Hong Kong 2015 – 16 Budget insights

25 February 2015
Hong Kong
2015 – 16
Budget insights
予想せぬ財政黒字と懐柔策が再びより正確な予算
策定の必要性を強調
主なポイント
►
2014/15年度における給
与所得税及びその他所
得税の75%、上限
20,000香港ドルまで減税
彼にとって8回目となる財政予算演説に至り、曾俊華財政長官は、期待に応えることを明確に
学んだようでした。多くの批評家たちは、彼が正確な財政予算を作成することも同様に学んで
ほしいと望んでいるかもしれません。
予想をはるかに超え、欧州の財政長官らを驚喜させるほどの巨額の財政黒字を統括する中
で、財務長官は、複雑な計算を行う公務員たちからは、長期的な財政目標とそれを達成させ
るための戦略を立てるのに十分な材料を得られていないと感じていることでしょう。
►
扶養子女控除及び誕生
年度の追加控除額が
70,000香港ドルから
100,000香港ドルにそれ
ぞれ増加
歳入と歳出を正確に見積る能力の欠如から、財政長官は、構造赤字に向かうという長期的
にみた悲観的な見通しを示す一方で、短期的には大きな黒字を計上するというサイクルを繰
り返しているように見えます。そのような繰り返しは、香港の財政予算で事実上求められるよ
うになった一時的な懐柔策への納税者の依存を断ち切るという彼のかねてからの公約の実
現を困難にしています。
►
2015/16年度の第1、第
2四半期の不動産税が、
課税対象となる不動産
ごとに、四半期ごとに最
大2,500香港ドル免除
昨年度の政府予算案において、2014/15年度における財政黒字を91億香港ドルと見積った
財政長官は、今期の財政予算案で2014/15年度における財政黒字を913億香港ドル(当初の
見積額のほぼ10倍)に修正したことが人々に驚きをもたらし、必要な懐柔策が求められるで
あろうことをすでに承知していたと考えられます。
►
公営住宅の賃貸料1ヶ月
分を支給(富裕者を除く)
►
総合社会保障支援計画
として、高齢者手当、高
齢者生活手当、および
障害者手当が2か月分
補填
►
長期的貯蓄のため「未
来基金」を設立
期待を管理する手法は、財政長官が2014/15年度の予算余剰額を913億香港ドルから638億
香港ドルに修正したことにも見受けられます。つまり、彼の言及した金額には、つい最近2014
年12月に設けられた「住宅準備金」の275億香港ドルが差し引かれているのです。
►
セントラル占拠運動で影
響を受けた産業分野に
対して、ライセンス・
フィーやその他一定の
政府への支払費用を免
除
その他の肯定的な政策として、企業財務センター、プライベート・エクイティ・ファンド及び香港
の多様な産業分野での経済的な発展(航空機リース及び知的財産権取引)に関する主導的
な取り組みは歓迎されるでしょう。同様に、未来基金や住宅準備金の設立は、現時点での使
用可能な8,000億香港ドル以上の財政黒字を少なくとも将来の為に蓄える賢明な選択である
といえます。
►
インフレ連動型債券であ
る「iBond」 を 10億香港
ドルまで公募で発行
しかし未来基金は次の10年間で構造的な赤字に陥る予測の下で設立され、いかなる特定の
目的のためにデザインされたものではないことから、基金は社会にとって有益であるとされる
領域に使用されることが望まれます。
財政予算演説をする前の週において、財政長官は財政予算に懐柔策があるかについては
言及を控えていたと思われます。そうすることで、今回の演説、つまり、給与所得税及びその
他所得税の減税(控除額上限が10,000香港ドルから20,000香港ドルへの増加)、不動産税の
免除(上限が1,500香港ドルから2,500香港ドルへの増加)、そして扶養子女控除の100,000香
港ドルへの増額といった施策によって、彼は香港の納税者に良い意味でサプライズを与える
ことを望んでいたかもしれません。そのようなサプライズを与えることで、財政黒字がどうして
極端に増加したのか、将来的な財政赤字の為に貯蓄する以外に何をするのかといった回答
が困難な質問を問いただされることが減少すると期待していたのかもしれません。
香港の税務上の競争力を高める目的を示唆した予算案
香港のシンプルで低税率の税制度は、外国投資を誘致す
る競争有利性の一つであるとよくいわれます。しかしなが
ら、法人税率を段階的に引き下げ、税制インセンティブを
活用して投資を誘致しようとする昨今の世界的な傾向を踏
まえ、専門家や商業団体は香港の税務面での競争優位
性を保つ為に、税制や規制の見直しを提言しています。
