研修医カンファレンス&レクチャー記録(H25.7月~) 平成25年7月1日(月) AM9:30~10:30 新患カンファレンス(担当:1年目研修医 今田) ケース:66歳 男性 主訴:突発性の背部痛 診断:大動脈解離(B型) 指導医から一言:典型的な大動脈解離のケースでした。大動脈解離は解離の場 所や広がりによって多彩な症状を呈しかつ痛みの程度も様々であることからE Rで見逃しやすい重大な疾患の代表選手です。以下に大動脈解離で起こす可能 性のある病態をまとめてみました。 平成25年7月2日(火) AM7:30~8:00 先輩研修医レクチャー:ER でしばしば遭遇する症候への対応「腰痛」 (担当 三 輪) 指導医から一言:腰痛は日常診療で遭遇する最もありふれた症候のひとつです ね。そして、そのほとんど(80~90%)がはっきりした診断がつきません。 でも、幸いなことに多くのケースで症状は自然に治癒してしまいます。こうい った症候の診療では Red flag sign を上手に使うことで重篤な疾患の見逃しを最 小限にすることができると思います。 平成25年7月3日(水) AM9:30~10:30 新患カンファレンス(担当:1年目研修医 紅野) ケース:85歳 男性 主訴:右下腹部痛 診断:魚骨による穿通性腹膜炎 指導医から一言:腹部CTで鋭く尖った魚骨が腸管に刺さっているのがばっちり 見えました。発症数日前に伊豆に旅行して、新鮮な魚介類を堪能したようです。 昨年のカンファレンスで竹串による穿通性腹膜炎のケースがプレゼンされたこ とを思い出しました。それにしても、どうして竹串なんか飲み込んだのだろ う?? 平成25年7月5日(金) AM7:30~8:00 ER ピットフォールカンファレンス(担当:内科 67歳 男性 主訴:黄疸、全身倦怠感 高田) 診断:骨髄異形成症候群の疑い 指導医から一言:最終診断がついていないけど、MDSによる汎血球減尐と末 梢血の芽球出現と考えられているようだ。MDSはサラセミア、巨赤芽球性貧 血、鉄芽球性貧血と共に無効造血を来たす疾患の代表で、ハプトグロビンの低 下やLDHの上昇がみられる。このケースは黄疸を呈していたが、無効造血で 黄疸を呈することがあるのだろうか?血液内科の先生に聞いてみます。 AM9:30~10:30 新患カンファレンス(担当:1年目研修医 板倉) ケース:82歳 女性 主訴:両膝関節痛 診断:偽痛風 指導医から一言:肺炎や尿路感染で入院していた老人がやっとよくなって、退 院日の前日の夜に発熱、関節痛を訴え“やられた~”とガッカリさせられるの が偽痛風ですね。皆さんも経験ありますよね。今回は院外で発症したケースで した。急性単関節炎の鑑別がしっかりできるようになりましょう。 AM10:30~11:00 ミニレクチャー:関節痛の診方(内科 寺田) 指導医から一言:ケースの延長で関節痛の診方のレクチャーをしました。関節 痛の診療のポイントは、①関節痛か関節炎か?(関節内か関節外か?)②急性 か慢性か?③単関節炎か多関節炎か?ですよね。急性単関節炎と診断できれば、 鑑別診断はぐっと狭くなりますよね! 平成25年7月8日(月) 新患カンファレンス(担当:1年目研修医 新海) ケース:66歳 男性 主訴:ふらつき、右顔面神経麻痺 診断:右橋背側のラクナー梗塞 指導医から一言:脳幹の梗塞を理解するにあたって、脳梗塞の形を意識するこ とは大切です。丸ければラクナー梗塞ですが、wedge shape ならば branch atheromatous disease です。両者は同じ脳梗塞でもメカニズム、リスク因子、 予後が異なり、患者さんへの説明にも配慮が必要です。後者の場合、予想外に 症状が重症化して後の患者さんや家族へ説明時に困ることがあります。 AM10:30~11:00 ミニレクチャー:肺の診察(内科 寺田) 指導医から一言:クラックルを聴診する場合、音の性状で coarse or fine と判断 するよりも、聴こえるタイミングで判断・評価するほうが臨床的には有用と思 います。 