ポスト 2015 子どもにふさわしい世界 すべての子ども

世界のリーダーたちは次の 15 年間の人類の進歩のためのロードマップを策定しようとしている。「持続可能
な開発目標」という名のこの新たなグローバルな目標は、地球上のすべての国において投資や行動を導き、
ポスト 2015
子どもにふさわしい世界
何百万もの人々の命に影響を与えるであろう。だからこそ、すべての子どもが、女の子も男の子も、この新し
いグローバル・アジェンダに含まれ、世界中の子どもたちがその中心に置かれることがきわめて重要である。
2015 年は、すべての子どもたち、特に最も不利な状況や弱い立場におかれた子どもたちのための変化を求め、も
たらすために、すべての人―すべての国の政府、機関、企業、地域社会、家庭及び個人―を巻き込んで、世界
規模で子どもたちのための行動を起こす年になるべきである。
すべての子 どものためのアジェンダ 2015
1.子 どもに対 する暴 力 の撤 廃
世 界 では約 10 億 人 の 15 歳 未 満 の子 どもたちが、日 常 的 に体 罰 を受 けていて、15 歳 ~
19 歳 の少 女 の 4 分 の 1 が身 体 的 暴 力 を経 験 している。子 どもに対 する暴 力 はすべての国 、
すべての子どものためのアジェンダ 2015
すべての社 会 に影 響 を与 えている。子 どもに対 する暴 力 はしばしば表 には見 えないものである
が、子 どもたち自 身 や社 会 に与 える影 響 は深 く広 範 であり、他 の分 野 の進 展 を損 なってしま
う。子 どもに対 する暴 力 は普 遍 的 な問 題 であるため、子 どもを暴 力 、虐 待 、ネグレクト、搾 取
から守 るために投 資 することは、グローバルな優 先 事 項 でなければならない 。暴 力 に対 する意
識 を高 め、子 どもに対 する暴 力 を見 たり疑 わしいと感 じたりしたときに人 々が声 をあげ られるよ
う促 すため、また、子 どもたちを被 害 から守 るための社 会 福 祉 制 度 やサービスを強 化 し、被 害
にあった子 どもたちへの支 援 を提 供 するために、より多 くのことがなされなければならない。
2.グローバルな貧 困 撲 滅 の中 心 に、子 どもの貧 困 を位 置 づける
世 界 で極 度 の貧 困 状 態 にある人 の半 数 は子 どもたちである。5 億 7,000 万 人 の子 どもたち
が国 際 的 な貧 困 ラインである 1 日 1.25 米 ドル未 満 で生 活 している。子 ども時 代 の貧 困 は、
しばしば、おとなの貧 困 の根 本 的 な要 因 である。貧 困 の循 環 を断 ち切 るために、我 々はあら
ゆる側 面 から貧 困 を理 解 する必 要 がある。貧 困 は収 入 からだけでは測 れない。サービスや社
会 保 障 システムへのアクセス、保 健 、栄 養 、水 と衛 生 、住 居 、早 期 幼 年 期 から青 年 期 まで
の質 の高 い教 育 、さらに差 別 、偏 見 、疎 外 などの要 素 も考 慮 しなければならない。また、貧
困 の影 響 を軽 減 するためには、家 庭 の脆 弱 性 の軽 減 、最 悪 の形 態 の児 童 労 働 の根 絶 、
貧 困 家 庭 の保 護 システムの強 化 等 、さらに多 くのことがなされなければならない。
3.予 防 可 能 な子 どもと妊 産 婦 の死 亡 をなくすグローバルな取 り組 みを新 たにする
最 貧 困 層 (20%)の家 庭 に生 まれた子 どもは、最 富 裕 層 (20%)の子 どもに比 べて、5 歳 に
なる前 に命 を落 とす可 能 性 が 2 倍 で、発 育 阻 害 に苦 しむ可 能 性 も 2 倍 近 く、これらの子 ど
もたちはより弱 い立 場 におかれている。妊 産 婦 死 亡 の問 題 は以 前 より人 々の注 目 を集 めて
いるにもかかわらず、進 展 は十 分 ではない。より多 くの命 を救 うために、我 々は、保 健 システム
を強 化 し、子 どもたちがよりよい人 生 のスタートを切 るための取 り組 み-母 親 と新 生 児 の双 方
にとって妊 娠 と出 産 を安 全 なものにすること、完 全 母 乳 育 児 率 の向 上 、子 どもの発 育 阻 害
