6. 機械試験調査結果 -1 塗膜付着力試験 現状の塗膜が下地にしっかりと密着していないと、その上から新たに塗装しても、旧塗膜か らの「浮き」や「はがれ」が生じやすくなり、新しい塗膜に期待通りの性能が発揮されません。 今回の調査は、「旧塗膜の上からの再塗装が可能かどうか」確認の目的で実施致しました。 調査方法は底辺が1600m㎡(40×40mm)の鉄製アタッチメントを速乾接着剤で実際に壁面 に接着し、そのアタッチメントを簡易式引張試験機にて垂直方向に引き剥がして、何Nの力で 剥れたかを測定調査するものです。 (右写真は取付けたアタッチメントを試験機にて引きはがす作業) 測定器 測定状況 破断面の考え方 A~B: アタッチメント、接着剤間の剥離の場合、接着剤の硬化不良が一番の原因となります。再度測定をやり直すべき破 断結果です。 C: 接着剤、既存塗膜間の剥離の場合、数値が小さければ、A,B同様に硬化不良も考えられますが、数値が大きい場 合は全ての部位が相当に強固の場合起こりうる破断結果ですので、非常に良好な結果と判断出来ます。 D: 既存塗膜内剥離の場合、数値が大きければ既存塗膜以下の付着力が良好と言えます。この状態は良好な結果と 判断出来ます。数値が小さい場合は塗膜撤去を視野に入れた改修を考えねばなりません。 E: 数値が大きければ下地調整材以下の付着力が良好と言えます。数値が小さい場合は塗膜撤去を視野に入れた 改修を考えねばなりません。 F: 下地調整材間の剥離の場合、数値が大きければEと同様に良好な結果ですが、数値が小さい場合は、下地調整材 の改修も視野に入れて考えねばなりません。 G: 数値の大きい場合は良好な結果ですが、数値が小さい場合はFと同様に考えねばなりません。 H: 数値が大きい場合はさほど問題ありませんが、小さい場合は圧縮強度試験を行うべき結果となります。 A ※ 判断の仕方としては、数値が基準値より 大きければ、どの箇所で剥離しても特に 問題はないです。 チ メ ン ト B 接 着 剤 E D 旧 塗 膜 G F 下 地 調 整 材 H コ ン ク リ ー が多い部位としてはE・F・G面のです。 ッ 一般的に付着強度試験で剥離すること ア タ C ト 荻野化成株式会社 今回実施しました調査の測定値は下の表の通りでした。 No. 1 2 3 4 部位 外壁5階 外壁5階 外壁1階 外壁1階 東面 西面 南面 北面 測定値 (N/1600m㎡) 4135 5462 4619 5925 付着力 (N/m㎡) 2.58 3.41 2.89 3.7 破断箇所 モルタル内 100% モルタル内 100% モルタル内 100% 躯体内 100% 0.7N/m㎡以上が正常な塗膜の付着強度の基準とされています。 塗膜付着力試験は階段室にて計4箇所行いました。 測定結果は概ね良好な結果であり、既存塗膜を全面ケレン除去せず塗り重ねし、 改装することは可能と判断されます。 但し、事前調査にて脆弱部が見られる場合は、そのような箇所はケレン除去を要 します。 荻野化成株式会社 塗膜-001 1 外壁 塗膜付着力試験 アタッチメント設置 塗膜-002 1 外壁 塗膜付着力試験 詳細 試験中 塗膜-003 1 外壁5階 東面 塗膜付着力試験 測定値 4135N/1600m㎡ 2.58N/m㎡ 破断面 モルタル内 100% 荻野化成株式会社 塗膜-004 外壁5階 西面 1 塗膜付着力試験 測定値 5462N/1600m㎡ 3.41N/m㎡ 破断面 モルタル内 100% 塗膜-005 外壁1階 南面 1 塗膜付着力試験 測定値 4619N/1600m㎡ 2.89N/m㎡ 破断面 モルタル内 100% 塗膜-006 外壁1階 北面 1 塗膜付着力試験 測定値 5925N/1600m㎡ 3.70N/m㎡ 破断面 躯体内 100% 荻野化成株式会社 -2 磁器タイル付着力試験 現状の磁器タイル面の付着性の程度について把握し、改修仕様作成の判断材料とする目 的で実施致しました。 調査方法は底辺が4275m㎡(45×95mm)の鉄製アタッチメントを速乾接着剤で実際に壁面 に接着し、そのアタッチメントを簡易式引張試験機にて垂直方向に引き剥がして、何Nの力で 剥れたかを測定調査するものです。 (右写真は取付けたアタッチメントを試験機にて引き剥がす作業) 測定器 測定状況 破断面の考え方 A~B: アタッチメント、接着剤間の剥離の場合、接着剤の硬化不良が一番の原因となります。再度測定をやり直すべき破 断結果です。 C: 接着剤、既存タイルの剥離の場合、数値が小さければ、A,B同様に硬化不良も考えられますが、数値が大きい場合 は全ての部位が相当に強固の場合起こりうる破断結果ですので、非常に良好な結果と判断出来ます」。 D: 既存タイル内剥離の場合、数値が大きければ既存タイル以下の付着力が良好と言えます。この状は良好な結果と 判断出来ます。数値が小さい場合はタイル撤去を視野に入れた改修を考えねばなりません。 E: 数値が大きければ下地調整材以下の付着力が良好と言えます。数値が小さい場合はタイル撤去を視野に入れた 改修を考えねばなりません。 F: 下地調整材間の剥離の場合、数値が大きければ良好な結果ですが、数値が小さい場合は下地調整材の改修も視 野に入れて考えねばなりません。 G: 数値の大きい場合は良好な結果ですが、数値が小さい場合はFと同様に考えねばなりません。 H: 数値が大きい場合はさほど問題ありませんが、小さい場合は圧縮強度試験を行うべき結果となります。 ※ 判断の仕方としては、数値が基準値より A 大きければ、どの箇所で剥離しても特に 問題はないです。 チ メ ン ト E D 磁 器 タ イ ル G F モ ル タ ル H コ ン ク リ ー が多い部位としてはE・F・G面のです。 ッ 一般的に付着強度試験で剥離すること ア タ C B 接 着 剤 ト 荻野化成株式会社 今回実施しました調査の測定値は下の表の通りでした。 No. 1 2 3 4 部位 外壁1階 外壁1階 外壁4階 外壁4階 東面 南面 西面 北面 測定値 (N/4275m㎡) 5666 6596 6485 9402 付着力 (N/m㎡) 1.33 1.54 1.52 2.2 破断箇所 モルタル内 100% モルタル内 100% タイル/モルタル界面 100% モルタル内 100% 磁器タイルの要求される付着力の目安は、0.4N/m㎡以上とされています。 磁器タイル面の付着強度は上記の通り良好な結果を示しています。 しかしながら、磁器タイル面を部分的に打診調査した結果、磁器タイルの浮きの 発生が認められる箇所があり、改修に際してはこの部分の補修処理の必要があ ります。 荻野化成株式会社 タイル-001 1 外壁 磁器タイル付着力試験 タイル-002 1 外壁 磁器タイル付着力試験 試験中 タイル-003 1 外壁1階 東面 磁器タイル付着力試験 測定値 5666N/4275m㎡ 1.33N/m㎡ 破断面 モルタル内 100% 荻野化成株式会社 タイル-004 外壁4階 西面 1 磁器タイル付着力試験 測定値 6485N/4275m㎡ 1.52N/m㎡ 破断面 タイル/モルタル界面 100% タイル-005 外壁1階 南面 1 磁器タイル付着力試験 測定値 6596N/4275m㎡ 1.54N/m㎡ 破断面 モルタル内 100% タイル-006 外壁4階 北面 1 磁器タイル付着力試験 測定値 9402N/4275m㎡ 2.20N/m㎡ 破断面 タイル/モルタル界面 100% 荻野化成株式会社 -3 下地コンクリート中性化深度試験 鉄筋構造物の寿命に関しては、現在コンクリートの炭酸化説が支配的です。コンクリート は打設直後、セメントの水和生成物である水酸化カルシウム などにより、強いアルカリ性 を示しています。このようなコンクリート内部にある鉄筋はその表面が不動態化しており腐 食しません。しかし、コンクリート表面から次第に空気中の炭酸ガスなどと反応し炭酸カル シウムが発生し、アルカリ性が低下し中性化していきます。中性化が鉄筋表面まで達する と、鉄筋の不動態化の条件が崩れ、腐食しやすい状態に成ります。鉄筋が腐食すると著 しい体積膨張し、コンクリート構造物の耐力が低下します。したがって、本試験では中性 化の深度を測定し現状の耐久性を判断するためのデータとするものです。 試験方法 1. 表面仕上材及びコンクリートをコア抜きする。 2. フェノールフタレイン1%エタノール溶液を抜き取ったコアに散布する。 3. コンクリート表層から着色界面までスケールで測定する。 <pHと鉄筋の腐食関係> 1.0 腐 食 速 度 0.8 0.6 0.4 0.2 (㎜/年) 0 14 12 10 8 pH 6 4 2 測定箇所 測定箇所は、4箇所で実施しました。 