プラナリアの食性と 食成分がもたらすからだへの影響

プラナリアの食性と
食成分がもたらすからだへの影響
前澤ゼミ
武元 川辺 岸本 江見
プラナリアは雑食性
RIKEN CDB HP
http://www.eonet.ne.jp/~suiseikontyu/
自然界では主に水生昆虫などを餌としており、雑食性の 生物だと考えられている。 無性生殖と有性生殖の転換
プラナリアは季節によって生殖様式を転換し、 その主な原因は水温や日照時間の変化とされている。 疑問点 プラナリアは雑食性と考えられているが、
本当に何でも食べてしまうのか?
プラナリアにも食物の好みがあるのではないか?
食物がプラナリアの生殖転換の要因となる
可能性はないのか?
研究目的
① プラナリアの食性を調査
プラナリアは本当に鳥レバーが好物なのか?など
② 食成分がもたらすからだへの影響
研究の流れ
1.与える餌の選定
2.給餌・観察
3.観察結果による考察
餌の選定
前期で使用した餌は下の表の通りである。
魚
マグロ
タイ
サーモン
貝・エビ
甘えび
アサリ
ハマグリ
肉
鳥レバー
牛レバー
マトン
野菜
ニンジン
ホウレンソウ
果物
リンゴ
バナナ
餌の作成
それぞれ餌をプラナリアが
食べやすい大きさに切る。
餌の作成風景→
研究経過
体長 : 1cm 各10匹 30分給餌
マグロ
サーモン
甘えび
タイ
検定個体:リュウキュウナミウズムシ クローン集団OH株
鳥レバーへの食いつきは良い
野菜や果物も食べている
観察結果
大きさ
数
有性化 特異な点
鳥レバー 1.5cm 11匹
なし
ほかの餌に比べ飛びぬけて大きい
牛レバー 1cm 26匹
なし
分裂数が非常に多かった
タイ
0.6~0.7cm 10匹
なし
3~4匹が死にかけ、弱っていた
バナナ
0.4cm あり
卵巣の発達が見られた
10匹
観察結果
大きさ
数
有性化 特異な点
鳥レバー 1.5cm 11匹
なし
ほかの餌に比べ飛びぬけて大きい
牛レバー 1cm 26匹
なし
分裂数が非常に多かった
タイ
0.6~0.7cm 10匹
なし
3~4匹が死にかけ、弱っていた
バナナ
0.4cm あり
卵巣の発達が見られた
10匹
鳥レバーと牛レバーの違い
鳥レバーは個体の成長は著しく、対して牛レバーは分裂数
が多かった。
鳥レバーは牛レバーと比較して葉酸やパントテン酸、ビタミ
ンDやビタミンAが多く含まれている。対して牛レバーはビタ
ミンB2やナイアシンが鳥レバーと比べて2倍以上も多く含ま
れており、同じレバーにしても成分がずいぶんと異なる。
これらの成分的違いによって、プラナリアの成長に差異が
現れたと考えられる。
観察結果
大きさ
数
有性化 特異な点
鳥レバー 1.5cm 11匹
なし
ほかの餌に比べ飛びぬけて大きい
牛レバー 1cm 26匹
なし
分裂数が非常に多かった
タイ
0.6~0.7cm 10匹
なし
3~4匹が死にかけ、弱っていた
バナナ
0.4cm あり
卵巣の発達が見られた
10匹
タイについて
プラナリアが弱った原因としては、タイが持つ毒素である
「シガテラ毒」が考えられる。
シガテラ毒はもともとタイが食べる藻が持つもので、タイが
その藻を摂取することで蓄積し、毒性が高まっていく。
人間に影響を与えるような強い毒性を持つこともあるシガ
テラ毒が、プラナリアにとって悪い作用を及ぼしたのではな
いかと推測される。
観察結果
大きさ
数
有性化 特異な点
鳥レバー 1.5cm 11匹
なし
ほかの餌に比べ飛びぬけて大きい
牛レバー 1cm 26匹
なし
分裂数が非常に多かった
タイ
0.6~0.7cm 10匹
なし
3~4匹が死にかけ、弱っていた
バナナ
0.4cm あり
卵巣の発達が見られた
10匹
バナナについて
研究では唯一バナナに有性化の傾向が見られた。
バナナの栄養価が低いのか、またはプラナリアがあまり好
まないのか、ほかに比べてプラナリアの成長があまり良く
なかった。
引き続きバナナを使った実験を続ける。 バナナに焦点をあてる
実験個体数が多い方が信頼性の高いデータと
なる。
→プラナリアの匹数を10匹から20匹に増やし
た。
バナナ単体ではプラナリアの成長が悪く、
観察に支障をきたしてしまう。
→バナナ単品だけでなく、鳥レバーとバナナの
混合品を2パターン用意した。
餌の一覧
餌
備考
鳥レバー
通常のエサの条件
鳥レバー+バナナ ①
比率は1:1(レバー:バナナ)
鳥レバー+バナナ ②
比率は1:2(レバー:バナナ)
バナナ
研究経過
研究開始から2週間後のプラナリアの様子。
バナナとレバーの配分によって成長の度合いが著しい。
卵巣の誘導
レバー
レバー:バナナ = 1:2
観察結果
後期研究は11/9から開始し、その後11/26、12/10、12/29の三回にかけて光学
顕微鏡による観察を実施した。結果は以下のとおりになった。
11/26 2週間後
レバー
1:1
1:2
バナナ
卵巣
卵巣
卵巣
卵巣
なし あり なし あり なし あり
20
0
19
0 20
2
なし あり
18
2
12/10 4週間後 レバー
1:1
1:2
卵巣
卵巣
卵巣
なし あり
20
0 バナナ
なし あり なし あり
20
1 16
4
小さすぎて
観察できず
20
12/29 7週間後
レバー
1:1
1:2
バナナ
卵巣
卵巣
卵巣
なし あり
なし あり なし あり
19
20
0
1
16
3
小さすぎて
観察できず
17
考察
バナナと有性化の因果関係
実験結果によって、明らかにバナナにはプラナリアの
有性化を引き起こす物質が含まれていることがわかった。
考察
バナナにはビタミンA、ビタミンK、ナイアシンが多く含ま
れている。ただしナイアシンは牛レバーにも含まれているた
め、これが有性化の原因とは考えにくい。
そのため、ビタミンAやビタミンKをはじめとするビタミン群
のいずれかが原因であると考えることができる。
今回はレバーとの栄養比較によって考察を行ったが、比
較に含まれなかった物質が生殖転換に影響していること
も十分に考えられる。
まとめ
プラナリアは雑食であり、肉類から野菜類まで非常に幅広い食
性を有していた。
少ない個体を増やすためには牛レバーを、プラナリアの成長を
促すためには鳥レバーを用いるべきである。
プラナリアに魚介類を給餌する場合には、それらが蓄積する
微量の毒素にも留意する必要がある。
バナナと有性化との因果関係が判明した。
バナナ中の有性化誘導因子は興味深い。
感想
研究目的について一定の成果をあげることができた。
シガテラ毒やバナナの成分など、中途半端に終わっ
てしまったものがあり、残念だった。ぜひ引き継いで
研究を行ってもらいたい。
非常に楽しい研究だった。