フリーテストステロンと、(年齢階級別検討)

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原著日本性機能学会雑誌:19(1)43~50,2004
フリーテストステロンと、(年齢階級別検討)
昭和大学医学部衛生学教室
高橋英孝,中館俊夫
三井記念病院総合健診センター
山門実
昭和大学医学部泌尿器科学教室
吉田英機
要旨
わが国の健常男性を対象としてフリーテストステロンと勃起障害(ED)との関連を年齢階級別に調査した。
人間ドックを受診した30~69銭の男性811人を対象としてフリーテストステロンをRIA法にて測定した。
E、の評価はⅡEF5によって行った。加齢によりフリーテストステロンとIIEF5スコアは有意に低下したが,フ
リーテストステロンとIIEF5スコアとの間には開運が翌められなかった。したがって.フリーテストステロン
単独でEDの診断を行うことは不可能と考えられた。
Keywords:フリーテストステロン,勃起障害,診断.年齢階級別検討
対象と方法
はじめに
男性更年期障害は加齢に伴う血中男`性ホルモンの
2003年1~3月に三井記念病院総合健診センター
低下に基づく生化学的症候群')と定義され,partial
を受診した30~69歳の男性811人(48.6±9.5歳)
androgendenciencymtheagingmale(EADAnDと
を対象とした。早朝空腹時の採血でFree-Tを
呼ばれている2)。EADAM症状は,①身体症状,②
radioimmunoassayにて測定した。EDの評価は国
精神・心理症状,③性機能症状の3つに大別されて
際勃起機能スコアの簡易版(IIEF5)5)を使用し,
いる3)が,我々が人間ドック受診男性を対象にテス
21点以下をEDと判定した。
トステロンとPADAM症状の関連について検討した
はじめに年齢階級別のFree-Tの平均値
結果4),フリーテストステロンと身体症状および精
(Mean)と標準偏差(SD)を求めてMean±
神・心理症状との間に関連は認められず,性機能症
1.96sDの範囲(=中央95%が含まれる範囲)を
状との間には統計学的な有意差を認めたものの相関
年齢階級別の基準範囲に設定した。次に年齢と
係数は01程度とかなり低いものであった。
Free-T,年齢とIIEF5,Free-TとIIEF5との
本研究では,テストステロンとEADAM症状のう
関係を散布図と箱ひげ図で示し,Pearsonの相関
ちの性機能症状に注目して,人間ドック受診者にお
係数を算出した。また,年齢階級別にIIEF5のス
ける血中丘eetestosterone(以下,Free-Tと略す)
コアの10%点(この点数以下の人数が10%となる
と勃起障害(erectiledysfUnction,以下EDと略す)
点数)を算出し,基準範囲との比較を行った。最
との関連を年齢階級別に検討した。
後に高血圧および糖尿病で治療中の者と非治療中
の者との間でFree-TとIIEF5スコアの分布を比
昭和大学医学部衛生学教室
〒142-8555束京都品川区旗の台1-5-8
較した。なお,統計量は平均値±標準偏差で示
した。
日本性機能学会雑誌第19巻第1号2004年6月
44
表3にFree-T,IIEF5スコアのパーセンタイ
結果
ルを年齢階級別に示した。
表1に対象者の現病歴を示した。治療中の疾患
表4にIIEF5スコアの度数分布を年齢階級別に
がない健常者が711人(87.7%),高血圧,糖尿病,
示した。ED(21点以下)の割合は,30~39歳が
狭心症,心筋梗塞,高脂血症および前立腺肥大症
59.5%(91/153),40~49歳が682%(191/280),
で治療中または前立腺癌の既往のある者が100人
50~59歳が77.5%(196/253),60~69歳が
(12.3%,重複例を含む)であった。
92.8%(116/125),全体では73.2%(594/811)
表2にFree-T,IIEF5スコアの基本統計堂を
であった。また,全EDに占めるSevereEDまた
年齢階級別に示した。Mean±1.96sDの範囲を年
はModerateED(11点以下)の割合は,30~39
齢階級別の基準範囲に設定した。なお,Free-T
歳が4.4%,40~49歳が8.9%,50~59歳が18.4%,
値がO6pg/m1未満の2人については0.Opg/ml
60~69歳が310%,全体では15.7%であった。
表5に健常者711人におけるIIEF5スコアの度
として計算した。
表1現病歴
30-39歳
40-49歳
50-59歳
60-69歳
合計
疾患なし
153
265
208
85
711
疾患あり
0
15
45
40
100
6912551
1
253
71
280
410551
153
1
合計
3
前立腺癌
4102700
高脂Ifh序
前立腺肥大
31
狭心症
心筋梗塞
1
糖尿病
1400300
0000000
高血圧
125
811
※疾患ありには重複例を含む
表2Free-TとlIEF5スコアの年齢階級別基本統計量
Free-T(pg/ml)
75
1
77
12