荻野化成株式会社 測定結果 <塗膜> No. 1 2 3 4 部位 外壁5階 外壁5階 外壁1階 外壁1階 平均 東面 西面 南面 北面 中性化深度 (mm) 0.0 2.0 1.0 2.0 1.3 現状仕上げ 吹付タイル 吹付タイル 吹付タイル 吹付タイル 一般的に標準的なコンクリートの中性化深度は次の計算式で求められます。 t=7.2χ2 【t:経年(単位=年)、χ:中性化深度(単位=㎝)】 物件の場合、築年ですから、24年を上記計算式(t)に代入しますと、1.83㎝(χ)に なります。 この計算式の数値では、無塗装のコンクリートの場合を想定していますので、上記の 計算式によって求めた中性化深度(χ)に、該当する仕上材によって上記の指数を 乗じます。 リシン 吹付タイル他 複層弾性 磁器タイル :0.8 :0.4 :0.4 :0.1 1.83㎝×0.4=0.73㎝ (7.3㎜) 築24年経過した建物の理論上の標準中性化深度は、7.3㎜となります。 本物件の築後経過年数と、上に記した計算式から、本物件の中性化深度は 7.3㎜と推定されます。 今回の試験結果では平均で1.3㎜の測定結果であり、経年相当以下の進行 の状態といえます。 荻野化成株式会社 塗膜中性-001 1 外壁5階 東面 中性化深度試験 測定値 0mm 塗膜中性-002 1 外壁5階 東面 中性化深度試験 詳細 測定値 0mm 塗膜中性-003 1 外壁5階 西面 中性化深度試験 測定値 2.0mm 荻野化成株式会社 塗膜中性-004 外壁1階 南面 1 中性化深度試験 測定値 1.0mm 塗膜中性-005 外壁1階 南面 1 中性化深度試験 詳細 測定値 1.0mm 塗膜中性-006 外壁1階 北面 1 中性化深度試験 測定値 2.0mm 荻野化成株式会社 -4 シーリング物性試験 ◇ 試験 JIS K 6251 「加硫ゴムの引張試験方法」に準じて行った。 ① 採取したシーリング材をカッターの刃を用い、厚さ2~3mmのシート状にスライス し、これをJIS K 6251に基づく3号ダンベル型で打ち抜き、試験体とした。 尚、厚さ2~3mmのものはそのまま試験体とした。(別途工程写真参照) ② 試験方法 試験体を以下の条件で引張試験に供した。 試験温度 : 23℃、引張速度 : 200mm/min。 ③ 試験結果 引張試験の結果および当建物既設シ-リング材の劣化度の診断結果を表-3に 示す。 ◇ 結果 調査箇所No.1~4上層の数値は硬化傾向を示し“劣化度Ⅱ”と判定されました。 表-2 引張試験 No. 1 2 3 4 調査箇所 屋上 東面 タイル目地 3階屋上 北面 サッシ周り目地 3階屋上 西面 タイル目地 3階屋上 南面 タイル目地 50%引張応力 破断時の伸び 硬度 劣化度 タイプA 劣化度 300 Ⅱ 18 Ⅰ 0.16 400 Ⅱ 14 Ⅰ 0.15 450 Ⅱ 12 Ⅰ 0.19 400 Ⅱ 17 Ⅰ (N/m㎡) (%) 0.16 荻野化成株式会社 ◇ 引張試験工程写真 採取シーリング材をカッターナイフで、 厚さ2~3mmにスライスする。 スライスしたシーリング材をJIS K 6251 に基づくダンベル3号型で打ち抜き、 中央部に幅20mmの標線を引き試験 片とする。 試験片を引張試験機にかけ、破断するまで 引っ張る。 荻野化成株式会社 シール物性-001 1 屋上 東面 タイル目地 シーリング劣化調査試験 調査箇所No.1 シール物性-002 1 屋上 東面 タイル目地 シーリング劣化調査試験 詳細 シーリング材の汚れが確認でき る。 シール物性-003 1 屋上 東面 タイル目地 シーリング劣化調査試験 目地の状況:3面接着 荻野化成株式会社 シール物性-004 3階屋上 北面 サッシ廻り目地 1 シーリング劣化調査試験 調査箇所No.2 シール物性-005 3階屋上 北面 サッシ廻り目地 1 シーリング劣化調査試験 シーリング材の汚れが確認でき る。 シール物性-006 3階屋上 北面 サッシ廻り目地 1 シーリング劣化調査試験 詳細 目地の状況:3面接着 荻野化成株式会社
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