PM5:30~6:30 プライマリケアレクチャー:身体診察「この患者では、何を診るか、そして、 何がわかるか」 (担当 寺田) 指導医から一言:実際の臨床の現場では、すべての患者さんですべての身体診 察を行うのは不可能かつ無駄です。身体診察を行うに当たっていつでも以下の ことに留意する必要があると思います。 ① 「身体診察の異常は、診ようと思わなければ診えない」 ② 「身体診察の感度は一般的に低いが、感度を上げる最も有効な方法は “疑いの目”を持って、全身全霊を込めて診察することである」 ③ 「身体診察所見は、どんな患者に使うと何がわかるのかを知っていることが 大切」 ④ 「一つの身体診察では結論を出せないからといって悲観的になってはいけ ない。医師の仕事は病歴といくつかの身体所見を組み合わせて判断すること である」 平成25年7月9日(火) AM7:30~8:00 先輩研修医レクチャー:ER でしばしば遭遇する症候への対応「頭痛」 (担当 鈴 木) 指導医から一言:2年目研修医による、自ら経験した症例を交えの、とても実 践的でためになるレクチャーでした。ER診療で見逃しを最小限にするために、 Red flag sign を上手に使うことは有用ですね。頭痛診療の Red flag sign は以下 の通りです。 平成25年7月10日(水) AM9:30~10:30 ミニレクチャー:血液ガス分析の評価法「実際的なアプローチ」(内科 寺田) 指導医から一言:今日は理屈なし。救急など忙しい現場での血液ガス分析の解 釈法をレクチャーしました。これで、患者さんに複数の酸塩基平衡異常があっ ても正確に評価できるはずです。複数の酸塩基平衡異常を見つけることで、特 定の疾患(例えば、アスピリン中毒やGNRによる敗血症など)を想起出来た り、病態生理をより正確に理解することが可能になります。 平成25年7月12日(金) AM7:30~8:00 ER ピットフォールカンファレンス(担当:高田) 86歳 女性 主訴:意識障害 診断:下垂体卒中、熱中症 指導医から一言:鑑別診断をすばやく想起する方法の一つに、患者さんの症状 を医学的な言葉に置き換えて、その鑑別診断を塊として覚えておく方法があり ます。今回は「雷鳴様頭痛」の鑑別診断を挙げておきます。 AM9:30~10:30 新患カンファレンス(担当:1年目研修医 大塚) ケース:3歳 男性 主訴:左有痛性頸部リンパ節腫脹、発熱 診断:川崎病 指導医から一言:川崎病としては片側性の有痛性頸部リンパ節炎と発熱が主訴 で非典型的なケースでした。入院3日目から典型的な皮疹、イチゴ舌、四肢末 端の硬性浮腫等の症状が出てきました。川崎病は適切な治療で患者さんの予後 を確実に改善できる小児の発熱性疾患では極めて重要な疾患です。原因不明の 発熱では必ず鑑別診断に入れておきましょうね。 AM10:30~11:00 ミニレクチャー:経口抗菌薬の使い方(内科 寺田) 指導医から一言:経口抗菌薬の使い方の注意点をまとめてみました。キーワー ドは Bioavailability と感染症診療のトライアングルです。原則はいつも同じ、 起因菌をしっかり想定し、それに適した抗菌薬を選択することです。それに、 外来で治療する感染症って決まってますよね。ですから、外来では必要以上に スペクトラムが広い抗菌薬は必要ありません。 平成25年7月16日(火) AM7:30~8:00 先輩研修医レクチャー:ER でしばしば遭遇する症候への対応「呼吸困難」(担 当 山口) 指導医から一言:とても面白いレクチャーでした。やはり2年目ともなると自 らの経験と文献的知識をバランスよくプレゼンしてくれるので、とてもために なります。今回は killer throat pain についてもまとめてくれました。資料の一 部をアップしておきます。 平成25年7月17日(水) AM9:30~10:30 新患カンファレンス(担当:1年目研修医 青木) ケース:59歳 男性 主訴:心窩部痛 診断:急性心筋梗塞 指導医から一言:ERでは、横隔膜から上の突発性の症状を訴えた患者さんに は必ずACSを鑑別診断に入れましょう。 