S1P1 アゴニスト作用に基づく新規免疫抑制薬 の探索研究

博士論文
S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 作 用 に 基 づ く 新 規 免 疫 抑 制 薬
の探索研究
2015 年
3月
東京薬科大学
辻
貴司
Exploring studies of novel S1P 1 agonists for
discovering the immunosuppressive agents
March 2015
Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences
Takashi Tsuji
目次
第 1章
緒言
第 1節
免 疫 抑 制 薬 の 現 状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・1
第 2節
f i n go l i m o d ( F T Y 7 2 0 ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3
第 3節
ス フ ィ ン ゴ シ ン -1-リ ン 酸 ( S1P) と S1P 受 容 体 ( S1P x ) ・・・・・・・・・・ ・・・5
第 4節
fi ngol i mod の 作 用 機 序 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・6
第 5節
研 究 成 果 の 概 略 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・8
第 6節
結 語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・13
第 2章
2-ア ミ ノ -2-メ チ ル -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル の 酵 素 を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応
第 1節
序 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ ・・14
第 2節
リ パ ー ゼ を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・17
第 3節
S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 中 間 体 合 成 ・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・ ・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・ ・・22
第 4節
-M et hyl Garne r ’s Al de hyde 合 成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・24
第 5節
結 語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・25
第 3章
キ ラ ル な ,-二 置 換 -ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 の 創
製
第 1節
序 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・27
第 2節
ア ミ ノ ア ル コ ー ル ユ ニ ッ ト を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 と ,-二 置 換 ア ミ ノ
酸 構 造 を 有 す る 生 理 活 性 物 質 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ 28
第 3節
ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 合 成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・30
第 4節
Wi tt i g 反 応 条 件 検 討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・33
第 5節
基 質 一 般 性 検 討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・35
第 6節
生 理 活 性 物 質 合 成 へ の 応 用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・39
第 7節
結 語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・40
第 4章
微 生 物 変 換 を 利 用 し た ,-二 置 換 -ア ミ ノ ア ル コ ー ル 化 合 物 の 効 率 的 リ ン
酸エステル化法
第 1節
序 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・42
第 2節
鍵 中 間 体 を 用 い た ア ミ ノ ア ル コ ー ル 合 成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・44
第 3節
化 学 的 リ ン 酸 エ ス テ ル 体 合 成 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・46
第 4節
微 生 物 を 利 用 し た リ ン 酸 エ ス テ ル 化 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・47
第 5節
微 生 物 を 用 い た ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 か ら の リ ン 酸 エ ス テ ル 体 合 成 ・・ ・・48
i
第 6節
第 5章
結 語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・53
短 半 減 期 型 S1P 1 ア ゴ ニ ス ト を 志 向 し た エ ー テ ル 化 合 物 の 探 索 研 究
第 1節
序 章 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・54
第 2節
エ ー テ ル 化 合 物 に つ い て ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・57
第 3節
ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 合 成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・58
第 4節
リ ン 酸 エ ス テ ル 体 合 成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・61
第 5節
構 造 活 性 相 関( SAR)研 究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・62
第 6節
結 語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・・69
第 6章
結 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・71
実 験 の 部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・76
第 2 章 に 関 す る 実 験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・77
第 3 章 に 関 す る 実 験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・90
第 4 章 に 関 す る 実 験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・106
第 5 章 に 関 す る 実 験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ 113
参 考 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・128
論 文 目 録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ 137
参 考 論 文 目 録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・138
謝 辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・・・・ 139
ii
略語
Boc
te rt -but oxyc arbon yl
Alloc
all yl ox yc arobon yl
PCC
pyri di ni um chl orochromate
MS4A
mole cul ar sie ve s 4A
KOH
pot assi um hydroxi de
N a2S 2O3
sodi um t hi osul fate
DM SO
di me t hyl sul foxi de
TBAF
tet ra n -but yl a mmonium fluoride
DM AP
di me t hyl ami nopyri dine
TFA
t ri fl uoroace ti c aci d
Pd-C
pall adi um on charco al
DM PU
N,N'-di me t hyl prop yle ne ure a
mCPBA
m -chl orope roxybe nz oic acid
t -BuOOH
te rt -but yl hydr ope roxide
p-TsOH
p-t ol ue ne sul foni c acid ( = PT SA)
p-TsCl
p-t ol ue ne sul fon yl chloride ( = TsCl)
N aH
sodi um hydri de
EDTA
et hyl e ne di ami ne te t raace tic acid
HEPES
N-[2-hyd rox ye t hyl ]pipe raz ine -N'-[2-e thane sulfonic acid]
GD P
guanosi ne 5'-di phosphate
DTT
1,4-di t hi o- D L -t hre i t ol
Val
vali ne
Le u
le uci ne
Arg
argi ni ne
Phe
phe nyl al ani ne
Glu
gl ut ami c aci d
Ile
isole uci ne
EC 5 0
hal f maxi mal ( 50%) e ffe ctive conce ntration
ID 5 0
hal f maxi mal ( 50%) i nfe ctious dose
SphK
sphi ngosi ne ki nase
CY P
cyt och rome P450
Rpm
rot ati on pe r mi nut e s
iii
第 1章
緒言
第 1節
免疫抑制薬の現状
ヒトを始めとする高等生物からアメーバー等の下等生物まで、生体が生命活動を
維持していく上で免疫応答は必要不可欠である。生体内では、病原微生物などの有
害な非自己成分(外来異物)から生体(自己細胞)を守るため、マクロファージや
好中球などの食細胞に加え、非自己成分の認識、排除を担うリンパ球などの免疫細
胞 が 免 疫 反 応 に 関 与 し て い る ( Fi gure 1-1_ a)。 こ の 生 体 を 外 敵 か ら 守 る 免 疫 応 答 機
構は生体内のシステムが複雑に絡み合って成立しており、そのバランスが崩れるこ
と は 様 々 な 疾 患 に 繋 が る こ と が 知 ら れ て い る 。 1)
Figure 1 -1. Correl at i on betwe e n immune re actions and de siese s .
例えば、免疫活性が低下すると外来異物から生体(自己細胞)を守れなくなり、
そ の 結 果 、 様 々 な 症 状 を 引 き 起 こ す よ う に な る ( Figure 1-1_ b)。 こ の 免 疫 活 性 が 低
下した状態は免疫不全症と呼ばれる。免疫不全症は、先天的に免疫活性が低下して
いる原発性免疫不全症と、後天的に免疫活性が低下する続発性(後天性)免疫不全
症とに分類され、リンパ球や、マクロファージなどの免疫担当細胞のいずれかが機
能欠損や、機能低下を起こすことが原因とされる。代表的な疾患には、ヒト免疫不
1
全 ウ ィ ル ス ( HIV) 感 染 症 に よ る 後 天 性 免 疫 不 全 症 候 群 ( AI DS) や ガ ン な ど が 挙 げ
られる。一方、免疫系が過剰に活性化した場合にも様々な疾患を誘発することが知
ら れ て い る ( Fi gu re 1-1 _ c)。 例 え ば 、 リ ン パ 球 の 自 己 、 非 自 己 の 認 識 不 足 に よ り 免
疫系が自己成分に対して攻撃を加えるようになる自己免疫疾患や、本来無害である
物質に対しても過剰な免疫応答をすることにより生じる様々なアレルギー疾患など
がそれに含まれる。代表的な疾患には、関節リウマチ、乾癬、アトピー性皮膚炎、
気 管 支 喘 息 な ど が 挙 げ ら れ る 。ま た 、炎 症 性 腸 疾 患 や 全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ ス( SLE)
といった難治性疾患
2)
も 自 己 免 疫 疾 患 の 一 種 で あ り 、免 疫 系 の 過 剰 な 活 性 化 が 原 因
で あ る と 言 わ れ て い る 。 1)
上記した免疫関連疾患の中でも、特に、過剰な免疫応答が原因と言われる患者数
は年々増加傾向にあり、またその患者層も小児から高齢者まで多岐に渡っており、
早急な対策が求められている。事実、免疫関連疾患に対しては国を挙げての精力的
な 施 策 が 講 じ ら れ て い る 。 3)
免疫関連疾患の治療には、従来、過剰な免疫反応によって生じる炎症反応を抑制
する目的でステロイドなどの抗炎症薬が広く使用されてきたが、その治療法は対症
療法に過ぎず根本的治療ではなかった。免疫関連疾患の治療、予防という観点では
免疫応答を抑制する薬剤である免疫抑制薬が有効とされ、今日まで多くの薬剤が開
発 、上 市 さ れ て い る 。Fi gure 1-2 に 現 在 使 用 さ れ て い る 代 表 的 な 免 疫 抑 制 薬 を 示 す 。
Figure 1 -2. M ajor immunosuppressants .
2
この他にも多くの薬剤が免疫抑制薬として上市されているが、その作用機序は単
一ではなく、薬剤によって異なる。例えば、代謝拮抗薬として機能するメトトレキ
セ ー ト 1 4) は DNA 合 成 阻 害 に よ り リ ン パ 球 の 増 殖 を 抑 制 す る こ と で 免 疫 抑 制 作 用
を 示 す 薬 剤 で あ り 、主 に 関 節 リ ウ マ チ や 白 血 病 な ど の 治 療 に 用 い ら れ て い る 。ま た 、
T 細胞機能抑制薬であるシクロスポリン A
2 5) や タ ク ロ リ ム ス 3 6) は 共 に カ ル シ ニ
ュ ー リ ン 阻 害 剤 と 呼 ば れ 、ヘ ル パ ー T 細 胞 の イ ン タ ー ロ イ キ ン 2( I L-2)産 生 を 抑 制
することで免疫抑制作用を示す。このカルシニューリン阻害剤は、主に骨髄や臓器
移 植 時 に 用 い ら れ る 他 、 関 節 リ ウ マ チ 、 ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 に も 適 応 さ れ て い る 。 7)
このように、現在市販されている免疫抑制薬は免疫関連疾患の治療に効果的であ
り、幅広く用いられている一方、そのほとんどは免疫系の細胞自体に作用する薬剤
であるが故、副作用も重篤である場合が多い。例えば、現在最も広く使用されてい
る カ ル シ ニ ュ ー リ ン 阻 害 剤 と し て 作 用 す る 免 疫 抑 制 薬 ( シ ク ロ ス ポ リ ン A、 タ ク ロ
リ ム ス な ど )は 、肝 臓 や 腎 臓 へ の 機 能 障 害 な ど の 副 作 用
8)
が 報 告 さ れ て お り 、そ の
使用に際しては厳密な管理下で行われる必要がある。
近年では、免疫関連研究の進展に伴い、従来の免疫抑制薬に見られた重篤な副作
用を持たない新規治療薬として多くの生物製剤が開発、上市されており、関節リウ
マ チ な ど の 治 療 に 期 待 が 持 た れ て い る 。 9 ) し か し な が ら 、生 物 製 剤 は 安 全 性 に 優 れ
ている一方で、その価格面や、取扱いの面で問題点を抱えており、依然として自己
免疫疾患分野における医療満足度は低い。さらに、本疾患領域は患者数の増加と生
物製剤の台頭に相俟って市場が増加傾向にあり、医療満足度、市場性の両面から、
安全性に優れ、臨床現場で使用し易い低分子免疫抑制薬の開発が強く期待されてい
ると言える。
第 2節
fingol i mod( F TY720)
1990 年 、藤 多 ら は 古 来 よ り 中 国 で 生 薬 と し て 用 い ら れ て い る 冬 虫 夏 草 の 一 種 で あ
る タ イ ワ ン ツ ク ツ ク ホ ウ シ を 宿 主 と す る 菌 I saria sinc lairii の 培 養 濾 液 よ り 強 い 免 疫
抑 制 作 用 を 有 す る 物 質 を 単 離 し 、I SP -1( immunosuppre ssant product -1)と 命 名 し た 。
そ の 後 、 ISP -1 の 化 学 構 造 分 析 が 行 わ れ た 結 果 、 1972 年 に カ ビ の 仲 間 で あ る
myrioco ccu m か ら 発 見 さ れ て い た m yriocin 4 と 呼 ば れ る 抗 真 菌 抗 生 物 質 と 同 一 の 化
合 物 で あ る こ と が 判 明 し た ( Fi gure 1-3)。 1 0 )
3
Figure 1 -3. St ructure of myriocin (I SP -1) 4 .
M yriocin の 免 疫 抑 制 作 用 は 、in v itro の 免 疫 抑 制 作 用 測 定 試 験 と し て 多 用 さ れ る 混
合 リ ン パ 球 反 応( M LR)試 験 に お い て 、シ ク ロ ス ポ リ ン A よ り も 強 力 な 活 性 で あ る
一 方 、そ の 作 用 機 作 は シ ク ロ ス ポ リ ン A と は 全 く 異 な る 物 で あ っ た 。す な わ ち 、カ
ルシニューリン阻害剤であるシクロスポリン A やタクロリムスはヘルパーT 細胞に
お け る I L-2 な ど の サ イ ト カ イ ン 産 生 を 抑 制 す る こ と で 免 疫 反 応 を 抑 制 す る の に 対
し 、新 た に 見 出 さ れ た myri oci n は 拒 絶 反 応 に 直 接 関 わ る 細 胞 障 害 性 T 細 胞 や ナ チ ュ
ラ ル キ ラ ー 細 胞 ( NK 細 胞 ) に 対 し て ア ポ ト ー シ ス を 引 き 起 こ す こ と で 免 疫 抑 制 活
性 を 発 現 す る こ と が 見 出 さ れ た 。 11 )
強 力 な 免 疫 抑 制 作 用 を 有 す る myriocin で あ っ た が 、毒 性 が 強 く 実 用 化 に は ほ ど 遠
い も の で あ る こ と が 判 明 し た た め 、そ の 後 、毒 性 軽 減 を 目 的 と し た myriocin の 化 学
修 飾 が 行 わ れ る こ と に な っ た ( Fi gure 1-4)。 そ の 結 果 、 myriocin の 構 造 を 簡 略 化 し
た 2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 構 造 が 免 疫 抑 制 作 用 発 現 に 必 須 で あ る こ と が 示 唆
さ れ ( 5) 1 2 ) 、 さ ら な る 構 造 最 適 化 に よ っ て FTY 720( fingolimod) 6 が 見 い だ さ れ る
に 至 っ た 。 13)
Figure 1 -4. Opt i miz ation of myriocin structure .
驚 く べ き こ と に 、誘 導 体 展 開 の 過 程 に お い て 、fingolimod の 示 す 免 疫 抑 制 作 用 は 、
myriocin が 有 す る SPT 阻 害 活 性 に 基 づ く T 細 胞 に 対 す る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 作 用 と は
異なり、リンパ球ホーミング(回帰)作用に基づくものへと変化していることが明
4
ら か と な っ た 。 1 4 ) 以 下 に リ ン パ 球 ホ ー ミ ン グ 作 用 に つ い て 説 明 す る ( Fi gu r e 1 - 5 )。
Figure 1-5 . M e chani sm of pe riphe ral blood lymphope nia .
通常、骨髄や胸腺などの一次リンパ組織で生産されたリンパ球は、血管系を介し
てパイエル板、リンパ節、脾臓などの二次リンパ組織に移行した後、血管を通じて
全 身 を 循 環 し 、 免 疫 反 応 部 位 に 集 積 す る と い う 性 質 を 有 し て い る ( Figure 1-5_ a)。
このように、生体内ではリンパ球が体内を循環し、必要な部位に働きかけることで
免 疫 応 答 を 示 し て い る 。 一 方 、 fi ngolimod が 投 与 さ れ る と 、 リ ン パ 球 が リ ン パ 節 な
どの二次リンパ組織内に隔離(リンパ球ホーミング)された状態になり、末梢血中
の循環リンパ球の著しい減少がおこる。循環リンパ球が減少することで免疫反応部
位 へ の リ ン パ 球 の 浸 潤 量 が 減 少 し 、そ の 結 果 、免 疫 反 応 が 抑 制 さ れ る( Figure 1-5_ b)。
本反応はこれまでの免疫抑制剤の作用機作にはない特徴的なものであったが、
fingolimod 発 見 当 初 、 そ の 強 力 な リ ン パ 球 ホ ー ミ ン グ 作 用 の 作 用 機 作 に つ い て は 不
明のままであった。
第 3節
ス フ ィ ン ゴ シ ン -1-リ ン 酸 ( S1P) と S1P 受 容 体 ( S1P x )
Fingolimod が メ カ ニ ズ ム 不 明 の 新 規 免 疫 抑 制 薬 と し て 発 見 さ れ る 傍 ら 、 リ ゾ リ ン
脂 質 の 一 種 と し て 体 内 に 存 在 す る ス フ ィ ン ゴ シ ン -1-リ ン 酸 ( Sphingosine -1-phosphate : S1P) 8 に つ い て も 、 そ の 機 能 解 明 に 向 け た 研 究 が 進 め ら れ て い た 。 1 5 ) 今 日 で
は 、リ ン 酸 化 酵 素 で あ る ス フ ィ ン ゴ シ ン キ ナ ー ゼ ( SphK)の 働 き に よ り ス フ ィ ン ゴ
シ ン 7 か ら 生 成 す る S1P 8 が 、 生 体 内 で 様 々 な 生 理 活 性 を 持 つ 重 要 な 脂 質 メ デ ィ エ
ー タ ー と し て の 役 割 を 有 す る こ と が 知 ら れ て い る が 、そ れ が 判 明 し た の は 1990 年 代
に 入 っ て か ら で あ っ た 。 1 6 ) 1998 年 、 Hla ら に よ り 、 S1P 8 が 血 管 内 皮 分 化 遺 伝 子
( Endothe ri al Di ffe re nti at i on Ge ne: ED G )と し て ク ロ ー ニ ン グ し て い た G タ ン パ ク 共
5
役 型 受 容 体( G-prot ei n-coupl e d re ce ptor: GPCR)の 生 体 内 リ ガ ン ド で あ る こ と が 報 告
さ れ た 。1 7 ) こ の GPCR は 発 見 当 初 E dg 受 容 体 と 呼 ば れ て い た が 、そ の 後 新 た に 、S1P
受 容 体( Sphi ngosi ne -1-phosphate re ce ptor)と 呼 称 さ れ る よ う に な り 、現 在 ま で に S1P 1
( Sphingosi ne -1-phosphat e re ce pt or 1)か ら S1P (
5 Sphingosine -1-phosphate re ce ptor 5)
ま で 5 種 類 の サ ブ タ イ プ が 見 出 さ れ て い る ( Figure 1-6)。 1 8 )
Figure 1 -6. Sphi ngosi ne -1-phosphate (S1P) and their re ce ptors ( S1P x ).
7 回 膜 貫 通 型 タ ン パ ク 質 で あ る 5 種 類 の S1P 受 容 体 は 、 サ ブ タ イ プ に よ っ て 発 現
部 位 は 大 き く 異 な る 。 す な わ ち 、 S1P 1 、 S1P 2 、 S1P 3 は 比 較 的 広 範 な 組 織 ・ 細 胞 で 発
現 し て い る の に 対 し 、 S1P 4 、 S1P 5 は そ れ ぞ れ 造 血 ・リ ン パ 球 系 と 神 経 系 に 主 に 発 現
し て い る こ と が 知 ら れ て い る 。 近 年 、 各 S1P 受 容 体 の 生 体 内 で 担 っ て い る 機 能 に つ
い て は 、S1P 受 容 体 の ノ ッ ク ア ウ ト( KO) マ ウ ス を 用 い た 実 験 等 に よ り 徐 々 に 解 明
さ れ つ つ あ る 。中 で も S1P 1 に つ い て は 様 々 な 生 命 現 象 に お い て 重 要 な 役 割 を 担 っ て
いることが明らかにされており
19)
、 後 に 、 こ の S1P 1 が fingolimod の 免 疫 抑 制 作 用
発現メカニズムに大きく関与していることが判明することとなる。
第 4節
fingol i mod の 作 用 機 序
お 互 い に 独 立 し た 研 究 対 象 で あ っ た fingolimod と S1P 受 容 体 で あ っ た が 、2002 年 、
Me rck 及 び N ovart is の 研 究 者 に よ り fingolimod の 薬 効 発 現 は S1P 受 容 体 へ の ア ゴ ニ
ス ト 作 用 に よ る も の で あ る こ と が 報 告 さ れ た( Table 1-1)。 2 0 ) す な わ ち 、fingolimod
6 は 生 体 内 に 投 与 さ れ た 後 、 血 中 で ス フ ィ ン ゴ シ ン キ ナ ー ゼ ( SphK) の 働 き に よ り
6
速 や か に リ ン 酸 化 さ れ 、 リ ン 酸 エ ス テ ル 体 6-P へ と 変 換 さ れ た の ち 、 S1P 2 を 除 く 他
の S1P 受 容 体 に 対 し 非 選 択 的 に ア ゴ ニ ス ト 作 用 を 示 す こ と に よ り 免 疫 抑 制 作 用 を 示
す こ と が 明 ら か と さ れ た 。ま た 、そ の 活 性 は 内 在 性 リ ガ ン ド と し て 機 能 し て い る S1P
8 と同様に非常に強力なものであった。
Table 1-1. Bi ndi ng a ffi ni t y t o S1P re ce ptors . a
Bind in g af f in ity to e a ch S 1P re cep tor was ca lcu la ted by G TP  -S b ind in g ass ay and the de ta ils ar e
shown in expe r im ent a l se ct ion.
a
今 日 で は 、 5 種 類 存 在 す る S1P 受 容 体 の う ち 、 S1P 1 へ の ア ゴ ニ ス ト 作 用 が リ ン パ
球ホーミング作用を誘導することが判明しており、次のような作用機序が提唱され
て い る ( Fi gure 1-7)。 2 1 ) ま ず 、 生 成 し た リ ン 酸 エ ス テ ル 体 6-P が T リ ン パ 球 上 に 存
在 す る 受 容 体 S1P 1 に ア ゴ ニ ス ト と し て 作 用 し 、 S1P 1 を 細 胞 表 面 か ら 内 在 化 さ せ る
( 機 能 的 ア ン タ ゴ ニ ス ト )。 細 胞 膜 上 か ら S1P 1 を 失 っ た T リ ン パ 球 は 、 S1P 1 の 生 体
内 リ ガ ン ド で あ る S1P の 濃 度 勾 配 を 感 知 で き な く な り 、二 次 リ ン パ 組 織 か ら 血 中 へ
の 移 行 が 阻 害 さ れ る 。そ の 結 果 、末 梢 血 中 の T リ ン パ 球 が 減 少 す る と い う も の で あ
る。
Figure 1 -7. M e chanism of lympho c yte homing a ction .
7
ま た 、リ ン パ 球 ホ ー ミ ン グ 作 用 に は S1P 1 へ の ア ゴ ニ ス ト 作 用 が 重 要 で あ る と 同 時
に 、S1P 3 に 対 す る ア ゴ ニ ス ト 作 用 は fingolimod の 主 な 副 作 用 で あ る 催 徐 脈 作 用( 一
過 性 の 徐 脈 )の 増 悪 因 子 で あ る こ と が 、ノ ッ ク ア ウ ト( KO)マ ウ ス を 用 い た 実 験 に
よ り 示 唆 さ れ て い る 。2 2 ) こ れ ら の 報 告 を 受 け 、多 く の 製 薬 会 社 や 研 究 機 関 に お い て 、
S1P 1 選 択 的 ア ゴ ニ ス ト の 開 発 研 究 が 活 発 に 実 施 さ れ る こ と に な っ た 。 ま た 、
fingolimod 自 身 も 田 辺 三 菱 製 薬 、N ovartis に よ る 約 20 年 間 の 臨 床 開 発 を 経 て 、2010
年 に 多 発 性 硬 化 症 治 療 薬 と し て 承 認 、 上 市 さ れ て い る 。 現 在 で は 、 fingolimod か ら
派 生 し た KPR-203 9 ( Phase I , K yori n) 2 3 ) や CS-0777 10 ( Phase I , Diichi -S ankyo) 2 4 ) に 加
え 、ponesimod 11 (Phase II, Act e li on) 2 5 ) 、BAF -312 12 ( Phase II I, N ovartis) 2 6 ) の よ う な 、
これまで薬効発現に必須と思われていたアミノアルコール構造を分子内に持たない
化 合 物 な ど も 臨 床 開 発 段 階 に 入 っ て い る ( Figure 1-8)。
Figure 1 -8. Cli ni cal de ve lopme nt compounds of S1P 1 agonist s.
第 5節
研究成果の概略
上 述 し た よ う に 、 fi ngol i mod は 非 常 に ユ ニ ー ク な 作 用 機 序 と 、 そ の 強 力 な 免 疫 抑
制効果も然ることながら、その分野において最も広く使用されているタクロリムス
などのカルリニューリン阻害剤に見られる腎毒性、肝毒性回避(軽減)が期待され
る薬剤として、開発段階から多くの研究機関からの注目を浴びていた。このような
魅 力 的 な プ ロ フ ァ イ ル を 有 す る fi ngolimod で あ っ た が 、催 徐 脈 作 用( 一 過 性 の 徐 脈 )
と い う 副 作 用 に 加 え 、 活 性 本 体 で あ る リ ン 酸 エ ス テ ル 体 6- P が 非 常 に 長 い 血 中 半 減
期 を 持 つ こ と が 知 ら れ て お り 、改 善 の 余 地 を 残 す 薬 剤 で あ る と 考 え ら れ た 。そ こ で 、
8
これらの点を改善し、より安全性に優れ、強力な免疫抑制作用を有する薬剤の創製
を 目 的 に 、 fi ngol i mod の 構 造 を 基 と し た S1P 1 ア ゴ ニ ス ト の 創 薬 研 究 に 着 手 し た 。
Fingolimod 6 を リ ー ド 化 合 物 と し た 研 究 を 開 始 す る に あ た り 、 ま ず 、 そ の 立 体 配
置 が 薬 効 発 現 に 重 要 と さ れ る ア ミ ノ プ ロ パ ン ジ オ ー ル 部 位 を 一 般 式 13 で 示 す 光 学
活性メチルアミノアルコール骨格へと変更した。その上で、中心のフェニル基を各
種 へ テ ロ ア リ ー ル 基 へ と 変 換 し た 一 般 式 14 で 示 さ れ る 化 合 物 、及 び 、中 心 芳 香 環 と
ア ミ ノ ア ル コ ー ル ユ ニ ッ ト を 繋 ぐ リ ン カ ー 部 位 に エ ー テ ル 結 合 を 有 す る 一 般 式 15
で示される化合物を基本テンプレートとしてデザインし、2 系統での誘導体展開を
実 施 し た ( Fi gu re 1-9)。 な お 、 中 心 芳 香 環 か ら 伸 長 す る 疎 水 性 側 鎖 に つ い て は 、 各
種検討の結果、薬効面、新規性面、合成面等において総合的に優れていたカルボニ
ル基を有する側鎖へと変換した。
Figure 1 -9. St ruct ual modification from fingolimod 6 .
本 学 位 論 文 で は 、こ の 2 系 統 の 誘 導 体 展 開 を 行 う に あ た り 、一 般 式 14 で 示 さ れ る
化 合 物 合 成 に 必 要 で あ っ た 各 種 合 成 技 術 の 開 発( 第 2 章 、第 3 章 、第 4 章 )に 加 え 、
そ の 合 成 技 術 を 活 用 し た 、一 般 式 15 で 示 さ れ る エ ー テ ル 化 合 物 の 構 造 活 性 相 関 研 究
(第 5 章)について述べている。以下、各章の概略を紹介する。
第 2 章 で は 、一 般 式 14 の 周 辺 化 合 物 合 成 を 効 率 良 く 行 う た め 、中 間 体 と し て 設 定
し た 16 の 合 成 に お い て 、リ パ ー ゼ を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 を 利 用 し た 構 築 法 に つ
い て 述 べ て い る 。 27)
9
本 研 究 で は 、2-te rt -ブ ト キ シ カ ル ボ ニ ル ア ミ ノ -2-メ チ ル -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 18
が有する対称性に注目し、薬効発現に重要と考えられる光学活性なアミノアルコー
ル部位(青点線枠)の構築法として、リパーゼによるエステル化反応を用いた不斉
非 対 称 化 を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 Pseudo mona s 種 由 来 の 固 定 化 リ パ ー ゼ を 用 い た 場
合 に 高 収 率 、 高 選 択 的 に モ ノ エ ス テ ル 化 が 進 行 す る こ と を 明 ら か と し た ( 88%収 率 ,
89%e e)。 得 ら れ た 17 か ら は 、 各 種 へ テ ロ ア リ ー ル を 有 す る S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 中 間 体
16 に 加 え 、 α-置 換 ア ラ ニ ン 誘 導 体 の 合 成 素 子 と し て 利 用 可 能 な ア ル デ ヒ ド 19 へ 数
工 程 で 導 く こ と が 可 能 で あ っ た( Figure 1-10)。ま た 、本 反 応 に よ り 得 ら れ る 光 学 活
性アミノアルコールは、後の 5 章における誘導体合成の有用な中間体としても機能
した。
Figure 1 -10. Summe r y in Chapte r 2.
続 く 第 3 章 で は 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b と ア ル デ ヒ
ド 25 と の Witt i g 反 応 を 利 用 し た 中 間 体 20 の 構 築 法 に つ い て 述 べ て い る 。 2 8 )
従 来 法 で は 、キ ラ ル な ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ア ル デ ヒ ド 21 と 、各 種 ア リ
ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23 か ら 調 製 し た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22 と の Wittig 反 応 に よ り 、鍵
中 間 体 20 の 合 成 を 行 っ て い た 。そ の 手 法 は 、幅 広 い 中 間 体 合 成 を 実 現 す る 優 れ た 方
法であったが、中心環として電子豊富な芳香環を導入する際には、対応するアリー
ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23 の 不 安 定 さ ゆ え 、ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 の 合 成 が 困 難 に な る 等 の 欠 点
を有していた。本研究では、従来法の欠点を補う合成的手法として、極性転換の考
え に 基 づ き 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b と ア ル デ ヒ ド 25
と の 反 応 に よ る 中 間 体 20 の 調 製 法 検 討 を 実 施 し た 。 反 応 に 必 要 な ホ ス ホ ニ ウ ム 塩
24b は 、 安 価 で 入 手 可 能 な
L -se ri ne
塩 酸 塩 27 よ り 導 か れ る ア ル コ ー ル 体 26 か ら 数
工 程 で 調 製 可 能 で あ っ た ( Fi gure 1-11)。
10
Figure 1 -11 . Summe ry in Chapte r 3.
調 製 し た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は 様 々 な 脂 肪 族 、 芳 香 族 ア ル デ ヒ ド と 良 好 に 反 応 す
る こ と が 判 明 し た 。 特 に 、 本 Wi t tig 反 応 は 、 対 応 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 が 調 製 困 難 で
ある電子豊富な芳香環を有するアルデヒドに対しても進行し得るものであり、従来
法 に 対 し て 相 補 的 に 機 能 す る 反 応 で あ っ た 。さ ら に 、本 手 法 は S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 研 究
に お け る 鍵 中 間 体 30 や 他 グ ル ー プ に よ り 報 告 さ れ て い る S1P 1 ア ゴ ニ ス ト( 28、29)
を 短 段 階 で 与 え た ほ か 、 Trace Amine -Associate d Re ce ptor 1( TAAR1 ) ア ゴ ニ ス ト 31
の 合 成 に お い て も 有 用 で あ っ た ( Figure 1-12)。
Figure 1 -12. Appl i cation of phosphonium salt 24b .
11
第 4 章では、親化合物のアミノアルコール体から活性本体であるリン酸エステル
体 へ の 微 生 物 変 換 を 利 用 し た 効 率 的 合 成 法 に つ い て 述 べ て い る 。 29)
S1P 1 ア ゴ ニ ス ト の 活 性 本 体 は 、 fingolimod 6 が そ う で あ る よ う に 、 親 化 合 物 32
の 一 級 水 酸 基 が リ ン 酸 エ ス テ ル 化 さ れ た 32-P で あ る 。そ の た め 、S1P 受 容 体 に 対 す
るアゴニスト活性を測定する際には、リン酸エステル体(標品)を別途合成する必
要があった。しかしながら、親化合物であるアミノアルコール体からリン酸エステ
ル体への一般的な化学合成においては、アミノ基やリン酸エステル基上の水酸基に
対する保護基の着脱が必須であり、多検体のスクリーニングを実施する際には直接
的で簡便な手法が望まれていた。そこで、所有する独自の微生物ライブラリー(糸
状菌、細菌、放線菌)を用いて、親化合物であるアミノアルコール体の一級水酸基
を直接的にリン酸エステル化する作用を持つ微生物のスクリーニングを実施した。
検 討 に 用 い る 反 応 基 質 に は 、一 般 式 14 の 誘 導 体 展 開 に よ り 見 出 さ れ た 、強 力 な 免 疫
抑 制 活 性 を 有 す る ピ ロ ー ル 化 合 物 32 を 選 定 し た 。検 討 の 結 果 、強 力 な リ ン 酸 エ ス テ
ル 化 能 を 有 す る Ci rc ine lla muscae を 見 出 し 、 さ ら に 、 そ の 菌 体 を 凍 結 乾 燥 状 態 に す
ることで飛躍的に反応性を向上させることに成功した。また、本手法と質量分析計
を用いた自動精製システムを組み合わせることにより、親化合物から 1 工程でリン
酸 エ ス テ ル 体 を 得 る 効 率 的 な リ ン 酸 エ ス テ ル 誘 導 体 合 成 を 実 現 し た ( Figure 1 - 1 3 )。
Figure 1 -13. Summe r y in Chapte r 4.
第 5 章 で は 、 短 半 減 期 型 S1P 1 ア ゴ ニ ス ト を 志 向 し た エ ー テ ル 化 合 物 33 の 構 造 活
性 相 関 ( SAR) 研 究 に つ い て 述 べ て い る 。 3 0 )
こ れ ま で 述 べ て き た よ う に 、 強 力 な 免 疫 抑 制 作 用 を 示 す fingolimod は 副 作 用 と し
て一過性の徐脈作用に加え、非常に長い血中半減期を持つことが判明していた。ま
た 、第 2 章 か ら 第 4 章 で 述 べ た 各 種 合 成 法 を 活 用 し た 一 般 式 14 の 誘 導 体 展 開 か ら 見
出 さ れ た 、 32 や 臨 床 開 発 化 合 物 CS -0777 10 な ど も 、 強 力 な 免 疫 抑 制 薬 効 を 持 つ 有
望 な 化 合 物 で あ る 一 方 で 、 fi ngol i mod と 同 様 に 比 較 的 長 く 体 内 に 貯 留 す る 傾 向 が あ
っ た 。そ こ で 、創 薬 の 成 功 確 率 向 上 の た め 、一 般 式 14 で 示 す 化 合 物 群 と は 異 な る プ
12
ロファイルとして、適度な半減期、かつ催徐脈作用のない化合物の獲得を目指し、
中心芳香環とアミノアルコールユニットを繋ぐリンカー部位にエーテル結合を持つ
33 を デ ザ イ ン し 、 そ の SAR 研 究 を 実 施 し た ( Figure 1-14)。 そ の 結 果 、 33 a は 、
fingolimod 6 と 比 較 し て 血 中 半 減 期 が 短 く 、さ ら に 良 好 な S1P 3 /S1P 1 選 択 性 と 強 力 な
in v ivo 薬 効 を 有 す る こ と が 判 明 し た 。 ま た 、 中 心 ベ ン ゼ ン 環 上 の 置 換 基 導 入 は 選 択
性 を 大 き く 向 上 さ せ る こ と や 、 in v ivo 薬 効 が 親 化 合 物 の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 効 率 と 相
関 す る こ と を 明 ら か と し た 。各 種 検 討 の 結 果 、適 度 な 血 中 半 減 期 を 持 ち 、fingolimod
6 と 同 等 の 強 力 な in vi vo 薬 効 を 示 し 、 さ ら に 徐 脈 作 用 に 対 し て 十 分 な 安 全 域 を 有 す
る 化 合 物 ( 33b、 33e) を 見 出 す こ と に 成 功 し た 。
Figure 1 -14. Summe r y in Chapte r 5.
第 6節
結語
以 上 、 第 1 章 で は 、 新 規 な 免 疫 抑 制 薬 と し て 期 待 さ れ る fingolimod と 、 そ の 作 用
機 序 に 関 与 す る S1P 受 容 体 の 機 能 に つ い て 述 べ た 。 本 文 中 に も 示 し た よ う に 、 ス フ
ィンゴ脂質類の生体内シグナルとしての作用解は近年になり急速な発展を遂げたも
の で あ り 、 S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 と し て の fingolimod に 代 表 さ れ る よ う に 、 S1P 関
連の分野は今後も重要な創訳標的になることが予想される。本博士論文中で紹介す
る fingolimod を リ ー ド と し た 誘 導 体 展 開 に お い て 、 薬 効 面 、 安 全 性 面 で 優 れ た 化 合
物 の 創 製 は 然 る こ と な が ら 、そ れ ら S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 の 新 規 合 成 法 の 確 立 も 非
常に重要な意味を持つと考えられる。
13
第 2章
2-ア ミ ノ -2-メ チ ル -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル の 酵 素 を 用 い た 不 斉 非 対 称 化
反応
第 1節
序論
第 1 章 で 述 べ た と お り 、 fi ngol i mod( FT Y 720) 6 は こ れ ま で に な い 新 し い 作 用 機
序 を 有 す る 免 疫 抑 制 薬 と し て 期 待 さ れ る 新 薬 で あ り 、 2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー
ル 構 造 が 重 要 な pharmacopho re で あ る こ と が 判 明 し て い る 。 Fingolimod 6 は 、 生 体
内に投与された後、血中にて二つの等価な水酸基のうち、一つがリン酸エステル化
さ れ る 。ま た 、そ の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 は 高 エ ナ ン チ オ 選 択 的 に 進 行 し
2 0, 3 1 )
、生 じ た
S-リ ン 酸 エ ス テ ル 体 (S) -6-P が 標 的 で あ る S1P 1 に 作 用 す る こ と で 薬 理 作 用 を 発 揮 す
る こ と が 知 ら れ て い る 。さ ら に 、S1P 1 に 対 し て ア ゴ ニ ス ト 活 性 を 示 す の は S-リ ン 酸
エ ス テ ル 体 (S)-6-P の み で あ り 、 生 体 内 で の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 で は 生 じ な い R-リ ン
酸 エ ス テ ル 体 ( R)-6- P の ア ゴ ニ ス ト 活 性 は 非 常 に 低 い こ と も 明 ら か と さ れ て い る
( Table 2-1)。 3 2 ) こ の よ う に fi ngolimod の 2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 構 造 は 血
中 で の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 、お よ び S1P 受 容 体 へ の 作 用 の 両 過 程 で 厳 密 な 不 斉 認 識 を
受けていることがわかる。
Table 2-1. Phosphate s of fi ngol i mod and the ir binding a ffinity to S1P re ce ptors. a
Bind in g af f in ity to e a ch S 1P re cep tor was ca lcu la ted by G TP  -S b ind in g ass ay and the de ta ils ar e
shown in expe r im ent a l se ct ion
a
14
上記結果は、アミノアルコール部位の立体化学が薬効発現に非常に重要な要素で
あることを表しているが、同様の結果は、他グループで実施された誘導体展開によ
っ て も 得 ら れ て い る 。 3 3 ) す な わ ち 、 fingolimod 6 を 基 に 合 成 さ れ た 二 つ の エ ナ ン チ
オ マ ー (R)-28 と ( S)-28 は 、臓 器 移 植 を 模 し た in vivo モ デ ル の 一 つ で あ る HvGR( Host
ve rsus Graft Re act i on) 試 験 に お い て 、 R 体 ( R)-28 が 薬 効 を 発 現 し 強 力 な 免 疫 抑 制 作
用 を 示 す 一 方 で 、 逆 の 立 体 で あ る S 体 (S )-28 は 全 く 活 性 を 示 さ な い こ と が 報 告 さ れ
て い る ( Fi gu re 2-1)。
Figure 2 -1. Chi ral de ri vat i ve s of fingolimod and their in vivo activitie s.
上 記 の 結 果 か ら 、 fi ngol i mod の 有 す る 2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 構 造 部 位 を
構造変換する際においては、厳密な光学活性体の作りわけが重要であることがわか
る。
世 界 中 で S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 研 究 が 脚 光 を 浴 び る 中 、 私 も 新 規 な S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 化
合 物 を 獲 得 す べ く 、 fi ngol i mod の 構 造 を 基 に 各 種 変 換 を 行 っ て き た 。
ま ず 、 fi ngol i mod が 持 つ 2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 構 造 ( 青 点 線 枠 ) に つ い
て は 、 ( 2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 へ と 変 換 す る こ と と し た 。 そ の 上
で、中心のフェニル基(赤点線枠)については各種へテロアリール基へと変換した
化 合 物 を デ ザ イ ン し た 。 な お 、 fi ngolimod の フ ェ ニ ル 基 は 、 大 き な 極 性 変 化 を 伴 わ
な い ヘ テ ロ 芳 香 環 と し て チ オ フ ェ ン 、フ ラ ン 、ピ ロ ー ル 環 へ と 変 換 し た 。Fingolimod
の右側疎水性側鎖部位(緑点線枠)については、様々な検討の結果、カルボニル基
を有する側鎖が合成面、新規性面、活性面などにおいて総合的に優れていることが
判 明 し て お り 、結 果 と し て 、一 般 式 14 で 表 さ れ る 一 連 の 化 合 物 群 に 強 力 な 免 疫 抑 制
薬 効 が 見 出 さ れ た 。一 般 式 14 で 表 さ れ る 誘 導 体 を 合 成 す る に あ た り 、疎 水 性 側 鎖 部
位 は 最 終 段 階 で 導 入 す る こ と と し 、鍵 と な る 中 間 体 と し て 16 を 設 定 し た 。こ れ に 伴
い 、 種 々 の ヘ テ ロ 環 導 入 に は 、 利 便 性 を 有 し 、 大 量 合 成 に も 対 応 可 能 な (2R) -ア ミ ノ
-2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 ( 青 点 線 枠 ) の 合 成 法 の 確 立 が 必 要 と な っ た ( Figu re
2-2)。
15
Figure 2 -2. St ruct ural modification s of fingolimod 6.
光学活性化合物の合成法は、光学分割と不斉合成という二手法に大別することが
可能であり、それぞれ円熟した化学手法として膨大なバリエーションが存在する。
光学分割法では、不斉認識部位を担持した固定相を用いてカラムクロマトグラフ
ィ ー を 行 う 方 法 が 、HPLC 装 置 の 発 展 や そ の 簡 便 さ か ら 一 般 に 広 く 用 い ら れ て い る 。
また、分割したいラセミ混合物に安価なキラル化合物を作用させて二種類のジアス
テレオマーへと誘導し、その溶解度の差や極性差を利用して分割する方法なども一
般的に用いられる手法である。これらの方法はラセミ体さえ合成できれば適用可能
であるため、少量のラセミ体の分割や、安価なラセミ体の分割には有用かつ強力な
合成手法となるが、半分量の不要な光学活性体を不可避な副生物として伴うという
点で本質的に無駄の多い手法とも言える。
一 方 、 不 斉 合 成 法 は 、 最 高 収 率 が 理 論 上 50%を 超 え な い 分 割 法 に 比 べ て 洗 練 さ れ
た手法とも言える。中でも、野依らによる不斉水素化反応
る不斉酸化反応
35)
34)
や 、 Sharple ss ら に よ
に代表される不斉配位子と金属触媒を組み合わせた不斉反応は 、
い ま や 欠 く こ と の で き な い 科 学 技 術 で あ る 。3 6 ) そ の よ う な 不 斉 合 成 法 の 一 つ で あ る
不斉非対称化反応は、プロキラルなメソ体を原料とし、同一環境下に置かれた複数
の反応点のうち、一つの反応点に対し選択的に反応を進行させることでキラルな化
合物へと導く反応である。また、このような反応は、金属触媒よりも微生物や酵素
などの生体触媒が得意とする分野であり、多くの利点を持つことが知られている。
37)
す な わ ち 、生 体 触 媒 を 用 い た 不 斉 合 成 法 の 多 く は 、加 熱 な ど の 処 理 が 不 要 で 温 和
な条件化での反応が可能である点や、基質中に存在する反応点以外の官能基を無保
護状態のまま目的の変換反応のみを行うことが可能である点などにおいて優れてお
り 、 現 在 も 活 発 に 研 究 が 行 わ れ て い る 分 野 で あ る 。 38)
このような優れた特徴を有する生体触媒を利用した不斉非対称化反応は、私がデ
ザ イ ン し た 化 合 物 の 中 間 体 合 成 に お い て も 有 効 で あ る と 考 え 、そ の 検 討 を 実 施 し た 。
本 章 で は 、 光 学 活 性 体 ( 2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 ( 青 点 線 枠 ) 構
築法としての酵素を用いた不斉非対称化反応と、得られるアルコール体の応用例に
ついて述べる。
16
第 2節
リパーゼを用いた不斉非対称化反応
当 時 、 (2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 を 有 す る 化 合 物 ( 36 な ど ) の 多
く は キ ラ ル HPLC を 用 い た ラ セ ミ 体 ( rac -35 な ど ) の 光 学 分 割 に よ り 合 成 さ れ て い
た( Sche me 2-1, e q. 1)。3 3 ) し か し な が ら 、既 述 し た よ う に 、そ の 手 法 は 無 駄 が 多 く 、
多検体の合成には不向きなものであった。その後、キラル補助基を用いた不斉アル
キル化合成法が開発されたが、その合成法においても、用いる保護基の脱保護に強
力な塩基や還元剤が必要であり、官能基許容性の観点からも十分な手法とは言い難
か っ た ( Sche me 2-1, e q. 2)。 3 9 )
Sc he me 2-1 . Synt he ti c rout es of chiral analogue 36 and 39 of fin golimod 6.
そ こ で 、 よ り 効 率 的 な 合 成 法 確 立 を 目 的 と し 、 新 た に ( 2R ) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ
ロ パ ノ ー ル 構 造 を 有 す る 化 合 物 16 の 製 法 検 討 を 行 う こ と に し た 。 16 の 合 成 法 に お
け る 逆 合 成 ル ー ト を Sche me 2-2 に 示 す 。
Sc he me 2-2 . Ret rosynt he tic routes of ke y inte rme diate compound 16 .
鍵 中 間 体 16 の 合 成 は 、光 学 活 性 体 (2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 を 有
す る ア ル デ ヒ ド 40 と ヘ テ ロ ア リ ー ル を 含 む ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22 と の Wittig 反 応 に よ
17
り 構 築 す る こ と と し た 。ま た 、光 学 活 性 ユ ニ ッ ト を 持 つ ア ル デ ヒ ド 40 は 、そ の 構 造
が 有 す る 対 称 性 に 注 目 し 、安 価 に 市 販 さ れ て い る 2-メ チ ル -2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ
オ ー ル の N-Boc 保 護 体 1 8 を 出 発 原 料 と し た 不 斉 非 対 称 化 反 応 と 、 続 く 酸 化 反 応 に
よ り 合 成 可 能 と 考 え た 。 当 時 、 1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル の 不 斉 非 対 称 化 反 応 に つ い て
は 、 2-モ ノ 置 換 体 に 対 す る 酵 素 を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 の 合 成 例 は 多 く 存 在 し て
いたが
40)
、 2,2-二 置 換 体 に 対 す る 報 告 例 は あ ま り な か っ た 。 4 1 ) そ こ で 、 当 時 報 告 さ
れ て い た 中 か ら 、 2-モ ノ 置 換 体 で あ る 2-ア ミ ノ 置 換 体 1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル に 対 す
る酵素を用いた不斉非対称化反応
4 0 i, j)
に 注 目 し 、目 的 と す る 不 斉 非 対 称 化 反 応 の 検
討を開始した。
初 め に 、 基 質 で あ る 2-メ チ ル -2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル の N-Boc 保 護 体 18
に対し、溶媒としてジイソプロピルエーテル、アシル化剤としてヘキサン酸ビニル
を使用し、各種リパーゼ存在下、室温で 3 時間反応させた場合のモノエステル体
(R)-17 a へ の 変 換 に つ い て 検 討 し た ( Table 2-2)。
Table 2-2.
a
b
c
As ymme t ri c re act i on s of 18 with Lipase ( 1) . a
E ach re ac t ion w as p e rfo rm ed fo r thr e e hou rs and th e d et a ils a re shown in expe r im enta l se ct ion .
P roduct y ie lds w e re th e iso lat ed y ie ld s .
Th e enan t iom e r ic ex ces s va lu es o f th e p roduc ts w er e m e asu red by ch ira l HP LC c olum n .
