特集:財政ガバナンス ドイツにおける難民に関する立法動向 ―人間の尊厳にふさわしい待遇を目指して― 国立国会図書館 調査及び立法考査局 海外立法情報課 渡辺 富久子 【目 次】 はじめに Ⅰ 基本法における庇護権の保障 Ⅱ 庇護申請者及び難民の法的地位 1 庇護申請者の法的地位 2 難民の法的地位 3 滞 在 場 所 の 制 限、 就 労、 家 族 呼 寄 せ 及 び 統 合 講 習 Ⅲ 庇護申請者に対する給付 1 受給権者 2 基礎給付 3 病気の場合等の給付 おわりに 翻訳:庇護申請者給付法 はじめに 中 東 情 勢 の 不 安 定 化 に よ り、 シ リ ア 周 辺 で 大 量 の 難 民 が 発 生 し、 世 界 的 な 問 題 と な っ て い る。 ド イ ツ に も、 中 東、 バ ル カ ン 半 島、 ア フ リ カ 大 陸 等 か ら 難 民 が 流 入 し て お り、2014 年の外国人 (1) に よ る 庇 護 申 請 件 数 は、 前 年 比 60% 増 の 202,834 件 で あ っ た (2) 。 こ の よ う な 状 況 に 対 し、 ド イ ツ は、 人 道 上 の 義 務 か ら、 保 護 の 必 要 な 難 民 に 積 極 的 に 滞 在 許 可 を 与 え、 難 民 の 地 位 を 改 善 し よ う と し て い る。 こ れ は、 従 来、 ド イ ツ は 難 民 に 対 し て 抑 制 的 な 政 策 を 取 っ て き た が、 結 局 ド イ ツ に 残 る こ と に な っ た 難 民 も 多 く、 難 民 に 対 し、 人間の尊厳にふさわしい待遇を最初から施すべきだという世論が形成されてきたためであ る (3) 。 こ の よ う な 難 民 政 策 の 転 換 の た め に、 近 年、 複 数 の 法 改 正 が 行 わ れ て い る。 本 稿 で は、 近 年 の 法 改 正 を 踏 ま え、 ド イ ツ に お け る 難 民 法 制 の 枠 組 み を 紹 介 し た い。 難 (1) 2014 年に庇護を申請した外国人の国籍は、シリア 22.7%、セルビア 9.9%、エリトリア 7.6%、アフガニスタン 5.3%、 アルバニア 4.5%、コソボ 4.0%、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ 3.3% 等となっている。Bundesamt für Migration und Flüchtlinge, Aktuelle Zahlen zu Asyl, Dezember 2014, S.7.〈http://www.bamf.de/SharedDocs/Anlagen/DE/Downloads/ Infothek/Statistik/statistik-anlage-teil-4-aktuelle-zahlen-zu-asyl.pdf?__blob=publicationFile〉以下、インターネット情報 は、2015 年 3 月 2 日現在のものである。 (2) これは、第一次申請のほか再申請等の申請も含む数字である。„202.834 Asylanträge im Jahr 2014,“ 2015.1.14. 連 邦内務省ウェブサイトを参照。〈http://www.bmi.bund.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/2015/01/asylzahlen_2014. html;jsessionid=60503C4861D2E0498C0EF6AA5D1A708D.2_cid287?nn=3314802〉 (3) BT-Drucksache, 18/3839 を参照。他方で、いかなる観点からも滞在権を与えることのできない外国人について は庇護認定手続を迅速化し、国外退去強制を確固として行おうとする法改正も予定されている。Entwurf eines Gesetzes zur Neubestimmung des Bleiberechts und der Aufenthaltsbeendigung (BT-Drucksache 18/4097). 64 外国の立法 264(2015. 6) 国立国会図書館調査及び立法考査局 ドイツにおける難民に関する立法動向―人間の尊厳にふさわしい待遇を目指して― 民 に 関 す る 主 要 な 法 律 は、庇 護 手 続 法 (4) 、滞 在 法 (5) 及び庇護申請者給付法 (6) で あ る。ド イ ツ の 法 制 上、 難 民 に は、 ド イ ツ 連 邦 共 和 国 基 本 法(日 本 の 憲 法 に 相 当 す る。 以 下 「基 本 法」 と い う。)が 保 障 す る 「 庇 護 権(Asyl)」を 認 定 さ れ た 外 国 人 と、1951 年 の ジ ュ ネ ー ブ 難 民 条 約 (7)(以 下「難 民 条 約」と い う。)の 難 民 の 定 義 に 該 当 す る「難 民(Flüchtlinge)」の 地 位 を 認 定 さ れ た 外 国 人 が い る。 庇 護 権 を 認 定 さ れ た 外 国 人 も 難 民 の 地 位 を 認 定 さ れ た 外 国 人 も、 同 様 の 待 遇 を 受 け る。 こ れ ら の 地 位 を 申 請 中 の 者 が 「庇 護 申 請 者 (Asylbewerber)」で あ る。 以 下、 第 Ⅰ 章 で 基 本 法 が 保 障 す る 庇 護 権 に つ い て、 第 Ⅱ 章 で 庇 護 手 続 法 及 び 滞 在 法 等 に お け る 庇 護 申 請 者 及 び 難 民 の 法 的 地 位 に 関 す る 規 定 に つ い て、 第 Ⅲ 章 で 庇 護 申 請 者 に 対 す る 給 付 に つ い て、 そ の 概 要 を 紹 介 す る。 解 説 の 最 後 に、 表 6「 難 民 に 関 す る 最 近 の 法 令 」 を 掲 載 し、 末 尾 に、 庇 護 申 請 者 給 付 法 を 訳 出 す る。 庇 護 申 請 者 給 付 法 に つ い て は、2012 年 7 月 18 日 に、 連 邦 憲 法 裁 判 所 が、 庇 護 申 請 者 に 対 す る 金 銭 給 付 は、 人 間 の 尊 厳 に ふ さ わ し い 最 低 限 度 の 生 活 を 保 障 す る 額 で な け れ ば な ら な い と 判 決 し(1 BvL 10/10, 1 BvL 2/11)、 こ れ を 受 け て 同 法 の 重 要 な 改 正 が 2014 年 に 行 わ れ ている (8) 。 Ⅰ 基本法における庇護権の保障 基 本 法 第 16a 条 第 1 項 は、「政 治 的 に 迫 害 さ れ て い る 者 (9) は、 庇 護 権 を 享 受 す る。」と 定 め て い る。 こ れ は、1949 年 に 基 本 法 が 制 定 さ れ た 当 初 は、 第 16 条 第 2 項 第 2 文 に 置 か れ ていた。庇護権は、ドイツ国内の外国人が個人として援用することができる基本権である (10)。 こ の 規 定 は、 第 二 次 世 界 大 戦 中 に ナ チ ズ ム の 迫 害 か ら 逃 れ た 者 が、 他 国 で 亡 命 者 と し て 受 (4) Asylverfahrensgesetz (AsylVfG) in der Fassung der Bekanntmachung vom 2. September 2008 (BGBl. I S.1798). 庇 護 手続法の解説及び翻訳は、本間浩「ドイツにおける難民保護と難民庇護手続法」 『外国の立法』no.216, 2003.5, pp.66-114 を参照。〈http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000505_po_21602.pdf?contentNo=1&alternativeNo=〉 (5) Gesetz über den Aufenthalt, die Erwerbstätigkeit und die Integration von Ausländern im Bundesgebiet (Aufenthaltsgesetz - AufenthG) in der Fassung der Bekanntmachung vom 25. Februar 2008 (BGBl. I S.162). 滞 在 法 は、1965 年 の 外 国 人 法を引き継ぐ法律で、移民法(2005 年 1 月 1 日施行)により制定された。移民法は、外国人関係法令の網羅 的な改正であり、ドイツが事実上の移民国家であることを承認した法律とされている。Gesetz zur Steuerung und Begrenzung der Zuwanderung und zur Regelung des Aufenthalts und der Integration von Unionsbürgern und Ausländern (Zuwanderungsgesetz) vom 30. Juli 2004 (BGBl. I S.1950). 移民法制定の解説及び翻訳は、戸田典子「ドイツの滞在 法―「外国人法」から EU「移民法」へ―」 『外国の立法』no.234, 2007.12, pp.4-112 を参照。〈http://dl.ndl.go.jp/view/ download/digidepo_1000294_po_023401.pdf?contentNo=1&alternativeNo=〉なお、滞在法における主要な難民関連規 定の改正が現在議会で審議中である(注 (3) の法案)。 (6) Asylbewerberleistungsgesetz (AsylbLG) in der Fassung der Bekanntmachung vom 5. August 1997 (BGBl. I S.2022). (7) 1951 年 7 月 28 日に国連が採択した難民の地位に関する条約。その第 1 条 A 第 2 項は、難民を「人種、宗教、 国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十 分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者」と定義している。 (8) 連邦憲法裁判所判決の詳細は、渡辺富久子「【ドイツ】庇護申請者給付法の改正」『外国の立法』no.262-2, 2015.2, pp.16-17 を参照。〈http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8965187_po_02620206.pdf?contentNo=1&alternati veNo=〉 (9) 「政治的に迫害されている者」とは、故国に帰還した場合、政治的な理由により、身体若しくは生命に対する 迫害又は個人的な自由の侵害が予想される者である。迫害の危険は、客観的に判断される。基本法第 16a 条の 庇護権の対象は、連邦憲法裁判所の判例の積み重ねにより明確化されてきた。Jan Bergmann et al., Ausländerrecht: Aufenthaltsgesetz und Freizügigkeitsgesetz/EU, Artikel 16a GG und Asylverfahrensgesetz sowie arbeits- und sozialrechtliche Vorschriften: Kommentar, München: Beck, 2011, S.1557f.「政治的な迫害」は、個人の政治的な信条、宗教又は自分で はどうすることもできない他の特徴により、国家により権利が侵害されているときに認められる。侵害は、国家 の支配的な平和秩序から締め出される程度でなければならない。「政治的な迫害」の主体は、原則として国家で なければならない。貧困、内戦、自然災害等は庇護権付与の理由とならず、状況に応じて補充的保護(注 (20) を 参照)が決定される。„Politisch Verfolgte genießen Asyl,“ 2012.12.12. 連邦移民難民庁ウェブサイトを参照。〈http:// www.bamf.de/DE/Migration/AsylFluechtlinge/Asylrecht/asylrecht-node.html;jsessionid=4440F8DC2310033177652A7D85 BC4787.1_cid368〉 (10) 本間浩『個人の基本権としての庇護権』勁草書房, 1985, p.9 を参照。 外国の立法 264(2015. 6) 65 特集:財政ガバナンス け入れられたことにより生き延びることができたという経験に基づくもので し て、 欧 州 で 最 も リ ベ ラ ル な 規 定 で あ っ た (12) (11) 、難 民 に 関 。 こ の 規 定 は 難 民 の 数 が 少 な い 時 代 に は 問 題 が な か っ た が、1970 年 代 半 ば 以 降「第 三 世 界」 か ら の 難 民 が 増 え、 さ ら に 1980 年 代 後 半 か ら 1990 年 代 初 め に か け て 東 欧 や バ ル カ ン 半 島 か ら の 難 民 が 急 増 し た た め、 難 民 の 数 を 抑 制 す る よ う な 政 策 を 求 め る 声 が 強 く な っ た。 そ の 結 果 1993 年 に 基 本 法 が 改 正 さ れ (13) 、難 民 に 関 す る 規 定 と し て 新 た に 第 16a 条 が 設 け ら れ た。 従 前 の 第 16 条 第 2 項 第 2 文 は 第 16a 条 第 1 項 と な り、 第 2 項 以 下 に、 難 民 の 受 入 れ を 抑 制 す る 規 定 が 挿 入 さ れ た。 す な わ ち、 第 一 に、「安 全 な 第 三 国 (EU 加 盟 国、 ノ ル ウ ェ ー 及 び ス イ ス)」 を 経 て ド イ ツ に 入 国 す る 者 に は、 庇 護 権 が 認 め ら れ な い こ と に な っ た (基 本 法 第 16a 条 第 2 項)(14)。 