AM10:30~11:00 ミニレクチャー:急性心筋梗塞の診断(病歴から)(内科 寺田) 指導医から一言:ACSを疑わせる、またはACSらしくない胸痛の性状をま とめてみました。また、ACSで呈することがある、胸痛以外の症状も挙げて おきます。 平成25年7月19日(金) AM7:30~8:00 ER ピットフォールカンファレンス(担当:内科 高田) ケース:91歳 女性 主訴:意識障害 診断:ハルシオン過剰摂取 指導医から一言:「すべての症状に、薬剤はいつも重要な容疑者である」 AM9:30~10:30 新患カンファレンス(担当:1年目研修医 山田) ケース66歳 男性 主訴:めまい 診断:NSAIDによる出血性胃潰瘍、出血性ショック 指導医から一言:患者さんの主訴は「めまい」で、バイタルは受診時には正常 でした。また、病歴からは presyncope または起立性低血圧に近い病態が疑われ ました。 「めまい」の鑑別診断で、内耳疾患や中枢神経疾患はすぐに思い浮かび ますが、消化管や婦人科疾患の出血に起因する循環血漿量の減尐による「めま い」様の症状は、鑑別診断から抜け落ちてしまうことがしばしばあります。こ のケースも要注意でした。1000mL程度の出血では安静時のバイタルは安 定していることも多く、体位変換による脈拍、血圧の変化は volume loss の診断 にとても役に立ちます。当日、使った資料をアップしておきます。 平成25年7月22日(月) AM9:30~10:30 新患カンファレンス(担当:1年目研修医 齋藤) ケース:27歳 女性 主訴:心窩部痛 診断:小腸イレウス(癒着性)、妊娠16週 指導医から一言:多くの内科医は、妊婦さんの診療に大きな不安を抱えていま す。今回も腹部CT等の放射線検査について悩ましいケースでした。勿論、不 必要な放射線検査は誰に対しても行うべきではありませんが、一般的に行われ ている放射線検査は胎児への影響はほとんどありません。 AM10:30~11:00 ミニレクチャー:輸液療法の基礎1(内科 寺田) 平成25年7月26日(金) AM7:30~8:00 ER ピットフォールカンファレンス(担当:内科 高田) ケース:44歳 女性 主訴:意識障害 診断:急性ニコチン中毒(自殺目的)、統合失調症 指導医から一言:タバコ誤飲は小児でしばしばみられますが、急性ニコチン中 毒症状を呈することは極めてまれです。今回は成人のケースでした。 AM9:30~10:30 新患カンファレンス(担当:1年目研修医 紅野) ケース:38歳 男性 主訴:上腹部痛、嘔吐 診断:劇症1型糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシス 指導医から一言:DKAでは急性発症の悪心・嘔吐、腹痛といった消化器症状 でERに受診することが多いですね。今回は劇症1型糖尿病によるDKAのケ ースです。特徴を簡単にまとめてみました。 平成25年7月29日(月) AM9:30~10:30 新患カンファレンス(担当:1年目研修医 新海) ケース:66歳 男性 主訴:突発性の下腹部痛 診断:慢性腸間膜虚血(上腸間膜動脈血栓症) 指導医から一言:患者さんは喫煙などの動脈硬化の危険因子を多数有していま した。造影CTではSMAの本幹の閉塞を認めましたが、側副路が発達し腸管 はしっかり造影されていました。今回は急性発症の持続性下腹部痛で、身体診 察上腹部所見に乏しかったようです。病歴上、腹痛発作を繰り返していたよう ですが、食事が明らかな誘因にはなっていなかったようです。慢性腸間膜虚血 の疾患スクリプトは「動脈硬化の危険因子+食後の突発性腹痛を繰り返す+発 作時の腹部所見に乏しい」でしょうか?でも、いろんなバリエーションがあり そうですね。 AM10:30~11:00 ミニレクチャー:輸液療法の基礎2(内科 寺田) 平成25年7月31日(水) AM10:30~11:00 ミニレクチャー:輸液療法の基礎3(内科 寺田)
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