18
その結果、用いるリパーゼによって収率、光学純度は大きく変化することが判明
し 、 Pseudo mona s 種 由 来 の 固 定 化 リ パ ー ゼ が 最 良 の 結 果 を 与 え 、 目 的 と す る R 体
(R)-17 a が 88%収 率 、 89%ee で 得 ら れ て き た ( E ntry 1-6)。 一 方 、 ほ と ん ど の リ パ ー
ゼ が 目 的 と す る R 体 を 主 生 成 物 と し て 与 え た の に 対 し 、Mu co r java nicus 由 来 の リ パ
ー ゼ と CHI RAZY ME を 用 い た 場 合 に は 、今 ま で と は 逆 の エ ナ ン チ オ マ ー で あ る S 体
を 主 生 成 物 と し て 与 え る こ と が 判 明 し た 。こ の CHI RAZYME を 用 い た 反 応 と 、得 ら
れ る S 体 の 応 用 例 に つ い て は 、後 ほ ど 紹 介 す る 。な お 、(R)-17a の 絶 対 配 置 と 光 学 純
度 の 確 認 は 、 Sche me 2-3 に 示 す 方 法 に よ り 既 知 化 合 物 で あ る 41 4 2 ) へ 導 い た 後 、 比
旋 光 度 の 比 較 、 及 び 、 キ ラ ル HPLC 分 析 に よ り 決 定 し て い る 。
Sc he me 2-3 . Re a ge nt and condi tions: ( a) PCC, M S4A, CH 2 Cl 2 ; ( b) Ph 3 PCH 3 Br,
t -BuOK, T HF; ( c) aq. N aOH, M e OH.
続 い て 、先 の 検 討 で 最 も 良 い 結 果 を 与 え た Pseudomona s sp.か ら 得 ら れ た 固 定 化 リ
パ ー ゼ を 用 い 、 ア シ ル 化 剤 と 溶 媒 に つ い て 検 討 を 行 っ た ( Table 2-3 )。
19
Table 2-3. Asymme t ri c re act i on s of 18 with Lipase ( 2) . a
a
b
c
E ach re ac t ion w as p e rfo rm ed fo r thr e e hou rs and th e d et a ils a re shown in expe r im enta l se ct ion .
P roduct y ie lds w e re th e iso lat ed y ie ld s .
Th e enan t iom e r ic ex ces s va lu es o f th e p roduc ts w er e m e asu red by ch ira l HP LC c olum n .
各種溶媒について検討した結果、収率、選択性に劇的な変化は見られず、初期条
件 の 収 率 、選 択 性 を 共 に 上 回 る 条 件 を 見 出 す こ と は で き な か っ た( Entry 1-8)。す な
わち、溶媒としてジクロロメタンを用いた場合には、収率は向上したが、選択性が
減 弱 す る 結 果 と な り( E nt ry 7)、te rt -ブ チ ル メ チ ル エ ー テ ル は 良 好 な 収 率 、選 択 性 で
目的物を与えたが、初期条件(ジイソプロピルエーテル)の結果を上回るものでは
な か っ た ( Ent ry 2, 3)。
続いて使用するアシル化剤の検討を行った。その結果、用いるビニルエステルの
ア ル キ ル 側 鎖 長 に よ り 収 率 、選 択 性 は 大 き く 影 響 を 受 け る こ と が 判 明 し た 。 す な わ
ち、側鎖長として炭素数が 6 つであるヘキサン酸ビニルが収率、選択性、共に最良
値を与え、ヘキサン酸より長い側鎖や、短い側鎖を持つビニルエステルでは収率、
選 択 性 、 共 に 減 弱 す る 結 果 と な っ た ( E ntr y 2 vs 9 -13)。
さ ら に 、 反 応 時 間 が 生 成 物 の 立 体 選 択 性 に 与 え る 影 響 に つ い て 調 べ た 。 Table 2-4
20
に は 、溶 媒 と し て ジ イ ソ プ ロ ピ ル エ ー テ ル と ほ ぼ 同 等 の 結 果 を 与 え た tert -ブ チ ル メ
チルエーテルを使用した際の結果を示している。その結果、本反応は非常に早く進
行 し て い る こ と が 判 明 し 、反 応 開 始 後 1 時 間 と い う 短 い 時 間 で も 、 3、 4 時 間 反 応 さ
せ た 場 合 と 収 率 、 選 択 性 共 に 同 等 の 結 果 が 得 ら れ た ( E ntry 1-3)。 一 方 で 、 8 時 間 反
応 さ せ た 場 合 に は 、ジ エ ス テ ル 体 の 増 加 に 伴 う ( R)-17 a の 収 率 低 下 に 加 え 、立 体 選 択
性の低下も認められ、その減少値は時間経過と共に増加していくことが判明した
( Entry 4,5)。反 応 時 間 が 長 く な る こ と に よ る 立 体 選 択 性 の 低 下 に つ い て は 、一 度 生
成 し た ( R)- 17a の 一 部 が 、 本 反 応 条 件 下 に お い て ア シ ル 転 位 を 起 こ す こ と が 原 因 と
考 え ら れ る 。な お 、一 度 単 離 し た (R)-17 a は 比 較 的 安 定 に 存 在 し 、冷 凍 保 存 条 件 下 で
は、1 週間後でも、その光学純度を維持することが判明している。
Table 2-4. Asymme t ri c re act i on s of 18 with Lipase ( 3) .
a
b
P roduct y ie lds we re th e iso lat ed y ie ld s .
Th e enan t iom e r ic ex ces s va lu es o f th e p roduc ts w er e m e asur ed by ch ira l HP LC c olum n .
上記検討により得られた最適条件は、2 位置換基がメチル基に限定されるもので
は な く 、 原 料 と し て 2-エ チ ル 体 を 用 い た 場 合 に も 問 題 な く 進 行 し た 。 す な わ ち 、 2メ チ ル 体 18 の 代 わ り に 2-エ チ ル -2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル の N-Boc 体 42 を 出
発原料に用いて、上記検討により得られた最適条件に付したところ、メチル体より
も 高 い 選 択 性 で ア シ ル 化 反 応 が 進 行 し 、目 的 物 で あ る R 体 (R)-43 が 87%収 率 、93%ee
で 得 ら れ た ( Sche me 2-4)。
21
Sc he me 2-4 .
An asymme t ri c re action of compound 42 with i mmobilize d lipase
from Pseudomona s sp.
さらに、本酵素反応は逆の立体である S 体合成にも有効であった。すなわち、先
の 検 討 時 、 CHI RAZYME を 用 い た 場 合 に 得 ら れ る 化 合 物 の 立 体 が 逆 転 し た こ と に 注
目 し ( Tabl e 1, E nt ry 8)、 収 率 、 選 択 性 の 向 上 を 目 的 と し て 条 件 検 討 を 行 っ た 結 果 、
ア シ ル 化 剤 に ブ タ ン 酸 ビ ニ ル を 用 い 、溶 媒 と し て tert -ブ チ ル メ チ ル エ ー テ ル を 用 い
る こ と で 、 S 体 (S)-44 の 収 率 、 選 択 性 を そ れ ぞ れ 66%収 率 、 89%ee ま で 向 上 さ せ る
こ と に 成 功 し た ( Sche me 2-5)。
Sc he me 2-5 . An asymme t ri c re action of compound 18 with CHI RAZY M E L-2.
第 3節
S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 中 間 体 合 成
酵 素 反 応 に よ り 得 ら れ た 光 学 活 性 ア ル コ ー ル 体 ( R)-17 a か ら 鍵 中 間 体 16 へ の 合 成
は Sche me 2-6 に 従 い 実 施 し た 。 4 3 ) ま ず 、 R 体 の ア ル コ ー ル ( R)-17 a を PCC 酸 化 し 、
ア ル デ ヒ ド 体 40 a を 得 た 後 、 40 a に 対 し 、 別 途 ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド か ら 調 製 し
た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22 と tert -BuOK を 用 い た Wittig 反 応 を 行 う こ と で 45 を ジ ア ス レ
テ オ 混 合 物 と し て 得 た 。45 の エ ス テ ル 部 位 に 対 し 、水 酸 化 ナ ト リ ウ ム を 用 い た ア ル
カ リ 加 水 分 解 を 行 っ た 後 、 続 け て te rt -BuOK で 処 理 す る こ と で 速 や か に 分 子 内 環 化
反 応 が 進 行 し 、 オ キ サ ゾ リ ジ ノ ン 体 46 が 得 ら れ た 。 ジ ア ス レ テ オ 混 合 物 46 の オ レ
22
フ ィ ン 部 位 は メ タ ノ ー ル 中 、水 素 雰 囲 気 下 、Pd-C を 用 い て 接 触 還 元 し 、還 元 体 で あ
る 30 へ と 変 換 し た 。 ま た 、 得 ら れ た 30 の 光 学 純 度 向 上 は 、 以 下 に 示 す 再 結 晶 操 作
により達成した。まず、オキサゾリジノン環をアルカリ加水分解し、アミノアルコ
ー ル 体 へ と 変 換 し た 後 、D -( -) -酒 石 酸 を 加 え て 有 機 塩 と し た 。得 ら れ た 有 機 塩 を エ タ
ノ ー ル 、 水 の 混 合 溶 媒 中 で 再 結 晶 す る こ と に よ り 、 99%ee 以 上 の 光 学 純 度 を 有 す る
ア ミ ノ ア ル コ ー ル 中 間 体 16 を 得 る こ と に 成 功 し た 。
Sc he me 2-6 . Re age nt and Condit i ons: ( a) PCC, MS4A, CH 2 Cl 2 , 95%; ( b) 22 , t -BuOK,
T HF, 96-98%; ( c) N aO H aq., T HF, Me OH; ( d) t- BuOK, T HF, 81 -100% ( 2ste ps); (e)
H 2 , 10% Pd-C, M e OH, 78-91%; ( f) KO H aq., T HF, Me OH; ( g) D -( -) -tartaric acid,
EtOH; ( h) Re cr yst al li z ati on from E tOH and H 2 O, 38-65% ( 3ste ps) .
な お 、 16 の 光 学 純 度 は 、 Sche me 2-7 に 従 っ て 対 応 す る オ キ サ ゾ リ ジ ノ ン 体 30 へ
と 導 い た 後 、 キ ラ ル HPLC 分 析 を 行 う こ と に よ り 決 定 し て い る 。
Sc he me 2-7 . Transformat i on of 16 to 30 for the dete rmination of the ee value .
23
第 4節
-Methyl Garner ’s Al dehyde 合 成
-ア ル キ ル --ア ミ ノ 酸 構 造 は 、fingolimod に 代 表 さ れ る S1P 1 ア ゴ ニ ス ト の 重 要 な
部分骨格として存在しているだけでなく、その他の生理活性物質中にも散見される
構 造 で あ る 。 4 4 ) ま た 、天 然 物 と し て 存 在 す る 化 合 物 は も と よ り 、創 薬 化 学 の 分 野 に
お い て も 、 位 に 導 入 さ れ た ア ル キ ル 基 は 立 体 制 御 効 果 と 、 そ れ に 伴 う 薬 理 活 性 向
上効果を発揮するなど、ペプチド化合物のドラックデザインにおいて重要な役割を
果 た し て い る 。 4 5 ) そ れ に 伴 い 、 -ア ル キ ル --ア ミ ノ 酸 合 成 に つ い て も 、 現 在 ま で
多 く の 反 応 が 開 発 さ れ て い る 。 4 4 ) 中 で も N-Boc-N,O -isoprop ylide ne se rinal( Garne r ’s
Alde hyde)タ イ プ の 中 間 体 19 は 有 用 性 の 高 い キ ラ ル な 合 成 素 子 と し て 認 識 さ れ て お
り 、 Sche me 2-8 に 示 す よ う に 、 様 々 な 化 合 物 の 合 成 に 利 用 さ れ て い る 。 例 え ば 、
Horne r-E mmons 試 薬 よ り 導 か れ る 4 7 や 4 9 は そ れ ぞ れ ( +) -ge ran yllinaloisoc yanide 48 4 6 )
や ent -M anz aci di n C 49 4 7 ) の 合 成 に 利 用 さ れ て い る 他 、銅 触 媒 を 用 い た ア ル ド ー ル 反
応 生 成 物 51 は M anz aci di ne 類 縁 体 52 4 8 ) 合 成 の 前 駆 体 と し て 用 い ら れ て い る 。 さ ら
に、創薬化学の分野でも、その有用性は示されている。例えば、総合失調症治療薬
と し て 報 告 さ れ て い る Trace Ami ne -Associate d Re ce ptor 1 ( TAAR1)ア ゴ ニ ス ト 54 4 9 )
も ア ル デ ヒ ド 19 の 還 元 的 ア ミ ノ 化 反 応 に よ り 生 成 す る 53 を 経 由 し た 手 法 に よ り 合
成 さ れ て い る 。こ の よ う に 重 要 な 中 間 体 と し て 機 能 す る ア ル デ ヒ ド 19 の 調 製 に お い
て、今回の酵素反応により得られる光学活性化合物が利用可能と考え、その合成に
着手した。
Sc he me 2-8 . T he appli cat i ons of alde hyde 19 to se ve ral bioactive compo unds.
24
19 は Sche me 2-9 に 従 い 合 成 し た 。 ま ず 、 ( R)-17 a に 対 し 、 ト リ エ チ ル ア ミ ン 存
在 化 、 ジ ク ロ ロ メ タ ン 中 、 te rt -but yldime thylsilyl chloride (T BDM SCl) を 用 い て 、 一
級水酸基をシリル基で保護した後、続いて、エステル部位をアルカリ加水分解する
こ と で 55 を 得 た 。 得 ら れ た 55 に 対 し 、 ジ ク ロ ロ メ タ ン 中 、 BF 3 -E t 2 O 存 在 下 、 2,2ジメトキシプロパンを作用させ、アミノアルコール部位をアセトナイド化した後、
TBAF を 用 い て シ リ ル 基 の 脱 保 護 を 行 い 、 56 を 4 工 程 73%収 率 で 得 た 。 最 後 に 、 56
の 一 級 水 酸 基 を Swe rn 酸 化 す る こ と で 、 目 的 と す る 19 を 全 5 工 程 で 得 る こ と に 成
功 し た 。さ ら に 、R 体 (R)-17 a に 代 わ り 、シ リ ル 保 護 体 55 と 同 等 に 機 能 す る S 体 (S)-44
を 出 発 原 料 と す る こ と で 、一 級 水 酸 基 の 保 護 を 必 要 と せ ず 、よ り 短 工 程 で 19 の 合 成
が 可 能 で あ っ た 。 す な わ ち 、 CHI RAZI ME を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 に よ り 得 ら れ
た S 体 (S)-44 に 対 し 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 部 位 を ア セ ト ナ イ ド 化 し 、 エ ス テ ル 部 位 を
加 水 分 解 す る こ と で 、 ア ル コ ー ル 体 19 を 全 3 工 程 で 得 る こ と が で き た 。
Sc he me 2-9 . Re a ge nt and Condi ti ons: ( a) T BDPSCl, imidaz ole , CH 2 Cl 2 ; ( b) N aOH
aq., T HF, M e OH; ( c) 2,2-di me t hoxyprop ane , BF 3 -Et 2 O, CH 2 Cl 2 , ( d) T BAF, CH 2 Cl 2 ;
(e) (COCl ) 2 , DM SO, CH 2 Cl 2 t he n E t 3 N.
第 5節
結語
本 章 で は リ パ ー ゼ を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 を 中 心 に 、S1P 1 ア ゴ ニ ス ト の 重 要 な
pharmaco phore と し て 知 ら れ る ( 2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 を 有 す る 各
種ヘテロ環合成中間体の合成法について述べた。本手法は、プロキラルで安価な化
合物を出発原料にできるだけでなく、同一原料から、用いる酵素を変えるだけで両
立体の光学活性化合物を作り分けることが可能である点においても優れた手法であ
ると言える。また、得られた両立体のアルコール化合物を出発原料にすることで、
S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 の 鍵 中 間 体 に 加 え 、様 々 な ペ プ チ ド 合 成 の 合 成 素 子 と し て 利
用 価 値 が 高 い Garne r ’s Al de hyde タ イ プ 化 合 物 も 短 工 程 で の 合 成 が 可 能 で あ っ た 。上
25
記 結 果 は 、 本 手 法 に よ り 得 ら れ る 化 合 物 が 、 様 々 な ,-2 置 換 -ア ミ ノ 酸 構 造 を 有
する天然物合成にも応用可能であることを示唆するものである。
さ ら に 、本 手 法 に よ り 得 ら れ る 光 学 活 性 ア ル コ ー ル 体 56 は 、後 の 5 章 に て 紹 介 す
る 一 般 式 33 で 示 す 化 合 物 群 の 中 間 体 合 成 に も 利 用 可 能 で あ っ た 。 ま た 、 本 反 応 は 、
実験室で行われる比較的小規模の合成から、キログラムスケールの合成まで対応可
能であることも確認済みである。このように、本酵素は様々な化合物の中間体とし
て機能する汎用性が高い化合物を、効率的に合成できる優れた反応であった。
26
第 3章
キ ラ ル な ,-二 置 換 -ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 の
創製
第 1節
序論
第 2 章 で 紹 介 し た よ う に 、私 が 実 施 す る S1P 1 ア ゴ ニ ス ト の 誘 導 体 合 成 に あ た っ て
は 、キ ラ ル な ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ア ル デ ヒ ド 21 と 、各 種 ア リ ー ル メ チ ル
ハ ラ イ ド 23 か ら 調 製 し た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22 と の Witti g 反 応 に よ り 中 間 体 20 を 合
成 し て い た ( Fi gu re 3-1, rout e a)。 2 7, 4 3 , 5 0 )
Sc he me 3-1 . Ret rosynt he sis of ke y inte rme diat e 20 of S1P 1 modulator
( a; pre vi ous route, b; ne w route) .
本手法は中心芳香環のバリエーションを合成する上で非常に有用な手段であり、
効率的な化合物合成を可能にする優れた反応であった。しかしながら、中心環とし
て 電 子 豊 富 な 芳 香 環 を 導 入 す る 際 に は 、対 応 す る ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23 の 不 安
定 さ ゆ え 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22 の 合 成 が 困 難 な 場 合 が あ る な ど の 欠 点 を 有 し て い た 。
例 え ば 、ピ ロ ー ル 環 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22a を 調 製 す る 場 合 、原 料 と な る Nメ チ ル ピ ロ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23a が 不 安 定 で あ り 、 ト リ フ ェ ニ ル ホ ス フ ィ ン と の
反応の際に並行して進行する分解反応がその調製を困難にすることが判明している
(Sche me 3-2, e q. 1)。 4 3b )
27
Sc he me 3-2 . Pre parat i on of t he phosphonium salt be aring a p yrrole ring .
( e q. 1; t radit i onal me thod, e q.2; M annich method)
そ の た め 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22a は 、 ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23a を 経 由 し な い 代
替 法 に よ り 調 製 し て い た 。 す な わ ち 、 N-メ チ ル ピ ロ ー ル 5 8 の M annich 反 応 生 成 物
59 に 対 し 、ヨ ー ド メ タ ン を 反 応 さ せ た 四 級 ア ミ ン 60 を ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23a
に 代 わ る 前 駆 体 と し て 用 い る 手 法 に よ り 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22a の 調 製 が 可 能 で あ っ
た 。 5 1 ) し か し な が ら 、 上 記 合 成 法 に お い て も 、 前 駆 体 60 が 不 安 定 で あ る こ と に 加
え、最終工程で低沸点悪臭物質のトリメチルアミンが発生するなどの問題を抱えて
い た ( Sche me 3-2, e q. 2)。
そこで、それらを補う合成的手法として、極性転換の考えに基づき、アミノアル
コ ー ル 構 造 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 と ヘ テ ロ ア リ ー ル ア ル デ ヒ ド 25 と の 反 応 に
よ る 中 間 体 20 の 調 製 法 に つ い て 検 討 す る こ と に し た ( Sche me 3-1, route b)。
本 章 で は 、 キ ラ ル な ア ミ ノ ア ル コ ー ル 骨 格 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 の 調 製 と 、
そ の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 を 用 い た 各 種 ア ル デ ヒ ド と の Wittig 反 応 に 加 え 、 各 種 生 理
活性物質合成への応用について述べる。
第 2 節
ア ミ ノ ア ル コ ー ル ユ ニ ッ ト を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 と ,-二 置 換 ア ミ ノ
酸構造を有する生理活性物質
ア ミ ノ ア ル コ ー ル ユ ニ ッ ト を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 に つ い て は 、当 時 、Itaya 5 2 ) や
Sibi 5 3 ) ら の グ ル ー プ に よ り 61 や 62 な ど が 報 告 さ れ て お り 、 そ れ ら ホ ス ホ ニ ウ ム 塩
と 各 種 ア ル デ ヒ ド と の 反 応 生 成 物 は 、 非 天 然 の -置 換 ア ミ ノ 酸 合 成 の 前 駆 体 と し て
利 用 さ れ て い た ( Fi gure 3-1)。
28
Figure 3-1 . St ruct ure s of Wi tt i g re a ge nts be aring the te rtiary carbo n ce nte r at
-potiosi n of ami no aci d unit .
-置 換 ア ミ ノ 酸 と 同 様 、,-二 置 換 ア ミ ノ 酸 構 造 は 数 多 く の 生 理 活 性 物 質 中 に 見
ら れ る 部 分 構 造 で あ り 、 Fi gure 3-2 に 示 す よ う に 、 天 然 物 の myriosin 4 5 4 ) や
sphingo fun gi n E 6 3、sphi ngofun gi n F 64 5 5 ) な ど の 部 分 構 造 に 見 ら れ る だ け で な く 、創
薬化学の分野においても、多くの化合物中に重要な部分骨格として存在している。
例 え ば 、 先 に 紹 介 し た fi ngol i mod 6 2 0 , 5 6 ) に 加 え 、 そ の 他 の S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物
2 4 , 5 7, 5 8 )
の 多 く は ,-二 置 換 ア ミ ノ 酸 構 造 を 有 す る も の で あ る 。 さ ら に 、 Roche ら の
グ ル ー プ に よ り 総 合 失 調 症 治 療 薬 と し て 報 告 さ れ て い る Trace Amine -Associate d
Re ce ptor 1 (TAAR1) ア ゴ ニ ス ト 31 4 9 ) も 、 ,-二 置 換 ア ミ ノ 酸 構 造 か ら 誘 導 さ れ る
4,5-dih ydro-1,3-oxaz ol -2-yl a mi ne を 部 分 構 造 に 持 つ こ と が 知 ら れ て い る 。以 上 の よ う
な 背 景 か ら 、今 回 デ ザ イ ン し た 光 学 活 性 四 級 炭 素 を 持 つ ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 の 調 製 と 、
そ の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 を 用 い た ア ル デ ヒ ド と の Wittig 反 応 の 確 立 は 、 私 が 実 施 す
る S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 合 成 に 応 用 で き る だ け で な く 、様 々 な 生 理 活 性 化 合 物 に 対
する新規合成法になりえると考えられた。
29
Figure 3-2 . Bi ol ogi cal a ct i ve compounds, posse ssin g the ,-disubstitute d
-amino al cohol uni t.
第 3節
ホスホニウム塩合成
ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 は 対 応 す る ア ル コ ー ル か ら 、ハ ロ ゲ ン 化 を 経 た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩
化により合成可能と考えた。そこで、ホスホニウム塩の前駆体となる光学活性四級
炭素を有するアルコール体の合成に着手することとした。当初、光学活性アミノア
ルコール骨格の構築は、第 2 章にて述べたリパーゼを用いた不斉非対称化法
27)
を
採 用 し て お り 、そ の 手 法 を 用 い て ア ル コ ー ル 体 56 の 調 製 を 行 っ て い た 。そ の 後 、私
の 所 属 す る 研 究 グ ル ー プ は 、S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 創 薬 研 究 の 中 で 各 種 製 法 検 討 を 実 施 し 、
光 学 活 性 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 中 間 体 の 改 良 合 成 法 を 見 出 す こ と に 成 功 し た 。5 0 ) そ の 反
応 は 、 ア ル コ ー ル 体 56 と 等 価 で あ る 26 の 合 成 法 と し て 、 L -se rine 塩 酸 塩 27 を 出 発
原料とする反応であり、光学純度向上のための再結晶操作を必要とせず、安価で入
手し易い原料を用いることが出来る点で優れていた。そこで、光学活性ユニットの
構 築 法 に は 後 者 の 合 成 法 を 採 用 す る こ と と し 、 Sche me 3-3 に 示 す 手 法 に 従 い ア ル コ
ー ル 体 26 を 合 成 し た 。
30
Sc he me 3-3. Re age nt s and condi tions: ( a) t -BuCHO, E t 3 N, tolue ne, the n ClCO 2 Me ,
Et 3 N , tol ue ne; ( b) MeI , Li HM DS, D MPU , T HF, 82% ( 2ste ps); ( c) LiBH 4 , T HF, 98%.
は じ め に 、安 価 に 市 販 さ れ て い る
L -se rine
塩 酸 塩 27 を 出 発 原 料 と し て 用 い 、ト リ
エチルアミン存在下、ピバルアルデヒドを用いてアミノアルコール部位のアセター
ル環化を行った。その後、ワンポットにてアミノ基のメチルカルバメート保護を行
い 、 既 報 化 合 物 で あ る 66 5 9 ) を 得 た 。 得 ら れ た 66 に 対 し 、 THF 溶 媒 中 、 リ チ ウ ム ヘ
キ サ ジ シ ラ ジ ド ( Li HMD S) と N,N'-ジ メ チ ル プ ロ ピ レ ン 尿 素 ( DM PU) 存 在 下 、 ヨ
ウ 化 メ チ ル を 作 用 さ せ る こ と で 、ア セ ト ナ イ ド 上 に 存 在 す る te rt -ブ チ ル 基 と は 逆 方
向 か ら 選 択 的 に メ チ ル 化 が 進 行 し 、目 的 の 立 体 を 有 す る 光 学 活 性 体 67 を 得 る こ と に
成 功 し た 。 最 後 に 、 水 素 化 ト リ エ チ ル ホ ウ 素 リ チ ウ ム ( LiBH 4 ) を 用 い て 四 級 炭 素
上 の メ チ ル エ ス テ ル 基 の 還 元 を 行 い 、光 学 活 性 ア ル コ ー ル 体 26 を 全 3 工 程 、80%収
率 で 合 成 し た 。 な お 、 26 の 絶 対 配 置 と 光 学 純 度 の 確 認 は 、 後 の Sche me 3-5 に 示 す
方 法 に よ り 、 既 知 化 合 物 で あ る 71 6 0 ) へ 導 い た 後 、 比 旋 光 度 の 比 較 、 及 び 、 キ ラ ル
HPLC 分 析 に よ り 決 定 し て い る 。 6 1 )
次 に 、 得 ら れ た ア ル コ ー ル 体 26 を 用 い て 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 の 合 成 検 討 を 行 っ
た 。各 種 検 討 を 行 っ た が 、26 の 一 級 水 酸 基 を ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 へ と 変 換 す る こ と は 不
可 能 で あ っ た 。す な わ ち 、26 の 一 級 水 酸 基 を ヨ ウ 素 化 す る 反 応 は 低 収 率 な が ら 進 行
し た も の の( 68)、続 く ト リ フ ェ ニ ル ホ ス フ ィ ン を 用 い た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24a へ の 変
換が全く進行しないことが判明した。
31
Sc he me 3-4 . Re age nt s and conditions: ( a) PPh 3 , I 2 , imidaz ole , tolue ne : ( b) PPh 3 ,
DMF.
ト リ フ ェ ニ ル ホ ス フ ィ ン と ヨ ウ 素 体 68 と の 反 応 性 の 低 さ は 、ア ミ ノ ア ル コ ー ル ユ
ニット上の嵩高い置換基(保護基)による立体障害が原因であると考えられた。そ
こで、アミノアルコール上の置換基をより小さな置換基へと変換することとした。
そ の 際 、 当 時 Si bi ら に よ っ て 報 告 さ れ て い た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 62 5 3 ) を 参 考 に し 、 ア
ミノアルコール部位をオキサゾリジノン骨格へと変換することとした。ホスホニウ
ム 塩 24b は Sche me 3-5 に 従 い 合 成 し た 。
Sc he me 3-5 . Re age nt s and condi ti ons: ( a) PhCH 2 Br, N aH, DM F, 88%; (b) p -TsO H
monohydr at e M e OH; ( c) t -BuOK, T HF, 95% ( 2ste ps) ; ( d) H 2 , Pd-C, K 2 CO 3 , EtO H
(91%) ; ( e) i) p -TsCl , pyri di ne , ii ) N aI , ace tone , 78% ( 2ste ps); ( f) PPh 3 , DMF, 57%.
26 に 対 し 、 DM F 中 N aH を 用 い て ベ ン ジ ル ブ ロ ミ ド と 反 応 さ せ る こ と に よ り 、 一
級 水 酸 基 の ベ ン ジ ル 保 護 体 69 を 得 た 後 、 酸 性 条 件 下 で tert -ブ チ ル メ チ リ デ ン を 脱
保 護 し 70 へ と 導 い た 。次 い で 、THF 中 te rt -BuOK を 作 用 し 、オ キ サ ゾ リ ジ ノ ン 環 化
体 71 を 得 た 。得 ら れ た 71 に 対 し 、水 素 雰 囲 気 下 、Pd-C を 用 い た 接 触 還 元 反 応 に て
ベンジル基の脱保護を行い、アミノアルコール上の保護基をオキサゾリジノン骨格
へ と 変 換 し た ア ル コ ー ル 体 72 を 得 た 。 7 2 は 、 ト シ ル 化 を 経 由 し た ヨ ウ 素 化 反 応 を
行 い 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 の 前 駆 体 で あ る ヨ ウ 素 体 7 3 へ と 変 換 し た 。 73 は 予 想 通 り 、
ヨ ウ 素 体 68 よ り 高 い 反 応 性 を 持 ち 、 DMF 中 、 ト リ フ ェ ニ ル ホ ス フ ィ ン と 反 応 さ せ
る こ と で 目 的 の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b を 粉 状 結 晶 と し て 得 る こ と に 成 功 し た 。
32
第 4節
Witt ig 反 応 条 件 検 討
得 ら れ た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b の Wittig 反 応 に つ い て 、基 質 に ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド 25a
を用いた各種条件検討(塩基の種類と等量、イリドの調製温度)を実施した。その
結 果 を Table 3-1 に 示 す 。
Table 3-1 . Wi tt i g re act i ons wit h phosphonium salt 24 b and be nz alde hyd e 25 a.
Entry
1
Condi t i ons
o
n-BuLi , -78 C, 0.5 h,
Phosphonium
Base
Yi eld
salt 24 b (e q.)
(e q.)
(%)
1.2
2.3
1.2
E/Z a
ee( %) b
46
>99/1
N.T. c
1.2
trace
N.T.
N.T.
1.5
2.9
83
>99/1
N.T.
2.0 e
3.9
99
>99/1
98.6
2.0
3.9
N.R. d
--
N.T.
2.0
3.9
80
>99/1
N.T.
2.0
3.9
76
>99/1
N.T.
the n r.t., 2 h
2
n-BuLi , -78 o C, 0.5 h,
the n r.t., 2 h
3
n-BuLi , -78 o C, 0.5 h,
the n r.t., 2 h
4
n-BuLi , -78 o C, 0.5 h,
the n r.t., 2 h
5
n-BuLi , 0 o C, 0.5 h,
the n r.t., 2 h
6
LiHMD S, -78 o C, 0.5 h,
the n r.t., 2 h
7
N aHMD S, -78 o C, 0.5 h,
the n r.t., 2 h
a
Es tab lish ed by 1 H N MR .
Es t im a ted by ch ir a l H PLC com pa red w ith th e cor r espond in g r ac em ic com pound.
c
N . T. = not t est ed .
d
Benz a ld ehyde w as 90% r eco ve red . ( N. R. = no r e act ion)
e
Redundant phosphon ium sa lt 2 4 b w as re co ve r ed as phosph ine ox ide 24 - O in 99% y ie ld (b as ed on th e
theo ret ic a l am ount o f non - r ea ct ed phosphon ium sa lt 24 b a f te r a r e gu la r wor k -up m an ipu lat ion .
b
33
2.3 当 量 の n -BuLi と 1.2 当 量 の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 b を -78℃ で 30 分 間 攪 拌 す る こ
と に よ り 調 製 し た イ リ ド に 対 し 、 -78℃ で 1.0 当 量 の ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド を 加 え た 後 、
室 温 ま で 昇 温 し 、 2 時 間 反 応 さ せ た と こ ろ 46%の 収 率 で 目 的 の オ レ フ ィ ン 体 20 a が
得 ら れ た 。 さ ら に 、 そ の 立 体 は E 体 に 制 御 さ れ て い る こ と が 判 明 し た ( Entry 1)。
な お 、 得 ら れ た オ レ フ ィ ン 体 の E/Z 比 は 1 H NMR 測 定 に よ り 決 定 し て い る 。
ま た 、 そ の 後 の 条 件 検 討 の 結 果 、 Wittig 反 応 を 進 行 さ せ る た め に は 、 ホ ス ホ ニ ウ
ム 塩 に 対 し て 2 当 量 の 塩 基 が 必 須 で あ り ( E ntry 2)、 さ ら に 、 反 応 収 率 は 用 い る ホ
スホニウム塩を増加させることで向上し、2 当量のホスホニウム塩を用いた場合に
99%ま で 向 上 す る こ と が 判 明 し た( E ntr y 3, 4)。な お 、本 反 応 条 件 下 に お い て 光 学 純
度 が 損 な わ れ て い な い こ と は 、 反 応 生 成 物 20a を キ ラ ル カ ラ ム 分 析 す る こ と に よ り
確 認 し て い る 。 ま た 、 本 Wit ti g 反 応 に 使 用 し た 余 剰 の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は そ の ま
ま の 状 態 で の 回 収 は 出 来 ず 、 代 わ り に ホ ス フ ィ ン オ キ サ イ ド 2 4-O が ほ ぼ 定 量 的 に
回 収 さ れ た 。 こ の 回 収 さ れ た ホ ス フ ィ ン オ キ サ イ ド 24-O は ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド 25a
と は 反 応 せ ず 、 残 念 な が ら 再 利 用 は 不 可 能 で あ っ た 。 62)
本反応系において窒素原子のベータ脱離体等の副生成物が生成することなく目的
の 反 応 が 進 行 す る 理 由 に つ い て は 、-78℃ の 極 低 温 下 で は 、オ キ サ ゾ リ ン 環 の 窒 素 原
子 上 の 脱 プ ロ ト ン 化 に よ り 生 じ た ア ニ オ ン ( 74) が 窒 素 原 子 の ベ ー タ 脱 離 ( 75) を
妨 げ る た め と 考 え ら れ る ( Sche me 3-6)。 こ の よ う に 、 イ リ ド 調 製 時 の 温 度 は -78℃
で あ る こ と が 必 須 で あ り 、 0℃ ま で 昇 温 し た 場 合 に は オ レ フ ィ ン 体 が 全 く 得 ら れ ず 、
原 料 の ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド 25a が ほ ぼ 定 量 的 に 回 収 さ れ る と い う 結 果 が 得 ら れ て い る
( Entry 5)。
Sc he me 3-6 . T he i nhi bi ti on of  -elimination from phosphonium salt 24 b
続いて、イリド調製時に用いる塩基について検討を行った。その結果、イリド調
製時の塩基は反応にあまり影響を与えず、ヘキサメチルジシラザンリチウム
( LiHM D S) や ヘ キ サ メ チ ル ジ シ ラ ザ ン ナ ト リ ウ ム ( N aHM D S ) を 用 い た 場 合 に お
いても、若干の収率低下は見られるものの、反応は問題なく進行した。その際、生
成 物 の 立 体 は 、 両 反 応 と も E 体 の み で あ る こ と が 判 明 し た ( E ntry 6, 7 )。
一 般 に 、 Wi t ti g 反 応 の E / Z 選 択 性 に つ い て は 、 反 応 系 か ら リ チ ウ ム イ オ ン を 除 く
と E 選択性が減少
63 )
す る こ と が 知 ら れ て い る 。事 実 、Sibi ら に よ る 報 告 の 中 で も 、
34
イ リ ド 調 製 に リ チ ウ ム を 含 む 塩 基 を 使 用 し た 場 合 に >99/1 で あ っ た E/ Z 選 択 性 が 、
リ チ ウ ム イ オ ン 非 存 在 下 で は 3.2/1 ま で 減 少 す る と さ れ て い る 。 5 3 ) 一 方 、 今 回 私 が
実 施 し た 反 応 系 で は 、リ チ ウ ム イ オ ン が 存 在 し な い 条 件 と し て 、N a HMD S を 塩 基 と
し て 用 い た 場 合 に も E 選 択 性 は 保 持 さ れ 、 99%以 上 の 鏡 像 体 過 剰 率 で E 体 が 得 ら れ
て き た 。 こ の よ う に 、 リ チ ウ ム イ オ ン 非 存 在 下 で も E/ Z 選 択 性 が 保 持 さ れ た 理 由 に
ついては、現在以下のように考えている。まず、ホスホニウム塩より調製されたイ
リ ド 体 76 が ア ル デ ヒ ド に 付 加 し た 中 間 体( 遷 移 状 態 )が 生 成 す る 。生 成 し た 中 間 体
は、四級炭素を含むアミノアルコール部位の立体的な嵩高さの影響を受けることに
よ り 、cis 体 79 が よ り 不 安 定 と な り 、trans 体 80 か ら 反 応 が 進 行 す る 。そ の 結 果 、E
体 (E)-20 が 主 生 成 物 と し て 得 ら れ る も の と 考 え ら れ る ( Sche me 3-7 )。
Sc he me 3-7 . T he me chani sm of t he Wittig re action with phosphoniumylide 76 .
第 5節
基質一般性検討
次 に 、 本 Wit ti g 反 応 の 基 質 一 般 性 を 調 べ る た め 、 上 記 検 討 に よ り 得 ら れ た 最 適 条
件 ( Table 3-1, E nt ry 4) を 用 い て 、 各 種 芳 香 族 、 脂 肪 族 ア ル デ ヒ ド と の 反 応 を 実 施
し た 。 そ の 結 果 を Table 3-2 に 示 す 。
35
Table 3-2 . T he re act i ons of aromat i c and aliphatic alde hyde s with Wittig re a ge nt 24 b .
Entry
Al de hyde
Yi eld
(20 or 46)
(%)
25a
20a
99
>99/1
(Y-CHO, 25)
1
R = H
a
Product
E/Z
b
2
2,4-M e 2
25b
20b
72
>99/1
3
2-CO 2 M e
25c
20c
75
>99/1
4
2,4,6-( OMe) 3
25d
20d
89
>99/1
5
4-N Me 2
25e
20e
63
>99/1
25f
46a
75
>99/1
6
R = H
7
3-Me
25g
20g
99
>99/1
8
3-Br
25h
20h
66
>99/1
9
25i
46b
83
>99/1
10
25j
46c
82
>99/1
11
25 k
20 k
62
71/29
12
25l
20l
62
88/12
a
b
Iso la ted y ie ld .
Es tab lish ed by 1 H N MR .
Table 3-2 に 示 す よ う に 、ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は 各 種 芳 香 族 ア ル デ ヒ ド と 高 い 立 体
選 択 性 を 保 ち つ つ 、 高 収 率 で オ レ フ ィ ン 体 を 与 え る こ と が 判 明 し た ( Entry 1-10)。
ま た 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は 、 そ れ 自 身 が 反 応 点 近 く に 嵩 高 い 四 級 炭 素 を 有 す る に
も 関 わ ら ず 、非 常 に 高 い 反 応 性 を 有 し て い た 。す な わ ち 、オ ル ト 位 に 置 換 基 を 持 ち 、
立体障害が大きく反応性が低いと思われるアルデヒドとの反応も良好に進行し、例
え ば 、 2,4-M e 2 や 2-CO 2 M e な ど の 置 換 基 を 有 す る ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド に 対 し て も 、 そ
れ ぞ れ 72%、75%の 収 率 で オ レ フ ィ ン 体 を 与 え た( E ntry 2, 3)。さ ら に 、2,4,6-( OMe) 3
や 4-NM e 2 な ど の 置 換 基 を 持 つ 電 子 豊 富 な ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド と の 反 応 も 問 題 な く 進
行 し た ( Ent ry 4, 5)。 本 章 、 第 1 節 で 述 べ た よ う に 、 一 般 に 、 オ ル ト 位 や パ ラ 位 に
36
アルコキシ基やアルキルアミノ基などの電子供与性基を有するベンジルハライドは、
そ の 不 安 定 さ 故 、 対 応 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 の 調 製 が 困 難 で あ る 場 合 が 多 い 。 4 3b ) そ
れ ゆ え 、 今 回 私 が 確 立 し た Wi t ti g 反 応 は 、 電 子 豊 富 な 芳 香 環 を 有 す る -置 換 ア ラ ニ
ノ ー ル 合 成 に お い て 、第 2 章 で 紹 介 し た 従 来 の Wittig 反 応 合 成 法 に 対 し て 相 補 的 な
手法と言えるものであった。
反応相手としてのアルデヒドは、ベンズアルデヒドに限定されるものではなく、
チオフェンやフラン、ピロールなどのヘテロ芳香環アルデヒドとの反応も良好な収
率 で 進 行 し た ( E nt r y 6, 9, 10)。 ま た 、 先 の ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド の 場 合 と 同 様 に 、 立 体
障 害 に よ り 反 応 性 低 下 が 予 想 さ れ る 3-Me や 3-Br な ど の 置 換 基 を 有 す る ア ル デ ヒ ド
に も 、 本 反 応 は 適 用 可 能 で あ っ た ( E ntr y 7, 8)。 な お 、 3-Me 体 が 無 置 換 体 と 比 較 し
て収率が向上した理由については、現在のところ定かではないが、アルデヒド自体
の 安 定 性 が 異 な り 、3-Me 体 が よ り 安 定 で あ る こ と が 一 因 で あ る と 考 え て い る 。ま た 、
生 成 物 の 立 体 は 、芳 香 環 の 種 類 に 因 ら ず 、全 て E 体 に 制 御 さ れ て い た( Entry 1-10)。
こ の よ う に 高 い E 体 選 択 性 を 示 し た 理 由 に つ い て は 、現 在 、次 の よ う に 考 え て い る 。
本 反 応 系 の 遷 移 状 態 に お い て は 、 Sche me 3-8 に 示 し た よ う に 、 2 当 量 の 塩 基 に よ
りオキサゾリジノン骨格の窒素原子上がリチオ化された 2 種類のオキサホスフェタ
ン ( 79, 80) と 、 リ チ ウ ム が ア ル デ ヒ ド 側 の 酸 素 原 子 と 配 位 し た ベ タ イ ン 中 間 体 81
が 存 在 す る と 考 え ら れ る 。こ の ベ タ イ ン 中 間 体 81 か ら は 、新 た な 中 間 体 と し て 窒 素
-リ ン 結 合 を 有 す る 82 が 生 成 す る 。 こ の よ う に 、 本 反 応 系 の 遷 移 状 態 に お い て 存 在
する中間体の数が増加し、通常よりも中間体としての安定性が増加する結果、熱力
学 的 支 配 に よ る 生 成 物 で あ る E 体 (E)-20 が 多 く 生 成 す る と 考 え ら れ る 。
37
Sc he me 3-8 . T he rol e of i nt e rme diate compound 82 in our Wittig re action.
ま た 、以 前 報 告 さ れ て い る Si bi ら の 研 究 結 果 と 比 較 し て も 、今 回 行 っ た Wittig 反
応 の E 選 択 性 は 優 れ て い た が 、そ の 原 因 は 用 い た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 の 立 体 的 な 嵩 高 さ
に あ る と 考 え て い る 。Sche me 3-9 に は Sibi ら の 反 応 系 と 今 回 の 反 応 系 に お け る 遷 移
状態を示している。今回の反応系では、オキサゾリジノン骨格部位が四級炭素にな
る こ と に よ り 、立 体 的 な 嵩 高 さ が Sibi ら の 場 合 と 比 較 し て 大 き く な っ て い る 。そ の
結 果 、 平 衡 状 態 に あ る cis 体 79 が 83 よ り 不 安 定 と な り 、 trans 体 8 4 に 比 べ て 81 を
経由して進行する割合が多くなったと考えられる。
Sc he me 3-9 . Transi ti on states of our and Sibi ’s Wittig re action.
38
一 方 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b と 脂 肪 族 ア ル デ ヒ ド の 反 応 で は 、 芳 香 族 ア ル デ ヒ ド に
比 べ 若 干 の 収 率 低 下 が 見 ら れ た ( E ntr y 11, 12)。 こ の 収 率 低 下 は 、 反 応 系 に 存 在 す
る塩基によりアルデヒドの一部がエノラート化してしまったことが原因と考えてい
る 。 ま た 、 生 成 物 の E 選 択 性 も 若 干 低 下 す る 結 果 と な っ た が 、 こ れ は 本 Wittig 反 応
に お い て 速 度 論 的 支 配 の 割 合 が 増 加 し 、c is 体 の 生 成 物 が 増 加 し た た め だ と 考 え ら れ
る 。 な お 、 同 様 の 選 択 性 低 下 は 、 Sibi ら に よ る 実 験 結 果 の 中 に も 見 ら れ て い る 。 5 3 )
第 6節
生理活性物質合成への応用
最 後 に 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b の 有 用 性 拡 大 を 目 的 と し て 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b を
用 い た 各 種 生 理 活 性 物 質 の 合 成 検 討 を 実 施 し た ( Sche me 3-10)。 す な わ ち 、 本 章 、
第 1 節 に 記 載 し た と お り 、,-二 置 換 ア ミ ノ 酸 や ,-二 置 換 ア ル コ ー ル を 分 子 内 に
部分骨格として有する生理活性物質は数多く存在しており
2 0, 2 4 , 5 5 - 5 8 )
、そ れ ら 生 理 活
性 物 質 の 合 成 に 際 し 、 今 回 調 製 し た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b を 用 い た 新 規 合 成 法 を 確 立
す る こ と が で き れ ば 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b の 有 用 性 を 証 明 で き る と 考 え た 。
Sc he me 3 -10. Re age nt s and condi tions: ( a) alde hyde 25 , n -BuLi, T HF, 77 -99%; ( b)
H 2 , Pd-C, M e OH; ( c) KOH, M e OH, H 2 O, 71-90% ( 2ste ps) ; ( d) cyano ge n bromide ,
K 2 CO 3 , T HF, 69%.
