「本人評価の文化」確立のための提案(3 月会議を経て) 京都で始まった本人評価は、認知症の本人が「10 のアイメッセージ」というアウトカム 指標をもとに政策評価を行う試みである。認知症の人に対するニーズ調査と異なる最大の 特徴は「評価可能性」が問われることであろうか。日本では初めての試みであり、まだ確 立した方法論は存在しない。そういう意味では、本人評価は前人未到の領域にあると言っ てもよいかもしれない。私たちは、2018 年 3 月の最終年評価に向けてその方法論を確立し ていく作業を開始した。この文書は、現時点での京都の到達点を明示するとともに、2018 年 3 月に向けた課題を整理した上でまとめられた提案である。全体は二部構成になってお り、最初に 2015 年 2 月 1 日の「第 3 回京都式認知症ケアを考えるつどい」に提出した試案 (採択文書「本人評価の文化」確立に向けて~認知症の人からみた 22 の評価項目~、8 頁 に収載)を再掲し、その後に 3 月の実行員会での議論を経てまとめられた「3 月会議を終え ての提案」を書き加えている。つまり、この文書は独立したものではなく、2 月 1 日の採択 文書と一対のものである。 Ⅰ. 2 月 1 日時点での中間的試案(再掲) 【最終年の本人評価の進め方】 本人評価については、今回の試行的調査を通して様々な課題が抽出されており、それを 踏まえた上で最終年の本人評価の方法を確定する。 【本人評価、2015 年 2 月 1 日時点での提案】 ポイントは、 「認知症の人からみた 22 項目」をもとに「評価マニュアル」を作成し、調 査協力者(評価支援者)に「研修」を行うことにより、評価の信頼性を高めることである。 その作業自体が、アイメッセージと本人評価の文化を京都全体に浸透させることにもなる。 また、調査協力者(評価支援者)が評価マニュアルに基づいて本人評価を担うという方 法は、2000 年から始まっている「介護保険の要介護認定場面」における「調査マニュアル」 と「認定調査員研修」を通して、既に馴染みのある手法であり、行政的にもイメージが容 易であろう。ただし、ここでいう調査協力者(評価支援者)とは、先にあげた「補助自我 としての調査協力者(評価支援者) 」のことである。(*「補助自我概念」については、採 択文書―「本人評価の文化」確立に向けてーから引用し、この章の最後に付記する。 ) ただ、2015 年 2 月 1 日時点では、まだ作業の途上であったことから、本人評価について は以下のようなアウトラインを示すだけに留め、具体的な方法、手順等については、3 月中 1 に実行委員会にて議論(3 月会議)し、その後につどいホームページ上で公表することとし た。 ≪検討を要する本人評価の方法≫ 1. 評価調査票(工夫された表現を用いた評価項目)の決定 2. 調査協力者(評価支援者)に向けた「認知症の人からみた 22 項目」を踏まえた評価マニ ュアルの作成 3. 分析方法(定量的評価)の検討 4. 調査協力者(評価支援者)と評価対象者の選出について *【採択文書からの引用:補助自我という概念】 安易に「本人評価はできる」とする楽観論も、最初から「本人評価は無理」とする悲観 論も、認知症の人の実際の姿からは遠いものです。この二分法からの離陸の鍵を握るのが 「補助自我」という概念でしょうか。小澤勲が死の床で言葉にしたものですが、その構成 要件として、①生きる意欲を育てる、②認知症を生きる不自由を知る、③絶対の信頼関係、 を挙げています。小澤は、専門職の役割として②に焦点をあてています。認知症の人の生 活場面での不自由を知るということと、22 項目の評価場面で認知症の人が直面する不自由 を知るということは同値です。補助自我のサポートがあれば、認知症があっても活き活き と生活できるように調査も可能になります。今回設定している「調査協力者」 (評価支援者) がこの補助自我に該当します(これはまた、共感性をもった「間主観性」あるいは「二人 称による参画」などと呼ばれるケアの在り方と同じです)。