DOI: 10.3179/jjmu. JJMU.R.65 ◇ STATE OF THE ART 産婦人科超音波の新技術 ◇ Dual gate Doppler 法がもたらす可能性について 中田 雅彦 抄 録 Dual gate Doppler 法は,従来は 1 つの関心領域の Doppler 信号しか検出できなかった方式と異なり,同時に 2 つの サンプリングポイントを設定することで,超音波断層像上の異なる位置の血管や組織の Doppler 法を同時に測定す ることを可能にした.このことで,胎児の動脈系と静脈系の血流評価が同時相で可能となり,胎児不整脈の診断が 容易となった.また,pulsed wave Doppler 法のみならず組織ドプラ法での測定が可能なため,胎児心機能評価に おける新たな可能性をもたらすことが期待される.成人領域と異なり,限られたデバイスでしか評価することがで きない胎児の機能評価において新たな未来を想像させてくれる. Recent advances and future of dual gate Doppler assessment for fetal condition Masahiko NAKATA Abstract Dual gate Doppler analysis is one of the most useful methods developed in recent years. This technology allows us to assess two different regions of interest simultaneously. It facilitates the diagnosis of fetal arrhythmia. Furthermore, two different techniques, such as pulsed wave Doppler and tissue Doppler imaging, can be employed simultaneously. We hope dual gate Doppler analysis will allow us to investigate fetal circulation and/ or fetal condition. Keywords dual Doppler, pulsed wave Doppler, tissue Doppler imaging, fetal arrhythmia, fetal cardiac function 1.は じ め に の血流波形から胎児不整脈の質的診断をする研究4) など,数多くの研究がなされてきた. 産婦人科,特に産科領域におけるパルスドプラ これらの領域の発展は,小児や成人領域の超音波 (pulsed wave Doppler : PW)法の普及によって,過 医学とは異なる方向の発展といえる.血圧,心電図, 去二十数年の間に胎児胎盤循環に対して様々な評価 酸素飽和度や血液検査という手法が通常の臨床検査 が行われるようになってきた.胎児胎盤機能不全に として用いることができない「子宮内の胎児」とい おける臍帯動脈(umbilical artery : UA)血流の評価 う直接触れることのできない対象に対して多くの研 とその臨床的有用性 ,中大脳動脈(middle cerebral 究者があらゆる手段と思考を駆使して対象物の評価 artery : MCA)血流による脳血流再分配と周産期予 について長年努力してきているのが現状である. 後の関連性 といった子宮内の胎児の低酸素やアシ 本稿では,近年臨床現場に導入されるようになっ ドーシスにおける循環動態の変化を捉えた研究, てきた「Dual gate Doppler 法」という比較的新しい MCA の最高血流速度(peak systolic velocity : PSV) 手段によって,今後,産婦人科領域においてどのよ から胎児貧血を推測する研究 ,動脈・静脈の 2 つ うな発展性が望まれるのか,論じていきたい. 1) 2) 3) 東邦大学医療センター大森病院産婦人科 Department of Obstetrics and Gynecology, Toho University Omori Medical Center, 6︲11︲1 Omori, Ota, Tokyo 143︲0015, Japan Received on July 6, 2015; Revision accepted on July 8, 2015 J-STAGE. Advanced published. date: October 8, 2015 Jpn J Med Ultrasonics
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