第 二 に、一 部 の 国 に つ い て は、そ の 法 的 状 態、法 適 用 及 び 一 般 的 政 治 状 況 か ら し て 政 治 的 迫 害 や、 非 人 道 的 な 又 は 品 位 を 傷 つ け る 刑 罰 又 は 取 扱 い が 行 わ れ て い な い と 推 定 し、 そ の よ う な 「安 全 な 出 身 国 (ボ ス ニ ア ・ ヘ ル ツ ェ ゴ ビ ナ、 ガ ー ナ、 マ ケ ド ニ ア 旧 ユ ー ゴ ス ラ ビ ア 共 和 国、 セ ネ ガ ル 及 び セ ル ビ ア)」(15) か ら の 外 国 人 の 庇 護 申 請 は、 当 該 外 国 人 が 政 治 的 な 迫 害 の お そ れ が あ る と い う 推 定 の 根 拠 と な る 事 実 関 係 又 は 証 拠 を 示 さ な い 限 り、「明 ら か に 理 由 が な い」 と し て 却 下 さ れ る こ と に な っ た (基 本 法 第 16a 条 第 3 項)。 こ の 基 本 法 改 正 後、 庇 護 申 請 件 数 は 2000 年 代 後 半 ま で 減 少 す る 傾 向 に あ っ た。 図 1 に、 庇 護 申 請 件 数 の 推 移 を 掲 げ る。 図 1 庇護申請件数の推移 (万件) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 出典 : Bundesamt für Migration und Flüchtlinge, Aktuelle Zahlen zu Asyl, Dezember 2014, S.3f. 等を参照して筆者作成。 〈http://www.bamf.de/SharedDocs/Anlagen/DE/Downloads/Infothek/Statistik/statistik-anlage-teil-4-aktuelle-zahlen-zuasyl.pdf?__blob=publicationFile〉 (11) „Lage der Flüchtlinge und Vertriebenen, “ 2008.3.11. Bundeszentrale für politische Bildung ウェブサイトを参照。 〈http:// www.bpb.de/izpb/8351/lage-der-fluechtlinge-und-vertriebenen?p=2〉また、宮根浩幸「ドイツの吸引力と難民庇護権規 定改正の意味」『Brücke』8 号, 1995.4, p.119 を参照。 (12) しかし、このリベラルな規定の適用は、逆に最も抑制的であったとされる。Klaus J. Bade, „Einwanderungskontinent Europa: Migration und Integration am Ende des 20. Jahrhunderts,“ Zuwanderung und Asyl, Nürnberg: Bundesamt für die Anerkennung ausländischer Flüchtlinge, 2001, S.29. (13) Gesetz zur Änderung des Grundgesetzes (Artikel 16 und 18) vom 28. Juni 1993 (BGBl. I S.1002). (14) これは、EU レベルでの庇護審査責任国制度に対応するものである。EU 加盟国において庇護申請がなされる 場合、審査を行う責任は 1 国(申請者が最初に入国した国、申請者が最初に庇護申請を行った国)のみが負い、 責任国でない国で申請が行われた場合には、当該国はそれを実質審査することなく、責任国に送ることができる。 戸田五郎「欧州庇護政策の現状と課題」『世界法年報』27 号, 2008, p.21.「安全な第三国」は、庇護手続法附則 I に 掲げられている。 (15) 「安全な出身国」は、庇護手続法附則Ⅱに掲げられている。「安全な出身国」の規定は、庇護申請者の受入れ を回避するための法技術上のものである。庄司克宏「難民庇護政策における「規制間競争」と EU の基準設定」 『慶 應法学』7 号, 2007.3, p.619. また、「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」は、マケドニアが「マケドニア共和国」 と称することにギリシャが反対しているために、暫定的に使用されている国名である。外務省ウェブサイトを参 照。〈http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/macedonia/data.html#section1〉 66 外国の立法 264(2015. 6) ドイツにおける難民に関する立法動向―人間の尊厳にふさわしい待遇を目指して― Ⅱ 庇護申請者及び難民の法的地位 庇 護 申 請 者 及 び 難 民 の 法 的 地 位 に 関 す る 主 要 な 法 律 は、 庇 護 手 続 法 と 滞 在 法 で あ る。 庇 護 手 続 法 は、 庇 護 申 請 者 の 法 的 地 位 を 定 め る。 滞 在 法 は、 移 民 (EU 自 由 移 動 法 が 適 用 さ れ る 者 を 除 く。)(16) 及 び 難 民 の 法 的 地 位 を 定 め る。 滞 在 法 は、 難 民 に つ い て は、 ド イ ツ の 人 道 上 の 義 務 を 遂 行 す る こ と を 目 的 と し、そ の 第 2 章 第 5 節(第 22 条 ~ 第 26 条)に お い て、 国 際 法 上、 人 道 上 又 は 政 治 的 理 由 に 基 づ く 滞 在 が 定 め ら れ て い る。 1 庇護申請者の法的地位 庇 護 申 請 者 は、 滞 在 承 認 (Aufenthaltsgestattung) と い う 資 格 で ド イ ツ に 滞 在 す る (庇 護 手 続 法 第 55 条。 以 下、 こ の 節 に お い て 条 番 号 を 掲 げ る 場 合 に は、 同 法 の 条 項 を 指 す。)。 ド イ ツ の 連 邦 制 の 枠 組 み に お い て は、 連 邦 移 民 難 民 庁 が 庇 護 申 請 の 審 査 を 行 い、 各 州 が 人 口 及 び 税 収 に 応 じ て 庇 護 申 請 者 を 受 け 入 れ る (第 45 条)。 州 は、 さ ら に、 庇 護 申 請 者 の 受 入 施 設 を 設 置 す る 義 務 を 負 う (第 44 条)。 庇 護 申 請 者 は、 連 邦 全 体 で 運 用 さ れ て い る 庇 護 申 請 者 配 分 シ ス テ ム (EASY)(17) に よ り、16 州 の 中 か ら 1 州 を 割 り 当 て ら れ る。 庇 護 申 請 者 が 自 分 で 州 を 選 ぶ こ と は で き な い。 庇 護 申 請 者 は、6 週 間 ま で、 最 長 3 月 間 を 限 度 と し て、 州 が 設 置 す る 受 入 施 設 に 居 住 す る 義 務 を 負 う (第 47 条)。 受 入 施 設 に お け る 居 住 の 義 務 が な く な っ た 庇 護 申 請 者 は、 各 州 の 方 針 に 応 じ て、 共 同 宿 泊 施 設 (第 53 条) 又 は 民 間 の 賃 貸 住 宅 に 居 住 す る。(18) 各 州 に お い て 庇 護 手 続 法 の 事 務 を 所 掌 す る の は、 州 及 び 自 治 体 の 外 国 人 官 庁 (19) で あ る。 2 難民の法的地位 連 邦 移 民 難 民 庁 に よ る 庇 護 申 請 に 係 る 決 定 は、 次 ペ ー ジ の 図 2 の よ う に、「庇 護 権 認 定」、 「条 約 に 基 づ く 保 護」 (難 民 認 定 及 び 補 充 的 保 護 (20) )又 は「国 外 退 去 強 制 の 禁 止」(21) に 分 類 さ れ る。 こ れ ら に 該 当 し な い 場 合 に は、 庇 護 申 請 は 却 下 さ れ た こ と に な る。 近 年 の 庇 護 申 請 に 係 る 決 定 件 数 の 内 訳 を 次 ペ ー ジ の 表 1 に 掲 げ る。 (16) ここでいう移民は、就学や職業活動等を目的として滞在資格を得てドイツに滞在する外国人であり、その後 永住するか否かを問わない。また、EU 加盟国及び欧州経済領域加盟国(ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュ タイン)並びにスイスの国民には、EU 自由移動法(Freizügigkeitsgesetz/EU)が適用され、滞在法は適用されない。 滞在法は、移民については、その流入を制御し、ドイツの受入能力並びに経済的利益及び労働市場政策上の利益 を考慮した移住を可能とすることを目的としている(滞在法第 1 条)。 (17) Erstverteilung von Asylbegehrenden. 連邦内務省の中央庇護希望者配分機関が所管するシステムである。 (18) 難民認定手続については、アジア福祉教育財団難民事業本部『ドイツにおける条約難民及び庇護申請者等に 対する支援状況調査報告』2007 を参照。〈http://www.rhq.gr.jp/japanese/hotnews/data/pdf/wha0819.pdf〉 (19) 外国人官庁は、各州の内務省下の機関で外国人の滞在管理を司る。本間 前掲注 (10), pp.166-167 を参照。 (20) 補充的保護は、第三国国民又は無国籍者の国際的保護の受益者としての資格、難民又は補充的保護を受ける 資格のある者の統一した地位及び与えられる保護内容についての基準に関する 2011 年 12 月 13 日の欧州議会及 び欧州理事会指令 2011/95/EU 第 15 条を実施するものである。補充的保護とは、難民条約の解釈によっては難民 と認定されないが、各種の理由から本国への帰還が可能でない又は望ましくない者に対し、国際的な人権・人道 上の規範によって国際的保護の機会を与える考え方である。第 6 次出入国管理政策懇談会・難民認定制度に関す る専門部会「難民認定制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)」2014.12, p.10 を参照。〈http://www.moj. go.jp/content/001130133.pdf〉 (21) 欧州人権条約の適用により国外退去強制が許容されない場合(滞在法第 60 条第 5 項)及び他国に送還すると 当該外国人の身体、生命又は自由に対する重大な具体的危険が存在する場合(同条第 7 項)には、国外退去強制 が禁止される。 外国の立法 264(2015. 6) 67 特集:財政ガバナンス 図 2 連邦移民難民庁による庇護申請に係る決定 庇護申請(第 13 条第 2 項第 1 文) 条約に基づく保護 (第 1 条第 1 項第 2 号) 庇護権認定 (基本法第 16a 条 第 1 項) 難民認定 (第 3 条第 1 項) 補充的保護 (第 4 条第 1 項) 職権による決定 (第 31 条第 3 項第 1 文) 国外退去強制の禁止 (滞在法第 60 条第 5 項及び第 7 項) 注 : 単に条番号を掲げる場合は、庇護手続法の条文である。 出典 : Bundesamt für Migration und Flüchtlinge, Das deutsche Asylverfahren – ausführlich erklärt, 2014, S.1 を参照して筆 者作成。 表 1 庇護申請に係る決定件数の内訳 年 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 決定件数 30,759 28,572 20,817 28,816 48,187 43,362 61,826 80,978 128,911 庇護権認定 0.8% 1.1% 1.1% 1.6% 1.3% 1.5% 1.2% 1.1% 1.8% 難民認定 3.6% 24.1% 33.9% 26.6% 14.7% 14.9% 13.0% 12.3% 24.1% 補充的保護 国外退去強制の禁止 0.5% 1.5% 0.8% 1.6% 0.6% 2.1% 1.4% 4.2% 1.1% 4.4% 1.5% 4.4% 11.3% 2.3% 8.7% 2.7% 4.0% 1.6% 却下等 93.6% 72.4% 62.3% 66.2% 78.5% 77.7% 72.3% 75.2% 68.6% 出典 : Bundesamt für Migration und Flüchtlinge, Aktuelle Zahlen zu Asyl, 2014, S.10 を参照して筆者作成。 庇 護 申 請 が 却 下 さ れ な か っ た 場 合 に は、 滞 在 許 可 が 与 え ら れ る。 な お、 滞 在 法 が 定 め る 外 国 人 の 主 要 な 滞 在 資 格(Aufenthaltstitel)に、 期 限 付 き の 滞 在 許 可(Aufenthaltserlaubnis) と 無 期 限 の 定 住 許 可(Niederlassungserlaubnis)が あ る。 滞 在 許 可 を 得 て 一 定 期 間 経 過 す る と、 申請により定住許可を受けることができる (22) 。 庇 護 権 等 を 認 定 さ れ た 者 の 滞 在 資 格 は、次 の 表 2 の と お り で あ る。 表 2 庇護権等を認定された者の滞在資格 滞在許可の年限 庇護権認定・ 難民認定 補充的保護 国外退去強制 の禁止 滞在許可の更新 定住許可の要件 3 年以下 適宜 ・ 滞在許可を受け、3 年経過したこと。 ・ 庇護権又は難民認定の取消し又は撤回の要件が存在しな いことを連邦移民難民庁が確認したこと。 1年 2 年ごと 1 年以上 適宜 ・ 滞在許可を受け、7 年(注)経過したこと。(当該期間に は庇護申請者として滞在した期間が算入される。) ・ 生計の確保 ・ 就労 ・ 十分なドイツ語能力等 *滞在資格に係る上記規定は、滞在法第 26 条のものである。 (注) :現在議会で審議中の法案が成立すると、この期間は 5 年となる。 出典 : Bundesamt für Migration und Flüchtlinge, Das deutsche Asylverfahren – ausführlich erklärt, 2014, S.44f を参照して 筆者作成。 (22) 移民の滞在許可は、就学や就労等のために外国人に与えられ、5 年以上滞在許可を保有すると、申請により 定住許可を受ける。定住許可は、職業活動(就労及び自営)の権利を保障する。滞在許可においては、滞在法の 個別の規定により職業活動の権利を保障している場合又は滞在資格証が職業活動を明文で許可している場合に職 業活動に従事することができる。職業活動の権利が与えられていない滞在許可を有する場合には、就労のために 連邦雇用庁の同意を得る必要があり(第 39 条)、自営は、一定の要件を満たせば可能である(第 21 条)。 68 外国の立法 264(2015. 6) ドイツにおける難民に関する立法動向―人間の尊厳にふさわしい待遇を目指して― 庇 護 申 請 が 却 下 さ れ た 場 合 で あ っ て も、 事 実 上 又 は 法 律 上 の 理 由 に よ り 国 外 退 去 を 強 制 す る こ と が で き な い 場 合 に は、 当 該 外 国 人 に 対 し て 国 外 退 去 が 一 時 的 に 猶 予 さ れ る (滞 在 法 第 60a 条 第 2 項。 以 下、 こ の 節 に お い て 条 番 号 を 掲 げ る 場 合 に は、 同 法 の 条 項 を 指 す。)。 こ の 猶 予 措 置 を 何 度 も 延 長 し て ド イ ツ に 長 く 滞 在 す る 外 国 人 も 多 い。 た だ し、 こ の 場 合 の 滞 在 は、 滞 在 資 格 に よ る も の で は な い (23) 。 滞 在 法 第 2 章 第 5 節 は、 そ の 他、 庇 護 申 請 手 続 を 経 ず に 外 国 人 を 引 き 受 け、 当 該 外 国 人 に 滞 在 許 可 を 与 え る 仕 組 み や、 国 外 退 去 強 制 が 命 ぜ ら れ た 外 国 人 の 状 況 に 応 じ て、 当 該 外 国 人 に 滞 在 許 可 を 与 え る 仕 組 み を 定 め て い る。 庇 護 申 請 手 続 を 経 な い 滞 在 許 可 の 付 与 の 仕 組 み の 一 つ と し て、 連 邦 内 務 省 は、 ド イ ツ の 政 治 的 な 利 益 の 保 護 の た め に、 各 州 の 内 務 省 の 了 解 を 得 て、 連 邦 移 民 難 民 庁 が 特 定 国 出 身 の 外 国 人 に 対 し 受 入 れ の 承 諾 を 与 え る こ と を 命 令 す る こ と が で き る (第 23 条 第 2 項)。 こ の 規 定 に 基 づ い て、 連 邦 内 務 省 は、2013 年 5 月 30 日 の 命 令 (24) に よ り 5,000 人、2013 年 12 月 23 日 の 命 令 に よ り 5,000 人、 さ ら に 2014 年 7 月 18 日 の 命 令 に よ り さ ら に 1 万 人 の シ リ ア 難 民 を 受 け 入 れ る こ と を 決 定 し た。 こ れ ら の 難 民 に は、2 年 間 の 滞 在 許 可 が 与 え ら れ る。 滞 在 法 の 事 務 を 所 掌 す る の は、 各 州 及 び 自 治 体 の 外 国 人 官 庁 で あ る。 3 滞 在 場 所 の 制 限、 就 労、 家 族 呼 寄 せ 及 び 統 合 講 習 (1) 滞 在 場 所 の 制 限 従 来、 庇 護 申 請 者 は 庇 護 手 続 法 の 規 定 に よ り、 国 外 退 去 強 制 を 猶 予 さ れ た 者 (以 下 「国 外 退 去 猶 予 者」 と い う。) は 滞 在 法 の 規 定 に よ り、 滞 在 場 所 が 制 限 さ れ る。 庇 護 申 請 者 の 滞 在 承 認 の 適 用 地 域 は、 受 入 施 設 が あ る 外 国 人 官 庁 管 轄 区 域 に 限 定 さ れ る (庇 護 手 続 法 第 56 条)。 庇 護 申 請 者 は、当 該 区 域 か ら の 一 時 的 な 外 出 の た め に 官 庁 の 許 可 を 必 要 と す る(庇 護 手 続 法 第 57 条 及 び 第 58 条)(25)。 ま た、国 外 退 去 猶 予 者 の 滞 在 は、当 該 州 の 領 域 に 制 限 さ れ る (滞 在 法 第 61 条 第 1 項)。 2014 年 12 月 の 庇 護 手 続 法 及 び 滞 在 法 の 改 正 (26) に よ り、こ れ ら の 移 動 の 制 限 が 緩 和 さ れ た。 す な わ ち、 許 可 若 し く は 猶 予 さ れ た 滞 在 又 は 滞 在 承 認 を 受 け た 滞 在 の 期 間 が 3 月 を 経 過 す る と、 滞 在 場 所 を 制 限 さ れ な い こ と に な っ た ( 庇 護 手 続 法 第 59a 条 及 び 滞 在 法 第 61 条 第 1b 項)。 他 方 で、 こ れ ら の 外 国 人 で 生 計 が 確 保 さ れ て い な い も の は、 官 庁 が 指 定 す る 場 所 に 居 住 し な け れ ば な ら な い と さ れ た (庇 護 手 続 法 第 60 条 及 び 滞 在 法 第 61 条 第 1d 項)。 こ れ は、 社 会 給 付 を 行 う 各 州 の 負 担 を 平 等 と す る た め の 措 置 で あ る。 居 住 を 義 務 付 け ら れ た 場 所 か ら の 一 時 的 な 外 出 に は、 許 可 は 不 要 で あ る。 (2) 就 労 滞 在 法 の 規 定 に よ れ ば、 庇 護 権 又 は 条 約 に 基 づ く 保 護 を 認 定 さ れ た 外 国 人 は、 制 限 な く、 (23) 猶予の期間は、多くの場合 3 月又は 6 月である。猶予については次の資料を参照。Gemeinnützige Gesellschaft zur Unterstützung Asylsuchender, Arbeitshilfe: Die Duldung – Aussetzung der Abschiebung, 2010.4.〈http://www.asyl.net/ fileadmin/user_upload/redaktion/Dokumente/GGUAduldung.pdf〉 (24) Anordnung des Bundesministeriums des Innern gemäß § 23 Absatz 2, Absatz 3 i. V. m. § 24 Aufenthaltsgesetz zur vorübergehenden Aufnahme von Schutzbedürftigen aus Syrien und Anrainerstaaten Syriens vom 30. Mai 2013 等。 (25) 一時的な外出には、州の受入施設に居住する義務を負う間は連邦移民難民庁の許可を(第 57 条)、その後は 外国人官庁の許可を要する(第 58 条)。 (26) Gesetz zur Verbesserung der Rechtsstellung von asylsuchenden und geduldeten Ausländern vom 23. Dezember 2014 (BGBl. I S.2439). 外国の立法 264(2015. 6) 69 特集:財政ガバナンス 職 業 活 動 (就 労 及 び 自 営) を 行 う こ と が で き る (滞 在 法 第 25 条 第 1 項 及 び 第 2 項)。 滞 在 法 第 2 章 第 5 節 に 規 定 す る 他 の 滞 在 許 可 を 受 け た 外 国 人 (27) 並 び に 庇 護 申 請 者 (28) 及 び 国 外 退 去 猶 予 者 の 就 労 は、 外 国 人 の 就 労 に 関 す る 命 令 (29)( 以 下 「 就 労 令 」 と い う。)の 規 定 に よ る。 就 労 令 は、 移 民 及 び 難 民 の 労 働 力 を よ り 活 用 す る た め に 2013 年 に 全 面 改 正 さ れ (30) 、 以 後、 こ れ ら の 者 の 就 労 要 件 が 緩 和 さ れ て き た。 滞 在 法 第 2 章 第 5 節 に 規 定 す る 滞 在 許 可 を 受 け た 外 国 人 は、2013 年 の 就 労 令 改 正 に よ り、 あ ら ゆ る 就 労 が 可 能 と な っ た (就 労 令 第 31 条)。 庇 護 申 請 者 及 び 国 外 退 去 猶 予 者 は、 一 定 期 間 の 滞 在 後、 就 労 が 可 能 と な る。 こ の 期 間 は、 2014 年 の 就 労 令 改 正 (31) に よ り、1 年 か ら 3 月 に 短 縮 さ れ た (就 労 令 第 32 条 第 1 項)。 こ の 期 間 の 経 過 後、 就 労 す る 際 に は、 連 邦 雇 用 庁 の 同 意 が 必 要 で あ る。 連 邦 雇 用 庁 は、 審 査 に よ り、① ド イ ツ 人 又 は EU 市 民 に よ り 当 該 求 人 を 満 た す こ と が で き な い こ と (優 先 性 審 査)、 ② ド イ ツ 人 と 同 様 の 労 働 条 件 で あ る こ と を 認 め た 場 合 に、 外 国 人 の 就 労 に 同 意 す る (滞 在 法 第 39 条)。 こ の よ う な 連 邦 雇 用 庁 の 関 与 に よ り 外 国 人 の 就 労 が 困 難 と な る 場 合 が 多 い が、 連 邦 雇 用 庁 の 関 与 要 件 も 緩 和 さ れ つ つ あ る。2013 年 の 改 正 で は、 事 業 所 の 職 業 訓 練 等 の 場 合 に は、 連 邦 雇 用 庁 の 同 意 は 不 要 と さ れ た (就 労 令 第 32 条 第 2 項)。 次 ペ ー ジ の 表 3 に、 就 労 令 の 関 連 規 定 を 掲 げ る。 (3) 家 族 呼 寄 せ 庇 護 権 又 は 条 約 に 基 づ く 保 護 を 認 定 さ れ た 外 国 人 は、 当 該 地 位 を 認 定 さ れ て か ら 3 月 以 内 に 申 請 す れ ば、 通 常 必 要 と さ れ る 要 件(生 計 が 確 保 さ れ て い る こ と 及 び 十 分 な 居 住 空 間 を 有 す る こ と)を 満 た さ な く て も、家 族 を 呼 び 寄 せ る こ と が で き る(滞 在 法 第 29 条)(32)。 庇 護 申 請 者 及 び 国 外 退 去 猶 予 者 は、 家 族 を 呼 び 寄 せ る こ と が で き な い。 (4) 統 合 講 習 統 合 講 習 は、 ド イ ツ 語、 ド イ ツ の 法 秩 序、 文 化 及 び 歴 史 を 外 国 人 に 伝 え る た め の も の で あ る (滞 在 法 第 43 条)。 庇 護 権 又 は 条 約 に 基 づ く 保 護 を 認 定 さ れ た 外 国 人 は、 統 合 講 習 に 参 加 す る 権 利 を 有 す る (滞 在 法 第 44 条 第 1 項)。 滞 在 法 第 2 章 第 5 節 に 規 定 す る 他 の 滞 在 許 可 を 受 け た 外 国 人 は、 講 習 定 員 の 範 囲 内 で 参 加 が 許 さ れ る (滞 在 法 第 44 条 第 4 項)。 し か し、 庇 護 申 請 者 及 び 国 外 退 去 猶 予 者 に は、 統 合 講 習 に 参 加 す る 権 利 が な い。(33) (27) 滞在法第 2 章第 5 節に規定する滞在資格を保有する外国人は、一定の要件(滞在法第 21 条)を満たせば、自 営も可能である。 (28) 庇護申請者については、さらに、庇護手続法第 61 条において、 「外国人は、受入施設に居住する義務を負う間、 いかなる職業にも就いてはならない。」と規定されている。 (29) Verordnung über die Beschäftigung von Ausländerinnen und Ausländern (BeschV) vom 6. Juni 2013 (BGBl. I S.1499). 就労令は、滞在法第 42 条を根拠とする連邦労働社会省の命令である。 (30) Verordnung zur Änderung des Ausländerbeschäftigungsrechts vom 6. Juni 2013 (BGBl. I S.1499). (31) Gesetz zur Einstufung weiterer Staaten als sichere Herkunftsstaaten und zur Erleichterung des Arbeitsmarktzugangs für Asylbewerber und geduldete Ausländer vom 31. Oktober 2014 (BGBl. I S.1649). (32) 滞 在 法 第 2 章 第 5 節 の 規 定 に よ り 滞 在 許 可 を 受 け た 外 国 人 で、 庇 護 権 又 は 条 約 に 基 づ く 保 護 を 認 定 さ れ た 以 外 の も の に は、 別 の 要 件 が 定 め ら れ て い る。 詳 細 は、 次 の 資 料 を 参 照。Deutsches Rotes Kreuz, Familienzusammenführung: Rechtsgrundlagen für die Einreise und den Aufenthalt in Deutschland, 2008.〈https://www.drkwb.de/download-na.php?dokid=15374〉 (33) 統合講習への参加の権利を有する者の対象を拡大しようとする動きがある。Entwurf eines Gesetzes zur Öffnung der Integrationskurse für EU-Bürgerinnen und EU-Bürger, Ausländerinnen und Ausländer mit humanitären, völkerrechtlichen oder politischen Aufenthaltserlaubnissen sowie für Flüchtlinge im laufenden Asylverfahren und Geduldete (BR-Drucksache 756/13). 