声の印象評価にみられる評価者の個性の影響

2-Q-41
声の印象評価にみられる評価者の個性の影響
高椋琴美 Kotomi Takamuku / 谷田泰郎 Yasuo Tanida
シナジーマーケティング株式会社
はじめに
本稿では全評価者に同一刺激(音声)を与え、刺激を受けてから評価するまで
人は刺激を受けると心に何らかの感情や印象が生起されるが、
2段階のプロセス ①感情や印象が生起される ②言葉で表現する を仮定し、
同じ刺激を受けたとしてもその内容は受け手(評価者)によって異なる。
各プロセスにおいて、評価に影響を与える要素について評価者の属性や個性の観
その違いが評価者の個性である。
点から検討を行った。
調査方法
●評価者 :
音声評価
評価用音声
各音声の音響特徴量(Table 2)を算出
女性声の
各診断タイプの
代表音声を選出
Table 1
90語の印象語から
5音声
各タイプの平均と標準偏差よりその中心
を求め、中心に最も近い音声を選出
該当するものを選択
評価者全員に提示
(複数選択可)
2013年6月~11月
約35万件
評価者の値観調査
Table 2
女性声の診断タイプ
診断タイプ
使用した音響特徴量
イメージ
音声1 キュートちゃん
音声2 優しいマリア様
音声3 チャキチャキガール
音声4 素敵なお姉様
音声5 か弱いお姫様
分析1
1063人( 男539人:女524人 )/ 16~69歳
音響特徴量
価値観計算
若くてかわいい
基本周波数平均
誠実で控えめ、
落ち着いている
若くて
ハキハキ元気
知的で上品、
落ち着いている
基本周波数の標準偏差の絶対値平均
暗めで大人しい
倍音ノイズ比率平均 0-3500 Hz
因子分析
属性・価値観
アンケート
主因子法・因子数2
Promax回転
エネルギー平均
Cepstral Peak Prominence平均
因子1:社会性
自己実現やデリケート、協調型等に影響
評価者が社会との関係をどの程度気にしているかを表す
因子2:心の余裕
金銭や時間のゆとり、ストレスに影響
評価者の現在の心理状態を表す
倍音ノイズ比率平均 0- 500 Hz
印象評価傾向からみた評価者の個性
※円の大きさはそのグループの人数
(男性)
音声評価・
価値観データ
音声毎に
評価データを
因子分析
各音声の評価因子を用い
性別に評価者のクラスター分析
(Table 3)
主因子法・Promax回転
k-means法(クラスター数4)
Table 3
(男性)
評価
各音声に対する印象
傾向
音声1
音声2
音声3
音声4
穏やか
親しみやすい 強い
知的
小さい
好き
控えめ
好き
静か
かすれ
はっきり
元気
クール
暗い
知的
カジュアル
褒め派 明快
幼い
辛口派
暗い
嫌い
弱い
雑
仕事ストレス少・
時間に余裕あり・
知的
かすれ
暗い
変
嫌い
控えめ
強い
素っ気ない
小さい
好き
知的
好き
暗い
暗い
幼い
暗い
元気
クール
人間関係にストレ
傾向
各音声に対する印象
音声1
音声2
音声3
小さい
好き
控えめ
好き
静か
かすれ
デリケートで気を
知的
元気
クール
暗い
使う・時間やお金
ゆっくり
カジュアル
感性
弱い
辛口派
感情
幼い
暗い
嫌い
嫌い
雑
素っ気ない
変
非常識なことに腹
暗い
暗い
が立つ・マイペー
感情
クール
雑
ス・時間にゆとり
感覚
あり
感覚
中立派
明快
強い
素っ気ない
小さい
細い
好き
かすれ
元気
暗い
否定批判に弱い・
非常識なことに腹
沈黙派
回答しない
属性
Table 4
性
別
評価者毎の
印象語構成比を算出
感情
感性2
感性1
感覚2
感覚1
属性
音声評価・
価値観データ
感覚
が立つ・忙しい
カジュアル
属性
0%
(女性)
に余裕あり
評価語選択傾向からみた評価者の個性
印象語を
評価の主観性から
6グループに分類
高い印象語
知的
ている
回答しない
音声5
親しみやすい 強い
幼い
若い・デリケート
でストレスを感じ
音声4
構成比率の
価値観傾向
穏やか
褒め派 明快
感性
(女性)
ス
カジュアル
分析2
高い印象語
否定批判に弱い・
暗い
穏やか
沈黙派
評価
親友中心
雑
中立派
構成比率の
好奇心旺盛・
ゆっくり
幼い
評価傾向からみた評価者の個性
価値観傾向
音声5
価値観(2因子)の平均を
グループ毎に求めプロット
(Fig.1)
評価者の印象語構成比を用い
性別に評価者のクラスター分析
(Table 4)
男
性
k-means法(クラスター数3)
女
性
100%
(グループ毎の選択数)÷(総選択数)
グループ
Fig.1
評価者グループと価値観
評価語選択傾向からみた評価者の個性
印象語構成比平均
人数
年令
総選択
価値観
感性2
感性1
感覚2
感覚1
属性
割合
感性派
6%
22%
19%
29%
5%
19%
28%
48
40
感覚派
5%
9%
15%
42%
11%
18%
37%
49
35
-0.09 ゆとり(時間)
属性派
5%
10%
14%
30%
7%
34%
35%
51
30
-0.18
感性派
6%
21%
18%
33%
6%
16%
29%
41
39
0.71
感覚派
4%
10%
13%
44%
10%
19%
37%
44
36
0.42 余裕がない(時間)
属性派
5%
13%
15%
27%
8%
32%
34%
45
30
0.34
主観的
語数
社会性
感情
0.12
自己実現・親友中心・
余裕がない(時間)
好奇心旺盛・デリケート・
協調型・ストレス(人間)
客観的
まとめ
■印象評価傾向には社会性(評価者の個性)と心の余裕(現在の状況)が
■社会性について
影響を与えている。社会性の高い人は直接相手を評価する場合でなくて
今回2プロセスとも、評価に社会性が影響を与えているとの示唆を得た。
も相手のプラス面を評価する傾向にある。
社会性は、男性は仕事、女性は人間関係と性別によって表出する場面に違
またその時の心理状態(心の余裕)が評価に影響を及ぼす。
いが見られた。また女性は男性に比べ全体的に社会性が高く、余裕がない
■評価語選択傾向には社会性が影響を与えている
と回答する傾向が見られる。