からだと こころの健康 6 いのちを育む食事のあり方 株式会社ナチュラル・ハーモニー 代表取締役 河名秀郎 本来の食とは何か? 本来の食材とは何か? からだとこころが喜ぶ食事のあり方を五感で感じとる力、五感力に基づいて“いのちを育む食事の あり方”を考えます。 人は本来どういうものを食べればいいのか 昔から「身土不二」 と言われるように、その土地の 人の健康を観るには、 その土地の “土” を観ればわか るのです。病んでいる土からは、病んでいる食物がで きます。 人間の体も土の塊りだと思い始め、 そこには自然の 法則があるだろうと考え、 この仕事に取り組みました。 自然の野菜は、 ほって置くと枯れますが、人間が介在 した農産物は腐ります。 トロトロになり悪臭を発します。 腐るってどういうことでしょう。腐るような食物を食べて いていいのでしょうか。私たちは “枯れる野菜づくり” に 挑戦しています。 おかげで病気もしないし、薬も飲みま せん。食べ物って本来、命をはぐくむ一番大切なもの であるべきです。 経済第一主義が生んだ “ツケ” “旬” という言葉も消え、一年中トマトやキュウリやナ スが食べられる便利な時代ですが、そのために多く の化学肥料や農薬が使われ、食品添加物をはじめ 衣・食・住全般に数万種といわれる化学物質が使われ、 体は有害物質を解毒できずキャパシティーオーバーに なり、 ちょっと体に入っただけでも湿疹やアレルギー、 ま たは「化学物質過敏症」 という病気が年々増えていま す。例えば、味噌は1年がかりで発酵菌が作りだす栄 養価に富んだ食品ですが、今や数カ月で作られる加 工食品となり “味噌っぽいもの” が普及しています。食 の多くが本質から外れ経済第一主義で作られている のです。 二人に一人が、 ガンになり国民の半数が半健康人 といわれ、成人病が生活習慣病になり国民医療費が 税収を上まわりそうな時代です。 なぜこうまで病人が 増えるのか、 その原因を追求し、病気にならない生活、 ライフスタイルを実践することが求められています。 病気を遠ざける “食材” づくり 2004年のOECD主要国の農薬(活性成分)投入 量のデータを見ると、使用量第一位が韓国で日本、 ベ 16 ルギー、 オランダ、 フランスと続きます。薬を使う量が “病 んでいる” 証拠で、私たちは日々薬に依存した、病んだ 食材を摂っていることになります。 自然に育まれた良い 食材を食べている人は、本来、便もおならもさほど臭 わないものです。 クサイのは、食材や腸内環境のせい だと思います。 世界で経験したことのない超高齢社会が進む日本 では、元気で生涯を全うするために、良い食材を供給 することが求められます。 「まごころ館」は、農薬を使わない強い野菜、 自立し た野菜や食材を食べていただくようにいたします。 まず、 施設の農園は地力を高めるために一年間は、土づくり で土の養生をし、その間は成田や佐倉で自然野菜を 作る仲間の力も借りて安全な野菜をお届けします。 健康で安全な野菜たち 大きくいえば「有機野菜」 もこれからの時代に合っ ている食材のひとつです。菌や雑草や虫との戦いは ありますが、 それに勝つ野菜が強く良い食材です。栄 養を土に入れすぎると成長は早いが、副作用もあり虫 や病原菌も出ます。肥料がききすぎると、 こうした作用 反作用が起きる悩ましさがあります。 例えば、除草剤をつかい菌を殺そうとすると虫も菌 も段々強くなり耐性菌が出るように、 イタチごっこになり ます。薬で戦うことには限界があるのです。要は、菌や 草や虫と戦うのではなく、 どうすれば仲良くなれるか 「手を結ぶ」 ことが必要なのです。 結果の効果・効能を求める農業は、短期的にはあ るかも知れませんが、長期的にはマイナスの要素の方 が多いのです。 これまでの経済第一主義は「より早く より沢山!」がテーマであり、その結果が腐る野菜だっ たのです。 