2008 年度 京都女子大学 HP 過去問題解説 世界史(アジア史)

2008 年度
京都女子大学 HP 過去問題解説
世界史(アジア史)
京都女子大学の世界史の問題は,
「やりがいのある」内容だ,と最初に言っておきたいところで
す。というのは,まじめに丁寧に勉強した人がちゃんと報われる内容だからです。ではどのよう
に報われるのでしょうか。一つには,一部の私立大学でしばしば目にするような,勉強しても手
の届かない難問・奇問が一切ないこと。しっかり教科書を読んでいれば解ける内容であるという
ことです。それだけではありません。設問の内容が非常によく考えられていて,出題範囲も広く,
様々な視点から歴史を捉えています。
「なるほど,そういう意味もあったのか」と納得させられる
ことがしばしばあります。その意味でも「やりがいのある」設問と言えます。しかし逆に言えば,
中途半端な学習に留まった受験生はその恩恵にあずかれない,ということでもあります。とにか
く京都女子大学の世界史の出題には,手を抜いていい部分などありません。教科書のあらゆるペ
ージ,あらゆる部分が出題対象になっています。その全範囲をもれなく丁寧に学習した人には確
実な成果が得られるでしょう。では以下,具体例をあげながら,留意点を述べてみます。
アジア史に関するもの
アジアは地球全体に占める面積の割合が非常に大きいので,世界史の入試問題でも扱われる
範囲が広くなる,ということで,前回はその点に重点を置いた解説を行いました。モンゴル高
原から中央アジアにかけての遊牧民の活動や東南アジア諸国の興亡,はたまたイスラーム諸王
朝の展開など,非常に広大な内容になるということに注意を促しました。そこで今回は中国史
の出題に力点を置いてみます。京都女子大学の世界史では範囲にムラがないというものの,中
国史の出題比率が目立って多くなっています。そのテーマは実に様々です。儒教史,書物にま
つわる歴史,ある都市に焦点を当てたもの,さらには中国一国に留まらず,北方遊牧民との関
係,朝鮮・日本との関係を重視したものなど,いずれも趣向が凝らされています。そこで,一
つの典型的な例として,2008年度前期A方式(1/30)のⅣを取り上げてみます。
①リード文について
朝鮮王朝(李氏朝鮮)の成立から,日本による朝鮮併合にいたるまでの時期に関して,朝鮮・
中国・日本の様々な関係の持ち方についての説明がなされ,その中に13箇所もの空欄部が設け
てあります。そこには3国に関する重要語句が入るようになっています。また文章中に6箇所
の下線部が施されてあり,それぞれに関する設問も設けてあります。このような,空欄補充と
下線部に関する設問という構成が京都女子大学・世界史の基本形式と言えますが,年度や方式
(日程)によっては下線部設問のみのときもあれば,空欄補充のみのこともあります。2007年
度は空欄補充が大半を占めていましたが,2008年度はいつもの形に戻った印象を受けます。
②設問について
空欄補充問題では,明との朝貢貿易に関わる海禁,豊臣秀吉に抵抗した李舜臣,朝鮮王朝と
関わりが深かった対馬の宗氏,江戸時代との友好を保った朝鮮通信使,清の船が来航した長崎,
アヘン戦争とアロー戦争を第1次・第2次アヘン戦争と一括して問うたもの,日清戦争後に朝
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鮮王朝が改称した大韓帝国など,やや難しい出題です。しかもすべて選択式ではなく語句記述
での解答なので,なおさらです。下線部に関する問いでは,5世紀に中国の南朝に朝貢した日
本の複数の王朝,すなわち倭の五王,秀吉の朝鮮出兵の朝鮮側の呼称である壬辰・丁酉の倭乱,
などが意表をつく問題といえます。当然のことながら,漢字をミスしたら得点出来ませんので,
心して勉強しなければ,と改めて思わせる内容です。
③学習のアドバイス
以上見てきたように,中国史といっても周辺諸国との関係に主眼を置いたものも常に念頭に
おかなければいけません。中国一国の歴史だけでも盛りだくさんな内容を持ち,そこのみに意
識が集中しがちですが,その周辺部がねらわれるのです。その他,これまでの出題テーマをあ
げてみると,魏晋南北朝時代,唐代,宋代,という風に一時代を中心にするもの,それに交通・
移動,華北・江南の違い,中国共産党,思想・学術・文芸などなど,テーマは無限の可能性を
秘めています。ですから要するに,教科書を隅から隅まで一字一句漏らさず読み込む姿勢を常
に持つことが必要です。それに写真や図のたぐいもよく見てその意味を確かめること,さらに
地図もよく読み込む必要があります。とくに2007年度には,都市をテーマにした出題がなされ,
よほど地図を読み込んでいないと解けないものになっていました。十分注意して欲しいもので
す。それから前述しましたが,中国以外のアジアもすべて対象になっていることをお忘れなく。
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