で ん さ い ネ ッ ト 通 信 [第 6 回] でんさいの利用・普及状況と 利用促進 全銀電子債権ネットワーク 1 はじめに 月に 1 兆円を超え、12月末時点では 1 兆9660億 円に上っている。なお、平成26年12月中の全国 でんさいネットは、平成25年 2 月18日の開業 の手形の交換高を約161万枚、金額で約 7 兆円 から約 2 年が経過しようとしているところであ と推測した場合 2 、それらとの比較では、件数 る。今回は、現在の利用・普及状況ならびに企 で約 4 %、金額で約 8 %の水準である。 業の動向を踏まえた具体的な利用促進活動につ いて解説する。 2 現在の利用・普及状況 ⑶ 譲渡記録請求件数・分割記録請求件数 平成26年12月の譲渡記録請求件数は、 1 万 4358件である。現時点では、企業間同士の譲渡 よりも金融機関向けの譲渡(いわゆる「でんさ 開業から現在(平成26年12月)までの利用・ い割引」)が多い状況であるが、でんさいの普 普及状況は、別表のとおりである。 及に伴い、企業間同士の譲渡も徐々に増えてき ⑴ 利用者登録数・利用契約件数 ている。なお、分割記録請求件数(手形にはな 平成26年12月末時点では、約40万社に登録 (利用契約の締結)をいただいている。これ は、全国の企業数に対して 1 割弱の水準であ い、でんさい特有の機能)は、2471件である。 3 企業が利用開始に踏み切れない主な理由 る 1 。なお、企業は複数の金融機関で登録を行 前記 2 で示したように、開業以降、利用者登 うことができ、契約ベースでみた件数(利用契 録数や取扱高はいずれも増加基調にあるが、約 約件数)は、53万件を超えている。 40万社の利用者登録数に対し、月間の発生記録 ⑵ 発生記録請求件数・発生記録請求金額・ 月末残高金額 請求件数は約 7 万件と、利用者登録は行ったも のの、実際の利用開始に至っていない企業が多 平成26年12月の月間発生記録請求件数(手形 い状況である。 でいう振出の件数)は 7 万1737件、請求金額は 利用開始に踏み切れない主な理由としては、 5473億円である。月末残高金額は、平成26年 3 次のようなものが考えられる。 1 総務省統計局「平成24年度経済センサス-活動調査」によると、平成24年 2 月 1 日現在の我が国の企業等の数は 412万8215、事業所数は576万8489。 2 全国銀行協会「全国手形交換高・不渡手形実数・取引停止処分数調」によると、平成26年12月中の手形交換高は 約6423千枚、27兆8440億円。ただし、この数値には小切手も含まれていることから、約25%(161万枚/ 7 兆円) を手形の交換高とした。 58 金融法務事情■ No.2010 2015.1.25 【別表】でんさいネット請求等取扱高(平成26年12月分) 1 .利用者登録状況 2 .でんさいネット請求等取扱高 利用者 利用契約 発生記録請求 月末 譲渡記録請求 分割記録請求(注 6 ) 登録数 件数 残高金額 金額 金額 金額 件数 件数 件数 (注 1 、2 )(注 1 、3 ) (注 4 ) (注 4 、5 ) (注 4 ) (注 4 ) (件) (件) (件) (社) (件) (百万円) (百万円) (百万円) (百万円) 平成24年度累計 平成25年度累計 ― ― 8,643 ― 245,518 1,877,370 ― 28 353 10 189 ― 40,227 391,577 7,285 99,486 平成25年12月 321,830 417,827 31,281 242,623 724,532 5,685 62,163 1,025 14,790 平成26年 1 月 330,953 430,668 34,404 259,994 857,346 5,675 54,937 1,072 14,697 平成26年 2 月 342,096 446,505 36,132 259,616 954,557 6,118 59,765 1,118 15,299 平成26年 3 月 361,334 472,949 40,577 316,892 1,065,638 7,655 78,163 1,364 18,419 平成26年 4 月 366,156 479,897 46,130 381,240 1,205,828 7,358 67,578 1,511 18,075 平成26年 5 月 368,987 484,128 46,461 362,375 1,303,675 7,705 75,898 1,442 17,262 平成26年 6 月 372,297 489,351 48,774 364,090 1,393,091 8,544 87,556 1,623 19,509 平成26年 7 月 376,027 495,291 