私 が 行 う fi ngol i mod を 基 と し た S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 類 縁 体 合 成 に 関 し て は 、Table 3-2
に 示 し た よ う に 、 本 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b が 様 々 な 置 換 ア リ ー ル ア ル デ ヒ ド と 円 滑 に
進 行 す る こ と に よ り 、第 2 章 で 紹 介 し た ヘ テ ロ ア リ ー ル を 含 む 鍵 中 間 体 30 の 効 率 的
な 合 成 と 、迅 速 な SAR 取 得 を 可 能 に す る も の で あ っ た 。す な わ ち 、ホ ス ホ ニ ウ ム 塩
39
24b を チ オ フ ェ ン や フ ラ ン 、ピ ロ ー ル な ど の 各 種 ヘ テ ロ ア リ ー ル ア ル デ ヒ ド( 25f, 25i ,
25j) と 反 応 さ せ る こ と に よ り 得 ら れ る オ レ フ ィ ン 体 ( 20f , 20 i , 20j ) は 、 続 く 接 触
還 元 に よ り 容 易 に 鍵 中 間 体 30a- c 4 3 a ) へ と 導 く こ と が で き 、各 種 誘 導 体 合 成 に 利 用 可
能 で あ っ た ( Sche me 3-6, e q. 1)。
ま た 、 第 2 章 、 第 1 節 で 述 べ た fingolimod の キ ラ ル 類 縁 体 と し て 注 目 さ れ て い る
28 3 9 ) の 合 成 に も 、 本 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は 利 用 可 能 で あ っ た ( Sche me 3-6, e q. 2)。
す な わ ち 、安 価 に 市 販 さ れ て い る ア ル デ ヒ ド 25m と ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b か ら 導 い た
イリドを反応させた後、得られたオレフィン体の還元とアルカリ加水分解を行うこ
と で 目 的 と す る ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 28 を 全 3 工 程 、 70%収 率 で 得 る こ と が で き た 。
さ ら に 、キ ョ ー リ ン 製 薬 に よ り 報 告 さ れ て い る S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 29 5 8 ) に つ い て も 、
ア ル デ ヒ ド 25m の 代 わ り に ア ル デ ヒ ド 25n 6 4 ) を 用 い 、先 と 同 様 の 反 応 を 行 う こ と で 、
容 易 に 29 を 得 る こ と が で き た( Sche me 3-6, e q. 3)。こ の よ う に 、別 途 調 製 し た 各 種
ア ル デ ヒ ド と ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 と の Wittig 反 応 、 続 く 還 元 、 ア ル カ リ 加 水 分 解 反 応 の
全 3 工 程 を 機 械 的 に 実 施 す る こ と に よ り 、 fingolimod か ら 誘 導 さ れ る 様 々 な ア ミ ノ
ア ル コ ー ル 化 合 物 を 簡 便 に 合 成 で き る こ と は 、S1P 1 ア ゴ ニ ス ト の 誘 導 体 展 開 に お け
る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b の 利 便 性 、 有 用 性 を 立 証 す る も の で あ っ た 。
ま た 、本 章 、第 1 節 で 述 べ た TAAR1 ア ゴ ニ ス ト と し て 報 告 さ れ て い る 4,5-dihydro1,3-oxaz ol -2- yl ami ne 構 造 を 有 す る 31 4 9 ) に つ い て も 、 本 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b か ら 容
易 に 誘 導 す る こ と が 可 能 で あ っ た ( Sche me 3-6, e q. 4)。 す な わ ち 、 ベ ン ズ ア ル デ ヒ
ド 25a と の Wi tt i g 反 応 生 成 物 で あ る 20a を 出 発 原 料 と し て 、 接 触 還 元 、 続 く ア ル カ
リ加水分解反応により導かれるアミノアルコール体に対し、ブロモシアンを作用さ
せ る こ と で ア ミ ノ オ キ サ ゾ リ ン 体 31 を 全 3 工 程 、 69%収 率 で 得 る こ と が で き た 。
第 7節
結語
本 章 で は 、S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 活 性 の 発 現 に 重 要 な ユ ニ ッ ト で あ る キ ラ ル な 四 級 炭 素
ア ミ ノ ア ル コ ー ル 骨 格 を 持 つ ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b の 合 成 と 、 そ の 応 用 例 に つ い て 述
べ た 。 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は 、 そ の 調 製 自 体 に 数 工 程 を 要 す る 点 や 、 各 種 ア ル デ ヒ
ド と の Witt i g 反 応 に お い て 、収 率 向 上 の た め に 過 剰 量 の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 が 要 求 さ れ
る点などのデメリットはあるものの、芳香族、脂肪族問わず様々なアルデヒドと反
応し、中~高収率でオレフィン体を与える、優れた反応剤であった。特に、ホスホ
ニ ウ ム 塩 24b は 立 体 障 害 が 大 き い 芳 香 族 ア ル デ ヒ ド や 、 対 応 す る ア リ ー ル メ チ ル ハ
ライドの調製が困難である電子豊富なアリールアルデヒドとも問題なく反応し得る
も の で あ り 、私 が 実 施 す る S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 探 索 研 究 に お け る 合 成 の 効 率 化 に 貢 献 す
る 、 有 用 な 反 応 剤 で あ る こ と が 見 出 さ れ た 。 さ ら に 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は 、 調 製
40
が 容 易 な ア ル デ ヒ ド を そ の 反 応 相 手 と す る コ ン バ ー ジ ェ ン ト 合 成 法 に よ り 、S1P 1 ア
ゴニスト化合物を代表とする各種生理活性物質の合成に利用可能である点において
も優れていた。
ま た 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b と 各 種 芳 香 族 ア ル デ ヒ ド の 反 応 は 、 ジ ア ス テ レ オ 選 択
的 に 進 行 し 、E 体 の み を 生 成 物 と し て 与 え た 。ジ ア ス テ レ オ 選 択 的 な 化 合 物 か ら は 、
そ の 後 の 立 体 選 択 的 な 官 能 基 導 入 が 可 能 で あ り 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 2 4b は 、 ,-二 置
換 -ア ミ ノ 酸 構 造 を 有 す る 多 様 な 天 然 物 合 成 に 応 用 さ れ 得 る 反 応 剤 で あ る と 言 え る 。
41
第 4章
微 生 物 変 換 を 利 用 し た ,-二 置 換 -ア ミ ノ ア ル コ ー ル 化 合 物 の 効 率 的 リ
ン酸エステル化法
第 1節
序論
前 章 ま で に 述 べ て き た よ う に 、S1P 1 ア ゴ ニ ス ト と し て 知 ら れ る ア ミ ノ ア ル コ ー ル
6 や 28 は プ ロ ド ラ ッ ク と し て 機 能 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 す な わ ち 、 6 や 28 自
身 は S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 活 性 を 有 し て お ら ず 、生 体 内 に 投 与 さ れ た 後 、血 中 内 に 存 在 す
る キ ナ ー ゼ に よ り 化 合 物 中 の 一 級 水 酸 基 が リ ン 酸 エ ス テ ル 化 さ れ 、 (S)-6-P や 28-P
へ と 変 換 さ れ て は じ め て 、S1P 1 ア ゴ ニ ス ト と し て 機 能 す る( Figure 4-1)。3 2 , 3 3 ) 一 方 、
S1P 3 へ の ア ゴ ニ ス ト 作 用 は 、副 作 用 で あ る 徐 脈 を 誘 発 す る 可 能 性 が 強 く 示 唆 さ れ て
おり
22)
、各 化 合 物 の S1P 受 容 体 選 択 性 は 化 合 物 を 選 抜 す る 上 で 非 常 に 重 要 な 評 価 基
準 で あ る 。 そ れ に 伴 い 、 S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 探 索 研 究 に お い て は 、 S1P 受 容 体 ア ゴ ニ ス
ト活性測定用にリン酸エステル体を別途合成することが必須であった。
Figure 4-1 . Phosphoryl at i on of amino alcohol compounds ( 6 and 2 8) le ad to
biological l y act i ve compounds ( (S)-6-P and 28-P ).
42
Fingolimod 6 を 含 め た S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 研 究 の 進 展 に 伴 い 、親 化 合 物 で あ る ア ミ ノ
アルコール体から活性本体であるリン酸エステル体への製法検討は、今日まで、多
く の グ ル ー プ に よ り 実 施 さ れ て い る 。 6 5 - 6 7 ) Sche me 4-1 に は 、 そ の 一 例 と し て 、
fingolimod 6 と 光 学 活 性 な S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 28 の ア ミ ノ 保 護 体 を 出 発 原 料 に し
た場合のリン酸エステル体の合成法を示している。一般的なリン酸エステルユニッ
ト の 導 入 法 と し て は 、 eq. 1 3 9b ) 、 e q. 2 6 5 ) や e q. 4 6 7 ) に 示 し た よ う に 、 分 子 内 に 存 在 す
る一級水酸基に対して三価のリン酸化試薬を反応させた後、酸化して目的の五価リ
ン 酸 エ ス テ ル 体 へ と 導 く 手 法 が 挙 げ ら れ る 。 そ の 他 に も 、 e q. 3 に 示 し た よ う に 、 5
価のリン試薬を用いた、酸化反応が不要でより直接的な合成法
66)
も開発されてい
る。上記方法は、様々なアルコール体を出発原料とし、比較的短工程で目的のリン
酸エステル体へと導くことが出来る優れた合成法であった。しかしながら、いずれ
の方法も、分子内に存在するリン試薬との反応点(一級水酸基)以外の反応性官能
基(アミノ基など)の保護、脱保護が必須であり、多検体のスクリーニングを実施
する際には、より直接的で簡便な手法が望まれていた。
Sc he me 4- 1. Che mi cal synt he ti c me thods of amino alcohol compou nds to war d
phosphoryl at e d compounds.
一方、私は通常の化学反応では達成し難い有力な合成法の一つとして、酵素や微
生物などの生体触媒を化合物合成に応用する研究を行ってきた。中でも、第 2 章で
43
述 べ た よ う に 、酵 素 を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 は S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 誘 導 体 合 成 に お い
て、高付加価値原料である光学活性アルコールを簡便に得るための非常に有力なツ
ー ル と な り 得 る も の で あ っ た 。2 7 ) 一 般 に 、微 生 物 は 基 質 認 識 力 を 利 用 し た 代 謝 反 応
により化合物を変換する能力を持つため、その変換に際しては、分子内に存在する
反応点以外の反応性官能基の保護を必要としない場合が多いことが知られている。
38)
そ こ で 、こ の よ う な 特 徴 を 持 つ 微 生 物 反 応 に 注 目 し 、S1P 1 ア ゴ ニ ス ト の 親 化 合 物
であるアミノアルコール体から活性本体であるリン酸エステル体への効率的な合成
法確立のため、微生物を利用した変換反応について検討を行うこととした。
本章では、親化合物(アミノアルコール体)から活性本体(リン酸エステル体)
への直接的な変換を可能にする微生物の探索と、それにより確立した微生物変換法
を 用 い た S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 探 索 研 究 に お け る 多 検 体 ス ク リ ー ニ ン グ 法 の 構 築 に つ い
て述べる。
第 2節
鍵中間体を用いたアミノアルコール体合成
第 2 章 で も 紹 介 し た よ う に 、 fi ngolimod 6 を 基 に し た 構 造 変 換 の 結 果 、 一 般 式 14
に 示 し た よ う な 化 合 物 群 に 、S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 作 用 に 基 づ く 強 力 な 免 疫 抑 制 作 用 が 認
め ら れ て い る 。 中 で も 、 中 心 環 と し て ピ ロ ー ル 環 を 有 し 、 側 鎖 と し て 5-フ ェ ニ ル ペ
ン タ ノ イ ル 基 を 持 つ 32 は 、 動 物 モ デ ル を 用 い た 各 種 実 験 に よ り 、 非 常 に 強 力 な in
vivo 薬 効 を 有 す る こ と が 明 ら か と な っ て い る ( Sche me 4-2)。
Sc he me 4-2. Che mi cal modi fi cation of fingomiod 6 to pote nt active pyyrole
compound 32 .
44
す な わ ち 、32 は 臓 器 移 植 時 の 免 疫 抑 制 モ デ ル の 一 つ で あ る ラ ッ ト HvGR 試 験 に お
け る ID 5 0 値 が 0.094 mg/ k g で あ っ た こ と に 加 え 、 慢 性 関 節 リ ウ マ チ モ デ ル の 一 つ で
あ る ア ジ ュ バ ン ト 関 節 炎 試 験 に お い て も 、 そ の ID 5 0 値 は 0.013 mg/k g で あ り 、
fingolimod 6 の 活 性 を 凌 駕 す る も の で あ っ た 。 そ こ で 、 こ の 強 力 な 薬 効 を 示 し た 32
を反応基質として選定し、リン酸エステル体への微生物変換反応の検討を行うこと
とした。
反 応 基 質 と し て 使 用 す る 32 は 、第 2 章 で 紹 介 し た 鍵 中 間 体 16 b を 出 発 原 料 と し 、
Sche me 4-3 に 従 い 合 成 し た 。 2 4, 4 3 )
Sc he me 4-3 . Re age nt s and conditions: ( a) aq. N aOH, CH 2 Cl 2 , the n Ac 2 O, Et 3 N ,
DM AP, CH 2 Cl 2 , 100%; ( b) 93 , DM AP, tolue ne , 45%; ( c) i) LiOH, T HF, Me OH,
H 2 O, 100%; i i) HCl -di oxane , Me OH, 79% ( 2ste ps) .
ま ず 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル の シ ュ ウ 酸 塩 16b を 脱 塩 し た 後 、 ジ ク ロ ロ メ タ ン 中 、 ト
リエチルアミン存在下、無水酢酸を用いて水酸基とアミノ基のアセチル化を同時に
行 い 、ジ ア セ チ ル 体 92 を 得 た 。続 く 、ピ ロ ー ル 環 5 位 の ア シ ル 化 は 、ル イ ス 酸 を 用
い た Frie del -Craft s 型 の 反 応 で は 重 合 反 応 が 進 行 す る の み で 、目 的 と す る ア シ ル 体 は
全く得られなかったが、その後の条件検討により、塩基性条件において目的のアシ
ル 化 反 応 が 進 行 す る こ と が 判 明 し た 。 6 8 ) す な わ ち 、 92 に 対 し 、 ト ル エ ン 中 、 酸 ク
ロ リ ド 93 を 加 え 、 過 剰 量 の ジ メ チ ル ア ミ ノ ピ リ ジ ン ( DM AP) 存 在 下 、 110℃ に て
加熱処理することで、ピロール環 5 位にアシル化が進行した後、さらにもう一分子
の 酸 ク ロ リ ド 93 が 付 加 し た エ ノ ー ル エ ス テ ル 体 94 が 得 ら れ て き た 。 な お 、 エ ノ ー
ル エ ス テ ル 体 94 の 安 定 性 は 高 く 、シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ る 単 離
精製が可能であった。目的のアシル化反応は進行するようになったものの、本反応
45
は 収 率 が 50%程 度 に と ど ま る こ と や 、 ア シ ル 化 に 続 い て エ ノ ー ル エ ス テ ル 化 反 応 が
進行するために過剰の酸クロリドが必要となる等の問題が残されていた。これらの
問題点については、その後、私の所属する研究グループにより製法改良が行われ、
本アシル化反応における過剰反応を抑制し、収率を向上させる条件を見出すことに
成 功 し て い る 。 4 3 b , 6 9 ) 最 後 に 、 ア ル カ リ 加 水 分 解 に よ り 94 の エ ノ ー ル エ ス テ ル 基 と
二 つ の ア シ ル 基 を 同 時 に 除 去 し た 後 、 塩 酸 塩 と し て 目 的 の ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 32
を得た。
第 3節
化学的リン酸エステル体合成法
続 い て 、 Sche me 4-4 に 従 い 、 親 化 合 物 で あ る ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 32 か ら リ ン 酸
エ ス テ ル 体 32-P へ の 合 成 を 行 っ た 。
Sc he me 4-4 . Re age nt s and conditions: ( a) Boc 2 O, N Et 3 , CH 2 Cl 2 ;
(b) ( All yl O) 2 PN( i -Pr) 2 , t et raz ole , AcOE t, H 2 O; ( c) t -BuOOH, CH 2 C l 2 , 67% ( 3
ste ps); ( d) Pd(PPh 3 ) 4 , pyrrol i di ne , CH 3 CN; ( e) T FA, CH 2 Cl 2 , 51% ( 2 ste ps) .
リン酸エステルユニット導入は、既知合成法に従い、三価のリン試薬を用いて実
施 し た 。 ま ず 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 32 の ア ミ ノ 基 を Boc 基 で 保 護 し た 後 ( 95)、 テ
ト ラ ゾ ー ル 存 在 下 、三 価 の リ ン 試 薬 で あ る ジ ア リ ル N,N-ジ イ ソ プ ロ ピ ル ホ ス ホ ラ ミ
ダ イ ト( (All yl O) 2 PN( i -Pr) 2 )を 反 応 さ せ た 。続 い て te rt -BuOOH を 用 い た 酸 化 反 応 を
行 い 、リ ン 酸 エ ス テ ル 上 の 水 酸 基 が ア リ ル 基 で 保 護 さ れ た リ ン 酸 エ ス テ ル 体 96 を 得
た 。得 ら れ た 96 に 対 し 、ア セ ト ニ ト リ ル 中 、テ ト ラ キ ス ト リ フ ェ ニ ル ホ ス フ ィ ン 存
在下、ピロリジンを作用させることでリン酸エステル上の二つのアリル基を除去し
た 後 、最 後 に TFA を 用 い て ア ミ ノ 基 上 の Boc 基 の 脱 保 護 を 行 い 、目 的 の リ ン 酸 エ ス
テ ル 体 32-P を 得 た 。
46
第 4節
微生物を利用したリン酸エステル化法
本章、第 1 節でも述べたように、上記した三価のリン酸化試薬を用いた化学的リ
ン酸エステル合成法は、収率良く反応は進行するものの、その過程においてアミノ
基やリン酸エステル上の水酸基の保護を必要とするものであった。そのため、従来
のリン酸エステル体合成法は、構造が異なる多検体のスクリーニングが必要な探索
段階においては効率が良い方法とは言えず、未だ改良の余地が残された方法であっ
た。そこで、この多段階合成をより簡便に行う方法として、微生物を用いた直接的
変換反応に注目した。
微生物変換とは、微生物の持つ代謝能を化合物変換に利用する反応であり、古く
から光学活性中間体を含む天然物合成や、生体内代謝産物の合成などに応用されて
い る 。 27) 近 年 、 創 薬 化 学 に お け る 光 学 活 性 化 合 物 構 造 の 複 雑 化 、 多 様 化 に よ り 、
微生物を利用した化合物合成の需要は増加傾向にあり、多くの企業、研究機関で活
発 に 研 究 が 行 わ れ て い る 分 野 で あ る 。7 0 ) 中 で も 、通 常 の 化 学 合 成 で は 取 得 困 難 な 化
合物の代替合成法としての価値は非常に高く、例えば、三共(現第一三共)から市
販 さ れ て い る Pravast ati n 99 の 発 見 、 合 成 に お い て は 、 Penic illium c itrinum や
Streptmyc e s carboph i lus な ど の 菌 類 が 非 常 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て お り 、実 際 に 、放
線 菌 の 一 種 で あ る Strept my ce s ca rboph ilu s を 利 用 し た 微 生 物 変 換 反 応 は Pravastatin
99 の 工 業 的 合 成 に も 応 用 さ れ て い る ( Sche me 4-5)。 7 1 )
Sc he me 4-5 . Synthe tic route of Pravastatin 99 .
微 生 物 を 用 い た リ ン 酸 エ ス テ ル 化 反 応 自 体 は 、こ れ ま で に も い く つ か の 報 告 例
72)
が あ っ た が 、 基 質 に ,-二 置 換 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 類 を 用 い た 微 生 物 リ ン 酸 エ ス テ ル
化反応は報告されていなかった。そこで、実際の化合物を用いた微生物スクリーニ
ングに先立ち、検索ツールを用いたリン酸エステル変換能を有する微生物の調査を
実 施 し た 。 7 3 ) そ の 結 果 、 M L-236B 97 を 基 質 と し た リ ン 酸 エ ス テ ル 変 換 菌 と し て 真
菌 の 一 種 で あ る Ci rc ine ll a 属
74)
を 用 い た 反 応 例 が 見 出 さ れ た ( Sche me 4-6)。 実 際
47
にヒットした変換反応の検証実験を行ったところ、反応完結には 6 日間と非常に長
時 間 を 要 す る も の の 、 約 70%の 収 率 で 目 的 の リ ン 酸 エ ス テ ル 体 100 が 得 ら れ る こ と
が 判 明 し た 。 そ こ で 、 見 出 さ れ た Circ ine lla 属 の 周 辺 菌 体 を 中 心 に 、 各 種 菌 体 に つ
い て 、ア ミ ノ ア ル コ ー ル 化 合 物 32 に 対 す る リ ン 酸 エ ス テ ル 変 換 能 の 検 討 を 開 始 し た 。
Sc he me 4-6 . Phosphoryl ation of 97 with c i rc ine lla mu scae .
第 5節
微生物を用いたアミノアルコール体からのリン酸エステル体合成
ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 32 か ら リ ン 酸 エ ス テ ル 体 32-P へ の 変 換 反 応 に つ い て 、 当 時
所 有 し て い た 放 線 菌 、 糸 状 菌 、 細 菌 か ら な る 106 株 の ス ク リ ー ニ ン グ を 実 施 し た 。
なお、本変換反応では、文献記載の培地条件
74)
にリン酸バッファーを添加するこ
とにより収率の向上が認められたため、以後の検討には見出されたリン酸バッファ
ー 添 加 条 件 を 用 い て い る 。各 種 微 生 物 を 用 い た リ ン 酸 エ ス テ ル 化 反 応 の 結 果 を Table
4-1 に 示 し た 。
48
Table 4-1. Bi ot ransformat i on of 32 to phosphorylate d compou nd 32- P.
a
The con ve rs ion ra t io wa s de te rm in ed by the pe a k - a re a ra t ios of a lcoho l 32 and p hosphate 32 -P u s in g
HP LC. Th e d et a ils a re shown in expe r im enta l se ct ion s.
検 討 の 結 果 、 検 索 ツ ー ル よ り 得 ら れ た 結 果 同 様 、 糸 状 菌 の 多 く ( 特 に Circ ine lla
属 )に リ ン 酸 エ ス テ ル 化 能 が 見 出 さ れ た 。中 で も 、Circ ine lla mu sc ae (N BRC 4457) や
Circine lla um bel lat e ( NBRC 5842) な ど の 菌 体 は 、 そ れ ぞ れ 82% 、 92%と 非 常 に 高 収
率 で 目 的 の リ ン 酸 エ ス テ ル 体 を 与 え た ( Entry 1, 8 )。 検 討 を 行 っ た 菌 体 の 中 で 、
Circine lla muscae (N BRC 4457) が 反 応 性 、 入 手 性 等 を 含 め て 総 合 的 に 優 れ て い た た
め 、 続 い て 、 収 率 、 反 応 性 向 上 を 目 的 と し て Circin ella mu sca e ( N BRC 4457) を 用 い
たリン酸エステル化反応の条件検討を実施した。
ま ず 、菌 体 の 状 態 が 反 応 効 率 に 与 え る 影 響 に つ い て 検 討 し た 。一 般 に 、微 生 物 は 、
その状態により反応性が変化する場合があることが知られており
38)
、今 回 見 出 し た
糸 状 菌 Circin el la mu scae (N BRC 4457) に つ い て も 、そ の 状 態 を 変 化 さ せ る こ と で 反
応性を向上できると考えた。そこで、これまでの液体培養状態での菌体に加え、休
止 菌 体 、凍 結 乾 燥 菌 体 を 用 い た 反 応 に つ い て の 検 討 を 実 施 し た 。そ の 結 果 、Figure 4-2
( a) に 示 し た よ う に 、 培 養 液 を そ の ま ま 変 換 反 応 に 使 用 し た 場 合 ( 液 体 培 養 ) に 比
べ、培養液をリン酸バッファーへと変換して反応(休止菌体)することで反応性が
格段に向上することが判明した。また、菌体を凍結乾燥状態にすることにより、さ
ら に 反 応 性 が 向 上 し た 。 特 に 、 凍 結 乾 燥 状 態 の 菌 体 を 用 い て 、 基 質 濃 度 100  g/ml
で反応させた場合には、当初、反応完結に数日間かかっていた反応を 2 時間まで短
縮させることに成功した。なお、凍結乾燥状態にすることで反応性が向上した理由
49
については、真相は未だ不明であるものの、現在、以下のような可能性を考えてい
る。すなわち、凍結乾燥状態の菌体が反応溶媒であるリン酸バッファーに懸濁し易
く な っ た( 反 応 環 境 場 の 変 化 )、あ る い は 、凍 結 乾 燥 時 、菌 体 の 核 膜 が 破 壊 さ れ 反 応
点 が あ ら わ に な る こ と で 菌 体 自 体 の 反 応 性 が 向 上 し た ( 菌 体 自 体 の 反 応 性 の 変 化 )、
などを考えている。さらに、一度凍結乾燥状態にした菌体は、そのままの状態での
冷 凍 保 存 が 可 能 で あ り( Fi gu re 4-3 ( a))、保 存 後 の 菌 体 は リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー 溶 液 に 懸
濁させることで、直ちに目的とするリン酸化反応に用いることが可能であった
( Figure 4-3 ( b) , ( c))。 こ の よ う に 、 菌 体 を 凍 結 乾 燥 状 態 に す る こ と は 、 反 応 性 向
上 の み な ら ず 、菌 体 の 用 時 調 製 を 不 要 と し 、操 作 性 向 上 に も 貢 献 す る も の で あ っ た 。
Figure 4-2. T he col orati on bet wee n se ve ral conditions and the rate of phosphorylation
from 32 t o 32 -P; ( a) t he st at e s of fun gus, ( b) the pH value of the solve nt, ( c) the
conce ntrati on of 32 .
50
Figure 4 -3. T he fe at ure of fre eze -dr ying a strain, Circin ella mu scae ( N BRC 4457).
ま た 、反 応 溶 液 の pH も リ ン 酸 エ ス テ ル 体 変 換 率 に 影 響 を 与 え る こ と が 判 明 し た 。
す な わ ち 、Fi gu re 4-2( b)に 示 し た よ う に 、反 応 液 の pH 値 に よ り 生 成 す る リ ン 酸 エ ス
テ ル 体 の 変 換 率 は 大 き く 変 動 し 、pH 値 が 6~ 7 の 中 性 領 域 で あ る と き に 最 も 高 い 変 換
率 を 与 え た 。 反 応 温 度 に つ い て も 検 討 を 行 っ た 結 果 、 5℃ か ら 65℃ の 間 で あ れ ば 本
反 応 は 進 行 し 、 最 適 温 度 は 37℃ か ら 45℃ の 間 で あ る こ と を 確 認 し た 。
続 い て 、基 質 濃 度 が 本 微 生 物 反 応 に 与 え る 影 響 に つ い て 検 討 し た( Figure 4-2( c))。
そ の 結 果 、 基 質 濃 度 は 反 応 性 に 影 響 を 与 え 、 基 質 濃 度 が 200 g/ml ま で は 高 い 反 応
性 を 維 持 し た が 、そ れ を 超 え る と 反 応 速 度 が 低 下 し 、400 g/ml の 基 質 濃 度 で 反 応 を
行 っ た 場 合 に は 、 約 80%前 後 の 変 換 率 で 頭 打 ち と な り 、 6 時 間 以 上 反 応 を 行 っ て も
原料は消失しないことが明らかとなった。
以 上 の よ う に 、最 適 な pH、反 応 温 度 、基 質 濃 度 を 見 出 す こ と に 成 功 し 、得 ら れ た
最適条件を本微生物反応に適用することで大幅な反応時間短縮と収率向上を達成し
た。
続いて、得られるリン酸エステル体の精製方法の改良を行うことにした。すなわ
ち、本微生物反応により得られるリン酸エステル体の物性は非常に悪く、その精製
に汎用的精製手法である順相シリカゲルカラム精製法を使用することは困難であっ
た。そのため、化合物精製は、再結晶(または再沈殿)法、もしくは逆相シリカゲ
ルカラム精製法により行う必要があった。再結晶法は、一度条件を決めることがで
きれば大量合成にも適用可能な優れた精製法である一方、溶媒条件選定のために多
くの時間を要し、多検体合成を必要とするスクリーニング段階では不向きな手法で
あると考えられた。そこで、逆相シリカゲルカラム精製を用いた簡便なリン酸エス
テ ル 体 の 精 製 法 確 立 を 目 的 に M ass -Base d fra ction colle ction system を 構 築 す る こ と
に し た 。 7 5 ) 精 製 シ ス テ ム は 以 下 の よ う な 構 成 に し た ( Figure 4-4)。
51
Figure
4 -4. M ass-Base d
fract ion colle ction syste m
for the
purification of
phosphoryl at e d product s.
まず、オートサンプラーを用いてリン酸エステル体の粗生成物の自動インジェク
ションを行い、逆相液体カラムクロマトグラフィーによる精製を行った。分離精製
後 、溶 液 の 一 部 を ス プ リ ッ タ ー に よ り 分 離 し 、質 量 分 析 計 で そ の 分 子 量 を 測 定 し た 。
予め設定した分子量を検出した送液分について、フラクションコレクション装置を
用いた自動分取を行うことで、高純度のリン酸エステル体を得ることに成功した。
なお、本システムでは、事前に入力(設定)した分子量のみを収集することが可能
であり、これにより、同一メソッドでの簡便な自動精製を実現することができた。
今回構築した微生物反応によるリン酸エステル化反応と、続く自動精製システム
を 用 い て 、多 検 体 ス ク リ ー ニ ン グ 合 成 を 実 施 し た 。ま ず 、 32 以 外 の ア ミ ノ ア ル コ ー
ル化合物に対して、今回見出した微生物変換反応に付したところ、本変換反応は高
い汎用性を有し、各種アミノアルコールから対応するリン酸エステル体への変換が
可 能 で あ る こ と が 判 明 し た 。 Fi gure 4-5 に は 、 変 換 反 応 に 使 用 し た ア ミ ノ ア ル コ ー
ル体の一例を示している。このように、リン酸エステル体への変換反応は、中心母
核や側鎖がピロール環やアルキルカルボニル基に限定されず、チオフェン環を有す
る 101 や 、 側 鎖 と し て ア ル キ ニ ル 基 を 有 す る 102 な ど に 対 し て も 有 効 で あ る こ と が
明らかとなった。さらに、微生物反応により得られる粗生成物は、続く自動精製シ
ステムを用いた精製が可能であり、高純度のリン酸エステル体を簡便に得ることに
成功した。
52
Figure 4-5 . Phosphoryl at i on of various amino alcohol compounds with c inin ella
muscae (N BRC 4457) .
第 6節
結語
本 章 で は 、S1P 1 ア ゴ ニ ス ト の 親 化 合 物 で あ る ア ミ ノ ア ル コ ー ル 化 合 物 か ら 活 性 本
体であるリン酸エステル体を合成する手法として、微生物を用いた変換反応につい
て述べた。各種検討の結果、目的とするリン酸エステル化反応を効率的に行う微生
物 と し て 、 糸 状 菌 の 一 種 で あ る Circ ine lla 属 を 見 出 し た 。 中 で も 、 リ ン 酸 化 効 率 、
入 手 性 等 に 優 れ た Ci rc ine lla mu scae( NBRC 4457)を 見 出 す こ と に 成 功 し た 。ま た 、
反 応 溶 液 の pH や 温 度 の 調 節 に 加 え 、 凍 結 乾 燥 状 態 の 菌 体 を 使 用 す る 等 の 改 良 を 行
う こ と で 、本 微 生 物 変 換 反 応 の 反 応 性 、収 率 を 飛 躍 的 に 向 上 さ せ る こ と に 成 功 し た 。
さらに、質量分析計と連動させた液体クロマトグラフィー精製システムと組み合わ
せることで、微生物変換により得られるリン酸エステル体を簡便に精製することが
可能となった。この微生物変換反応と自動精製システムの組み合わせは、様々なア
ミノアルコール体のリン酸エステル体合成に適用可能であり、その結果、多検体ス
クリーニング用の汎用性が高い合成法を構築することに成功した。
今 回 確 立 し た 微 生 物 変 換 反 応 は 、従 来 の 全 4 工 程 を 要 す る 化 学 変 換 法 と 比 較 し て 、
その過程において保護、脱保護を要せず、全 1 工程、高収率で目的とするリン酸エ
ステル体を与える手法であり、合成の効率化に加え、グリーンケミストリーの観点
でも非常に優れた手法であった。微生物を用いた化学変換反応は、本章で紹介した
ような合成の効率化への寄与はもちろんのこと、通常の化学合成では達成し得ない
反 応 の 代 替 手 法 と し て も 、そ の 価 値 は 高 く 評 価 さ れ て い る 。今 回 の 結 果 を 含 む 、様 々
な微生物を用いた反応結果の蓄積と、新たな菌体収集を含むライブラリー構築等を
行 う こ と で 、微 生 物 変 換 反 応 は 更 に 有 用 な 合 成 ツ ー ル と し て 利 用 で き る も の で あ り 、
今後の更なる発展が期待される。
53
第 5章
短 半 減 期 型 S1P 1 ア ゴ ニ ス ト を 志 向 し た エ ー テ ル 化 合 物 の 探 索 研 究
第 1節
序章
第 1 章 で 述 べ た よ う に 、S1P 1 ア ゴ ニ ス ト と し て 働 く fingolimod は こ れ ま で の 免 疫
抑制薬とは全く異なった新規の作用メカニズムに基づいて強力な免疫抑制作用を発
現 す る 薬 剤 で あ る 。一 方 で 、そ の S1P 受 容 体 サ ブ タ イ プ へ の 選 択 性 は 低 く 、主 に S1P 3
アゴニスト活性に基づくと考えられる一過性の徐脈を副作用として有している。
76, 77)
近 年 、fi ngol i mod と そ の 周 辺 化 合 物 を 含 め た S1P 受 容 体 研 究 の 進 展 に 伴 い 、S1P 3
アゴニスト活性を除くだけでは徐脈回避には不十分であるとの報告があるものの
78)
、今なお、多くの研究機関では、徐脈リスクの少ない免疫抑制薬取得のための戦
略 と し て 、 S1P 1 選 択 性 な ア ゴ ニ ス ト 活 性 を 持 つ 化 合 物 の 探 索 研 究 が 行 わ れ て い る 。
79)
私の所属する研究チームも例外ではなく、前章までに紹介した新規合成法を活用
す る こ と で 、 fi ngol i mod 6 の 周 辺 化 合 物 に つ い て 効 率 的 な SAR 取 得 を 実 現 し 、 そ の
結 果 、 一 般 式 14 に 示 す 化 合 物 群 の 中 か ら 、 S1P 3 /S1P 1 選 択 性 に 優 れ 、 徐 脈 リ ス ク の
少 な い S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 で あ る 臨 床 開 発 化 合 物 10( CS-0777) を 獲 得 す る に 至
っ て い る ( Fi gu re 5-1)。 2 4c )
Figure 5 -1. I de nt i fi cat i on of our clinical candidate 10 ( CS -0777) .
臨 床 開 発 化 合 物 10 を 獲 得 す る 一 方 で 、 1 0 と は 異 な る プ ロ フ ァ イ ル を 持 つ 化 合 物
の獲得も求められていた。一般に、創薬研究の探索段階において異なるプロファイ
ルを持つ化合物を複数用意することは、創薬の成功確率向上のために重要な仕事で
あ る 。 そ こ で 、 10 に 代 表 さ れ る ヘ テ ロ 芳 香 環 を 含 む 化 合 物 群 14 と は 異 な る プ ロ フ
ァイルを持つ化合物の獲得を目指し、継続して探索研究を実施した。
研 究 を 継 続 す る に あ た り 、ま ず 、fingolimod が 有 す る 作 用 時 間 の 長 さ に 注 目 し た 。
す な わ ち 、 fi ngol i mod は 非 常 に 長 時 間 体 内 に 貯 留 す る こ と が 判 明 し て お り 、 臨 床 試
験結果によると、ヒトにおける化合物投与後の血中薬物濃度が半減する期間(半減
期 = T 1 / 2 ) は 5.8 日 か ら 7.6 日 と さ れ て い る 。 8 0 ) 同 様 に 、 10 も 比 較 的 長 い 半 減 期 を
持 ち 、 そ の 後 実 施 さ れ た 臨 床 試 験 で の ヒ ト に お け る 半 減 期 は 171 時 間 ( 7.1 日 ) か
54
ら 211 時 間 ( 8.8 日 ) と 、 fi ngol i mod と 同 程 度 の 結 果 で あ っ た 。 8 1 ) 長 時 間 の 薬 効 持
続は望ましい面もある一方で、長すぎる半減期は予期せぬ副作用を生じた際の安全
性担保の観点で懸念が大きく、一般に、適度な半減期を有する化合物が臨床の現場
で は よ り 用 い や す く 、 望 ま し い 薬 剤 と い え る 。 そ こ で 、 fingolimod よ り も 短 く 適 度
な 半 減 期 を 持 ち つ つ 、 fi ngol i mod が 持 つ 副 作 用 ( 一 過 性 の 徐 脈 ) の な い S1P 1 選 択 的
アゴニスト化合物獲得を目的とした探索研究を開始した。
始 め に 、 血 中 半 減 期 短 縮 の た め の 化 合 物 デ ザ イ ン と し て 、 fingolimod の 骨 格 内 に
代 謝 さ れ 易 い 部 分 骨 格 を 意 図 的 に 導 入 す る こ と を 考 え た 。 す な わ ち 、 fingolimod 6
の中心ベンゼン環とアミノアルコール部位を繋ぐメチレン鎖中に酸素原子を導入し、
ア ル キ ル 側 鎖 末 端 に メ チ ル フ ェ ニ ル 基 を 有 す る 33 を 基 本 テ ン プ レ ー ト と し て デ ザ
イ ン し た ( Fi gu re 5-2)。
Figure 5 -2. St ruct ure s of fi ngolimod 6 ,and ne wly de signe d te mplate s 33 .
π 系 隣 接 位 に 存 在 す る 炭 素 は 通 常 の ア ル キ ル 基 と 比 べ CY P に よ る 酸 化 的 代 謝 を 受
けやすく、各種化合物中のベンジル位やアリル位などは、生体内における主代謝部
位 と し て 広 く 認 識 さ れ て い る 。8 2 ) 例 え ば 、生 体 内 に 投 与 さ れ た ト ル エ ン 103 は CYP
に よ り ベ ン ゼ ン 環 上 に 存 在 す る メ チ ル 基 が 酸 化 的 代 謝 を 受 け 、 全 体 の 95%が ベ ン ジ
ル ア ル コ ー ル 104 へ と 変 換 さ れ た 後 、 更 な る 代 謝 、 抱 合 を 経 て 、 最 終 的 に 体 外 へ と
排 出 さ れ る ( Sche me 5-1) 。
Sc he me 5-1 . Me t abolic pathwa y of tolue ne 103.
ベンジル位が代謝されやすいという一般的事例に加え、今回新たにデザインした
化合物の代謝されやすさは、代謝予測ソフト
55
83)
を用いた計算によっても裏付けら
れるものであった。すなわち、専用の代謝予測ソフトを用いて、中心ベンゼン環に
置 換 基 を 持 た な い 基 本 と な る エ ー テ ル 体 33a に つ い て 代 謝 予 測 を 行 っ た と こ ろ 、
様 々 な CYP 種 に よ り 、主 に ベ ン ジ ル 位 が 酸 化 的 代 謝 を 受 け た 代 謝 物( 105、106、107)
を 与 え る と い う 計 算 結 果 が 得 ら れ た ( Sche me 5-2)。
Sc he me 5-2 . Cal cul at e d metabolic pathwa y of our compound 33 a.
ま た 、デ ザ イ ン し た エ ー テ ル 化 合 物 33 は 、薬 物 動 態 面 だ け で な く 、合 成 面 に お い
て も 利 点 が あ る と 考 え ら れ た 。す な わ ち 、33 の 合 成 に お い て は 、既 に そ の 合 成 法 が
確 立 し て い る 光 学 活 性 な ア ル コ ー ル 体 26( or 56)と 、比 較 的 合 成 が 容 易 な ベ ン ジ ル
ア ル コ ー ル か ら 誘 導 さ れ る 108 と の 単 純 な ア ル キ ル 化 反 応 に よ る 合 成 が 可 能 で あ り 、
そ の 結 果 、中 心 ベ ン ゼ ン 環 上 の SAR 情 報 の 早 期 取 得 も 可 能 に な る こ と が 期 待 さ れ た
( Figure 5-3)。
Figure 5 -3. Re t rosynthetic pathwa y of compound 33 .
な お 、 今 回 デ ザ イ ン し た 33 は fingolimod と 比 較 し て 、 極 性 部 位 と 中 心 芳 香 環 の
距離が伸長したものになっているが、類似の化合物は、当時、キョーリン製薬の報
告 の 中 に 存 在 し て い た 。8 4 ) そ の 化 合 物 は 極 性 残 基 と し て ア ミ ノ ジ オ ー ル 構 造 を 持 ち 、
脂溶性側鎖には硫黄原子で繋がれたベンジルエーテル構造を持つ化合物であった
( Figure 5-4)。 詳 細 な デ ー タ の 記 載 は 省 略 す る が 、 社 内 実 験 の 結 果 、 こ の ア ミ ノ ジ
56
オ ー ル 体 109 は 強 い 免 疫 抑 制 活 性 を 持 ち つ つ 、 心 臓 へ の 影 響 が 少 な い こ と が 判 明 し
ていた。上記結果を受け、炭素鎖を伸ばすことによる心臓への毒性改善も期待され
る 化 合 物 と し て エ ー テ ル 化 合 物 33 を デ ザ イ ン す る に 至 っ た 。
Figure 5 -4. S1P 1 agoni st compound 109 with tree carbon le ngth be twee n amino
alcohol moi et y and ce nt e ral be nz e ne ring.
第 2節
エーテル化合物について
実 際 の 誘 導 体 展 開 を 始 め る に あ た り 、 最 も 基 本 的 な 無 置 換 ベ ン ゼ ン 体 33 a の S1P
受 容 体 へ の 選 択 性 、 in v ivo 薬 効 を 測 定 し 、 エ ー テ ル 体 33 の ポ テ ン シ ャ ル を 評 価 す
る こ と と し た 。 化 合 物 の 各 S1P 受 容 体 へ の ア ゴ ニ ス ト 活 性 は 、 対 照 化 合 物 と し て
fingolimod 6 を 用 い 、そ れ ぞ れ の リ ン 酸 エ ス テ ル 体 の S1P 1 と S1P 3 へ の 結 合 活 性 を 測
定
85)
す る こ と に よ り 決 定 し た 。 そ の 結 果 を Table 5-1 に 示 し た 。
Table 5 -1. In vi t ro a goni st -e voke d GTP  S binding of phosphate s of fingolimod 6-P
and ethe r compound 33 a-P t o human S1P 1 and S1P 3
EC 5 0 ( nM) a
Compound
Se le ctivity
S1P 1
S1P 3
(S1P 3 /S1P 1 )
6-P
7.0
2.0
0.29
33a-P
7.0
200
29
a
EC 5 0 is d ef ined as th e m idpo int b et we en the b ind in g or inh ib ito ry ra t io o f t he veh ic le and th e
m ax im um re sponse of the t est com pound .
既 述 し た よ う に 、 fi ngol i mod の リ ン 酸 エ ス テ ル 体 6-P は S1P 受 容 体 へ の 選 択 性 は
な く 、 S1P 3 / S1P 1 選 択 性 は 0.29 倍 で あ っ た 。 一 方 、 今 回 デ ザ イ ン し た エ ー テ ル 化 合
物 33a-P は 、fi ngol i mod と 比 較 し て 、そ の S1P 1 結 合 活 性 は 維 持 し つ つ( EC 5 0 = 7.0 nM)、
S1P 3 結 合 活 性 が 低 下 し て お り ( EC 5 0 = 200 nM )、 そ の 結 果 、 fingolimod よ り も
S1P 3 /S1P 1 選 択 性 に 優 れ 、29 倍 の 選 択 性 を 持 つ 化 合 物 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。
57
続 い て 、 33a の ラ ッ ト in v ivo 薬 効 と そ の 血 中 半 減 期 に つ い て 調 べ た ( Table 5-2)。
Table 5-2. In v ivo profi le s of fi ngolimod 6 and be nz yl compound 33 a.
Rat l ymphope ni a
Compound
Rat HvGR
( % cont rol at 0.1 mg/k g)
(I D 5 0 ; m g/kg) a
T 1 / 2 ( h) b
6
21
0.33
32
33a
40
0.27
7.8
a
I D 5 0 is d et erm ined by r esu lt s o f a t le ast th r ee d if f er ent dos es.
Ha lf - lif e o f ea ch com pound was de te rm in ed by th e conc ent ra t ion of phospha te 6-P or 33 a-P in
plasm a af te r dos in g of com pound 6 or 3 3 a in r ats (p.o . , 1. 0 m g/ kg, n = 2), resp ec t ive ly.
b
Table 5-2 に 示 し た よ う に 、 33 a の 血 中 半 減 期 は 7.8 時 間 で あ り 、 当 初 の 狙 い 通 り
fingolimod 6 よ り 短 く な っ て い る 一 方 で 、 そ の in v ivo 薬 効 は fingol imod 6 と ほ ぼ 同
等 で あ る こ と が 判 明 し た 。 す な わ ち 、 in v ivo 薬 効 の 指 標 の 一 つ で あ る リ ン パ 球 減 少
試 験 に お い て 、33a は 非 常 に 強 力 な 薬 効 を 示 し 、化 合 物 0.1 mg/kg を 皮 下 注 射 投 与 後
4 時 間 の 時 点 で リ ン パ 球 を 40%ま で 減 少 さ せ た 。 さ ら に 、 臓 器 移 植 モ デ ル の 一 つ で
あ る HvGR 試 験 に お い て も 、33a は 強 力 な 抑 制 作 用 を 示 し 、そ の I D 5 0 値 は 0.27 mg/k g
と 、 fingoli mod 6 が 示 し た 0.33 m g/kg と い う 値 を 凌 駕 す る も の で あ っ た 。 以 上 の 結
果 は 、 今 回 デ ザ イ ン し た 33 が 、 in v itro、 in v ivo 両 面 に お い て 高 い ポ テ ン シ ャ ル を
有することを証明するものであった。
第 3節
アミノアルコール体合成
光 学 活 性 中 間 体 56 の 合 成 は 、第 2 章 で 紹 介 し た 酵 素 を 用 い る 不 斉 非 対 称 化 反 応 を
利 用 す る こ と と し 、Sche me 5-4 に 示 す 方 法 に 従 い 実 施 し た 。2 7, 4 3 ) す な わ ち 、第 2 章 、
Sche me 2-8 に 示 し た CHI RAZYME L-2 を 用 い る 方 法 に よ り 、 ア ル コ ー ル 体 56 を 得
た 後 、 以 下 に 示 す 再 結 晶 操 作 に よ り 、 そ の 光 学 純 度 を 向 上 さ せ た 。 ま ず 、 56 の 一 級
水酸基をベンジル保護した後、酸性条件下にて、アセタールが除去されたアミノア
ル コ ー ル 体 112 と し 、そ の 後 、等 量 の D -( -) -酒 石 酸 を 加 え て 1:1 有 機 塩 113 と し た 。
得 ら れ た 113 に 対 し 、 水 を 溶 媒 と し た 再 結 晶 操 作 を 行 う こ と で 、 そ の 鏡 像 体 過 剰 率
を 99%以 上 ま で 上 げ る こ と に 成 功 し た 。 な お 、 113 の 鏡 像 体 過 剰 率 は 、 Sche me 5-5
に 従 っ て オ キ サ ゾ リ ジ ノ ン 体 114 へ と 変 換 し た 後 、HPLC 測 定 を 行 い 決 定 し て い る 。
そ の 後 、113 の ア ミ ノ ア ル コ ー ル 部 位 を ア セ タ ー ル 環 化 と Boc 化 に よ り 保 護 し た 後 、
接触還元により一級水酸基上のベンジル基の脱保護を行い、光学純度の高いアルコ
ー ル 中 間 体 56 を 得 る こ と に 成 功 し た 。
58
Sc he me 5-4 . Re a ge nts and condit ions: ( a) CHI RAZY ME L -2,carrie r- fixe d C3, I yo,
Vi nyl n -but yl at e , t -BuOMe , 66% ( 89%ee) ; ( b) ace tone dimethylace tal, BF 3 -OE t 2 ,
CH 2 Cl 2 ; ( c) N aO H aq., T HF, Me OH, 72% ( 2 ste ps) ; ( d) 4 -Bromobe nz ylbromide , N aH,
DMF, 99%; ( e) T FA, CH 2 Cl 2 , t he n H 2 O, 88%; ( f) D -( -) -Tartaric acid, EtOH, 70%; ( g)
Re cr ystallyz ati on from H 2 O, 70%, 99%ee ; ( h) 1M N aOH aq. the n Boc 2 O, Et 3 N , CH 2 Cl 2 ,
90%; (i) Ace t one di met hyl ace t al , BF 3 -OE t 2 , CH 2 Cl 2 , 94%; (j) H 2 , 10% Pd-C, K 2 CO 3 ,
EtOH, 91%.
Sc he me 5-5 . Synt he si s of oxaz ol ydinone compound to dete rmine the ee value of
compound 113 .
ま た 、光 学 活 性 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 は 、第 3 章 で も 紹 介 し た 改 良 法 で あ る See bach
ア ル キ ル 化 法 に よ っ て も 構 築 可 能 で あ り 、 Sche me 5-6 に 示 す よ う に 、 L -se rine 塩 酸
塩 27 か ら 全 4 工 程 で ア ル コ ー ル 体 26 を 合 成 し 、 鍵 中 間 体 と し て 使 用 し た 。 5 0 )
59
Sc he me 5-6 . Synt he sis of ke y inte rme diate alcohol 26 from 27 .
中 心 ベ ン ゼ ン 環 と 、 続 く 脂 溶 性 側 鎖 の 導 入 は Sche me 5-7 に 示 す 方 法 で 実 施 し た 。
ま ず 、 ア ル コ ー ル 体 26 に 対 し て 、 DMF 中 N aH を 用 い て 、 各 種 置 換 基 を 有 す る 4ブ ロ モ ベ ン ジ ル ハ ラ イ ド を 作 用 さ せ 、 115 を 得 た 。 115 の ブ ロ モ 基 に 対 し 、 n -BuLi
を 用 い た ハ ロ ゲ ン -リ チ ウ ム 交 換 を 行 っ た 後 、 対 応 す る 側 鎖 部 位 を 有 す る Weinre b
amide 116 と 反 応 さ せ 、 117 を 得 た 。 最 後 に 、 117 の ア ミ ノ ア ル コ ー ル 部 位 に 架 か っ
た te rt -ブ チ ル メ チ リ デ ン を p -TsOH を 用 い て 脱 保 護 し た 後 ( 118)、 続 い て 、 水 酸 化
カリウムを用いてアミノ基上のメチルカルバメート基を加水分解し、目的のアミノ
ア ル コ ー ル 体 33 を 得 る こ と に 成 功 し た 。 な お 、 得 ら れ た 33 は 塩 酸 、 ま た は シ ュ ウ
酸 を 用 い て 塩 化 し た 後 、 各 種 in vi vo 試 験 に 使 用 し て い る 。
Sc he me 5-7. Re age nt s and Condit ions; ( a) be nz ylbromide , N aH, DMF, 64 -95%; ( b)
n-BuLi, Wei nre b ami de 116 , T HF, 45-95%; ( c) p -TsOH monoh ydrate , Me OH, 55 -96%;
(d) KO H, E t OH, 90 -100%; (e) HCl or oxalic acid, E tOH, 86 -99%.
ま た 、 26 の 代 わ り に 、 Sche me 5-4 に 示 し た 酵 素 反 応 に よ り 調 製 し た 56 を 光 学 活
性 ア ル コ ー ル 中 間 体 と し て 用 い た 場 合 に は 、 119 の ジ メ チ ル ア セ タ ー ル 基 と Boc 基
の 脱 保 護 は Sche me 5-4( 111 → 112)に 示 す 方 法 に よ り 行 い 、そ の 他 の 反 応 に つ い て
は Sche me 5-7 に 準 じ て 実 施 し た ( Sche me 5-8)。
60
Sc he me 5-8 . Re a ge nt s and condi ti ons: ( a) T FA, CH 2 Cl 2 , the n H 2 O; ( b) HCl or oxalic
acid, E tOH, 50-78% ( 2 ste ps) .