40
1
85
61
46
1
78
44
6
27
80
65
12
96
33
16
07
1
92
99
02
31
23
1
2 46
02
26 68
20
01
1
8
28
62
01
1
53
47
82
85
55
92
1
03
MeEm-1.96SD
Mean+1.96s,
94
46
1
SD
46
12
ワロR)
。】《U
M⑨2,
SD
皿已星n
Mean-l・gGSD
Meanロ、
Mean+1.9GSD
60
36
03
1
Mean-I9
Mean-1.96SD
Mean-1b
Mean÷1.96s,
Mean
合計
(、=811)
58
Mean
Men、
S
SD
53
1
13
60-69歳
(、=125)
95
(、=253)
DD
鮨鴎
’十
99
nn
LL
ee
MeBl96S
aa
MM
50-59歳
76
SD
Mean+l9a
20.48
3.12
02
1
Mean
40-49歳
(、=280)
IIEF5(点)
叫鰹
n-196S
Mean-1.96SD
ean+1.96
Mean+1.96s,
58
30-39歳
(、=153)
12.19
3.19
Mpnn
M⑨盆、
S
SD
日本性機能学会雑誌第19巻第1号2004年6月
45
表3F「Ce-TとIlEF5スコアの年齢階級別バーセンタイル
nEF5(点)
Frce-T(pgノml)
合計
30-39歳
3039歳40-49歳50-59歳60-69願合肝30-39歳40-49歳50-59歳60-69歳合計
40-49歳 50-59歳 60-69歳
30-39歳
40-49歳 50-59歳 60-69歳
合計
7.7
7.3
17.0
9.0
6.6
14.0
10.点8377706673170140go50106
8.3
7.0
5.0
10.6
10%点
25口
25%点
7 9
8 9
19 0
17 5
14 8
989581798919017514898160
9
8
9 5
8.1
9.8
16 0
50□
50%点
9 1
10 6
21 0
12
3
11 6
10.2
20 0
19 0
12311610291106210200190160200
16.0
20 0
75pp
75%点
12 9
23 0
22 0
l45139121107129230220210200220
10 7
21 0
14
5
13 9
12.1
20.0
22 0
gp
90%点
12 3
15 1
24 0
l61157I3Bl2Bl5124023,230210230
23 0
16
1
15 7
13.8
23 0
21.0
23 0
表4IIEF5スコアの年齢階級別度数分布
判定
点数
30-39歳
(n=153)
40-49歳
(、=280)
50-59歳
(n=253)
60-69歳
(、=125)
合計
(n=811)
22点以上
NOED
62
40.5%
89
31.8%
57
22.5%
9
7.2船
217
26.8%
17-21点
MildED
82
53.6%
136
48.6%
102
40.3%
52
41.6%
372
45.9%
12-16点
Mild・Mode型teED
5
38
13.6%
58
22.9%
22.4%
129
15.9%
8-11点
ModerateED
5
1.8%
15
5.9%
13
10.4%
36
4.496
7点以下
Seve唾ED
12
4.3%
21
8.3%
23
18.496
7.0%
21点以下
全回り(再掲)
69.5%
191
68.2%
196
77.5%
116
92.8%
594
73.2%
4
4.4%
17
8.9%
36
18.4%
36
31.0%
15.7%
60-田歳
(、=85)
合計
(、=711)
11点以下
3.3%
3
2.0%
1
0.7%
ModIeuP2te~SevcreED
(%は全EDに対する割合)
91
28
57
93
表5健常者におけるIIEF5スコアの年齢階級別度数分布
判定
点数
30-39歳
(、=153)
40-49歳
(、=265)
50-59歳
(、=208)
22点以上
NOED
G2
40.5%
86
錘.5%
26.0%
17-21点
MiIdED
82
53.6%
125
47.2%
39.4船
12-16点
Mild・Moder2teED
5
37
14.0%
21.6%
8-11点
ModerateED
7点以下
SevereED
21点以下
全ED(再掲)
11点以下
Modemte~SeveTeED
(%は全EDに対する割合)
3.3%
64
82
45
6
7.1%
208
29.3%
41
48.2%
330
46.4%
20
23.5%
15.0%
107
3
5
11
5
24
2.0%
1.9%
5.3%
5.9%
3.4%
1
12
0.7%
4.5%
16
707%
91
179
67.5%
154
79
503
74.0%
92.9%
70.7%
66
13.1%
59.5%
13
15.3%
4
17
27
18
4.4%
9.5%
17.5%
22.8%
42
5.9%
日本性機能学会雑誌第19巻第1号2004年6月