70 外国の立法 264(2015. 6) ドイツにおける難民に関する立法動向―人間の尊厳にふさわしい待遇を目指して― 表 3 就労令の関連規定 国外退去強制を 庇護申請者 猶予された者 適法な滞在(注1) の経過期間 (就労が可能となる までの待機期間) 可能な就労 4か月目~ 初日~ 国外退去強制を猶予された者・庇護申請者 4か月目~ 4か月目~ 16か月目~ 49か月目~ 滞在法第 2 章 第 5 節に規定 する滞在許可 を受けた 外国人 ・ 外国の高等学校修 ・ 他のあらゆ ・ あらゆる就 ・ あらゆる就 ・ あらゆる就 ・ 事業所の職業訓練 労 労 労 ・ 社会活動ボランティア役 了者は、人材不足 る就労 務 / 連邦ボランティア役務 の分野(自然科学、 ( た だ し、 ( た だ し、 ( パ ー ト タ ・ 学 校 及 び EU 助 成 プ ロ グ 数学、工学、医師、 パートタイ パートタイ イム及び派 IT 技術者)におい ム及び派遣 ム及び派遣 遣労働が可 ラムにおける実習 ・ 国内の高等学校修了者は、 て、 年 収3万 7128 労 働 は 不 労 働 は 不 能となる) 可) 可) ユーロ以上のとき その資格に応じた就労 ・ 外国の高等学校修了者は、・ 国 内 の2年 以 上 の 年収4万7600 ユーロ以上の 職 業 訓 練 修 了 者 ときに、その資格に応じ は、その資格に応 じた就労 た就労 ・ 自営業において、同居の ・ 連邦雇用庁が人材 不足を確認した分 家族の雇用 野において、外国 の職業訓練でドイ ツと同等と認めら れるものを修了し た者は、その資格 に応じた就労 ・ 外国の職業資格を 認定するために必 要な有期実習 第32条第5項 第32条第3項 第2号(注2) 根拠規定 第32条第2項 第32条第5項 第1号(注2) 第32条第1項 連邦雇用庁の同意 × ○ ○ ○ × × 優先性審査 × × ○ × × × 労働条件審査 × ○ ○ ○ × × 第31条 *いずれの場合も、外国人官庁に就労許可申請を行う必要がある。 *国外退去強制を猶予された者で、庇護申請者給付法に基づく給付を受給する目的で入国したものには、就労は許 可されない(第 33 条)。 注 1:「適法な滞在」とは、許可若しくは猶予された滞在又は滞在承認を受けた滞在である。 注 2: 2014 年 11 月 11 日から 2017 年 11 月 10 日までの時限規定である。 出典 : Gemeinnützige Gesellschaft zur Unterstützung Asylsuchender e.V. のウェブサイトを参照して筆者作成。〈http:// ggua.de/fileadmin/downloads/tabellen_und_uebersichten/Zugang_zu_Arbeit_mit_Duldung_November_2014.pdf〉 Ⅲ 庇護申請者に対する給付 庇護権又は条約に基づく保護を認定された外国人及び国外退去強制が禁止された外国人 は、 ド イ ツ 人 と 同 じ 社 会 給 付 を 受 け る こ と が で き る の に 対 し、 庇 護 申 請 者 は、 庇 護 申 請 者 給 付 法 に 基 づ く 給 付 を 受 け る。 庇 護 申 請 者 給 付 法 に 基 づ く 主 な 給 付 に は、 基 礎 給 付 (庇 護 申 請 者 給 付 法 第 3 条。 以 下、こ の 章 に お い て 条 番 号 を 掲 げ る 場 合 に は、同 法 の 条 項 を 指 す。) 及 び 病 気 の 場 合 等 の 給 付 (第 4 条 及 び 第 6 条) が あ る。 基 礎 給 付 は、 現 物 給 付 と 金 銭 給 付 の 組 合 せ で あ る。 金 銭 給 付 の 額 は 1993 年 以 来 据 え 置 か れ、 社 会 扶 助 に お け る 支 給 額 よ り 約 40% も 低 い 水 準 で あ っ た。2012 年 7 月 18 日、 連 邦 憲 法 裁 判 所 は、 金 銭 給 付 に つ い て、 人 間 の 尊 厳 に ふ さ わ し い 最 低 限 度 の 生 活 を 保 障 す る も の で な け れ ば な ら な い と 判 示 し た。 こ の 判 決 を 受 け、 外国の立法 264(2015. 6) 71 特集:財政ガバナンス 庇 護 申 請 者 給 付 法 は 2014 年 に 改 正 さ れ (34) 、2015 年 3 月 1 日 か ら 施 行 さ れ て い る (第 12 条 に 係 る 改 正 の み 2016 年 1 月 1 日 施 行)。 改 正 後 の 金 銭 給 付 額 は、 社 会 扶 助 に お け る 支 給 額 の 約 90% と な っ た (35) 。 以 下 に、 同 法 の 概 要 を 紹 介 す る。 1 受給権者 庇 護 申 請 者 給 付 法 に 基 づ く 給 付 を 受 け る 権 利 を 有 す る の は、 庇 護 申 請 者 の ほ か、 国 外 退 去 猶 予 者 及 び 一 時 的 に 滞 在 を 許 可 さ れ た 他 の 外 国 人 で あ る。 ま た、 こ れ ら の 者 の 配 偶 者 及 び 未 成 年 の 子 も 給 付 を 受 け る こ と が で き る (第 1 条)。 一 定 期 間 ド イ ツ に 滞 在 し、 こ の 間 に 給 付 を 濫 用 し な か っ た 外 国 人 は、 社 会 法 典 第 12 編 に基づく社会扶助 (36) の 給 付 の 請 求 権 を 有 す る (第 2 条 第 1 項)。 従 来、 こ の 待 機 期 間 は 4 年 で あ っ た が、 改 正 に よ り、15 月 に 短 縮 さ れ た。 2 基礎給付 基 礎 給 付 に は、 受 入 施 設 に 宿 泊 す る 場 合 (第 3 条 第 1 項) の 給 付 と、 受 入 施 設 以 外 で 宿 泊 す る 場 合 (第 3 条 第 2 項) の 給 付 が あ る。 (1) 受 入 施 設 に 宿 泊 す る 場 合 の 給 付 栄 養、宿 泊、暖 房、衣 服、健 康 管 理、耐 久 消 費 財 等 に 係 る 必 要 需 要 (37) については現物が 給付され、日常生活の個人的な欲求(現金需要)を充足するために、金銭給付が保障される (38)。 (2) 受 入 施 設 以 外 で 宿 泊 す る 場 合 の 給 付 受 入 施 設 に お い て は 現 物 で 支 給 さ れ る 栄 養、 衣 服、 健 康 管 理、 家 庭 用 耐 久 消 費 財 等 に 係 る 必 要 需 要 に つ い て、 従 来、 現 物 給 付 に 代 え て 金 銭 給 付 や 商 品 券 を 保 障 す る こ と も で き る と さ れ て い た が、改 正 (39) に よ り、金 銭 給 付 が 現 物 給 付 に 優 先 す る と さ れ た (40) 。日常生活の 個 人 的 な 欲 求 を 充 足 す る た め の 金 銭 給 付 も、 引 き 続 き 保 障 さ れ る。 宿 泊、 暖 房 及 び 家 財 に 係 る 必 要 需 要 に つ い て は、 別 途、 現 物 又 は 金 銭 に よ る 給 付 が あ る (41) 。 (34) Gesetz zur Änderung des Asylbewerberleistungsgesetzes und des Sozialgerichtsgesetzes vom 10. Dezember 2014 (BGBl. I S.2187). (35) 州及び地方自治体の難民受入に伴う財政負担を軽減するため、連邦は、州及び地方自治体に対し、2015 年 及び 2016 年に各 5 億ユーロの財政支援を行うことを約束した。„Bund und Länder fassen wichtige Beschlüsse, “ 2014.12.11. 政府ウェブサイトを参照。〈http://www.bundesregierung.de/Content/DE/Artikel/2014/12/2014-12-09-treffenregierungschefs-bkin.html〉 (36) 社会扶助は、①一時的に稼得能力を有しない 65 歳未満の者、② 65 歳以上の高齢者及び 18 歳以上の長期 完全稼得能力減少者を対象とした最低生活保障制度である。齋藤純子「最低生活水準とは何か―ドイツの場合 ―」『レファレンス』728 号, 2011.9, p.119 を参照。〈http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3050701_po_072807. pdf?contentNo=1&alternativeNo=〉 (37) 衣食住等、最低限の生活に必要な物質的な需要をいう。 (38) この金銭給付は最低限の社会文化的な生活を保障するためのもので、 「小遣い」とも呼ばれている。Bundesamt für Migration und Flüchtlinge, Die Organisation der Aufnahme und Unterbringung von Asylbewerbern in Deutschland, 2013, S.24.〈http://www.bamf.de/SharedDocs/Anlagen/DE/Publikationen/EMN/Nationale-Studien-WorkingPaper/emn-wp55organisation-und-aufnahme-asylbewerber.pdf?__blob=publicationFile〉 (39) 前掲注 (26) に掲げる法律。近年、費用上の理由から金銭給付を優先する州が増えており、この事情を反映し たものである。BT-Drucksache 18/3144, S.16. (40) これらの需要につき、金銭給付と現物給付のどちらが実際に保障されるかは、州により異なる。ibid. (41) 共同宿泊施設が提供される場合には現物給付となり、民間の賃貸住宅の場合には金銭給付となる。どちら が優先されるかは州や自治体により異なる。詳細は、Kay Wendel, Unterbringung von Flüchtlingen in Deutschland: Regelungen und Praxis der Bundesländer im Vergleich, Pro Asyl, 2013 を参照。〈http://www.proasyl.de/fileadmin/fm-dam/ NEWS/2014/Laendervergleich_Unterbringung_2014-09-23_01.pdf〉 72 外国の立法 264(2015. 6) ドイツにおける難民に関する立法動向―人間の尊厳にふさわしい待遇を目指して― 基 礎 給 付 の 概 要 は、 次 の 表 4 の と お り で あ る。 表 4 基礎給付の概要 食事・衣服・健康管理 宿泊・暖房・家具 個人的な欲求を満たすため の給付 現物給付 現物給付 金銭給付 現物又は金銭による給付 金銭給付 受入施設に居住する場合 他の施設に居住する場合 金銭給付が現物給付に優先 出典:筆者作成。 基 礎 給 付 に お け る 金 銭 給 付 の 額 は、 次 の 表 5 の と お り で あ る。 表 5 基礎給付における金銭給付の額(ユーロ / 月) 単身者 成人 2 人が 共同で世帯 を営む場合 1 人につき 他の成人 第3条第1項に 規定する現金需要 140 126 111 83 90 82 第3条第2項に 規定する必要需要 212 190 170 194 154 130 合計 352 316 281 277 244 212 青少年 児童 児童 (14 歳以上 (6 歳以上 (6 歳未満) 18 歳未満) 14 歳未満) 出典:筆者作成。 ま た、改 正 (42) に よ り、児 童 及 び 青 少 年 は、教 育 並 び に 社 会 的 及 び 文 化 的 な 生 活 に 参 加 す る た め の 給 付 を 追 加 的 に 受 け る こ と に な っ た (第 3 条 第 3 項)。 3 病 気 の 場 合 等 の 給 付 急 性 疾 患、 急 性 痛 の 治 療 の た め に、 医 薬 品 及 び 包 帯 類 の 支 給 並 び に 病 気 の 回 復、 改 善 又 は軽減に必要な医師の診察が保障される (43) 。 歯 科 医 師 の 診 察 は、医 学 上 の 理 由 か ら こ れ を 延 期 す る こ と が で き な い 場 合 に 限 り 保 障 さ れ る (第 4 条)。 そ の 他、 個 別 の 場 合 に お い て、 生 計 の 維 持 又 は 健 康 の 保 障 に 必 要 不 可 欠 な 場 合 に は、 官 庁 の 裁 量 に よ り 必 要 な 給 付 が 保 障 さ れ る (第 6 条)。 おわりに 以 上 の よ う に、 ド イ ツ で は、 難 民 及 び 庇 護 申 請 者 の 法 的 地 位 が 改 善 さ れ つ つ あ り、1980 年代以降の抑制的な難民政策 (44) か ら 統 合 的 な 難 民 政 策 へ の 転 換 が 行 わ れ て い る。 し か し、 他 方 で、 増 大 す る 難 民 に 対 し て 不 満 や 反 感 を 持 つ 市 民 も 増 え て い る。 受 入 施 設 (42) 前掲注 (34) に掲げる法律。 (43) 一部の州(ブレーメン及びハンブルク)では、庇護申請者に電子健康保険カードが配布されている。庇護 申請者は、このカードで普通に通院することができる。費用は、州の負担となる。ほかに、この制度の導入を 検討している州もある。„Bund und Länder verhandeln über Gesundheitskarte für Asylbewerber “ 2015.1.6 Zeit Online Website を参照。 〈http://www.zeit.de/hamburg/aktuell/2015-01/06/fluechtlinge-bund-und-laender-verhandeln-ueber-gesundh eitskarte-fuer-asylbewerber-06145013〉 (44) 1970 年代から 1980 年代の難民政策の動きについては、昔農英明『「移民国家ドイツ」の難民庇護政策』慶應 義塾大学出版会, 2014, pp.42-45 を参照。 