第 4節
リン酸エステル体合成
S1P 受 容 体 ア ゴ ニ ス ト 活 性 の 測 定 に 必 要 な リ ン 酸 エ ス テ ル 体 の 合 成 は 、 第 4 章 、
Sche me 4-4 で 紹 介 し た ル ー ト と ほ ぼ 同 様 な 方 法 で 行 っ た ( Sche me 5-9)。 ま ず 、 33
の ア ミ ノ 基 を all yl chl orofor mat e ( AllocCl) で 保 護 し た 後 、 一 級 水 酸 基 を リ ン 酸 エ ス
テ ル へ と 変 換 し 、 続 く m CPBA を 用 い た 酸 化 反 応 を 行 い 、 五 価 リ ン 酸 エ ス テ ル の ア
リ ル 保 護 体 120 を 得 た 。 最 後 に 、 ア セ ト ニ ト リ ル 中 、 テ ト ラ キ ス ト リ フ ェ ニ ル ホ ス
フィンとピロリジンを用いて、全てのアリル基の脱保護を同時に行うことで目的と
す る リ ン 酸 エ ス テ ル 体 33-P を 得 た 。な お 、本 反 応 は 第 4 章 、Sche me 4-4 で 紹 介 し た
化学的なリン酸エステル体合成法に若干の改良を加えている。改良点の一つは、ア
ミ ノ 基 の 保 護 基 を All oc 基 に す る こ と で 、 そ の 脱 保 護 反 応 を リ ン 酸 エ ス テ ル 水 酸 基
上 の Alloc 基 の 脱 保 護 と 同 時 に 行 う こ と が 可 能 と な っ た 点 で あ る 。 も う 一 点 は 、 リ
ン を 三 価 か ら 五 価 に す る た め の 酸 化 剤 を te rt -BOOH か ら m CPBA へ と 変 更 す る こ と
で若干の収率向上を達成した点である。
Sc he me 5-9 . Re a ge nts and conditions: ( a) AllocCl, KHC O 3 , Ac OE t, H 2 O; ( b)
( AllylO) 2 PN( i -Pr) 2 , t et raz ole ; ( c) m CPBA, CH 2 Cl 2 , 45-88% ( 3 ste ps) ; ( d) Pd(PPh 3 ) 4 ,
pyrrolidi ne , CH 3 CN , 40-73%.
61
第 5節
構 造 活 性 相 関 ( SAR) 研 究
ま ず 、中 心 ベ ン ゼ ン 環 状 の 置 換 基 が S1P 受 容 体 ア ゴ ニ ス ト 活 性 に 及 ぼ す 効 果 に つ
い て 検 討 し た 。 そ の 結 果 を Tabl e 5-3 に 示 す 。
Table 5-3. T he SAR i nformat i on about the substitution of the ce ntral be nz e ne ring .
Entry
Compound
R
EC 5 0 ( nM) a
1
Se le ctivity
S1P 1
S1P 3
(S1P 3 /S1P 1 )
7.0
2.0
0.29
1
6-P
2
33a-P
H
7.0
200
29
3
33b-P
2-Me
3.0
180
60
4
33c-P
3-Me
19.0
>20000
>1052
5
33d-P
2-F
2.8
60
21
6
33e-P
2-Cl
4.0
220
55
7
33f-P
2-E t
2.3
12000
5217
8
33g-P
2,6-M e 2
2.2
340
155
9
33h-P
2,5-M e 2
6.5
>20000
>3077
a
EC 5 0 is d ef ined as th e m idpo int b et we en the b ind in g or inh ib ito ry ra t io o f t he veh ic le and th e
m ax im um re sponse of the t est com pound .
検 討 の 結 果 、 中 心 ベ ン ゼ ン 環 上 の 置 換 基 は 、 そ の 導 入 箇 所 や 大 き さ に よ り S1P 1 、
S1P 3 ア ゴ ニ ス ト 両 活 性 値 に 大 き く 影 響 を 及 ぼ す こ と が 判 明 し た 。 す な わ ち 、 単 純 な
置換基としてメチル基を中心ベンゼン環上に導入したところ、アミノアルコール側
に 対 し 2 位 の 位 置 に メ チ ル 基 を 導 入 し た 33 b-P で は 、 無 置 換 体 33 a-P と 比 較 し て 、
S1P 1 活 性 は 若 干 向 上 し つ つ 、 S1P 3 活 性 の 変 化 は 軽 微 で あ っ た ( E ntry 3)。 一 方 で 、 3
位 に メ チ ル 基 を 導 入 し た 33c-P で は S1P 1 、 S1P 3 両 活 性 共 に 減 弱 す る 結 果 と な っ た
( Entry 4)。
続 い て 、 S1P 1 活 性 向 上 に 効 果 が あ っ た 2 位 の 置 換 位 置 に 注 目 し 、 2 位 の 位 置 に メ
チ ル 基 以 外 の 置 換 基 導 入 を 行 い 、そ の S1P 受 容 体 活 性 へ の 影 響 を 調 べ た 。そ の 結 果 、
検 討 を 行 っ た 全 て の 2 位 置 換 化 合 物 で メ チ ル 基 と 同 様 に S1P 1 活 性 が 向 上 す る こ と が
確 認 さ れ た ( E nt ry 5-7)。 一 方 、 S1P 3 活 性 は 置 換 基 の 種 類 に よ っ て 大 き く 影 響 を 受
62
けることが判明した。すなわち、比較的小さな置換基群であるフルオロ基を有する
33d-P な ど で は 、S1P 3 活 性 に 若 干 の 向 上 傾 向 が 見 ら れ た が( Entry 5 )、よ り 大 き な 置
換 基 の エ チ ル 基 を 導 入 し た 33f-P で は 、 S1P 3 活 性 が 大 幅 に 減 弱 し 、 そ の EC 5 0 値 は
12000 nM で あ っ た ( E nt ry 7)。 こ の よ う に 、 2 位 に 置 換 基 を 導 入 す る こ と で 、 強 力
な S1P 1 活 性 を 維 持 し つ つ 、 高 い S1P 3 /S1P 1 選 択 性 ( S1P 3 /S1P 1 = 5217) を 持 つ 33f-P
を獲得することに成功した。
次 に 、 二 置 換 体 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。 3 位 の 置 換 基 導 入 に よ り S1P 3 活 性 が 減 弱
す る と い う 結 果 ( E nt ry 4) を 基 に 2,5-ジ メ チ ル 体 を デ ザ イ ン し た と こ ろ 、 良 好 な 結
果 を 得 る こ と に 成 功 し た 。 す な わ ち 、 2,5-ジ メ チ ル 体 33h-P は S1P 1 活 性 を 維 持 し つ
つ 、 S1P 3 活 性 が 減 弱 し て お り 、 S1P 3 /S1P 1 選 択 性 が 3077 倍 以 上 に 広 が っ た 化 合 物 で
あ る こ と が 判 明 し た ( E nt ry 8)。 一 方 、 2,6-ジ メ チ ル 体 33g-P は 、 6 位 に 導 入 し た メ
チ ル 基 の 効 果 は 少 な く 、 2 位 モ ノ メ チ ル 体 で あ る 33 a-P と ほ ぼ 同 等 の 結 果 で あ っ た
( Entry 9)。
こ の よ う に 、中 心 ベ ン ゼ ン 環 へ の 置 換 基 導 入 を 行 っ た 結 果 、高 い S1P 1 活 性 を 持 ち
つ つ 、S1P 3 /S1P 1 選 択 性 が 大 き く 向 上 し た 有 望 化 合 物 と し て 、2-エ チ ル 体 33f と 、2,5ジ メ チ ル 体 33h を 獲 得 す る こ と に 成 功 し た 。
続 い て 、 中 心 ベ ン ゼ ン 環 の 2 位 置 換 基 と し て 導 入 し た エ チ ル 基 が 、 S1P 受 容 体 の
ア ゴ ニ ス ト 活 性 に 影 響 を 与 え た 実 験 結 果 に つ い て 、 近 年 報 告 さ れ て い る S1P 1 の X
線結晶構造解析
86)
と 、 そ れ を 基 に し て 作 成 し た S1P 3 の ホ モ ロ ジ ー モ デ ル を 用 い て
検 証 し た 。 Fi gu re 5-5 に は 、 エ チ ル 体 33f-P と S1P 1 と S1P 3 の induced fit docking モ
デ ル を 示 し て お り 、Fi gure 5-6 に は 33f-P と S1P 1 の induce d fit docking モ デ ル に つ い
て、周辺アミノ酸残基により作られる疎水性ポケットを組み合わせた図を示してい
る 。 な お 、 Fi gu re 5-5 に お い て 、 水 色 で 示 し た Le u276 と Val194 は S1P 1 モ デ ル 、 オ
レ ン ジ 色 で 示 し た Phe 263 と I le 194 は S1P 3 モ デ ル に お け る 化 合 物 周 辺 の ア ミ ノ 酸 残
基を示しており、図を見易くする目的で水素原子の表記は省略している。
63
Figure 5-5 . T he docki ng mode l of compound 33f-P into the S1P 1 and S1P 3 mode l.
Figure 5 -6. H ydrophobi c p ocke t in the docking mode l of compound 33f-P in the
S1P 1 model .
64
33f-P と S1P 1 の i nduce d fi t docking モ デ ル を 用 い た 計 算 の 結 果 、Figure 5-5 に 示 し
た よ う に 、 33f-P の リ ン 酸 エ ス テ ル 上 の 水 酸 基 は Tyr29、 Lys34、 Arg120 と の 水 素 結
合 を し て お り 、33f-P の ア ミ ノ 基 は Asn104 と の 水 素 結 合 に 加 え 、Glu121 と の 強 い 静
電 相 互 作 用 を し て い る こ と が 認 め ら れ た 。 以 前 報 告 さ れ て い る bov ine rhodopsin を
用 い た S1P 1 と の X -線 結 晶 構 造 解 析 で は 、 水 酸 基 、 ア ミ ノ 基 を 認 識 し て い る ア ミ ノ
酸 の う ち 、 Arg12 0 と Gl u121 が S1P の 認 識 に 寄 与 し て い る こ と が 確 認 さ れ て お り 、
87a)
こ の 結 果 は 、 今 回 私 が 作 成 し た モ デ ル の 結 果 と 同 じ も の で あ っ た 。 ま た 、 33f-P
に お い て 2 位 に 存 在 す る エ チ ル 基 は S1P 3 モ デ ル に お け る Phe 263( オ レ ン ジ 色 ) と
大 き く 干 渉 す る 一 方 、S1P 1 モ デ ル に お け る Le u276( 水 色 )と は 干 渉 し て い な い こ と
が 判 明 し た 。 さ ら に 、 Fi gure 5-6 に 示 す よ う に 、 S1P 1 モ デ ル に お い て 、 ベ ン ゼ ン 環
上 2 位 に 存 在 す る エ チ ル 基 は Val 194、Le u276、Le u272 か ら 作 ら れ る 疎 水 性 ポ ケ ッ ト
にきれいに格納されていることが明らかとなった。上記解析結果は、エチル基が導
入 さ れ た 33f-P に お い て 、 S1P 3 活 性 が 減 少 す る と 同 時 に 、 S1P 1 活 性 が 向 上 し た こ と
を 合 理 的 に 説 明 し 得 る も の で あ っ た 。 な お 、 今 回 行 っ た S1P 1 と S1P 3 モ デ ル に お け
る Phe 263 と Le u276 に よ る S1P 3 / S1P 1 選 択 性 に つ い て の 考 察 は 、 他 の グ ル ー プ に よ
っ て も 同 様 の 検 討 が 行 わ れ て い る 。 8 7b , c )
また、末端ベンゼン環上の置換基効果についても中心ベンゼン環上の置換基と同
様の検討を行ったが、良好な結果は得られなかった。そのため、中心ベンゼン環上
か ら 伸 び る 側 鎖 と し て は 、 4-メ チ ル フ ェ ニ ル 基 を そ の 末 端 に 持 つ ア ル キ ル 鎖 を 採 用
し 、 そ の 後 の in v ivo 評 価 を 行 っ た 。
In v ivo 評 価 を 行 う に あ た り 、 そ の リ ン 酸 エ ス テ ル 体 が 良 好 な in v itro プ ロ フ ァ イ
ル を 示 し た 33f、 33h に 加 え 、 33a、 33 b、 33e の 計 5 化 合 物 を 選 抜 し 、 ラ ッ ト を 用 い
て 臓 器 移 植 モ デ ル の 1 つ で あ る HvGR 試 験 を 実 施 し た 。薬 効 強 度 は ID 5 0 値 と し て 算
出 し 、 そ の 結 果 を Tabl e 5-4 に 示 し て い る 。 な お 、 薬 効 が 弱 く I D 5 0 値 の 算 出 が 困 難
で あ っ た 化 合 物 に つ い て は 、 ID 5 0 値 の 代 わ り に 1 mg/k g 投 与 時 に お け る 抑 制 率 を 示
している。
65
Table 5-4 . In v ivo e ffi cac y ( Rat HvGR) of se le cte d compounds .
R1
Rat HvGR
Entry
Compound
1
6 ( fi ngol i mod)
2
33a
H
0.27
3
33b
2-Me
0.43
4
33e
2-Cl
0.39
5
33f
2-E t
10
6
33h
2,5-M e 2
11
ID 5 0 ( mg/k g) a or % inh ibition a t 1 mg /kg
0.33
a
I D 5 0 is d e f ined as the m idpo int bet we en th e inh ib itory ra t io of the veh ic le and th e m ax im um respons e
of the t est com pound.
Table 5-4 に 示 し た よ う に 、 33 a、 33 b、 33e が 非 常 に 強 力 な ラ ッ ト HvGR 活 性 を 示
す 一 方 で 、 高 い S1P 3 /S1P 1 選 択 性 を 示 し た 33f と 33h は 共 に 同 試 験 に お い て 非 常 に
弱 い 活 性 で あ り 、 そ の 活 性 値 は コ ン ト ロ ー ル 群 と 比 較 し 、 そ れ ぞ れ 10%、 11%の 抑
制 率 に と ど ま っ た 。試 験 を 実 施 し た 5 化 合 物 は い ず れ も 同 程 度 の S1P 1 活 性 を 有 し て
い る こ と か ら 、 in v ivo 活 性 の 差 異 は 各 化 合 物 の 血 中 濃 度 が 影 響 し て い る と 考 え ら れ
た。実際の血中濃度測定に先立ち、今後の化合物選定を効率的に行うためのスクリ
ーニング方法確立を目的として、化合物の全血中におけるリン酸エステル化効率を
測 定 す る こ と に し た 。す な わ ち 、こ れ ま で 述 べ て き た よ う に S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 作 用 を
発現する活性本体は、血液中で変換されたリン酸エステル体であることから、化合
物のリン酸エステル体への変換効率は、血中でのリン酸エステル体の濃度に影響を
与 え 、 し い て は in v ivo 活 性 発 現 の 重 要 な フ ァ ク タ ー に な る こ と が 考 え ら れ た 。
各 化 合 物 の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 効 率 の 測 定 結 果 を Table 5-5 に 示 し た 。な お 、リ ン 酸
エステル化効率は、ラット血液中に各化合物を加え、3 時間後のリン酸エステル体
への変換率を測定することにより決定している。
66
Table 5-5 . T he rat i o of phosphat e i n plasma of sele cte d compounds .
R1
Phosphate in Plasma (%) a
Entry
Compound
1
6 ( fi ngol i mod)
2
33a
H
40
3
33b
2-Me
38
4
33e
2-Cl
84
5
33f
2-E t
14
6
33h
2,5-M e 2
6.0
N.T . b
a
The r at io o f p hosph at e w as d et erm in ed by the r at io o f the HP LC p ea k a re a of th e phosphory la ted and
the r em a in in g te st com pound in p lasm a 3 hou rs a ft e r the add it ion o f a te st com pou nd to r at who le
blood .
b
N . T. = not t est ed .
33a、33 b、33e は そ れ ぞ れ 40%、84%、38%と 高 い 変 換 率 を 示 し た の に 対 し 、in v ivo
薬 効 が 弱 い 33f と 33h の 両 化 合 物 は そ れ ぞ れ 14%、 6.0%と 低 い 変 換 率 で あ っ た 。 す
な わ ち 、エ ー テ ル 体 33 の 中 心 ベ ン ゼ ン 環 上 に 存 在 す る 置 換 基 の 大 き さ が 血 中 で 働 く
酵 素 の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 能 に 大 き く 影 響 を 与 え 、 そ の 結 果 、 33 f や 33 h な ど 、 比 較
的 大 き な 置 換 基 を 持 つ 化 合 物 の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 効 率 が 低 く な り 、弱 い in v ivo 薬 効
にとどまったと推察された。
33f と 33h の 両 化 合 物 は in v it ro 面 で は S1P 3 /S1P 1 選 択 性 が 高 く 有 望 な 化 合 物 で あ
っ た が 、残 念 な が ら in v ivo 薬 効 を 示 さ な い と い う 結 果 を 受 け 、次 に 、強 力 な in vivo
薬 効 を 示 し た 33b と 33e に 着 目 す る こ と と し た 。 こ れ ら の 化 合 物 は HvGR 試 験 に お
い て 強 力 な in v ivo 薬 効 を 持 つ ( Table 5-4: E ntr y 3, 4) 一 方 で 、 S1P 3 /S1P 1 選 択 性 は そ
れ ぞ れ 60 倍 、 55 倍 ( Table 5-3: E ntry 3, 6 ) で あ り 、 33f や 33h の S1P 3 /S1P 1 選 択 性
に 比 べ る と 見 劣 り す る 化 合 物 で あ っ た 。 し か し な が ら 、 fingolimod で 問 題 と な っ て
い る 毒 性 ( 一 過 性 の 序 脈 ) の 懸 念 を 払 拭 で き れ ば 、 33 b や 33 e な ど も 十 分 有 望 な 化
合 物 に な り 得 る と 考 え ら れ た 。 そ こ で 、 こ れ ら 2 化 合 物 ( 33 b、 33e ) の 安 全 性 面 で
の 評 価 を 行 う た め 、ラ ッ ト に 化 合 物 30 mg/kg を 経 口 投 与 し た 時 の 心 拍 数 へ の 影 響 に
つ い て 、fingol i mod 6 と の 比 較 試 験 を 実 施 し た 。そ の 結 果 を Table 5-6 に 示 す 。な お 、
Table 5-6 に 記 載 し た 心 拍 数 減 少 値 は 化 合 物 投 与 後 24 時 間 の 間 に お け る 心 拍 数 の 最
大値(または最小値)をコントロール値からの変化量(割合)で表しており、その
値を徐脈のポテンシャルとして評価している。
67
Table 5-6 . T he he art rat e change of sele cte d compounds.
R1
He art rate de cre ase (%) a
Entry
Compound
1
6 ( fi ngol i mod)
2
33a
H
N.T . c
3
33b
2-Me
-4.4
4
33e
2-Cl
4.0
5
33f
2-E t
N.T . c
6
33h
2,5-M e 2
N.T . c
24 b
a
E ach va lue show s the pe r cent a ge o f the m ax im um h ea rt ra te de c rem ent at ion th at occu rr ed dur in g 48
hours a ft er 3 0 m g/ kg o r a l adm in ist r at ion in ra ts in com pa r ison to the veh ic le t re at ed cont ro l group .
b
p .o ., 1 0 m g/ kg.
c
N . T. = not t est ed .
報 告 さ れ て い る 通 り fi ngol i mod 6 は 強 い 徐 脈 作 用 を 持 ち 、 10 mg/kg 投 与 時 の 心 拍
数 減 少 率 は 24% で あ っ た 。 一 方 、 33b と 33e は 30 mg/kg 投 与 群 に お い て も 心 拍 数 の
最 大 変 化 率 は そ れ ぞ れ 4.4% 増 加 、 4.0%減 少 と 非 常 に 軽 微 で あ っ た 。 33b、 33e の ラ
ッ ト HvGR 試 験 の ID 5 0 値 は fi ngol imod 6 と ほ ぼ 同 等 で あ る こ と に 加 え 、 ラ ッ ト に お
け る 各 化 合 物 の 1 mg/ kg か ら 30 mg/k g ま で の 経 口 投 与 時 の 血 中 暴 露 に は 線 形 性 が み
ら れ る こ と を 考 慮 す る と 、 33b、 33e は 、 そ の 徐 脈 リ ス ク に お い て 、 fingolimod よ り
高い安全性を持つ化合物であると言えた。
最 後 に 、 fi ngol i mod 6 と 今 回 デ ザ イ ン し た エ ー テ ル 体 ( 33 a、 33 b、 33e) に 加 え 、
そ の リ ン 酸 エ ス テ ル 体 ( 6-P、 33 a-P、 33 b- P、 33e-P) の PK プ ロ フ ァ イ ル を 測 定 し
た 。 Table 5-7 に は 、 親 化 合 物 で あ る ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 を ラ ッ ト に 1 mg/kg 経 口 投
与した時の測定結果を示している。
68
Table 5-7. T he PK profi le s of be nz yl e the r compounds in rats a
Cmax
AU C 0 - 4 8
T1/2
Metabolic
(ng/ ml)
(ng* hr/ml)
(h)
stability ( %) b
6
N.D. c
N.D. c
N.D. c
97
2
6-P
111
5850
32
>100
3
33a
13
120
5.7
51
4
33a-P
72
799
7.8
92
5
33b
34
200
4.1
36
6
33b-P
104
806
4.3
92
7
33e
18
144
4.6
38
8
33e-P
97
658
4.6
86
Entry
Compound
1
a
E a ch p a ram et er was d et e rm ined a fte r o ra l dos in g o f e ach p a rent a l com pound. ( 1. 0 m g/ kg, n = 2 o r 3) .
Pe r cent a ge o f the rem a in in g com pounds a f te r 30 m in in cuba t ion at 37 o C w ith r at hepat ic m icro som es .
c
N .D . = no d at a.
b
す べ て の 親 化 合 物( 33a、33b、33e)の 血 漿 中 濃 度 は 、対 応 す る リ ン 酸 エ ス テ ル 体
( 33a- P、 33b- P、 33e-P ) よ り 低 く 、 ま た 、 血 中 半 減 期 に つ い て は 、 両 化 合 物 間 で ほ
ぼ 同 じ 値 で あ っ た 。 特 に 、 33b- P と 33e- P の 血 中 半 減 期 は 、 期 待 通 り 、 fingolimod
の リ ン 酸 エ ス テ ル 体 6-P と 比 較 し て 大 幅 に 短 縮 さ れ て お り 、 各 々 4.3 時 間 、 4.6 時 間
であった。この短半減期傾向は、各親化合物の代謝安定性によって説明することが
で き た 。 す な わ ち 、 fi ngol i mod 6 は ラ ッ ト 肝 ミ ク ロ ソ ー ム に 対 し て 非 常 に 高 い 代 謝
安 定 性 を 示 し 、 化 合 物 残 存 率 は 97%で あ っ た の に 対 し 、 33 b、 33e は そ れ ぞ れ 36%、
38%と い う 低 い 値 で あ り 、 そ れ に よ り 血 中 で 存 在 す る リ ン 酸 エ ス テ ル 体 の 半 減 期 が
短くなっていると言えた。
第 6節
結語
Fingolimod が 有 す る S1P 3 / S1P 1 選 択 性 の 低 さ と 、 そ の 活 性 本 体 で あ る リ ン 酸 エ ス
テ ル 体 の 血 中 半 減 期 の 長 さ に 注 目 し 、 そ れ ら を 改 善 す る 目 的 で fingolimod 6 の 構 造
を 基 に 、リ ン カ ー 部 位 に エ ー テ ル 結 合 を 有 す る 33 を 基 本 テ ン プ レ ー ト と し て デ ザ イ
ン し 、そ の SAR 研 究 を 行 っ た 。そ の 結 果 、無 置 換 ベ ン ゼ ン 体 33a は 予 想 通 り 短 半 減
期 傾 向 を 示 し 、 さ ら に fi ngol i mod と 比 較 し て 、 良 好 な S1P 3 /S1P 1 選 択 性 と 強 力 な in
vivo 薬 効 を 有 し て お り 、エ ー テ ル 体 33 が 高 い ポ テ ン シ ャ ル を 持 つ こ と が 明 ら か と な
っ た 。 ま た 、 33 に お け る 中 心 ベ ン ゼ ン 環 上 の 置 換 基 が S1P 3 /S1P 1 選 択 性 に 大 き く 影
響 を 与 え る こ と を 明 ら か と し た 。 特 に 、 2-エ チ ル 体 33f や 、 2,5-ジ メ チ ル 体 33h は
69
S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 活 性 を 維 持 し た ま ま 、S1P 3 ア ゴ ニ ス ト 活 性 が 大 き く 低 減 し 、そ れ ぞ
れ 5217 倍 、3000 倍 の S1P 3 /S1P 1 選 択 性 を 持 つ 優 れ た 化 合 物 で あ っ た 。な お 、上 記 結
果 は 、 S1P 1 お よ び S1P 3 と 33f-P を 用 い た 計 算 化 学 的 解 析 か ら も 支 持 さ れ る も の
で あ っ た 。 さ ら に 、 化 合 物 の in vivo 薬 効 は 、 そ の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 効 率 と 相 関 し
て い る こ と を 明 ら か と し た 。す な わ ち 、S1P 3 /S1P 1 選 択 性 の 高 い 33f や 33h は 、そ の
リ ン 酸 エ ス テ ル 体 へ の 変 換 効 率 の 低 さ か ら 、非 常 に 弱 い in vivo 薬 効 に と ど ま っ た の
に 対 し 、33a を 含 め た 33 b や 33e な ど の 化 合 物 は 高 い リ ン 酸 エ ス テ ル 変 換 率 を 持 ち 、
そ の 結 果 、強 力 な in vi vo 薬 効 を 発 現 し 得 る こ と が 明 ら か と な っ た 。こ の リ ン 酸 エ ス
テ ル 変 換 率 測 定 法 の 確 立 は 、化 合 物 の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 効 率 が in vivo 薬 効 発 現 の 重
要なファクターの一つであることを証明しただけでなく、その方法をスクリーニン
グ段階に採用することによって、効率的な化合物選定にも貢献するものであった。
各 種 検 討 の 結 果 、強 力 な in vi vo 薬 効 を 示 し 、当 初 目 的 と し て い た 適 度 に 短 い 半 減 期
に 加 え 、 徐 脈 リ ス ク が 少 な く 、 高 い 安 全 性 を 持 つ 有 望 な 化 合 物 と し て 33b や 33e を
獲得することに成功した。
70
第 6章
結論
田 辺 三 菱 製 薬 、 N ovart is に よ り 多 発 性 硬 化 症 治 療 薬 と し て 上 市 さ れ て い る
fingolimod 6 が 持 つ 、 副 作 用 と し て の 催 徐 脈 作 用 や 、 臨 床 現 場 で は 扱 い 難 い と 思 わ
れ る 非 常 に 長 い 半 減 期 を 改 善 す べ く 、 fingolimod 6 の 構 造 を 基 に し た 創 薬 研 究 に 着
手 し た 。 ま ず 、 fi ngol i mod 6 が 持 つ α,α -二 置 換 ,α-ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 は 重 要 な
pharmaco phore で あ る こ と を 考 慮 し 、 Figure 6-1 に 示 す 二 つ の 化 合 物 ( 14、 15) を デ
ザインし、各種合成法検討、構造活性相関研究を実施した。
Figure 6 -1. St ruct ural modification of fingolimod 6 .
第 2 章 で は 、 一 般 式 14 で 示 す 化 合 物 合 成 に 必 要 と な る ( 2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1プ ロ パ ノ ー ル 構 造( 青 点 線 枠 )を 有 す る 各 種 ヘ テ ロ 環 合 成 中 間 体 16 に つ い て 、リ パ
ー ゼ を 用 い た 不 斉 非 対 称 化( モ ノ エ ス テ ル 化 )反 応 を 用 い た 構 築 法 検 討 を 実 施 し た 。
2-te rt -ブ ト キ シ カ ル ボ ニ ル ア ミ ノ -2-メ チ ル -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 1 8 が 有 す る 対 称
性 に 注 目 し 、18 に 対 す る 各 種 リ パ ー ゼ の 不 斉 非 対 称 化 能 に つ い て 検 討 し た 結 果 、高
収率、高選択的にモノエステル化を進行させるリパーゼと、最適な反応条件を見出
し 、 光 学 活 性 な ( 2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 の 構 築 に 成 功 し た 。 本 反
応は、安価な化合物を出発原料にできることに加え、用いる酵素を変えることによ
り 、 同 一 原 料 か ら 両 立 体 の 光 学 活 性 化 合 物 ( ( R)-17 a、 ( S)-44) を そ れ ぞ れ 約 90%の
鏡像体過剰率で作り分けることが可能な優れた反応であった。さらに、本反応によ
り得られた光学活性アルコール体を出発原料とすることで、後の 5 章にて紹介する
一 般 式 15 で 示 す 化 合 物 群 を 含 む S1P 1 ア ゴ ニ ス ト の 中 間 体 に 加 え 、 置 換 ア ラ ニ ン
誘 導 体 の 合 成 素 子 と し て 利 用 可 能 な 19 を 短 工 程 で 創 製 す る こ と が 可 能 で あ っ た 。ま
た、本酵素反応はキログラムスケールでの実施も可能であり、汎用性、実用性の両
面で優れた反応であった。
71
Figure 6 -2. Summar y of Chapte r 2.
第 3 章 で は 、従 来 の 中 間 体 合 成 法 に お け る 問 題 点 解 消 の た め 、ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b
の 合 成 と 、そ の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 を 用 い た 中 間 体 20 ( or 30)合 成 に つ い て 検 討 し た 。
ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は 、 そ の 調 製 自 体 に 数 工 程 を 要 す る 点 や 、 各 種 ア ル デ ヒ ド 25
と の Wittig 反 応 で は 、収 率 向 上 の た め に 過 剰 量 必 要 に な る な ど の デ メ リ ッ ト は あ る
ものの、芳香族、脂肪族問わず様々なアルデヒドと反応し、中~高収率でオレフィ
ン 体 を 与 え る 優 れ た 反 応 剤 で あ っ た 。 特 に 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は 、 立 体 障 害 が 大
きい芳香族アルデヒドや、対応するアルキルハライドの調製が困難である電子豊富
な 芳 香 族 ア ル デ ヒ ド と も 問 題 な く 反 応 す る も の で あ り 、私 が 行 う S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 研
究において合成の効率化に寄与する優れた反応剤であった。さらに、ホスホニウム
塩 24b は 、 調 製 が 容 易 な ア ル デ ヒ ド を 反 応 相 手 と す る conve rge nt な 反 応 に よ り 各 種
生 理 活 性 物 質 の 合 成 を 可 能 に す る も の で あ り 、 S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 ( 28、 29) や
TAAR1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 31 合 成 に も 適 用 可 能 で あ っ た 。ま た 、ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b
と 各 種 芳 香 族 ア ル デ ヒ ド と の 反 応 で は 、ジ ア ス テ レ オ 選 択 的 に E 体 の み が 生 成 物 と
して得られてくることが判明した。ジアステレオ選択的なオレフィン体は、続く立
体 選 択 的 な 官 能 基 導 入 を 可 能 に す る こ と か ら 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 b は ,-二 置 換 アミノ酸構造を有する多様な天然物合成にも応用され得る反応剤であると言えた。
72
Figure 6 -3. Summar y of Chapte r 3 ( part 1) .
Figure 6 -3. Summar y of Chapte r 3 ( part 2) .
第 4 章 で は 、 S1P 1 ア ゴ ニ ス ト の 親 化 合 物 で あ る ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 32 か ら 活 性
本 体 で あ る リ ン 酸 エ ス テ ル 体 32-P を 合 成 す る 方 法 と し て 、微 生 物 を 用 い た 合 成 法 検
討を行った。その結果、所有する独自の微生物ライブラリーの中から、目的とする
リ ン 酸 エ ス テ ル 化 反 応 を 効 率 的 に 行 う 微 生 物 と し て 糸 状 菌 の 一 種 で あ る Circin ella
属 を 見 出 し 、 中 で も 、 Ci rcin el la mu sc ae (N BRC 4457) に 非 常 に 高 い リ ン 酸 化 効 率 を
見 出 す こ と に 成 功 し た 。 ま た 、 本 微 生 物 変 換 反 応 で は 、 反 応 溶 液 の pH や 反 応 温 度
73
の調節に加え、凍結乾燥菌体の使用等の改良を加えることにより、その反応性、収
率を飛躍的に向上させることが可能であった。こうして得られた最適反応条件は、
様々なアミノアルコール体のリン酸エステル化反応に適用でき、さらに、質量分析
計と連動させた自動精製システムを組み合わせることにより、高純度のリン酸エス
テル体を簡便に合成することが可能となった。これにより、当初目的としていた多
検体スクリーニング用のリン酸エステル体合成法を構築することに成功した。今回
確立した微生物変換反応は、保護、脱保護を要せず、1工程で目的とするリン酸エ
ステル体を与える手法であり、反応の効率化の点に加え、グリーンケミストリーの
観点でも優れた手法であった。
Figure 6 -4. Summar y of Chapte r 4.
第 5 章 で は 、fi ngol i mod が 有 す る S1P 3 /S1P 1 選 択 性 の 低 さ と 、そ の 活 性 本 体 で あ る
リ ン 酸 体 の 半 減 期 の 長 さ に 注 目 し 、 そ れ ら を 改 善 す る 化 合 物 と し て fingolimod 6 の
構 造 を 基 に リ ン カ ー 部 位 に エ ー テ ル 結 合 を 有 す る 33 に つ い て 探 索 研 究 を 行 っ た 。そ
の 結 果 、 33 は 短 半 減 期 傾 向 に 加 え 、 fingolimod と 比 較 し て 、 良 好 な S1P 3 /S1P 1 選 択
性 と 強 力 な in vi vo 薬 効 を 持 つ 、 ポ テ ン シ ャ ル の 高 い 化 合 物 で あ る こ と が 判 明 し た 。
そ の 後 の SAR 研 究 の 結 果 、 中 心 ベ ン ゼ ン 環 上 の 置 換 基 が S1P 3 /S1P 1 選 択 性 に 大 き く
影 響 を 与 え る こ と を 明 ら か と し た 。 特 に 、 2-エ チ ル 体 3 3f や 、 2,5-ジ メ チ ル 体 33h
な ど は S1P 1 ア ゴ ニ ス ト 活 性 を 維 持 し た ま ま 、 S1P 3 ア ゴ ニ ス ト 活 性 が 大 き く 低 減 さ
せ 、 各 々 5217 倍 、 3000 倍 の S1P 3 /S1P 1 選 択 性 を 持 つ 化 合 物 で あ っ た 。 な お 、 上 記 結
果 は 、 S1P 1 お よ び S1P 3 と 33f-P を 用 い た 計 算 化 学 的 解 析 か ら も 支 持 さ れ る も の
で あ っ た 。 さ ら に 、 化 合 物 の in vivo 薬 効 は 、 そ の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 効 率 と 相 関 し
て い る こ と を 明 ら か と し た 。す な わ ち 、選 択 性 が 高 か っ た 33f、33h は 、そ の リ ン 酸
エ ス テ ル 体 へ の 変 換 効 率 の 低 さ か ら 、非 常 に 弱 い in vivo 薬 効 に と ど ま っ た の に 対 し 、
33a を 含 め た 33b や 33e な ど は 高 い リ ン 酸 エ ス テ ル 変 換 率 か ら 、 強 力 な in v ivo 薬 効
を発現することが判明した。また、化合物のリン酸エステル変換率測定法の確立に
74
よ り 、そ の 変 換 率 が in v ivo 薬 効 発 現 の 重 要 な フ ァ ク タ ー の 一 つ で あ る こ と を 証 明 で
きただけでなく、その方法をスクリーニング段階に採用することによって、効率的
な 化 合 物 選 定 を 達 成 し た 。各 種 検 討 の 結 果 、強 力 な in vivo 薬 効 を 示 し 、当 初 目 的 と
していた適度に短い半減期に加え、徐脈リスクが少なく、高い安全性を持つ有望な
化 合 物 と し て 33b や 33e を 獲 得 す る こ と に 成 功 し た 。
Table 6-1. Summar y of Chapt e r 5.
Rat HvGR
Comp
R
2
EC 5 0
( nM)
S1P 3 /
ID 5 0 ( mg/k g) a
S1P 1
S1P 3
S1P 1
or
Phosphate
He art rate
in
de cre ase
Plasma
(%) b
(%) d
T1/2
(h)
% inh ibition
6
7.0
2.0
0.29
0.33
N.T. c
24 e
32
(fingolimod)
33a
H
7.0
200
29
0.27
40
N.T. c
7.8
33b
Me
3.0
180
60
0.43
38
-4.4
4.3
33e
Cl
4.0
220
55
0.39
84
4.0
33f
33h
Et
2,5-
4.6
c
N.T. c
N.T. c
2.3
12000
5217
10 ( 1 mg/kg)
14
N.T.
6.5
>20000
>3077
11 ( 1 mg/kg)
6.0
N.T. c
Me 2
a
I D 5 0 is d e f ined as the m idpo int bet we en th e inh ib itory ra t io of the veh ic le and th e m ax im um respons e
of the t est com pound.
b
The ra t io o f p hosph ate w as de te rm in ed by th e rat io o f th e HP LC p ea k a re a o f th e phosphory la ted and
the r em a in in g te st com pound in p lasm a 3 hou rs a ft e r the add it ion o f a te st com pou nd to r at who le
blood .
c
N . T. = not t est ed .
d
E ach va lue show s the pe r cent a ge o f the m ax im um h ea rt ra te de c rem enta t ion th at occu rr ed dur in g 48
hours a ft er 3 0 m g/ kg o r a l adm in ist r at ion in ra ts in com pa r ison to the veh ic le t re at ed cont ro l group .
e
p.o ., 10 m g/ kg.
75
実験の部
本研究では、化合物の分析に以下の機器を用いた。
1
H NM R ス ペ ク ト ル ( 1 H N M R)
U nity Me rcur y Pl us 400 or 500 spe ctromete r (Varian)
化 学 シ フ ト 値 は ppm 単 位 で 記 載 し 、 内 部 標 準 と し て 、 te tramethyl silane ( TM S) を
使用した。また形状の標記には以下の略語を用いた。
s, singlet; brs, broad si ngl e t; d, doublet; t, triplet; q, quarte t; m, mutiple t.
旋 光 度 測 定 ( [])
JASCO P -1030, HORI BA SE PA-300 di gital polarime te r ま た は D aiichi Sankyo RD
N ovare Co., Lt d.に お い て 実 施
赤 外 吸 収 ス ペ ク ト ル (I R)
JASCO FT/I R -610 spe ct rophot ome te r ま た は D aiichi Sank yo RD N ovare Co., Ltd. に お
いて実施
質量分析スペクトル
または
高 分 解 能 質 量 分 析 ス ペ ク ト ル ( MS or HRMS)
JE OL GCmat e , JE OL JM S -AX 505H ま た は D aiichi Sank yo RD N ovare C o., Ltd.に お
いて実施
元 素 分 析 ( Anal )
Yanaco MT-5, M T-6 ま た は D ai i chi Sank yo RD N ovare Co., Ltd. に お い て 実 施
融 点 ( mp)
Yanaco M P -500D ま た は D ai i chi Sank yo RD N ovare Co., Ltd. に お い て 実 施
薄 層 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (T LC)
Me rck pre coate d T LC gl ass she et s with ge l 60F 2 5 4
シリカゲルクロマトグラフィー
Silica ge l 60 (Me rck, 230 -400 mesh AST M) , Biotage FLASH Si, YA M AZE N Hi -Flash
ま た は M ori te x Puri f-Pack
76
第 2 章に関する実験
(2R)- te rt-But oxyc arbonyl ami no-3- he xanoyloxy-2- met hyl-1- propanol ( (R)-17 a)
:a ge ne ral proce dure of an asymmet ric re ac tion with Lipase c at alyst s.
2-te rt -But oxyc arbon yl ami no -2-me thyl -1,3-propane diol 18 ( 150 g, 731 mmol) を ジ イ ソ
プ ロ ピ ル エ ー テ ル (3.00 l)に 懸 濁 し 、 vinyl n -he xanoate ( 120 ml, 751 mmol) 及 び リ パ ー
ゼ [I mmobi li ze d li pase from Pseudomona s sp. ( TOY OBO, 0.67 U/mg) ] ( 6.00 g) を 加 え 、
室 温 で 1.5 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 を ろ 過 後 、 ろ 液 を 減 圧 下 留 去 し た 。 残 渣 を シ リ カ
ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane:Ac OE t = 10:1 to 2:1) に よ り 精 製 し て 、標 記 化
合 物 (R)-17 a ( 197 g, 89.0% yi el d, 89 .0%e e)を 無 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 な お 、 得 ら れ
た (R) -17 a の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条 件 を 用 い た HPLC 分 析 に よ り 決 定 し た 。
D AI CE L CHI RALCE L OF ( 4.6 x 250 mm) , he xane:2-propanol = 70:30, 流 速 : 0.50
ml/min, 温 度 : 25.0 o C. 保 持 時 間 は ( S)-17 a と ( R)-17 a は そ れ ぞ れ 8.2 分 と 10.5 分 で あ
っ た 。 [] 2 0 D = -8.8 ( c 1.8, CHCl 3 ) ; 1 H NM R ( 400 M Hz, CD Cl 3 )  0.90 (t, 3H, J = 7.0 Hz ),
1.25 (s, 3H) , 1.30 -1.40 ( m, 4H) , 1.44 ( s, 9H) , 1.58 -1.68 ( m, 2H) , 2.36 ( t, 2H, J = 7.4 Hz) ,
3.70-3.55 ( m, 2H), 3.86 ( br s, 1H) , 4.19 ( d, lH, J = 11.2 Hz) , 4.25 ( d, lH, J = 11.2 Hz) ,
4.86 ( s, 1H) ; I R ( KBr) 3415, 3380, 2961, 2935, 2874, 1721, 1505, 1458, 1392, 1368, 1293,
1248, 1168, 1076 cm - 1 ; M S (FAB) m/z: 304 ( M +H) + .
(2S)- te rt -But oxyc arbonyl ami no-3- he xanoyloxy-2- met hyl -1-propanal ( 40a)
(2R ) -tert -But oxyca rbon yl ami no -3-he xanoylox y-2-me thyl -1-pr opanol ( R)-17a ( 30.7 g,
100 mmol) を CH 2 Cl ( 600 ml ) に 溶 解 し 、 モ レ キ ュ ラ ー シ ー ブ 4 Å (220 g) お よ び
pyridinium chl orochromat e( 43.6 g, 20 0 mmol)を 氷 冷 下 加 え 、 室 温 で 2 時 間 攪 拌 し た 。
反 応 液 に Et 2 O ( 500 ml) を 加 え 、 析 出 し た 不 溶 物 を ろ 過 し た 。 ろ 液 を 減 圧 下 留 去 し 、
残 渣 を シ リ カ ゲ ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane :AcOE t = 10:1 t o 5:1) に よ り 精 製 し て 、
標 記 化 合 物 40 a ( 28.8 g, 95.0%) を 無 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H NM R ( 400 M Hz ,
CD Cl 3 )  0.90 ( t, 3H, J = 7.0 Hz) , 1.40-1.25 ( m, 4H), 1.38 (s, 3H) , 1.45 ( s, 9H) , 1.70 -1.55
(m, 2H) , 2.32 ( t, 2H, J = 7.6 Hz), 4.32 ( d, 1H, J = 11.2 Hz ), 4.44 ( d, 1H, J = 11.2 Hz) , 5.26
(brs, 1H), 9.45 ( s, 1H); I R ( li qui d film) 3367, 2961, 2935, 2874, 1742, 1707, 1509, 1458,
77
1392, 1369, 129 0, 1274, 1254, 1166, 1100, 1078 cm - 1 ; MS ( FAB) m /z: 302 (M +H) + .
(2R)- te rt-But oxyc arbonyl ami no-2- et hyl-3 -he xanoyloxy-1- propanol (( R)-43)
2-te rt -But oxyc arbon yl ami no -2-e t hyl -1,3-propane diol 42 ( 52.9 g, 241 mmol) を ジ イ ソ
プ ロ ピ ル エ ー テ ル (1.00 l) に 懸 濁 し 、 vinyl n -he xanoate ( 41.0 ml, 254 mmol)及 び リ パ ー
ゼ [I mmobi li ze d l i pase from Pseudomon as sp. ( TOY OBO, 0.670 U /mg) ] ( 2.10 g) を 加 え 、
室温で 4 時間攪拌した。反応液をろ過後、ろ液を減圧下留去した。残渣をシリカゲ
ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane:Ac OE t = 7:1 t o 2:1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合
物 (R)-43 ( 66.8 g, 87 .0% yi e l d, 93.0%e e)を 無 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 な お 、 得 ら れ た
(R)-4 3 の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条 件 を 用 い た HPLC 分 析 に よ り 決 定 し た 。 D AI CE L
CHIRALCE L OF ( 4.6 x 250 mm) , he xane :2-propanol = 80: 20, 流 速 : 0.50 ml/min, 温 度 :
25.0 o C. 保 持 時 間 は ( S)-43 と ( R) -43 は そ れ ぞ れ 7.4 分 と 7.9 分 で あ っ た 。1 H NM R ( 400
M Hz , CD Cl 3 )  0.87-0.83 ( m, 6H) , 1.30 -1.25 ( m, 4H), 1.44 ( s, 9H) , 1.63 -1.53 ( m, 4H),
1.78-1.69 ( m, 1H) , 2.35 ( t , 2H, J = 7.7 Hz) , 3.65 -3.62 ( m, 2H) , 4.10 ( d, 1H, J = 11.0 Hz) ,
4.24 ( d, 1H, J = 11.0 Hz) , 4.76 ( br s, 1H) ; M S ( FAB) m/z: 318 ( M+H) + .
(2S)- te rt -But oxyc arbonyl ami no-3- but anoyloxy-2- me thyl-1- prop anol ( (S)-44)
2-te rt -But oxyc arbon yl ami no -2-me thyl -1,3-propane diol
18
( 22.2
g,
107
mmol) を
te rt -butylme t hyl et he r ( 550 ml)に 懸 濁 し 、 vinyl n -butanoate ( 4 0.8 ml, 322 mmol)及 び リ
パ ー ゼ [CHI RAZYM E L-2,carri e r-fixe d C3, I yo] ( 5.4 0 g)を 加 え 、 室 温 で 1.5 時 間 攪 拌
した。反応液をろ過後、ろ液を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマト
グ ラ フ ィ ー (he xane: AcOE t = 10: 1 t o 2:1) に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 (S)-44 ( 19.4 g,
66.0% yie ld, 89 .0%ee)を 無 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 な お 、 得 ら れ た (S)-44 の 光 学 純 度
は 以 下 に 示 す 条 件 を 用 い た HPLC 分 析 に よ り 決 定 し た 。 D AI CE L CHIRALCE L OF
(4.6 x 250 mm) , he xane: 2-propanol = 70: 30, 流 速 : 0.50 ml/min, 温 度 : 25.0 o C. 保 持 時
間 は (S)-44 と ( R)-44 は そ れ ぞ れ 8.2 分 と 10.5 分 で あ っ た 。1 H N M R ( 400 M Hz , CD Cl 3 )
  0.94 ( t, 3H, J = 11.0 Hz), 1.23 ( s, 3H) , 1.41 (s, 9H) , 1.65 ( tq, 2H, J = 7.4 Hz , 7.4 Hz) ,
2.32 ( t, 2H, J = 7.4 Hz) , 3.56 ( d, 1H, J = 11.7 Hz) , 3.62 ( d, 2H, J = 11.7 Hz) , 4.18 ( d, 1H,
J = 11.1 Hz) , 4.22 ( d, 1H, J = 11.1 Hz) , 4.85 ( s, 1H); I R ( liquid film) 3415, 3380, 2961,
78
2935, 2874, 1721, 1505, 1458, 1392, 1368, 1293, 1248, 1168, 1076 cm - 1 ; MS( FAB) m/ z:
276 (M +H) + .
(2R)- te rt-But oxyc arbonyl ami no-1- he xanoyloxy-2- met hyl-4-(t hiophe n- 2-yl)-3- bute ne
(45a)
(Thiophe n-2- yl) me t hyl t ri phe nyl phosphonium bromide 22 a ( 67.1 g, 150 mmol) を T HF
(750 ml)に 懸 濁 し 、氷 冷 撹 拌 下 、pot assium te rt -butoxide ( 17.2 g, 150 mmol)を T HF ( 90.0
ml)に 溶 解 し た 溶 液 を 10 分 間 か け て 加 え 、 さ ら に 室 温 下 20 分 間 攪 拌 し た 。 つ い で 、
氷 冷 下 、 (2S)-2-te rt -but oxycarbon ylamino -3-n -he xanoylox y-2-me thyl -1-propanal
40 a
(23.0 g, 76.4 mmol) の T HF ( 250 ml )溶 液 を 15 分 間 か け て 加 え 、 氷 冷 下 30 分 間 攪 拌 し
た 。 反 応 液 に 水 (300 ml)を 加 え 、 AcOE t( 200 ml x 2) で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 (100 ml)
お よ び 飽 和 食 塩 水 ( 200 ml )で 洗 浄 し た 後 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し 、 ろ 過 後 、
減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xan e:AcOE t = 20:1)
に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物 45a ( 27.8 g, 96 .0%)を 無 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。1 H NM R
(400 M Hz , CD Cl 3 )  0.88 ( t , 3H, J = 7.0 Hz) , 1.40-1.25 ( m, 7H) , 1.57, 1.50, 1.44 (s, total
9H), 1.70-1.55 ( m, 2H), 2.34 ( t, 2H, J = 7.4 Hz) , 4.40 -4.10 ( m, 2H) , 4.94, 4.93 ( brs, total
1H), 5.58 ( d, 0.5 H, J = 13.6 Hz) , 6.10 ( d, 0.5 H, J = 16.0 Hz) , 6.60 ( d, 0.5 H, J = 13.6 Hz) ,
6.63 ( d, 0.5 H, J = 16.0 Hz) , 7.04 -7.01, 7.01 -6.93 ( m, total 2H) , 7.32 -7.26, 7.16-7.14 ( m,
total 1H); I R (l i qui d fi l m) 3370, 2961, 2933, 1725, 1495, 1456, 1391, 1367, 1247, 1167,
1109, 1100, 1072, 697 cm - 1 ; M S (FAB) m /z: 381 (M + ).
