頭頸部癌に ついて 耳鼻いんこう科 富樫孝文 2015/6/19 1 市民公開講座 2 本日の内容 頭頸部とは?部位・機能など 疫学 (頭頸部がんの実際) 診断方法と疾患の提示 (どんな検査?) 治療方法 (切るしかないの?) 予防 およそ40分程度お話し、その後ありましたら質問をお受けします。 3 頭頸部とは 脳: 脳外科 眼: 眼科 歯: 歯科 後頸部: 整形外科 脳を除いた 顔面から首の範囲 (耳鼻いんこう科領 域が担当する範囲) 4 Q:頭頸部には 何がある? • 鼻腔 • 副鼻腔 • 咽頭 • 喉頭 • 口腔 • 甲状腺 • その他 (耳・骨軟部軟部組織) 5 顔面~頸 血管(動脈、静脈) 神経(運動や 感覚の神経) リンパ 筋肉、脂肪など 6 Q:頭頸部の 主な機能は? • 咀嚼 ↓ 嚥下 7 Q:頭頸部の 主な機能は? • 呼吸 ↓ 発声 • • • • 視覚、味覚、嗅覚、聴覚 眼球運動 顔面・頸部の運動と感覚 肩の運動など 8 2011年の罹患数 1位 部位 胃 2位 大腸 第6位 3位 肺 4位 前立腺 5位 乳房 頭頸部癌 2015 国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センターHPより引用 9 2013年部位がん死亡数 部位 男性 口腔・ 咽頭 5,128 喉頭 合計 895 6023 頭頸部癌の 死亡数は 少ない! 10 罹患率は高いのに 死亡率は低い しっかり治療すれば 治りうる病気である! 11 そもそも癌とは!? 遺伝子の異常が蓄積した結果発生する細胞の 病気である 遺伝子の異常を引き起こす要因として、人間の 生活習慣と生活環境が深く関係する ヒトのがんの発生には環境因子が60~70% がんが進行すれば、人はそのために死にいたる 12 診断方法 問診:どこに、どんな症状が、いつから 検査:視診 触診 ファイバー 画像検査(CT・MRI・PET/CTなど) 血液検査 組織検査(細胞診、組織診) 13 モニター • • • • 内視鏡 局所麻酔後に鼻腔から挿入 痛みは軽度 短時間(1-5分) 予約は不要 14 口腔(咀嚼・嚥下) 15 舌がん 自覚症状: 痛み・しこり 16 中咽頭がん 自覚症状: 痛みと腫れ 17 呼吸・発声 (鼻腔~咽頭~喉頭) 18 喉頭がん 自覚: 声がれ 呼吸困難感 19 下咽頭(食道への入口) 20 下咽頭がん 自覚症状: 痛みと首の腫れ 21 他の頭頸部がん 鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞、篩骨洞) 上咽頭がん 口唇・口腔がん(舌、頬粘膜、歯肉) 甲状腺がん 聴器がん(外耳がん、中耳がん) 原発不明がん 骨軟部悪性腫瘍(肉腫) 22 CT・MRI 病気の広がりを確認 23 組織検査 がんの疑いのある一部を 切除し調べる がんの 診断が確定 24 診断1 局所の大きさと広がり 頸部リンパ節転移の有無、数、大きさ 遠隔転移の有無 以上から進行度を決定 25 進行度(ステージ) Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 早期がん 5年生存率: 80-90% 進行がん 5年生存室: 40-50% 初診から診断までおよそ2週間 4週間以内には治療を開始 26 治療 手術 放射線治療 化学療法(抗がん剤、分子標的薬) 上記を単独または組み合わせて 治療を行います。 27 頭頸部がんの治療のポイント 食べること しゃべること 呼吸すること 他人から目に見える部位であること 視力、嗅覚、味覚、聴力 日常生活に密接に強く関係 →いかに残すか=機能温存が重要 28 機能温存を目的として、 がんが再発しては困る 治療目的 治癒率を上げながら、 治療後機能温存の保持が目標 29 手術(頭頸部) 神経が多い、血管が細く術後出血すると 窒息の危険性 術後に目でみえる(整容面) 術後機能が生活に直結する (喉頭摘出で失声、舌切除で嚥下障害・ 講音障害など) 30 症例1 舌がん 40代女性 舌腫瘍切除+頸部リンパ節郭清 +腹直筋による舌再建 デメリット: 構音障害、嚥下障害など 31 症例2 70歳代男性 数ヶ月前から飲み込みにくさ 診断 進行下咽頭がん 治療方針は!? 