もちろん、MCI とごく軽度の認 知症の人だけをピックアップし、さらに調査項目をセレクトすれば補助自我のサポートな しに調査は可能かもしれません。しかし、調査対象を中等度までとするのであれば補助自 我は必須です。それはまた、認知症の人たちがどのような世界を求めているのかというこ とへの探求の歩みを進めることでもあります。 Ⅱ. 3 月会議を終えての提案 3 月会議では、つどいホームページ上で公表するとした≪検討を要する本人評価の方法≫ に記した「4 つの宿題」について検討を行うとともに、今回の試行調査を通して抽出された 課題を踏まえて、2015 年度中に本人評価二回目の試行調査を行うことについても議論され た。最初に「4 つの宿題」について議論のポイントを整理し、最後に二回目の本人評価試行 に関連した提案を行う。 2 □ ≪検討を要する本人評価の方法≫(4 つの宿題) 1. 評価調査票(工夫された表現を用いた評価項目)の決定 今回の試行調査における評価調査票が、 「10 のアイメッセージの本人評価」という本体部 分以外に、調査協力者に記入を求めた DASC(地域包括ケアシステムにおける認知症アセ スメントシート)等の認知機能評価や性別・年齢などの調査に参加する本人の背景情報(客 観情報)を含んだように、最終年調査での調査票も以下の二つの要素から構成される。 ①「10 のアイメッセージ本人評価」本体部分(工夫された表現を用いた評価項目)の作成 今回の試行調査においても認知症の本人が答えやすいよう工夫がなされ 22 項目からなる 調査票が作成された。その過程は「この 10 のアイメッセージをそのまま使うことは、認知 症を持つ当事者には大変答えるのが困難であることが予備調査で明らかになった。理由の 第一は、ひとつのセンテンスに複数のテーマが盛り込まれており、一文としての評価が難 しいこと、第二は同じ困難が評価に協力していただく支援者の方にも当てはまることであ る。このための対策として、10のアイメッセージを 22 の比較的単純な一文に分解し、こ れに“そう思う” 、 “少しそう思う” 、 “そう思わない”の三段階でお答えいただく形式にし た」 (辻評価調査報告)とまとめられている。 そうしてスタートした試行調査であったが、87 人の認知症の本人を対象にして調査を行 ってみると、 「語句や言い回しの一部には、調査対象者の日常生活とは乖離しているものが 多く見られ、聞き取りの中で言い換えや補足説明が必要になる」といった課題が浮上して きた。もちろん表現方法をどのように工夫したとしても認知症のステージによっては回答 が困難な項目は残り、さらにはステージを問わず何らかの援助を必要とするとの認識を前 提にしていたが、それでもできる限り認知症の人が答えやすい調査票を作成することの必 要性が痛感された。そこで実行委員会の中にワーキングチームが結成され、その作業は「ア イメッセージ最終年評価に向けて~調査項目の検討~(途中報告版) 」としてまとめられた。 3 月会議では、これまでの議論を止揚する新しい調査票が検討された。そのポイントは、 「アイメッセージを細分化した 22 項目はアイメッセージごとにまとめ、その連関を見やす くしたこと」 、 「そう思う、少しそう思う、そう思わないという選択肢を、yes or no の二択 に変更したこと」 、 「 22 項目は yes or no の代わりに裏の命題(問いに対する否定的見解を 具体的な言葉で記述する)を併記し、そのどちらかを選ぶ形にしたこと」、 「左側の“表の 命題”を選べば、3 点、右側の“裏の命題”を選べば-3 点、どちらでもない場合は 0 点と して数量化したこと」と整理できる。それによって、具体的なイメージを想起しずらかっ たり想像力を駆使して対立する命題を比較することが難しい認知症の人をサポートし、同 時に調査協力者による支援も定式化できるようにとの工夫である。 3 現在の案をもとに 2015 年度中に本人評価二回目の試行を行い、その総括を踏まえて 2018 年に向けた最終案を決定する。 ② 本人の客観情報(データ収集) 今回の試行調査でも、調査協力者(評価支援者)に対する調査として、DASC(地域包括 ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)による認知機能評価、性別・年齢・居 住二次医療圏域などの個人情報、調査協力者からみた本人および家族の回答能力、調査協 力者と本人との関係、調査協力者と家族との関係等についてデータを収集している。 3 月会議では、上記に加えて、発病年齢の特定、発病してからの期間、認知症の告知の有 無、利用してきたサービスの内容(実際の支援のありよう) 、同居者の有無を含む家族構成 と家族の状況についても必要性が議論された。いずれも本人評価に影響を与える要因であ り、また本人評価の妥当性(たとえば本当に若年性認知症か否かの特定)をスクリーニン グする上で必要となる情報である。 追加項目として検討された具体的ツール等には、以下のようなものがある。 ○ 情報共有シート(基本情報) 発病年齢、罹病期間、告知の有無を含む ○ 認知症ケアパス概念図に掲載されているサービス類型の一覧表(○で選択) ○ DASC に加えて Zarit 介護負担尺度日本語版 8 項目(J-ZBI_8) ○ 本人同士のピアサポートの有無、家族同士のピアサポートの有無 ○ 評価に対する、本人・家族・調査協力者のコメント 2. 調査協力者(評価支援者)に向けた評価マニュアルの作成 「調査協力者」 (評価支援者)が補助自我の機能を果たすためには、まずは認知症の人た ちにとって 22 項目はどう映るのかを言葉にしなければならない。それを果たそうとしたの が「認知症の人からみた 22 項目」である。それと新しい「本人評価調査票」をもとに「評 価マニュアル」を作成し、評価支援者が補助自我の機能を果たすためのアルゴリズムとし たい。 2015 年度中に行う本人評価二回目の試行までに「評価マニュアル」を完成させ、その使 い勝手を検証した上で、最終年評価に向けた「評価マニュアル」を完成させる。 3. 分析方法(定量的評価)の検討 分析方法を検討する時に重要なことは、今回の試行段階における分析方法と最終年評価 における分析方法は同じではないということである。理由は二つの調査は目的が異なるこ 4 とによる。最終年評価の目的は、認知症本人が京都の認知症施策(京都式オレンジプラン) の達成度を 10 のアイメッセージというアウトカム指標をもとにどう評価するかといった、 量的・数値的評価に中心がある。しかし今回の試行調査の目的はそれとは異なり、本人評 価が可能であることを示すこと、つまりある条件のもとでの「評価可能性」を実証的に示 すことにあった。 「アウトカム指標に対する認知症本人の評価」は確立した方法論は存在し ないので、試行錯誤の中からつかみとっていく作業が必要になる。言うまでもないことだ が、最重度の認知症の人は今回のような本人評価には参加できない。しかしごく初期の認 知症のひとであれば少しのサポートがあればかなりのところまで本人評価に参加すること ができる。実際の認知症の人たち(母集団)は、その両者を極にしたスペクトラム上のど こかに位置している。また、今回用いた 22 項目は、認知症の人からみた場合には回答する 時の難易度が異なる。つまり、わずかのサポートがあれば答えられる項目から、十分なサ ポートがあっても答えることが難しい項目があり、22 項目もまたその両者を極としたスペ クトラム上のどこかに位置することになる。個々の認知症の人のスペクトラム上の位置は、 たとえば DASC 等を用いることによって、その近似点を特定することが可能になる。難易 度に関連した 22 項目のスペクトラム上の位置については、「認知症の人からみた 22 項目」 といった作業を通して、ある程度までは「理論値」で推計することが可能になる。少し図 式的すぎる極論になるが、二つのスペクトラムを照合すれば、DASC 等の点数によって「(22 項目のうち) A さんにとっての評価可能な項目」を一定の精度で特定することが可能になる。 