10分でわかる資本コスト - Investor Impact

Credit Pricing Corp.
資本コスト・セミナー
2013年11年29日@如水会館
10分でわかる資本コスト
外国人投資家に日本企業の価値を説明する枠組み
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
代表取締役社長 山口 勝業
博士(経済学)/CFA/CMA
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
Credit Pricing Corp.
会社は誰のものか?
株式会社は株主のもの!
お客様は神様です!
雇用を守るのも大事です!
顧客
株主
債権者
社員
顧客
仕入先
社員
株主
仕入先
債権者
IRの担当領域
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
2
Credit Pricing Corp.
優先度とリスク負担
【損益計算書】
優先度
売上高
顧客
売上原価
仕入先
リスク負担
粗利益
販売費一般管理費
社員
営業利益
営業外損益
債権者
経常利益
特別損益
税引前当期利益
法人税等
税引後当期利益
株主
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
3
Credit Pricing Corp.
企業経営に必要なのは ヒト・モノ・カネ
OUTPUT
INPUT
生産活動
人件費
販売活動
原材料費・諸費用
資本コスト
売上
•
•
負債コスト
株式資本コスト
売上-費用=利益
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
4
Credit Pricing Corp.
ヒト・モノ・カネのコストはPLのどこに表示?
【PL】
ヒト
モノ
カネ
損益
売上高
売上原価
人件費(製造)
原材料費等
粗利益
販管費
人件費(営業)
諸経費
営業利益
負債コスト
営業外損益
経常利益
特別損益
税引前利益
法人税等
税引後利益
株式資本コスト
株式資本コストと残余利益はPLの欄外!
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
残余利益
5
Credit Pricing Corp.
DCF法: 将来CF(利益)を割り引いて現在価値で評価
8年後
7年後
6年後
将来
5年後
将来のCF
4年後
3年後
2年後
1年後
現在
投下資本
CF3
CF2
CF1
PV1
PV2
・・・・・・
PV3
CF 3
CF 2
CF 1
2
1  k  1  k  1  k 3
・・・・
PVt : t年後のCFの現在価値
k : 割引率
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
6
Credit Pricing Corp.
株式の価値=自己資本+残余利益の現在価値
【計算方法その1】
残余利益モデル
残余利益

NI t  k E  Bt 1 
 B0  
t
1  k E 
t 1

PV E
株式の
現在価値
(時価)
PVE
Bt
NIt
kE
現在の
自己資本
(簿価)
将来の残余利益の
現在価値
(時価)
:株式の現在価値 (present value of equity)
:t期末の自己資本の簿価 (book value)
:t期の税引後当期利益 (net income)
:株式資本コスト (cost of equity capital)
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
7
Credit Pricing Corp.
株式の価値=企業価値ー負債の価値
【計算方法その2】
B/Sアプローチ
時価ベース純資産
PV E  PV Firm  D
株式の現在価値
企業価値
PV Firm 
PVE
PVFirm
NOPATt
WACC
kD
kE
w
負債の価値


