http://www.jyohokikaku.co.jp 3712 情報企画 松岡 仁史 (マツオカ ヒトシ) 株式会社情報企画社長 売上高・経常利益ともに上昇、きめ細かいシステム開発でさらなる売上増をはかる ◆新商品開発・多業態への展開で利益向上 売上高・経常利益ともに約 3 割上昇している。2008 年 9 月期の売上高は約 24 億円で、リーマンショックで一旦 下がり、ようやくもとの状況に戻った。 全体的には担保評価管理システムと格付システムの 2 つがシステムの両輪と言ってもよいが、いずれのシステ ムも伸びている。特に担保評価システムにおいては、大銀行でシステム更新があったことと、業界中央金融機関 が新規顧客となり、担保評価システムが導入されたことが大きな要因である。格付分野においては、決算書リーデ ィングシステムが伸びている。 契約書作成支援は、地銀勘定系グループに契約書作成システムが入ったことが大きい。 その他の分野では、反社会的勢力とのつき合いをチェックするシステムがある。それぞれのシステムがほぼ前 期比増の状況である。 メンテナンス分野はほとんど変わりない。少しずつシステムが増えていくため、メンテナンス費用も増えている。 しかしわれわれにとっての逆風は、主たる販売先の信用金庫業界が、当社が得意とする信用リスク管理分野シス テムを共同利用型で作成し、ほとんどの信用金庫はそれを無料で使えるようになったことである。利用は少なくな るはずだが、一旦入れた格付を変えることができないため、粘り強く使用してくれている信用金庫もあり、それほど 減少していない。 営業部別売上高については、東京を中心に大きく伸びている。名古屋、大阪は毎年ほとんど変わりなかったが、 大阪が約 1 億円伸びている。これは大手信用金庫 2 社でシステム更改があったことが大きな要因である。 ユーザー別売上高については、システム開発会社において、一番売上が安定しているのはシステムのメンテナ ンスであり、ユーザーが増えると少しずつ伸びていく。次が既存案件のバージョンアップ、あるいはシステムの帳票 を増やすなど、少しずつ修正していく業務である。それらが当期増えて、約 8 億 30 百万円となっている。 既存ユーザーへの新規案件販売は、例年と同様である。新規ユーザーでは、業界中央金融機関にシステムが 入ったことが大きい。既存ユーザーへの既存案件バージョンアップ等も大きく伸びた。 業界別売上高では、政府系金融機関も含めた大手銀行、信用金庫、信用組合とあるが、売上を伸ばしていくに は大手行に大きなシステムを買ってもらう必要がある。政府系金融機関が合併し、今までは合併しても別々のシス テムを使用していたが、ようやくシステム統合の動きとなった。第 29 期に入札があり受注したため、第 29 期、第 30 期をまたいで売上が増えている。 信用金庫の分野では、ほとんどは共同センターとして共通のシステムを使う形になっているが、大手を中心に自 営の信用金庫も約 20 残っている。ユニシスのシステムを使っている金融機関が多いが、これらを中心に格付や自 己査定支援システム、融資稟議支援システム等が売れたことが売上向上の要因である。 附属的業務として、不動産 4 物件を購入している。売上が約 1 億円、利益が約 20 百万円、継続してこの程度の 売上がある予定だが、新規での購入は当面考えていない。 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 第 29 期の結果を総括すると、決算書リーディングシステムに関してはほとんどが信用金庫中心の売上であった。 大きな部分としては、決算書リーディングおよび財務分析、格付の分野まで購入された東北地方の地銀がある。 新商品である決算業務支援システムや反社会的勢力情報チェックシステムは、信用組合を中心に多く納品して いる。信用組合は 1 社ごとにシステムを購入してもらう販売形態ではなく、SKC(信組情報サービス)にシステムを 納品するものである。使うたびに毎月の利用料を支払う仕組みになっており、今期は決算業務支援システムに 25 信組から利用申し込みがあった。反社会的勢力情報チェックシステムは 83 信組から申し込みがあり、使われ始め た。ただし、これは一挙に売上高が増えるような状況ではなく、毎年の利用料という形で増えていく。 その他、簡易型稟議システムは 2 つの信金と大手金融機関に納品した。 新システムとして、経費管理システムがある。銀行にはいまだに経費管理システムのないところが多く、開発し て納品している。 その他には、住宅ローンリスク管理システムがある。金融機関の貸し出しは法人より個人の住宅ローンが伸び ていて、金融庁も「住宅ローンもリスク管理していかなければいけない」としているため、住宅ローンのリスク管理を 行うシステムを開発し、納品している。 特筆すべき内容として、契約書作成支援システムを地銀勘定系グループの 5 行に、それ以外の地銀にも 2 行、 計 7 行に納品した。 信用金庫で大きく数字を伸ばしたのは、格付システム、自己査定支援システム等、旧来のシステムであるが、新 しいシステムとして大きかったのは、契約書作成支援システムを 10 の新規顧客に納品したことと、決算書リーディ ングシステムを 12 の信用金庫に納品した部分である。信用組合では利用申込という形で、毎月数万円の利用料 金で使用してもらうものだが、相当伸びている。決算業務支援システム、反社会的勢力情報チェックシステム、他 の担保評価システム、格付システム、自己査定支援システムすべて含めて「オールインワンシステム」と呼んでい るが、このオールインワンシステムの利用料金として毎月約 12 百万円が入ってくる。 