2 県公立高校の合格者は このように決まる

2
県公立高校の合格者は
このように決まる
(1)選抜の仕組み
◆選抜の資料
選抜の資料は主に下記の3つがあり、全高校で使用する共通のものと高校ごとに決めるものとがあ
ります。
①学力検査
( 国語、数学、社会、理科、英語の5教科 ) →すべての高校で資料とする。
②調査書
( 学習の記録の評定、特別活動の記録、
その他の項目 )
→すべての高校で資料とする。
③その他の資料
( 面接、実技検査等 ) →高校ごとに設定する。約半数の高校が実施する。
①学力検査は5教科合計500点満点
5教科で実施、各教科100点満点、5教科合計500点満点(一部の学科では傾斜配点あり)で行
われます。
平成23年までは、前期5教科、後期3教科の学力検査を実施していましたが、平成24年度か
らは学力検査が一本化され、5教科で実施されます。また、各教科100点満点という配点は、一
部の学科における傾斜配点を除いては各高校に裁量権はなく、全高校で同じ扱いとなります。
②調査書は5項目に分けて点数化
調査書の様式はA4サイズの用紙1枚にまとめられています(P11サンプル参照)。この調査
書は、受験生および保護者に事前に開示されますので、自分の調査書の内容を確認することが
できます。
内容は5項目に分けて記載されています。各高校では提出された調査書の各項目を点数化
し、選抜資料として使用します。各項目をどのように点数化し、どのように選抜に使用するかは
高校ごとに決められます。
(1)各教科の学習の記録(調査書①の項目)
各学年、各教科が5段階で評価されたもので、選抜においては各学年の合計値(45点満点×
3学年)が用いられます。しかし、各学年の評定は一律に扱われるのではなく、どの学年をどの
程度重視するかを高校ごとに決めて良いことになっています。例えば、13ページのサンプル校
埼玉県公立高校受験必勝マニュアル 2016
の場合は、中1、中2、中3の評価を1:1:2で扱う設定になっています。(P13選抜基準の例参
照)
この場合、中1と中2の評価はそれぞれ45点満点×1、中3の評価は2倍して90点満点とし、
「45+45+45×2=180点」。これがこの項目の満点となります。
(2)特別活動の記録(調査書③)
ここに記載された内容を、高校ごとに定めた内容で点数化します。点数化される(評価対象と
なる)記録内容は、各高校が発表する「選抜の基準」に明記されます。
ただし、この項目の満点は明記されているものの、それぞれの細目を何点として扱うのかは
公開されません。つまり、受験生本人は、自分がこの項目で何点として扱われるのかはわからな
いということになります。
(3)その他の項目(②総合的な学習の時間の記録、④出欠の記録、⑤その他の欄)
残りの3つの項目に記載されている事柄を点数化します。しかしながら、特別活動の記録同
様、それぞれの細目を何点として点数化するのかは公開されません。
③その他の資料
文字通り、学力検査、調査書以外の評価項目ですが、
「その他の資料」を選抜に用いない高校、
学科も多数あります。その他の資料を用いる高校では、大部分が面接を採用しています。
また、専門学科では実技検査を行うケースも多くあり、その実技検査の得点が、選抜において
大きな割合を占める場合もあります。
埼玉県公立高校受験必勝マニュアル 2016
(様式1)
平成27年度入学志願者調査書
(様式2)
志願先
成績及び諸活動等の記録通知書
第3学年
組
番
生年月日 平成
性別
ふ
り
が
高等学校
受検番号
な
生 徒 氏 名
年
月
日生 卒業年月 平成
年
月
卒業
教
卒業見込
2年
総合的な学習
の時間の記録
3年
学級活動
3
1
特
各
別
教
1年
2年
3年
生徒会活動
活
科
動
の
③
学校行事
等
学
の
習
科 国 語 社 会 数 学 理 科 音 楽 美 術
1年
②
2
評 定
記
録
記
録
保 健 体 育 技 術 ・家 庭外 国 語
の
学年
4
合
計
①
その他
出欠の
記録
欠席日数
欠 席 の 主 な 理 由
④
1
2
3
5 そ の他
備
考
⑤
平成27年度埼玉県公立高等学校入学者選抜のために作成した調査書の内容は、上記のとおり相違ありません。
平成
年 月 日
学 校 名
印
校長氏名
記入責任者
氏 名
印
* 様式1として利用するときは、「成績及び諸活動等の記録通知書」及び下段の「平成27年度‥調査書の内容は、」を
埼玉県公立高校受験必勝マニュアル 2016
で消すこと。また、様式2として利用するときは、「平成27年度入学志願者調査書」を で消すこと。
◆ 合格者の決定方法(選抜の要領)
県公立高校の選抜は、1回の入試の中で、第1次選抜と第2次選抜(高校によっては第3次選抜
まで)に分けて合格者が決められます。ただし、合格発表の際、第1次選抜の合格者と第2次選抜の
合格者が区別されて発表されるわけではありません。第1次、第2次とはあくまでも高校内で合格
者を段階的に決めるためのものです。