(2R)-2 -te rt-But oxyc arbonyl amino- 1-n- he xanoyloxy-2- met hyl-4-(1- me thylpyrrol -2- yl)3-bute ne (45 b)
(1-Me thyl pyr rol -2-yl ) met hyl t ri phe nylphosphonium iodide 22 b ( 58.0 g, 120 mmol) を
T HF ( 300 ml)に 懸 濁 し 、氷 冷 撹 拌 下 、potassium t e rt -butoxide ( 13.5 g, 120 mmol) を T HF
(180 ml)に 溶 解 し た 溶 液 を 30 分 間 か け て 加 え 、 さ ら に 氷 冷 下 80 分 間 攪 拌 し た 。 つ
い で 、 (2S) -2-t ert -but oxyc arbon yl amino -3-n -he xano yloxy-2-me thyl -1-pr opanal 40 a ( 30.3
g, 101 mmol)を T HF ( 120 ml)に 溶 解 し た 溶 液 を 30 分 間 か け て 加 え 、氷 冷 下 30 分 間 攪
拌 し た 。 反 応 液 に 飽 和 N H 4 Cl 水 溶 液 ( 50.0 ml)を 加 え て 反 応 を 止 め 、 液 温 を 室 温 に 戻
79
し 、 減 圧 下 濃 縮 し 、 水 (100 ml)お よ び AcOE t( 100 ml)を 加 え 、 Ac OEt (100 ml x 2)で 抽
出 し た 。 有 機 層 を 水 (100 ml )お よ び 飽 和 食 塩 水 ( 100 ml)で 洗 浄 し た 後 、 無 水 硫 酸 ナ ト
リウムで乾燥し、ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフ
ィ ー (he xane : AcOE t = 9: 1) に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 45b ( 37.0 g, 97.0%)を 淡 黄 色
油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H N M R ( 400 M Hz, CDCl 3 )  0.92-0.87 ( s, 3H), 1.67-1.22 ( m,
18H), 2.36-2.30 ( m, 2H) , 3.54 ( s, 1.5H), 3.60 ( s, 1.5H) , 4.34-4.16 ( m, 2H) ,
4.81 ( brs,
0.5H) , 5.04 ( brs, 0.5H) , 5.58 ( d, 0.5H, J = 12.5 Hz ), 5.99 ( d, 0.5H, J = 16.1 Hz) , 6.08 (t,
0.5H, J = 3.2 Hz ), 6.11 ( t , 0.5H, J = 3.2 Hz) , 6.27 ( d, 0.5H, J = 12.5 Hz), 6.30 -6.26 ( m,
1H), 6.38 ( d, 0.5H, J = 16.1 Hz) , 6.57 ( t, 0.5H, J = 2.3 Hz), 6.60 ( t, 0.5H , J = 2.3 Hz); M S
(EI) m/z: 280 ( M + ) .
(2R)-2 -te rt-But oxyc arbonyl amino- 1-he xanoyloxy-2- me thyl-4-(f uran-2 -yl)-3- bute ne
(45c)
(Furan-2- yl) met hyl t ri phe nyl phosphonium bromide 22 c ( 33.7 g, 79.5 mmol)を T HF
(90.0 ml)に 懸 濁 し 、 氷 冷 撹 拌 下 、 potassium t ert -butoxide ( 8.94 g, 7 9.7 mmol )を T HF
(90.0 ml)に 溶 解 し た 溶 液 を 10 分 間 か け て 加 え 、 さ ら に 氷 冷 下 15 分 間 攪 拌 し た 。 つ
い で 、 (2S) -2-t ert -but oxyc arbon yl amino -3-n -he xano yloxy-2-me thyl -1-pr opanal 40 a ( 16.2
g, 53.7 mmol)を T HF ( 60.0 ml )に 溶 解 し た 溶 液 を 15 分 間 か け て 加 え 、 氷 冷 下 30 分 間
攪 拌 し た 。 反 応 液 に 飽 和 N H 4 Cl 水 溶 液 ( 50.0 ml)を 加 え て 反 応 を 止 め 、 液 温 を 室 温 に
戻 し 、 減 圧 下 濃 縮 し 、 水 ( 100 ml )お よ び AcOEt( 100 ml)を 加 え 、 Ac OEt ( 100 ml x 2)
で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 (100 ml )お よ び 飽 和 食 塩 水 ( 100 ml)で 洗 浄 し た 後 、 無 水 硫 酸
ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグ
ラ フ ィ ー (he xane: AcOE t = 10: 1) に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 45c ( 19.3 g, 98.0%)を 淡
黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H N M R ( 400 M Hz , CD Cl 3 )  0.92-0.87 ( s, total 3H) ,
1.67-1.22 ( m, t ot al 20H) , 2.36-2.32 ( m, total 2H) , 4.18 ( d, 0.5H, J = 11.0 Hz) , 4.25 ( d,
0.5H, J = 11.0 Hz) , 4.32 ( d, 0.5H, J = 11.0 Hz) , 4.43 ( d, 0.5H, J = 11.0 Hz) , 4.82 ( brs,
0.5H) , 5.22 ( brs, 0.5H) , 5.59 ( d, 0.5H, J = 12.7 Hz) , 6.20 ( d, 0.5H, J =15.9 Hz) , 6.26 -6.22
(m, total 1H) , 6.33 ( d, 0.5H, J =15.9 Hz ), 6.36 -6.35 ( m, total 1H) , 6.41 ( dd, 0.5H, J = 2.9,
1.6 Hz), 7.33 ( d, 0.5H, J = 1.5 Hz) , 7.45 ( d, 0.5H, J = 1.6 Hz) ; I R (liquid film) 3445, 2962,
2933, 2873, 2250, 1720, 1497, 1457, 1391, 1368, 1249, 1165, 1075, 1015 cm - 1 ; M S ( FAB)
m/z: 366 (M +H) + .
80
(4R)-M et hyl-4- [2-(t hi ophe n-2- yl )et he nyl] oxazolidin-2- one (46 a)
(2R ) -tert -But oxyca rbon yl ami no -1-n -he xano yloxy-2 -me thyl -4-(thiophe n-2-yl) -3-bute ne
45a ( 40.5 g, 11 0 mmol)を T HF ( 150 ml)お よ び Me OH ( 150 ml)の 混 合 液 に 溶 解 し 、 氷 冷
下 、 2 規 定 N aOH 水 溶 液 ( 530 ml)を 加 え 、 30 分 間 攪 拌 後 、 さ ら に 室 温 で 1 時 間 攪 拌
し た 。 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 得 ら れ た 残 渣 に 水 ( 300 ml)を 加 え た 後 、 CH 2 Cl 2 ( 300 ml
x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 飽 和 食 塩 水 ( 200 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥
し た 。ろ 過 後 、減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し て 、粗 生 成 物 tert -butyl [( 2R) -1-hydrox y-2 -me thyl 4-( thiophe n-2-yl ) but -3-e n-2- yl ]carb amate ( 35.0 g) を 得 た 。 粗 生 成 物 を THF ( 300 ml)に
溶 解 し 、 pot assi um te rt -but oxi de ( 17.8 g, 16 0 mmol)を 氷 冷 下 10 分 間 か け て 加 え 、 そ
の 後 、 室 温 で 40 分 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に 水 ( 100 ml)を 加 え 、 AcOE t(200 ml x 2) で 抽
出 し た 。 有 機 層 を 飽 和 食 塩 水 ( 200 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し 、 ろ
過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (he xane :AcOE t =
3:1 t o 1:1)に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物 46 a ( 18.0 g, 81 .0%)を 得 た 。1 H NM R ( 400 M Hz,
CD Cl 3 )  1.55 ( s, 1.5H) , 1.60 (s, 1.5H) , 4.31 -4.16 ( m, 1.5H) ,4.41 ( d, 0.5H, J = 8.6 Hz) ,
5.65 ( d, 0.5H, J = 12.5 Hz ), 6.06 ( d, 0.5H, J = 16.0 Hz) , 6.17 ( brs, 1H) , 6.59 ( d, 0.5H, J =
12.5 Hz ), 6.74 ( d, 0.5H, J = 16.0 Hz), 7.07 -6.91 ( m, 2H) , 7.19 ( d, 0.5H, J = 5.0 Hz) , 7.34
(d, 0.5H, J = 5.1 Hz) ; I R ( KBr) 3275, 3110, 2974, 1752, 1391, 1376, 1281, 1169, 1039,
960, 704 cm - 1 ; MS ( FAB) m / z: 209 (M + ) .
(4R)-M et hyl-4- [2-(1- met hylpyrrol -2- yl)e thenyl]-1 ,3- oxazolidin -2- one (46b)
(2R ) -2-te rt -But oxyc arbon yl ami no -1-n-he xano yloxy -2-me thyl -4-( 1-me thylp yrrol -2- yl) 3-bute ne 45 b ( 37.0 g, 97.8 mmol) を T HF ( 100 ml)お よ び M e OH ( 100 ml)の 混 合 液 に 溶
解 し 、 2 規 定 N aOH 水 溶 液 ( 100 ml)を 加 え 、 室 温 で 1 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に 水 ( 200
ml)お よ び CH 2 Cl 2 ( 100 ml)を 加 え て 、 CH 2 Cl 2 ( 100 ml x 2)で 抽 出 し 、 有 機 層 を 飽 和 食
塩 水 ( 100 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留
去 し て 、 粗 生 成 物 te rt -but yl [( 2R) -1-hydrox y-2-me thyl -4-( 1-methyl -1H -pyrr ol -2-yl) but
-3-e n-2-yl]c arbam at e ( 28.8 g, 100%) を 得 た 。 粗 生 成 物 を T HF ( 320 ml) に 溶 解 し 、
81
potassium t ert -but oxi de ( 13.2 g, 117 mmol) を T HF ( 80.0 ml)に 溶 解 し た 溶 液 を 氷 冷 下 10
分 間 か け て 加 え 、 同 温 度 下 で 20 分 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に ace tic a cid ( 6.7 0 ml, 117
mmol)を 加 え て 中 和 し 、 減 圧 下 濃 縮 し て 、 水 ( 100 ml)お よ び AcOE t( 100 ml)を 加 え 、
AcOE t( 100 ml x 2) で 抽 出 し た 。有 機 層 を 飽 和 食 塩 水 ( 100 ml) で 洗 浄 し 、無 水 硫 酸 ナ ト
リウムで乾燥し、ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフ
ィ ー (he xane : AcOE t = 1: 1 t o 1: 2)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 46b ( 20.3 g, 100%)を 得
た 。 1 H N M R ( 400 M Hz , CD Cl 3 )  1.57 ( s, 3H) , 1.59 ( s, 3H) , 3.55 (s, 3H), 3.62 ( s, 3H),
4.16 ( d, 1H, J = 8.2 Hz) , 4.17 ( d, 1H, J = 8.2 Hz) , 4.22 ( d, 1H, J = 8.2 H z), 4.31 ( d, 1H, J
= 8.2 Hz) , 5.11 ( br s, 1H) , 5.46 ( br s, 1H) , 5.65 ( d, 1H, J = 12.2 Hz) , 5.99 ( d, 1H, J =15.7
Hz) , 6.07 ( br d, 1H, J = 3.6 Hz) , 6.14 -6.10 ( m, 2H) , 6.31 ( d, 1H, J = 12.2 Hz ), 6.36 ( dd,
1H, J =3.7, 1.5 Hz) , 6.48 ( d, 1H, J = 15.7 Hz), 6.62 (t, 1H, J = 1.5 Hz) , 6.67 (t, 1H, J = 2.1
Hz) ; MS (E I) m /z: 206 (M + ) .
(4R)-M et hyl-4- [2-(f uran-2- yl)et he nyl]-1 ,3- oxazolidin-2 - one (46 c)
(2R ) -2-te rt -But oxyc arbon yl ami no -1-n -he xano yloxy -2-me thyl -4-( furan-2 -yl) -3-bute ne
45c ( 19.3 g, 52.9 mmol ) を T HF ( 53.0 ml)お よ び Me OH ( 53.0 ml)の 混 合 液 に 溶 解 し 、 2
規 定 NaOH 水 溶 液 ( 53.0 ml)を 加 え 、 室 温 で 1 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に 水 (50.0 ml)お
よ び CH 2 Cl 2 ( 75.0 ml)を 加 え た 後 、 CH 2 Cl 2 ( 50.0 ml x 2)で 抽 出 し 、 有 機 層 を 飽 和 食 塩
水 (50.0 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去
し て 、 粗 生 成 物 te rt -but yl [( 2R) -4-( furan-2- yl) -1-hydrox y-2 -me thylbut -3-e n-2-yl]carbam ate ( 14.8 g, 100%) を 得 た 。 粗 生 成 物 を THF ( 150 ml) に 溶 解 し 、 potassium
te rt -butoxide ( 7.20 g, 64.2 mmol) を T HF ( 50.0 ml)に 溶 解 し た 溶 液 を 氷 冷 下 10 分 間 か
け て 加 え 、 同 温 度 下 で 1 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に acetic acid ( 3.65 ml, 63.8 mmol) を
加 え て 中 和 し 、減 圧 下 濃 縮 し て 、水 ( 100 ml) お よ び AcOEt( 100 ml)を 加 え 、AcOEt( 100
ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 飽 和 食 塩 水 ( 100 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で
乾燥し、ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー
(he xane :AcOE t = 1: 1)に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物 46c ( 10.0 g, 98 .0%) を 得 た 。1 H NM R
(400 M Hz , CDCl 3 )  1.54 ( s, 3H) , 1.65 ( s, 3H) , 4.17 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 4.23 ( d, 1H, J =
8.3 Hz) , 4.37 ( d, 1H, J = 8.5 Hz) , 4.41 ( d, 1H, J = 8.5 Hz) , 5.62 ( d, 1H, J = 12.7 Hz) , 5.88
(br s, 1H), 6.18 ( d, 1H, J =16.1 Hz ), 6.21 ( d, 1H, J = 12.7 Hz) , 6.30 ( d, 1H, J = 3.3 Hz) ,
6.30 ( br s, 1H) , 6.04 -6.37 ( m, t ot al 2H) , 6.43 ( d, 1H, J =16.1 Hz) , 6.46 ( d, 1H, J = 2.1 Hz) ,
82
7.36 ( d, 1H, J = 1.6 Hz) , 7.49 ( d, 1H, J = 1.6 Hz) ; I R ( CD Cl 3 ) 3451, 2252, 1757, 1396,
1374, 1281, 1165, 1044, 1016 cm - 1 ; M S (EI) m /z: 193 (M + ) .
(4R)-M et hyl-4- [2-(t hi ophe n-2- yl )et hyl] oxazolidin-2- one (30 a)
10% Palladi um-char coal ( 10% Pd-C) ( 50% wet , 4.50 g)を M e OH ( 30.0 ml)に 懸 濁 し 、
(4R ) -Me thyl -4-[2-( t hi ophe n-2-yl )e t he nyl]oxaz olidin -2-one 46 a ( 18.0 g, 86.0 mmol) を
Me OH ( 150 ml)に 溶 解 し た 溶 液 を 加 え 、 水 素 雰 囲 気 下 、 室 温 で 10 時 間 攪 拌 し た 。 反
応 液 中 の pall adi um-char coal を セ ラ イ ト ろ 過 し た 後 、ろ 液 を 減 圧 下 留 去 し た 。残 渣 を
Et 2 O ( 20.0 ml)洗 浄 し 、 標 記 化 合 物 30a ( 16.5 g, 91 .0% yie ld, 85.0%ee) を 得 た 。 な お 、
得 ら れ た 30a の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条 件 を 用 い た HPLC 分 析 に よ り 決 定 し た 。
D AI CE L CHI RALCE L OD -H ( 4.6 x 250 mm) , he xane:2-propanol = 60: 40, 流 速 : 0.50
ml/min, 温 度 : 25.0 o C. (S)-30a と (R)-30a の 保 持 時 間 は そ れ ぞ れ 16.8 分 と 17.6 分 で あ
っ た 。 [] 2 5 D = +5.1 (c 2.4; CHCl 3 ) ; 1 H NM R ( 400 M Hz, CDCl 3 )  1.42 ( s, 3H) , 2.08-1.92
(m, 2H) , 3.00 -2.84 ( m, 2H), 4.08 ( d, 1H, J = 8.4 Hz ), 4.19 ( d, 1H, J = 8 .4 Hz) , 5.39 ( brs,
1H), 6.81 ( d, 1H, J = 3.6 Hz) , 6.93 ( dd, 1H, J = 5.2, 3.6 Hz), 7.15 ( d, 1H, J = 5.2 Hz ); I R
( KBr): 3283, 1770, 1399, 1244, 1043, 941, 846, 775, 706, 691 cm - 1 ; M S (E SI) m/z: 211
(M + ) .
ま た 、得 ら れ た 標 記 化 合 物 30a ( 85.0%ee , 11.0 g)は 、Ac OE t ( 25.0 ml) と he xane ( 5.00
ml)を 用 い た 再 結 晶 操 作 を 行 う こ と で 、 光 学 純 度 の 高 い 30a ( 4.00 g, 99.0%e e)へ と 変
換 す る こ と が で き た 。 [] 2 5 D = +7.8 ( c 2.0; CHCl 3 ) .
(4R)-M et hyl-4- [2-(1- met hylpyrrol -2- yl)e thyl]-1 ,3- oxazolidin -2- one (3 0b)
10% Pd-C ( 50% we t , 2.02 g)を Me OH ( 40.0 ml)に 懸 濁 し 、 ( 4R) -4-me thyl -4-[2-( 1methylp yrrol -2- yl )et he nyl ]-1,3-oxaz olidin-2-one 46b ( 20.3 g, 97.8 mm ol) を Me OH ( 360
ml) に 溶 解 し た 溶 液 を 加 え 、 水 素 雰 囲 気 下 、 室 温 で 1 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 中 の
palladium-ch arcoal を セ ラ イ ト ろ 過 し た 後 、ろ 液 を 減 圧 下 留 去 し た 。 残 渣 を シ リ カ ゲ
ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane: Ac OEt = 3:2) に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物 30b ( 18.8 g,
83
88.0% yie ld, 75.0%ee)を 得 た 。な お 、得 ら れ た 30b の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条 件 を 用
い た HPLC 分 析 に よ り 決 定 し た 。 D AI CE L CHI RALCE L OJ ( 4.6 x 250 mm) ,
he xane :2-propanol = 70: 30, 流 速 : 1.0 ml/min, 温 度 : 25.0 o C. (S) -30b と (R)-30 b の 保 持
時 間 は そ れ ぞ れ 12.5 分 と 15.5 分 で あ っ た 。 1 H NM R ( 400 M Hz , CD Cl 3 )  1.42 ( s, 3H) ,
2.00-1.87 ( m, 2H) , 2.70 -2.58 ( m, 2H) , 4.07 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 4.14 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) ,
5.15 ( br s, 1H) , 5.88 ( br d, 1H, J = 3.2 Hz) , 6.05 ( dd, 1H, J = 3.2, 2.4 Hz ), 6.58 (t, 1H, J =
2.4 Hz); IR ( KBr) 3289, 3103, 2977, 2938, 1759, 1713, 1495, 1397, 1381, 1309, 1281,
1231, 1032, 945, 928, 776, 718, 706, 656 cm - 1 ; MS (E I) m /z: 208 (M + ) .
(4R)-M et hyl-4- [2-(f uran-2- yl)et hyl]-1 ,3- oxazolidin-2- one (30 c)
10% Pd-C ( 50% we t , 1.00 g)を Me OH ( 20.0 ml)に 懸 濁 し 、 ( 4R) -me thyl -4-[2-( furan2-yl)e the nyl ]-1,3-oxaz ol i di n -2-one 46c ( 10.0 g, 52.0 mmol) を Me OH ( 180 ml)に 溶 解 し
た 溶 液 を 加 え 、水 素 雰 囲 気 下 、室 温 で 40 分 間 攪 拌 し た 。反 応 液 中 の palladium-char coal
をセライトろ過した後、ろ液を減圧下留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフ
ィ ー (he xane : AcOE t = 3: 2 t o 1: 1)に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物 30c ( 7.95 g, 78.0% yield,
84.0%ee)を 得 た 。 な お 、 得 ら れ た 30c の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条 件 を 用 い た HPLC
分 析 に よ り 決 定 し た 。 D AICE L CHI RALCE L AD ( 4.6 x 250 mm) , he xane:2-propanol =
85: 15, 流 速 : 1.0 ml / mi n, 温 度 : 25.0 o C. (S) -45c と ( R)-45c の 保 持 時 間 は そ れ ぞ れ 13.1
分 と 15.4 分 で あ っ た 。 1 H NM R ( 400 M Hz , CDCl 3 )  1.38 ( s, 3H) , 1.68-1.61 ( m, 2H) ,
1.98-1.94 ( m, 2H) , 2.72 (t , 2H, J = 8.0 Hz) , 4.04 ( d, 1H, J = 8.4 Hz) , 4.11 ( d, 1H, J = 8.4
Hz) , 5.92 ( br s, 1H) , 6.03 ( d, 1H, J = 2.6 Hz) , 6.29 ( br d, 1H, J = 2.6 Hz) , 7.31 ( br s, 1H,);
IR ( CD Cl 3 ) 3450, 2975, 2928, 225 0, 1755, 1599, 1508, 1400, 1381, 1147, 1045, 1010
cm - 1 ; M S (EI) m/ z: 195 (M + ) .
(2R)- Amino-2- met hyl-4-(t hi ophe n-2- yl)but an-1- ol 1/2 D -(-)-t art rat e ( 16a)
(4R ) -Me t hyl -4-[2-( t hi ophe n-2-yl ) ]ethyl]oxaz olidin -2-one 30 a ( 85.0%e e , 7.30 g, 34.6
mmol)を T HF ( 35.0 ml)お よ び Me OH ( 70.0 ml)の 混 合 液 に 溶 解 し 、 5 規 定 KOH 水 溶 液
(70.0 ml)を 加 え 、 2 日 間 加 熱 還 流 し た 。 冷 却 後 、 反 応 液 に 水 (150 ml) を 加 え 、 CH 2 Cl 2
84
(150 ml x 2)で 抽 出 し 、 有 機 層 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶
媒 を 留 去 し 、残 渣 を Et OH ( 60.0 ml)に 溶 解 し 、D -( -) -tartrate ( 5.19 g, 34.6 mmol) の E tOH
(50.0 ml)溶 液 を 加 え て 10 分 間 撹 拌 し た 後 、析 出 し た 結 晶 を ろ 取 し 、粗 結 晶 16a ( 7.56
g)を 得 た 。 粗 結 晶 ( 7.56 g)を E t OH ( 75.0 ml)と 水 ( 50.0 ml)の 混 合 溶 媒 か ら 再 結 晶 し 、
標 記 化 合 物 16a ( 5.89 g, 98.0%ee)を 無 色 板 状 晶 と し て 得 た 。 得 ら れ た 標 記 化 合 物 16a
(5.89 g, 98.0%ee) に 対 し 、 Et OH ( 60.0 ml)と 水 ( 54.0 ml)で 再 結 晶 操 作 を 再 度 行 う こ と
で 、16a ( 5.11 g, 38.0% yi e l d, 99.7%ee) が 得 ら れ た 。mp: 234-235 o C; [] 2 4 D = – 14 (c 1.0;
H 2 O) ; IR ( KBr) 3400, 3218, 3126, 2937, 2596, 1599, 1530, 1400, 1124, 1077, 715 cm - 1 .
Anal . Calcd for C 9 H 1 5 N OS· 0.5C 4 H 4 O 6 : C, 50.95; H, 6.61; N , 5.40; S, 12.36. Found: C,
50.68; H, 6.91; N, 5.38; S, 12.48.
な お 、 16a の 光 学 純 度 は 、 以 下 の 操 作 に よ り 決 定 し た 。
(2R ) -Ami no-2-met hyl -4-( t hi ophe n-2-yl) butan-1-ol 1/2 D -( -) -tartrate 1 6a ( 62.1 mg,
0.160 mmol)を CH 2 Cl 2 ( 1.60 ml)に 懸 濁 し 、 Boc 2 O ( 176 mg, 0.810 m mo l) 、 trie thylami ne
(0.230 ml, 1.62 mmol ) 、 お よ び 4-dime thylaminop yridine ( 3.00 mg, 25.0 mol)を 加 え 、
室 温 で 30 分 間 撹 拌 し た 。 水 ( 500 l)を 加 え 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 残 渣 を シ リ カ ゲ
ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane: Ac OEt = 1:1)に よ り 精 製 し て 、 ( 4R) -M ethyl -4-[2(thiophe n-2-yl ) ]e t hyl ]oxaz oli di n -2-one 30 a ( 20.0 mg, 60.0%)を 得 た 。得 ら れ た 30a は 先
に 示 し た 条 件 で HPLC 分 析 を 行 い 、 光 学 純 度 を 決 定 し た 。
(2R)- Amino-2- met hyl-4-(1- me thylpyr rol-2 - yl) but an -1- ol 1 /2 D-(-) -t art rate (16 b)
(4R ) -Me t hyl -4-[2-( 1-me t hyl pyr rol -2-yl) ethyl]-1,3-oxaz olidin-2-one 30 b ( 17.9 g, 86.0
mmol)を T HF ( 250 ml)お よ び Me OH ( 125 ml)の 混 合 液 に 溶 解 し 、 5 規 定 KOH 水 溶 液
(125 ml)を 加 え 、4 日 間 加 熱 還 流 し た 。冷 却 後 、反 応 液 に 水 ( 200 ml) を 加 え 、CH 2 Cl 2 ( 200
ml x 2)で 抽 出 し 、 有 機 層 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を
留 去 し 、 残 渣 を Et OH ( 260 ml)に 溶 解 し 、 D -( -) -tartrate ( 6.45 g, 43.0 mmol) を 加 え て 2
時 間 撹 拌 し た 後 、 析 出 し た 結 晶 を ろ 取 し 、 粗 結 晶 ( 20.7 g)を 得 た 。 粗 結 晶 (18.7 g)を
EtOH ( 370 ml)と 水 ( 37.0 ml)の 混 合 溶 媒 か ら 再 結 晶 し 、得 ら れ た 結 晶 を 再 度 EtOH ( 300
ml)と 水 ( 30.0 ml)の 混 合 溶 媒 か ら 再 結 晶 し 、さ ら に 得 ら れ た 結 晶 を 再 度 EtOH ( 240 ml)
と 水 ( 24.0 ml) の 混 合 溶 媒 か ら 再 結 晶 し て 、 標 記 化 合 物 16b ( 10.5 g, 47.0% yie ld,
99.7%ee)を 無 色 鱗 片 状 晶 と し て 得 た 。 mp: 198-199 o C; [] 2 4 D = – 13 (c 1.0; H 2 O) ; I R
( KBr) 3480, 3430, 2926, 2634, 2545, 1586, 1516, 1389, 1359, 1309, 1291, 1105, 1039,
710, 690 cm - 1 ; M S (FAB) m /z: 183 ( M +H) + as free form of title compoun d. Anal . Calcd for
85
C 1 0 H 1 8 N 2 O0.5C 4 H 4 O 6 : C; 56.01, H; 8.23, N ; 10.89. Found: C; 55.81, H; 8.22, N ; 10.89.
な お 、 16b の 光 学 純 度 は 、 以 下 の 操 作 に よ り 決 定 し て い る 。
(2R ) -Ami no-2-met hyl -4-( 1-me t hylpyrr ol -2-yl) butan-1-ol 1/2 D -( -) -tartr ate 16 b ( 41.4
mg, 0.160 mmol ) を CH 2 Cl 2 ( 1.60 ml) に 懸 濁 し 、 Boc 2 O ( 176 m g, 0.810 mmol) 、
triethylamine ( 0.230 ml , 1.62 mmol) 、 お よ び 4-dime thylaminop yridine ( 2.00 m g, 16.0
mol)を 加 え 、室 温 で 30 分 間 撹 拌 し た 。 水 ( 500 l)を 加 え 、減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、残
渣 を シ リ カ ゲ ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane:Ac OE t = 3: 2 to 2:1)に よ り 精 製 し て 、
(4R ) -me thyl -4-[2-( 1-met hyl p yrrol -2- yl)e thyl]-1,3-oxaz olidin -2-one 30 b (17. 7 mg, 53.0%)
を 得 た 。得 ら れ た 30 b は 先 に 示 し た 条 件 で HPLC 分 析 を 行 い 、光 学 純 度 を 決 定 し た 。
(2R)- Amino-2- met hyl-4-(f uran-2- yl) but an-1- ol 1/2 D-(-)t art rat e (16c)
(4R ) -Me t hyl -4-[2-( furan-2- yl ) et hyl]-1,3-oxaz olidin -2-one 30c ( 29.9 g, 153 mmol) を
T HF ( 150 ml)お よ び Me OH ( 150 ml)の 混 合 液 に 溶 解 し 、 5 規 定 KO H 水 溶 液 ( 150 ml)
を 加 え 、3 日 間 加 熱 還 流 し た 。冷 却 後 、反 応 液 に 水 ( 100 ml)を 加 え 、 CH 2 Cl 2 ( 100 ml x
2)で 抽 出 し 、 有 機 層 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去
し 、残 渣 を Et OH ( 250 ml)に 溶 解 し 、 D -( -) -tartrate ( 11.5 g, 76.6 mmol) の EtOH ( 100 ml)
溶 液 を 加 え て 10 分 間 撹 拌 し た 後 、析 出 し た 結 晶 を ろ 取 し 、得 ら れ た 結 晶 を 再 度 EtO H
(300 ml)と 水 ( 75.0 ml)の 混 合 溶 媒 か ら 再 結 晶 し て 、標 記 化 合 物 16c ( 24.4 g, 65.0% yie ld,
99.3%ee)を 無 色 板 状 晶 と し て 得 た 。 mp: 200-204 o C; [] 2 4 D = -13 ( c 1.0; Me OH) , -12 ( c
1.0; H 2 O) ; I R ( KBr) 3405, 3226, 3135, 2943, 2597, 1598, 1528, 1401, 1299, 1228, 1124,
1079, 1003, 740 cm - 1 ; M S ( FAB) m/ z: 170 (M +H) + as free form of title compound. Anal .
Calcd for C 9 H 1 5 N O 2 0.5C 4 H 4 O 6 : C; 54.09, H; 7.43, N ; 5.73. Found: C; 53.93, H; 7.30, N ;
5.79.
な お 、 16c の 光 学 純 度 は 、 以 下 の 操 作 に よ り 決 定 し た 。
(2R ) -Ami no-2-met hyl -4-( furan-2- yl) butan-1-ol 1/2 D -( -)tartrate 16 c ( 51.2 mg, 0.160
mmol)を CH 2 Cl 2 ( 1.60 ml)に 懸 濁 し 、 Boc 2 O ( 176 mg, 0.810 mmol) 、 trie thylamine ( 0.230
ml, 1.62 mmol)、 お よ び 4-di met hyl a minopyridine ( 3.00 mg, 0.0250 mm ol) を 加 え 、 室 温
で 20 分 間 撹 拌 し た 。 水 ( 500 l )を 加 え 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル ク
ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (he xane: Ac OEt = 1:1) に よ り 精 製 し て 、 ( 4R) -me thyl -4-[2-( furan-2
-yl)e thyl]-1,3-oxaz oli di n-2-one 30c ( 18.0 mg, 58.0% )を 得 た 。 得 ら れ た 30c は 先 に 示 し
た 条 件 で HPLC 分 析 を 行 い 、 光 学 純 度 を 決 定 し た 。
86
(S)-2-[ (tert-B ut oxyc arbonyl ) ami no]-3-[( te rt-but yldiphenylsilyl) oxy ]-2 -met hylpropanol (55)
(2R ) -tert -But oxyca rbon yl ami no -3-he xanoylox y-2-me thyl -1-pr opanol (R) -17 a ( 6.9 g, 23
mmol) の
CH 2 Cl 2 ( 50 ml ) 溶 液 に 、 氷 冷 下 、 imidaz ole
( 4.6 g,
68
mmol) と
te rt -butyldi phe nyl si l l yl chl ori de ( TBDM SCl) ( 9.3 g, 34 mmol) を 加 え た 後 、 室 温 ま で 昇
温 し 、 2 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に Et 2 O ( 1000 ml) を 加 え た 後 、 析 出 し た 不 溶 物 を セ ラ
イ ト ろ 過 し 、ろ 液 を 減 圧 下 、濃 縮 し た 。得 ら れ た 残 渣 を M e OH ( 45 ml ) と T HF ( 45 ml)
で 希 釈 し 、0℃ に 冷 却 し た 後 、 1 規 定 N aOH 水 溶 液 ( 45 ml)を 加 え た 。 室 温 で 3 時 間 攪
拌 後 、 溶 媒 を 減 圧 下 に て 留 去 し た 。 CH 2 Cl 2 ( 50 ml x 3)で 抽 出 し た 後 、 有 機 層 を 飽 和
食 塩 水 (50 ml )で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留
去 し て 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane :AcOE t = 20:1 to 5:1)
に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 55 ( 8.4 g, 84%)を 無 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H NM R
(400M Hz , CD Cl 3 )  1.08 ( s, 9H), 1.23 ( s, 3H), 1.44 ( s, 9H), 1.61 ( brs, 1H), 3.53 -3.77 ( m,
4H), 5.12 ( brs, 1H) , 7.30 -7.45 ( m, 6H) , 7.55 -7.65 ( m, 4H) ; I R ( KBr) 3424, 1715, 1696
cm - 1 ; MS ( FAB) m /z: 444 ( M + ) ; Ana l. Calcd for C 2 5 H 3 7 N O 4 Si: C, 67.68; H, 8.41; N , 3.16.
Found: C, 67.49; H, 8.34; N , 3.20.
(R)- N-( te rt -But oxyc arbonyl) -4- hydroxymet hyl-2 ,2 ,4-t rimet hyl-3- oxazolidine (56)
:st arting f rom ( S)-2- [(t ert-B ut oxyc arbonyl) amino]-3-[( te rt-but yldiphenylsilyl) oxy] -2met hylpropanol ( 55)
(S)-2-[(te rt -But oxyc arbon yl ) ami no ]-3-[( te rt -butyldiphe nylsilyl) oxy]-2 - methylpropanol
55 ( 8.4 g, 19 mmol) の CH 2 Cl 2 ( 100 ml)溶 液 に 、 2,2-dime thoxypropane (23 ml , 0.19 mol)
と BF 3 -OEt 2 ( 0.12 ml , 1.0 mmol) を 加 え た 後 、 室 温 で 1 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に
triethylamine ( 5.0 ml)を 加 え た 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し た 。 残 渣 を THF( 1.0 x 10 2 ml)
に 溶 解 さ せ 、 0℃ に て 、 T BAF (i n T HF, 1M , 29 m l, 29 mmol)を 加 え 、 室 温 ま で 昇 温 し
た 後 、 5 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に 水 ( 100 ml)を 加 え 、 Ac OE t ( 50 ml x 2)で 抽 出 し た 。
有 機 層 を 飽 和 食 塩 水 ( 50 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減
圧 下 溶 媒 を 留 去 し て 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (he xane :AcOE t =
10:1 to 1:1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 56 ( 3.4 g, 93%)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得
た 。 1 H N M R ( 400M Hz , CD Cl 3 )  1.43 ( s, 3H) , 1.49 ( s, 9H), 1.56 ( s, 6H), 3.75 -3.52 ( m,
87
4H), 4.55 ( brs, 1H), 4.57 ( brs, 1H); I R ( KBr) 3461, 2978, 1696, 1673, 1395, 1368, 1256,
1175, 1095 cm - 1 ; M S( FAB) m/ z: 247 (M +H) + .
:st arting
f rom
(2 S)- te rt-B ut oxyc arbonylamino-3- but anoyloxy-2- methyl-1- prop anol
((S)-44)
(2S) -te rt -But oxycarbon yl ami no -3-butano ylox y-2-me thyl -1-prop anol ( S) -44 ( 19 g, 70
mmol)の CH 2 Cl 2 ( 2.0 x 10 2 ml)溶 液 に 、 室 温 で 2,2-dimethoxyprop ane (83 m l , 0.70 mol)
と BF 3 -OE t 2 ( 0.40 ml , 3.4 mmol)を 加 え 、1 時 間 攪 拌 し た 。反 応 液 に triethylamine ( 10 ml)
を 加 え た 後 、減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、粗 製 の te rt -butyl ( 4S) -4-( butanoylo xyme thyl) -2,2,4trimethyl -oxaz ol i di ne -3-carbox yl at e を 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。得 ら れ た 租 生 成 物 を
T HF ( 100 ml)と M e OH ( 160 ml)に 希 釈 し た 後 、 1 規 定 N aOH 水 溶 液 ( 70 ml)を 加 え 、 室
温 で 20 分 間 攪 拌 し た 。 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し て 、 水 ( 150 ml)を 加 え た 後 、 CH 2 Cl 2 ( 100
ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 飽 和 食 塩 水 ( 50 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾
燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ
ィ ー (he xane : AcOE t = 10: 1 t o 2: 1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 56 ( 16 g, 91%)を 淡 黄
色油状物質として得た。
(S)- N-(te rt-B ut oxyc arbonyl) -4-f ormyl-2 ,2 ,4-t rimet hyl -3- oxazolidine ( 19)
Oxalyl chl ori de ( 2.18 g, 17.2 mmol) の CH 2 Cl 2 ( 30.0 ml)溶 液 を -78℃ に 冷 却 し た 後 、
Dimethylsul foxi de (D MSO) ( 2.23 g, 28.6 mmol) を 加 え 、 同 温 で 5 分 間 攪 拌 し た 。 反 応
液 に 、 (R) -N-(t e rt -But oxyc arbon yl) -4-h ydrox yme thyl -2,2,4-trime thyl -3-oxaz olidine 56
(3.52 g, 14.3 mmol) の CH 2 Cl 2 ( 30.0 ml)溶 液 を 加 え 、 -78℃ で 15 分 間 攪 拌 し た 後 、
triethylamine( 5.79 g, 57.2 mmol) を 加 え た 。反 応 液 を 室 温 ま で 昇 温 し 、飽 和 重 曹 水 (70.0
ml)を 加 え 反 応 を 停 止 さ せ た 後 、 Et 2 O ( 70.0 ml)を 加 え た 。 有 機 層 を 1 規 定 KHSO 4 水
溶 液 ( 30.0 ml )、 飽 和 重 曹 水 ( 70.0 ml)、 飽 和 食 塩 水 ( 70.0 ml)で 順 に 洗 浄 し た 後 、 有 機
層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去して、残渣をシリ
カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane :AcOE t = 9:1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物
19 ( 3.34 g, 96.0%)を 白 色 固 体 と し て 得 た 。 1 H NM R ( 400M Hz, CD Cl 3 )  1.30-1.70 ( m,
18H), 3.65-3.68 ( 2d, 1H, J = 6.9 Hz) , 3.92 ( d, 1H, J = 9.3 Hz) , 9.39 - 9.46 ( 2s, 1H); I R
( KBr) 1699, 1368, 1354 cm - 1 ; M S (E SI) m/ z: 245 (M) + ; Anal. Calcd for C 1 2 H 2 1 N O 4 : C,
59.24; H, 8.70; N, 5.76. Found: C, 59.52; H, 8.76; N , 5.71.
88
Biolog y
Inhibit ory acti viti e s ag ai nst H ost ve rsus Graft Re action in rat s (H v GR)
試 験 に は 、 2 系 統 の ラ ッ ト [ Le wis( 雄 、 6 週 齢 、 日 本 チ ャ ー ル ス ・ リ バ ー 株 式 会
社 ) と WKAH/ Hkm( 雄 、 7 週 齢 、 日 本 エ ス エ ル シ ー 株 式 会 社 )] を 使 用 し た 。 1 群 5
匹 の ラ ッ ト ( 宿 主 ) を 用 い た 。 ま ず 、 以 下 の 操 作 に よ り 、 HvGR の 誘 導 を 行 っ た 。
WKAH/ Hkm ラ ッ ト ま た は Le wis ラ ッ ト の 脾 臓 か ら 脾 臓 細 胞 を 単 離 し 、 RPMI 1640 培
地 ( ラ イ フ テ ク ノ ロ ジ ー 社 製 ) で 濃 度 1 x 10 8 個 /ml の 脾 臓 細 胞 浮 遊 液 を 作 製 し た 。
WKAH/ Hkm ラ ッ ト 脾 臓 細 胞 浮 遊 液 0.1 ml を Le wis ラ ッ ト の 両 後 肢 足 蹠 皮 内 ( HvGR
誘 発 群 )、 ま た は Le wi s ラ ッ ト の 脾 臓 細 胞 浮 遊 液 0.1 ml を Le wis ラ ッ ト の 両 後 肢 足
蹠 皮 内( 同 系 群 )に 注 射 し た 。次 に 、化 合 物 投 与 を 行 っ た 。ま ず 、試 験 用 化 合 物 を 、
0.5% ト ラ ガ カ ン ト 液 で 、 そ れ ぞ れ 0.8 mg/5 ml 、 0.08 mg/5 ml お よ び 0.008 mg/5 ml
の 濃 度 に 懸 濁 し た 。 調 製 し た 懸 濁 液 と 0.5% ト ラ ガ カ ン ト 液 を 、 そ れ ぞ れ 、 体 重 1
kg 当 た り 5 ml の 割 合 で 、1 日 1 回 、脾 臓 細 胞 注 射 日 か ら 4 日 間 連 日 で ラ ッ ト に 経 口
投 与 し た 。 ま た 、 同 系 群 ( Le wi s ラ ッ ト 脾 臓 細 胞 を 注 射 さ れ 、 化 合 物 を 投 与 さ れ な
い Le wis ラ ッ ト )と 対 照 群( WKAH/ Hkm ラ ッ ト 脾 臓 細 胞 を 注 射 さ れ 、化 合 物 を 投 与
さ れ な い Le wi s ラ ッ ト ) に は 、 0.5% ト ラ ガ カ ン ト 液 を 経 口 投 与 し た 。
各 個 体 の 膝 窩 リ ン パ 節 重 量 か ら 同 系 群 の 平 均 膝 窩 リ ン パ 節 重 量 を 引 き (「 HvGR に
よ る 膝 窩 リ ン パ 節 重 量 」 = ( G1)、 対 照 群 の 平 均 「 HvGR に よ る 膝 窩 リ ン パ 節 重 量 」 =
( G2) に 対 す る 化 合 物 投 与 群 の 各 個 体 の「 HvGR に よ る 膝 窩 リ ン パ 節 重 量 」= ( G3) か
ら 抑 制 率 を 算 出 す る (式 2)
抑 制 率 (%) = ( G2- G1)/ G3 x 100
(式 2)
な お 、ID 5 0 値 ( mg/ kg)は 化 合 物 の 投 与 量 と 抑 制 率 か ら 最 小 二 乗 法 を 用 い て 算 出 し た 。
89
第 3 章に関する実験
Dimet hyl (2 R,4 S)-2- te rt -but yl-4- met hyl -1,3- oxazolidine-3 ,4- dic arboxylate (67)
Dimethyl ( 2 R,4S) -2-t ert -but yl -1,3-oxaz olidine -3,4-dicarbox ylate 66 5 2 ) ( 384 g, 1.57
mol)の T HF ( 2.30 l) 溶 液 に 、 窒 素 雰 囲 気 下 、 N,N' -dime thylprop yle ne ure a (DM PU) ( 380
ml)と methyl i odi de ( 290 m l, 4.70 mol)を 加 え 、 -20℃ に 冷 却 し た 。 反 応 液 が -5℃ 以 上
に な ら な い よ う に 留 意 し つ つ 、 l it hium bis( trime thylsilyl) amide ( LiH MD S) ( 1.0 M in
T HF, 1.80 l , 1.80 mol)を ゆ っ く り と 滴 下 し た 。 滴 下 後 、 さ ら に -10℃ で 1 時 間 攪 拌 し
た 。反 応 液 に 10% N H 4 Cl 水 溶 液 ( 300 ml)を 加 え た 後 、tolue ne ( 500 ml x 2)で 抽 出 し た 。
有 機 層 を 飽 和 食 塩 水 ( 200 ml x 2)で 洗 浄 し た 後 、減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、標 記 化 合 物 67
(373 g, 92.0%)を 無 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 得 ら れ た 化 合 物 は 精 製 操 作 を 行 う こ と な
く 、 次 の 反 応 に 使 用 し た 。 [] 2 7 D = -9.7 (c 1.0, M e OH) ; 1 H NM R ( 400 M Hz , CDCl 3 ) 
0.97( s, 9H) , 1.62 (s, 3H) , 3.69 ( s, 3H), 3.77 ( s, 3H) , 3.82 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 4.28 ( d, 1H,
J = 8.3 Hz ), 5.15 ( s, 1H) ;
13
C NM R ( 100 M Hz , CD Cl 3 )  21.2, 26.3, 39.0, 52.4, 52.6, 66.5,
76.9, 97.6, 155.1,172.2; I R ( Li qui d Film) 2958, 2909,1737, 1719, 1478, 1443, 1345, 1313,
1282, 1249, 1218, 1195, 1141, 1115, 1059, 1034 cm - 1 ; M S (FAB) m/z: 260 (M +H) + .
Methyl (2 R,4 R)-2- te rt- but yl-4- hydroxymethyl-4- me thyl-1 ,3- oxazolidine-3- c arboxylate
(26)
Lithium chl ori de ( 132 g, 3.13 mol )と litium boroh ydride ( 68.0 g, 3.13 m ol)に 窒 素 雰 囲
気 下 、T HF ( 3.80 l)を 加 え 、1 時 間 攪 拌 し た 。反 応 液 に 、dimethyl ( 2R ,4S) -2-te rt -butyl 4-methyl -1,3-oxaz ol i di ne -3,4-di carbox ylate 67 ( 373 g, 1.44 mol)の toluene ( 1.15 l)溶 液
を 滴 下 し た 後 、室 温 で 3 時 間 攪 拌 し た 。氷 浴 下 、反 応 液 を 冷 却 し 、10% N H 4 Cl 水 ( 300
ml)を ゆ っ く り と 滴 下 し た 後 、 t ol ue ne ( 500 ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 (500 ml)
で 洗 浄 し た 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 標 記 化 合 物 26 ( 327 g, 98.0%) を 無 色 油 状 物 質
として得た。得られた化合物は精製操作を行うことなく、次の反応に使用した。
[] 2 7 D = +13 (c 1.0, Me OH) ; 1 H NM R ( 400 M Hz , CD Cl 3 )  0.93 ( s, 9H), 1.43 ( s, 3H) , 3.55
90
(d, 1H, J = 11.3 Hz) , 3.71 ( s, 3H) , 3.74 ( d, 1H, J = 8.6 Hz) , 3.83 ( d, 1H, J = 11.3 Hz) , 3.87
(d, 1H, J = 8.6 Hz), 5.13 ( s, 1H);
13
C N M R ( CD Cl 3 , 100 M Hz)  19.5, 26.4, 38.6, 52.5,
65.2, 67.1, 75.8, 97.3, 156.8; IR ( Li quid Film) 3440, 2959, 2909, 2875, 1709, 1686, 1479,
1447, 1399, 1358, 1317, 1281, 1196, 1172, 1134, 1112, 1069, 1047, 960, 805, 759 cm - 1 ;
MS (FAB) m/ z: 232 (M +H) + .
Methyl
(2 R,4 S)-2- te rt -but yl-4-( i odome thyl)-4- me thyl-1 ,3- oxazolidine-3- c arboxylate
(68)
Iodine ( I 2 ) ( 0.13 g, 0.52 mmol ) の tolue ne ( 10 ml)溶 液 に triphe nylphos phine ( 0.14 g,
0.52 mmol)を 加 え 、60℃ で 30 分 間 攪 拌 し た 後 、methyl ( 2R,4R) -2-te rt - butyl -4-h ydrox ymethyl -4-me t hyl -1,3-oxaz ol i di ne -3-carbox ylate 26 ( 0.10 g, 0.43 mmol) の tolue ne ( 3.5 m l)
溶 液 と 、imi daz ole ( 35 mg, 0.52 mmol) を 加 え 、60℃ で 1 時 間 攪 拌 し た 。反 応 液 中 の 不
溶物をろ別した後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロ
マ ト グ ラ フ ィ ー (he xane: Ac OEt = 20:1 to 5:1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 68 ( 53 mg,
36%)を 無 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H N M R ( 400 M Hz , CD Cl 3 )   0.92 ( s, 9H) , 1.56 ( s,
3H), 3.36 ( d, 1H, J = 9.4 Hz) , 3.65 ( s, 3H) , 3.75 ( d, 1H, J = 9.0 Hz) , 3.78 ( d, 1H, J = 9.4
Hz) , 4.02 ( d, 1H, J = 9.0 Hz) , 5.22 ( s, 1H); MS( ESI ) m/ z: 342 ( M +H) + .
