〝運動・スポーツで子どもたちを豊かに育み、そして輝かせる〟 12 月 昨 記事に関する問合せ先 生涯学習課 スポーツ振興係 ☎ ︲4850 今、子どもの体力低下、学力低下、情緒的問題、コミュ ニケーション問題等々、全国的に深刻な問題となってい ます。嘉麻市でも例外ではありません。 このような子どもを取り巻く問題を解決しようと、運動生 理学を専門とし、脳科学を基盤にした運動と行動の制御を研 究されている、徳島大学大学院 荒木秀夫教授と連携し、科学 的知識と実践法による運動を行うことで、子どもたちの脳を 活性化し、豊かに育む﹁プロジェクトK﹂を開始します。 ﹃子どもの遊び、昔と今﹄ 6.8 6.60 6.6 6.55 6.5 6.70 12 月 8月 4月 8月 112.25 115 なぜ 体力低下? 学力低下? 最近はどうなったかといえ ば、 ほ と ん ど の 子 ど も 達 は、 学 習 塾、 音 楽、 ス ポ ー ツ、 習 い事の教室に通うことが普通 に な り ま し た。 こ の 傾 向 は、 年 ほ ど 前 か ら 見 ら れ ま す。 しかし、その子ども達はどう か と い う と、 体 力 低 下、 学 力 低 下、 情 緒 不 安 定、 意 思 が 弱 い、我慢強さが足りないなど と散々言われていますね。な ぜ、みんなが学習塾に行って 20 12 月 115.83 120 110 105 4月 97.43 95 90 85 12 月 8月 12 月 8月 6.50 6.67 6.7 6.63 6.65 6.4 音 楽、 ス ポ ー ツ を、 そ し て 勉 強をと早いうちから習わせ て、少しでも優秀児になって 文責 荒木 秀夫 欲しいと思うのが親心という ﹁子どもは天才﹂、これはよ ま す。 子 ど も は、 何 気 な い 大 ものでしょう。子どもがもっ く聞く話です。親から見れば、 人の言葉を真似るし、すぐに と能力を伸ばす良い方法がな わが子が言葉をしゃべり始め 覚 え ま す。 音 楽 に し て も、 外 いものかと思うのも自然な願 たり、歩き始めたりすること 国語にしても、とにかく覚え いです。 は当たり前のことでも、とて るのが早いというのが子ども 何 十 年 も 前 の 時 代 は、 学 もうれしく思うし感動さえし の特徴ですね。そんなわけで、 習 塾 は そ こ そ こ あ っ た も の の、スポーツ教室や音楽教室 は、そうやたらにあるもので はありませんでした。学習塾 に通うとしても、週に 2回ほ ど通う程度でしょう。生活の 基本は、毎日遊ぶことにあり ま し た。 遊 ぶ に し て も、 家 の 中よりは外で遊ぶのが大好き で、当時の親がよく口にする 言 葉、﹁ 中 に い な い で、 さ っ さと外で遊びなさい﹂。 6.75 8月 プロジェクト K 始動 嘉麻市立保育所(年長児)体力測定結果(抜粋) もに少しずつ体力は伸びますが、グラフに示したように運動指導を取り入れることによっ て、はっきりと伸びることがわかります。 「幼児は、わずかな期間で大きく変わる!」 いるのに学力低下なのか、な ぜ、みんながスポーツ教室に 行っているのに体力低下なの か⋮。よく二極化ということ も言われています。できる子 と、できない子が分かれてい るという意味です。学力も体 力運動能力も二極化している と ⋮。 し か し、 勉 強 が で き て も運動が苦手、運動ができて も勉強が苦手といった子ども が多く、ひとりの子どもが運 動も勉強もできるという子は どれだけいるでしょうか。体 力テストと学力テストは県単 位でみると相関関係にありま す。しかし一人ひとりを見て いくと、そういう結果にはな りません。かつては両方得意 な子どもが多くいました。 57 2 3 6.9 6.80 上のグラフは、市内保育所の子ども 達の体力テストの結果の一部を示した ものです。4カ月ごとの結果ですが、 この間に子ども達に対して、コオー ディネーショントレーニングを中心と した運動指導を行っています。子ども 達は、4カ月ぐらい経つと、成長とと 100 7.0 6.85 7.1 8月 6.90 12 月 7.18 7.2 6.9 6.95 ※ 25 m走及びテニスボール投げの 初回データについては、雨天のため 計測していません。 【 立ち幅跳び 】 (㎝) 7.3 7.00 【 テニスボール投げ 】 (m) 【 25 m走 】 (秒) K 始動 プロジェクト 嘉麻市モデル は、遊びの違いということで 丸 出 し と ま で は い か な く て はないでしょうか。というよ も、かなり自然の欲求に従い りは﹁遊びの工夫﹂の違いで ます。その欲求とは何でしょ す。 今 は、 遊 び 道 具 が 豊 富 で う。 実 は、 そ れ こ そ が 身 体 の す。 い ろ い ろ な 用 具 が、 店 に 発 達、 脳 の 発 達、 心 の 発 達 を 行 け ば 何 で も 手 に 入 り ま す。 促すための、生きるための欲 そ の 遊 び の 中 心 は ゲ ー ム に 求なんですね。その欲求がな なってしまいました。決めら け れ ば、 工 夫 を し な い、 創 造 れた使い方、決められた攻略 し な い、 改 良 し な い、 つ ま り 法です。外遊びはどうでしょ は 遊 び に 創 造 性 が な い ま ま、 うか。