そして、ここに影響を与えるもう一つの要素が「支援」 (補助自我機能)の問題であり、支 援の有無によって評価可能な項目数はシフトする。すなわち、適切な支援が提供されれば 評価可能な項目数は多くなり、適切な支援が提供されなければ評価可能な項目数は少なく なる。それは同時に本人評価に参加できる人の数も左右することになる。 本人評価に影響を与える要因はたくさんあるが、重要な鍵を握る三大要因は、「認知症の ステージ(DASC 等の点数) 」 「22 項目の難易度(表現の工夫を含む)」 「支援の技術(評価 支援者の技術) 」と整理できる。そう考えてみると、 「評価可能性とは、一人一人異なる“本 人評価が可能な範囲(項目)”を特定することであり、その可能な範囲(項目)を最大値に する方法論を示すこと、そしてそのようにして行う本人評価の位置と意義を明確にするこ とである」と言い換えてもよいかもしれない。 今回の分析方法は、 「評価可能性」を実証するために選ばれたものである。2015 年度中に 予定している本人評価二回目の試行も同様である。最終年評価における分析方法の提案は、 その二つの試行の後に明らかにできるはずである。 1) 本人評価が可能な範囲の特定(本人評価と代弁評価の一致率の意味) 今回の試行調査では、同じ「22 の調査項目」を用いて、本人評価と家族の代弁評価(普 段の本人の言動の集積から本人の評価を推測し代弁してもらう)を行ったところにポイン トがあった。本人評価の場面には家族は同席せず、本人と調査協力者(評価支援者)だけ 5 で行う方法をとった。家族からのバイアスを排除するためである。 先に記したように、22 項目難易度が異なるために「本人評価が可能な項目」と「本人評 価が成立しない項目」が存在するが、回収した本人の評価票からはその区別は読みとれな い。項目ごとのデータの信頼性という点では玉石混交する。ここで実際にはあり得ない仮 定の話を書くが、ほぼ完璧な補助自我機能を果たせる家族を想定してみる。 「神の視点」と 言い換えてもよいかもしれない。その条件下では、家族がチェックした 22 項目評価が「本 人評価の真の値」となる。そうした架空の前提に立つと、回収した本人評価票と家族の代 弁評価票を照合することによって、玉石混交だった評価票から「炙りだし」のように「本 人評価が可能な項目」が浮かび上がってくる。両者が一致した項目を「本人評価が可能な 項目」 、不一致だった項目は「本人評価が成立しなかった項目」とみなすことができる。 優良なデータ(家族の代弁能力が高い場合)に絞る必要があるが、DASC 等の点数と 22 項目毎の本人評価と家族評価の一致率をみることで、認知症のステージ毎の「本人評価が 可能な項目(本人評価が可能な範囲)」近似値を実証的に描くことが可能になる。それを理 論値(認知症の人からみた 22 項目)とも比較検証してからになるが、最終年評価では認知 症のステージによって調査項目を絞り込むことも可能になる。実際にそうするかどうかの 判断は別であるが、この方法を徹底すれば認知症の母集団を対象にした無作為抽出調査も 不可能ではなくなる。 2) 本人評価が可能な範囲を最大値にする方法論 すでに記述したことと重なるが、認知症の本人が評価に参加するためには工夫とサポー トを必要とする。それは技術と方法論の問題でもあるが、まだ確立したものはない。本人 評価が可能な範囲を最大値にするために私たちが今準備していることは、二つある。一つ は「評価項目の表現の工夫」であり、もう一つが「認知症の人からみた 22 項目」も含めた 「評価マニュアル」の作成である。それによって、評価支援の技術化が可能になるととも に、支援を標準化することで調査の信頼性を高めることにもつながる。 3) 本人評価の位置と意義 認知症の人の視点をもとに作成した「10 のアイメッセージ」は、京都が宣言した認知症 施策のアウトカム指標であり、最終年評価では認知症に関与するすべての人がその評価に 参加することが決まっている。