Methyl (2 R,4 R)-4 -[( be nzyl oxy)met hyl] -2-tert- but yl-4- methyl-1 ,3- oxazolidine- 3carboxylat e (6 9)
Methyl
( 2R ,4R) -2-te rt -but yl -4-( hyd rox yme thyl) -4-me thyl -oxaz olidine -3-carbox ylate
26 ( 11.0 g, 48.0 mmol)の D M F ( 100 ml )溶 液 を 0 o C に 冷 却 し た 後 、sodium hydride ( 60%
in mine ral oi l , 2.20 g, 58.0 mmol)を 加 え 、 10 分 間 攪 拌 し た 。 同 温 に て 、 be nz ylbromide
(10.7 g, 62.0 mmol )を 加 え た 後 、 室 温 ま で 昇 温 し 、 2 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に 飽 和
N H 4 Cl 水 溶 液 ( 100 ml)を 加 え 、 AcOE t( 200 ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 (100 ml)、
飽 和 食 塩 水 ( 100 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶
媒 を 留 去 し て 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane:AcOE t = 5:1 to
91
3:1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 69 ( 13.6 g, 88.0%)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。
[] 2 0 D = -14 (c 1.0, CH 3 OH) ; 1 H NM R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  0.89 ( s, 9H) , 1.39 ( s, 3H), 3.63
(m, 1H) , 3.64 (s, 3H), 3.86 ( brs, 1H) , 3.72 ( d, 1H, J = 8.8 Hz) , 4.13 ( d, 1H, J = 8.8 Hz) ,
4.51 ( q, 2H, J = 11.7 Hz) , 5.11 ( brs, 1H) , 7.24 -7.35 ( m, 5H) ;
13
C N M R ( 126 M Hz , CD Cl 3 )
 20.6, 26.5, 38.6, 52.0, 63.4, 73.5, 74.7 ; I R ( KBr) 2954, 1707, 1441, 1338, 1311, 1174,
1111, 1063, 1028, 958, 737, 698 cm - 1 ; MS ( FAB) m / z: 322 (M +H) + ; HRM S ( ESI): calcd for
C 1 8 H 2 8 N O 4 [M +H] + 322.2022, found 322.2018.
Methyl [(2S)-1-( be nzyl oxy)-3- hydroxy-2- met hylpropan-2- yl] c arbamate (70 )
Methyl ( 2R ,4R) -4-[( be nz yl oxy) methyl] -2-te rt -butyl -4-me thyl -1,3-oxaz olidine -3carbox ylate 69 ( 9.90 g, 25.0 mmol)の M e OH ( 120 ml)溶 液 に p -TsOH mo nohydr ate ( 1.5 0 g,
8.50 mmol)を 加 え 、加 熱 還 流 下 、1 時 間 攪 拌 し た 。減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、粗 生 成 物 と
し て 標 記 化 合 物 70 ( 13.6 g)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。得 ら れ た 70 は 精 製 操 作 を
行 う こ と な く 、 次 の 反 応 に 使 用 し た 。 M S (FAB) m/ z: 254 ( M +H) + .
(4R)-4 -[(Be nzyl oxy) met hyl ] -4- met hyl -1,3- oxazolidin-2- one (71)
粗 生 成 物 で あ る me t hyl [( 2S ) -1-( be nz ylox y) -3-hydrox y-2 -me thylpropan -2-yl]carbam ate 70 ( 13.6 g, <25.0 mmol ) の T HF ( 200 ml ) 溶 液 に 、 室 温 で potassium
te rt -butoxide ( 7.70 g, 68.0 mmol)を 加 え 、 3 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に 1 規 定 HCl 水 溶
液 ( 100 ml)を 加 え た 後 、 AcOE t ( 100 m l x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 (100 ml)、 飽 和
食 塩 水 ( 100 ml) で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を
留 去 し て 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane :Ac OEt = 3:1 to 1:2)
に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 71 ( 8.80 g, 95.0% for 2 ste ps)を 無 色 油 状 物 質 と し て 得
た 。な お 、得 ら れ た 71 の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条 件 を 用 い た HPLC 分 析 に よ り 決 定
し た 。 D AI CE L CHI RALCE L OD ( 4.6 x 250 mm) , he xane : 2-propanol = 85: 15, 流 速 : 1.0
ml/min, 温 度 : 25.0 o C. ( S)-71 と ( R)-71 の 保 持 時 間 は そ れ ぞ れ 6.2 分 と 9.0 分 で あ っ た 。
[] 2 0 D = +7.3 ( c 1.0, CH 3 OH) ; 1 H N M R ( 500 M Hz, CD Cl 3 )  1.35 (s, 3H) , 3.35 ( d, 2H, J =
4.4 Hz), 4.00 ( d, 1H, J = 8.8 Hz) , 4.19 ( d, 1H, J = 8.8 Hz) , 4.53 ( d, 2H, J = 2.4 Hz) , 5.26
(s, 1H), 7.27 -7.36 ( m, 5H) ;
13
C NM R ( 126 M Hz, CD Cl 3 )  23.0, 57.3, 73.4, 73.6, 75.1,
92
127.7, 128.0, 128.5, 137.5, 159.2; I R ( KBr) 3271, 1738, 1383, 1254, 1194, 1097, 1039,
933, 737, 698 cm - 1 ; MS ( FAB) m/ z: 222 (M +H) + ; HRM S (E SI) : calcd for C 1 2 H 1 6 N O 3
[M+H] + 222.1130, found 222.1121.
(4R)-4 -(H ydroxyme thyl)-4- me thyl-1 ,3- oxazolidin-2 - one (72)
(4R ) -4-[( Be nz yl oxy) me t hyl ] -4-me thyl -1,3-oxaz olidin-2-one 71 ( 2.6 g, 12 mmol) の
EtOH ( 150 ml )溶 液 に 、 pot assi um carbon ate ( 6.0 g, 43 mmol) と 10% Pd-C ( 50% wet, 4.0
g)を 加 え 、 水 素 雰 囲 気 下 、 室 温 で 3 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 を セ ラ イ ト ろ 過 し 、 ろ 液
を 減 圧 下 濃 縮 し 、 標 記 化 合 物 72 ( 2.6 g, 91%)を 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。 な お 、 得
ら れ た 化 合 物 は 精 製 す る こ と な く 、 次 の 反 応 に 使 用 し た 。 1 H NM R ( 500 M Hz ,
CD 3 OD )   1.22 ( s, 3H) , 3.37 ( d, 1H, J = 11.2 Hz) , 3.43 ( d, 1H, J = 11.2 Hz) , 3.98 ( d, 1H,
J = 8.6 Hz) , 4.29 ( d, 1H, J = 8.6 Hz) ; MS ( FAB) m/ z: 132 (M +H) + .
(4S)-4-( Iodomet hyl )-4- met hyl -1,3- oxazolidin-2- one (73)
粗 生 成 物 で あ る (4R) -4-( hyd rox yme thyl) -4-me thyl -1,3-oxaz olidin -2-one 72 ( 4.2 g, <31
mmol)の pyri di ne ( 40 m l)溶 液 に p -TsCl ( 8.9 g, 46 mmol) を 加 え 、 室 温 で 3 時 間 攪 拌 し
た 。 そ の 後 、 反 応 液 に 1 規 定 HCl 水 溶 液 ( 100 ml)を 加 え 、 CH 2 Cl 2 ( 100 ml x 2)で 抽 出
し た 。 有 機 層 を 2 規 定 HCl 水 溶 液 ( 50 ml)、 飽 和 食 塩 水 ( 50 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ
トリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去して、租生成物としてトシル化合
物 を 得 た 。 得 ら れ た ト シ ル 化 合 物 を ace tone ( 120 m l)に 溶 解 し た 後 、 N aI ( 18 g, 0.12
mol)を 加 え 、 加 熱 還 流 下 、 12 時 間 攪 拌 し た 。 不 溶 物 を ろ 過 し た 後 、 ろ 液 を 減 圧 下 濃
縮 し た 。残 渣 に 水 を 加 え 、AcOE t ( 150 ml)で 抽 出 し 、有 機 層 を 飽 和 N a 2 SO 3 水 溶 液 ( 50
ml)、飽 和 食 塩 水 ( 50 ml)で 洗 浄 し た 後 、無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。過 後 、減 圧
下 溶 媒 を 留 去 し て 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (he xane :AcOE t =
2:1 to 1:2)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 73 ( 5.8 g, 78% for 2 ste ps)を 無 色 油 状 物 質 と
し て 得 た 。 [] 2 0 D = -15 ( c 1.0, CH 3 OH) ; 1 H N M R ( 500 M Hz, CD Cl 3 )  1.58 ( s, 3H) , 3.31
(d, 2H, J = 4.9 Hz) , 4.15 ( d, 1H, J = 8.8 Hz) , 4.28 ( d, 1H, J = 8.8 Hz ), 5.68 ( brs, 1H);
13
C
NM R ( 126 M Hz , CD Cl 3 )   15.1, 25.4, 57.2, 74.9, 158.5; I R ( KBr) 3248, 1776, 1401, 1289,
1214, 1140, 1051, 956, 762 cm - 1 ; M S (FAB) m/ z: 242 (M +H) + ; HRMS (E SI): calcd for
93
C 5 H 9 N O 2 I [M +H] + 241.9678, found 241.9687.
{[(4 S)-4-M et hyl-2- oxo-1,3 - oxazoli din-4- yl] met hyl}(t riphe nyl)phosphonium iodide
(24b)
(4S) -4-(I odomet hyl ) -4-met hyl -1,3-oxaz olidin-2-one
73
( 4.20
g,
1 7.0
mmol) の
DM F( 20.0 ml)溶 液 に 、 PPh 3 ( 46.0 g, 174 mmol)を 加 え 、 110℃ で 3 時 間 攪 拌 し た 。 反
応 液 を Me OH/ AcOE t ( 20 .0 ml/ 50.0 ml)で 希 釈 し た 後 、室 温 で 1 日 放 置 し た 。2 層 に 分
離した反応液の上層液体をデカントして除いた後、下層液体を減圧下濃縮し、租生
成 物 と し て 標 記 化 合 物 24b ( 7.00 g)を 得 た 。 得 ら れ た 租 生 成 物 は 再 度 Me OH/AcOE t
(20.0 ml /200 ml)を 用 い て 再 結 晶 操 作 を 行 い 、 高 純 度 の 24b ( 5.0 g, 57%)を 白 色 固 体 と
し て 得 た 。 mp: 106-110 o C; [] 2 0 D = -37 (c 1.6, CH 3 O H) ; 1 H N M R ( 500 M Hz , CD Cl 3 ) 
1.73 ( s, 3H) , 3.81 -3.87 ( m, 2H) , 4.40 ( dd, 1H, J = 3.2, 12.8 Hz ), 4.76 (dd, 1H, J = 3.2,
12.8 Hz) , 6.52 ( s, 1H) , 7.71 -7.75 ( m, 6H) , 7.80 -7.84 ( m, 3H) , 7.97 -8.01 ( m, 6H) ;
13
C NM R
(126 M Hz , CDCl 3 )  30.3 ( d, J = 8.0 Hz), 32.2 ( d, J = 49.1 Hz) , 57.0 ( d, J = 4.6 Hz) , 74.8,
118.0 ( d, J = 85.9 Hz ), 130.7 ( d, J = 12.7 Hz ), 134.0 ( d, J = 10.3 Hz ), 135.3 ( d, J = 3.0 Hz ),
157.2; I R ( KBr) 3394, 3225, 2854, 1741, 1438, 1108, 1052, 747, 690 cm - 1 ; HRM S (E SI):
calcd for C 2 3 H 2 3 IN O 2 P [M -I ] + 376.1466, found 376.1461.
(4R)-4 -Met hyl-4 -[( E)-2- phe nyl ethenyl]-1 ,3- oxazolidin-2- one (20 a)
(4S)-4-( diphe nylphosphoryl met hyl ) -4- met hyl - oxazolidin-2- one (24- O )
:typic al proce dure of a Wi ttig re action.
窒 素 雰 囲 気 下 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b ( 0.50 g, 1.0 mmol, 2.0 e q.) の T HF( 5.0 ml)溶 液
を -78℃ に 冷 却 し 、 n -but yl l it hi um ( 1.9 M in he xane, 1.0 m l, 2.0 mmol, 3.9 e q.) を ゆ っ く
り と 滴 下 し 、同 温 で 30 分 間 攪 拌 し た 。反 応 液 に be nz alde hyde 25 a ( 54 mg, 0.5 0 mmol,
1.0 e q.)を 加 え た 後 、 徐 々 に 昇 温 し 、 室 温 で 2 時 間 攪 拌 し た 。 そ の 後 、 飽 和 N H 4 Cl
水 溶 液 (10 ml)を 加 え 、 AcOE t ( 10 ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 ( 10 ml)と 飽 和 食 塩
水 (10 ml )で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し
て 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane :AcOE t = 3:1 to 1:1) に よ り
94
精 製 し て 、 標 記 化 合 物 20a ( 0.10 g, 99% yie ld, 98.6%e e) を 無 色 固 体 と し て 得 る と 同 時
に 、 ( 4S) -4-( di phe nyl phosphor yl me t hyl) -4-me thyl -oxaz olidin -2-one 24- O ( 0.16 g, 99%
yield)を 得 た 。な お 、得 ら れ た 20a の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条 件 を 用 い た HPLC 分 析
に よ り 決 定 し た 。 D AI CE L CHI RALCE L I A ( 4.6 x 250 mm) , he xane :ethanol = 95:5 ( 0
min) – 50:50 ( 8.0 mi n) , 流 速 : 2.0 ml/min, 温 度 : 25.0 o C. 保 持 時 間 は ( S)-20 a と ( R)-20 a
は そ れ ぞ れ 4.6 分 と 5.3 分 で あ っ た 。
(化 合 物 20 a) mp: 155.4-155.6 o C; [] 2 0 D = -61 ( c 0.27, CH 3 O H) ; 1 H N MR ( 500 M Hz ,
CD Cl 3 )  1.53 ( s, 3H), 4.17 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 4.23 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 5.09 ( s, 1H),
6.21 ( d, 1H, J = 16.1 Hz) , 6.59 ( d, 1H, J = 16.1 Hz) , 7.26 -7.36 ( m, 5H );
13
C NM R ( 126
M Hz , CD Cl 3 )  25.6, 58.5, 76.5, 126.7, 128.3, 128.7, 130.1, 131.2, 135.7, 159.0; I R ( KBr)
3293, 1756, 1710, 1393, 1288, 1171, 1042, 967, 751, 659 cm - 1 ; M S (E SI) m/ z: 203 ( M) + ;
Anal . Calcd for C 1 2 H 1 3 N O 2 : C, 70.92; H, 6.45; N , 6.89. Found: C, 70.80; H, 6.49; N , 6.83.
(化 合 物 24- O) mp: 180.6-181.4 o C; [] 2 0 D = +9.1 (c 0.41, CH 3 O H) ; 1 H N MR ( 500 M Hz ,
CD Cl 3 )  1.34 ( s, 3H) , 4.09 ( d, 1H, J = 8.8 Hz) , 2.60 -2.78 ( m, 2H) , 4.21 ( d, 1H, J = 8.8
Hz) , 6.44 ( brs, 1H) , 7.46 -7.57 ( m, 5H) , 7.67 -7.71 ( m, 2H), 7.78 -7.82 ( m, 2H) ;
13
C N MR
(126 M Hz , CD Cl 3 )  26.7, 39.9 ( d, J = 69.1 Hz) , 57.3 ( d, J = 4.8 Hz) , 77.4 ( d, J = 12.5 Hz) ,
128.9 ( d, J = 3.6 Hz) , 129.0 ( d, J = 3.6 Hz) , 130.3 ( d, J = 9.5 Hz) , 130.6 ( d, J = 9.5 Hz ),
132.2, 132.3, 132.8 ( d, J = 90.6 Hz), 133.6 ( d, J = 93.0 Hz) , 157.7; I R ( KB r) 3308, 1758,
1439, 1255, 1175, 1034, 930, 752, 699 cm - 1 ; HRM S (ESI): calcd for C 1 7 H 1 9 N O 3 P [M +H] +
316.1103, found 316.1105.
(4R)-4 -[( E)-2-(2 ,4- Di me thylphe nyl)et he nyl] -4- met hyl-1,3- oxazolidin- 2-one (20 b)
標 記 化 合 物 20b は 2,4-di me t hyl be nz alde hyde 25b を 用 い て 、 20a と 同 様 の 合 成 方 法
に よ り 黄 色 固 体 と し て 得 た ( 72% yield, E/ Z = >99/1)。mp: 114.6-115.5 o C; [] 2 0 D = -43 ( c
0.19, CH 3 OH) ; 1 H N MR ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  1.56 ( s, 3H) , 2.28 ( s, 6H) , 4.17 ( d, 1H, J =
8.3 Hz) , 4.23 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 5.03 ( brs, 1H) , 6.05 ( d, 1H, J = 15.6 Hz), 6.77 ( d, 1H, J
= 15.6 Hz) , 6.96 (s, 1H), 6.97 ( d, 1H, J = 8.3 Hz), 7.27 ( d, 1H, J = 8.3 Hz);
13
C NM R ( 126
M Hz , CD Cl 3 )  19.7, 21.1, 25.7, 58.7, 76.6, 125.6, 127.0, 127.8, 131.2, 131.6, 132.0,
135.6, 138.0, 158.9; I R ( KBr) 3206, 3112, 2970, 2871, 1782, 1736, 1403, 1291, 1037, 984
cm - 1 ; HRMS (E SI) : cal cd for C 1 4 H 1 8 N O 2 [M +H] + 232.1338, found 232.1337.
95
Methyl 2 - {( E)-2-[(4 R) -4-met hyl-2 - oxo-1,3- oxazolidin-4- yl]e thenyl}be nzoat e ( 20c)
標 記 化 合 物 20c は 2-met hoxyl c arbon ylbe nz alde hyde 25c を 用 い て 、 2 0a と 同 様 の 合
成 方 法 に よ り 淡 黄 色 固 体 と し て 得 た ( 75% yie ld, E /Z = >99/1)。 mp: 86.9-90.5 o C; [] 2 0 D
= -18 ( c 0.17, CH 3 OH) ; 1 H N M R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  1.59 ( s, 3H) , 3.88 ( s, 3H), 4.18 ( d,
1H, J = 8.3 Hz ), 4.26 ( d, 1H, J = 8.3 Hz ), 5.20 ( brs, 1H), 6.06 ( d, 1H, J = 16.1 Hz), 7.34
(m, 1H) , 7.42 ( d, 1H, J = 16.1 Hz) , 7.45 -7.50 ( m, 2H) , 7.92 ( m, 1H) ;
13
C NM R ( 126 M Hz,
CD Cl 3 )  25.3, 52.2, 58.7, 76. 3, 127.6, 127.8, 128.6, 129.8, 130.7, 13 2.3, 133.7, 138.0,
158.9, 167.5; I R ( KBr) 3206, 3112, 2970, 2871, 1782, 1736, 1403, 1291, 1037, 984 cm - 1 ;
HRMS ( ESI ): cal cd for C 1 4 H 1 6 N O 4 [M +H] + 262.1079, found 262.1077.
(4R)-4 -[( E)-2-(2 ,4 ,6- Tri met hoxyl phe nyl) ethenyl] -4 -methyl-1 ,3- oxazolidin -2- one (20d)
標 記 化 合 物 20d は 2,4,6-t ri met hox ylbe nz alde hyde 25d を 用 い て 、 20a と 同 様 の 合 成
方 法 に よ り 淡 灰 色 固 体 と し て 得 た ( 89% yie ld, E /Z = >99/1)。 mp: 108.2-119.7 o C; [] 2 0 D
= -27 (c 0.22, CH 3 O H) ; 1 H N M R ( 500 M Hz, CD Cl 3 )  1.59 ( s, 3H) , 3.85 ( s, 3H) , 3.86 ( s,
6H), 4.20 ( d, 1H, J = 10.5 Hz) , 4.28 ( d, 1H, J = 10.5 Hz) , 5.26 ( brs, 1H), 6.16 ( s, 2H) ,
6.60 ( d, 1H, J = 20.5 Hz) , 6.86 ( d, 1H, J = 20.5 Hz) ;
13
C N M R ( 100 M Hz, CD Cl 3 )   25.7,
55.3, 55.7, 59.3, 77.1, 90.5, 106.0, 120.3, 131.7, 158.8, 159.4, 160.6; IR ( KBr) 3313,
2941, 1764, 1732, 1605, 1460, 1230, 1124, 1039, 817 cm - 1 ; HRMS (E SI) : calcd fo r
C 1 5 H 2 0 N O 5 [M +H] + 294.1341, found 294.1358.
(4R)-4 -[( E)-2-(4 -D imethyl ami nophenyl)e thenyl] -4- me thyl-1 ,3- oxazolidin-2- one (20 e)
標 記 化 合 物 20e は 4-di me t hyl aminobe nz alde hyde 25e を 用 い て 、20a と 同 様 の 合 成 方
法 に よ り 無 色 固 体 と し て 得 た ( 63% yield, E/ Z = >99/1)。mp: 136.7-137.5 o C; [] 2 0 D = -77
96
(c 0.090, CH 3 O H) ; 1 H NM R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  1.56 ( s, 3H) , 2.97 ( s, 6H), 4.16 ( d, 1H, J
= 8.5 Hz) , 4.23 ( d, 1H, J = 8.5 Hz), 5.25 ( brs, 1H), 6.02 ( d, 1H, J = 15.9 Hz) , 6.51 ( d, 1H,
J = 15.9 Hz) , 6.69 ( d, 2H, J = 8.0 Hz) , 7.26 ( d, 2H, J = 8.0 Hz) ;
13
C NM R ( 125 M Hz ,
CD Cl 3 )  25.5, 40.5, 58.5, 76.8, 112.5, 126.5, 127.6, 130.1, 150.1, 158.7; I R ( KBr) cm - 1 :
3372, 3253, 2904, 1768, 1720, 1608, 1522, 1355, 1188, 1035, 966, 806, 770 cm - 1 ; HRMS
(ESI) : calcd for C 1 4 H 1 9 N 2 O 2 [M +H] + 247.1447, found 247.1439.
(4R)-4 -Met hyl-4 -[( E)-2-( thi ophe n-2- yl) ethenyl]-1 ,3- oxazolidin-2- one (46a)
標 記 化 合 物 46 a は 2-form yl t hi ophe ne 25 f を 用 い て 、 20 a と 同 様 の 合 成 方 法 に よ り
黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た ( 75% yi e ld, E/ Z = >99/1) 。 [] 2 0 D = -63 (c 0.38, CH 3 OH) ; 1 H
NM R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )   1.49 ( s, 3H), 4.16 ( d, 1H, J = 8.5 Hz) , 4.22 ( d, 1H, J = 8.5 Hz),
5.03 ( s, 1H), 6.04 ( d, 1H, J = 16.1 Hz) , 6.71 ( d, 1H, J = 16.1 Hz) , 6.94 -6.98 ( m, 2H) , 7.18
(d, 1H, J = 5.4 Hz) ;
13
C NM R ( 126 M Hz , CD Cl 3 )  25.2, 58.5, 76.5, 123.5, 125.1, 127.0,
127.6, 130.5, 140.7, 159.1; I R ( KBr) 3264, 1735, 1388, 1280, 1034, 956, 697 cm - 1 ; HRM S
(ESI) : calcd for C 1 0 H 11 N O 2 S [M +H] + 210.0589, found 210.0594.
(4R)-4 -Met hyl-4 -[( E)-2-(3 -methylt hiophe n-2- yl)et he nyl]-1 ,3- oxazolidin-2 - one (20 g)
標 記 化 合 物 20g は 2-formyl -3-me thylthiophe ne 25g を 用 い て 、 20 a と 同 様 の 合 成 方
法 に よ り 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た ( 99% yield, E/ Z = >99/1)。 [] 2 0 D = -36 (c 0.62,
CH 3 O H); 1 H NM R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  1.54 ( s, 3H) , 2.22 ( s, 3H), 4.16 ( d, 1H, J = 8.3
Hz) , 4.22 ( d, 1H, J = 8.3 Hz ), 5.01 ( brs, 1H) , 5.97 ( d, 1H, J = 15.6 Hz) , 6.72 ( d, 1H, J =
15.6 Hz) , 6.78 ( d, 1H, J = 4.9 Hz) , 7.07 ( d, 1H, J = 4.9 Hz) ;
13
C NM R ( 126 M Hz , CDCl 3 ) 
50.7, 58.7, 76.6, 121.8, 1 23.6, 129.8, 130.8, 134.2, 136.4, 159.1; IR ( KBr) 3218, 1730,
1401, 1286, 1173, 1036, 957, 724 cm - 1 ; HRM S (E SI) : calcd for C 11 H 1 4 N O 2 S [M +H] +
224.0745, found 224.0746.
97
(4R)-4 -[( E)-2-(3 -B romot hi ophe n-2- yl)et he nyl]-4- met hyl-1,3 - oxazolidin-2- one (20 h)
標 記 化 合 物 20h は 3-bromo-2-form ylthiophe ne 25 h を 用 い て 、 20 a と 同 様 の 合 成 方
法 に よ り 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た ( 66% yield, E / Z = >99/1)。 [] 2 0 D = -41 ( c 1.0,
CH 3 O H); 1 H NM R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  1.57 ( s, 3H) , 4.17 ( d, 1H, J = 8.3 Hz), 4.23 ( d, 1H,
J = 8.3 Hz) , 5.08 ( brs, 1H), 6.12 ( d, 1H, J = 16.1 Hz), 6.77 ( d, 1H, J = 16.1 Hz) , 6.93 ( d,
1H, J = 5.9 Hz) , 7.17 ( d, 1H, J = 5.9 Hz);
13
C NM R ( 126 M Hz, CD Cl 3 )  25.4, 58.5, 76.2,
111.73, 122.0, 124.9, 130.9, 132.6, 135.0, 158.7; IR ( KBr) 3220, 3107, 1744, 1727, 1402,
1295, 1036, 961, 870, 727 cm - 1 ; HRM S (E SI): calcd for C 1 0 H 11 N O 2 SBr [M+H] + 287.9694,
found 287.9691.
(4R)-4 -Met hyl-4 -[( E)-2-(1 -methyl-1H- pyrrol -2- yl)e thenyl]-1 ,3- oxazolidin -2- one (46b)
標 記 化 合 物 46 b は 2-form yl -1-me thylpyr role 25 i を 用 い て 、 20 a と 同 様 の 合 成 方 法
に よ り 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た (83% yield, E/ Z = >99/1) 。 [] 2 0 D = -31 ( c 0.23,
CH 3 O H); 1 H NM R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  1.52 ( s, 3H) , 3.60 (s, 3H) , 4.15 ( d, 1H, J = 8.3
Hz) , 4.19 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 5.00 (s, 1H) , 5.95 ( d, 1H, J = 15.6 Hz) , 6.08 ( d, 1H, J = 3.2
Hz) , 6.33 ( dd, 1H, J = 2.0, 3.2 Hz) , 6.46 ( d, 1H, J = 15.6 Hz) , 6.59 ( d, 1H , J = 2.0 Hz) ;
13
C
NM R ( 100 M Hz , CD Cl 3 )  25.8, 34.1, 58.6, 76.8, 107.0, 108.2, 118.7, 123.8, 127.9, 129.8,
158.9; I R ( KBr) 3278, 1734, 1478, 1375, 1033, 957, 712 cm - 1 ; M S( FAB) m/ z: 207 (M +H) + ;
HRMS ( ESI ): cal cd for C 11 H 1 4 N 2 O 2 [M +H] + 207.1134, found 207.1127.
(4R)-4 -[( E)-2-( Furan-2 - yl) et he nyl]-4 -met hyl-1 ,3- oxazolidin-2- one (46 c)
標 記 化 合 物 46c は 2-formyl furan 25j を 用 い て 、 20 a と 同 様 の 合 成 方 法 に よ り 淡 黄
色 油 状 物 質 と し て 得 た ( 82% yi el d, E/ Z = >99/1)。[] 2 0 D = -44 (c 0.20, CH 3 O H); 1 H N M R
98
(500 M Hz, CD Cl 3 )  1.52 ( s, 3H), 4.12 ( d, 1H, J = 8.3 Hz ), 4.24 ( d, 1H, J = 8.3 Hz ), 4.96
(s, 1H) , 6.16 ( d, 1H, J = 16.1 Hz) , 6.28 ( d, 1H, J = 3.4 Hz) , 6.37 ( dd, 1H, J = 1.7, 3.4 Hz),
6.40 ( d, 1H, J = 16.1 Hz) , 7.34 ( d, 1H, J = 1.7 Hz) ;
13
C NM R ( 126 M H z, CD Cl 3 )  25.5,
58.5, 76.6, 109.6, 111.6, 118.5, 129.4, 142.6, 151.4, 159.0; I R ( KBr) 3 276, 1749, 1391,
1039, 739 cm - 1 ; HRM S ( ESI): cal cd for C 1 0 H 11 N O 3 [M +H] + 194.0817, found 194.0813.
(4R)-4 -Met hyl-4 -( oct-1 -e n-1- yl)-1 ,3- oxazolidin-2- one (20 k)
標 記 化 合 物 20k は n -he pt anal 2 5 k を 用 い て 、20 a と 同 様 の 合 成 方 法 に よ り 無 色 油 状
物 質 と し て 得 た (62% yi e l d, E/ Z = 71/29)。 [] 2 0 D = -30 ( c 0.98, CH 3 O H); 1 H N MR ( 500
M Hz , CD Cl 3 )  0.86 (t , 3H, J = 7.6 Hz) , 1.19 -1.38 ( m, 8H) , 1.41 ( s, 2.1H), 1.46 ( s, 0.9H) ,
1.99-2.07 ( m, 2H), 4.06 ( d, 0.7H, J = 8.3 Hz) , 4.10 ( d, 0.7H, J = 8.3 Hz) , 4.21 ( d, 0.3H, J
= 8.3 Hz ), 4.28 ( d, 0.3H, J = 8.3 Hz) , 5.00 (s, 0.7H) , 5.15 ( s, 0.3H) , 5.41 -5.50 ( m, 1.4H) ,
5.64-5.70 ( m, 0.6H);
13
C NM R ( 126 M Hz , CDCl 3 )  14.1, 22.6, 25.5, 28.8, 29.0, 31.6,
32.1, 58.2, 76.7, 131.9, 133.8, 159.1; IR ( KBr) 3261, 2925, 1746, 1387, 1281, 1038, 969,
770 cm - 1 ; HRM S (E SI) : cal cd for C 1 2 H 2 1 N O 2 [M +H] + 212.1651, found 212.1654.
(4R)-4 -(2-C ycl ohe xylet henyl) -4- met hyl-1 ,3- oxazolidin-2- one (20 l)
標 記 化 合 物 20l は c -he xanal de hyde 25 l を 用 い て 、 20 a と 同 様 の 合 成 方 法 に よ り 無
色 油 状 物 質 と し て 得 た ( 62% yi el d, E/ Z = 88/12)。[] 2 0 D = -24 (c 0.44, CH 3 O H); 1 H N M R
(500 M Hz , CD Cl 3 )  0.99-1.33 ( m, 6H), 1.41 ( s, 2.7H) , 1.41 (s, 0.3H) , 1.62 -1.74 ( m, 4H) ,
1.92-1.98 ( m, 0.9H) , 2.07 -2.17 ( s, 0.1H), 4.07 ( d, 1H, J = 8.3 Hz ), 4.10 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) ,
4.90 ( brs, 0.9H) , 5.10 ( brs, 0.1H) , 5.36 -5.25 ( m, 0.2H) , 5.44 ( d, 0.9H, J = 15.6 Hz) , 5.62
(dd, 0.9H, J = 6.8, 15.6 Hz);
13
C NM R ( 126 M Hz , CD Cl 3 )  25.6, 25.9, 26.1, 32.7, 40.2,
58.2, 76.7, 129.6, 137.1, 159.0; I R ( KBr) 3210, 2922, 2849, 1742, 1397, 1286, 1038, 968,
771, 701 cm - 1 ; HRM S ( ESI): cal cd for C 1 2 H 1 9 N O 2 [M +H] + 210.1494, fou nd 210.1496.
99
(4R)-4 -Met hyl-4 -[2-(t hi ophe n-2- yl)et hyl]-1 ,3- oxazolidin-2- one (30 a)
(4R ) -4-M et hyl -4-[( E) -2-( t hi ophe n-2-yl)e the nyl]-1,3-oxaz olidin-2-one 46 a ( 0.20 g, 0.9 5
mmol)の Me OH ( 10 ml)溶 液 に 、 10% Pd-C ( 50%we t, 20 mg) を 加 え 、 水 素 雰 囲 気 下 、 室
温で 2 時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシ
リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane :AcOE t = 3:1 to 1:2)に よ り 精 製 し て 、 標
記 化 合 物 30a ( 0.18 g, 92% yi el d, 99 .0%e e)を 淡 黄 色 固 体 と し て 得 た 。 な お 、 得 ら れ た
30a の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条 件 を 用 い た HPLC 分 析 に よ り 決 定 し た 。 D AI CE L
CHIRALCE L OD -H ( 4.6 x 250 mm), he xane :2-propanol = 60:40, 流 速 : 0.50 ml/mi n, 温
度 : 25.0 o C. 保 持 時 間 は ( S)-30 a と ( R)-30 a は そ れ ぞ れ 16.8 分 と 17.6 分 で あ っ た 。mp:
82.8-83.5 o C; [] 2 0 D = +7.8 (c 2.0, CHCl 3 ), +1.9 ( c 0.10, CH 3 OH) ;
1
H NM R ( 400 M Hz ,
CD Cl 3 )  1.42 ( s, 3H), 2.08 -1.92 ( m, 2H) , 3.00 -2.84 ( m, 2H) , 4.08 ( d, 1H, J = 8.4 Hz) ,
4.19 ( d, 1H, J = 8.4 Hz) , 5.39 ( brs, 1H) , 6.81 ( d, 1H, J = 3.6 Hz) , 6.93 (dd, 1H, J = 5.2,
3.6 Hz) , 7.15 ( d, 1H, J = 5.2 Hz) ;
13
C N M R ( 100 M Hz, CD Cl 3 )  24.6, 25.9, 42.3, 57.5,
75.5, 123.6, 124.6, 127.0, 147.6, 159.5; I R ( KBr) 3283, 1770, 1399, 1244, 1043, 941, 846,
775, 706, 691 cm - 1 ; HRM S (ESI): calcd for C 1 0 H 1 4 N O 2 S [M +H] + 212.0275, found
212.0741.
(4R)-4 -Met hyl-4 -[2-(1- met hyl-1H- pyrrol -2- yl)et hyl]-1,3 - oxazolidin-2- one (30 b)
標 記 化 合 物 30b は 46b を 出 発 原 料 と し 、 30a と 同 様 の 合 成 方 法 に よ り 黄 色 油 状 物
質 と し て 得 た (88% yi el d, 99.0%e e)。 な お 、 得 ら れ た 30b の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条
件 を 用 い た HPLC 分 析 に よ り 決 定 し た 。 D AI CE L CHI RALCE L OJ ( 4.6 x 250 mm),
he xane :2-propanol = 70: 30, 流 速 : 1.0 ml/min, 温 度 : 25.0 o C. 保 持 時 間 は (S)-30b と
(R)-30 b は そ れ ぞ れ 12.5 分 と 15.5 分 で あ っ た 。[] 2 0 D = +1.2 (c 0.30, CH 3 O H), 1 H NM R
(400 M Hz, CD Cl 3 )   1.42 ( s, 3H) , 2.00 -1.87 ( m, 2H) , 2.70 -2.58 ( m, 2H) , 4.07 ( d, 1H, J =
8.3 Hz) , 4.14 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 5.15 ( brs, 1H) , 5.88 ( d, 1H, J = 3.2 Hz ), 6.05 ( dd, 1H, J
= 3.2, 2.4 Hz) , 6.58 (t , 1H, J = 2.4 Hz) ;
13
C NM R ( 100 M Hz , CD Cl 3 )  20.8, 25.8, 33.6,
38.9, 57.5, 75.7, 105.7, 106.8, 121.9, 131.0, 158.8; I R ( KBr) 3289, 3103, 2977, 2938,
100
1759, 1713, 1495, 1397, 1381, 1309, 1281, 1231, 1032, 945, 928, 776, 718, 706, 656 cm - 1 ;
HRMS ( ESI ): cal cd for C 11 H 1 7 N 2 O 2 [M +H] + 209.1290, found 209.1291.
(4R)-4 -[2-(F uran-2- yl)e thyl]-4- met hyl-1 ,3- oxazolidin-2 - one (30 c)
標 記 化 合 物 30c は 46c を 出 発 原 料 と し 、 20 a と 同 様 の 合 成 方 法 に よ り 黄 色 油 状 物
質 と し て 得 た (78% yi e l d, 99.0%ee)。 な お 、 得 ら れ た 30c の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条
件 を 用 い た HPLC 分 析 に よ り 決 定 し た 。 D AI CE L CHIRALCE L AD ( 4.6 x 250 mm) ,
he xane :2-propanol = 85: 15, 流 速 : 1.0 ml/min, 温 度 : 25.0 o C. 保 持 時 間 は (S)-30c と
(R)-30c は そ れ ぞ れ 13.1 分 と 15.4 分 で あ っ た 。 [] 2 0 D = +2.2 ( c 0.11, CHCl 3 ) ; 1 H N M R
(400 M Hz , CDCl 3 )   1.38 ( s, 3H) , 1.68 -1.61 ( m, 2H) , 1.98 -1.94 ( m, 2H) , 2.72 (t, 2H, J =
8.0 Hz) , 4.04 ( d, 1H, J = 8.4 Hz) , 4.11 ( d, 1H, J = 8.4 Hz) , 5.92 ( brs, 1H) , 6.03 ( d, 1H, J =
2.6 Hz) , 6.29 ( d, 1H, J = 2.6 Hz) , 7.31 ( brs, 1H,);
13
C NM R ( 100 M H z, CD Cl 3 )  22.8,
25.6, 38.4, 57.4, 75.5, 105.5, 110.4, 141.3, 154.0, 159.0; I R ( KBr) 3450, 2975, 2928, 2250,
1755, 1599, 1508, 1400, 1381, 1147, 1045, 1010 cm - 1 ; HRM S (E SI): cal cd for C 1 0 H 1 4 N O 3
[M+H] + 196.0974, found 196.0967.
(4R)-4 -{( E)-2-[4-( He pt yl oxy)phe nyl] vinyl}-4 -met hyl-1 ,3- oxazolidin-2 -one (28 a)
窒 素 雰 囲 気 下 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b ( 0.20 g, 0.40 mmol)の T HF( 5.0 ml)溶 液 を -78℃
に 冷 却 し 、 n-but yl l it hi um ( 2.7 M i n he xane, 0.29 m l , 0.77 mmol)を ゆ っ く り と 滴 下 し 、
同 温 で 30 分 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に 4-he ptoxybe nz alde hyde 25 m ( 44 mg, 0.20 mmol)を
加 え た 後 、徐 々 に 昇 温 し 、室 温 で 2 時 間 攪 拌 し た 。そ の 後 、飽 和 N H 4 Cl 水 溶 液 ( 10 ml )
を 加 え 、 AcOEt ( 10 m l x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 ( 10 ml)と 飽 和 食 塩 水 (10 ml)で 洗
浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去して、残渣をシ
リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane :AcOE t = 3:1 to 1:2) に よ り 精 製 し て 、 標
記 化 合 物 28a ( 49 mg, 77%)を 淡 黄 色 固 体 と し て 得 た 。 mp: 70.1-70.7 o C; [] 2 0 D = -45 (c
0.14, CH 3 O H) ; 1 H NM R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  0.87 ( t, 3H, J = 7.8 Hz) , 1.23 -1.36 ( m, 6H) ,
1.39-1.45 ( m, 2H) , 1.54 ( s, 3H) , 1.72 -1.79 ( m, 2H), 3.93 (t, 2H, J = 6.6 H z), 4.15 ( d, 1H, J
101
= 8.8 Hz) , 4.21 ( d, 1H, J = 8.8 Hz), 5.02 ( brs, 1H), 6.06 ( d, 1H, J = 16.1 Hz) , 6.52 ( d, 1H,
J = 16.1 Hz) , 6.83 ( d, 2H, J = 6.8 Hz) , 7.27 ( d, 2H, J = 6.8 Hz) ;
13
C NM R ( 126 M Hz ,
CD Cl 3 )  14.1, 22.6, 25.6, 26.0, 29.1, 29.3, 31.8, 58.6, 68.1, 76.7, 114.7, 127.9, 128.2,
128.7, 129.7, 159.1, 159.4; I R ( KBr) 3268, 2929, 2857, 1776, 1607, 1513, 1252, 1175,
1044 cm - 1 ; HRM S (E SI) : cal cd for C 1 9 H 2 8 N O 3 [M +H] + 318.2069, found 318.2068.
(2R)-2 - Ami no-4-[4 -(hept yl oxy) phe nyl] -2- met hylbut an -1- ol (28)
(4R ) -4-{( E) -2-[4-( He pt yl ox y) phe nyl]vin yl} -4-me thyl -1,3-oxaz olidin-2-one 28 a ( 30 mg,
0.10 mmol)の Me OH ( 5.0 ml)溶 液 に 、 10% Pd-C ( 50%we t, 10 m g)を 加 え 、 水 素 雰 囲 気
下、室温で 2 時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残
渣 を THF ( 2.0 ml)と Me OH ( 1.0 ml)で 希 釈 し 、 5 規 定 KOH 水 溶 液 ( 1.0 ml)を 加 え 、 加
熱 還 流 下 、 18 時 間 攪 拌 し た 。 室 温 ま で 冷 却 し た 後 、 水 (10 ml)を 加 え 、 CH 2 Cl 2 ( 10 ml
x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 ( 10 ml)と 飽 和 食 塩 水 ( 10 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ
ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し て 、 標 記 化 合 物 28 ( 25 mg, 90%)を 無
色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 [] 2 0 D = -2.4 ( c 0.92, CH 3 OH) ; 1 H NM R ( 500 M Hz, CD Cl 3 ) 
0.86 (t, 3H, J = 6.8 Hz), 1.10 ( s, 3H) , 1.22 -1.77 ( m, 12H) , 2.56 ( t, 2H, J = 8.5 Hz) , 3.29 ( d,
1H, J = 10.3 Hz) , 3.34 ( d, 1H, J = 10.3 Hz) , 3.90 ( t, 2H, J = 6.6 Hz) , 6.80 ( d, 2H, J = 6.6
Hz) , 7.07 ( d, 1H, J = 6.6 Hz);
13
C NM R ( 126 M Hz , CD Cl 3 )  14.1, 22.6, 24.5, 26.0, 29.1,
29.3, 29.4, 31.8, 42.2, 53.0, 68.1, 70.3, 114.6, 129.1, 134.1, 157.4; I R ( KBr) 3147, 2923,
2855, 2737, 1740, 1613, 1513, 1276, 1244, 10 60, 825; M S(E SI) m / z: 294 (M +H) + ; Ana l .
Calcd for C 1 8 H 3 1 N O 2 : C, 73.67; H, 10.65; N , 4.77. Found: C, 73.37; H, 10.60; N, 4.64.
2-Chloro-4-[(3 -methoxyphe nyl )sulf anyl] be nzaldehyde ( 25 n)
3-Methox ybe nz e ne t hi ol ( 1.4 g, 10 mmol)と 2-chloro-4-fluorobe nz alde hyde ( 1.6 g, 10
mmol)の DM F ( 10 ml)溶 液 に pot assium carbonate ( 2.1 g, 15 mmol) を 加 え 、 45℃ で 30
分 間 攪 拌 し た 。 そ の 後 、 反 応 液 を 0℃ に 冷 却 し 、 水 ( 25 ml)を 加 え た 。 AcOE t ( 30 ml x
2)で 抽 出 し 、 有 機 層 を 水 ( 30 ml)と 飽 和 食 塩 水 ( 30 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム
で乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグ
ラ フ ィ ー (he xane: AcOE t = 5: 1 t o 1: 1) に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 25 n ( 2.5 g, 91%)を
102
無 色 固 体 と し て 得 た 。 mp: 84.2-84.3 o C; 1 H N M R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  3.80 ( s, 3H) , 6.97
(m, 1H) , 7.10 -7.02 ( m, 4H) , 7.34 ( t, 1H, J = 8.1 Hz) , 7.74 ( d, 1H, J = 8.1 Hz) , 10.33 ( s,
1H);
13
C N M R ( 126 M Hz, CD Cl 3 )  55.5, 115.7, 119.7, 125.3, 126.8, 12 7.6, 129.4, 129.6,
130.8, 131.1, 138.5, 148.6, 160.5, 188.8; I R ( KBr) 3076, 2874, 1677, 1579, 1481, 1381,
1250, 1212, 1043, 853, 797, 691 cm - 1 ; HRM S ( ESI) : calcd for C 1 4 H 1 2 O 2 SCl [M +H] +
279.0247, found 279.0251; Anal . Calcd for C 1 4 H 11 ClO 2 S: C, 60.32; H, 3.98; Cl, 12.72; S,
11.50. Found: C, 60.19; H, 4.12; Cl , 12.55; S, 11.54.
(4R)-4 -[( E)-2- {2- Chl oro-4-[ (3-met hoxyphe nyl) sulf anyl] phe nyl}e thenyl] -4- met hyl -1,3 oxazolidin -2- one (29 a)
窒 素 雰 囲 気 下 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b ( 0.50 g, 1.0 mmol) の T HF( 5.0 ml)溶 液 を -78℃
に 冷 却 し 、 n-but yl l it hi um ( 1.9 M i n he xane , 1.0 m l , 2.0 mmol)を ゆ っ く り と 滴 下 し 、 同
温 で 30 分 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に 2-chloro-4-[( 3-methoxyphe n yl) sulfanyl]be nz alde hyde
25n ( 0.14 g, 0.50 mmol)を 加 え た 後 、徐 々 に 昇 温 し 、室 温 で 2 時 間 攪 拌 し た 。そ の 後 、
飽 和 N H 4 Cl 水 溶 液 ( 10 ml)を 加 え 、 Ac OEt ( 10 ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 (10 ml)
と 飽 和 食 塩 水 (10 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶
媒 を 留 去 し て 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane:AcOE t = 4:1 to
1:2)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 29 a ( 0.30 g, 80%)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。
[] 2 0 D = -39 ( c 0.45, CH 3 O H) ; 1 H NM R ( 500 M Hz, CD Cl 3 )  1.58 ( s, 3H), 3.37 ( s, 3H),
4.18 ( d, 1H, J = 8.3 Hz), 4.23 ( d, 1H, J = 8.3 Hz ), 5.03 ( s, 1H) , 6.17 ( d, 1H, J = 16.1 Hz) ,
6.85 ( m, 1H) , 6.92 -6.90 ( m, 2H), 6.92 ( d, 1H, J = 16.1 Hz ) , 7.11 ( m, 1H), 7.26 -7.23 ( m,
2H), 7.37 ( d, 1H, J = 7.8 Hz );
13
C NM R ( 126 M Hz , CD Cl 3 )  25.4, 55.4, 58.7, 76.3, 114.0,
117.4, 124.5, 126.1, 127.3, 128.3, 130.3, 130.4, 132.2, 133.9, 134.0, 13 4.8, 138.3, 158.8,
160.3; I R ( KBr) 3258, 1744, 1586, 1471, 1376, 1282, 1246, 1037, 969, 858, 770, 688
cm - 1 ; HRMS (E SI) : cal cd for C 1 9 H 1 9 N O 3 SCl [M +H] + 376.0774, found 376.0769.