を減 らすこと、HIV の母 子 感 染 の根 絶 、安 全 な水 と衛 生 設 備 (トイレ)へのアクセス向 上 、
子 どもの早 期 ケアと教 育 プログラムへの投 資 などーに資 金 を配 分 しなければならない。
F
4.10 代 の子 ども・若 者 たちにより配 慮 する
8.すべての子 どもと若 者 が学 校 に通 い学 ぶことができるよう、教 育 を優 先
10 代 は、幼 少 期 に得 られたものが定 着 するか、失 われるかを決 定 づける時
する
期 である。きわめてしばしば、10 代 の若 者 、特 に女 の子 は、暴 力 の危 険 に
教 育 はすべての子 どもたちの権 利 であるだけでなく、よりよい人 生 を歩 むための
さらされ、質 の高 い教 育 を受 ける機 会 が不 足 し、重 要 な保 健 サービス にアク
鍵 であり、すべての国 がより強 く、平 和 で、公 平 な社 会 を築 く能 力 のために、き
セスすることができない。10 代 の若 者 を保 護 し、潜 在 能 力 を引 き出 し、生
わめて重 要 である。新 たな開 発 目 標 を達 成 するためには、最 も不 利 な立 場 や
産 的 なおとなに成 長 するためのよりよい準 備 をするためには、質 の高 い学 習
疎 外 された状 況 にあるために取 り残 されやすい子 どもたち、女 の子 や障 がいの
環 境 と労 働 への準 備 の機 会 を提 供 し、非 感 染 性 疾 患 や肥 満 、HIV 及 び
ある子 どもを含 めた、社 会 的 障 壁 によって教 育 的 達 成 が妨 げられてしまってい
他 の健 康 に関 する危 険 性 を減 少 させる健 康 習 慣 を育 成 し、暴 力 への関
る子 どもたちに特 に焦 点 をあてながら、早 期 幼 年 期 から青 年 期 、さらにその先
与 や暴 力 の被 害 から保 護 することに焦 点 を当 てる必 要 がある。さらに、若
にわたって質 の高 い教 育 機 会 へのアクセスを増 加 させる必 要 がある。
者 に投 資 するだけでなく、彼 らの生 活 の向 上 のための政 策 の策 定 やサービス
の提 供 に、彼 ら自 身 を参 加 させる必 要 がある。
9.女 の子 が取 り残 され、抑 えられ、追 いやられる状 況 をなくす
女 の子 の健 康 、教 育 、保 護 、能 力 開 発 への投 資 を増 加 することで、社 会 的
排 除 や差 別 の問 題 に対 処 することができ、同 時 に、女 性 に対 する不 平 等 を
5.「データ革 命 」を活 用 し、すべての子 どもの権 利 を守 る
生 む姿 勢 や政 策 を変 えることもできる。水 や衛 生 設 備 (トイレ)、エネルギ
タイムリーで信 頼 できるデータは、最 も不 利 な状 況 にあり、疎 外 され、弱 い
ー、交 通 といった、女 性 の生 活 に影 響 を与 えるインフラ設 備 は、女 性 に恩 恵 が
立 場 にある子 どもたちの、生 活 と未 来 を改 善 しうる政 策 を策 定 し実 行 する
あり女 性 を保 護 するような方 法 で作 られ、管 理 されるべきである。
ために、きわめて重 要 である。細 分 化 されたデータは、取 り残 された、また政
策 決 定 から排 除 されている子 どもたちや地 域 社 会 を見 出 す助 けとなる。デ
10.将 来 世 代 のために気 候 変 動 の問 題 に取 り組 む
ータはさらに、成 果 を測 り、進 捗 を追 跡 し、必 要 であれば方 針 転 換 を行 うた
気 候 変 動 と自 然 災 害 は、今 日 の子 どもたち、特 に最 も不 利 な立 場 にある子
めにも不 可 欠 である。
どもたちに偏 って影 響 を及 ぼしており、その長 期 にわたる影 響 に対 処 しなければ
ならないのは、今 日 の最 も若 い世 代 である。気 候 変 動 に取 り組 み、温 室 効 果
ガスを削 減 し、災 害 の影 響 を軽 減 し、脆 弱 な環 境 を保 護 するためのすべての
6.すべての子 どもたち、特 に、最 も弱 い立 場 にあり阻 害 されている子 ども