46
数分布を年齢階級別に示した。ED(21点以下)
点(12.9pg/ml)を示した。年齢とFree-Tの間
の割合は,30~39歳が59.5%(91/153140~
には有意な負の相関を認め(r=-0.307,p<
49歳が67.5%(179/265),50~59歳が74.0%
0.001),各パーセント点の値も年齢が高くなるに
(154/208),60~69歳が92.9%(79/85),全
つれて低下していた。中央50%の範囲は年齢が高
体では70.7%(503/711)であった。また,全
くなるにつれて狭くなっていた。
EDに占めるSevereEDまたはModerateED(11
図2に年齢とIIEF5スコアの関係を散布図と箱
点以下)の割合は,30~39歳が4.4%,40~49歳
ひげ図で示した。箱ひげ図に示した点線は全年齢
が9.5%,50~59歳が17.5%,60~69歳が22.8%,
におけるIIEF5スコアの25%点(16点)と75%
全体では13.1%であった。
点(22点)を示した。年齢とIIEF5スーアの間に
図1に年齢とFree-Tの関係を散布図と箱ひげ
は有意な負の相関を認め(r=-0386,p<0.001),
図で示した。箱ひげ図は中央に50%点,箱の上下
各パーセント点の値も年齢が高くなるにつれて低
が25%点と75%点,エラーバーが10%点と90%
下していた。中央50%の範囲は年齢が高くなるに
点を示している。箱ひげ図に示した点線は全年齢
つれて広くなっていた。
におけるFree-Tの25%点(8.9pg/ml)と75%
0505050
32211
30
図3にFree-TとIIEF5スコアの関係を散布図
25
pp
99
卯卯
2a
0505
211
(一E国。)』l②の』」
0
。
8
。
30354045505560657030-394い495ひ596ひ69
年齢(趣)年齢(麓)
図1年齢とRee-Tとの関係
左に散布図,右に箱ひげ図を示す。右図の点線は全年齢におけるFree-Tの75%点(上)と25%点(下)である。
「=-0.386
〃〈0.001
25
25
20
20
22点
11
0
1
50
⑤」]一一
5
1
16点
50
5
303540455055606570
年齢(鱗)
0
30-3940-495レ59
6仏69
年齢(逮)
図2年齢とllEF5スコアとの関係
左に散布図,右に箱ひげ図を示す。右図の点線は全年齢におけるIIEF5スコアの75%点(上)と25%点(下)である。
日本性機能学会雑詫第19巻第1号2004年6月
47
と箱ひげ図で示した。Free-TとIIEF5の間には
0.493)。IIEF5スコアが下位10%の分布は全て
有意ではあるが非常に弱い正の相関が認められた
Free-Tの基準範囲内にあった。図6は50~59
(1-0.086,p<0.05)。箱ひげ図で見ると,FrCe-T
歳のグラフで,Free-TとIIEF5スコアとの間に
とIIEF5スコアとの間に明らかな量一反応関係は
は相関関係は認められなかった(z--0.005,p=
認められない。
0.933)。IIEF5スコアが下位10%の分布はほとん
図4~図7にFree-TとIIEF5スコアの散布図
どがFree-Tの基準範囲内にあった。図7は60
を年齢階級別に示した。図4は30~39歳のグラフ
~69歳のグラフで,Free-TとIIEF5スコアとの
で,Free-TとIIEF5スコアとの間には相関関係
間には相関関係は認められなかった(1--0.028,
は認められなかった(z--0122,p=0.133)。
p=0.757)。IIEF5スコアが下位10%の分布は全
IIEF5スコアが下位10%の分布はほとんどが
てFree-Tの基準範囲内にあった。
Free-Tの基準範囲内にあった。図5は40~49
図8に高血圧および糖尿病治療の有無別に見た
歳のグラフで,Free-TとIIEF5スコアとの間に
Free-TとIIEF5スコアとの関連を年齢階級別に
は相関関係は認められなかった(z--0.041,p=
示した。高血圧治療中の者は61人,糖尿病治療中
25
25
20
20
ml5
Ih
lO
10
5
5
0
0
05101520
Free-T(pgAnI)
<55-<1010-<1515-<2025-
2530
Free-T(pg/inI)
図3F尼e-TとIIEF5との関係(30-69歳,811人)
左に散布図,右に箱ひげ図を示す。
除/-l96SD
隙/~1.96s、
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20
25
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051015202530
FreB-Tbg/ml)
図4Free-TとIIEF5との関係(30-39歳,153人)
点線はIIEF5スコアの10%点,2本の実線で挟まれ
た範囲はF唾e-Tの平均値±1.96標地偏差の範囲を
示す(図4~7に共通〉。
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051015202530
