『睡眠時無呼吸症候群と循環器疾患』『更年期以降に増える病気』(PDF)

健康だより
No.52(H22.11)発行
竹山病院
睡眠時無呼吸症候群と循環器疾患
なると言われています。また、本態性高血圧
症患者の約 1/3 に睡眠呼吸障害がみられ、薬
剤抵抗性高血圧患者ではその頻度は高く、約
83%が睡眠呼吸障害を合併しており SAS を治
療することで血圧も速やかに低下することが
報告されています。
睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群 ( sleep apnea
syndrome;SAS)は様々な循環器疾患の増悪
因子や予後因子となりえることが近年注目さ
れています。健常人の有病率は 1~2%程度で、
②SAS と不整脈
発作性心房細動が本当に SAS 患者に多いのか
は未だはっきりとはしていませんが、SAS 治
療により発作性心房細動の再発が少なくなる
との報告はあります。しかし、心不全患者で
全国で約 200 万人が有症状の閉塞型睡眠時無
呼吸症(OSAS)であると報告されており、無症
状の OSAS や中枢型睡眠時無呼吸症(CSAS)
無呼吸のある群では元々慢性心房細動を合併
している患者が多く、心機能の低下した患者
で Cheyne-Stokes 呼吸を伴うと死亡率は高く
を含むとこの数は更に増えることが推察され
ます。SAS は生活習慣病、高血圧、糖尿病、
突然死などと関連があり、重度の SAS で心血
管イベントが多く、持続陽圧呼吸療法(CPAP)
なり、特に慢性心房細動を伴った場合は予後
が更に悪いと言われています。
などの治療により予後は改善するとの報告も
あります。また、わが国で心不全患者の夜間
の周期性呼吸(Cheyne-Stokes 呼吸)は約 50%
程で、その 80%以上が中枢性の無呼吸である
とも言われています。このように循環器疾患
には SAS が高頻度に合併しており、今回は
心不全は高血圧症や虚血
性心疾患(狭心症・心筋梗
塞)などを病因とした症候
群であり、様々な臨床像を
呈します。OSAS は高血
圧症や不整脈の危険因子
SAS がいかに循環器疾患に関わっているかに
ついて述べていきます。
であり心不全の原因になりうるとされ、心不
全の前段階に多く関連する病態であると言わ
れています。一方で CSAS は心不全症候群の
結 果 と し て 起 こ る 病 態 と さ れ 、
①SAS と高血圧症
③SAS と心不全
近年、米国合同委員会 JNC-7 による高血圧ガ
イドラインで二次性高血圧症の原因疾患の重
Cheyne-Stokes 呼吸のような周期性無呼吸・
低呼吸を認める心不全患者は合併しない患者
要な背景として SAS の存在が報告されました。
高血圧と SAS の間には深い関係があり、その
合併頻度は約 50%程と考えられています。
SAS の 重 症 は 無 呼 吸 低 呼 吸 指 数 、 Apnea
Hypopnea Index:AHI(回/hr)で示し、その値
が 5≦AHI<15 を軽症、15≦AHI<30 を中等
と比較して予後が悪いと言われています。頻
度は心不全患者の 40~80%程であると言われ
ていますが、私達の検討では心不全患者の実
に 76%が SAS を合併し、その 62%が CSAS
であったとの結果が出ました。CSAS の発生
は複雑なメカニズムで、中枢性の炭酸ガス感
症、30≦AHI を重症と分類されます。
AHI が 15 回/hr 以上の症例は AHI が 0 回/hr
の症例に比べ高血圧発症のリスクが 2.9 倍に
受性亢進や亣感神経緊張などが要因とされ、
その緊張は夜間のみならず日中に持ち越して
心仕事量の増大、低酸素血症による心筋虚血
(狭心症・心筋梗塞)や不整脈の発生、体液貯溜
などにより心不全の増悪を助長すると考えら
れています。
慢性心不全に合併する OSAS に対する CPAP
の有用性はすでに周知なのですが、CSAS で
の予後の改善は未だ明らかではありません。
れます。最も多い自覚症状は不正性器出血で
す。特に閉経後に性器出血があった場合は子
宮体癌の可能性があるので、なるべく早く産
婦人科などで検査を受けましょう。
しかし、平成 16 年 4 月に保険適応認可された
HOT(在宅酸素療法)は睡眠の質の向上と
Cheyne-Stokes 呼吸の安定化、VE/VCO2slope
の改善が得られるため心不全増悪による再入
院を減少させると言われています。
以上より SAS は循環器疾患とは密接な関係
卵巣癌は、早期発見が非常に困難な癌です。
自覚症状はほとんどなく、発見された時には
かなり進行していることが多いものです。
かかりやすい年齢は 40~60 代です。進行した
卵巣癌では、腹部の圧迫感や膨満感などがみ
られます。また、お腹の表面から瘤状のもの
があることが示唆されます。その為、予後に
関わる重要性から、無症状であっても一度は
スクリーニングしておくべき疾患であるとい
に触れることもあります。
うことが言えます。
(内科医師 高橋 英二)
高橋 英二(たかはし えいじ)
聖マリアンナ医科大学循環器内科所属
乳癌は、更年期以降に増える癌です。最近で
は日本の女性全体に特に増加している癌のひ
とつです。乳癌が増加している主な原因とし
ては、食生活の変化があげられます。高脂肪、
専門は循環器全般、心臓リハビリテーション
診察日は毎週月曜日午前です。
高タンパクといった欧米型の食生活によって、
乳癌の罹患率も欧米に近づいてきているので
す。
乳癌は自己チェックがある程度可能です。さ
らに、年に 1 回程度の検診を受けることをお
勧めします。乳房を X 線撮影するマンモグラ
更年期以降に増える病気
更年期以降の女性は、いろいろ
な病気にかかりやすくなりま
す。
50 歳前後が、癌年齢と呼ば
れ、エストロゲン(女性ホルモ
ン)が減少することが大きく関
連しています。
更年期以降に増える主な病気には、子宮癌、
卵巣癌、乳癌など女性特有のがんがあります。
卵巣癌
乳癌
フィーによって、現在では乳癌の早期発見率
は非常に高くなっています。上白根病院にて
マンモグラフィー、エコー検査を行なってい
ます。詳しくは病院スタッフにご相談くださ
い。
子宮がん
子宮癌には、子宮頸癌と子宮体癌の 2 種類が
こうした癌を予防するには、喫煙、動物性脂
肪の多い不規則な食生活など、どんな病気に
も悪い影響を与えやすい生活習慣は、できる
だけ改めておくことが大切です。身内に癌の
患者さんがいる人は特に注意し、定期的な検
診などを受けることも必要です。
ありますが、更年期以降に増加するのは体癌
で、頸癌は比較的若い女性に多いものです。
子宮体癌の場合、早い段階で自覚症状が見ら
(看護師 高根 美紀)
★今回は都合により横書きにさせていただき
ました。