すなわち、認知症本人、家族、専門職および市民の三者で あり、それぞれに固有の立場と役割を有している。三位一体でアウトカム指標の評価を行 うという全体構造の中で、本人評価の位置と意義を見定めておく必要がある。 京都の地域ごとの事情(地域格差)や認知症の母集団を反映した客観的で平均的なアウ トカム評価は主に専門職集団が引き受けるべきミッションであろう。一方で、本人評価の ミッションは、それとは異なるはずである。認知症の告知を前提とした場合には、本人評 価に参加できる人たちは母集団とはいくらかの乖離があり、軽度の側に偏り、相対的に恵 6 まれた支援を受けている人たちが多くなると予測される。最終年評価において専門職が描 くアウトカム指標の達成度プロフィールと本人評価に参加した認知症当事者が描く達成度 プロフィールを比較すると、恵まれた支援を受けている人が多い分、認知症本人が描く達 成度プロフィールのほうが高得点になるはずである。それは、今回の試行調査でも確認さ れた。この「落差」を示すことが本人評価の重要なミッションの一つである。 本人評価プロフィールの詳細な分析には、本人評価に参加した人たちの「特性」を分析 する作業が重要な意味を持つ。彼らが認知症と出会ってからの支援の在り方(ケアパス) や彼らの特性を分析することで、母集団の平均値よりも高得点となった理由を抽出するこ とが可能になる。それは同時にアイメッセージをかなえる道筋を明確にする作業となる。 それを認知症の母集団全体に還元・普遍化していく作業が「第二次京都式オレンジプラン」 であろうか。そうした PDCA サイクルを起動させることも本人評価の意義の一つである。 そして何よりも本人評価に参加すること自体が社会参加・社会貢献であり、本人評価とい う作業を通して認知症の本人が「層として登場できる時代」の到来をもたらす。認知症の 疾病観が変わる瞬間であり、方法論・技術・仕組みを含めた「本人評価の文化」が確立す る瞬間でもある。 4. 調査協力者(評価支援者)と評価対象者の選出について ①調査協力者(評価支援者)の選出 2018 年の最終年評価における調査協力者を検討する時には、残された 3 年間が第 6 期介 護保険事業計画や新オレンジプランの当面の目標設定年度ともきれいに重なっているため、 京都式オレンジプランの進捗状況以外に、それらの動向を踏まえることが必要になる。さ らに、京都府独自の取り組みである H27 年度認知症「京都総合戦略」も視野に入れた検討 が要請される。 新オレンジプランでは、2017 年度までに全市町村に認知症地域支援推進員を配置すると している。京都市を含めた京都府の市区町村数は「37」になる。実際の運用では市町村間 の協力も想定されるが、文字通りに解釈すると最終年評価の調査時点では「37 人の認知症 地域支援推進員」が誕生していることになる。 京都府の認知症「京都総合戦略」では、スコットランドのリンクワーカー(一人のリン クワーカーによる診断後一年間の無料サポート)を参考にした「日本版リンクワーカー」 の養成が掲げられており、京都全域で「50 人」の養成が目指されている。 どちらの職種も京都式オレンジプランと 10 のアイメッセージを実現するための核となる 役割を担う。彼らが 10 のアイメッセージ本人評価に「評価支援者」として加わること、そ してその役割を遂行するために「評価マニュアル」研修に参加することは、10 のアイメッ セージを深く理解する上でも重要な契機となる。本人評価において認知症本人の評価を支 7 援する場面は支援者にとっての OJT の場でもある。このようにして本人評価が貴重な人材 育成の場となることで、京都式オレンジプランで養成が予定されている認知症ケアパスコ ーディネーターもあわせると、 京都に 100 人のエバンジェリストが誕生する期待がもてる。 ○認知症地域支援推進員(新オレンジプラン・第 6 期介護保険事業計画、37 人) ○日本版リンクワーカー(京都府の認知症「京都総合戦略」、50 人が目標) ○認知症ケアパスコーディネーター(京都式オレンジプラン) ②評価対象者の選出 ここについては、二回の試行調査をもとに最終年評価における評価対象者案を決定する。 