県公立高校の選抜はどの段階の選抜でも、数値化された3つの資料(学力検査、調査書、その他の
資料)の合計点数で行われます。しかし、この3つの点数はそのまま使われるわけではありません。
右ページのサンプルを例にすれば、学力検査は500点、調査書は240点、その他は面接の20点なの
ですが、それを単純に合計した760点が満点になるわけではありません。
学力検査の満点と、調査書の満点との割合は、それぞれの選抜段階(第1次選抜・第2次選抜)に
おいて規定されており、各高校ではこの規定に収まるように調査書の点数を換算します。それぞれ
の選抜段階によって調査書点が異なるため、満点も異なるということになります。
サンプルの第1次選抜では、調査書点の240点満点を1.4倍し、336点満点としています。各受験
生の調査書点を1.4倍した数値をこの選抜に用いるということです。これにより、学力検査点と調
査書点の比率をおよそ6:4になるように調整したことになります。
この比率には範囲が決められており、その範囲内で各高校が自由に設定します。
規定されている範囲は、学力検査の点数を①、調査書の点数を②とすると、以下のようになりま
す。
■第1次選抜
①:②の比が、4:6から6:4の範囲にあるようにする。
6
4
(①÷②の値が、 から (0.6666・・・ から 1.5 ) の範囲 )
4
6
人数は、合格予定数の60%~80%の範囲で設定
■第2次選抜
①÷②の値が、3:7から7:3の範囲にあるようにする。
3
7
(①÷②の値が、 から (0.428・・
から 2.33・・ ) の範囲 )
7
3
人数は、残りの定員の60%~100%の範囲 ( 第3次選抜を行わない場合は 100%)
※第2次選抜の方が自由度が高いことになります。
埼玉県公立高校受験必勝マニュアル 2016
■選抜基準の例(サンプル)
全日制
○○高等学校(普通科)
選抜の (1)学力検査を重視した選抜を行う。
基本方針 (2)調査書の「特別活動等の記録」、特に部活動・生徒会活動に積極的に取り組んだ者の選抜に配慮する。
(3)面接を実施し、受検生の目的意識・意欲等を評価する。
○ 学力検査の扱い ・・・・・[500点]
選抜資料
全校
共通
○ 調査書の扱い 学習の記録の得点(1:1:2)・・・(180点)
・・・( 40点) [240点] A
特別活動等の記録の得点
その他の項目の得点 ・・・( 20点)
○ その他の資料
面接
高校により異なる
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・[ 20点]
●第1次選抜(募集人員のうち、60%を入学許可候補者とする)
(各資料の配点)
一般募集
①学力検査
②調査書
③その他
336点
20点
500点
④合 計
②=A×1.4
856点 (①/②=1.49)
学検:調査書≒6:4
(学力検査重視)
●第2次選抜(募集人員のうち、30%を入学許可候補者とする)
(各資料の配点)
⑤学力検査
500点
⑥調査書
⑦その他
216点
20点
⑧合 計
⑥=A×0.9
学検:調査書≒7:3
736点 (⑤/⑥=2.31)
(学力検査重視)
●第3次選抜(募集人員のうち、10%を入学許可候補者とする)
第2次選抜における合計得点の一定の順位の者を対象に、特別活動等の記録の得点で選抜する。
【特別活動等の記録の得点(40点)】
○学級活動・生徒会活動・学校行事について
以下の区分により得点を加算する
区分A 学級活動における顕著な取り組み
それぞれが何点かは公開されない
区分B 生徒会活動における顕著な取り組み
区分C 学校行事における顕著な取り組み
調査書の
扱いの
詳細
○部活動等
以下により得点を加算する
・実績(大会・コンクールへの出場・出展)
・部長・副部長などの役員
・選抜選手等
○調査書の「5 その他」欄に記載された活動のうち、運動部・文化部に準じて評価できるもの
以下の活動で特に顕著な実績がある場合に得点を与える
・スポーツ活動や文化活動、ボランティア活動等
【その他の項目の得点(20点)】
○総合的な学習の時間の記録
特に顕著な活動がある場合に得点を与える
○資格取得
英検準2級以上の資格を取得している場合、得点を与える
その他
なし
埼玉県公立高校受験必勝マニュアル 2016
学力検査の得点と学習点の関係
県公立高校の入学許可候補者選抜(合否判定)は、原則として①学力検査、②調査書の学習の記録
の評定、③調査書の特別活動の記録、④調査書のその他の記録、⑤その他(面接等学校による)の5
項目の合計点で行われることは前記にて確認しました。
このうち、
「調査書の学習の記録の評定(内申点と呼ぶこともありますがここでは学習点と呼ぶ
ことにします。)」の得点と、
「学力検査」の得点の関係は計算することができます。もし、
『学習点が
足りないなぁ~』という場合は、学力検査で具体的に何点分上乗せした点数が必要かを計算し、確
認することができます。
前のサンプルにもとづいて具体的に見てみます。