53,623 401,754 1,462,845 9,696 86,367 1,724 17,014 平成26年 8 月 379,953 501,661 55,664 420,656 1,536,678 9,914 94,524 1,745 18,599 平成26年 9 月 388,335 514,073 57,928 414,232 1,587,855 11,215 118,849 1,925 19,742 平成26年10月 392,216 520,086 64,883 511,059 1,718,805 11,216 105,795 2,018 21,061 平成26年11月 395,357 524,879 67,147 521,909 1,854,138 11,499 125,239 2,055 25,227 平成26年12月 399,254 530,975 71,737 547,339 1,966,053 14,358 147,974 2,471 25,555 平成26年度累計 ― 406 ― ― 512,347 3,924,653 3 .支払不能処分制度運用状況 支払不能でんさい(注 7 ) 金額 (注 4 ) (百万円) 件数 (件) 平成24年度累計 0 0 取引停止処分 件数 (件) 0 平成25年度累計 5 3 1 平成25年12月 1 1 0 平成26年 1 月 2 1 1 平成26年 2 月 1 1 0 平成26年 3 月 1 1 0 平成26年 4 月 1 1 0 平成26年 5 月 0 0 0 平成26年 6 月 2 1 0 平成26年 7 月 0 0 0 平成26年 8 月 0 0 0 平成26年 9 月 3 10 1 平成26年10月 3 14 0 平成26年11月 2 9 1 平成26年12月 平成26年度累計 4 15 1 15 49 3 金融法務事情■ No.2010 2015.1.25 ― 91,505 909,781 16,514 182,045 (注 1 ) 「利用者登録数」および「利用契約件数」は、 各月末時点の累計。 (注 2 ) 「利用者登録数」は、同一の利用者が複数の利 用契約を締結している場合に、同一の利用者の 単位で名寄せを行った結果の数(各月末時点の 累計)。 (注 3 ) 「利用契約件数」は、利用契約件数の総数(各 月末時点の累計)。 (注 4 ) 「金額」は、単位未満四捨五入した金額。 (注 5 ) 「月末残高金額」は、各月末時点の残高金額。 (注 6 ) 「分割記録請求」は、でんさいの一部金額を分 割し、譲渡する記録請求。 (注 7 ) 「支払不能でんさい」の件数および金額は、債 務者の信用に関する事由(第 1 号支払不能事 由)および債務者の申し出により口座間送金決 済を中止することができる事由(第 2 号支払不 能事由)の件数および金額の合計。 59 【参考】セミナー開催実績 日付 会 場・後 援 講演者(講演順)※でんさいネット職員を除く。 平成26年 2 月12日 (東京) 【会場】経団連会館国際会議場 【後援】一般社団法人日本経済団体連合会 経済産業省、TMI総合法律事務所、㈱熊谷組、 橋本総業㈱、㈱NTTデータ 平成26年 7 月25日 (福岡) 【会場】電気ビルみらいホール 【後援】一般社団法人九州経済連合会 経済産業省、平田機工㈱、リビンズ㈱ 平成26年 【会場】名古屋銀行協会 9 月 5 日 【後援】一般社団法人中部経済連合会 (名古屋) 経済産業省、髙島屋スペースクリエイツ㈱、大 同資材サービス㈱ 平成26年 9 月26日 (大阪) 【会場】大阪銀行協会 【後援】公益社団法人関西経済連合会 大阪シーリング印刷㈱、奥村遊機㈱、㈱サクラ クレパス 平成26年 10月24日 (東京) 【会場】経団連会館国際会議場 【後援】一般社団法人日本経済団体連合会 経済産業省、TMI総合法律事務所、内外テック ㈱、日本紙パルプ商事㈱ 平成27年 【会場】北海道経済センター 1 月23日 【後援】北海道経済連合会 (札幌・予定) ㈱NTTデータ経営研究所、㈱エミヤ、宮坂建 設工業㈱ ・でんさいに切り替えたいが、手形とでんさい んさいへの切替えが一部にとどまる企業から の並存を避けるため、すべての取引先の同意 も、これらの点で十分にメリットがあったとい を得るまで利用開始に踏み切れない う声をいただいているほか、金融機関のサポー ・手形の振出枚数が少ないので、でんさいに切 り替えてもメリットが小さいと感じている ・受取手形をでんさいに切り替えたいのだが、 これまで手形を裏書譲渡していた取引先がで トを受けて課題をクリアし、円滑に導入を実現 した企業も多い 3 。 