(4R)-4 -(2- {2-C hl oro-4-[(3- me thoxyphe nyl) sulf anyl] phenyl}et hyl) -4- methyl-1 ,3oxazolidin -2- one (29b)
103
(4R ) -4-[(E ) -2-{ 2-Chl oro-4-[( 3-me thoxyphe n yl) sulfanyl]phe nyl} ethe nyl] -4-methyl -1,3oxaz olidin-2-one 29 a ( 0.10 g, 0.26 mmol) の AcOE t ( 10 ml )溶 液 に 、 10% Pd-C ( 50%wet,
0.10 g)を 加 え 、 水 素 雰 囲 気 下 、 室 温 で 6 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 を セ ラ イ ト ろ 過 し 、
ろ 液 を 減 圧 下 濃 縮 し た 。残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (he xane :AcOE t
= 3:1 to 1:2)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 29b ( 79 mg, 80%)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て
得 た 。 [] 2 0 D = +1.5 (c 0.76, CH 3 O H) ;
1
H N M R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  1.40 ( s, 3H) ,
1.86-1.80 ( m, 2H) , 2.77 -2.65 ( m, 2H) , 3.76 (s, 3H) , 4.09 ( d, 1H, J = 7.1 Hz) , 4.25 ( d, 1H,
J = 7.1 Hz), 5.05 (s, 1H) , 6.80 ( m, 1H) , 6.86 ( m, 1H) , 6.91 ( m, 1H) , 7.13 -7.09 ( m, 2H) ,
7.21 ( m, 1H) , 7.28 ( m, 1H) ;
13
C NM R ( 126 M Hz, CD Cl 3 )  26.0, 28.1, 40.4, 55.4, 57.7,
75.4, 113.4, 116.8, 124.0, 129.4, 130.2, 130.8, 131.3, 134.3, 135.7, 135.8, 137.1, 1 59.0,
160.2; I R ( KBr) 3262, 1747, 1589, 1475, 1283, 1230, 1040, 772 cm - 1 ; H RM S (E SI): calcd
for C 1 9 H 2 1 N O 3 SCl [M+H] + 378.0931; found 378.0926.
(2R)-2 - Ami no-4- {2- chl oro-4-[( 3-met hoxyphe nyl) sulf anyl] phe nyl}-2- methyl- but an1-ol (29)
(4R ) -4-( 2-{ 2-Chl oro-4-[( 3-met hoxyphe n yl)sulfanyl]phe n yl}e thyl) -4-me thyl -1,3oxaz olidin-2-one 29 b ( 20 mg, 60 mol)を T HF ( 1.0 ml )と Me OH( 1.0 m l)に 溶 解 さ せ 、 5
規 定 KOH 水 溶 液 ( 0.50 ml )を 加 え 、 加 熱 還 流 下 、 12 時 間 攪 拌 し た 。 室 温 ま で 冷 却 し
た 後 、 水 (10 ml)を 加 え 、 CH 2 Cl 2 ( 10 ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 (10 ml)と 飽 和 食
塩 水 (10 ml )で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去
し て 、 標 記 化 合 物 29 ( 16 mg, 91%)を 無 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 [] 2 0 D = -2.0 (c 0.53,
CHCl 3 ) , -3.5 ( c 0.19, CH 3 O H) ; 1 H NM R ( 500 M Hz , CDCl 3 )  1.12 ( s, 3H), 1.67 -1.54 ( m,
2H), 2.76-2.66 ( m, 2H) , 3.32 ( d, 1H, J = 10.3 Hz) , 3.37 ( d, 1H, J = 10.3 Hz) , 3.75 ( s, 3H) ,
6.78 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 6.85 ( m, 1H) , 6.88 ( m, 1H) , 7.15 -7.13 ( m, 2H) , 7.20 (t, 1H, J =
8.3 Hz) , 7.30 (s, 1H);
13
C N M R ( 126 M Hz , CD Cl 3 )  24.3, 27.9, 40.1, 53.0, 55.3, 70.3,
113.2, 116.4, 123.4, 129.7, 130.8, 131.6, 134.4, 134.7, 136.3, 139.0, 160.1; I R ( KBr) 2931,
1747, 1587, 1473, 1246, 1229, 1039, 853, 772, 686 cm - 1 ; HRM S (ESI) : calcd fo r
C 1 8 H 2 3 N O 2 SCl [M+H] + 352.1138, found 352.1148.
104
(4R)-4 -Met hyl-4 -(2- phenylet hyl)-4 ,5-dihydro-1 ,3- oxazol-2 - amine (31)
(4R ) -4-M et hyl -4-[( E) -2-phe nyle t he nyl]-1,3-ox az olidin-2-one 20 a ( 0.10 g, 0.26 mmol)
の AcOE t ( 10 m l)溶 液 に 、 10% Pd-C ( 50%we t, 0.10 g)を 加 え 、 水 素 雰 囲 気 下 、 室 温 で
6 時 間 攪 拌 し た 。反 応 液 を セ ラ イ ト ろ 過 し 、ろ 液 を 減 圧 下 濃 縮 し た 。残 渣 を THF ( 1.0
ml)と Me OH( 1.0 ml)で 希 釈 し 、 5 規 定 KOH 水 溶 液 ( 0.50 ml)を 加 え 、 加 熱 還 流 下 、 12
時 間 攪 拌 し た 。 室 温 ま で 冷 却 し た 後 、 水 ( 10 ml)を 加 え 、 CH 2 Cl 2 ( 10 ml x 2)で 抽 出 し
た 。 有 機 層 を 水 (10 ml)と 飽 和 食 塩 水 ( 10 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し
た 。ろ 過 後 、減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、淡 黄 色 油 状 物 質 を 得 た 。得 ら れ た 残 渣 を THF ( 8.0
ml) で 希 釈 し 、 0℃ に 冷 却 し た 後 、 窒 素 雰 囲 気 下 、 potassium carbona te ( 62 mg, 0.46
mmol)と cyano ge n bromi de ( 54 mg, 0.51 mmo l)を 加 え た 。 室 温 で 6 時 間 攪 拌 し た 後 、
反 応 液 に 水 (10 ml)を 加 え 、Ac OEt ( 10 ml x 2)で 抽 出 し た 。有 機 層 を 水 (10 ml )と 飽 和 食
塩 水 (10 ml )で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク
ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( AcOE t: Me OH = 1:0 to 5:1) に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 31 (69 mg,
69%)を 淡 黄 色 固 体 と し て 得 た 。 mp: 98.9-103.8 o C; [] 2 0 D = +6.5 (c 0.74, CHCl 3 );
1
H
NM R ( 500 M Hz , CD Cl 3 )  1.30 ( s, 3H) , 1.90 -1.75 ( m, 2H) , 2.69 -2.58 ( m, 2H) , 3.28 ( brs,
2H), 3.94 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 4.09 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 7.28 -7.25 ( m, 5H);
13
C N MR ( 126
M Hz , CDCl 3 )  27.3, 30.7, 43.6, 67.8, 78.1, 125.8, 128.3, 128.4, 142.4, 159.3; I R ( KBr)
3432, 2968, 2211, 1702, 1671, 1410, 1218, 1006, 756, 705, 501 cm - 1 ; H RM S (E SI) : calcd
for C 1 2 H 1 7 N 2 O [M +H] + 205.1341, found 205.1348.
105
第 4 章に関する実験
(2R)-1 - Acet oxy-2- acet yl ami no-2- met hyl-4-(1- me thylpyr rol-2 - yl) but ane (92)
(2R ) -2-Ami no-2-met h yl -4-( 1-me t hylpyrrol -2- yl) butan-1-ol 1/2 D -( -)tartrate 16b ( 4.0 g,
16 mmol)を CH 2 Cl 2 ( 50 ml)お よ び 水 ( 50 ml)の 混 合 液 に 懸 濁 し 、N aOH 水 溶 液 (N aOH 3.2
g を 水 13 ml に 溶 解 ) を 加 え 、 室 温 で 20 分 間 撹 拌 し た 。 反 応 液 を CH 2 Cl 2 ( 50 ml x 2)
で 抽 出 し 、有 機 層 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。ろ 過 後 、減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、
残 渣 を CH 2 Cl 2 ( 78 ml)に 溶 解 し 、 t rie thyamine ( 2 2 ml , 0.16 mol)、 ace tic anhydride ( 7.3
ml, 77 mmol )、 お よ び 4-di me t hyl aminop yridine ( 0.19 g, 1. 6 mmol)を 加 え 、 室 温 で 1 時
間 撹 拌 し た 後 、 Me OH ( 10 ml )を 加 え て 反 応 を 止 め 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し た 。 残 渣 に
水 を 加 え て 、 AcOEt ( 100 ml x 2)で 抽 出 し 、 有 機 層 を 水 ( 100 ml)、 飽 和 重 曹 水 (100 ml)
お よ び 飽 和 食 塩 水 ( 100 ml )で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減
圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (he xane:AcOE t = 1:1 to
0:1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 92 ( 4.2 g, 100%)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H
NM R ( 400 M Hz , CD Cl 3 )  1.38 ( s, 3H) , 1.97 -1.89 ( m, 4H), 2.09 ( s, 3H), 2.26 -2.19 ( m,
1H), 2.60-2.51 ( m, 2H) , 4.20 ( d, 1H, J =11.2 Hz) , 4.33 ( d, 1H, J =11.2 Hz), 5.39 ( brs, 1H),
5.88 ( d, 1H, J =2.4 Hz), 6.54 (t , 1H, J =2.4 Hz) ; M S ( FAB) m/ z: 267 ( M +H) + .
(2R)-1 - Ac et oxy-2- acet hyl amino -2- met hyl-4 - {1-met hyl-[5 -phe nyl-1-(5- phenylpe nt anoyloxy) pe nt -1- e nyl] pyrrol -2- yl}but ane (94)
(2R ) -1-Ace t oxy-2-a ce t yl ami no-2-me thyl -4-( 1-methylp yrrol -2- yl) butane 92 ( 4.2 g, 15
mmol)を tol ue ne ( 100 m l)に 溶 解 し 、 4-dimthylaminop yridine ( 9.4 g, 77 mmol) お よ び
5-phe nylval e royl chl ori de 93 ( 7.9 g, 40 mmol)を tolue ne ( 50 m l)に 溶 解 し た 溶 液 を 加 え 、
110℃ で 48 時 間 撹 拌 し た 。室 温 に 戻 し 、反 応 液 に 水 ( 100 ml)を 加 え て AcOE t ( 100 m l x
2)で 抽 出 し 、 有 機 層 を 水 ( 100 ml)お よ び 飽 和 食 塩 水 ( 100 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト
リウムで乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラ
フ ィ ー (he xane : AcOE t = 3: 2 t o 2: 1) に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物 94 ( 4.0 g, 45%)を 淡 黄
色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H NM R ( 400 M Hz, CD Cl 3 )  1.36 ( s, 3H) , 1.61 -1.48 ( m, 6H) ,
106
2.04-1.86 ( m, 6H), 2.10 ( s, 3H) , 2.34 -2.26 ( m, 8H) , 2.67 -2.39 ( m, 8H), 3.83 ( s, 3H) , 4.11
(t, 1H, J = 8.1 Hz) , 4.15 ( d, 1H, J = 11.0 Hz), 4.31 ( d, 1H, J = 11.0 Hz ), 5.41 ( brs, 1H) ,
5.97 ( d, 1H, J = 4.2 Hz) , 6.96 ( d, 1H, J = 4.2 Hz) , 7.17 -7.11 ( m, 6H) , 7.26 -7.23 ( m, 4H) ;
IR (CHCl 3 ) 3443, 2938, 2862, 1733, 1681, 1634, 1487, 1454, 1374, 1249, 1044 cm - 1 ; MS
(FAB) m / z: 587 (M +H) + .
(2R)-2 - amino-2- met hyl-4 -[1- met hyl -5-(5- phenylpe nt anoyl) pyrrol -2- yl]but an-1 - ol
hydroc hloride ( 32)
(2R ) -1-Ace t oxy-2-a ce t hyl ami no -2-me thyl -4-{ 1-methyl -[5-phe n yl -1-( 5-phe nyl pe ntanoylox y) pe nt -1-e nyl ]p yrrol -2- yl} butane 94 ( 4.0 g, 6. 9 mmol) を T HF ( 14 ml) と
Me OH ( 14 ml)と の 混 合 液 に 溶 解 し 、 水 ( 14 ml)お よ び lithium hydrox ide monohydrate
(2.9 g, 69 mmol)を 加 え 、50℃ で 4 時 間 攪 拌 し た 。冷 却 後 、反 応 液 に 水 (50 ml )を 加 え 、
CH 2 Cl 2 ( 50 ml x 2)で 抽 出 し 、 有 機 層 を 飽 和 食 塩 水 ( 50 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ
ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 残 渣 を 塩 基 性 シ リ カ ゲ ル (N H タ イ
プ )ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( CH 2 Cl 2 : Me OH = 100:1)に よ り 精 製 し て ( 2R) -2-amino-2methyl -4-[1-me t hyl -5-( 5-phe nyl pe nt anoyl) pyrrol -2- yl]butan-1-ol ( 2.1 g) を 黄 色 油 状 物 質
と し て 得 た 。得 ら れ た 粗 生 成 物 を Me OH ( 31 ml)に 溶 解 し 、4 規 定 HCl -dioxane ( 1.5 m l ,
6.2 mmol)を 加 え て 、室 温 で 10 分 間 撹 拌 し た 。減 圧 下 濃 縮 し 、AcOE t (10 ml )を 加 え て
析 出 し た 結 晶 を ろ 取 し 、 AcOE t( 10 ml x 2)で 洗 浄 し 、 減 圧 下 乾 燥 し て 、 標 記 化 合 物
32 ( 2.1 g, 79%) を 黄 色 固 体 と し て 得 た 。 mp: 130.0-131.0 o C; [] 2 7 D = -4.8 (c 1.0,
CH 3 O H); 1 H NM R ( 400 M Hz , CD 3 OD )  1.36 ( s, 3H), 1.70 -1.64 ( m, 4H) , 1.90 ( ddd, 1H, J
= 13.8, 11.5, 6.3 Hz) , 2.02 ( ddd, 1H, J = 13.8, 9.4, 7.6 Hz) , 2.63 ( t, 2H, J = 7.2 Hz),
2.78-2.67 ( m, 4H) , 3.55 ( d, 1H, J = 11.4 Hz) , 3.65 ( d, 1H, J = 11.4 Hz), 3.86 ( s, 3H) , 6.03
(d, 1H, J = 4.2 Hz) , 7.05 ( d, 1H, J = 4.2 Hz), 7.17 -7.11 ( m, 3H) , 7.25 -7.21 ( m, 2H); I R
( KBr) 3215, 2937, 2883, 2691, 2571, 1646, 1525, 1482, 1457, 1380, 1294, 1228, 1182,
1055, 998, 913, 770, 751, 700 cm - 1 ; M S (FAB) m / z: 343 ( M +H) + ; Anal . Calcd for
C 1 8 H 3 1 N O 2 - HCl : C, 66.56; H, 8.2 5; N , 7.39; Cl, 9.36. Found: C, 66.51; H, 8.20; N , 7.47;
Cl, 9.08.
(2R)-2 -t-B ut oxyc arbonyl ami no-2- met hyl -4-[1- met hyl-5-(5- phe nylpe nt anoyl) pyrrol -2yl]but an-1- ol (95)
107
(2R ) -2-Ami no-2-met h yl -4-[1-me t hyl -5-( 5-phe nylpe ntanoyl) pyrrol -2- yl]b utan-1-ol
hydro chlori de 32 ( 1.5 g, 3.9 mmol)の CH 2 Cl 2 ( 38 ml)溶 液 に 、 di -te rt -butyldicarbonate
(1.0 g, 4.6 mmol ) と t ri et hyl ami ne ( 1.6 m l , 12 mmol)を 加 え 、 室 温 で 4 時 間 攪 拌 し た 。
反 応 液 に 水 (50 ml)を 加 え 、 CH 2 Cl 2 ( 50 ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 (50 ml)お よ び
飽 和 食 塩 水 (50 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒
を 留 去 し 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane :AcOE t = 3:2) に よ り 精 製 し
て 、 標 記 化 合 物 95 ( 1.7 g, 99%)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H NM R ( 400 M Hz,
CD Cl 3 )  1.21 ( s, 3H), 1.43 ( s, 9H), 1.79 -1.64 ( m, 4H) , 1.96 -1.89 ( m, 1H), 2.13 -2.04 ( m,
1H), 2.55 ( ddd, 1H, J = 15.4, 12.4, 5.1 Hz) , 2.70 -2.62 ( m, 3H) , 2.75 ( t, 2H, J = 7.3 Hz) ,
3.68 ( d, 2H, J = 6.6 Hz) , 3.87 ( s, 3H) , 3.98 ( brs, 1H), 4.63 ( brs, 1H) , 5.95 ( d, 1H, J = 3.7
Hz) , 6.90 ( d, 1H, J = 3.7 Hz) , 7.18 -7.14 ( m, 3H) , 7.28 -7.24 ( m, 2H); M S ( FAB) m/ z: 443
(M+H) + .
(2R)-2 -t-B ut oxyc arbonyl ami no-2- met hyl -9-[1- met hyl-5-(5- phe nylpe nt anoyl) pyrrol -2yl]-1- but yl di all yl phosphate ( 96)
(2R ) -2-t -But oxyc arbon yl ami no -2-me thyl -4-[1-me thyl -5-( 5-phe nylpe ntanoyl) pyrrol -2yl]butan-1-ol 95 ( 1.7 g, 3.8 mmol )の CH 2 Cl 2 ( 19 ml)溶 液 に 、氷 冷 下 、1H -tetraz ole ( 1. 8 g,
26 mmol)と di all yl di i sopropyl phosphoramidite (( AllylO) 2 PN i -Pr 2 ) ( 2.0 ml , 7.6 mmol)を
加 え た 後 、 室 温 ま で 昇 温 し 、 2 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に 、 氷 冷 下 、 t -BuOO H ( 5-6 M
n-de cane sol ut i on, 2.3 m l , 12 mmol)を 加 え 、同 温 度 で 15 分 間 攪 拌 し た 。反 応 液 に 飽 和
N a 2 SO 3 水 溶 液 ( 20 ml)を 加 え 反 応 を 停 止 さ せ た 後 、 CH 2 Cl 2 ( 50 ml x 2) で 抽 出 し た 。 有
機 層 を 飽 和 重 曹 水 (50 ml)お よ び 飽 和 食 塩 水 ( 50 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で
乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー
(he xane :AcOE t = 3: 2) に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 96 ( 1.6 g, 68%)を 淡 黄 色 油 状 物 質
と し て 得 た 。 1 H N M R ( 400 M Hz , CD Cl 3 )  1.26 (s, 3H) , 1.43 ( s, 9H), 1.79 -1.64 ( m, 4H) ,
1.90-1.81 ( m, 1H) , 2.22 -2.12 ( m, 1H) , 2.58 ( t, 2H, J = 8.1 Hz ), 2.64 ( t, 2H, J = 8.1 Hz) ,
2.74 (t, 2H, J = 7.3 Hz) , 3.86 ( s, 3H) , 4.01 ( dd, 1H, J = 9.5, 5.9 Hz), 4.21 ( dd, 1H, J = 9.5,
108
5.1 Hz) , 4.60 -4.52 ( m, 4H), 4.62 ( brs, 1H) , 5.39 -5.29 ( m, 4H) , 5.99 -5.89 (m, 3H) , 6.89 ( d,
1H, J = 3.7 Hz) , 7.18 -7.14 ( m, 3H), 7.28 -7.24 ( m, 2H); MS ( FAB) m / z: 603 (M +H) + .
Mono (2R)-2- ami no-2- me thyl-4-[1- me thyl-5-(5- phe nylpe nt anoyl)pyr rol -2- yl] -1-but yl
phosphate (32-P)
f rom
(2R)-2 -t-B ut oxyc arbonyl ami no-2- met hyl -9-[1- met hyl-5-(5- phe nylpe nt anoyl) pyrrol -2yl]-1- but yl di all yl phosphate ( 96)
:typic al chemic al synt het ic proce dure
(2R ) -2-t -But oxyc arbon yl ami no -2-me thyl -9-[1-me thyl -5-( 5-phe nylpe ntanoyl) pyrrol -2yl]-1-but yl di all yl phosphat e 96 ( 1. 6 g, 2.6 mmol)、 triphe n ylphosphine ( 0.14 g, 0.5 4
mmol)と tet raki s(t ri phe nyl phophi ne) palladium( 0) ( 0.15 g, 0.13 mmol) を acetonitrile ( 26
ml)に 懸 濁 さ せ 、 窒 素 雰 囲 気 下 、 pyrrolidine ( 1.1 m l, 13 mmol)を 加 え 、 室 温 で 24 時 間
攪 拌 し た 。 反 応 液 を 減 圧 下 濃 縮 し 、 得 ら れ た 残 渣 に 1 規 定 HCl 水 溶 液 ( 15 ml)を 加
え 、 CH 2 Cl 2 ( 50 ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過
後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 粗 精 の 標 記 化 合 物 ( 1. 5 g) を 得 た 。 得 ら れ た 租 生 成 物 に
CH 2 Cl 2 ( 26 ml)を 加 え 、氷 冷 下 、t ri fluoroace tic acid (T FA) ( 8.6 m l)を 加 え 、攪 拌 し た 。
室温まで昇温し、さらに 2 時間攪拌した後、減圧下溶媒を留去し、得られた残渣に
EtOH ( 10 ml)を 加 え た 。析 出 し た 結 晶 を ろ 過 し た 後 、得 ら れ た 結 晶 を Me OH ( 200 ml)
と 水 (67 ml)の 混 合 溶 媒 に 溶 解 さ せ 、 そ の 溶 液 に charcoal を 加 え た 。 室 温 で 5 分 間 攪
拌 し た 後 、charcoal を セ ラ イ ト ろ 過 し 、ろ 液 を 減 圧 下 濃 縮 し た 。残 渣 に EtOH ( 10 ml)
を 加 え 、 室 温 に 放 置 す る こ と で 析 出 し た 結 晶 を ろ 過 し 、 E tOH ( 10 ml)洗 浄 を 行 い 、
高 純 度 の 標 記 化 合 物 32-P ( 0.56 g, 51%)を 無 色 針 状 結 晶 と し て 得 た 。 [] 2 5 D = +1.5 ( c
0.10, CH 3 CO 2 H) ;
1
H NM R ( 400 M Hz , CD 3 CO 2 D)  1.46 ( s, 3H), 1.75 -1.63 ( m, 4H),
2.20-2.01 ( m, 2H) , 2.63 ( t, 2H, J = 7.3 Hz), 2.82 -2.71 ( m, 4H) , 3.87 ( s, 3H), 4.17 ( d, 2H, J
= 10.3 Hz) , 6.04 ( d, 1H, J = 4.4 Hz) , 7.07 ( d, 1H, J = 4.4 Hz) , 7.17 -7.11 ( m, 3H) ,
7.25-7.22 ( m, 2H); I R ( KBr) 3429, 2934, 2857, 2717, 2603, 1639, 1557, 1480, 1455, 1378,
1182, 1056, 1041, 946, 915, 821, 748, 699, 580, 511 cm - 1 ; MS ( FAB) m/ z: 421 (M -H) - ;
Anal . Calcd for C 2 1 H 3 2 N 2 O 5 P: C, 59.70; H, 7.40; N, 7.33. Found: C, 59.37; H, 7.41; N,
6.64; P, 6.84.
109
:f rom
(2R)-2 - amino-2- met hyl-4 -[1- met hyl -5-(5- phenylpe nt anoyl) pyrrol -2- yl]but an-1 - ol
hydroc hloride ( 32): t ypic al bi ot ransf ormat ion proc edure
<液 体 培 養 法 >
マ ル ト ・ エ ク ス ト ラ ク ト (ベ ク ト ン ・ デ ィ ッ キ ン ソ ン 社 製 ) 0.10%、 コ ー ン ・ ス チ
ー プ・リ カ ー (日 食 製 ) 0.30%、グ ル コ ー ス 1.0%、ポ リ ペ プ ト ン (日 本 製 薬 社 製 ) 0.20%、
イ ー ス ト ・ エ ク ス ト ラ ク ト (デ ィ フ コ 社 製 ) 0.10%、 N aH 2 PO 4 0.10%、 寒 天 0.30%か ら
な る 培 養 培 地 (以 下 、
「 種 培 養 培 地 」と い う 。) 80 ml を 121℃ 、20 分 間 加 熱 滅 菌 し た 。
こ れ に 、シ ル シ ネ ラ ・ ム ス カ エ (Circin ella mu scae ) NBRC4457 を 一 白 金 耳 接 種 し 、回
転 振 と う 培 養 機 で 23℃ 、 210 rpm で 2 日 間 培 養 し 、 こ れ を 種 培 養 液 と し た 。 こ の 培
養 液 に
10 mg/ ml の 濃 度 で
0.010% formic acid/wate r 水 溶 液 に 溶 解 し た
(2R ) -2-amino-2-met hyl -4-[1 -me t hyl -5-( 5-phe nylpe ntanoyl) pyrrol -2- yl]b utan-1-ol
hydro chlori de 32 ( 40 mg, 0.11mmol)の 溶 液 を 0.80 ml 添 加 し 、 再 度 回 転 振 と う 培 養 機
で 23℃ 、210 rpm で 3 日 間 培 養 を 行 っ た 。変 換 反 応 の 進 行 は 以 下 に 示 す 条 件 に て HPLC
で モ ニ タ ー し た 。U nison U K-C18 column ( 4.6 x 75 mm), 0.1% formic acid / ace tonitrile
= 70: 30, flow rat e : 0.80 ml/ mi n. 32、 32-P の 保 持 時 間 は そ れ ぞ れ 、 6.7 分 、 3.2 分 で あ
った。
反 応 終 了 後 、 培 養 液 0.40 l に ア セ ト ン ( 0.40 l)を 加 え 、 さ ら に リ ン 酸 (40 μ l)を 加 え
て 抽 出 後 、 菌 体 を 吸 引 濾 過 に よ っ て 取 り 除 き 濾 液 ( c.a. 0.80 l)を 得 た 。 こ の 濾 液 に 蒸
留 水 (0.80 l)を 加 え た 後 、 あ ら か じ め 0.10%リ ン 酸 水 溶 液 で 平 衡 化 し た ダ イ ヤ イ オ ン
HP-20( 40 ml:三 菱 化 学 (株 ))カ ラ ム に 供 与 し た 。カ ラ ム を 蒸 留 水 0.20 l、次 い で 10 mM
ギ 酸 ア ン モ ニ ウ ム 緩 衝 液 ( pH 8.0) 0.20 l で 洗 浄 し た 後 、10 mM ギ 酸 ア ン モ ニ ウ ム 緩 衝
液 (pH 8.0): ア セ ト ン = 7: 3 の 混 合 溶 媒 0.20 l で 溶 出 し 、 さ ら に 10 mM ギ 酸 ア ン モ
ニ ウ ム 緩 衝 液 (pH 8.0): ア セ ト ン = 1: 1 の 混 合 溶 媒 0.20 ml で 溶 出 し た 。こ の よ う に
して得られた溶出液を合わせた後に濃縮し、次いで凍結乾燥を行うことで租生成物
と し て 標 記 化 合 物 32-P ( 68 mg)を 白 色 固 体 と し て 得 た 。 得 ら れ た 固 体 を 10 mM ギ 酸
ア ン モ ニ ウ ム 緩 衝 液 ( pH 8.0): ア セ ト ニ ト リ ル = 1: 1 の 混 合 溶 媒 10 ml に 溶 解 し 、
あ ら か じ め 10 mM ギ 酸 ア ン モ ニ ウ ム 緩 衝 液 ( pH 8.0): ア セ ト ニ ト リ ル = 7: 3 の 混 合
溶 媒 で 平 衡 化 し た HPLC カ ラ ム (D e ve losil OD S U G-5: 20 x 150 mm) に 供 与 し 、 同 混
合 溶 媒 で 流 速 10.0 ml/ mi n で 溶 出 し た 。 目 的 物 質 の 紫 外 部 吸 収 280 nm を 検 出 し 、 保
持 時 間 8.6 分 に 現 れ る ピ ー ク を 分 取 し た 。 分 取 液 を ま と め 、 減 圧 濃 縮 し て 得 ら れ た
懸 濁 液 20 ml を 凍 結 乾 燥 し 、 高 純 度 の 標 記 化 合 物 32- P ( 35 mg)を 無 色 固 体 と し て 得
た。
<休 止 菌 体 法 >
種 培 養 培 地 30 ml を 含 有 す る 100 ml 容 三 角 フ ラ ス コ 2 本 に 、シ ル シ ネ ラ・ム ス カ
110
エ (Circin el la mu sca e) N BRC4457 を 一 白 金 耳 接 種 し 、 回 転 振 と う 培 養 機 で 23℃ 、 210
rpm で 2 日 間 培 養 し た 。得 ら れ た 培 養 液 か ら 遠 心 分 離 処 理 に よ り 菌 体 を 回 収 し 、60 ml
の 滅 菌 蒸 留 水 で 菌 体 を 懸 濁 し た 後 、6 本 の 15 ml 容 コ ニ カ ル チ ュ ー ブ に 10 ml ず つ 分
注 し 、 遠 心 分 離 処 理 に よ り 菌 体 を 回 収 し た 。 そ れ ぞ れ の コ ニ カ ル チ ュ ー ブ に 、 pH 7
の 50 mM リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー を 5 ml 添 加 し て 菌 体 を 懸 濁 し 、 遠 心 分 離 に よ り 菌 体 を
回 収 し た 後 、 同 バ ッ フ ァ ー 5 ml に 菌 体 を 懸 濁 し 、 休 止 菌 体 反 応 液 と し た 。 こ の よ う
に し て 得 ら れ た 休 止 菌 体 反 応 液 を 1 ml と り 、 24 ウ ェ ル 培 養 プ レ ー ト (住 友 ベ ー ク ラ
イ ト 製 )の そ れ ぞ れ の ウ ェ ル に 移 し 、10 mg/ml の 濃 度 で 0.01%ギ 酸 水 溶 液 に 溶 解 し た
32 の 溶 液 を 10 μl 添 加 し て 、24 ウ ェ ル プ レ ー ト 用 回 転 振 と う 培 養 機 ( 丸 菱 バ イ オ エ ン
ジ 製 )で 23℃ 、 350 rpm で 2 日 間 反 応 を 行 っ た 。反 応 後 の 休 止 菌 体 反 応 液 に 等 量 の メ
タ ノ ー ル を 添 加 し て 懸 濁 し た 後 、 4500 rpm、 10 分 間 の 遠 心 分 離 処 理 を 行 い 、 そ の 上
清 を 休 止 菌 体 反 応 液 抽 出 物 と し た 。得 ら れ た 抽 出 物 は 上 記 方 法 に 従 っ て 精 製 を 行 い 、
リ ン 酸 エ ス テ ル 体 32-P を 得 た 。
<凍 結 乾 燥 菌 体 法 >
休 止 菌 体 調 製 時 と 同 様 に し て 、シ ル シ ネ ラ・ム ス カ エ (Circinella mu sc ae) NBRC4457
の 培 養 を 行 っ た 。得 ら れ た 培 養 液 か ら 遠 心 分 離 処 理 に よ り 菌 体 を 回 収 し 、pH 7 の 50
mM リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー ( 2 回 )、イ オ ン 交 換 水 で 菌 体 を 洗 浄 し た 。回 収 し た 菌 体 に ド ラ
イアイスアセトンよりを行い、凍結乾燥菌体とした。その後の反応は、休止菌体法
と同様にして行った。
Mono (2R)-2- ami no-2- ethyl-4-[5 -(5- phenylpe nt anoyl)t hiophe n-2- yl]-1 -but yl
phosphate (101-P)
標 記 化 合 物 101-P は 化 合 物 101 を 出 発 原 料 と し 、 事 前 に 凍 結 乾 燥 処 理 を 行 っ た シ
ル シ ネ ラ ・ ム ス カ エ (Ci rc ine lla muscae) N BRC4457 を 用 い て 、 32-P と 同 様 の 合 成 方
法 に て 淡 黄 色 固 体 と し て 18%の 収 率 で 得 た 。な お 、101 -P の 純 度 は 下 記 に 示 す HPLC
分 析 に よ り 決 定 し た 。 Uni son U K-C8 column ( 4.6 x 75 mm) , 0.1% formic acid
wate r:ace tonit ri le = 65: 35, 流 速 : 0.80 ml/min. 101- P の 保 持 時 間 は 4.2 分 で あ っ た 。1 H
NM R ( 400M Hz , CD 3 CO 2 D )  1.05 (t , 3H, J = 7.3Hz) , 1.65 -1.80 ( m, 4H) , 1.92 ( q, 2H, J =
7.3Hz) , 2.16 -2.21 ( m, 2H) , 2.64 ( t , 2H, J = 7.3 Hz) , 2.93 ( t, 2H, J = 7.3 Hz) , 3.00 -3.05 ( m,
2H), 4.26 ( d, 2H, J = 7.3 Hz ), 6.99 ( d, 1H, J = 3.7 Hz) , 7.12 -7.19 ( m, 3H), 7.22 -7.27 ( m,
2H), 7.67 ( d, 1H, J = 3.7 Hz ); M S (FAB) m/ z: 438 ( M -H) - .
111
Mono (2R)-2- ami no-2- met hyl-4-[5-( 5-phe nylpent -1- yn-1- yl) furan-2 - yl]but yl
phosphate (102-P)
標 記 化 合 物 102-P は 化 合 物 102 を 出 発 原 料 と し 、 事 前 に 凍 結 乾 燥 処 理 を 行 っ た シ
ル シ ネ ラ ・ ム ス カ エ (Ci rc ine lla muscae) N BRC4457 を 用 い て 、 32-P と 同 様 の 合 成 方
法 に て 淡 黄 色 固 体 と し て 43%の 収 率 で 得 た 。な お 、102 -P の 純 度 は 下 記 に 示 す HPLC
分 析 に よ り 決 定 し た 。 Uni son U K-C8 column ( 4.6 x 75 mm) , 0.1% formic acid
wate r:ace tonit ri le = 65: 35, 流 速 : 0.80 ml/min. 102- P の 保 持 時 間 は 5.0 分 で あ っ た 。1 H
NM R ( 400M Hz, CD 3 CO 2 D )  1.41 ( s, 3H) , 1.95 -1.84 ( m, 2H) , 2.43 ( t, 2H, J = 7.3 Hz) ,
2.72 (t, 2H, J = 7.3 Hz) , 2.84 -2.70 ( m, 2H) , 4.11 ( d, 2H, J = 9.5 Hz) , 6.09 ( d, 1H, J = 2.9
Hz) , 6.42 ( d, 1H, J = 2.9 Hz) , 7.31 -7.13 ( m, 5H) ; MS ( FAB) m/ z: 390 ( M -H) - .
Biolog y
Eff ic acious in t he adj uvant -i nduc e d arthritis mode l in rat s
試 験 に 使 用 す る 動 物 は 、8 週 齢 雌 性 Le wis ラ ッ ト を 用 い た 。1 群 5 匹 の ラ ッ ト を 用
い た 。 ま ず 、 mycoba cte ri um but yri cum 加 熱 死 菌 体 を メ ノ ウ 乳 鉢 で 微 細 化 後 、 乾 熱 滅
菌 し た 流 動 パ ラ フ ィ ン に 2 mg/ ml に な る よ う 懸 濁 し 、 超 音 波 処 理 を し て ア ジ ュ バ ン
ト を 調 製 し た 。 調 製 し た ア ジ ュ バ ン ト 0.05 ml を 対 照 群 お よ び 被 験 化 合 物 投 与 群 の
ラットの右後肢足蹠皮内に注射することで、アジュバント関節炎の誘導を行った。
な お 、ア ジ ュ バ ン ト を 注 射 し な い 群 と し て 正 常 対 照 群 を 設 け た 。被 験 化 合 物 を 0.5%
トラガカント液に懸濁または溶解した後、調製した化合物をアジュバント注射日か
ら 18 日 間 、 1 日 1 回 、 5 ml/ kg 経 口 投 与 し た 。 ま た 、 対 照 群 に は 0.5%ト ラ ガ カ ン ト
液のみを同様に投与した。
投 与 開 始 後 、 11 日 目 と 18 日 目 に 右 後 肢 の 体 積 を 足 体 積 測 定 装 置 で 測 定 し 、 各 群
の 腫 脹 体 積 の 平 均 値 を 算 出 し た 後 、次 式 に よ り 足 蹠 体 積 増 加 抑 制 率( % )を 算 出 し 、
各 化 合 物 の 評 価 を 行 っ た 。 (式 1)
足 蹠 体 積 増 加 抑 制 率 (%) = (1 - (「 被 験 化 合 物 投 与 群 の 足 蹠 体 積 」 - 「 常 対 照 群 の
足 蹠 体 積 」 ) / (「 対 照 群 の 足 蹠 体 積 」 - 「 正 常 対 照 群 の 足 蹠 体 積 」 ) ) × 100
Inhibit ory acti viti e s ag ai nst H ost ve rsus Graft Re action in rat s (H vGR)
第 2 章実験の部に記載した方法に準じて実施した。
112
(式 1)
第 5 章に関する実験
te rt-B ut yl (4R)-4-[(4- bromophe nyl)met hoxymet hyl] -2,2 ,4-t rime thyl-1 ,3- oxazolidine3-c arboxylat e (111 )
te rt -Butyl
( 4R) -4-( hydrox yme t hyl) -2,2,4-trime thyl -1,3-oxaz olidine -3-c arbox ylate
56
(2.2 g, 8.8 mmol) の D MF 溶 液 ( 50 ml)を 0℃ に 冷 却 し 、 sodium hyd ride ( 60%, 6 0 m g, 13
mmol)を 加 え 、 10 分 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に 4-bromobe nz ylbromide ( 3.3 g, 13 mmol) を
加 え 、 室 温 で 2 時 間 撹 拌 し た 。 攪 拌 後 、 反 応 液 を 飽 和 N H 4 Cl 水 溶 液 (50 ml)に 注 ぎ 、
AcOE t ( 50 ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 ( 30 ml)、 飽 和 食 塩 水 ( 30 ml)で 洗 浄 し 、 無
水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去して、残渣をシリカゲル
カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane: Ac OE t = 5: 1 to 2: 1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物
111 ( 3.6 g, 99%)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H NM R ( 400M Hz , CDCl 3 )  1.40-1.51
(m, 18H), 3.49 ( dd, 1H, J = 14.1, 9.0 Hz) , 3.61 ( d, 1H, J = 9.0 Hz) , 3.72 ( d, 1H, J = 9.0
Hz) , 4.08 ( d, 1H, J = 9.0 Hz) , 4.39 -4.51 ( m, 2H) , 7.16 ( d, 2H, J = 7.4 Hz ) , 7.45 ( d, 2H, J =
7.4 Hz) ; I R ( KBr) 2978, 2869, 1695, 1367, 1097, 1071, 804 cm - 1 ; M S(FAB) m /z: 414
(M+H) + .
(2S)-2- Ami no-3-[(4 -bromophenyl) met hoxy] -2- me thyl- propan-1- ol (11 2)
te rt -Butyl ( 4R) -4-[( 4-bromophe nyl) me thoxyme thyl] -2,2,4-trime thyl -1,3- oxaz olidine -3carbox ylate 111 ( 3.6 g, 8.9 mmol ) の CH 2 Cl 2 溶 液 ( 60 ml)に 、室 温 で TFA (30 ml )を 加 え 、
30 分 間 攪 拌 し た 後 、 反 応 液 に 水 ( 30 ml) を 加 え 、 5 時 間 攪 拌 し た 。 そ の 後 、 減 圧 下 溶
媒 を 留 去 し 、得 ら れ た 残 渣 を CH 2 Cl 2 ( 50 ml)で 希 釈 し た 後 、4 規 定 N aOH 水 溶 液 を 用
い て 、 反 応 液 を pH 14 に し た 。 CH 2 Cl 2 ( 50 ml x 2)で 抽 出 後 、 有 機 層 を 水 (30 ml)、 飽
和 食 塩 水 (30 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を
留 去 し て 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( CH 2 Cl 2 :M e OH = 1: 0 to 5: 1)
に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物 112 ( 2.2 g, 88%)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。1 H NM R
(400M Hz , CD Cl 3 )  1.02 ( s, 3H) , 3.29 -3.42 ( m, 4H), 4.43 ( s, 2H) , 7.13 ( d, 2H, J = 8.6 Hz),
7.42 ( d, 2H, J = 8.6 Hz ); I R ( KBr) 2924, 1464, 1095, 805 cm - 1 ; M S(FAB) m / z: 274
(M+H) + .
113
(2S)-2- Ami no-3-[(4 -bromophenyl) met hoxy] -2- me thyl- propan-1- ol, D- (-)-t art aric acid
(113)
(2S) -2-Ami no-3-[( 4-bromophe nyl ) methoxy] -2-me thyl -propan-1-ol
112
( 2.1
g,
7.8
mmol)を Et OH ( 20 ml)と 水 ( 4.0 ml )の 混 合 溶 媒 に 溶 解 し た 後 、D -( -) -t a rtaric acid ( 1.1 g,
7.3 mmol)を 加 え 、室 温 で 1 時 間 攪 拌 し た 。そ の 後 、E t 2 O を 用 い て 減 圧 下 溶 媒 を 留 去
す る こ と で 生 成 し た 固 体 を ろ 取 し 、 粗 生 成 物 と し て 標 記 化 合 物 113 ( 2.1 g)を 無 色 固
体 と し て 得 た 。 得 ら れ た 113 ( 2.1 g) に 対 し 、 水 ( 8.0 ml)を 用 い た 再 結 晶 操 作 を 行 う こ
と で 、 高 純 度 の 標 記 化 合 物 113 ( 1.5 g, 50% yie ld, 99.0%ee)を 白 色 針 状 結 晶 と し て 得
た 。1 H NM R ( 400M Hz , DM SO-d 6 )  1.13 ( s, 3H) , 3.38 -3.47 ( m, 4H), 4.52 (s, 2H) , 7.34 ( d,
2H, J = 8.0 Hz) , 7.56 ( d, 2H, J = 8.0 Hz); I R ( KBr) 3320, 2918, 1905, 1729, 1575, 1404,
1304, 1263, 1214, 1134, 803, 680, 484 cm - 1 ; Ana l. Calcd for C 11 H 1 6 BrN O 2 .C 4 H 6 O 6 . H 2 O:
C, 40.74; H, 5.47; N , 3.17 ; Br, 18.07. Found: C, 40.48; H, 5.49; N , 3.30; Br, 18.16.
な お 、 化 合 物 113 の 光 学 純 度 は 以 下 の 操 作 に よ り 、 化 合 物 113 を (4R) -4-[( 4bromophe nyl) me t hoxyme t hyl ] -4-me t hyl -1,3-oxaz olidin-2-one 114 へ と 導 い た 後 、 HLPC
測定を行い決定した。
A proc e dure of t he det e rmi nat i on of t he e nantio purit y of
(2S)-2- amino-3 -[(4- bromophe nyl) methoxy] -2- met hyl- propan -1- ol,
D-(-)-t art aric ac i d ( 113)
; synt hesis of (4 R) -4-[(4- bromophe nyl)met hoxymet hyl] -4 -methyl-1 ,3- oxazolidin 2-one ( 114)
and
化 合 物 113 ( 10 m g, 0.024 mmol) に CH 2 Cl 2 ( 3.0 ml)、 1 規 定 N aOH 水 溶 液 (0.20 ml)を
加 え 、 室 温 で 30 分 間 攪 拌 し た 。 CH 2 Cl 2 ( 5.0 ml x 2)で 抽 出 し た 後 、 有 機 層 を 無 水 硫
酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 す る こ と で 、
(2S) -2-amino-3-[( 4-bromophe nyl ) methoxy] -2 -me thyl -propan-1-ol, D -( -) -tartaric acid 113
の フ リ ー 体 で あ る ( 2S) -2-ami no-3-[( 4-bromophe nyl) me thoxy] -2 -me thyl -propan-1-ol 112
を 無 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 得 ら れ た 112 を CH 2 Cl 2 ( 1.0 ml) に 溶 解 し 、
1,1'-ca rbon yl dii mi daz ol e ( 11 mg, 0.068 mmol) を 加 え 、 室 温 で 2 時 間 攪 拌 し た 。 減 圧 下
溶 媒 を 留 去 し 、 残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( CH 2 Cl 2 :Me OH = 20:1)
114
に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 113 ( 6.5 mg, 90%)を 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。 得 ら れ
た 113 の 光 学 純 度 は 以 下 に 示 す 条 件 を 用 い た HPLC 分 析 に よ り 決 定 し た 。 D AI CE L
CHIRALCE L OD -H ( 4.6 x 250 mm) , he xane :2-propanol = 70: 30, 流 速 : 1.0 ml/min, 温
度 : 25.0 o C. 保 持 時 間 は ( S)- 113 と ( R)- 113 は そ れ ぞ れ 6.0 分 と 7.5 分 で あ っ た 。
te rt-B ut yl (4R)-4-[(4- bromophe nyl)met hoxymet hyl] -2,2 ,4-t rime thyl-1 ,3oxazolidine-3-c arboxyl at e (111 ) f rom 113
化 合 物 113 ( 1.5 g, 3.9 mmol ) に CH 2 Cl 2 ( 30 ml)、1 規 定 N aOH 水 溶 液 ( 10 ml)を 加 え 、
室 温 で 30 分 間 攪 拌 し た 。CH 2 Cl 2 ( 30 ml x 2)で 抽 出 し た 後 、有 機 層 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ
ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ過 後 、 減 圧 下 溶媒 を 留 去 す る こと で、 粗 生 成 物 の
(2S) -2-amino-3-[( 4-bromophe nyl ) methoxy] -2 -me thyl -propan-1-ol 112 を 無 色 油 状 物 質 と
し て 得 た 。得 ら れ た 112 を CH 2 Cl 2 ( 30 ml)で 希 釈 し 、室 温 で Boc 2 O ( 0.90 g, 4.1 mmol)
と trie thylami ne ( 0.70 ml , 4.8 mmol)を 加 え 、 2 時 間 攪 拌 し た 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し
た 。得 ら れ た 残 渣 を CH 2 Cl 2 ( 50 ml)で 希 釈 し 、室 温 で 2,2-dime thoxypr opane ( 5 .0 ml , 34
mmol)と BF 3 -OE t 2 ( 24 mg, 0.2 0 mmol)を 加 え 、1 時 間 攪 拌 し た 。反 応 液 に trie thylamine
(2.0 ml)を 加 え 、減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し た 。残 渣 を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ
ー (he xane : AcOE t = 2: 1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 111 ( 1.4 g, 94%) を 無 色 油 状 物 質
として得た。
te rt-B ut yl (4 R)-4-( hydroxymethyl) -2 ,2 ,4-t rimet hyl-1,3 - oxazolidine -3- carboxylat e (56)
f rom 111
te rt -Butyl ( 4R) -4-[( 4-bromophe nyl) me thoxyme thyl] -2,2,4-trime thyl -1,3- oxaz olidine -3carbox ylate 111 ( 5.0 g, 12 mmol)の E tOH ( 100 ml) 溶 液 に potassium car bonate ( 2.5 g, 18
mmol)と 10% Pd-C ( 50% we t , 3.5 g) を 加 え 、水 素 雰 囲 気 下 、室 温 で 24 時 間 攪 拌 し た 。
ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー
(he xane : AcOE t = 10: 1 t o 4: 1)に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物 56 ( 3.0 g, 100%)を 無 色 油 状
物質として得た。
115
N-Met hoxy- N-met hyl-4- (p-t ol yl) but anamide ( 116)
4-(p -Tolyl ) but anoi c aci d ( 5 .0 g, 28 mmol)の CH 2 Cl 2 ( 0.17 l)溶 液 に N,O -dime thyl hydrox ylami ne hydro chl ori de ( 3.3 g, 34 mmol) と 1-( 3-dime thylaminopropyl) -3-e thyl carbodiimide hydro chl ori de ( 6.5 g, 34 mmol) を 加 え 、 室 温 で 10 分 間 攪 拌 し た 。 反 応 液
を 0℃ に 冷 却 後 、N-me t hyl morphol i ne ( 9.3 m l, 84 mmol)を 滴 下 し た 。室 温 ま で 昇 温 し 、
2 時 間 攪 拌 し た 後 、 1 規 定 HCl 水 溶 液 ( 100 ml)を 加 え た 。 さ ら に 水 ( 200 ml)を 加 え 、
CH 2 Cl 2 ( 100 ml x 2)で 抽 出 し た 。有 機 層 を 水 ( 70 ml)お よ び 飽 和 食 塩 水 (70 ml)で 洗 浄 し
た後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリ
カ ゲ ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane: Ac OE t = 3: 1 to 2: 1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物
116 ( 5.6 g, 46%)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H NM R ( 400M Hz, CDCl 3 )  1.94-1.87
(m, 2H), 2.27 (s, 3H) , 2.43 -2.33 ( m, 2H) , 2.59 ( t, 2H, J = 7.4 Hz) , 3.12 ( s, 3H), 3.58 ( s,
3H), 7.02 ( s, 4H) ; M S( FAB) m / z: 212 (M +H) + .
te rt-B ut yl (4R)-2 ,2,4- t ri methyl-4-[ ( {4-[4-(4- me thylphenyl) but anoyl]benzyl}oxy) met hyl]-1 ,3- oxazoli di ne -3-c arboxylate ( 119 a)
窒 素 雰 囲 気 下 、 te rt -but yl ( 4R) -4-[( 4-bromophe nyl) methox yme thyl] -2,2,4-trimethyl 1,3-oxaz olidi ne -3-carbox yl at e 111 ( 1.0 g, 2.4 mmol) の T HF ( 20 ml)溶 液 を ‐ 78℃ に 冷 却
し た 後 、 n-BuLi ( 1. 6 M he xane sol ution, 2.3 ml , 3.6 mmol)を ゆ っ く り と 滴 下 し 、 同 温
で 30 分 間 攪 拌 し た 。そ の 後 、反 応 液 に N-me thoxy-N-me thyl -4-(p -t olyl) butanamide 116
(1.1 g, 4.8 mmol) の T HF 溶 液 ( 5.0 ml)を 滴 下 し 、 徐 々 に 室 温 ま で 昇 温 さ せ 、 さ ら に 2
時 間 攪 拌 し た 。 飽 和 N H 4 Cl 水 溶 液 ( 15 ml)、 水 ( 50 ml) を 加 え 、 AcOE t ( 40 m l x 2)で 抽
出 し た 。 有 機 層 を 水 (40 ml )お よ び 飽 和 食 塩 水 ( 40 ml)で 洗 浄 し た 後 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ
ウムで乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフ
ィ ー (he xane : AcOE t = 10: 1 t o 3: 1)に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物 119 a ( 0.51 g, 46%) を 淡
黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。1 H NM R ( 400M Hz , CD Cl 3 )  1.61-1.32 ( m, 18H), 2.05 ( dt, 2H,
J = 7.3, 7.3 Hz) , 2.32 (s, 3H) , 2.68 ( t, 2H, J = 7.3 Hz) , 2.95 ( t, 2H, J = 7.3 Hz) , 3.82 -3.49
(m, 3H) , 4.16 -4.11 ( m, 1H), 4.65 -4.50 ( m, 2H) , 7.09 (s, 4H) , 7.42 -7.34 ( m, 2H), 7.93-7.85
(m, 2H); I R ( KBr) 2978, 2935, 1692, 1385, 1368, 1258, 1176, 1097, 1064 cm - 1 ; M S( FAB)
116
m/ z: 496 (M +H) + .