○○高校(普通科)
1次 2次
調 査 書
学力検査
学習点
500 500
180
特活
40
その他
20
その他資料
×1.4
×0.9
240 336 216
面接
合 計
換算点 換算点
20 20
856 736
×1.4
×0.9
A 君 4.5 平均 40+40+41×2=162 227 146
B 君 4.0 平均 36+36+36×2=144 202 130
(注意点)
内申点と学力検査の関係は学校により異なる
25 点差 16 点差
調査書点の240点は、第1次、第2次の各選抜に応じて定数倍され、その選抜での得点となりま
す。例えば、上記○○高校の第1次選抜では、調査書点の合計240点を1.4倍し、336点満点としま
す。(これにより、学力検査点:調査書点≒6:4になるように調整)
このとき、学習の記録点(学習点)の180点も1.4倍されますので、252点満点として扱われます。学
習点1点分が、1.4点として扱われます。つまり、学習点1.4点と学力検査1点が同じ重さというこ
とになります。
第2次選抜では調査書の240点を0.9倍して216点満点として扱うことにより、学力検査点:調
査書点≒7:3となるように調整されています。この場合、学習点1点分が、学力検査0.9点分に相
当します。
※調査書点を何倍するかは、埼玉県がホームページで公開している、各校の「選抜基準(13ページ
サンプル参照)」より算出する必要があります。算出方法は、選抜基準のサンプル表を参考にしてく
ださい。
埼玉県公立高校受験必勝マニュアル 2016
具体例で確認
表中の、
「学習の記録の評定が4.5平均である受験生(上段)」と、
「内申が4.0平均である受験生(下
段)」の場合を比較してみましょう。A君の場合は、学習の記録点(学習点)は162点ですが、前記の第
1次選抜では1.4倍されますので227点として扱われ、第2次選抜では0.9倍した146点として扱
われます。
一方のB君は、学習の記録点144点を1.4倍した202点が第1次選抜、0.9倍した130点が第2次
選抜での点数となります。
A君とB君を比較すると、学習の記録点は、第1次選抜では25点差、第2次選抜では16点差とい
うことになります。もし、この○○高校において、必要な学習点が4.5平均とすれば、A君は学習点
では妥当な高校、B君は500点満点の学力検査で25点分(少なくとも16点分)を挽回する必要があ
るということになります。模試によって異なりますが、偏差値1の差は、500点満点でおよそ10点
程度に相当します。B君は、
「偏差値」という観点から考えれば2程度上の学力が必要となります。
このように、
『学習点が低いから…』と、ただ嘆くだけでなく、自分の学習点が合格者平均よりも
具体的に何点低いのかを確認し、それを挽回するために必要な学力検査の点数差を計算し、それが
偏差値にしていくつぐらいの差に相当するかを把握した上で、目標設定をしていくことが必要で
す。
埼玉県公立高校受験必勝マニュアル 2016
(2)「第2志望」を認める学校
専門学科及び普通科のコースについては少々複雑な仕組みを押さえておく必要があります。学
科間またはコース間で第2志望を認める学校の場合です。例えば大宮高校の場合、理数科を第1志
望として出願し、普通科を第2志望に指定することができます。今年、理数科に出願して受検した
115人のうち理数科で合格したのは41人でした。理数科の選抜に漏れた74人全員が普通科を第2
志望にしていたわけではありませんが、大部分は第2志望として普通科を希望していたはずです。
仮に、74人のうち70人が普通科を第2志望にしていた場合、この70人と、普通科に出願した441
人の合計511人が普通科の合格者を決める選抜のテーブルに乗ることになります。公表されてい
る大宮高校普通科の実質倍率は1.22倍(普通科での出願者441人、普通科での合格者361人で、
441÷361=1.22)となっています。しかし、ここでの合格者361人は、普通科出願者441人だけの
中から選ばれたのではなく、理数科の選抜から漏れた受験生が加えられた中から選ばれたのです。
つまり、先の仮定に基づくと、実際の普通科の倍率は、551÷361≒1.42倍、ということになりま
す。
もう少し正確にいうと、理数科から普通科の選抜に回るのは、普通科の第2次選抜の段階です。
普通科における選抜の様子を、段階を
追って確認してみましょう。
まず、合格予定者の6割(216人)を決
める第1次選抜では、普通科出願者の
441名のみから216人を選抜します。次
に、第1次選抜に漏れた普通科出願者
225人と、理数科の選抜に漏れた70人
の合計295人から144人を選抜します。
このように、第2志望を認める学校の場
合は、見かけの倍率ではなく、実質的な
ものを追う必要があります。
ちなみに、平成27年度の大宮高校普
通科合格者361名のうち、普通科出願者
は317人、理数科出願者の転科合格は
44人でした。
埼玉県公立高校受験必勝マニュアル 2016