今回の試行における評価場面の経験からは、 「本人評価の告知を受けている人(その自覚が いくらかでもある人、あるいは否定しない人) 」という抽出方法が一つの案になる。最終年 評価までに、十分な試行調査を行い「認知症ステージと評価項目ごとの評価可能性」を明 確にできるとすれば、母集団を対象にした無作為抽出調査も全く不可能というわけではな くなるかもしれない。 ③評価支援者と評価対象者との関係 これは二つの考え方があり、一つ認知症の本人のことをよく知っている人が評価支援者 となる方法であり、たとえば本人をサポートしているケアマネージャーが調査を担当する という例が典型である。この場合は評価場面のサポートがスムーズに進むというメリット がある一方、回答が支援者の誘導を受けやすいというデメリットがある。 もう一つの方法は、本人を直接的には担当していない人が評価を行う方法である。この 場合には、回答が支援者の誘導を受けにくいというメリットがあるが、十分な事前準備を しないと評価場面でのサポートが難しいというデメリットがある。こちらを選択した場合 には、 「評価マニュアル」の存在と「研修」 、そして「情報共有シート」の読み込みが必須 になる。①項の「調査協力者(評価支援者)の選出」に記した候補者は、こちらに該当す る。 ここに記したことは、すでに介護保険の認定調査場面で経験していることである。認定 調査員をケアマネが代行している自治体と、それを認めず認定調査員を独自に養成してい る自治体とがある。後者の場合も調査はスムーズに行われている。 □本人評価二回目の試行に向けた提案 既に述べてきたように、今回の試行を通して多くの課題が明らかとなり、それは本人評 価の方法論を確立する上での大きな財産となった。今回の試行では「評価マニュアル」の 8 作成が間に合わなかったために、評価支援者によってデータにいくらかのばらつきが生じ た可能性がある。また、家族による「代弁評価」の意義が十分に徹底しなかったために、 本人評価の場面に家族が立ち会ったケースもあった。こうした不十分だった点を修正し、 十分な準備作業を経た上で、本人評価二回目の試行を提案する。本人評価は単なるニーズ 調査ではなく政策評価、すなわちアウトカム指標の評価である。ニーズ調査とくらべると 比較にならないほどの難しさがあり、それは私たちの前に壁のように立ちはだかる。その 壁をのりこえ、最終年評価に向けて方法論を確立することがつどいの責務である。3 月会議 は、私たちに迷うことなくその道を歩むことを選択させた。それは同時に京都式オレンジ プランと認知症国家戦略(新オレンジプラン)に対する私たちの責任の取り方でもある。 なお、準備が整ったものから、順次「つどいホームページ」上にアップしていく。 1.2015 年度中に本人評価二回目の試行を行う 2.準備作業として以下の二つを作成する 1)「評価調査票」二回目試行版 ①「10 のアイメッセージ本人評価」本体部分((工夫された表現を用いた評価項目) ②「客観情報」のデータセット ○認知機能を評価するもの(DASC 等) ○家族の認知症本人と介護に対するストレスを評価するもの(J-ZBI_8 等) ○個人データとサービス履歴(情報共有シートと認知症ケアパス概念図等) ○基本情報と発病年齢・罹病期間告知に関するもの(情報共有シート等) ○利用したサービスに関するもの(認知症ケアパス概念図等) ○本人同士・家族同士のピアサポートの有無や調査への感想に関するもの 2)「評価マニュアル」二回目試行版 3.家族の代弁評価については定義を明確にし家族用の説明文を作成する 4.二回目の試行に向けて「評価支援者」と「評価対象者」の選出作業を開始する 5.二回の試行を踏まえて「最終年評価の具体案」を提案する 9
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