仕事
を割り当てて監督する)
Ⅳ対話による学習:教育者=「コーチ」
トレーナーとの様々な対話や行動結果のフィードバッ
クによって気付く(質問をして気付かせる)
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職場教育(学習方法)の4つのステップ
教育形態の手順とタスク種別の関係
仕事の仕
方を教授
する
質問と対
話を通して
気付かせ
る
仕事の模
範を見せ
る
仕事を割り
当てて監
督する
フェーズ
教示
コーチング
仕事の仕方を教
授する
仕事の模範を見
せる
仕事を割り当てて
監督する
質問と対話を通し
て気付かせる
手順が標準化されたク
ローズドタスク;新人
○
○
○
○
手順が標準化できない
オープンタスク;ベテラン
△
△
○
○
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経験的学習のプロセスモデル
具体的経験
(Concrete Experience)
直接的に現実をあるがままに把握する
(Grasping via APPREHENSHION)
適応的知識
(Accommodative
Knowledge)
仮説検証
(Active
Experimentation)
外向的拡張による転換
(Transformation
via EXTENSION)
収斂的知識
(Convergent
Knowledge)
発散的知識
(Divergent
Knowledge)
内向的集中化による転換
(Transformation
via INTENTION)
内省的観察
(Reflective
Observation)
同化的知識
(Assimilative
Knowledge)
包括的に本質を理解する
(Grasping via COMPREHENSHION)
抽象的概念化
(Abstract Conceptualization)
出所)Kolb, D. A. (1984)
Experiential Learning,
Prentice-Hall, p.42
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経験的学習スタイルの分析
CE:具体的経験(Concrete Experience)
20
18
17
適応的知識
(Accommodative
Knowledge)
16
100%
15
80%
14
13
発散的知識
(Divergent
Knowledge)
60%
12
11
AE:仮説検証
(Active
20
Experimentation)
19
18 17
16
15 14
20%
40%
収斂的知識
(Convergent
Knowledge)
100%
10 11 12 13
14 15
17 19
RO:内省的観察
(Reflective
Observation)
15
60%
80%
40%
17
18
19
20
21
同化的知識
(Assimilative
Knowledge)
22
23
AC:抽象的概念化(Abstract Conceptualization)
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経験的学習スタイルの強み・弱みと開発方法
発散的学習スタイル
(watching)
同化的学習スタイル
(thinking)
収斂的学習スタイル
(doing)
適応的学習スタイル
(feeling)
強み
•想像的能力
•人間を理解すること
•問題を認識すること
•ブレーンストーミング
•計画すること
•モデルを創造すること
•問題を定義すること
•理論を開発すること
•問題解決
•意志決定
•演繹的に説得すること
•問題を定義すること
•物事を遂行すること
•リーダーシップ
•リスクテーキング
過剰
ケース
•選択肢による麻痺
•意志決定できない
•砂上の楼閣
•実践的な適応の欠如
•誤った問題を解決する
•性急な意思決定
•些細な改善
•意味のない行動
不足
ケース
•貧困なアイデア
•問題と機会を認識するこ
とができない
•失敗から学習できない
•仕事の原理原則が欠
如
•体系的な視点の欠如
•焦点の欠如
•アイデアや理論の検証
が不十分
•思考の拡散
•納期遅れの仕事
•非現実的な計画
•目標志向の欠如
開発
方法
•人間の感情に敏感になる
こと
•価値観に敏感になること
•オープンマインで聞くこと
•情報を収集すること
•不確実な状況の示唆を
想像すること
•情報を関連付ける
•概念的モデルを組み立
てること
•理論やアイデアの検証
•実験を設計すること
•定量的データの分析
•思考と行動の新たな様
式を創造すること
•新たなアイデアの実験
•最良の解決の選択
•目標を設定すること
•意志決定すること
•目的へのコミットメント
•新たな機会の探索
•他者への影響や先導
•個人的な没頭
•人材への対処
出所)Kolb, D. A., Osland, J. S., Rubin, I. M. (1995) Organizational Behavior, Prentice Hall, p.65より一部改編
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パフォーマンスとキャリア・ステージのモデル
高い
パフォーマンス
本人らしさ
維持?