手術 あるいは 化学放射線治療 32 手術: 咽頭・喉頭摘出術+遊離空腸再建+ 永久気管孔造設 デメリット: 失声 首に穴(整容面) 化学放射線治療: 結局どち らがいい の!? デメリット: 入院期間が長い 生涯口の渇き、 再発時根治治療は困難場合 33 • 仕事もリタイヤしたし、 今更そんなにしゃべらな くてもいい • でも家族とまだ長く生き ていたい • 声を失うなんて絶対に 嫌だ • 仕事だって営業だし • 首に穴があくなんて 治療は患者さんにより 異なります 34 機能再建(喉頭摘出者) 1 気管食道瘻形成術(シャント発声) 2 電気喉頭による発声法 3 食道発声法 35 Development of postlaryngectomy voice rehabilitation in the Netherlands (Source: Dutch Laryngectomee Society) 100% 75% Prosthetic voice Esophageal voice 50% Electrolarynx 25% 0% <1976 76/77 78/79 80/81 82/83 84/85 86/87 88/89 90/91 92/93 94/95 96/97 98/99 00/01 02/03 36 放射線治療 化学療法と併用あるいは単独で治療 治療期間は33-35回(7週間)程度 入院場合により外来治療 メリットだけでなく、 後遺症などのデメリットも 37 化学療法 抗がん剤 分子標的薬 これらだけで頭頸部がんを完全に治すこ とは困難です。腫瘍増大抑制や放射線治 療との併用での相乗効果を見込んで治療 を行います 38 がんのリスクと予防 酒は? タバコ? 他の因子は? 39 リスク評価 確実に上げる 要因 たばこ 肥満 アルコール 部位 口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、肺、 すい臓、肝臓、腎臓、尿路、膀胱、 子宮頸部、骨髄性白血病 食道(腺癌)、大腸、乳房、 子宮体部、腎臓 口腔、咽頭、喉頭、食道、 肝臓、乳房 上げる可能性が 保存肉 大きい 塩蔵食品・塩分 熱い飲食物 下げる可能性が 果物・野菜 大きい 運動 1次予防:生活習慣とがんの関係 胃 大腸 口腔、咽頭、食道 口腔、食道、胃、大腸 乳房 WHOの下部組織 国際癌研究機関(IARC)の2003年の報告 40 日本における喫煙とがん死との関係 男 女 部位 相対リスク* 人口寄与危険度** (%) 相対リスク 人口寄与危険度 (%) 全部位 1.65 32 1.32 5 喉頭 32.50 96 3.29 22 肺 4.45 72 2.34 16 口腔・咽頭 3.00 61 1.05 0 食道 2.24 48 1.75 9 胃 1.45 25 1.18 3 *相対リスク; 非喫煙者と比べて、喫煙者が何倍がんにかかりやすいか。 **人口寄与危険度; がん患者の中で、喫煙が原因と考えられる割合。 41 アルコールと飲酒 1日あたりの飲酒量が増えるとリスクが 徐々に増加 喫煙と飲酒が両方重なるとさらにリスクが高くなる 体質的にアルコールに弱い人(飲むとすぐに顔が赤く なったり、動悸がしたりする人)では、飲酒によるリス クが、特に高くなるという報告もある 適度な飲酒。具体的には日本酒換算で一日一合(ビール で大瓶一本)程度以内。飲まない人は無理に飲まない。 42 頭頸部がんの予防 -まとめ 1次予防 禁煙、適度な飲酒、野菜・果物摂取、 熱い飲食物は最小限 2次予防 内視鏡(場合によりCT検査) 3次予防 治療した頭頸部がんの再発のチェック 第2の頭頸部がんの検診 (以上は治療した病院での検査) 肺・食道・胃などを中心とした検診 (検診センターで胃カメラ・CTを行う) 43 本日のまとめ 頭頸部の機能・疫学・治療・予防 進行がんでは生命だけでなく、治療による失 われる代償も大きい 予防、早期発見、早期治療を目指す 気になる方は、お近くの耳鼻科開業医で診察 44
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