政 策 や投 資 において、子 どもたちの声 や考 え、特 別 なニーズが認 識 され、優 先
たちのための投 資 を増 加 させる
されるべきである。
子 どもに対 する投 資 にまさる投 資 は他 にない。開 発 、人 道 、気 候 、国 内 、
いずれの資 金 であっても。教 育 、栄 養 、水 と衛 生 、保 健 、社 会 保 障 のどの
もし近 年 多 くの子 どもたちのために大 きく改 善 された状 況 が失 われないように
分 野 であっても、最 も支 援 を必 要 とする子 どもたちや家 族 によい結 果 をもた
し、発 展 する国 々が成 長 を続 け、困 難 な地 域 がより安 定 し、男 の子 だけでなく
らすために、十 分 な資 金 が割 り当 てられなければならない。また、現 在 女 の
女 の子 も公 平 な機 会 を得 て、今 日 の世 代 とこれからの世 代 のために自 然 環
子 たちの基 礎 的 なサービスへのアクセスを妨 げ、成 長 を阻 害 している障 壁 を
境 が保 護 されるようにするのであれば、子 どもたちが新 しいグローバル・アジェンダ
取 り除 くことに、特 に注 意 を払 わなければならない。これは道 徳 上 、戦 略 上
の中 心 に置 かれなければならない。そしてこのアジェンダの策 定 と、これを進 展 さ
の要 請 であるだけではなく、実 務 的 な要 請 でもある。最 も不 利 な立 場 の子
せる役 割 において、子 どもや若 者 、貧 困 状 態 にある人 々が発 言 権 を得 なけれ
どもたちに投 資 することが、持 続 的 な成 長 と社 会 や国 の安 定 にも貢 献 する
ばならない。
ということが、ますます多 くの調 査 によって示 されている。
政 府 が主 導 し、市 民 やあらゆる部 門 のパートナーによって支 えられるグローバ
ル・コミュニティは、多 くの子 どもたちを発 展 から疎 外 し続 け てきた障 壁 を撤 廃
7.子 どもに影 響 を及 ぼす慢 性 的 危 機 の循 環 を終 わらせる
し、すべての子 どもたちが生 存 、成 長 し、学 び、十 分 に参 加 、貢 献 できる社 会
2014 年 、2 億 3,000 万 人 の子 どもたちが紛 争 の影 響 を受 ける国 々に暮
の構 築 という責 務 を達 成 する歴 史 的 な機 会 を得 た。これは正 しい ことであるだ
らし、さらに多 くの子 どもたちが災 害 の影 響 を受 けた。人 道 危 機 への世 界 的
けでなく、すべての人 の利 益 になるものである。
な対 応 は、それが自 然 災 害 であっても人 為 的 なものであっても、子 どもたち
の、より安 全 な未 来 への投 資 を含 むべきである。子 どもたちや家 族 、地 域 社
世 界 中 が「すべての子 ども」のために団 結 して行 動 を起 こすことによって、すべて
会 が、将 来 起 こり得 るショックに耐 えられるようにする取 り組 みに投 資 すること
の子 どものためのよりよい未 来 を創 ることができるのである。
によって、レジリエンス(回 復 力 )を構 築 することは、今 日 、多 くの人 々が耐
えている危 機 の悪 循 環 を断 ち切 るためにきわめて重 要 である。
・本 資 料 原 文 (英 文 )
http://j.mp/1JkcfyQ
・より詳 細 な資 料 (英 文 ) http://j.mp/1NweqBi
F 詳細については以下をご覧ください。
ユニセフ本部サイト(英文):子どもとポスト2015開発アジェンダ http://www.unicef.org/post2015/
日本ユニセフ協会サイト:持続可能な開発目標
http://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_sdg.html
© United Nations Children’s Fund (UNICEF) • January 2015 • Cover photo: © UNICEF/NYHQ2002-0646/Balaguer; Back cover: © UNICEF/NYHQ2009-1926crop/Pirozzi