落ち着き
大人への
仲間入り
探索
低い
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
出所) Hall, D. T. (1976) Careers In Organizations, Glenview, IL: Scott, Foresman, p.57;
Hall, D. T. (2002) Careers In and Out of Organizations, Sage Publications, p.103
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人生の四季とライフサイクル
D.レビンソンのライフサイクルのモデル
老年期
65
60
55
50
老年への過渡期
中年の最盛期
中年期
50歳の過渡期
中年に入る時期
45
人生半ばの過渡期
40
一家を構える時期
33
成人前期
30歳の過渡期
28
大人の世界へ入る時期
成人への過渡期
22
17
児童期と
青年期
3
0
幼児への過渡期
出所)D.J.レビンソン(1992、原著:1978) 『ライフサイクルの心理学(上・下)』講談社、p.48頁&P.111より加筆修正
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キャリアの内省:キャリア・アンカーのモデル
自己、仕事、家庭への掛かり合いを分析するためのモデル
「キャリアとは、生涯を通しての人間の生き方・表現である」
動機と欲求
(やりたいこと)
自己成長のための環境
A
キャリア・アンカー
個人
B
C
仕事の環境
才能と能力
(できること)
家庭
A=自己成長への掛かり合い
B=仕事への掛かり合い
C=家庭への掛かり合い
出所)E.H.シャイン(1991、原著:1978)
『キャリア・ダイナミックス』白桃書房、p.56
態度と価値
(すべきこと)
出所)同上、p.143より作成
「自覚された才能と能力(さまざまな仕事環境での実際の成功にもと
づく)」;「自覚された動機と欲求(現実の場面での自己テストと自己
診断の諸機会,および他社からのフィードバックにもとづく)」;「自覚
された態度と価値(自己と,雇用組織および仕事環境の規範および
価値との,実際の衝突にもとづく)」( 同上、p.143)
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キャリアアンカーの自己分析
30
25
20
15
10
5
0
TF
GM
AU
SE
EC
SV
CH
LS
Copyright ©Masahiko Fujimoto
キャリア・アンカー その1
8つのカテゴリー
特徴
専門・職能別コン
ピタンス:TF
(Technical/
Functional
Competence)
自分の才能を発揮し、専門家であることを自覚して満足感を覚え、自分が得意とする専門分
野や職能分野に特化する道を指向する(誰でも初期段階では専ら専門を伸ばすことに没頭
するが、一部の人間だけが自分の専門性を追及し続けてそのような仕事そのものにやりが
いを感じる)。
また、自分の才能を生かせる挑戦的な仕事を好み、組織内外のプロから評価を得て承認さ
れることが重要で、周囲から専門家として正式に承認されることが重要。
全般管理コンピタ
ンス:GM
(General
Managerial
Competence)
経営管理そのものに関心をもち、組織の幹部として方針を決定し組織の成功に貢献したいと
思い、挑戦的で重い責任ある統合的な仕事を好む真の「組織人」。
また、3つの領域の才能・能力をバランスよく組み合わせることが要求される。
・分析スキル:不確実な状況の中で事実関係を把握して細部にとらわれずに本質を見抜き、
情報の妥当性や信頼性を判断して課題解決に導く意思決定のプロセスを管理する技能
・対人関係スキル:課題解決に必要な人材を集めてやる気を引き出す技能
・情緒的スキル:修羅場でも落ち込んだりびくつくことなく情緒的な緊張をものともしない、自
分自身の感情をコントロールする技能
自律・独立:AU
(Autonomy/In
dependence)
自分の専門分野の範囲内で明確に線を引いて、自分のやり方、自分のペースなど、組織に
干渉されることに耐えられず、自分の望み条件に合う、組織からは独立したキャリアを指向
する。
保障・安定:SE
(Security/Stab
ility)
安全で確実と感じられ、将来の出来事をある程度予想できるような安全の保障という課題が
支配的なキャリアを指向する。組織との一体感や忠誠心を尊重し、終身雇用や年功序列を
望み、ある程度の昇進と昇給などの外発的報酬をより重視する。
出所)E.H.シャイン(2003、原著:1990) 『キャリア・アンカー』白桃書房、より作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
キャリア・アンカー その2
カテゴリー
特徴
起業家的創造
性:EC
(Entreprene
urial
Creativity)
人生の早い時期からがむしゃらに夢を追いかけ、新しい組織、製品、サービスを創造し存続さ
せオーナーとして経済的に成功することを指向するキャリア。新しい事業を起こすことに強くか
きたてられるが、自己中心的なところがあり、一方で飽きっぽい傾向がある。
奉仕・社会貢
献:SV
(Service/De
dication to a
Cause)
自分の才能や能力よりも自分の中心的な価値観を仕事の中で具現化し、何らかのかたちで世
の中をもっとよくしたいという欲求に基づくキャリアを指向する。医療、看護、社会福祉、教育な
どの人々と共に働き人類のために奉仕するという価値観を中心に置く傾向がある。したがって、
彼らが所属する組織の政策が自分の価値観に合う方向で影響を与えることが可能な仕事を求
める。
純粋な挑戦:
CH(Pure
Challenge)
より困難な状況に挑戦し、日常の戦いや競争で勝ち抜くことに最も価値を置くタイプ。自分の専
門分野に限定されることなく、問題が起こる専門分野ならどこでも果敢に挑戦しようとする。高
度な戦略や経営のコンサルタントやプロのスポーツ選手などにこの傾向が多く見受けられる。
