鹿野達史の日本経済の視点

景気循環研究所
鹿野達史の日本経済の視点
2015 年 10 月 21 日
「値下げ」への意識が強まっている。期待インフレ率は一段と低下へ
●コアCPIが前年比低下に転じる中、期待インフレ率が一段と低下
物価モニター調査を
物価の弱めの動きを受けた期待インフレ率の低下が一段と明確になっ
もとに算出した期待
ている。9 月の消費動向調査(調査基準日は 9 月 15 日)をもとに推計し
インフレ率は 10 月
た「1 年後の期待インフレ率」は、8 月から横ばいとなったものの、9 月
に大幅に低下。
25 日発表の消費者物価では、全国・コア価格(生鮮食品を除く総合)が
消費動向調査の期待
前年比マイナスに転じ(8 月前年比▲0.1%)、東京都区部のコア価格の低
インフレも低下の可
下幅が拡大していること(8 月:同▲0.1%→9 月:同▲0.2%)が確認さ
能性。
れた(図 1)。こうした中、10 月の物価モニター調査(速報、10 月 1~5
日調査)では、物価の先行き(1 年後)について、「上昇」との見方の比
率が低下する一方、「下落」の比率が高まり、加重平均で算出した期待イ
ンフレ率が大幅に低下している(同)
嶋中 雄二
景気循環研究所長
物価モニター調査については、速報は、当該月の上旬調査、中旬発表と
なるケースが多く、物価見通しについて、いち早くみることができること
から本欄でも継続的にウォッチしているが(「鹿野達史の日本経済の視点」
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
8 月 24 日号、5 月 29 日号など)、物価モニター調査の動きからみると、10
シニアエコノミスト
03-6213-5224
られる(図 2)。
月の消費動向調査では、期待インフレ率が再び低下することが十分に考え
shikano-tatsushi1@sc.mufg.jp
宮嵜
図 1. 物価モニター調査による期待インフレ率と消費者物価の推移
浩
(%)
(%)
シニアエコノミスト
03-6213-6573
1.0
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
0.8
2.5
0.9
0.7
福田
0.6
圭亮
シニアエコノミスト
03-6213-2608
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
東京都千代田区丸の内 2-5-2
三菱ビルヂング
5月
1.89
都区部・コア消費者物価
前年比(左目盛)
0.5
0.4
6月
1.99
2.3
7月
2.04
2.2
2.1
8月
1.86
2.0
9月
1.80
1.9
1.8
0.3
1.7
0.2
0.1
景気循環研究所
2.4
1年後の期待インフレ率
(右目盛)
0.0
10月(速)
1.58
全国・コア消費者物価
前年比(左目盛)
1.6
1.5
-0.1
1.4
-0.2
1.3
1.2
-0.3
14.1
11
12
15.1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
(注)期待インフレ率については、「-5%超」、「-5%程度」は-5%、「-4%程度」は-4%、「-3%程度」は-3%、「-2%程度」は-2%、「-1%程度」は-1%、
「変わらない」は0%、「+1%程度」は1%、「2%程度」は2%、「3%程度」は3%、「4%程度」は4%、「5%程度」、「5%超」は5%のインフレ率をそれ
ぞれ予想しているとして計算。消費者物価は、消費税率引き上げの影響を除いたベース(当研究所推計)
(資料)消費者庁「物価モニター調査」、総務省「消費者物価指数」などをもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
1
2015 年 10 月 21 日
図 2. 期待インフレ率の推移
(%)
(%)
3.5
3.0
1年後の期待インフレ率
消費動向調査(左目盛)
2.5
3.0
2.0
2.5
1.5
1年後の期待インフレ率
物価モニター調査(右目盛)
2.0
1.0
1.5
0.5
12
13
14
15
(注)期待インフレ率は、消費動向調査、物価モニター調査ををもとに算出。物価モニターをもとにした期待インフレ率については、図1の注参照。
消費動向調査では、「-5%以上低下」を-5%、「-5%~-2%低下」を-3.5%、「-2%未満低下」を-1%、「2%未満上昇」を+1%、「2%
~5%上昇」を+3.5%、「5%以上上昇」を+5%のインフレ率をそれぞれ予想しているとして計算。
(資料)内閣府「消費動向調査」、消費者庁「物価モニター調査」などをもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
●「値下げ」への意識が強まり、期待インフレの低下が続く可能性
値引きセールの実施
足元をみると、9 月から 10 月にかけて牛丼大手 3 社の値下げセールが
など物価下落の話題
再開され、一部で延長となっているほか、渋谷の有名商業施設で、この時
が増えている。
期としては初めての全館一斉値下げが実施されるなど、再び物価下落の話
「値下げ」の検索数が
題が増えており、物価下落に対する意識が強まっている可能性がある。
「値上げ」を上回る。
物価の弱めの動きが
バックワード・ルッ
キングな期待形成を
弱める可能性。
有名検索サイトの検索数をみると、9 月に入り、「値下げ・値下がり」
の検索数が「値上げ・値上がり」を上回り(図 3)、「値上げ・値上がり」
から「値下げ・値下がり」を差し引いたDIは、足元で大幅に低下してい
る(図 4)。過去をみると、DIは、期待インフレ率に先んじて動いてい
ることも多く、DIの低下は、先行き、期待インフレ率の低下が続くこと
を示唆している。
物価の弱めの動きが、バックワード・ルッキングな期待形成を弱める可
能性を以前より指摘してきたが、こうした動きが強まっていることも考え
られる。日銀の追加緩和が望まれる状況にあるといえる。
(「値上げ・値上がり」
・14年=100)
図 3. 検索数指数の推移
140
120
検索数指数
値上げ・値上がり
100
80
60
検索数指数
値下げ・値下がり
40
20
0
15/1
15/4
15/7
(注)週次データ、いずれも5週中央移動平均。
(資料)Googleトレンドをもとに三菱UFJモルガンスタンレー証券景気循環研究所作成
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
2
15/10
2015 年 10 月 21 日
図 4. 検索数指数DIと期待インフレ率の推移
(DI、「値上げ・値上がり」
-「値下げ・値下がり」)
(%)
120
5
検索数指数DI (「値上げ・値上がり」‐「値下げ・値下がり」)
(左目盛)
100
4
80
60
3
40
20
2
0
1
-20
-40
0
1年後の期待インフレ率
消費動向調査(右目盛)
-60
-80
-1
04
06
08
10
12
14
16
(注)期待インフレ率については、図2の注を参照。DIは、検索数指数の「値上げ・値上がり」-「値下げ・値下がり」。
(資料)Googleトレンド、内閣府資料をもとに三菱UFJモルガンスタンレー証券景気循環研究所作成
(15.10.21
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
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鹿野 達史)
2015 年 10 月 21 日
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