t 1
NOPAT t
(1  WACC ) t
WACC  w  k D  (1  w)  k E
:株式の現在価値 (present value of equity)
:企業の現在価値 (present value of firm)
: t期の税引後営業利益 (net operating profit after tax) =営業利益x(1-税率)
: 加重平均資本コスト (weighted average cost of capital)
:負債資本コスト(cost of debt capital)
:株式資本コスト (cost of equity capital)
:負債比率
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
8
Credit Pricing Corp.
WACCの3変数をいかに推計するか?
WACC  w  k D  (1  w )  k E
【変動要因】
w
固有
要因
市場
要因
財務政策
kD
kE
償還期間
β
信用格付け
企業規模(サイズ)
金利の期間構造
安全資産利子率
信用スプレッド
株式リスク・プレミアム
サイズ・プレミアム
クレジット・プライシング
コーポレーション
イボットソン・アソシエイツ
・ジャパン
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
9
Credit Pricing Corp.
企業のダイナミズム
・ 企業は常に変化している。
・ WACCの3変数は企業のどの局面を捉えて推計すればよいのか?
・ 各局面における企業の姿の正しい把握と投資家への情報提供が重要。
急場の資金
繰りを借入で
しのぐ
回復基調により
自己資本増加
再度の
借入増加
安定化へ
DEレシオ
(Debt/Equity)
●●●
ショック
発生
-1年目
0年目
回復基調
定着
立ち直り
過程
1年目
売上、キャッシュ・
フローの推移
業況低迷
2年目
3年目
4年目
5年目
6年目
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
7年目
10
Credit Pricing Corp.
資本提供者の視点
資本の
種類
株主
資本
負債
プレーヤー
視点
評価法
株式トレイダー
目前の変化
チャート、マルチプル他
長期投資家
企業価値
DCF法
債券トレイダー
目前の変化
気配値、CDSプレミアム他
機関投資家、銀行
長期的な返済能力
格付
• IRの対象となる長期投資家は 赤枠内のプレーヤー
• 機関投資家のなかでも外人投資家が増えている
• 外国人投資家の視点はどう違うのか?
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
11
Credit Pricing Corp.
日米の株価形成の違い ・・・株式資本コストは?
低いROE、低いP/B
(Value株)
高いROE、高いP/B
(Growth株)
日本(ラッセル野村大型指数の構成銘柄)
米国(S&P500の構成銘柄)
2.5
2.5
<中央値>
実績B/P
0.98
(実績PBR
1.0倍)
実績ROE
7%
2.0
Value
→ 割安
→ 割安
Value
実績B/P
1.0
0.5
Growth
0.0
‐20% ‐10%
0%
低収益
10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%
←
実績ROE
<出所>野村證券HP、Bloombergを元に作成
→
高収益
割高 ←
実績B/P
2
1.5
1.5
割高 ←
<中央値>
実績B/P
0.42
(実績PBR
2.4倍)
実績ROE
14%
1
0.5
Growth
0
‐20% ‐10% 0%
低収益
10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%
←
実績ROE
→
高収益
2012年11月末時点
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
12
Credit Pricing Corp.
ROEとB/Pのトレードオフ 株式資本コストの理論値
• GrowthとValueはトレードオフ。割安な高収益・成長企業はない。
• ROEの水準に応じて、資本コスト(期待リターン)が銘柄間で一定になるように、
株価(B/Pレシオ)が調整される。
Value
Value
PBR=1倍
Growth
Growth
 - 配当性向  1 - B/P  ROE
株式資本コスト= 1
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
13
Credit Pricing Corp.
日米で株式資本コストは(実質で)ほとんど同じ!?
2012年11月時点での推計例
日本
0.7%
-0.3%
1.0%
米国
1.6%
2.1%
-0.5%
安全資産利子率
①
②
③=①-②
長期国債利回り
インフレ率
実質金利
ファンダメンタル指標
④
⑤
ROE
配当性向(推定値)
7%
0.30
14%
0.60
株価指標
⑥
⑦=1/⑥
B/Pレシオ
株価純資産倍率
0.98
1.02
0.42
2.38
米国は過去20年の
平均配当性向は
35%。自社株取得
( 推 計 ) を 加算 し て
60~70%と推定
(注)数値は2012年11月末時点。ただし配当性向は長期的な推計値
名目ベース推計値
⑧
⑨=⑧-①
株式資本コスト
株式リスク・プレミアム
7.0%
6.3%
9.1%
7.5%
実質ベース推計値
⑩=⑧-②
⑪=⑩-③
株式資本コスト
株式リスク・プレミアム
7.3%
6.3%
7.0%
7.5%
株式資本コスト=株式の期待リターン
 - 配当性向  1 - B/P  ROE
推計式はサプライサイド型(T-Model)から次式で導出 株式資本コスト= 1
詳細は 山口勝業『日本経済のリスク・プレミアム』東洋経済新報社、2007. p.163-173
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
14
Credit Pricing Corp.
日米で負債コストも(実質で)ほとんど同じ?
インフレ率較差を調整すると、ほとんど同じか日本のほうが低い!?
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
15
Credit Pricing Corp.
資本と負債の構成はほぼ同じ!
D/Eレシオの比較
日本 0.54
米国 0.56
≅
日本(ラッセル野村大型指数の構成銘柄)
米国(S&P500の構成銘柄)
80%
80%
<中央値>
D/Eレシオ 0.54倍
実績ROE
7%
→ 高収益
60%
50%
40%
30%
20%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
低収益 ←
10%
低収益 ←
<中央値>
D/Eレシオ 0.56倍
実績ROE
14%
70%
実績ROE
実績ROE
→ 高収益
70%
0%
‐10%
0%
‐10%
‐20%
‐20%
0
低レバレッジ
0.5
←
1
D/Eレシオ
1.5
→
高レバレッジ
2
0
低レバレッジ
0.5
←
1
D/Eレシオ
<出所>野村證券HP、Bloombergを元に作成。2012年11月末時点。
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
1.5
→
高レバレッジ
2
Credit Pricing Corp.
まとめ
1) 企業価値評価はDCF法が世界共通のスタンダード
2) 2つのアプローチ
• 残余利益モデル
• B/Sアプローチ
株式資本コストで残余利益を割引
税引後営業利益(NOPAT)をWACCで割引
3) ROEとB/Pのトレードオフの背後にある株式資本コスト
•
•
ROEが上昇するとB/Pレシオ(株価)は低下(上昇)する
ただし(他の条件が一定ならば)株式資本コストは変わらない
4) 日本と米国の資本コストは見かけほど違わない!?
•
•
•
負債資本コスト・・・インフレ率、金利水準の違い
株式資本コスト・・・ROEの水準を反映したP/B
D/Eレシオ ・・・ 分布範囲は広いが中央値はほぼ同じ
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
17
Credit Pricing Corp.
<注意事項>
 当資料は情報提供を目的として、イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社および株
式会社クレジット・プライシング・コーポレーションが作成したものであり、いかなる投資の
推奨・勧誘を目的としたものではありません。
 当資料は、各種の信頼できる情報に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を
保証するものではありません。
 当資料はイボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社および株式会社クレジット・プライ
シング・コーポレーションの著作物です。イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社と
株式会社クレジット・プライシング・コーポレーションの承諾なしの利用、複製等は損害賠
償、著作権法の罰則の対象となります。
©2013 Credit Pricing Corporation & Ibbotson Associates Japan
18