コーチ

2月所感
コーチ
狭山市立教育センター
所長
澤
田
剛
最近「コーチング」という言葉をよく見聞きします。
「コーチング」とは、コミュニケーションを通して、相手が目標に対して取るべき行動を自ら選
べるように導く人材育成の手法の一つということです。元々、英語の「coach」は馬車の意であり、
人を目的地まで運ぶという意味が派生し、転じて「人を指導する」という意味になったそうです。
主にスポーツの世界で使われていたのが、最近はビジネスの分野でもマネジメントの一技法として
活用されてきているということのようです。
私がこの言葉から思い浮かぶのは、テニスプレーヤー錦織圭選手を指導する、マイケル・チャン
コーチです。今、私たち日本人をもっとも楽しませてくれるスポーツ選手と言える錦織選手が、こ
れほど活躍できるようになったのはチャンコーチの存在があってこそといわれています。
「自分への疑いがなくなれば、それが自信になる。」
「長所や短所は誰にでもある。だからこそ自分の長所を活かした戦い方をすればいい。」
こんな言葉で、錦織選手に自信を持たせたチャンコーチですが、実はもっと激しく厳しい言葉も
ぶつけています。
「なんで練習場に1時間前に来るんだ?2時間前に来てストレッチの時間を倍にしろ。」
「その身長で他の奴らと同じことやって強くなれるわけないだろ?」
「故障抱えてるのを言い訳にするな。
」
極めつけと思われるのは、あの熱血で有名な松岡修造さんが「この練習量では圭が壊れる」と言
ったという練習量に対しての一言です。
「こんな練習量で世界一とか舐めてんのか?」
こうした叱咤激励に応えて猛練習を重ねてこそ「自分への疑い」を無くし、自信を持って「長所
を生かした戦い方」ができる、ということだと思います。
チャンコーチは、錦織選手のコーチを引き受けてすぐに言ったそうです。
「多分、君は私を嫌いになるだろう。
」
嫌われるのを承知で猛練習を課しているのですから、大した覚悟です。
私自身もそうでしたが、若い先生は「子供と仲良くする」
「子供に好かれる」ことに気持ちが向き
過ぎるきらいがあるのではないでしょうか。もちろん世界一を目指そうというトップアスリートと
幼児や児童生徒を同列には語れないでしょうが、自信を持たせるにはそれ相当の裏付けを持たせる
必要があるというのは間違いないと思います。
「ほめて伸ばす」と言いますが、子供だって何の努力
もないところでほめられてもうれしくはありません。適切な負荷のある課題を与え、やり遂げた成
就感を持たせた上でほめれば、よりしっかりした「自信」を持たせることができるでしょう。
今年度も残り2か月を切りました。子供たちにどれだけの自信を持たせて、来年度に向けて送り
出せるようになりましたか。まずは私たち大人が覚悟を持って子どもと接し、本物の自信を育てて
いくようにしたいものだと思います。