Free-T(pg/1,1)
図5Free-TとlIEF5との関係(40-49歳,280人)
日本性機能学会雑誌第19巻第1号2004年6月
48
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051015202530
Free-T(pg/mI)
図7Free-TとlIEF5との関係(60-69歳,125人)
50
0
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◎
C
O
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051015202530
Fre鈩T(pgハロI)
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ロ高血圧
因互板
×鮪尿病
50
’'十/-1.96s0
-
〔
。なし
11
図6Free-TとIIEF5との関係(50-59歳,253人)
50
Free-T(pgAnI)
25
。なし
ロ高血圧
因互抜
×紬尿痢
50
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1
5
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0
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)◎ロ丁甘TYmmo
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051015202530
FrcB-T(pg/DDI)
図8高血圧,糖尿病治療の有無別に見た
F尼e-TとlIEF5との関係(40-69歳)
点線はnEF5スコアの10%点を示す
(40-49歳:14点,50-59歳:9点,60-69歳:5点)。
の者は15人,両者共に治療中の者は15人,両者
共に治療していない者は720人であった。なお,
考察
30~39歳では高血圧または糖尿病を治療中の者
今回の対象者は人間ドック受診者であり,その
はいなかった。40~49歳では,IIEF5スコアが下位
大半は職域での健康診断として受診している。対
10%の29人は全て非治療者であった。50~59歳
象者811人におけるIIEF5スコア21点以下のⅡD
では,IIEF5スコアが下位10%の26人中高血圧
の割合は73.2%,全EDに占めるSevereまたは
や糖尿病を治療している者が6人いたが,Free-
ModerateEDの割合は15.7%であった。わが国の
Tがl0pg/m1未満の者の割合(4/6=67%)が非
医療機関を受診した男性患者5684人を対象とし
治療者(9/20=45%)よりも多かった。60~69
てIIEF5によってEDの評価を行った疫学調査6)
歳では,IIEF5スコアが下位10%の17人中高血圧
の結果ではEDの割合は81.1%,全EDに占める
や糖尿病を治療している者が6人いたが,Free-T
SevereまたはModerateEDの割合は32.1%であっ
が10pg/m1未満の者の割合(6/6=100%)が非
た。本研究でEDの割合が約8ポイント低く,全
治療者(6/11=55%)よりも多かった。
EDに占めるSevereまたはModerateEDの割合
日本性機能学会雑誌第19巻第1号2004年6月
49
が半分とそれぞれ低かったが,本研究の対象者が
ぎるという指摘もあって,Hee-Tの基準範囲につい
医療機関でなく人間ドック受診者であることを考
ては見直しが行われているところである9)。しかし,
えると妥当な結果であると思われる。このことは,
FrCe-Tの基準範囲が設定されたとしても,Free-T
本研究の対象者から疾病治療中の者を除外した健
単独でEDをスクリーニングすることは不可能であり,
常者では,EDの割合は70.7%,全EDに占める
あくまでひとつの指標として使用すべきである。
SevereまたはModerateEDの割合は13.1%とさ
文献
らに低下することからも推測される。
本研究の結果では,加齢によりFree-Tと
1)Morales,A・etaL:Standards,guidelines
IIEF5スコアは低下するもののFree-TとIIEF5
andrecommendationsoftheinternational
スコアとの間に関連は認められなかった。加齢に
societyfbrthestudyoftheagmgmale
よりFree-Tのばらつきは小さくなるのに対して
(ISSAM).Investigation,treatmentand
IIEF5スコアのばらつきは大きくなったことから
monitoringoflate-onsethypogonadismin
も,加齢によるFree-Tの低下以外の要因がED
males・OfficialrecommendationsoflSSAM
の原因として影響していると推測される。
AgmgMale’5:74-86,2002.