昔のように、真冬の凍っ 誰かに言われるままに、決め た田んぼの上で、竹ベラでス られた通りに﹁遊ぶ﹂という ケートをすることはなく、今 ことになるでしょう。満たさ は立派なスケートリンク上で れない欲求は、いつしか変質 スケート靴を履いて滑ること するか、消え去っていきます。 ができます。素手でゴムボー ルを使って野球をする。道具 意欲をかき立てる課題 があってもグラブとバット だ け で 原 っ ぱ で 野 球 を す る。 人間は、過酷な環境の中で キャッチャーミットやマスク 進 化 し、 適 応 し て き ま し た。 は夢のまた夢、ましてやベー 豊富な食べ物があれば、何の ス な ん て 使 っ た こ と が な い。 工夫もいりません。食べ物が これが昔の野球でした。今は、 不足すれば、何とか探そうと 野球といえば、少年野球チー し、作ろうと工夫してきまし ム で、 ベ ー ス が あ り、 用 具 も た。一人の人間にとっても同 そろって、指導者もいる、バッ じことがいえます。十分に満 ティングマシンさえあるとい 足していれば、何も工夫しよ 遊びの工夫 うのが子どもの野球です。少 う と し ま せ ん。 工 夫 を し て、 年野球チームに入っていない 少しずつ満足できたら達成感 どうやら塾に通わせて、ス ポーツを習わせて、音楽も習 子どもが﹁野球もどき﹂をし を感じ喜びを感じます。ただ わせる⋮それだけではすばら ている様子はまずお目にかか し、そのためには二つのこと が前提となるでしょう。一つ しい人間に育っていくという りません。 保証はなさそうですね。昔の 遊びの工夫は、結局のとこ には、その工夫があまりにも 子ども達と今の子ども達は何 ろ﹁創造の場﹂で芽生えるこ 難しすぎないことです。難し が ど う 違 っ て い る の で し ょ とになります。子どもは動物 すぎると工夫し創造するとい う か。 ま ず 思 い 浮 か べ る の ともいわれていますが、本能 う意欲が湧きません。つまり、 まり親がやろうとすると﹁僕 で十分な効果が期待できるこ がやる!﹂と叫ぶ子と、 ﹁やっ とがたくさんあります。子ど て!﹂とねだる子の違いです。 もが工夫し創造すること、課 題を自分から見つけ自分で やろうとすること⋮、そんな 子どもの生活の中に 工夫を! ことを科学の目から、そして 日常生活の目から見てみる と、子どもとの接触も楽しく なるし、希望が持てるのでは ないでしょうか。まさに子ど もの生活の中に、子どもとの 触れあいの中に、大人の誰も が実践できる様々な科学と経 験からの成果を取り入れてみ て は ど う で し ょ う か。﹁ 子 ど もの工夫﹂を促す﹁大人の工 夫 ﹂ で す。 そ こ で、 次 回 か ら は、こうしたことをテーマに して、いろいろなことを考え てみたいと思います。 ▲リズムに合わせてボールを上にあげてキャッチ できそうでできない微妙な課 題であることが、やる気を起 こすということになります。 そ し て、 二 つ 目 に は、 課 題 は 常に自分で探すということで す。 指 導 者 や、 親 や、 教 師 が 与えた課題だけでは、やがて、 誰かが課題を見つけてくれる という感覚が身について、主 体性がなくなってしまうで しょう。たとえ誰かに与えら れた課題であっても、子ども が自分なりに課題を作り替え る余地を与えてやるとどうで しょうか。自分なりに課題を 見 つ け る こ と の 準 備 と な り、 やがて自分で課題を見つけ自 分でやるということに興味を 持ち始めます。これが人間と 動物との学習の違いです。つ “嘉麻市モデル”とは、乳幼児から高校生に至 るまで、各年代のためのコオーディネーショント レーニングのプログラムを立案し、これを広く嘉 麻市民の間に広めて、実践的に普及させることを 目的とした事業のことです。家庭、学校、地域の 中にスポーツや健康運動を定着させ、体力向上を 図るだけでなく、主に、コオーディネーション理 論による子どもたちの知性、感性を育むことを 狙ったものです。 “嘉麻市は人材の宝庫”…いつしか、そんな言 葉がささやかれるようにしたいものです。決して 夢で終わらせることなく、小さなこと、些細なこ との積み上げが大事です。赤ちゃんから高校生、 そして青年から高齢者、障がいを持つ子どもや大 人達、誰もが生き生きと生活できる嘉麻市を目指 して、誇れる市民文化を創りましょう。 この 数年来、脳の科学は 大 き く 進 歩 し、 ま た、 い ろ い ろな学問の進歩によって、多 くのことが少しずつ、着実に 明らかにされてきました。そ のことによって、子どもの能 力を、より確かに伸ばす方法 を考えることもできるように なりました。この子どもの能 力を伸ばすという方法は、決 して高度な知識がなければで きないというものではありま せん。ほんのささやかなこと ▲体の傾きを意識しながらコーンの間を駆け抜けます 20 ○荒木 秀夫(あらき ひでお)プロフィール 徳島大学大学院 ソシオ・アーツ・アンド・ サイエンス研究部 教授 運動生理学を専門として、脳科学を基盤にし た運動と行動の制御を研究テーマとしている。 実践的には、スポーツ・子どもの発達・学習問 題などと関係する脳の刺激感受性の向上を目的 としたコオーディネーション理論によるトレー ニング・学習の普及に取り組んでいる。 4 5 K 始動 プロジェクト
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