ユーザー数の推移については、銀行、信用金庫、信用組合を合わせて金融機関は約 600 あったものが、現在 合併等で 500 数行となった。その中で、決算書リーディングが信用金庫を中心に、自己査定に関しては信用組合 を中心に利用が増えた。契約書作成支援システムは地銀を中心に増えた。決算業務支援システム、反社会的勢 力情報チェックシステムは、信用組合を中心に増えた。 製造原価報告書については、材料費が急増している。これは担保評価システムを業界中央金融機関および政 府系金融機関に販売し、地図の素材仕入れが増えたためである。 その他に、去年以来増えているのが外注加工費である。情報企画の従業員は 120 名だが、24 億円を売り上げ るには 1 人当たり約 20 百万円必要となる。SE が 1 人 20 百万円のシステムを納品するのは困難なため、毎月 10 名程度の外注がある。人が増えないと売上も増えにくいことが、われわれの成長のネックになっている。 第 29 期での大きな変動は、自社株 TOB を行ったことで現預金が 7 億円減少し、自己株式が約 7 億円増えたこ とである。 ◆専門性の高いパッケージ開発で売上増へ 当期は、売上高 25 億円、経常利益、営業利益ともに 7 億円、当期純利益 4 億 50 百万円を予算としている。 特徴としては、第 29 期 10 月の受注残は 2 億 40 百万円であったが、第 30 期においては約 7 億 50 百万円で、 受注残が約 5 億円増えている。課題は、人数的な要素がかなり大きいことと、売上増の要因が大手行であることだ。 パッケージ販売であれば幾らでも売上を伸ばせるが、大手行はパッケージだけでは済まず、どうしても派遣型業務 になる。売上は増えるが利益率は下がり、人員経費が増えるため、ジレンマとなっている。 利益率を保つためには、積極的な新商品開発を行っていかなければならない。細かいシステムだが、出資金管 理システム、有価証券運用管理システム、経費支払、住宅ローン等のシステム開発・販売が非常に重要である。 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 出資金管理はエクセル等で行われている場合が多いが、信用金庫でも 10 万件ほどの出資者がいる。そのうち 約 1 割が、配当金の口座はあるが決算書等の郵便物が不着で戻ってくるような、住所特定不能者である。放置す ると問題になるため、管理が必要となり、出資金管理システムの引合が少しずつ増えている。 売上を増やすため、大手行も使えるような、より専門性の高いパッケージ等をつくっていきたい。信金業態にお いては、出資金管理、有価証券、住宅ローン等を中心に伸ばしていく。信用組合については、新システム販売はも ちろんだが、オールインワンシステムを納品してから 4 年経つため、リニューアルを見据え、第 30 期において提案 していきたい。 ◆多様なニーズに対応するシステムの詳細 経費支払管理システムについて、銀行は複式簿記ではなく単式簿記である。一般企業であれば、経費は借方 旅費、貸方未払金と仕分けして月末締めで支払うが、銀行には未払金という勘定がない。すべて出金伝票と入金 伝票のため、経費の請求書が来たら伝票を記載し、役席者が承認し、支払日まで伝票を保管し、実際に支払うと きに端末へ入力する。月末支払であれば膨大な量になる。そのため、銀行では締め・支払が決まっておらず、請 求書が来て承認を受けたらすぐに支払となる仕組みである。出金伝票も 1 票ずつ書くため、旅費を払うだけでも旅 費と消費税の 2 つの伝票をホストコンピューターにインプットしなければならない。これが各営業店の仕事として大 きなウエートを占めることが課題となっている。 銀行では現金払いや振込は一般企業と同じだが、顧客が自行の口座を持っていた場合には入金となり、出入 金伝票の両方の処理がオペレーターの負担となる。システムで自動的に行って間違いがないものをつくれば、各 営業店でも使用でき、時間短縮になるため、喜ばれている。 有価証券運用管理システムについて、金融機関で 10 百億円の預金があると預貸率は 5 百億~6 百億円程度と なる。余資は信金中金に預けるが、自行でも有価証券を運用する。これを稟議で行っていくが、稟議部分を補佐す るシステムが必要となる。ここでの課題は、例えば社債を購入したら金融機関はアキュムレーションを仕分けし、受 取利息や受取配当の仕分けをしなければならないことだ。当社ではこの社債の金利や買値、償還期日等を入力 すれば自動で仕分けできるシステムをつくっている。 住宅ローン計量化システムは、年代別、勤務先規模等の住宅ローンポートフォリオを作成し、焦げ付きのリスク を管理するものである。住宅ローンの割合が増え、金融庁のチェックもこちらに移っている。 このように少しずつニーズを取り込み、信用リスク管理、総務系システム、会計システム等を深化させていきた いと考えている。 ◆質 疑 応 答◆ 政府系金融機関の大型案件が取れたことで、メンテナンスの収益は上がるのか。 政府系金融機関の合併に関しては、3 つのうち 2 つ取れていたものが 1 つになるので減るが、業界中央金融機 関分が純増となるため、微増になると考える。 自己株取得の用途については、消却するかどうかが決まっていないのか。 消却するか、従業員へのインセンティブにするか、ほかの用途に使うかは決まっていない。 (平成 27 年 11 月 11 日・東京) 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。
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