第36回 九州人工透析医学会

第36回 九州人工透析医学会
原爆熱傷瘢痕のためシャントトラブルを
繰り返す患者の一例
∼透析導入前のシャント管理∼
医療法人 きたやま泌尿器科医院
(c)2005 KITAYAMA Urology Clinic All rights reserved.
はじめに
私たちがこれまでに検索しえた限りでは、原爆被爆者
で血液透析導入に至った症例報告はみられない。今回、
慢性腎炎で血液透析導入間近の原爆被爆者が、原爆熱
傷瘢痕のためシャントトラブルを繰り返す一例を経験した
ので報告する。
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症例
76歳 男性。19歳の時長崎市内にて原爆被爆。平成4
年頃より蛋白尿出現。平成5年7月より慢性腎炎診断。
徐々に腎機能が低下、平成11年5月血液透析導入目
的にて当院紹介。平成11年7月左前腕内シャント造設。
術後血流が比較的良好であったにも関わらず、シャント
静脈は発達することなく、徐々に狭小化し閉塞。そのた
め、翌8月に右前腕内シャント造設。これも発達すること
なく閉塞。平成12年2月右前腕シャント再建術施行した
が、術後すぐに閉塞した。
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最終的には、皮膚の瘢痕が広範でシャント作成部位が
限られること。もともとシャントに適した表在静脈が少な
かったこと。静脈壁にも瘢痕が及んでいることから、自己
の静脈では再建は困難と判断し、人工血管を使用し、右
前腕内シャント再建術を施行。しかし、これ以降も静脈の
狭小化は進行し、狭窄及び閉塞を繰り返したため、平成
15年7月までにPTA9回、ウロキナーゼDIV処置17回施
行。
抄録時点では血液透析導入には至っていなかったが、
その後、腎機能増悪したため(BUN92.3、Cr8.44)10月
14日より血液透析導入。導入直前の9月にPTA1回、導
入後の11月閉塞のためPTA1回、計2回施行。
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考察
シャントトラブルが起こり易い要因として
① 原爆熱傷瘢痕でシャント作成部位が限られている。
② もともと患者にシャントに適した血管が少なかった。
③ 表在静脈に、熱傷瘢痕が及んでいる。
シャントが今まで閉塞せず、開存できた要因は
① 繰り返されるシャント手術や入院の際、看護師が
シャントの自己管理の重要性について説明し、シャント
異常時には早期受診するよう十分に指導したこと。
② 看護師も常時対応できるよう備えていたこと。
③ 入院中、透析患者と間近に接したことで、患者がシャ
ントは大切!重要!と実感できたこと。
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まとめ
原爆熱傷瘢痕が及んだ表在静脈を使用したシャント
は、シャントトラブルを起しやすい。
シャントトラブルの早期発見には、患者の自己管理
と併せて、トラブルに対応できる看護体制が必要で
ある。
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