浜銀総合研究所 中国ビジネスサテライト「中国コラム」 2015 年 7 月号 http://www.yokohama-ri.co.jp 初めての中国輸出 ④貿易権、税関登記(CR コード)と個人物品の取り扱い チャイナ・インフォメーション 21 筧武雄 1.概要 中国が 2001 年に WTO(世界貿易機関)正式加盟するまで、外国貿易は基本的に中国政府が指 定認可した専門商社に限定され、一般商社・メーカー企業や個人に自由な海外直接貿易は認め られていなかった。WTO 加盟後は規制緩和により原則届出制となったが、現在でも中国税関 申告手続きには商務局への「貿易権」 (正式名称「対外貿易流通経営者権」)登録と所轄税関へ の登記が必要とされ、税関登記完了時には日本の税関システム NACCS コード(輸出入者符号 番号)に相当する 10 桁の中国税関登録「CR コード」(Custom Registration Code、中国語で 「CR 代碼」という)が付与される1。税関申告書類には申告者の CR コードと申告貨物の HS コード(世界共通の品目コード)記載が必要とされる。 2.中国税関 CR コード取得の手続き 中国税関に通関申告する企業、個人事業主は、まず所在地所轄の商務局等商務部地方機関に 出向き、以下の書類を提出して「貿易権」の登録を申請する。 ・登録申請書 ・企業法人営業許可証と企業コード登録証明書 ・個人事業主の場合は財産公証証明書 商務局機関で「貿易権」登録が完了した後、引き続き地域所轄の税関に出向いて税関登記を おこなう。税関では通関申告に使用する印鑑登録と担当者名等の届出のほか、通関申告を自社 でおこなうか(中国語で「自理報関」という) 、外部の通関代理業者に手続きを委託するかの 区別と、外部委託の場合の通関業者名も登録する2。税関登記が完了した時点で CR コードが 発行され、税関申告手続きができるようになる。なお中国の通関制度では、原則として通関手 続きは当初登録した税関一箇所に限られ、他地域税関での通関が必要となった場合は登録地税 関であらかじめ「異地通関」手続きを済ませておく必要がある。 3.個人用小口貨物の例外的な取り扱い 以上のような一般貨物に該当しない個人用小口貨物、すなわち個人旅行者の携帯手荷物、別 送手荷物、引越荷物、その他国際郵便や国際宅急便等により送られる個人使用目的の「個人物 品」(郵送、クーリエ便等で送る場合は税関申告価格 1,000 元未満(1 元=約 19∼20 円)、香 港マカオ・台湾からの場合は 800 元未満が基準とされる)で、本人パスポート渡航記録や海 外での購入証明書(領収書、免税証明書等)、事前の個人引越荷物届出証明書等により、中国 税関が「個人物品」と認めた場合に限り、上記の貿易権登録、税関登記、CR コード・HS コ ードの記載が無くても税関みずから通関手続きを行い、税関が認めた範囲内で輸入税は免除と なる(中国「輸出入関税条例」第 45 条)。ただし、上記基準額以下の携帯手荷物や小口郵便、 別送小包類であっても、中国税関により個人物品(本人個人使用目的)と認められない場合は 「一般貿易貨物」として通常の通関申告手続きが必要となる。 1 Copyright (c) 2015 Hamagin Research Institute,Ltd. All rights reserved. 4.「個人物品」に対する免税扱い 中国税関が「個人物品」と認めた小口貨物のうち、一部の例外3を除いて、税関の認めた範 囲内で輸入税が免除となる。下記の免税範囲を超えた場合は、その場で輸入関税と増値税が課 税される。(中国「輸出入関税条例」第 45 条) <中国税関の個人物品に対する主な免税条件> ① 納税価格×所定の関税率により計算された関税額が 50 元以下のもの ② 中国税関が「商業的価値無し」と認めた純粋なサンプル品、公告品 ③ 引っ越し荷物等、中国税関に事前に届け出て免税扱いの承認を受けたもの ④ その他、中国税関が免税扱いを認めた規制数量・範囲内の個人使用物品 輸送形態が手荷物、別送小包等の小口貨物であっても、個人物品に該当しないと税関が判断 した場合は「一般貨物」の取り扱いとなり、通関業者に有料で通常の輸入申告手続きを委託す ることとなる。(「中国税関総署緊急公告 33 号」2010 年 5 月) 5.訪日観光客に対する日本国内での免税販売(国内輸出) 昨今、日本を訪れる中国人観光客の旺盛な購買活動が話題になっているが、中国に駐在勤務 する日本人等の外国籍人も含め、日本非居住者(中国居住者)が海外に持ち出しを条件として日 本国内で個人物品を免税購入する際には、免税店に所定の誓約書を提出し、店舗で本人パスポ ートに免税証明書の貼付と割印を受けた後、日本出国手続き時に海外持ち出しの照合確認がお こなわれる。 中国入国の際の税関検査では、海外購入個人物品に対する免税取扱上限額は一人 5,000 元以 下とされており、パスポート渡航記録、日本で発行された領収書等の証明書類をもって海外免 税購入した個人物品であることを証明申告しなければならない。 以上 本レポートの目的は情報の提供であり、何らかの行動を勧誘するものではありません。本レポートに記載されて いる情報は、執筆者個人が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、その正確性、完全性を保証するも のではありません。ご利用に際してはお客さまご自身でご判断くださいますようお願いいたします。本レポート は著作物であり、著作権法に基づき保護されています。本レポートの無断転載・複製を禁じます。 1 日本の税関では NACCS コードが無くても、いわゆる「無符号」輸入者として空欄で税関申告すること認められるが、 中国税関では携帯手荷物や別送小包のような「個人物品」を除いて、CR コードの記載が無ければ通関申告が受理されず、 登録の無い場合は CR コードを持った通関代理業者に税関申告手続きを委託しなければならない。 2 中国にも税関申告書類を作成する資格として通関士(中国語で「報関士」という)制度が存在し、多年の経験と国家試験合 格が必要な国家専門資格とされる。 3 日本貿易振興機構(ジェトロ)ホームページに中国税関の個人小口貨物通関取扱に関する詳細な説明があるので参照され たい。 https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-051022.html 2 Copyright (c) 2015 Hamagin Research Institute,Ltd. All rights reserved.
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