生活様式:LS
(Lifestyle)
個人のニーズ、家族のニーズ、キャリアのニーズなどの生活様式全体を上手く調和させること
を最も尊重するキャリア指向。組織との関係においては忠誠心も高いが、転勤の制約、勤務時
間帯、育児休暇など自分の都合に合わせたライフスタイルを希求する。
出所)E.H.シャイン(2003、原著:1990) 『キャリア・アンカー』白桃書房、より作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
計画された偶発性(Planned Happenstance Theory)
キャリア開発は学習プロセスの結果である
キャリアは用意周到に綿密に計画し準備できるものではなく、偶然に起きる予期せぬ出来事からも自分のキャリア
は形成され開発されるものであり、むしろ予期せぬ出来事を大いに活用すること、偶然を必然化することが重要
「我々のキャリアは予期せぬ出来事を上手に活用することによって、ただ偶発的
出来事も自分のキャリア形成の力に変えていくことが可能である。それは一人ひ
とりの主体性であり、意識的努力によるものである。というのは、偶発的出来事が
起きる前には、自分自身の様々な行動が前提として存在しており、こうした自分
の行動は次に起こる偶発的出来事を決定しているからである」。
「大切なことは、予期せぬ出来事を避けるのではなく、むしろ積極的に自ら創造す
ることであり、自分のキャリアにそれを積極的に活かすことである。キャリアチャン
スはおとなしくただ待っていても訪れるものではなく、自から行動を起こしてチャン
スを生み出し、積極的に自分の手で掴みとるものである。個人のキャリアは生涯
にわたる学習の連続であり、多くの選択肢を前に何度も繰り返し意思決定を行
い、数々の予期せぬ出来事を乗り越えながらキャリア形成を行うものである」
(Krumboltz, J. D.,(1979), A Social Learning Theory of Career Making. Social
Learning and Career Making. Cranston, RI: Carroll Press, pp.19-49)
キャリア開発に必要なスキル
①好奇心(新たに学習する機会を広げる)
②執着(挫折にめげずに努力を続ける)
③柔軟性(態度や境遇を変化させる)
④楽観主義(実現可能で達成できそうな新たな機会を見渡す)
⑤冒険心(不確実な結果に対峙する行動をとる)
(Mitchell, K. E., Levin, A. S., Krumboltz, J. D. (1999) “Planned Happenstance: Constructing Unexpected
Career Opportunities.,” Journal of Counseling & Development, Vol.77, Issue 2, pp.115-124)
Cf. 「セレンディピティ」(偶察力):予期せぬ偶発性を発見する力
(澤泉重一(2002)『偶然からモノを見つけだす能力』角川書店)
Copyright ©Masahiko Fujimoto
夢の実現とプロセス戦略論
夢や戦略のデザインと実現の関係
途中で挫折して実現さ
れなかった夢や戦略
実現された
夢や戦略
夢や戦略の更新
出所)ヘンリー・ミンツバーグ『「戦略計画」創造的破壊の時代』産能大学出版部、
1997年、p.76を参考にして筆者作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
キャリアのドリフトと節目のデザイン
金井壽宏のトランジション・サイクル・モデル
1.キャリアに方向感覚をもつ
大きな夢、でも、現実吟味できる夢を抱く。
生涯を通じての夢を探しつつ、節目ごとの
夢(の修正)。
4.ドリフトも偶然も楽しみながら取り込む
あとは、つぎの転機までは、安定期にも退
屈することがないように、偶然やってきた
機会も生かす。ドリフトもデザインの対とし
て楽しむ
2.節目だけはキャリアデザインする
人生や仕事生活の節目ごとに、なにが得
意か、なにがやりたいか、何に意味を感じ
るかを自問して、キャリアを自覚的に選択
する。
3.アクションをとる
デザインしたら、その方向に、力強い最初
の一歩を歩み、元気を持続する。MER(最
低必要努力投入量)を超えるまでは、よい
がまんはしつつ、がんばってアクションを
繰り返す。
出所)金井壽宏(2002) 『働く人のためのキャリア・デザイン』PHP新書、p.253
Copyright ©Masahiko Fujimoto
21世紀のキャリア形成
21世紀型キャリア:多変的キャリア(protean career)
「人生の全期間を通して仕事にまつわる経験や活動に関係する、個人的に知覚された態度や行動の連鎖である」




キャリアは、組織ではなく個人によって管理される
発達は、公式的な訓練、再訓練、上昇移動を必ずしも必要としない
組織は、挑戦的な配置、発展的な関係性、情報や他の発達に必要な資源を提供する
目的は、心理的な成功
Hall, D. T. (2002) Careers In and Out of Organizations, Sage Publications, p.24
新たなキャリア段階のモデル:ミニステージ(学習の短期サイクル段階)
マスター 探索
高
パフォーマンス
マスター 探索
確立
マスター 探索
確立
確立
トライアル
トライアル
トライアル
探索
探索
探索
低
0
1
2
3
0
1
2
3
4
5
0
1
2
3
4
キャリ
5 ア年齢
出所)Hall, D. T. (1996) “Protean Careers of the 21th Century,” Academy of Management Executive,
Vol.10, No.4; Hall, D. T., Mirvis, P. H. (1996) “The Protean Career: Psychological Success and the Path
with a Heart,” Hall, D. T. et al. eds., The Career is Dead—Long Live the Career, Jossey-Bass