外国の立法 264(2015. 6) 73 特集:財政ガバナンス に お け る 襲 撃 や 暴 行 事 件 が 頻 発 し (45)、近 隣 に お け る 受 入 施 設 建 設 に 反 対 す る 住 民 運 動 (46)、難 民政策全般に対する大規模なデモも多発している (47) 。難 民 及 び 庇 護 申 請 者 の 法 的 地 位 の 改 善 に 併 せ て、 市 民 の 多 文 化 共 生 の 意 識 を ど の よ う に 醸 成 す る か が 今 後 の 大 き な 課 題 と な る で あ ろ う。 ま た、2015 年 に 入 り、バ ル カ ン 半 島 の コ ソ ボ か ら の 庇 護 申 請 者 が 激 増 し て お り ボ も 「安 全 な 出 身 国」 に 加 え る べ き だ と 主 張 す る 州 が 増 え て い る 約 50 万 人 の 難 民 が ド イ ツ に 来 る の で は な い か と も 言 わ れ て い る (49) (50) (48) 、コ ソ 。 さ ら に、2015 年 に は 。政 情 不 安 で 貧 し い 国 か ら 豊 か な 国 へ の 人 の 流 れ は、 と ど ま る こ と の な い 状 態 と な っ て い る。 今 後 の 法 制 面 で の 動 き が 注 目 さ れ る。 (わ た な べ ふ く こ) (45) 右翼による 2014 年第 2 四半期の難民宿泊施設に対する反対運動及び襲撃事件については、BT-Drucksache. 18/2284 を参照。宿泊施設の警備員による難民への暴行事件も報道されている。„Mehr Wachleute unter Verdacht, “ Frankfurter Rundschau, 30. September 2014, S.2f. (46) „Protest gegen Asylbewerber: Dresdner verhindern Einrichtung eines Flüchtlingsheims, “ 2015.1.14. Spiegel Online Website を参照。 〈http://www.spiegel.de/politik/deutschland/protest-gegen-asylbewerber-in-dresden-verhindert-fluechtlingsh eim-a-1012846.html〉 (47) 東部ザクセン州のドレスデンを中心に、 「西欧のイスラム化に反対する欧州愛国主義者(Pegida)」(Patriotische Europäer gegen die Islamisierung des Abendlandes)及び類似のグループが、2014 年秋以降、ドイツ各地でデモを繰 り広げている。2015 年 2 月に入り、デモ参加者の減少傾向が見られている。 „Anti-Islam-Bewegung: Pegida verliert dramatisch an Rückhalt, “ 2015.2.6. Spiegel OnlineWebsite を参照。 〈http://www.spiegel.de/politik/deutschland/pegida-zahlder-demonstranten-in-leipzig-berlin-und-schwerin-sinkt-a-1017122.html〉 (48) „Sehnsuchtsort Deutschland, “ Süddeutsche Zeitung, 14./15. Februar 2015, S.1. コソボからの庇護申請件数は、2014 年の一月あたり平均 744 件であったが、2015 年 1 月は 3,630 件であった。 (49) „Länder preschen in Flüchtlingsfrage vor, “ Frankfurter Rundschau, 13. Februar 2015, S.5. (50) „Umgang mit Migranten, “ Frankfurter Rundschau, 8. Mai 2015, S.6. 74 外国の立法 264(2015. 6) ドイツにおける難民に関する立法動向―人間の尊厳にふさわしい待遇を目指して― 表 6 難民に関する最近の法令 施行日 法令名 主な内容 Verordnung zur Änderung des Ausländerbeschäftigungsrechts vom 6. Juni 2013 (BGBl. I S.1499) 2013.7.1 就労令の全面改正。滞在法第2 章第5 節に規定する滞在許可を受けた外国人、国外退去猶予者及び庇護 申請者の就労要件の緩和。 Gesetz zur Einstufung weiterer Staaten als sichere Herkunftsstaaten und zur Erleichterung des Arbeitsmarktzugangs für Asylbewerber und geduldete Ausländer vom 31. Oktober 2014 (BGBl. I S.1649) 2014.11.6 2014.11.11 庇 護 申 請 に 係 る 手 続 期 間 を 短 縮 す る た め の 庇 護 手 続 法 附 則 Ⅱ の 改 正( マ ケ ド ニ ア 旧 ユ ー ゴ ス ラ ビ ア 共 和 国、セ ル ビ ア、及 び ボ ス ニ ア・ヘ ル ツ ェ ゴ ビ ナ を「 安 全 な 出 身 国 」に 追 加 )。 ( 注1) 国外退去猶予者及び庇護申請者が就労可能となるまでの待機期間を1 年から3 月に短縮するための就 労令第32 条の改正。 Zweite Verordnung zur Änderung der Beschäftigungsverordnung vom 6. November 2014 (BGBl. I S.1499) 国外退去猶予者及び庇護申請者の就労要件を緩和するための就労令第32 条の改正。 Gesetz über Manßnahmen im Bauplanungsrecht zur Erleichterung der Unterbringung von Flüchtlingen vom 20. November 2014 2014.11.26 難民宿泊施設の建設を容易にするための建設法典第246 条の改正。 2015.1.1 2015.3.1 Gesetz zur Verbesserung der Rechtsstellung von asylsuchenden und geduldeten Ausländern vom 23. Dezember (BGBl. I S.2439) 国外退去猶予者及び庇護申請者の滞在場所の制限を緩和するための滞在法及び庇護手続法の関連規 定の改正。 Gesetz zur Änderung des Asylbewerberleistungsgesetzes und des Sozialgerichtsgesetzes vom 10. Dezember 2014 (BGBl. I S.2187) 庇護申請者に対する金銭給付を改善するための庇護申請者給付法第3 条の改正。 2015.3.1 Gesetz zur Verbesserung der Rechtsstellung von asylsuchenden und geduldeten Ausländern vom 23. Dezember (BGBl. I S.2439) 庇護申請者に対する給付の原則を現物給付優先から、金銭給付優先へ変更するための庇護申請者給付 法第3 条の改正。 Entwurf eines Gesetzes zur Neubestimmung des Bleiberechts und der Aufenthaltsbeendigung (BT-Drucksache 現在議会で 18/4097) 審議中 残留権利及び滞在終了に関する新たな規定を設けるための滞在法の関連規定の改正。 2015 年9 月 Zahlungskontengesetz に連邦政府 決定予定 難民及び庇護申請者による銀行口座の開設を容易にするための法律(注2) 注 1: 庇護申請に係る手続期間の短縮のためには、連邦移民難民庁の職員を 2014 年に 300 人、2015 年に 350 人増 強する措置もとられている。この結果、2014 年 7 月の平均手続期間は 7.7 か月であったが、同年 12 月には 5.7 か月となった。連邦政府は、手続期間を最終的に 3 か月にすることを目標としている。 注 2: „Bald Bankkonten für Flüchtlinge,“ Frankfurter Rundschau, 2. Februar 2015, S.6. 出典 : 筆者作成。 外国の立法 264(2015. 6) 75 特集:財政ガバナンス 庇護申請者給付法 Asylbewerberleistungsgesetz (AsylbLG) 国立国会図書館 調査及び立法考査局 海外立法情報課 渡辺 富久子 第 1 条 給付を受ける権利を有する者 (1) こ の 法 律 に 基 づ き 給 付 を 受 け る 権 利 を 有 す る の は、 実 際 に 連 邦 領 域 に 滞 在 す る 外 国 人 で、 次 の 各 号 に 掲 げ る も の と す る。 1. 庇 護 手 続 法 に 基 づ き、[ 庇 護 手 続 期 間 の 特 別 な ] 滞 在 承 認 を 受 け た 外 国 人 2. 空 港 経 由 で 入 国 し よ う と す る 外 国 人 で、 入 国 を 許 可 さ れ な い も の 又 は 未 だ 許 可 さ れ ていないもの 3. 次の滞在許可を受けた外国人 a ) 出 身 国 に お け る 戦 争 を 理 由 と し た 滞 在 法 第 23 条 第 1 項 (1) 又 は 第 24 条 (2) に 規 定 す る 滞在許可 b ) 滞 在 法 第 25 条 第 4 項 第 1 文 c ) 滞 在 法 第 25 条 第 5 項 (4) (3) に規定する滞在許可 に 規 定 す る 滞 在 許 可 で、国 外 退 去 強 制 の 一 時 的 停 止 に 関 す る 決 定 後 18 月 を 経 過 し て い な い 場 合 (5) の規定により [ 国外退去強制を ] 猶予された外国人 4. 滞 在 法 第 60a 条 5. 出 国 義 務 の 履 行 が 強 制 可 能 な 外 国 人。 国 外 退 去 の 催 告 が 未 だ 執 行 可 能 で な い 場 合 又 は も は や 執 行 可 能 で な い 場 合 を も 含 む。 6. 第 1 号 か ら 第 5 号 ま で に 掲 げ る 者 の 配 偶 者、 人 生 パ ー ト ナ ー 又 は 未 成 年 の 子。 こ れ ら の 者 自 ら が 当 該 各 号 に 掲 げ る 要 件 を 満 た さ な い 場 合 を も 含 む。 7. 庇 護 手 続 法 第 71 条 の 規 定 に よ る 再 申 請 [Folgeantrag] 定 に よ る 第 二 次 申 請 [Zweitantrag] (7) (6) 又 は 庇 護 手 続 法 第 71a 条 の 規 を行った外国人 (2) 第 1 項 に 掲 げ る 外 国 人 は、 第 1 項 第 3 号 に 掲 げ る 滞 在 許 可 と は 別 の 滞 在 資 格 (8) で、 総 有 効 期 間 が 6 月 を 超 え る も の を 受 け て い る 間 は、 こ の 法 律 に 基 づ き 給 付 を 受 け る 権 利 を * この翻訳は、連邦法務省と Juris の共同法律データベースである Gesetze im Internet の Asylbewerberleistungsgesetz in der Fassung der Bekanntmachung vom 5. August 1997 (BGBl. I S.2022), das zuletzt durch Artikel 3 des Gesetzes vom 23. Dezember 2014 (BGBl. I S.2439) geändert worden ist を訳出したものである。〈http://www.gesetze-im-internet.de/ bundesrecht/asylblg/gesamt.pdf〉インターネット情報は、2015 年 3 月 2 日現在のものである。ただし、イタリック 体で示した第 12 条の改正箇所は 2016 年 1 月 1 日施行であるため、BT-Drucksache 18/2592, S.12f を参照した。訳 文中 [ ] 内の語句は、原綴も含め、訳者が補ったものである。 (1) 滞在法第 23 条第 1 項は、州の最高官庁は、国際法上若しくは人道上の理由から又はドイツの政治的利益の保 護のために、特定国出身の外国人又は特定の外国人集団に対し、滞在許可を与えるよう命ずることができる旨を 定めている。 (2) 滞在法第 24 条は、指令 2001/55/EC に基づく欧州連合理事会の議決に基づいて一時的保護を保障され、連邦領 域に受け入れられる意思を表明した外国人は、当該一時的保護の期間、滞在許可を与えられる旨を定めている。 (3) 滞在法第 25 条第 4 項は、緊急の人道上若しくは個人的理由又は重大な公共の利益のために、連邦領域におけ る一時的な滞在がさらに必要とされる外国人で、出国義務の履行を強制できないものには、一時的滞在のための 滞在許可を与えることができる旨を定めている。 (4) 滞在法第 25 条第 5 項は、出国義務の履行が強制可能な外国人であって、その出国が法律上又は事実上の理由 により不可能であり、かつ、出国の障害の除去が近い将来に予見することができない者には、滞在許可を与える ことができる旨を定めている。国外退去強制が 18 月以上一時停止(猶予)されている場合には、長期の滞在と なる可能性が高いため、庇護申請者給付法に基づく給付は正当化されない。BT-Drucksache 18/2592, S.17f. (5) 滞在法第 60a 条は、事実上又は法律上の理由により国外退去強制が不可能である外国人には、国外退去強制を 一時停止しなければならない旨を定めている。 (6) 再申請とは、庇護申請の撤回後、又は先の庇護申請の拒否が確定した後に、外国人が行う新たな庇護申請である。 (7) 第二次申請とは、他の EU 加盟国において庇護申請が拒否された場合に、当該外国人がドイツにおいて行う庇 護申請である。 (8) 滞在法が定める滞在資格(Aufenthaltstitel)には、①ビザ、②滞在許可、③定住許可、④ EC 継続滞在許可がある。 76 外国の立法 264(2015. 6) 国立国会図書館調査及び立法考査局 庇護申請者給付法 有 し な い。 (3) 給 付 を 受 け る 権 利 は、 出 国 を も っ て 又 は 次 の 各 号 に 掲 げ る 月 の 経 過 を も っ て 終 了 す る。 1. 受給要件を満たさなくなった月 2. 連邦移民難民庁が当該外国人に庇護権を認定した月又は裁判所が連邦庁に対して認 定 を 義 務 付 け た 月。 後 者 の 場 合、 決 定 が 未 だ 確 定 し て い な い 場 合 を も 含 む。 第 1a 条 請 求 権 の 制 限 第 1 条第 1 項第 4 号及び第 5 号に規定する受給権者並びに第 1 条第 1 項第 6 号に規定 す る 受 給 権 者 で、 第 1 条 第 1 項 第 4 号 及 び 第 5 号 に 掲 げ る 者 の 家 族 で あ る も の は、 こ れ ら の 者 が 次 の 各 号 に 掲 げ る い ず れ か で あ る 場 合 に は、 個 別 の 状 況 に 鑑 み て [ 官 庁 が ] 給 付 を 拒 否 す る こ と が で き ず、 必 要 な 場 合 に 限 り、 こ の 法 律 に 基 づ く 給 付 を 受 け る。 1. この法律に基づく給付を受給するためにこの法律の適用領域に入った受給権者 2. 自己の責めに帰すべき理由により滞在終了の措置をとることができない受給権者 第 2 条 特別な場合における給付 (1) 15 月 以 上 大 き な 中 断 な く 連 邦 領 域 に 滞 在 し、滞 在 の 間 給 付 を 濫 用 し な か っ た 受 給 権 者 に は、第 3 条 か ら 第 7 条 ま で の 規 定 に か か わ ら ず、社 会 法 典 第 12 編 (9) を準用しなければ な ら な い。 (2) 第 1 項 に 規 定 す る 受 給 権 者 が 共 同 宿 泊 施 設 に 宿 泊 し て い る 場 合 に は、 所 轄 の 官 庁 は、 地 域 の 事 情 に 鑑 み て 給 付 の 形 態 を 決 定 す る。 (3) 両 親 又 は 一 方 の 親 と 同 居 す る 未 成 年 の 子 は、 同 居 の 一 方 の 親 の み が 第 1 項 に 規 定 す る 給 付 を 受 け る 場 合 で あ っ て も、 第 1 項 に 規 定 す る 給 付 を 受 け る。 第 3 条 基礎給付 (1) 庇 護 手 続 法 第 44 条 に い う 受 入 施 設 に 宿 泊 す る 場 合 に お い て は、栄 養、宿 泊、暖 房、衣 服、 健康管理並びに家庭用耐久消費財及び非耐久消費財に係る必要需要 (10) に つ い て は、現 物 を 給 付 す る。 衣 服 を 給 付 す る こ と が で き な い 場 合 に は、 商 品 券 又 は 他 の 類 似 の 現 金 以 外 の 精 算 手 段 に よ り こ れ を 保 障 す る こ と が で き る。 家 庭 用 耐 久 消 費 財 は、 貸 与 す る こ と が で き る。 受 給 権 者 は、 さ ら に、 日 常 生 活 の 個 人 的 な 欲 求 (現 金 需 要) を 充 足 す る た め に、 毎 月 一 定 額 の 金 銭 給 付 を 受 け る。 次 の 各 号 に 掲 げ る 受 給 権 者 の 現 金 需 要 は、 当 該 各 号 に 掲 げ る と お り と す る。 1. 単 身 者 140 ユ ー ロ 2. 共 同 で 世 帯 を 営 む 成 人 2 人 1 人 に つ き 126 ユ ー ロ 3. 自 ら の 世 帯 を 有 さ な い 他 の 成 人 1 人 に つ き 111 ユ ー ロ 4. 14 歳 以 上 18 歳 未 満 の 青 少 年 83 ユ ー ロ 5. 6 歳 以 上 14 歳 未 満 の 児 童 90 ユ ー ロ 6. 6 歳 未 満 の 児 童 82 ユ ー ロ 国 外 退 去 強 制 の た め の 勾 留 又 は 未 決 勾 留 中 の 受 給 権 者 の 各 々 の 現 金 需 要 は、 当 該 需 要 の 全 部 又 は 一 部 が 他 の 方 法 に よ り 賄 わ れ る 場 合 に は、 所 轄 の 官 庁 が 定 め る。 (2) [ 受 給 権 者 が ] 庇 護 手 続 法 第 44 条 (11) に い う 受 入 施 設 以 外 で 宿 泊 す る 場 合 に は、 第 4 文 (9) 社会法典第 12 編は、社会扶助制度を定める法律である。社会扶助は、①一時的に稼得能力を有しない 65 歳未 満の者、② 65 歳以上の高齢者及び 18 歳以上の長期完全稼得能力減少者を対象とした最低生活保障制度である。 齋藤純子「最低生活水準とは何か―ドイツの場合―」『レファレンス』728 号, 2011.9, p.119. を参照。〈http://dl.ndl. go.jp/view/download/digidepo_3050701_po_072807.pdf?contentNo=1&alternativeNo=〉 (10) 衣食住等、最低限の生活に必要な物質的な需要をいう。 (11) 庇護手続法第 44 条は、州に対して、庇護希望者の宿泊のための受入施設の設置及び運営を義務付けている。 外国の立法 264(2015. 6) 77 特集:財政ガバナンス の 規 定 を 別 と し て、 第 1 項 第 1 文 に 規 定 す る 必 要 需 要 を 充 足 す る た め に、[ 当 該 受 給 権 者 に 対 し て ] 金 銭 給 付 を 優 先 的 に 保 障 し な け れ ば な ら な い。 次 の 各 号 に 掲 げ る 受 給 権 者 の 必 要 需 要 は、1 月 に つ き、 当 該 各 号 に 掲 げ る と お り と す る。 1. 単 身 者 212 ユ ー ロ 2. 共 同 で 世 帯 を 営 む 成 人 2 人 1 人 に つ き 190 ユ ー ロ 3. 自 ら の 世 帯 を 有 さ な い 他 の 成 人 1 人 に つ き 170 ユ ー ロ 4. 14 歳 以 上 18 歳 未 満 の 青 少 年 194 ユ ー ロ 5. 6 歳 以 上 14 歳 未 満 の 児 童 154 ユ ー ロ 6. 6 歳 未 満 の 児 童 130 ユ ー ロ 状 況 に 応 じ て 必 要 な 場 合 に は、 必 要 需 要 を 充 足 す る た め に、 金 銭 給 付 に 代 え て、 現 金 以 外 の 精 算 手 段、 商 品 券 又 は 現 物 給 付 の 形 態 で 給 付 を 保 障 す る こ と が で き る。 宿 泊、 暖 房 及 び 家 財 道 具 に 係 る 需 要 に は、 別 途、 金 銭 給 付 又 は 現 物 給 付 を 支 給 す る。 第 1 項 第 3 文 か ら 第 6 文 ま で の 規 定 を 準 用 し な け れ ば な ら な い。 (3) 児 童、青 少 年 及 び 年 長 青 少 年 (12) に つ い て は、第 1 項 又 は 第 2 項 に 規 定 す る 給 付 の ほ か に、 教 育 並 び に 共 同 社 会 に お け る 社 会 的 及 び 文 化 的 な 生 活 へ の 参 加 の た め の 需 要 を、 社 会 法 典 第 12 編 第 34 条、 第 34a 条 及 び 第 34b 条 (13) の 規 定 に 準 じ て 別 途 考 慮 す る。 (4) 第 1 項 第 5 文 及 び 第 6 文 に 規 定 す る 現 金 需 要 並 び に 第 2 項 第 2 文 に 規 定 す る 必 要 需 要 は、 社 会 法 典 第 12 編 第 40 条 第 1 文 第 1 号 に 規 定 す る 命 令 と 関 連 す る 社 会 法 典 第 12 編 第 28a 条 (14) に 規 定 す る 改 定 率 に 準 じ、毎 年 1 月 1 日 に 見 直 さ れ る。 算 出 し た 額 に 1 ユ ー ロ 未 満 の 端 数 が あ る 場 合 に は、 そ の 端 数 を 四 捨 五 入 す る。 連 邦 労 働 社 会 省 は、 毎 年 11 月 1 日 ま で に、 翌 年 に 効 力 を 有 す る 各 需 要 の 額 を 連 邦 法 律 公 報 に お い て 公 示 す る。 (5) 連 邦 の 所 得 ・ 消 費 抽 出 調 査 の 結 果 が 新 た に 発 表 さ れ た と き に は、 現 金 需 要 及 び 必 要 需 要 を 新 た に 決 定 す る。 (6) 金 銭 給 付 又 は 金 銭 的 価 値 を 有 す る 給 付 は、 受 給 権 者 又 は [ 受 取 り の ] 権 利 を 有 す る 成 人 の 世 帯 員 に 対 し て 対 面 で 手 渡 す も の と す る。 第 4 条 病 気、 妊 娠 及 び 出 産 に 係 る 給 付 (1) 急 性 疾 患 及 び 急 性 痛 の 治 療 の た め に、 医 薬 品 及 び 包 帯 類 の 支 給 並 び に 病 気 又 は 予 後 の 回 復、 改 善 又 は 軽 減 に 必 要 な 他 の 給 付 を 含 む 医 師 及 び 歯 科 医 師 に よ る 治 療 を 保 障 し な け れ ば な ら な い。 歯 科 医 師 に よ る 診 察 は、 個 別 の 場 合 に お い て、 医 学 上 の 理 由 か ら こ れ を 延 期 す る こ と が で き な い 場 合 に 限 り 行 う。 (2) 妊 婦 及 び 産 褥 期 の 女 性 に は、 医 師 及 び 介 護 士 に よ る 支 援 及 び 世 話、 助 産 師 に よ る 支 援 並 び に 医 薬 品、 包 帯 類 及 び 治 療 剤 を 保 障 し な け れ ば な ら な い。 (3) 所 轄 の 官 庁 は、 公 に 推 奨 さ れ た 予 防 接 種 及 び 医 学 上 必 要 な 健 康 診 断 を 含 む 医 師 及 び 歯 科 医 師 に よ る 診 察 を 保 障 す る。 開 業 医 又 は 開 業 歯 科 医 に よ る 給 付 が 行 わ れ た 場 合 に は、 報 酬 は、 当 該 医 師 又 は 歯 科 医 が 開 業 す る 地 域 で 適 用 さ れ る 契 約 で、 社 会 法 典 第 5 編 第 72 条 第 2 項 (15) の 規 定 に よ る も の に 基 づ く。 所 轄 の 官 庁 は、 適 用 す る 契 約 を 決 定 す る。 (12) 年長青少年は、18 歳以上 25 歳未満。 (13) 社会法典第 12 編(社会扶助法)第 34 条(教育及び参加に係る需要)、第 34a 条(教育及び参加のための給付)、 第 34b 条(事後申請)。 (14) 社会法典第 12 編第 28a 条は、生活扶助制度における区分ごとの基準需要の改定を定めている。 (15) 社会法典第 5 編第 72 条第 2 項は、医療サービスは、保険医団体と疾病金庫連盟が結ぶ契約により、その内容 を定める旨を定めている。 78 外国の立法 264(2015. 6) 庇護申請者給付法 第 5 条 労働の機会 (1) 庇 護 手 続 法 第 44 条 に い う 受 入 施 設 及 び 類 似 の 施 設 に お い て は、 特 に 施 設 の 維 持 及 び 運 営 の た め に、 労 働 の 機 会 を 提 供 す る も の と す る。 た だ し、 受 給 権 者 の 自 活 の 義 務 は、 労 働 の 機 会 の 提 供 の 影 響 を 受 け な い。そ の 他、労 働 を 用 意 で き な い で あ ろ う 場 合 又 は [ 労 働 の ] 量 若 し く は [ 提 供 の ] 時 期 に 鑑 み て 十 分 に 用 意 で き な い で あ ろ う 場 合 に は、 労 働 の 機 会 は、 可 能 な 限 り、 州、 地 方 自 治 体 及 び 公 益 団 体 に お い て 提 供 す る も の と す る。 (2) 第 1 項 第 1 文 前 段 及 び 第 1 項 第 2 文 (16) に 規 定 す る 受 給 権 者 の 労 働 に 対 し て は、1 時 間 に つ き 1.05 ユ ー ロ の 経 費 補 償 [Aufwandsentschädigung] を 支 払 う。 (3) 労 働 の 機 会 は、[ 受 給 権 者 が ] 労 働 を 期 待 可 能 な 方 法 で、 か つ、 少 な く と も 時 間 単 位 で 行 う こ と が で き る よ う に、 そ の 時 間 及 び 場 所 を 設 定 し な け れ ば な ら な い。 (4) 就 労 能 力 を 有 す る が 稼 得 活 動 を 行 っ て い な い 受 給 権 者 で、 義 務 教 育 の 年 齢 を 超 え た も の は、 提 供 さ れ た 労 働 を 行 う 義 務 を 負 う。[ 受 給 権 者 が ] そ の よ う な 労 働 従 事 を 理 由 な く 拒 否 し た 場 合 に は、 こ の 法 律 に 基 づ く 給 付 を 請 求 す る こ と が で き な い。 受 給 権 者 に は、 事 前 に そ の 旨 を 教 示 し な け れ ば な ら な い。 (5) [ 当 該 労 働 は、] 労 働 法 に い う 労 働 関 係 並 び に 法 定 疾 病 保 険 及 び 法 定 年 金 保 険 に い う 雇 用 関 係 で は な い。 庇 護 手 続 法 第 61 条 第 1 項 (17) の規定並びに稼得活動の禁止及び制限に 関 す る 難 民 法 及 び 外 国 人 法 の 義 務 は、 第 1 項 か ら 第 4 項 ま で に 規 定 す る 活 動 を 妨 げ な い。 