このような提言は、香港がそのような税制の見直しを最後
に行ったのが39年前であったこともあり、今年に入って特
に勢いを増しています。加えて、税制見直しの支持者によ
ると、経済協力開発機構(OECD)が税源浸食と利益移転
プロジェクト(BEPS)に取り組んでいることは、香港の税制
に重要な影響をもたらすものであるといわれています。
曾財政長官氏がそのような呼びかけに対して今回の演説
では言及していない一方で、彼は以下の投資や事業活動
を香港に誘致する為に香港の税制の見直し、または修正
に取り組んでいくことを公言しました。
財務統括会社が直面する非対称的な税務処理への言及
財務統括会社(treasury company)は、一般的にグループ
会社から余剰資金を借入れ、その他のグループ会社に貸
出す業務を行っています。しかしながら、現状の香港税法
(IRO)では、財務統括会社の利息収入は香港にて課税対
象となる一方で、財務統括会社が支払う支払利息は、借
入が海外にあるグループ会社から行われた場合には、一
般的に損金算入ができません。
この非対称的な税務取扱いは、地域財務統括会社の設
立を検討する多国籍企業にとって、香港が選好されない
大きな原因となっています。
今回の予算案で、曾財務長官は、特定の条件のもと、財
務統括会社における支払利息の損金算入や特定の財務
活動に対する事業所得税率の50%減税を認めるよう税法
を改正すると公言しています。
今回提案された支払利息の損金算入規定と優遇税率
8.25%(既存の税率16.5%の50%)は、シンガポール(現行の
優遇税率が10%)に対する香港の競争優位性を高め、多国
籍企業が香港に財務管理センターを設立する動機付けの
一つとなるでしょう。
非居住者プライベート・エクイティ・ファンドへの免税措置
の拡大
2013/14年度の財政予算において、曾財務長官は、「より
多くのプライベート・エクイティ・ファンドが香港に設立され
るように誘致するために、オフショア・ファンド(香港非居住
者ファンド)への免税措置を香港外で設立登記された、香
港内に資産を保有せず、香港で事業を行っていないプライ
ベート・カンパニーにまで広げることを提案する」と述べて
いました。
2
2年間に渡る産業界及び専門家との幅広い協議を経て、
曾財務長官は、今回の予算案で、立法議会にプライベー
ト・エクイティ・ファンドもオフショア・ファンドが享受している
事業所得税の免除措置を受け入れられるよう改正案を提
出する計画があることを報告しています。
法律案は、上述した2013/14年度の財政予算で曾財務長
官が提案した免税の条件をさらに改良したものとなると理
解されています。
第一に、対象となるプライベート・カンパニーが香港で事業
を展開できないことを明記する代わりに、香港で恒久施設
が認定されない範囲において補助的な事業展開を行うこ
とを容認するでしょう。
第二に、プライベート・カンパニーが香港の不動産を保有
してはいけないと明記する代わりに、ある一定の期間にお
いて、総資産の10%を超過しない範囲の中で、香港の不動
産を所有することを法律案は容認するでしょう。
第三に、許可されたファンドによって運営されるプライベー
ト・カンパニーにおいては、取引を行うにあたって香港証券
先物委員(SFC)が認定する投資アドバイザーなどの関連
するライセンスを保有する人物が必要とされないことが法
律案では明記されるでしょう。これはほとんどのヘッジ・
ファンドとは異なり、プライベート・エクイティ・ファンドでは
通常の業務を行うためにSFC認定ライセンス保有者は必
要とされないという現状を踏まえて便宜を図ったものと思
われます。
最後に、傘下企業としてプライベート・カンパニーを運営し
ている非居住者ファンドの免税措置に加え、法律案は、傘
下企業を保有するために活用される特別目的事業体
(SPV)の売却による利益にまで免税範囲を広げると思われ
ます。
このような法律案は望ましいものですが、香港にベースを
置くファンドをより一層誘致するために、香港に税務上で
の競争力の向上を計るには、香港政府は、現状の非居住
者ファンドの免税範囲を居住者ファンドに拡大させることも
考慮することが必要と考えられます。シンガポールにおい
て、非居住者と居住者ファンドそれぞれに異なる免税政策
が実践されていることを踏まえると、とりわけ重要な問題で
す。
航空機リース事業の発展を奨励
曾財務長官は、財政予算にて「航空機分野は高付加価値
航空サービスの発展に非常に重要である」としています。
この点は彼が航空機リース事業を念頭においていると考
えられます。
航空機リース事業は、近年において魅力的な投資リターン
