15MGUNG3

2015 年 9 月 15 日
Ch. 2. オークションの基礎
2.1. せり上げ入札、プロキシ、二位価格入札
まず、せり上げ入札、プロキシせりさげ入札、二位価格入札を分析しよう。いかに?
せり上げ入札を数理モデルにする(ゲーム理論)
数理モデルにおいて入札者はどのように行動するかを分析(均衡分析)
望ましい配分がなされるかどうかチェック
望ましさの基準:
パレート最適性(効率性)
売り手収入
その他: 公害などの社会的費用の考慮
オークションプラットホームビジネスの収入
......
せり上げ入札、プロキシせりさげ入札、二位価格入札が、すばらしいパフォーマンスをしめ
すことを知ろう!
1
財1単位(メロン1個)を
n  2 人の入札者のだれかに配分する問題を考える
・ メロンは非分割財
・ 入札者 i  {1,..., n} のメロンに対する評価を wi  [0, ) 円とする:
wi は「メロン1個に対して入札者 i が最大限払ってもいい金額」
・ メロンを獲得して pi 円支払う場合の入札者 i の利得(効用、私的便益、utility, payoff, private benefit)
を
wi  pi 円
とする。
2
より一般的な利得の表現は ui ( wi  pi )
ui : R  R は増加関数
準線形効用関数(Quasi-Linearity)
ミクロ経済学(神取ミクロ 3.1 節)
準線形効用関数(Quasi-Linearity)とは?
所得効果ゼロ: 財評価は支払金額や所得に関係なく決まっている
「部分均衡分析」には必須の仮定
ついでに「リスク態度」(神取ミクロ 6.6 節)
リスク回避的(risk averse)
リスク中立的(risk neutral)
リスク愛好的(risk loving)
ui () が(下から)凹関数
ui () が線形関数
ui () が(下から)凸関数
これからの議論はどれほどリスク態度に影響を受けるか?各自考えよ。
3
各入札者および売り手の利得はどのように与えられるか?
メロンを獲得して pi 円支払う場合の入札者 i の利得は
wi  pi
メロンを獲得せず pˆ i 円支払う場合の入札者 i の利得は
 pˆ i
(標準的なオークションの場合は非落札者には金銭の支払いは要求されないので
 pˆ i  0
とする)
売り手はメロンに対して全く評価していない(いらない、食べたくない)とする。
落札者を入札者 i とした場合、売り手の収入(利得、Revenue)は
pi
4
入札者 i* が落札する場合の総余剰(Total Surplus、社会的便益)は?
n
[売り手の収入] +

[入札者 i の利得]
i1
=
[売り手の収入] + [落札者の利得]
=
[落札者の財評価]
=
wi*
∴
1番高い評価をしている入札者にメロンをあげれば総余剰は最大化される
wi*  wi for all i  {1,..., n}
*
をみたす入札者 i に落札させればいい。
最大化総余剰 = max wi  wi*
i{1,...,n}
5
総余剰最大化 ⇒ パレート最適配分
金銭のやり取りができる場合
1 番高い評価でない入札者 j にメロンが配分されるのはパレート最適でない
wi  w j として
入札者 i が入札者 j に対して
「あなたに x 円あげるからメロンを私にちょうだい!」とたのむ
w j  x  wi をみたすように金額 x を設定すれば
入札者 i と入札者 j はともに Happier:パレート改善!
質問:金銭のやり取りが出来ない場合のパレート最適配分は?
答え:売り手よりも評価しているどの入札者が獲得してもパレート最適
Why?
6
どうすれば(金銭のやりとりを認めた場合の)
パレート最適配分を達成できるのか?
各入札者の評価 wi , i  {1,..., n} , を、配分をきめる「政策当局(売り手)」が
あらかじめ知っていればいい。
しかし現実的には、各入札者の評価 wi はご本人しか知らない
(情報の非対称性、私的情報、不完備情報)
⇒ならばご本人に聞くしかない!
政策当局
「私は、売り手からお預かりしたメロンを、1番ほしがっている方にお売りしたい。
あなたの評価をお知らせください」
入札者1
「私にはそのメロンは 1 万円の価値があります。
」
入札者2
「私には 10 万円の価値があります。しかし残念ながら 1000 円しかもっていません。」
政策当局
「わかりました。信じましょう。入札者2に 1000 円でお譲りします。」
(これではとてもとてもパレート最適の達成は難しい....と私は思いますが、みなさんいかが?)
7
インセンティブ
入札者が正直に私的情報(のうち必要な内容)を表明するインセンティブを与えるような
オークション・ルール(メカニズム、分権的メカニズム)デザインが必要だ!
どんなルールを考えればいいか?
せり上げ入札(プロキシせり上げ入札、二位価格入札)を考えてみよう!
8
仮に
各入札者 i  {1,..., n} が
自身の評価価値 wi 円までせり上げに応じるとしよう。
ならば、1番高い評価の入札者が最後までせりに残る
1番高い評価価値の入札者が落札し
2番目に高い評価価値を支払うことになる
∴
パレート最適配分達成!
では、本当に
各入札者 i は、自身の評価価値 wi 円までせり上げに応じる
インセンティブをもつのだろうか?
9
各入札者 i は wi 円までせり上げに応じるインセンティブをもつ!
入札者 i は「 p 円にせり上がった時丁度、他の入札者全員せりからおりた状態になる」と予想する。
p 円をこえてせりに応じれば p 円で落札でき、利得は
p 円より前にせりからおりてしまえば落札できず、利得は
wi  p
0
wi  p と 0 、どっちが得?
wi  p :
wi 円までせりに応じれば p 円で落札できて得。正直がベスト。
wi  p :
落札して p 円をはらうと損。 p 円の前にせりからおりたほうがいい。正直がベスト。
wi  p : 落札してもしなくても利得ゼロ。正直がベスト。
∴ wi  p 、 wi  p 、 wi  p に関係なく
「正直に wi 円までせりに応じる」が常にベストの戦略
せり上げ入札では、各入札者は、他の入札者の入札行動に関係なく
正直に自身の評価までせりに応じるインセンティブをもつ
この性質には、もっと一般的な経済社会問題を解決するための
重要なヒントが隠されている~
(続く)
10