私たちは、 スピードが緩く、量が少なくても自然本来 の “命を第一” に捕える、大地からの適性に合った食 材づくりを目指しています。 〔プロフィール〕 1958年東京生まれ。國學院大学卒業後、自然食品関係の仕事に従事するが「もっと自然に近づきたい」と脱サラし、千葉県 の自然栽培農家で研修を経て、ナチュラル・ハーモニーを設立。自然栽培野菜の販売をはじめ、衣食住におけるナチュラルラ イフを提案。自然栽培農産物だけを取り扱う個人宅配「ハーモニック・トラスト」や「ナチュラル&ハーモニックスクール」 を開校。自然の摂理から学ぶ生き方、暮らし方の普及に力を注いでいる。 命を尊重し大自然に合わせた農業 高齢社会とは私たちが一生懸命生きて来た “証” で すが、気が付けばいつの間にか化学物質に囲まれ生 活を強いられている異常さ、不自然さを感じます。百 歳で現役医師・日野原先生が常々、人の一生は「ピン ピンコロリ」 と言われるように、 これからは自然界の生 物と同じように “枯れて死ぬ” 大往生のシナリオが大切 です。 二つの大根があります。 ・葉も少なく、色も薄く淡く見える大根(A) ・葉が多く、緑も濃く立派な大根(B) 一見、 ( B)が良い大根に思えますが、 2回の農薬と 肥料で作られ、 いわば “延命”手当を受けて育った大 根で、 自立できない食材です。 ( A)の方は、淡くてたよ りない色ですが、肥料を使わずに育てた大根で、 これ が自然界の色なのです。 ( B)の濃い緑はチッ素肥料 過多の色なのです。育つ期間も、10日ほどの違いもあ り、 (A) は大地にしっかり長く根を下し、大地の栄養分 と調和して育っているのです。 ( B)の大根は10日でド ロドロになり、悪臭をはなちます。 ( A)は腐ることもなく 乳酸菌が働いて “漬物” になります。 これが自然界の 摂理です。 (B) は、 “見せかけの大根” なのです。 ・柿の腐敗実験 果物でも同じです。農薬や殺虫剤で育てた柿と自 然のままで育った柿をビンに入れて10日間程置くと大 根同様、一方は腐敗します。雑菌や腐敗菌が入ってく るのでしょう。一方は発酵してお酒になり、柿酒ができ ます。 どちらも菌が作用します。人間は自然界の菌を 自分たちの都合で悪い菌、良い菌と決めつけられま すか。人間が勝手に有害菌と呼ぶ菌も自然界のなか では、地球のために人間の後始末をしている菌なの かも知れません。人工的に作られた腐敗する食材が 私たちの体と連動しているのです。 自然の摂理に叶っ た “本モノ” の農業、 “本モノ” の食材を使いましょう。 自然と調和する職場づくりを目指して 肥料や農薬を使った “ブドウ” は、 自然にワインになる ことはほとんどありません。やはり腐ってしまうのです。 化学培養された菌を添加して発酵させ防腐剤で延 命した “もどきワイン” が現代のワインづくりです。 どうか、本モノの食べ物は腐らないこと、腐るのでは なく “枯れる” ことを検証してください。例えば、 キューリ は枯れると、 ほのかなバナナの香りがします。菌に悪い も良いもありません。 その食材に命があるかどうかが大 切なのです。利用者の皆さんの健康は、 同時にその職 場で働く皆さんが誰よりも 「元気」で健康であってほし いと願っています。 私たちは、 これからも肥料や農薬づけの「野菜」で はなく、 自然界と調和した本来の「野菜」食材を作りま す。 「まごころ館」の地で、皆さんや地域の人たちととも に、作り、食べ、 自然と調和した暮らしと職場づくりを一 緒に目指してまいります。 (A)葉も少なく、色も薄く淡く見える大根 (B)葉が多く、緑も濃く立派な大根 10日間置いた柿の腐敗実験の図 左 : 自然のままで育った柿 右 : 農薬や殺虫剤で育てた柿 17
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