労 働 保 護 に 関 す る 規 定 及 び 被 用 者 の 損 害 賠 償 責 任 の 制 限 に 関 す る 原 則 を 準 用 す る。 第 6 条 その他の給付 (1) 特 に、 個 別 の 場 合 に お い て 生 計 又 は 健 康 の 保 障 の た め に 必 要 不 可 欠 で あ る 場 合 又 は 児 童の特別な欲求を満たすため若しくは行政法に基づく協力義務の遂行に必要不可欠な場 合 に は、 そ の 他 の 給 付 を 保 障 す る こ と が で き る。 給 付 は、 現 物 給 付 に よ り 保 障 し な け れ ば な ら ず、 特 別 な 事 情 が あ る 場 合 に は 金 銭 給 付 に よ り 保 障 し な け れ ば な ら な い。 (2) 滞 在 法 第 24 条 第 1 項 に 規 定 す る 滞 在 許 可 を 受 け、 特 別 な 欲 求 が あ る 者、 例 え ば 親 の い な い 未 成 年 者 又 は 拷 問、 強 姦 若 し く は 他 の 形 態 の 心 理 的、 身 体 的 若 し く は 性 的 な 暴 力 を 受 け た 者 に は、 必 要 な 医 療 支 援 又 は そ の 他 の 支 援 を 保 障 す る。 第 6a 条 他 の 者 の 経 費 の 弁 済 緊 急 の 場 合 に お い て、 第 3 条、 第 4 条 及 び 第 6 条 に 規 定 す る 給 付 を 適 時 に 開 始 し た 場 合 に は 行 う こ と が で き な か っ た で あ ろ う 給 付 を 他 の 者 に 行 っ た 者 に は、 こ の 者 が 法 的 又 は 倫 理 的 な 義 務 に 基 づ き 当 該 経 費 を 自 ら 負 担 す る 必 要 が な い 場 合 に は、 必 要 な 範 囲 で 経 費 を 弁 済 し な け れ ば な ら な い。 こ れ は、 適 切 な 期 間 内 に 庇 護 申 請 者 給 付 法 の 所 轄 機 関 に 経 費 の 弁 済 の 申 請 が あ っ た 場 合 に 限 り 適 用 す る。 第 6b 条 給 付 の 開 始 第 3 条、 第 4 条 及 び 第 6 条 に 規 定 す る 給 付 の 開 始 時 期 の 決 定 に は、 社 会 法 典 第 12 編 第 18 条 (18) の 規 定 を 準 用 し な け れ ば な ら な い。 第 7 条 所得及び財産 (1) こ の 法 律 に 基 づ く 給 付 は、[ 受 給 権 者 が ] 自 由 に 使 う こ と の で き る 所 得 及 び 財 産 が 受 (16) 第 5 条第 1 項の原文では、この翻訳の第 1 文及び第 2 文が一続きの第 1 文となっている。よって、「第 1 項第 1 文前段及び第 1 項第 2 文」とは、この翻訳の第 1 文及び第 3 文を指す。 (17) 庇護手続法第 61 条第 1 項は、受入施設に居住する義務を負う外国人は、いかなる稼得活動も行ってはならな い旨を定めている。 (18) 社会法典第 12 編第 18 条は、社会扶助の運営主体が、申請者が給付の要件を満たすことを確認した後直ちに、 社会扶助の給付が開始される旨を定めている。 外国の立法 264(2015. 6) 79 特集:財政ガバナンス 給 権 者 及 び 同 居 の 家 族 に よ り 使 い 果 た さ れ て い る 場 合 に 開 始 さ れ る。 社 会 法 典 第 12 編 第 20 条 (19) の 規 定 を 準 用 す る。[ 受 給 権 者 が ] 現 物 給 付 が 保 障 さ れ る 施 設 に 宿 泊 す る 場 合 に お い て、 第 1 文 に い う 所 得 及 び 財 産 が あ る と き に は、 自 ら 及 び 家 族 が 受 給 し た 給 付 に つ い て、 第 3 条 第 2 項 第 2 文 に 掲 げ る 給 付 額 の 費 用 並 び に 宿 泊 及 び 暖 房 の 費 用 を、 費 用 負 担 者 に 対 し て 弁 済 し な け れ ば な ら な い。 州 は、 宿 泊 及 び 暖 房 の 費 用 の 概 算 額 を 定 め る か、 又 は 所 轄 の 官 庁 に こ れ を 授 権 す る こ と が で き る。 (2) 次 の 各 号 に 掲 げ る も の は、 第 1 項 に 規 定 す る 所 得 と み な し て は な ら な い。 1. この法律に基づく給付 2. 連邦戦争犠牲者援護法及び連邦戦争犠牲者援護法の準用を定める法律に基づく基礎 年金 3. 生 命、 身 体 又 は 健 康 に 係 る 損 害 に 対 す る 連 邦 補 償 法 に 基 づ く 年 金 又 は 手 当 で、 連 邦 戦争犠牲者援護法に基づく類似の基礎年金の額までの部分 4. 財 産 損 害 以 外 の 損 害 を 理 由 と し て、 民 法 典 第 253 条 第 2 項 (20) の規定により行われる 補償 5. 第 5 条第 2 項に規定する経費補償 (3) 第 1 項 の 規 定 の 適 用 に 際 し、 稼 得 活 動 に よ る 収 入 の う ち の 25%、 た だ し、 最 高 で も 第 3 条第 4 項の規定と関連する第 3 条第 1 項に規定する現金需要及び第 3 条第 2 項に規定 す る 必 要 需 要 の 各 需 要 区 分 の 50% ま で は、 考 慮 し な い。 さ ら に、 第 1 項 第 1 文 に 規 定 す る 所 得 か ら、 次 の 各 号 に 掲 げ る も の を 控 除 し な け れ ば な ら な い。 1. 所得に係る税金 2. 失業保険の保険料を含む社会保険の義務的保険料 3. 公 的 保 険 若 し く は 民 間 保 険 又 は 類 似 の 制 度 へ の 保 険 料 で、 法 律 に 基 づ く も の 4. 所得を得るために必要な支出 (4) 受 給 権 者 が 他 の 者 に 対 し て 請 求 権 を 有 す る 場 合 に は、 所 轄 の 官 庁 は、 社 会 法 典 第 12 編 第 93 条 (21) を 準 用 し、[ 受 給 権 者 か ら ] 当 該 請 求 権 を 取 得 す る。 (5) 第 1 項 第 1 文 に 規 定 す る 財 産 か ら、 受 給 権 者 及 び 同 居 の 家 族 の 各 々 に つ い て、 基 礎 控 除 と し て 200 ユ ー ロ を 控 除 し な け れ ば な ら な い。 さ ら に、 第 1 項 の 規 定 の 適 用 に 際 し て、 職 業 教 育 又 は 稼 得 活 動 の 開 始 又 は 継 続 に 必 須 の 資 産 は、 考 慮 し な い。 第 7a 条 担 保 提 供 [ 受 給 権 者 に ] 第 7 条 第 1 項 第 1 文 に い う 財 産 が あ る 場 合 に は、 こ の 法 律 に 基 づ き 受 給 権 者 及 び そ の 家 族 に 保 障 す る 給 付 を 理 由 と し て、 受 給 権 者 に 対 し て 担 保 を 要 求 す る こ と が で き る。 担 保 提 供 の 命 令 は、 事 前 の 執 行 の 催 告 な し に、 直 接 強 制 の 方 法 で 行 う こ と が で き る。 第 7b 条 弁 済 社 会 法 典 第 10 編 第 50 条 (22) に か か わ ら ず、 第 2 条 及 び 第 3 条 に 規 定 す る 給 付 に お い て 考 慮 さ れ る 宿 泊 の 費 用(暖 房 及 び 温 水 供 給 の 費 用 を 除 く。)の 56% は 弁 済 す る 必 要 が な い。 第 1 文 の 規 定 は、 社 会 法 典 第 10 編 第 45 条 第 2 項 第 3 文 (23) の 場 合、 第 2 条 及 び 第 3 条 に (19) 社会法典第 12 編第 20 条は、婚姻と類似の同居パートナー又は人生パートナーの社会扶助の要件及び額を、 配偶者のそれよりもよくすることは許されない旨を定めている。 (20) 民法典第 253 条は、財産損害以外の損害に対する補償を定めている。 (21) 社会法典第 12 編第 93 条(請求権の移行) (22) 社会法典第 10 編第 50 条(不当な受給の弁済) (23) 社会法典第 10 編第 45 条第 2 項第 3 文は、違法な授益的行政行為が取り消される場合を定めている。 80 外国の立法 264(2015. 6) 庇護申請者給付法 規定する給付のほかに住宅手当法に基づく住宅手当が給付される場合又は住宅手当法第 2条 (24) に い う 住 居 に 居 住 し な い 場 合 に は、 適 用 し な い。 第 8 条 第三者が [ 外国人の生計に責任を持つ ] 義務がある場合の給付 (1) 必 要 な 生 計 を 他 の 方 法、 特 に 滞 在 法 第 68 条 第 1 項 第 1 文 (25) に規定する義務により賄 う 場 合 に は、 こ の 法 律 に 基 づ く 給 付 は 保 障 さ れ な い。 滞 在 法 第 68 条 第 1 項 第 1 文 に 規 定 す る 義 務 が あ る 場 合 に は、 所 轄 の 官 庁 は、 州 法 が 定 め る 限 り に お い て、[ 外 国 人 が ] 病 気、 障 害 及 び 要 介 護 状 態 の 場 合 の 給 付 の 費 用 を 引 き 受 け る。 (2) 第 1 条 第 1 項 に 掲 げ る 者 に 対 し て、 滞 在 法 第 68 条 第 1 項 第 1 文 に 規 定 す る 義 務 を 6 月 以 上 果 た し た 者 に は、 こ の 者 に 常 な ら ざ る 状 況 が あ り、[ こ の 者 の た め に ] 公 的 資 金 を 使 用 す る こ と が 正 当 化 さ れ る 場 合 に は、 第 3 条 第 1 項 第 4 文 に 規 定 す る 額 の 2 倍 ま で の 額 を 毎 月 の 手 当 と し て 保 障 す る こ と が で き る。 第 8a 条 届 出 義 務 非 自 営 又 は 自 営 の 稼 得 活 動 を 開 始 す る 受 給 権 者 は、 遅 く と も 稼 得 活 動 の 開 始 の 3 日 後 ま で に、 所 轄 の 官 庁 に こ れ を 届 け 出 な け れ ば な ら な い。 第 9 条 他の規定との関係 (1) 受 給 権 者 は、 社 会 法 典 第 12 編 又 は 類 似 の 州 法 に 基 づ く 給 付 を 受 け な い。 (2) 他 の 者、 特 に 扶 養 義 務 者、 社 会 給 付 の 運 営 主 体 又 は 庇 護 手 続 法 第 44 条 第 1 項 に 規 定 す る 義 務 の 枠 組 み に お け る 州 の 給 付 は、 こ の 法 律 に よ る 影 響 を 受 け な い。 (3) 社 会 法 典 第 1 編 の 受 給 権 者 の 協 力 に 関 す る 第 60 条 か ら 第 67 条 (26) までの規定を準用し な け れ ば な ら な い。 (4) 社 会 法 典 第 10 編 の 次 の 各 号 に 掲 げ る 規 定 を 準 用 し な け れ ば な ら な い。 1. 行 政 行 為 の 取 消 [Rücknahme]、 撤 回 [Widerruf] 及 び 取 消 撤 回 [Aufhebung] 並 び に 不 当 な 受 給 の 弁 済 に 関 す る 第 44 条 か ら 第 50 条 ま で の 規 定 2. 家 族、 扶 養 義 務 者 又 は 他 の 者 の 情 報 提 供 義 務 に 関 す る 第 99 条 の 規 定 3. 給 付 の 運 営 主 体 相 互 の 弁 済 請 求 権 に 関 す る 第 102 条 か ら 第 114 条 ま で の 規 定 社 会 法 典 第 10 編 第 44 条 第 4 項 第 1 文 (27) の 規 定 は、「4 年 間」 を 「1 年 間」 と 読 み 替 え て 適 用 す る。 (5) 社 会 法 典 第 12 編 第 118 条 の 規 定 及 び 社 会 法 典 第 12 編 第 120 条 第 1 項 又 は 連 邦 社 会 扶 助 法 第 117 条 に 基 づ い て 制 定 さ れ た 法 規 命 令 の 規 定 を 準 用 し な け れ ば な ら な い。 第 10 条 州 政 府 に よ る 規 定 州 政 府 又 は 州 政 府 に よ り 授 権 さ れ た 州 の 最 高 官 庁 は、 こ の 法 律 を 実 施 す る 官 庁 及 び 費 用 負 担 者 を 決 定 し、 州 法 に よ る 定 め が な い 限 り に お い て、 手 続 の 細 則 を 定 め る こ と が で き る。 決 定 さ れ た 官 庁 及 び 費 用 負 担 者 は、 第 1 文 の 規 定 に よ る 細 則 に 基 づ い て、 そ の 任 務 及 び 費 用 負 担 を 他 の 官 庁 に 委 任 す る こ と が で き る。 (24) 住宅手当法第 2 条は、住居(Wohnraum)を、当該住居の施設管理者により、居住用と指定された空間で、かつ、 その建築仕様及び設備が実際に居住にふさわしいものと定義している。 (25) 滞在法第 68 条(生計に対する責任)第 1 項第 1 文は、外国人の生計に責任を持つことを、ドイツ人が自ら義 務とした場合を定めている。 (26) 社会法典第 1 編第 60 条(事実の申告)、第 61 条(出頭)、第 62 条(調査)、第 63 条(治療)、第 64 条(労働 生活への参加のための給付)、第 65 条(協力の免除)、 第 65a 条(経費補償)、第 66 条(非協力の効果)、第 67 条(事 後の協力) (27) 社会法典第 10 編第 44 条第 4 項第 1 文は、行政行為が遡及効をもって取り消される場合には、取消前の最長 4 年間に限り、遡って社会給付が支給される旨を定めている。 外国の立法 264(2015. 6) 81 特集:財政ガバナンス 第 10a 条 所 轄 (1) こ の 法 律 に 基 づ く 給 付 の 所 轄 官 庁 は、 連 邦 内 務 省 が 決 定 し た 中 央 庇 護 希 望 者 配 分 機 関 により受給権者が配分された地域又は州の所管官庁により受給権者が割り当てられた地 域 に お い て、 第 10 条 の 規 定 に よ り 決 定 さ れ た 官 庁 と す る。 