技術解説 携帯電話向けRAMソリューション モバイルFCRAM ファミリの最新動向 R 携帯電話用途向けに開発したモバイルFCRAM R は,携帯電話の 高機能化に対応するため,高速ページモード搭載,電源電圧1.8V 化の製品を展開しています。本稿では,モバイルFCRAM R の RAMソリューションの最新動向について解説します。 また,世界に先駆け日本で先行サービスが開始された第3世 はじめに 代携帯電話規格WCDMAにおいては,よりいっそう高性能・ 大容量RAMが必須となっています。 近年,携帯電話は通話機能に加え,電子メールやインターネット 一方,欧州市場では,GSMやGPRS規格の携帯電話において, へのアクセス,音楽配信対応,デジタルカメラ内蔵などさまざまな機 PDCやcdmaに先行して1.8V電源の採用が本格化しており,低電 能が付加され,高機能化が進んでいます。これに伴い,携帯電 圧化へと移行し始めています。 話に搭載されるメモリにも,さらなる高性能化・大容量化が求めら 図1に携帯電話のメモリ容量の推移,図2にCPU動作周波数 とメモリスピード要求の推移を示します。 れています。 携帯電話向けRAMとして,当社は独自開発の高速・低消費 電力メモリFCRAM*1をコアとした16Mビット∼64Mビット モバイル メモリシステム構成 FCRAM *2を製品化しており,多くの第2世代・第2.5世代の携 帯電話に採用されています。モバイルFCRAMは,携帯電話用 図3に携帯電話におけるメモリシステム構成の推移を示します。 RAMの標準メモリインタフェースである非同期SRAM型インタフェー これまでの携帯電話は,ベースバンド部ですべての処理が行わ スを採用しているため,システム設計者は従来のシステム構成を変 れていました。基本的に,動作に必要とされるプログラムコード, 更することなく搭載できます。 文字キャラクタなどすべてのデータはフラッシュメモリに格納されてお モバイルFCRAMの発売以来,日本国内で普及している携帯電 り,SRAMはワークメモリ (CPUの作業領域) およびバックアップデー 話には,従来から採用されているNOR型フラッシュメモリと低消費 タの格納に使用されていました。しかし,高性能・多機能化に伴 電力型SRAMの2種類に加え,当社モバイルFCRAMをはじめと い必要とされるメモリ容量が急増した結果,今までSRAMのみでカ する大容量の擬似SRAMの搭載が一般的に普及しました。このよ バーされていたワークメモリに,当社の提案するモバイルFCRAM うなSRAM代替としてモバイルFCRAMを採用する動きは,海外 が採用されるようになりました。そして現在,SRAMはデータバック の携帯電話にも波及し始めており,海外携帯電話市場においても アップ用として,モバイルFCRAMはワーク用として使用することが 今後,本格的な市場拡大が見込まれています。 定着しています(図4)。 またごく最近では,ベースバンド部(データ通信プロトコルや電話と 市場動向 しての基本的な機能を処理する部分) と,アプリケーション部(ベー スバンド機能以外のJavaなどのアプリケーションを処理・実行する部 現在,日本市場で市販されている携帯電話は,PDC方式や 分) に分けて,それぞれにCPUを持たせる構成も採用されています。 cdmaOne方式などの第2.5世代と呼ばれるものです。第2.5世代で はWeb閲覧,デジタルカメラ内蔵,Javaアプリケーション対応などの 製品概要 機種が登場しており,サーバにアクセスしてプログラムをダウンロー 6 ドしたり,内蔵カメラで移した写真をメールに添付して送信すること 現在,当社では16Mビット/32Mビット/64Mビットの製品を量産中 ができます。その際大量のデータを処理するために,急速にシステ です。さらに,高機能化に対応するため,モバイルFCRAMとし ムの高性能化が進んでおり,搭載するメモリは大容量化・高性能 ては初めて32Mビットの製品に高速ページモード機能を追加し,サ 化が要求されています。 ンプル出荷を開始しています。 FIND Vol.21 No.1 2003 モバイルFCRAM R ファミリの最新動向 表1にモバイルFCRAMファミリの製品概要を示します。 これまでの携帯電話では,一般にベースバンドチップと呼ばれる チップセットがすべての処理を行っていました。しかし一部のハイエ 高速化と低電圧化 ンド機種では,ベースバンドチップに加えて,動画像データ処理な どのアプリケーションデータ処理専用チップを搭載しています。この 「MB82DPS02183B」 (32Mビット) は,モバイルFCRAMとしては ような高機能機種のアプリケーションデータ処理部の高性能要求に 初めて高速ページモード機能を搭載しており,従来に比べて高速 合わせ,本製品はデータ処理性能を最大限にサポートできるように にデータの読出しができます。高速ページモードとは,同一ページ 高速ページモードを実現しました。さらに,MB82DPS02183Bは 内への高速アクセス機能で,まとまった8ワードのデータを連続して 動作電源電圧1.8Vを実現しており,低電圧化トレンドに対応してい 読み出すことにより,システムの性能アップを実現します。 ます。 図5に高速ページモードの動作タイミングを示します。 