高血圧や糖尿病によってEDが引き起こされる
2)Morales,A・etaL:Andropause:amisnomer
ことが知られている7)が,40~49歳ではIIEF5
fbratrueclmicalentitybJUrol,163:705.
スコアが下位10%となる者に高血圧または糖尿病
712,2000.
治療者は含まれていなかった。50~69歳ではIIEF5
3)Comhaire,FH.:Andropause:hormone
スコアが下位10%となる者に高血圧や糖尿病を治
replacementtherapyintheagingmale,Eur
療している者が含まれていたものの,非治療者と比
較してFrCe-Tが低い方に分布している者が多かっ
た。これらのことから,高血圧や糖尿病はFree-T
が低値でないEDの原因であるとは考えにくい。
Urol,38:655-662,2000.
4)高橋英孝,他:テストステロンと男性更年期
障害との関連.(日本性機能学会雑誌印刷中)
5)Rosen,RC.,etal.:Developmentand
うつとEDとの間に関連があることも知られて
evaluationofanabridged,5-itemversionof
いる8)。結果には示していないが,今回の対象者
theinternationalindexoferectilefUnction
においてうつ症状の程度とIIEF5スコアとの間に
UlEF5]asadiagnostictoolfbrerectile
関連は見られなかった。しかし,今回の対象者は
fimction・IntJImpotRes,11:319-326,
人間ドック受診者であり,うつ症状を訴える者も
1999.
多くなかったこととうつの評価を目的とした調査
6)篠山重威,他:男'性のための健康調査:全国
を実施していないため,うつがFree-T低値でな
の実地医家の外来患者6112例における勃起
いEDの原因であるかどうかは不明である。
不全の実態・JCardiol,42:57-65,2003.
散布図で明らかなようにIIEF5スコアが低い者
7)Feldman,H、A、etaL:Impotenceandits
はFree-Tが必ずしも低くなく,箱ひげ図に示され
medicalandpsychosocialcorrelates:
るように各パーセント点の値はFree-Tが低値と
resultSoftheMassachusettsMaleAging
なっても低下していない。また,IIEF5スコアが下
StudyGJUro1.,151:54-61,1994.
位10%となる者がFree-Tの基準範囲内に分布し
8)Kohout,RetaL:TWoshorteroftheCES-D
ていたことからもFree-Tの値によってEDをス
depressionsymptomsindex.JAgmgand
クリーニングすることは不可能であると思われた。
わが国で広く用いられているRIA法を用いたFree
-T測定法は信頼性にかけていることと基準値が高す
Health,5:172-193,1993.
9)松田公志,他:男性更年期障害の診断と治療.
泌尿器外科,16:831-837,2003.
50
日本性機能学会雑昧第19巻第1号2004年6月
Relationshipbetweenfreetestosterone
anderectiledysfmnction
DCpartmemofHygieneandPreventiveMedicine,
ShowaUniversitySchoolofMedicine
EikomdLKAHASHIandTbshioNAKADATE
CemerfbrMultiphasicHealthTbstingandServices,MitsuiMemorialHospital
MinomYAMAKADO
DepartmentofUrology,ShowaUniversitySchoolofMedicine
HidekiYOSHIDA
TYlisstudywasperfbnnedtoelucidatetherelationbetweenffeetestosterone
anderectiledysfimction(ED)inahealthscreening・Atotalof811menwho
underwemgeneralheahhscreemngtestsattheCenterfbrMultiphasicHealth
TestingandServiceswereincludedmthissmdy、Serumfi己etestosterone(Free-T)
welCmeasuredbyamAmethod、SymptomsofEDwereassessedbythe
IntemationallndexofErectileFunction,S-itemversion(IIEF5).Free-TandllEF5
scoredecreasedsi2mificantlywithagaTherelationbetweenFree-TandllEF5
scorewasnotsignificant、Inconclusion,weconsiderthatFree-Tisnotausefill
markerfbrdiagnosingwithED.
(麹i;:I鰯諾:]