そ の 他 の 場 合 に は、 受 給 権 者 が 実 際 に 滞 在 す る 地 域 の 官 庁 が 所 轄 す る。 こ の 所 轄 は、 当 該 地 域 と は 異 な る 地 域 の 所 轄 官 庁 に よ る 給 付 が 確 保 さ れ る 場 合 に お い て も、 給 付 の 終 了 ま で 継 続 す る。 (2) 病 気 の 治 療 又 は こ の 法 律 に 基 づ く 他 の 措 置 を 行 う 施 設 に お け る 給 付 に つ い て は、 受 給 権者が [ 施設による ] 受入れの時点で通常滞在する地域又は受入れの直近 2 月の間通常 滞 在 し た 地 域 の 官 庁 が 所 轄 す る。 給 付 の 開 始 の 際 に、 受 給 権 者 が 第 1 文 に い う 施 設 か ら 他の施設若しくは当該施設からさらに別の施設へ移送されていた場合又は給付の開始後 に そ の よ う な こ と が あ っ た 場 合 に は、 最 初 の 施 設 に と っ て 基 準 と な る 滞 在 地 を 通 常 の 滞 在 地 と 決 定 す る。 第 1 文 及 び 第 2 文 の 規 定 に よ り 通 常 の 滞 在 地 を 4 週 間 以 内 に 決 定 す る こ と が で き な い 場 合 又 は 緊 急 の 場 合 に は、 第 1 項 に 規 定 す る 所 轄 官 庁 が 給 付 に つ い て 遅 滞 な く 決 定 し、 暫 定 的 な 措 置 を と ら な け れ ば な ら な い。 第 1 文 か ら 第 3 文 ま で の 規 定 は、 裁 判 所 が 命 じ た 自 由 刑 を 執 行 す る た め の 施 設 に 滞 在 す る 者 又 は 滞 在 し た 者 に も 適 用 す る。 (3) あ る 者 が あ る 場 所 に 滞 在 し、 そ の 事 情 か ら、 当 該 場 所 又 は 地 域 に 一 時 的 で な く 滞 在 し て い る と 認 め る こ と が で き る 場 合 に は、 当 該 場 所 を こ の 法 律 に い う 通 常 の 滞 在 地 と み な す。 最 初 か ら 時 間 的 に 6 月 以 上 連 続 し た 滞 在 も、 通 常 の 滞 在 地 と み な さ な け れ ば な ら な い。 短 期 の 中 断 は 考 慮 し な い。 訪 問、 気 分 転 換、 療 養 又 は 他 の 私 的 な 目 的 の た め の 滞 在 で あ っ て、1 年 未 満 の も の に は、第 2 文 の 規 定 を 適 用 し な い。第 1 項 第 1 文 の 規 定 に よ り [ 地 域 が ] 配 分 又 は 割 り 当 て ら れ た 場 合 に は、 当 該 地 域 を 通 常 の 滞 在 地 と す る。 新 生 児 に つ い て は、 母 の 通 常 の 滞 在 地 を 基 準 と す る。 第 10b 条 費 用 負 担 者 相 互 の 費 用 弁 済 (1) 第 10a 条 第 2 項 第 1 文 に 規 定 す る 所 轄 官 庁 は、 第 10a 条 第 2 項 第 3 文 の 規 定 に よ り 給 付 を 行 っ た 官 庁 に 生 じ た 費 用 を 弁 済 し な け れ ば な ら な い。 (2) 第 10a 条 第 2 項 の 場 合 に お い て、 受 給 権 者 が 施 設 を 退 院 し、 そ の 後 1 月 以 内 に、 当 該 施 設 が あ る 地 域 の 所 轄 官 庁 に お い て こ の 法 律 に 基 づ く 給 付 を 請 求 す る 場 合 に は、 当 該 官 庁 は、 第 10a 条 第 2 項 第 1 文 に 規 定 す る 受 給 権 者 の 通 常 の 滞 在 地 の 所 轄 官 庁 か ら、 こ の た め の 費 用 の 弁 済 を 受 け な け れ ば な ら な い。 (3) (削 除) 第 11 条 補 則 (1) こ の 法 律 に 基 づ く 給 付 の 際 に は、 受 給 権 者 に 保 障 す る こ と が で き る 既 存 の 帰 還 プ ロ グ ラ ム 及 び 第 三 国 再 定 住 プ ロ グ ラ ム (28) か ら の 給 付 を 教 示 し な け れ ば な ら な い。適 切 な 場 合 に お い て は、[ 受 給 権 者 が ] そ の よ う な プ ロ グ ラ ム を 請 求 す る よ う 働 き か け な け れ ば な ら な い。 (2) 受 給 権 者 が 庇 護 法 又 は 外 国 人 法 に 基 づ く 滞 在 場 所 の 制 限 に 反 し て、 ド イ ツ 連 邦 共 和 国 内 の [ 許 可 さ れ て い な い ] 地 域 に 滞 在 す る 場 合 に は、[ 当 該 受 給 権 者 の ] 実 際 の 滞 在 地 の 所 轄 官 庁 は、 状 況 に 鑑 み て 拒 否 す る こ と が で き ず、 必 要 な 支 援 に 限 っ て 行 う こ と が 許 さ (28) 第三国定住とは、 「すでに母国を逃れて難民となっているが、一次避難国では保護を受けられない人を他国(第 三国)が受け入れる制度」である。難民支援教会ウェブサイトを参照。〈https://www.refugee.or.jp/refugee/rst.shtml〉 第三国定住による難民の受入れは、難民の自発的帰還及び第一次庇護国への定住と並ぶ難民問題の恒久的解決策 の一つである。 『第三国定住による難民の受入れの実施について』 (平成 26 年 1 月 24 日、閣議了解)を参照。 〈http:// www.cas.go.jp/jp/seisaku/nanmin/pdf/140124ryoukai.pdf〉 82 外国の立法 264(2015. 6) 庇護申請者給付法 れ る。 (3) 所 轄 官 庁 は、 こ の 法 律 に 基 づ く 給 付 を 受 け る 者 の デ ー タ を 外 国 人 官 庁 が 有 す る 当 該 者 の デ ー タ と 照 合 し て 審 査 す る。 所 轄 官 庁 は、 第 1 文 に 規 定 す る 照 合 の た め に、 当 該 者 の 姓、 名 (呼 名)、 出 生 年 月 日、 出 生 地、 国 籍、 性 別、 家 族 構 成、 住 所、 滞 在 法 上 の 地 位 及 び 滞 在 期 間 を 所 轄 の 外 国 人 官 庁 に 伝 達 す る こ と が で き る。 外 国 人 官 庁 は、 第 2 文 の 規 定 に よ り 伝 達 さ れ た デ ー タ と の 照 合 を 行 い、 照 合 の 結 果 を 所 轄 官 庁 に 伝 達 す る。 外 国 人 官 庁 は、 さ ら に、 第 2 文 に 掲 げ る デ ー タ に 変 更 が あ っ た 場 合 に は、 所 轄 官 庁 に 対 し て こ れ を 伝 達 す る。 照 合 は、 自 動 的 な デ ー タ 照 合 に よ り 定 期 的 に 行 う こ と が で き る。 第 12 条 庇 護 申 請 者 給 付 統 計 (1) こ の 法 律 の 影 響 を 判 断 す る た め に 及 び 法 律 の 見 直 し の た め に、 連 邦 統 計 と し て、 次 の 各 号 に 掲 げ る 事 項 の 調 査 を 行 う。 1. 次の給付の受給者 a ) 特 別 な 場 合 に お け る 給 付 (第 2 条) b ) 基 礎 給 付 (第 3 条) c ) 他 の 給 付 (第 4 条 ~ 第 6 条) 2. こ の 法 律 に 基 づ く 支 出 及 び 収 入 (2) 調 査 項 目 は、 次 の 各 号 に 掲 げ る と お り と す る。 1. 第 1 項 第 1 号 a 及 び b に 規 定 す る 調 査 に お い て は、 次 の と お り と す る。 a ) 各 受 給 者 に つ い て、 性 別、 出 生 年 月、 国 籍 及 び 滞 在 法 上 の 地 位 b ) 第 2 条 に 規 定 す る 受 給 者 に つ い て は、 さ ら に、 給 付 の 種 類 及 び 形 態 並 び に 基 準 需 要区分 (29) c ) 第 3 条 に 規 定 す る 受 給 者 に つ い て は、 さ ら に、 基 礎 給 付 の 形 態 及 び 第 3 条 第 1 項 第 5 文第 1 号から第 6 号までに規定する区分 d ) 世 帯 及 び 個 別 の 受 給 者 に つ い て、 居 住 す る 自 治 体 及 び そ の 地 区、 実 施 者 の 種 類、 宿 泊 の 種 類、 給 付 の 開 始 年 月 並 び に 使 用 し た 所 得 及 び 財 産 の 種 類 及 び 額 e ) 社 会 法 典 第 12 編 第 34 条 か ら 第 34b 条 と 関 連 す る 第 2 条 及 び 第 3 条 第 3 項 に 規 定 する教育及び参加のための給付の受給者については、 次の区分ごとの給付額 aa) 小中高生及び託児施設に通う児童の遠足 bb) 小中高生及び託児施設に通う児童の修学旅行 c c) 学校のための必要品 dd) 小中高生の助成 e e) 学習の助成 f f ) 学校並びに託児施設及び託児ケアにおける給食のための追加費用 gg) 共同社会における社会的及び文化的な生活への参加 f ) (廃 止) g ) 年 末 の 調 査 に 際 し て は、a か ら d ま で に 掲 げ た 項 目 に 加 え て、 当 該 年 及 び 当 該 年 終了時点におけるこの法律に基づく他の給付の種類及び形態並びに稼得活動への参 加 (29) 第 12 条の中で、イタリック体の箇所は 2016 年 1 月 1 日施行である。 外国の立法 264(2015. 6) 83 特集:財政ガバナンス 2. 第 1 項 第 1 号 c に 規 定 す る 調 査 に お い て は、各 受 給 者 に つ い て、性 別、出 生 年 月、国 籍、 滞 在 法 上 の 地 位、 当 該 年 及 び 当 該 年 終 了 時 点 に お け る 給 付 の 種 類 及 び 形 態、 第 3 条 第 1 項第 5 文第 1 号から第 6 号までに規定する受給者の区分、居住する自治体及びその 地 区、 実 施 者 の 種 類 並 び に 宿 泊 の 種 類 2a. (削 除) 3. 第 1 項 第 2 号 に 規 定 す る 調 査 に お い て は、 実 施 者 の 種 類、 給 付 の 種 類 及 び 形 態 並 び に宿泊形態別の支出並びに収入の種類及び宿泊形態別の収入 (3) 補 助 的 調 査 項 目 は、 次 の 各 号 に 掲 げ る と お り と す る。 1. 情報提供義務者の氏名及び住所 2. 第 2 項 第 1 号 に 規 定 す る 調 査 の た め に、 受 給 者 の 識 別 番 号 3. 再度の照会が可能な者の氏名及び電話番号 (4) 第 2 項 第 1 号 a か ら d ま で 及 び g 並 び に 第 2 項 第 2 号 及 び 第 3 号 に 規 定 す る 調 査 は、 毎 年 実 施 し な け れ ば な ら な い。 次 の 各 号 に 規 定 す る 調 査 に 対 す る 回 答 は、 当 該 各 号 に 定 め る と お り に 提 出 し な け れ ば な ら な い。 a ) 第 2 項 第 1 号 a か ら d ま で 及 び g(実 績 統 計) 12 月 31 日 ま で b ) (廃 止) c ) (廃 止) d ) 第 2 項第 2 号及び第 3 号 前年実績について (5) 第 2 項 第 1 号 e に 規 定 す る 調 査 は 四 半 期 ご と に 実 施 し な け れ ば な ら ず、 そ の 際、 性 別、 出 生 年 月、 居 住 す る 自 治 体 及 び そ の 地 区、 国 籍 並 び に 滞 在 法 上 の 地 位 を 調 査 し な け れ ば ならない。 その際、 四半期の各月の個別の給付額も、 調査しなければならない。 (6) 調 査 に 対 し て は、 情 報 を 提 供 す る 義 務 を 負 う。 第 3 項 第 1 文 第 3 号 に つ い て の 記 載 並 び に 第 2 項 第 1 号 d、 第 2 項 第 2 号及び第 5 項 に 規 定 す る [ 居 住 す る ] 自 治 体 の 地 区 に つ い て の 記 載 は 任 意 と す る。 情 報 提 供 義 務 を 負 う の は、 こ の 法 律 の 実 施 の 所 轄 機 関 と す る。 (7) 庇 護 申 請 者 給 付 統 計 の 結 果 は、 自 治 体 ご と に 区 分 し て 公 表 す る こ と が で き る。 第 13 条 過 料 規 定 (1) 第 8a 条 の 規 定 に 違 反 し て、故 意 又 は 過 失 に よ り 届 け 出 な か っ た 者、正 し く 届 け 出 な か っ た 者、 完 全 に 届 け 出 な か っ た 者 又 は 適 時 に 届 け 出 な か っ た 者 は、 秩 序 違 反 と す る。 (2) 秩 序 違 反 の 者 は、5 千 ユ ー ロ 以 下 の 過 料 に 処 す る こ と が で き る。 第 14 条 2015 年 の 金 銭 給 付 額 の 改 定 に 係 る 経 過 規 定 第 3 条 第 1 項 第 5 文 及 び 第 2 項 第 2 文 に 規 定 す る 額 は、2015 年 に つ い て は、 社 会 法 典 第 12 編 第 40 条 第 1 文 第 1 号 に 規 定 す る 命 令 と 関 連 す る 社 会 法 典 第 12 編 第 28a 条 に 規 定 す る 改 定 率 に 準 じ、 改 定 す る。 連 邦 労 働 社 会 省 は、 改 定 後 の 額 を 連 邦 法 律 公 報 に お い て 公 示 す る。 (わ た な べ ふ く こ) 84 外国の立法 264(2015. 6)
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