図1 携帯電話メモリ容量の推移 (注)xxxMF = xxxMビット フラッシュメモリ(NOR) xxxMS = xxxMビット SRAM xxxMFC = xxxMビット FCRAM(モバイルFCRAM) カラー液晶 高機能化 インターネット対応 (ブラウザ) 48M - 96MF + 8M - 12MS 3G PDC 32MF + 8MS CDMA 32MF + 4MS GSM 16MF + 2MS 32M - 64MF + 8MS 100 万画素 CCD 動画再生 インターネット強化 + Java 対応 192M - 256MF + 128MFC + 8M - 16MS 128M - 192MF + 64M - 128MFC + 8MS 128M - 192MF + 32M - 64MFC + 8M - 16MS 96M - 128MF + 16M - 32MFC + 4M - 8MS 64M - 96MF + 16M - 32MFC + 8MS 192M - 512MF + 128M - 256MFC + 8M - 16MS 要求メモリ 容量の急激 な増大 160M - 352MF + 64M - 128MFC + 8M - 16MS 96M - 192MF + 64M - 96MFC + 8MS 64M - 160MF + 32M - 64MFC + 8MS 48M - 128MF + 16MFC or 8MS 48M - 160MF + 16M - 32MFC or 8MS 2002 2003 32MF + 4MS 16M - 32MF + 2MS 2000 1999 2001 (年) 図2 CPU動作周波数とメモリスピード要求の推移 要求メモリ スピードの 高速化 > 66 MHz 50 MHz 32 ビットバス品 20 M - 33 MHz 70 ns 以下や ページモード品 20 MHz PDC 10 M - 12 MHz J-CDMA 8 M - 10 MHz Vol.21 No.1 > 33 MHz 33 M - 50 MHz 3G FIND 同期型アクセス 2003 85 ns 品 12 MHz 8 MHz 100 ns 品で OK 1999 2000 2001 2002 2003 (年) 7 モバイルFCRAM R ファミリの最新動向 図3 メモリシステム構成の推移 MCP ベース バンド CPU MCP-1 ベース バンド CPU フラッシュ メモリ MCP-2 フラッシュ メモリ モバイル FCRAM フラッシュ メモリ SRAM SRAM 従来の構成 1 従来の構成 2 MCP-1 ベース バンド CPU フラッシュ メモリ データバスは変形 32 ビット アドレスバスは MCP-1 の ROM 領域の一部を共有 モバイル FCRAM SRAM 2CPU 構成 アプリ ケーション CPU MCP-2a フラッシュ メモリ モバイル FCRAM MCP-2b フラッシュ メモリ モバイル FCRAM データバス(上位 16 ビット) データバス(下位 16 ビット) 図4 メモリ用途のすみ分け 今後の展開 図6に当社の今後のモバイルFCRAMファミリの製品展開を示し フラッシュメモリ (NOR 型) ます。展開のキーポイントは次の5点です。 容量増加要求に 沿ってフラッシュ メモリの集積度も 向上。 ・128Mビットへの大容量化 ・ページモード/バーストモード搭載による高速化 プログラム・コード キャラクタデータ ・1.8Vへの低電圧化 フラッシュメモリ (NOR 型) プログラム・コード キャラクタデータ 容量の増加 ・消費電流の低減 モバイル FCRAM ・ウェーハ供給対応 当社は今後とも,市場要求・顧客要求に応えてより良いソリュー ションをご提案・ご提供してまいります。 SRAM ■ *1:FCRAM(Fast Cycle RAM)は富士通株式会社の登録商標です。 ワークメモリ (CPU 作業領域) ワークメモリ (CPU 作業領域) *2:モバイルFCRAM:FCRAMコアに非同期型SRAMインタフェースを搭載 データバックアップ した大容量・ローパワー擬似SRAM。 容量増加要求に SRAM の集積度向上が追いつ SRAM かない状況。 FCRAM の登場により, データバックアップ 使途別に SRAM との すみ分けが定着化。 従来構成 モバイル FCRAM を 採用した構成 表1 モバイルFCRAMファミリ製品概要 VCC アクセスタイム ページアク セスタイム パッケージ* ES MP MB82D01161 2.3∼3.5V 85/90ns ── FBGA48/MCP ── Now ×16 MB82D01171A 2.3∼3.5V 80/85ns ── FBGA48/MCP ── Now ×16 MB82D02172A 2.3∼3.1V 65ns ── MCP ── Now 32Mb #3 ×16 MB82DPS02183B 1.65∼1.95V 85ns 25ns FBGA48/MCP Now 1Q/ ’ 03 64Mb #1 ×16 MB82D04172 2.3∼3.1V 65ns ── MCP ── Now 容量/世代 構成 16Mb #1 ×16 16Mb #2 32Mb #2 品種名 *MCPは別型格。また,ウェーハ供給も可能 8 FIND Vol.21 No.1 2003 モバイルFCRAM R ファミリの最新動向 図5 高速ページモード動作タイミング CE1 tRC A3-A20 tRC tPRC tAA tPAA A0-A2 tPRC tPRC tPRC tPAA tPRC tPRC tPAA tPAA OE tPRC tPAA tPAA tPAA tOE WE UB/LB DQ Q tRC tPRC tAA Q Q Q :リードサイクルタイム :ページリードサイクルタイム :アドレスアクセスタイム tCE tOE tPAA Q Q Q Q : CE1 アクセスタイム : OE アクセスタイム :ページアドレスアクセスタイム ※タイミング概略を示した図であり,すべての規格を表記したものではありません。 図6 今後のモバイルFCRAMファミリの製品展開 128M ビット 第 1 世代 64M ビット 第 1 世代 32M ビット 第 1 世代 16M ビット 第 1 世代 2000 FIND Vol.21 No.1 2003 32M ビット 第 2 世代 16M ビット第 2 世代 85 ∼ 90 ns 2001 64M ビット 第 2 世代 32M ビット 第 3 世代 16M ビット 第 3 世代 60 ∼ 70 ns 2002 64M ビット 第 3 世代 32M ビット 第 4 世代 16M ビット 第 4 世代 ページモード バーストモード 2003 9
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