を提供している高成長産業ですが、香港の変則的な税制
のため、香港をベースとするケースはほとんどないのが現
状です。
Hong Kong 2015-16
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この変則的な税制は、香港の貸主による海外の航空会社
への航空機リース料収益が香港で全額課税対象となる一
方で、通常は貸主が購入した航空機の費用を減価償却す
ることができないことから発生しています。
このような状況での減価償却の否認は、租税回避政策と
して施行された香港税法第39条Eによるもので、当該条項
は非常に概括的に定められたため、租税回避を目的とし
ない多くの通常のリース事業にも影響を与えています。
航空機の高い投資コストと、減価償却費の計上の否認、
そして香港の支払利息の損金不算入の規定は、香港に航
空機リース事業をベースとすることをほぼ不可能なものと
しています。これが香港の比較的低い税率16.5%や、航空
機の大きな市場となっている中国やインドとの地理的近接
性にもかかわらず、航空機リース事業が行われていない
理由です。
比較例として、アイルランドやシンガポールは、航空機購
入費用に減価償却を認めることに加え、支払利息の損金
算入要件を緩和することによって、航空機リースによる収
益に対する税率はそれぞれ12.5%、5-10%と魅力的なものと
なっています。
結果として、多くの投資家が航空機リース事業の運営をす
るにあたりにアイルランドとシンガポールを選択しています。
曾財務長官が今回の予算案で、「他の地域による経験を参
考として、香港に航空機リース事業の発展を促すよう可能
な政策を検討する」と述べたことを歓迎します。
香港を知的財産取引のハブとして奨励
曾財務長官は今回の予算案で、特許と産業ノウハウ、登録
商標、デザイン及び著作権の購入に関連した資本支出に
対する現状の減税範囲を、その他の知的財産権にも拡大
する考えがあると示唆しました。.
しかし、その他のどのような知的財産が含まれるのかを今
回の予算案では明言しませんでした。今後、曾財務長官が
各種産業界及び専門家に、香港が知的財産取引のハブと
なる為にどのような知的財産を減税範囲に追加すべきか
意見を求めていくことを願います。
•主要な予算案作成上の仮定、予測及び基準
2015-16年度から2019-20年度の中期予測(MRF)における仮定
►
予測期間の実質GDP成長率は、2016 年度で1% から3% 、 2016 年から2019年の成長率の趨勢は3.5%
►
投資利益率は2015年度において5.5% 、その後は年間4.3%から5%の範囲と仮定
►
2016-17年度以降の土地売却収入はGDPの2.7%と仮定
►
2019年3月31日時点の財政準備金の予測残高は7,992億香港ドルだったがこれを8,991億香港ドルに修正、これは当該年度の
GDPの33.4%に相当する。2020年3月31日までに財政準備金残高は9,488億香港ドルに達し、これは当該年度のGDPの33.6%に相
当すると見積もられている
予算案作成基準
►
予算収支
総合収支と一般収支の均衡を維持、長期的には一般会計の剰余金を部分的に財政資本支出の財源に充当
►
歳出方針
公共支出をGDPの20%以下に維持
►
財政準備金
長期的に適切な準備金を維持
中期予測と財政準備金(単位:10億香港ドル)
2014-15
(改訂後)
2015-16
2016-17
2017-18
2018-19
2019-20
一般会計歳入
390.2
392.6
426.0
433.5
466.7
490.1
一般会計歳出
(317.7)
(354.3)
(379.6)
(397.3)
(410.9)
(410.4)
一般会計収支
72.5
38.3
46.4
36.2
55.8
79.7
資本会計歳入
80.5
85.0
75.7
77.8
82.1
85.5
資本会計歳出
(79.5)
(86.5)
(105.0)
(110.3)
(115.9)
(114.0)
政庁債及び証券の返済
(9.7)
-
-
-
-
(1.5)
政庁債返済後の資本会計収支
(8.7)
(1.5)
(29.3)
(32.5)
(33.8)
(30.0)
総合収支
63.8
36.8
17.1
3.7
22.0
49.7
819.5
856.3
873.4
877.1
899.1
948.8
年度
Source: Budget 2015-16
3月31日時点の財政準備金
Hong Kong 2015-16
Budget insights
3
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