4 普及に向けた利用促進活動 んさいに対応していないため、切り替えられ でんさいネットでは、前記 3 で示したよう ない(でんさいに切り替えてしまうと、取引 な、利用開始に踏み切れない企業に対して、金 先に支払う手段がなくなってしまう) 融機関や業界団体等と連携しながら、普及に向 ・システム対応や多数の取引先への説明(説明 会の開催)に相応の時間が必要 ・他社の動向や普及状況を見極めている 長年慣れ親しんだ決済手段の切り替えには、 けた様々な利用促進活動を実施している。 平成26年度は、とくに次のような取組みに注 力しているところである。 ⑴ 実利用企業によるセミナー講演 相応の負担がかかると思われる。また、でんさ でんさいの導入を検討している企業に対して いは新しい制度であるため、他社の動向や普及 は、実際にでんさいを利用している企業から、 状況を見極めている企業も多い。 導入の経緯や効果等を講演いただくことが効果 上記のような理由から、本格的な普及には相 的である。 応の時間が必要であると思われるが、でんさい そこで、でんさいネットでは、実利用企業に の導入は、単に経費の削減だけではなく、手形 講演いただくスタイルのセミナーを下記のとお 発行に伴う事務負担、あるいは手形の保管や移 り全国で開催しており、今後も開催していく予 送に伴うリスクの軽減効果等も期待できる。で 定である(セミナーの模様は、でんさいネット 3 でんさいネットウェブサイト(https://www.densai.net/)の「セミナーレポート」および「利用企業紹介」を 参照。 60 金融法務事情■ No.2010 2015.1.25 ウェブサイトの「セミナーレポート」に順次掲 載)。 実利用企業の講演では、導入の経緯や効果だ けではなく、導入時の課題をどのように克服し たかについても講演いただけるため、でんさい の導入を検討している企業にとっては、参考に なると思われる。 ⑵ 利用企業紹介 でんさいネットのホームページでは、 「利用 企業紹介」として、でんさいを積極的に利用い ただいている企業を紹介している。これは、実 利用企業における導入の経緯や効果等を掲載す 平成26年10月24日開催 でんさい活用セミナー(東 京)の様子 るで、他社の動向や普及状況を見極めている企 業の後押しをしたいという思いで始めたもので ある。 5 金融機関に求める普及に向けた取組み ローを行える態勢整備が重要と考える。 ⑶ セミナー等を通じた企業への積極的なア プローチ 4 ⑴に記載したとおり、既にでんさいを導入 でんさいの本格的な普及には、企業と直接接 している企業から導入の経緯や効果等を発信し 点がある金融機関による積極的な推進が不可欠 てもらうことは、導入を検討している企業に である。既にでんさいを導入している企業から とっては参考になる部分が多いと思われる。各 も、「でんさい導入を進めるにあたっては、金 金融機関による、実利用企業に講演いただくス 融機関のサポートが不可欠」とのご意見をいた タイルのセミナーの積極的な開催は、でんさい だいている。 の利用促進に有効であると考える。また、 4 ⑵ でんさいネットでは、効果的な利用促進活動 に記載したとおり、普及状況を見極めている企 を推進できるよう、金融機関から寄せられる意 業を後押しするため、幅広く利用企業を紹介い 見等を踏まえながら各種検討を進めているとこ ただき、利用企業紹介ページの掲載企業数を増 ろであるが、各金融機関においても、次のよう やすことも重要と考える。 な取組みの推進・態勢整備を進めていただきた 6 おわりに いと考えている。 ⑴ 職員の知識向上 でんさいは、多くの企業にとってメリットが 企業にでんさいのメリットを理解し、利用を あるものであるが、新しい制度であるがゆえ 開始してもらうためには、各金融機関職員ので に、不安を感じている企業が多いのも現実であ んさいに関する知識向上が不可欠である。 る。 有効な方法の 1 つとして、定期的な研修会の そのため、企業にでんさいのメリットを理解 実施等が挙げられる。 してもらうだけでなく、利用開始に踏み切れな ⑵ 本部と営業店の連携態勢の強化 い理由をしっかり分析し、その解決に向けたサ 利用件数を伸ばしている金融機関に共通して ポートが重要であると感じている。 いることは、本部と営業店が一体となって、企 でんさいは、導入企業が増えるに従い、その 業にアプローチする態勢が整備されていること 導入効果も高まるものである。でんさいの早期 である。 普及に向け、引き続き、全国の金融機関と一丸 本部のでんさい推進の担当者においては、推 となって、利用促進活動を推進していきたい。 進先のリストアップや営業店への情報還元だけ で終わることなく、きめ細かなアフターフォ 金融法務事情■ No.2010 2015.1.25 61
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