1-(4-{[(2S)-2- Amino-3 -hydroxy-2- met hylpropoxy] met hyl}phe nyl) -4-( 4-met hylphe nyl)
but an-1- one, hydroc hl oride (33 a)
(4R ) -2,2,4-Tri met hyl -4-[( { 4-[4-( 4-me thylphe nyl) butano yl]be nz yl} oxy) methyl] -1,3oxaz olidine -3-carbox yl at e 119 a ( 3.6 g, 8.9 mmol) の CH 2 Cl 2 溶 液 ( 60 ml) に 、 室 温 で TFA
(30 ml )を 加 え 、 30 分 間 攪 拌 し た 後 、 反 応 液 に 水 ( 30 ml)を 加 え 、 5 時 間 攪 拌 し た 。 そ
の 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 得 ら れ た 残 渣 を CH 2 Cl 2 ( 50 ml)で 希 釈 し た 後 、 4 規 定
N aOH 水 溶 液 を 用 い て 、 反 応 液 を pH 14 に し た 。 CH 2 Cl 2 ( 50 ml x 2) で 抽 出 後 、 有 機
層 を 水 (30 ml )、 飽 和 食 塩 水 ( 30 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ 過
後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し て 、 化 合 物 33a の フ リ ー 体 を 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 得
ら れ た フ リ ー 体 を Et OH ( 60 ml)で 希 釈 し 、 4 規 定 HCl/dioxane 溶 液 ( 4.4 ml)を 加 え 、
室 温 で 1 時 間 攪 拌 し た 。減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し て 、生 成 し た 固 体 を Et 2 O で ろ 取 し 、標
記 化 合 物 33a ( 2.2 g, 78%)を 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。1 H N MR ( 400M Hz , DM SO-d 6 ) 
1.18 ( s, 3H) , 1.89 (t t , 2H, J = 7.3, 7.3 Hz) , 2.26 ( s, 3H) , 2.59 ( t, 2H, J = 7.3 Hz) , 3.02 ( t,
2H, J = 7.3 Hz) , 3.57 -3.42 ( m, 4H) , 4.63 ( s, 2H) , 4.66 ( t, 1H, J = 5.1 Hz) , 7.09 ( s, 4H) ,
7.51 ( d, 2H, J = 8.0 Hz ), 7.93 ( d, 2H, J = 8.0 Hz) , 8.02 -7.79 ( brs, 2H) ; I R ( KBr) 3383,
3020, 2890, 1683, 1607, 1514, 1253, 1118, 979, 790 cm - 1 ; MS(FAB) m/ z: 356 (M +H) + ;
Anal . Calcd for C 2 2 H 2 9 N O 3 .HCl : C, 67.42; H, 7.72; N , 3.57; Cl , 9.05. Found: C, 66.92; H,
7.75; N, 3.73; Cl, 9.04.
1-(4-{[(2S)-2- Amino-3 -hydroxy-2- met hylpropoxy] met hyl}-3- met hylphe nyl) -4(4-me thylphenyl) but an-1- one , hydroc hloride ( 33b)
1-( 4-{ [( 2S) -2-Ami no-3-h ydro x y-2-me thylpropox y]me thyl} -3-methylphe nyl) -4-( 4methylphe nyl ) but an -1-one , hydro chl oride 33b は 化 合 物 119b を 出 発 原 料 と し 、 化 合 物
33a と 同 様 の 合 成 方 法 に よ り 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。化 合 物 33b は 全 4 工 程 、18%
で 得 ら れ た 。 1 H NM R ( 400M Hz , CD 3 OD)  1.27 (s, 3H) , 1.90 -1.98 ( m, 2H), 2.25 ( s, 3H) ,
117
2.36 ( s, 3H) , 2.60 ( t , 2H, J = 7.4 Hz) , 2.94 (t, 2H, J = 7.4 Hz) , 3.45 -3.58 ( m, 2H) ,
3.59-3.62 ( m, 2H) , 4.62 ( s, 2H) , 7.02 ( brs, 4H) , 7.43 ( d, 1H, J = 7.4 Hz) , 7.68 ( s, 1H) ,
7.69 ( d, 1H, J = 7.4 Hz) ; I R ( KBr) 3387, 2944, 2558, 1680, 1606, 1513, 1257, 1101, 791
cm - 1 ; HRMS (E SI) : cal cd. for C 2 3 H 3 1 N O 3 [M +H] + : 370.2382, found 370.2395.
Methyl (2 R,4 R)-4 -[(4- bromo-2-c hl oro- phe nyl) me thoxyme thyl] -2- te rt- but yl-4- me thyl1,3- oxazolidine-3-c arboxyl at e (115e)
Methyl ( 2R ,4R) -2-te rt -but yl -4-( hydrox yme thyl) -4-me thyl -1,3-oxaz olidine -3carbox ylate 26 ( 3.0 g, 13 mmol) の D MF 溶 液 ( 30 ml)を 0℃ に 冷 却 し 、 sodium hydride
(60%,
0.60
g,
13
mmol) を 加 え 、 10
分 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 に
4-bromo-3-chl orobe nz yl bromi de ( 5.5 g, 20 mmol) を 加 え 、 室 温 で 2 時 間 撹 拌 し た 。 攪
拌 後 、 反 応 液 を 飽 和 N H 4 Cl 水 溶 液 ( 50 ml )に 注 ぎ 、 AcOE t ( 50 ml x 2) で 抽 出 し た 。 有
機 層 を 水 (30 ml)、 飽 和 食 塩 水 ( 30 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥 し た 。 ろ
過後、減圧下溶媒を留去して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー
(he xane : AcOE t = 1: 0 t o 4: 1)に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物 115e ( 3.6 g, 64%)を 淡 黄 色 油
状 物 質 と し て 得 た 。1 H N M R ( 400M Hz, CD 3 Cl)  0.96 ( s, 9H) , 1.46 ( s, 3H), 3.71 ( s, 3H) ,
3.75 ( d, 1H, J = 8.8 Hz ), 3.77 ( d, 1H, J = 8.8 Hz) , 3.98 -3.93 ( m, 1H) , 4.21 ( d, 1H, J = 8.8
Hz) , 4.59 ( s, 2H) , 5.17 ( s, 1H) , 7.31 ( d, 1H, J = 8.8 Hz), 7.42 ( dd, 1H, J = 8.8, 1.5 Hz) ,
7.55 ( d, 1H, J = 1.5 Hz) ; M S(FAB) m /z: 434 (M +H) + .
Methyl (2 R,4 R)-2 -t ert- but yl-4- [( {2-c hloro-4 -[4-(4- met hylphe nyl)but anoyl] be nzyl}oxy) met hyl]-4- met hyl-1 ,3- oxazoli dine-3-c arboxylate ( 117e)
窒 素 雰 囲 気 下 、 met hyl ( 2R ,4R) -4-[( 4-bromo-2-chloro-phe nyl) methoxymethyl] -2-te rt butyl -4-me t hyl -1,3-oxaz oli di ne -3-carbox ylate 115 e ( 2.3 g, 5.4 mmol) の T HF ( 40 ml )溶 液
を 、 -78℃ に 冷 却 し た 後 、 n -BuLi ( 1. 6 M he xane solution, 5.1 m l , 8.1 mmol)を ゆ っ く り
と 滴 下 し 、 同 温 で 30 分 間 攪 拌 し た 。 そ の 後 、 反 応 液 に N-me thoxy- N-methyl -4(p-tolyl) but anami de116 ( 2.4 g, 11 mmol) の T HF 溶 液 ( 5.0 ml)を 滴 下 し 、 徐 々 に 室 温 ま
118
で 昇 温 さ せ 、 さ ら に 2 時 間 攪 拌 し た 。 飽 和 N H 4 Cl 水 溶 液 ( 50 ml)、 水 (50 ml)を 加 え 、
AcOE t ( 80 ml x 2)で 抽 出 し た 。 有 機 層 を 水 ( 40 ml)お よ び 飽 和 食 塩 水 (40 ml)で 洗 浄 し
た後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリ
カ ゲ ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( he xane: Ac OE t = 10: 1 to 3: 1)に よ り 精 製 し て 、標 記 化 合 物
117e ( 1.3 g, 46%)を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H N M R ( 400M Hz , CD 3 Cl)  0.97 ( s,
9H), 1.49 ( s, 3H) , 2.12 -2.07 ( m, 2H) , 2.36 ( s, 3H) , 2.71 (t, 2H, J = 7.3 Hz) , 2.96 ( t, 2H, J
= 7.3 Hz ), 3.72 ( s, 3H) , 3.83 -3.77 ( m, 2H) , 4.03 -3.97 ( m, 1H) , 4.26 -4.23 ( m, 1H), 4.68 ( s,
2H), 5.19 ( s, 1H), 7.13 ( s, 4H) , 7.55 ( d, 1H, J = 7.8 Hz) , 7.8 3 ( dd, 1H, J = 7.8, 1.5 Hz),
7.91 ( d, 1H, J = 1.5 Hz) ; M S(FAB) m /z: 516 (M +H) + .
1-(4-{[(2S)-2- Amino-3 -hydroxy-2- met hylpropoxy] met hyl}-3-c hloroph enyl)-4-(4met hylphe nyl )but an-1- one , hydroc hloride ( 33 e)
Methyl ( 2R ,4R) -2-te rt -but yl -4-[({ 2-chloro-4-[4-( 4-methylphe nyl) butanoyl]be nz yl} oxy) methyl]-4-me t hyl -1,3-oxaz ol i di ne -3-carbox ylate 117e ( 1.0 g, 5.4 mmol)の Me OH ( 10
ml)溶 液 に p -TsOH monohyd rat e ( 0. 76 g, 4.0 mmol)を 加 え 、50℃ で 2 時 間 攪 拌 し た 。減
圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 粗 生 成 物 と し て methyl [( 2S) -1-( { 2-chloro-4-[4-( 4-methylphe nyl) butanoyl]be nz yl } oxy) -3-hydrox y-2 -me thylpropan -2- yl]c arbam ate 118e を 黄 色 油 状 物 質
と し て 得 た 。 得 ら れ た 118e を Et OH ( 20 ml)で 希 釈 し 、 8 規 定 KOH 水 溶 液 (2.5 ml , 20
mmol)を 加 え 、加 熱 還 流 下 、6 時 間 攪 拌 し た 。室 温 ま で 冷 却 後 、減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、
水 を 加 え 、CH 2 Cl 2 ( 30 ml x 2)で 抽 出 し た 。有 機 層 を 水 ( 40 ml)お よ び 飽 和 食 塩 水 (40 ml)
で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去して、
化 合 物 33e の フ リ ー 体 を 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。得 ら れ た フ リ ー 体 を EtOH ( 15 ml )
で 希 釈 し 、 4 規 定 HCl/ di oxane ( 1.0 ml)を 加 え 、 室 温 で 1 時 間 攪 拌 し た 。 減 圧 下 溶 媒
を 留 去 し て 、 生 成 し た 固 体 を Et 2 O で ろ 取 し 、 標 記 化 合 物 33e ( 0.58 g, 90%) を 無 色 固
体 物 質 と し て 得 た 。 1 H NM R ( 400M Hz, DM SO-d 6 )  1.20 ( s, 3H) , 1.91 -1.84 ( m, 2H) ,
2.26 ( s, 3H) , 2.59 ( t , 2H, J = 7.3 Hz ), 3.04 ( t, 2H, J = 7.3 Hz) , 3.62 -3.45 ( m, 4H) , 4.68 ( s,
2H), 5.47 ( t, 1H, J = 5.4 Hz), 7.09 ( s, 4H) , 7.78 ( d, 1H, J = 8.3 Hz) , 7.91 ( d, 1H, J = 8.3
Hz) , 7.94 ( brs, 1H). 8.00 ( brs, 3H) ; I R ( KBr) 3384, 3018, 2935, 1692, 1198, 1129, 1044,
808 cm - 1 ; MS(FAB) m/ z: 390 (M +H) + ; Anal . Calcd for C 2 2 H 2 8 ClN O 3 .HCl: C, 59.46; H,
7.03; N, 3.15; Cl, 15.96. Found: C, 59.59; H, 6.72; N , 3.20; Cl, 16.81.
119
1-(4-{[(2S)-2- Amino-3 -hydroxy-2- met hylpropoxy] met hyl}-3-et hylphe nyl) -4-(4met hylphe nyl )but an-1- one , 0.5 oxalic acid ( 33f)
標 記 化 合 物 33f は 化 合 物 26 を 出 発 原 料 と し 、化 合 物 33e と 同 様 の 合 成 方 法 に よ り
無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。 な お 、 化 合 物 33f は 0.5 シ ュ ウ 酸 塩 と し て 、 全 4 工 程 、
18%で 得 ら れ た 。 1 H NM R ( 400M Hz , DM SO-d 6 )  1.04 (s, 3H) , 1.18 ( t, 3H, J = 7.6 Hz) ,
1.91-1.85 ( m, 2H) , 2.26 ( s, 3H) , 2.59 ( t, 2H, J = 7.6 Hz) , 2.67 ( q, 2H, J = 7.6 Hz) , 3.01 ( t,
2H, J = 7.2 Hz) , 3.39 -3.29 ( m, 4H), 4.60 (s, 2H), 7.09 (s, 4H), 7.51 ( d, 1H, J = 7.6 Hz ),
7.74 ( s, 1H) , 7.75 ( d, 1H, J = 7.6 Hz) ; I R ( KBr) 3288, 2967, 2949, 2592, 1688, 1626, 1565,
1293, 1112, 1052, 796 cm - 1 ; HRM S ( ESI ): calcd for C 2 4 H 3 4 N O 3 [M +H] + : 384.2539 , found
384.2539.
1-(4-{[(2S)-2- Amino-3 -hydroxy-2- met hylpropoxy] met hyl}-2,5 -dimet hylphe nyl) -4-(4met hylphe nyl )but an-1- one , 0.5 oxalic acid ( 33h)
標 記 化 合 物 33 h は 化 合 物 2 6 を 出 発 原 料 と し 、 化 合 物 33 e と 同 様 の 合 成 方 法 に よ
り 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。な お 、化 合 物 33h は 0.5 シ ュ ウ 酸 塩 と し て 、全 4 工 程 、
21%で 得 ら れ た 。1 H N M R ( 400M Hz, D MSO-d 6 )  1.04 (s, 3H) , 1.88 -1.82 ( m, 2H), 2.26 ( s,
6H), 2.35 ( s, 3H) , 2.57 (t , 2H, J = 7.4 Hz) , 2.90 (t, 2H, J = 7.4 Hz) , 3.36 -3.29 ( m, 4H),
4.49 ( s, 2H) , 7.08 ( s, 4H), 7.25 ( s, 1H) , 7.49 ( s, 1H); I R ( KBr) 2953, 2596, 1680, 1620,
1572, 1454, 1296, 1098, 1052, 797, 764 cm - 1 ; HRM S (E SI) : calcd for C 2 4 H 3 4 N O 3 [M +H] + :
384.2539, found 384.2542.
Allyl N -{(1 R)-1-( di all yl oxyphosphoryloxymethyl) -1- methyl-2-[ {4 -[4-( p-tolyl)but anoyl] phenyl }met hoxy]et hyl }c arbamate (120 a)
120
1-[4-[[(2S) -2-Ami no-3-h ydrox y-2 -me thyl -propox y]me thyl]-phe nyl]-4-(p -tolyl) butan-1one hydro chori de 33 a ( 0.15 g, 0.40 mmol)を AcOE t ( 4.0 ml)と 水 ( 4.0 ml) の 混 合 溶 媒 に 加
え 、 さ ら に 、 KHCO 3 ( 88 mg, 0.90 mmol)と allyl chloroformate ( 0.05 0 ml , 0.46 mmol)
を 加 え 、 室 温 で 2 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 を AcOEt( 200 ml x 2)で 抽 出 し 、 有 機 層 を 飽
和 重 曹 水 (50 ml)お よ び 飽 和 食 塩 水 ( 50 ml )で 洗 浄 し た 後 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム で 乾 燥
し た 。 ろ 過 後 、 減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、 租 生 成 物 の allyl N-[( 1S) -1-( hydroxyme thyl) 1-methyl -2-[[4 -[4-(p -t ol yl ) but anoyl ]phe nyl]me thoxy]e thyl]c arbam ate を 黄 色 油 状 物 質 と
し て 得 た 。 得 ら れ た 化 合 物 の CH 2 Cl 2 ( 3.0 ml)溶 液 を 0℃ に 冷 却 し 、 1H -tetraz ole ( 0.18
g, 2.5 mmol )と di all yl di i sopropyl phosphoramidite (( Allyl O) 2 PN i -Pr 2 ) ( 0.20 ml , 0.75
mmol)を 加 え た 後 、室 温 ま で 昇 温 し 、12 時 間 攪 拌 し た 。反 応 液 を 再 度 0℃ に 冷 却 し 、
3-chlorope roxybe nz oi c aci d ( 0.20 g, 0.80 mmol)を 加 え た 後 、 室 温 ま で 昇 温 し 、 1 時 間
攪 拌 し た 。 反 応 液 に 10% N a 2 S 2 O 3 水 溶 液 ( 10 ml)を 加 え 、 CH 2 Cl 2 ( 30 ml x 2)で 抽 出 し
た 。 有 機 層 を 飽 和 N aHCO 3 水 溶 液 ( 30 ml)お よ び 飽 和 食 塩 水 ( 50 ml)で 洗 浄 し 、 無 水 硫
酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマ
ト グ ラ フ ィ ー (he xane: Ac OEt = 5: 1 to 0:1)に よ り 精 製 し て 、 標 記 化 合 物 120a ( 0.23 g,
99%) を 淡 黄 色 油 状 物 質 と し て 得 た 。 1 H NM R ( 400M Hz , CD 3 Cl)  1.37 (s, 3H),
2.03-2.00 ( m, 3H) , 2.28 ( s, 3H) , 2.64 ( t, 2H, J = 7.2 Hz) , 2.91 ( t, 2H, J = 7.2 Hz) , 3.48 ( d,
1H, J = 9.0 Hz ), 3.61 ( d, 1H, J = 9.0 Hz ), 4.17 -4.11 ( m, 2H), 4.57 -4.45 ( m, 6H), 5.31 -5.19
(m, 6H) , 5.93 -5.83 ( m, 3H) , 7.04 ( s, 4H), 7.32 ( d, 2H, J = 8.2 Hz) , 7.84 ( d, 2H, J = 8.2
Hz) ; IR ( KBr) 2925, 2854, 1724, 1684, 1463, 1262, 1028 c m - 1 ; M S(FAB) m / z: 600
(M+H) + .
(2R)-2 - Ami no-2- me thyl-3-( {4- [4-(4- met hylphe nyl)but anoyl] be nzyl}oxy) propyl dihydrog en phosphate ( 33 a- P)
Allyl N-[(1R ) -1-( di all yl ox yphosphor yloxymeth yl) -1-me thyl -2-[[4-[4-(p - tolyl) butanoyl]phe nyl ]me t hoxy]e t hyl ]c arbam ate 120 a ( 0.23 g, 0.4 0 mmol) の acetonitrile ( 5.0
121
ml)溶 液 に 、 tet raki s( t ri phe nyl phophine) palladium( 0)
( 24 mg, 20 mol)、 triphe nyl -
phosphine ( 22 mg, 80 mol)、 pyrrolidine ( 0.22 ml , 2.6 mmol)を 加 え 、 窒 素 雰 囲 気 下 、
室 温 で 24 時 間 攪 拌 し た 。減 圧 下 溶 媒 を 留 去 し 、得 ら れ た 残 渣 を 20% E tOH 水 溶 液 ( 6.0
ml)に 溶 解 し 、 そ の 溶 液 に charcoal を 加 え た 。 室 温 で 5 分 間 攪 拌 し た 後 、 charco al を
セ ラ イ ト ろ 過 し た 。ろ 液 に TFA ( 10 l )を 加 え 、析 出 し た 固 体 を ろ 過 し 、EtOH ( 4.0 ml)
洗 浄 を 行 い 、 粗 生 成 物 の 標 記 化 合 物 33 a- P を 淡 黄 色 固 体 と し て 得 た 。 得 ら れ た 租 生
成 物 は pyrrol i di ne ( 4 .0 ml)と Et OH ( 4.0 ml)の 混 合 溶 媒 に 加 え 、 不 溶 物 を ろ 過 た 後 、
ろ 液 に TFA ( 80 l)を 加 え る こ と で 再 度 結 晶 を 析 出 さ せ た 。 析 出 し た 結 晶 を ろ 過 し 、
EtOH ( 4 ml)洗 浄 を 行 う こ と で 、 高 純 度 の 標 記 化 合 物 33a- P ( 74 m g, 46%)を 淡 黄 色 固
体 と し て 得 た 。 1 H N MR ( 400M Hz, CD 3 CO 2 D)  1.48 ( s, 3H) , 1.98 -2.07 ( m, 2H) , 2.28 (s,
3H), 2.65 (t , 2H, J = 7.3 Hz) , 3.02 ( t, 2H, J = 7.3 Hz) , 3.73 ( d, 1H, J = 8.8 Hz) , 3.79 ( d,
1H, J = 8.8 Hz) , 4.22 -4.34 ( m, 2H), 4.69 (s, 2H), 7.08 (s, 4H), 7.49 ( d, 2H, J = 8.0 Hz ),
7.95 ( d, 2H, J = 8.0 Hz); I R ( KBr) 3192, 2955, 2594, 1681, 1609, 1517, 1282, 1105, 1033,
796 cm - 1 ; HRM S (E SI) : cal cd for C 2 2 H 3 1 N O 6 P [M +H] + : 436.1889, found 436.1891.
(2R)-2 - Ami no-2- me thyl-3-( {2- me thyl-4-[4- (4- met hylphe nyl) but anoyl] be nzyl}oxy) propyl dihydroge n phosphat e ( 33b- P)
標 記 化 合 物 33b-P は 化 合 物 33b を 出 発 原 料 と し 、 化 合 物 33a-P と 同 様 の 合 成 方 法
に よ り 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。化 合 物 33b-P は 全 2 工 程 、25%で 得 ら れ た 。1 H NM R
(400M Hz , CD 3 CO 2 D )  1.47 ( s, 3H) , 1.98 -2.01 ( m, 2H) , 2.24 ( s, 3H) , 2.3 2 ( s, 3H), 2.62 (t,
2H, J = 7.4 Hz) , 2.97 ( t , 2H, J = 7.4 Hz ), 3.37 ( brs, 2H) , 4.20 -4.36 ( m, 4H), 4.60 ( s, 2H) ,
7.03 ( brs, 4H) , 7.47 ( d, 1H, J = 7.8 Hz), 7.69 ( s, 1H), 7.70 ( d, 1H, J = 7.8 Hz) ; I R ( KBr)
2953, 2602, 1686, 1549, 1210, 1183, 1037, 939, 797 cm - 1 ; HRM S (ESI) : calcd for
C 2 3 H 3 3 N O 6 P [M +H] + : 450.2045, found 450.2045.
(2R)-2 - Ami no-2- me thyl-3-( {3- me thyl-4-[4- (4- met hylphe nyl) but anoyl] be nzyl}oxy) propyl dihydroge n phosphat e ( 33c-P )
122
標 記 化 合 物 33c-P は 化 合 物 33c を 出 発 原 料 と し 、 化 合 物 33a-P と 同 様 の 合 成 方 法
に よ り 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。化 合 物 33c-P は 全 2 工 程 、30%で 得 ら れ た 。1 H NM R
(400M Hz , CD 3 CO 2 D)   1.43 ( s, 3H) , 1.84 -2.05 ( m, 2H), 2.28 ( s, 3H) , 2.47 ( s, 3H) , 2.64
(brs, 2H) , 2.93 ( brs, 2H) , 3.61 ( d, 1H, J = 10.3 Hz ), 3.76 ( d, 1H, J = 10.3 Hz) , 4.08 -4.22
(m, 2H) , 4.58 ( d, 1H, J = 12.2 Hz) , 4.64 ( d, 1H, J = 12.2 Hz) , 7.07 ( brs, 4H) , 7.27 ( brs,
2H), 7.64 ( brs, 1H); IR ( KBr) 2924, 2608, 1685, 1611, 1549, 1448, 1179, 1065, 942, 808,
505 cm - 1 ; HRM S (E SI) : cal cd f or C 2 3 H 3 3 N O 6 P [M +H] + : 450.2045, found 450.204 3.
(2R)-2 - Ami no-3-( {2 -fl uoro-4-[4- (4-met hylphe nyl) but anoyl] be nzyl}oxy) -2- methylpropyl dihydroge n phosphat e ( 33d- P)
標 記 化 合 物 33d-P は 化 合 物 33d を 出 発 原 料 と し 、 化 合 物 33a-P と 同 様 の 合 成 方 法
に よ り 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。化 合 物 33d-P は 全 2 工 程 、31%で 得 ら れ た 。1 H NM R
(400M Hz , CD 3 CO 2 D)  1.50 (s, 3H), 1.98 -2.06 ( m, 2H), 2.27 ( s, 3H), 2.66 ( t, 2H, J = 7.6
Hz) , 3.00 ( t, 2H, J = 7.6 Hz) , 3.82 ( d, 2H, J = 6.6 Hz) , 4.25 -4.30 ( m, 1H), 4.34 -4.38 ( m,
1H), 4.75 ( s, 2H) , 7.08 ( s, 4H) , 7.62 -7.69 ( m, 2H), 7.77 -7.79 ( m, 1H) ; I R ( KBr) 2945,
2611, 1687, 1577, 1418, 1183, 1039, 945, 810, 513 cm - 1 ; MS (FAB) m /z: 452 ( M -H) - ; Ana l.
Calcd for C 2 2 H 2 9 FN O 6 P: C, 58.27; H, 6.45; N , 3.09; F, 4.19; P, 6.83. Found: C, 57.59; H,
5.68; N, 3.11; F, 4.29; P, 6.78.
(2R)-2 - Ami no-3-( {2 -c hl oro-4-[ 4-(4- met hylphe nyl)but anoyl] be nzyl}oxy) -2- methylpropyl dihydroge n phosphat e ( 33e-P )
標 記 化 合 物 33e-P は 化 合 物 33e を 出 発 原 料 と し 、 化 合 物 33a-P と 同 様 の 合 成 方 法
に よ り 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。化 合 物 33e-P は 全 2 工 程 、31%で 得 ら れ た 。1 H NM R
(400M Hz , CD 3 CO 2 D)  1.42 (s, 3H), 1.88 -1.95 ( m, 2H), 2.17 ( s, 3H), 2.55 ( t, 2H, J = 7.1
Hz) , 2.90 ( t , 2H, J = 7.1 Hz ), 3.73 ( d, 1H, J = 8.0 Hz), 3.87 ( d, 1H, J = 8.0 Hz) , 4.16 -4.20
(m, 1H), 4.25 -4.28 ( m, 1H) , 4.56 (s, 2H) , 6.97 ( brs, 4H) , 7.63 ( d, 1H, J = 7.8 Hz) , 7.78 ( d,
1H, J = 7.8 Hz), 7.82 ( s, 1H) ; I R ( KBr) 2923, 2612, 1686, 1560, 1182, 1039, 943, 811
123
cm - 1 ; HRMS (E SI) : cal cd for C 2 2 H 3 0 N O 6 PCl [M +H] + : 470.1499, found 470.1499.
(2R)-2 - Ami no-3-( {2 -et hyl-4 -[4-(4- me thylphe nyl)but anoyl]benzyl}oxy) -2-me thylpropyl dihydroge n phosphat e ( 33f-P)
標 記 化 合 物 33f-P は 化 合 物 33f を 出 発 原 料 と し 、 化 合 物 33a-P と 同 様 の 合 成 方 法
に よ り 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。化 合 物 33f-P は 全 2 工 程 、20%で 得 ら れ た 。1 H NM R
(400M Hz , CD 3 CO 2 D)  1.20 ( t, 3H, J = 7.4 Hz) , 1.39 (s, 3H) , 1.95 -2.06 (m, 2H), 2.24 (s,
3H), 2.60-2.69 ( m, 4H) , 2.97 (t , 2H, J = 7.4 Hz) , 3.60 ( d, 1H, J = 9.4 Hz) , 3.76 ( d, 1H, J =
9.4 Hz) , 4.10 ( d, 2H, J = 10.6 Hz), 4.65 ( d, 2H, J = 19.0 Hz) , 7.02 ( brs, 4H), 7.48 ( d, 1H, J
= 7.8 Hz) , 7.73 ( d, 1H, J = 7.8 Hz) , 7.74 ( s, 1H); I R ( KBr) 2958, 2609, 1689, 1455, 1205,
1104, 1065, 944, 838, 520 cm - 1 ; HRM S (E SI) : calcd for C 2 4 H 3 5 N O 6 P [ M+H] + : 464.2202,
found 464.2204.
(2R)-2 - Ami no-3-( {2 ,6- di methyl-4-[4 -(4- met hylphe nyl) but anoyl] be nzyl}oxy) -2- met hyl propyl dihydroge n phosphat e ( 33g-P)
標 記 化 合 物 33g-P は 化 合 物 33g を 出 発 原 料 と し 、 化 合 物 33 a-P と 同 様 の 合 成 方 法
に よ り 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。化 合 物 33g-P は 全 2 工 程 、16%で 得 ら れ た 。1 H N MR
(400M Hz , CD 3 CO 2 D )  1.38 ( s, 3H) , 1.95 -2.06 ( m, 2H) , 2.28 ( s, 3H), 2.44 ( s, 6H), 2.65 ( t,
2H, J = 7.3 Hz) , 2.98 ( t , 2H, J = 7.3 Hz) , 3.33 -3.36 ( m, 4H) , 3.60 ( d, 1H, J = 9.5 Hz ), 3.79
(d, 1H, J = 9.5 Hz) , 4.10 ( d, 1H, J = 10.0 Hz ), 4.70 ( d, 1H, J = 10.0 Hz) , 7.08 (s, 4H), 7.60
(s, 2H); I R ( KBr) 2950, 2468, 2229, 1683, 1578, 1458, 1285, 1121, 1066, 1 037, 969, 767
cm - 1 ; HRMS (E SI) : cal cd for C 2 4 H 3 4 N O 6 P [M -H] - : 462.2045 , found 462.2037.
(2R)-2 - Ami no-3-( {2 ,5- di methyl-4-[4 -(4- met hylphe nyl) but anoyl] be nzyl}oxy) -2- met hyl propyl dihydroge n phosphat e ( 33h- P)
124
標 記 化 合 物 33h-P は 化 合 物 33h を 出 発 原 料 と し 、 化 合 物 33a-P と 同 様 の 合 成 方 法
に よ り 無 色 固 体 物 質 と し て 得 た 。化 合 物 33h-P は 全 2 工 程 、20%で 得 ら れ た 。1 H NM R
(400M Hz , CD 3 CO 2 D)  1.42 ( s, 3H) , 1.92 -2.06 ( m, 2H), 2.28 (s, 3H) , 2.30 ( s, 3H), 2.42 ( s,
3H), 2.64 ( t, 2H, J = 7.3 Hz) , 2.91 ( t , 2H, J = 7.3 Hz) , 3.35 ( brs, 2H) , 3.61 ( d, 1H, J = 9.8
Hz) , 3.77 ( d, 1H, J = 9.8 Hz ), 4.09 -4.19 ( m, 2H) , 4.59 ( q, 2H, J = 12.2 Hz) , 7.07 ( s, 4H) ,
7.25 ( s, 1H) , 7.40 ( s, 1H); I R ( KBr) 2923, 2595, 1681, 1558, 1457, 1192, 1135, 1092, 1052,
971, 804 cm - 1 ; HRM S ( ESI): cal cd for C 2 4 H 3 4 N O 6 P [M -H] - : 462.2045, found 462.2043.
Biolog y
In vitro [ 3 5 S] GTP - S bindi ng assay
用 い る GT P -S bi ndi ng assa y の 基 本 的 な 操 作 手 順 は 、 文 献
2 0b )
に記載されており、
文 献 記 載 の 手 順 に 準 じ て 実 施 し た 。ま ず 、58 l の assay bu ffe r ( 50 m M HEPES, pH 7.5,
0.10 M N aCl, 5.0 mM M gCl 2 , 0.050 mg/ml Saponin) と 10 l の 50 M GD P solution ( 50
M GD P,54M DTT, 50 mM HEPES, pH 7.5, 0.10 M N aCl, 5.0 mM M gCl 2 , 0.050 mg/ml
Saponin) を 96-we ll プ レ ー ト ( Sumitomo Bakelite Co., Ltd. SU MI LON Prote osave 96 U
plate)の 各 well に 加 え た 。 そ こ に 、 各 濃 度 に 調 製 し た 被 験 化 合 物 (3 3-P、 6-P、 8) を
2.0 l ず つ 加 え た 。 対 照 群 と し て は 、 2.0 l の 20 mM Pyrrolidine ま た は Me OH を 加
え た 。そ の 後 、3.5 nM [ 3 5 S] GT P S 溶 液 ( 10 l)と assay buffe r で 希 釈 し た 0.50 mg/ml
各 EDG 受 容 体 発 現 CHO 細 胞 ( 20 l)を 加 え 、 反 応 を 開 始 さ せ た 。 室 温 で 1 時 間 イ ン
キ ュ ベ ー シ ョ ン し た 後 、U niFil te r-96, GF/C ( Pe rkinElme r life scie nce s) に 移 し 、洗 浄 用
buffe r ( 20 mM HE PE S, pH 7.5, 0.10 M N aCl, 5.0 mM M gCl 2 ) ( 0.20 ml x5)で 洗 浄 し た 。
最 終 的 に 同 buffe r が 各 we ll に 15l ず つ 残 る 状 態 に し た 後 、 MICROSCI N T 20
(Pe rkinE lme r Li fe and Anal yt i cal Scie nce s) ( 50 l)を 加 え た 。 そ の 後 、 細 胞 内 Ca 2+ 濃 度
の 変 化 を モ ニ タ ー し た 。 ア ゴ ニ ス ト 活 性 は シ グ ナ ル の 面 積 で 評 価 し 、 6-P 10 M の
面 積 を 100 %と し て 、 50 %の 面 積 を 与 え る 濃 度 を E C 5 0 値 と し て 求 め た 。
Lymphoc yte c ount s f ol l owing oral administ rat ion in rat s.
試 験 に 使 用 す る 動 物 は 、 LE W ラ ッ ト ( 雄 、 5 週 齢 、 日 本 チ ャ ー ル ス ・ リ バ ー 株 式
会 社 )を 使 用 し 、1 群 5 匹 の マ ウ ス を 用 い た 。被 験 化 合 物 は 1.0%ト ラ ガ ン ト 液 (溶 媒 )
に 懸 濁 さ せ 、被 験 化 合 物 懸 濁 液 を 、マ ウ ス の 体 重 1.0 kg 当 た り 5.0 ml の 割 合 で 強 制
経 口 投 与 し た 。 な お 、 正 常 群 に は 検 体 の 代 わ り に 1.0%ト ラ ガ ン ト 液 を 投 与 し た 。
125
溶 媒 あ る い は 被 験 化 合 物 懸 濁 液 投 与 3 時 間 後 に 、エ ー テ ル 麻 酔 下 、下 大 静 脈 よ り
採 血 を 行 い 、EDTA 入 り チ ュ ー ブ に 移 し た 。そ の 後 、血 液 学 検 査 装 置 (Te chnicon) で
リ ン パ 球 の 絶 対 数 を 測 定 し た 。 正 常 群 の リ ン パ 球 数 を 100 % と し た 時 の 被 験 化 合
物 に よ る リ ン パ 球 数 減 少 作 用 を 相 対 値 ( %) で 算 出 し た 。
Inhibit ory acti viti e s ag ai nst H ost ve rsus Graft Re action in rat s (H vGR)
第 2 章実験の部に記載した方法に準じて実施した。
He art rat e de c re ase f oll owi ng oral administ rat ion in rats.
試 験 に は 、ラ ッ ト (I ar:Wi st ar-I mamichi rat)を 用 い た 。1 群 3 匹 の ラ ッ ト を 使 用 し た 。
各 被 験 化 合 物 を 1.0% M C 溶 液 に 懸 濁 さ せ 、 ラ ッ ト に 経 口 投 与 し た 。 な お 、 正 常 群
に は 検 体 の 代 わ り に 1. 0% M C 液 を 投 与 し た 。 化 合 物 投 与 後 、 0.5 時 間 、 1 時 間 、 1.5
時 間 、 2 時 間 、 2.5 時 間 、 3 時 間 、 4 時 間 、 5 時 間 、 6 時 間 、 24 時 間 と 48 時 間 の 時 点
で 心 拍 数 (bpm)を 測 定 し た 。 48 時 間 の 計 測 値 の う ち 、 各 個 体 の 心 拍 数 の 最 大 値 (も し
く は 最 小 値 )を 対 照 群 に 対 す る 変 化 量 = “He art rate de cre ase ( %)” と し て 評 価 し た 。
Evaluat ion of phosphoryl ati on rat e in in vitro .
試 験 に は 、ラ ッ ト (I ar: Wi st ar-I mamichi rat)を 用 い た 。ま ず 、以 下 に 示 す 方 法 に 従 い 、
ラ ッ ト 未 洗 浄 赤 血 球 画 分 の 調 製 を 行 っ た 。 抗 凝 固 剤 と し て 3.2 %ク エ ン 酸 水 溶 液 を
用 い 、 ラ ッ ト よ り 採 血 を 行 っ た 。 血 液 を 、 900 rpm、 4.0℃ 、 1 5 分 間 遠 心 後 、 上 清
を 捨 て 、残 り を 未 洗 浄 赤 血 球 画 分 と し て 、以 下 用 い た 。ラ ッ ト 未 洗 浄 赤 血 球 画 分 0.50
ml に 、 被 験 化 合 物 ( 0.10 g/ ml i n D MSO) を 0.50 μl 加 え 、 37℃ 、 3 時 間 イ ン キ ュ ベ ー
ト し た 。反 応 終 了 後 、1.0 ml の Me OH を 反 応 液 に 加 え 、激 し く 攪 拌 後 、15,000 rpm、
4℃ 、5 分 間 遠 心 分 離 し 、上 清 を も う 一 度 、15,000 rpm、4℃ 、10 分 間 遠 心 分 離 し た 。
上 清 の 一 部 を 用 い て 、 リ ン 酸 化 効 率 を 測 定 し 、 残 り の 上 清 は 、 HPLC で の 分 取 用 に
約 1/10 程 度 ま で 濃 縮 し た 。濃 縮 後 は 、-20℃ で 保 存 し た 。濃 縮 し た サ ン プ ル に 、HPLC
の 移 動 層 を 0.30 ml 加 え 、 攪 拌 後 、 沈 殿 物 を 遠 心 で 除 去 し 、 上 清 0.20 ml を HPLC で
分 取 を 行 っ た 。HPLC の 条 件 は 、以 下 の 通 り で あ る 。カ ラ ム : Y M C-pack OD S A-312、
ace tnitrile /wat e r( 0.1%TFA) = 30: 70 ( 0 min) to 90:10 ( 30 min) 、 流 速 : 1.0 ml/min, 温 度 :
40 o C、 検 出 波 長 : 220、 230、 254、 296 nm。
親 化 合 物 33 と そ の リ ン 酸 エ ス テ ル 体 33- P で は 、 U V 吸 収 に 関 与 す る 部 分 は 変 化
がなく、両化合物のモル吸光係数は同じとして、概算した。リン酸化効率は以下に
示 す 式 で 計 算 し た 。 (式 3)
リ ン 酸 化 効 率 (%) = (リ ン 酸 化 化 合 物 の ク ロ マ ト グ ラ ム 上 の 面 積 )/(リ ン 酸 化 化 合 物 の
126
ク ロ マ ト グ ラ ム 上 の 面 積 +親 化 合 物 の ク ロ マ ト グ ラ ム 上 の 面 積 ) x 100
(式 3)
Molec ular M ode li ng
Induc ed f it doc king in S1P 1 .
33f-P の コ ン フ ォ メ ー シ ョ ン は Ligpre p 8 8 ) プ ロ グ ラ ム を 使 用 し 、 S1P 1 の 結 晶 構 造
(Protein D at a Bank e nt ry 3V 2Y ) 8 6 ) を 用 い た SCHRÖD IN GE R 社 induce d fit dockin g
protocol 8 8 ) に よ り 算 出 し た 。
Homolog y mode li ng of S1P 3 .
S1P 3 の ホ モ ロ ジ ー モ デ ル は SCHRÖD IN GE R 社 induce d fit docking pro tocol 8 8 ) に よ り
算 出 し た induce d fi t docki ng モ デ ル に よ り 算 出 し た S1P 1 と 33f-P の 構 造 に 基 づ き 、
Prime プ ロ グ ラ ム
88)
を使用して作成した。
127
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n-butyl li t hi um ( 1.9 M i n he xane , 35 L, 2 e q.) at -30oC, and the n the solution was
stirre d for 30 mi n. Aft e r cool i ng to -78oC, be nz alde hyde 25 a ( 9 mg, 1 e q.) was adde d.
The sol uti on was gradual l y w arme d to ambie nt te mpe rature and stirre d for 2 h. T he
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80. イ ム セ ラ カ プ セ ル 0.5mg 錠
添付文書
田辺三菱製薬株式会社.
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82. 加 藤 隆 一 、 横 井 毅 、 山 添 康 : 編 集 「 薬 物 代 謝 学 - 医 療 薬 学 ・ 医 薬 品 開 発 の 基
礎 と し て 」 東 京 化 学 同 人 出 版 2010 年 .
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論文目録
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Takashi Tsuj i, Yuki ko Ii o, Toshiyasu Take moto and Takahide Nishi, Te trahed ron:
Assy mm et ry , 2005 , 16 , 3139-3142.
2. Synthesi s of a chi ral phosphoni um salt for the pre paration of -substituted alaninol
de rivative s
Takashi Tsuji , Tsuyoshi N akamura, Ke isuke Suz u ki and Takahide N ishi, Tetrahed ron ,
2014, 70, 5234-5241.
3. Practical phosphoryl at i on me t hods of ,-disubstitute d -amino alcohol de rivatives
Takashi Ohnuki , Takashi Tsuj i, Shojiro M iyaz aki, Taku M origuchi and Takahide Nishi,
Synle tt , 2009 , 6 , 910-912.
4. Synthesi s and SAR st udie s of be nz yl ethe r de rivative s as pote nt ora l active S1P 1
agonists
Takashi Tsuj i, Ke i suke Suz uki , Tsuyoshi N akamur a, Taiji Goto, Yukiko Se kigu chi,
Takuya I ke da, Takeshi Fukuda, Toshiyasu Take moto, Yumiko M iz uno, Takako Kimur a,
Yumi Ka wase , Fut oshi N ara, Takashi Ka ga ri, Takaichi Shimoz ato, Chiz uko Yahara,
Shinichi I naba, Tomohi ro Honda, Takashi I z umi, M asakaz u Tamura an d Takahide N ishi,
Bioo rg. Med . Chem ., 2014, 22 , 5246-5256.
137
参考論文目録
1. Allylati on of carbon yl compounds with all ylic gallium re a ge nts
Takashi
Tsuj i ,
Shi n -i chi
U sugi ,
Hide ki
Yorimitsu,
Hiroshi
Shinokubo,
Se ijiro
M atsubara and Koi chi ro Oshi ma, Chem . Lett., 2002 , 31 , 2-3.
2. Cobalt -cat al yz e d coupl i ng re act i on of alkyl halide s with allylic gri gna rd re a ge nts
Takashi Tsuji , Hi de k i Yori mi t su and Koichiro Oshima, Ange w. Che m . Int. Ed ., 2002 , 41 ,
4137-4139.
3. Synthesi s
of
c ycl opropane s
via
iodine -ma gne sium
e xchan ge
be twee n
3-iodome t hyl -1-oxa c ycl ope nt ane s and organoma gne sium re age nts
Takashi Tsuj i, Tomoaki N akamura, Hide ki Yorimitsu, H iroshi Shinokubo and Koichir o
Oshima, Te t rahed ron, 2004 , 60, 973-978.
4. Cobalt -cat al yz e d cross -coupl i ng re actions of alkyl halides with allylic and be nz ylic
Grign ard re age nt s and t hei r application to tande m radical c ycliz ation/cross -couplin g
re actions
Hirohisa Ohmi ya, Takashi Tsuj i , Hide ki Yorimitsu and Koichiro Oshima, Chem istry ,
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5. Asym met ri c synt he si s of ,-di substitute d -amino alcohol de rivative s
Tsuyoshi N akamura, Takashi Tsuj i, Yukiko Iio, Shojiro M iyaz aki, Toshiyasu Take moto,
Takahide N i shi , Tet rah edron : A sy mm etry , 2006 , 17 , 2781-2792.
138
謝辞
本論文作成および発表にあたり、懇切丁寧なご指導ならびにご鞭撻を賜りました
東京薬科大学薬学研究科
薬品化学教室教授
林 良雄 先生に深く感謝の意を表し
ます。
また、本論文に関して審査およびご指導とご助言を賜りました東京薬科大学大学
院薬学研究科
薬化学教室教授
先生、薬品製造学教室教授
三 浦 剛 先 生 、分 子 機 能 解 析 学 教 室 教 授
横松 力
松本 隆司 先生に厚く御礼申し上げます。
本研究は筆者が三共株式会社
化 学 研 究 所 所 属 中 、 現 第 一 三 共 イ ン ド CE O
西
剛 秀 博 士 の 指 導 の も と で 行 わ れ た も の で あ り 、研 究 遂 行 に あ た り 、終 始 ご 指 導 な ら
びにご鞭撻を賜りましたことを深く感謝いたします。
本研究の発表の機会を与えていただき、ご指導、ご支援を賜りました、第一三共
株式会社
創 薬 化 学 研 究 所 第 4G グ ル ー プ 長
高橋 寿 博士に深く感謝いたします。
本研究の遂行および本論文の作成にあたり、貴重な御指導、御助言をいただきま
し た 、第 一 三 共 株 式 会 社
創薬化学研究所
中 村 毅 博 士 、鈴 木 啓 介 博 士 、竹 元 利
泰 博士に深く感謝いたします。
本論文の作成にあたり、様々な面でご指導を賜りました、第一三共株式会社
薬化学研究所
創
小林 慶行 博士、窪田 秀樹 博士に深くお礼申し上げます。
本 研 究 の 合 成 研 究 に 御 協 力 い た だ い た 、第 一 三 共 株 式 会 社 創 薬 化 学 研 究 所
宮崎
正 二 郎 博 士 、池 田 拓 也 博 士 、関 口 幸 子 博 士 、福 田 剛 氏 、後 藤 泰 治 博 士 、水
野 由美子 氏に心から感謝いたします。
本 研 究 の X 線 構 造 解 析 を 実 施 し て い た だ き ま し た 、 第 一 三 共 RD ノ バ ー レ 株 式 会
社
生物評価研究部
一三共株式会社
木村 貴子 氏、薬物動態面でご協力していただきました、第
薬物動態研究所
箭 原 千 鶴 子 氏 、稲 葉 真 一 博 士 、本 田 友 博 博
士 、泉 高 司 博 士 、薬 効 評 価 を 担 当 し て い た だ き ま し た 、バ イ オ 創 薬 研 究 所
田村 正
和 博 士 、循 環 代 謝 研 究 所
明松 隆
川 瀬 由 美 氏 、奈 良 太 博 士 、先 端 医 薬 研 究 所
志 博士、下里 隆一 博士に心よりお礼申し上げます。
また、化学の素晴らしさをご教示頂くと共に、筆者が化学者、研究者として生き
ていくきっかけを作ってくださった京都大学大学院
大 嶌 幸 一 郎 先 生 、依 光 英 樹
先生に深く感謝いたします。
最後に、本論文の作成に際し、常に暖かく見守り、陰ながら支援してくれた最愛
の妻 恵子と、両親に心から感謝いたします。
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