引き継ぎませんので、被相続人が定率法(旧定率法) を選択していて、相続人においても引き続き定率 法による場合には、改めて届出書を提出する必要 があります。 (3) 青色申告特別控除、各種所得控除 被相続人が青色申告をしていた場合、準確定申告 においても青色申告特別控除が適用されます。複式 簿記で記帳のうえ貸借対照表を添付して期限まで に申告するなどの要件を満たせば青色申告特別控 除額は 65 万円になります。一方、相続人においても、 前述した提出期限までに青色申告承認申請書を提 出すれば青色申告特別控除が適用され、要件を満 たせば 65 万円を控除できます。この場合、同じ年 分の所得税について相続人と被相続人の両方で 65 万円を控除することもできます。 控除対象配偶者又は扶養親族に該当するかどう かは、その年の 12 月 31 日の現況によって判定し ますが、被相続人が死亡した場合には死亡の日の現 況によって判定することになります。したがって、 相続のあった年においては、同じ被扶養者を被相 続人と相続人の両方の配偶者控除や扶養控除の対 象とすることも可能です。 医療費控除や社会保険料、生命保険料、地震保 険料控除等の対象となるのは、死亡の日までに被 相続人が支払った医療費や保険料等の額です。こ のため、死亡後に相続人が支払った医療費などを 被相続人の準確定申告において医療費控除等の対 象に含めることはできません。 (4) 消費税の取扱い 消費税について、相続の場合は納税義務を継承 しますので、相続があった年の基準期間(前々年) における被相続人(親)の課税売上高が 1 千万円を 超える場合、相続があった日の翌日以後その年分 の相続人(子)の納税義務は免除されません。これ に対して、生前の経営継承の場合、継承者(子)は 新規開業の形になりますので、継承者には基準期 間の課税売上高がないことになり、課税事業者を 選択しない限り、開業した年とその翌年は免税事 業者となります。 普及協会の窓 牛乳の不当廉売防止に向け調査 4月乳価引上げから末端価格はどうか! 広島県牛乳普及協会(会長 岩竹重城)は、広島県酪 農政治連盟(委員長 藤岡辰彦)より牛乳の不当廉売防 止に向けた取り組みとして、県内の量販店に及ぶ牛乳 販売価格調査への協力について要請を受け、5 月 21 日開催の運営委員会でこれらの対応を協議した。 岩竹会長は「過去にもある量販店において不当廉売 の疑いがあり、県酪政連から市場実態調査を行い、こ れを根拠に公正取引委員会に是正を求め、是正措置が 講じられた。生・処・販(生産者・処理業者・販売店) が一体となった牛乳普及活動を行うためには、適正な 牛乳販売価格に支えられる」と主張し、この要請を受 け、各会員が管轄エリアの市場調査を行い、事務局へ 報告することをまとめた。 調査対象は、県内の量販店における 1 ㍑牛乳の販売 価格(消費税抜き)の最安値商品とし、調査期間を平成 27 年 6 月 30 日迄として都度事務局へ報告するものと した。また、この調査結果は集計後、県酪政連へ提出 する。 【お願い】 皆さんも、お買物等でスーパーを訪れた際、1 ㍑ 牛乳が「安い」と思われたら広島県牛乳普及協会まで ご一報をお願いします。 問い合せ先 : 広島県牛乳普及協会 事務局 河内山(こうちやま) TEL:0824-64-2211 FAX:0824-64-2233 広島 2015年 (平成 27年)6月 〔№ 255〕 18 森税理士の 「ちょっと気になる税務のはなし」 アグリビジネス・ ソリューションズ株式会社 代表取締役 森 剛一氏 第85 回 税務相談窓口 事業推進課 経営指導相談係 ■問い合わせ先 TEL:0824-64-2072 Fax:0824-64-2233 ■準確定申告 1.事業主逝去の場合の手続き (1) 相続とは何か? 相続とは、人が死亡した場合に、その者と一定 の親族関係にある者(配偶者や子など)が財産上の 権利・義務を承継することをいいます。死亡した 人を被相続人、承継した人を相続人といいますが、 被相続人が営んでいた酪農などの事業について、相 続によって経営継承される場合、被相続人の権利 や義務を相続人が包括的に継承します。 (2) どのような届け出が必要か? 被相続人及び相続人の双方について、 「個人事業 の開廃業等届出書」を提出します。また、相続人が 青色申告をするには「所得税の青色申告承認申請 書」に加えて、専従者がいる場合には「青色事業専 従者給与に関する届出書」を提出することになりま す。 相続人が青色申告をする場合の青色申告承認申 請書の提出期限は、①相続がその年の 8 月 31 日以 前の時は相続の日から 4 ヶ月以内、②相続がその 年の 9 月 1 日から 10 月 31 日の間である時はその 年の 12 月 31 日、③相続がその年の 11 月 1 日以後 であるときは翌年 2 月 15 日迄です。また、 「青色 事業専従者給与に関する届出書」の提出期限はその 年の 3 月 15 日ですが、その年の 1 月 16 日以後開 業した場合は 2 か月以内となります。 被相続人の決算は死亡の日までの期間を対象と して行います。この場合、年初から死亡の日までの 収入金額や必要経費は被相続人、死亡の翌日から 年末までの分を相続人のものとして計上するのが 原則です。しかしながら、酪農経営では1月単位 で乳代精算が行われるため、収入金額や必要経費 について日割り計算を行わず月単位で被相続人と 相続人に割り振ることもやむを得ないと考えます。 DMSの基盤となっている酪農専門の会計ソフト 「e 酪農経営」は、準確定申告にも対応しています。 事業主の死亡日を登録すると、青色申告決算書の 減価償却費の計算をその年 1 月 1 日からその死亡 の日までの期間(1月未満切上げ)の月数を乗じて 計算します。また、損益計算書や貸借対照表の期 間や期日について終期の表示を死亡の日として表 示するほか、「準確定」と記載した確定申告書が氏 名の前に「被相続人」を付けて印刷されます。 (2) 減価償却費の計算 被相続人の決算において、減価償却費の計算は、 死亡した日までの月割計算となります。この場合、 1月未満は1月となります。一方、相続人の減価 償却費の計算につても、相続によって開業した日 からの月割計算となります。この場合も 1 月未満 は 1 月として計算します。月の中途で被相続人が 死亡した場合、たとえば、11 月 1 日に死亡した場合、 被相続人において 11 カ月分、相続人において2カ 月分の減価償却費を計算します。このため、結果 的には相続人と被相続人とを合わせて 13 か月分が 計上されることになります。 2.どのように決算すれば良いのか? 相続の場合、減価償却資産の取得価額及び未償 却残額は、相続により取得した者が引き続き所有 (1) 被相続人及び相続人の決算 死亡した者の死亡する日までの期間における事 していたものと見なされます。このため、相続に 業等に関する所得税の申告をしなければなりませ より取得した資産の減価償却費は、被相続人の取 ん。この所得税の申告を「準確定申告」と言います。 得価額及び耐用年数、未償却残高を引き継いで計 相続のあったことを知った日の翌日から起算をし 算します。ただし、相続日が取得日となりますので、 て、4ヶ月を経過した日の前日までに、相続人が 被相続人が平成 19 年 3 月 31 日以前に取得して「旧 共同で申告をすることになります。これは確定申 定額法」が適用されていた資産についても、今後発 告書に準確定申告と記載し、付表を添えて申告手 生する相続では、相続人において一律に「定額法」 続きをすることになります。 が適用されることになります。また、償却方法は 広島 19 2015年 (平成 27年)6月 〔№ 255〕
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