別紙様式1号 平成24年度 木造住宅等の施工能力向上・継承事業 補助事業者名 社団法人 福井県建築組合連合会 担当者名 奥田 徹 1 成果報告書 奥越ブロック会 事業概要 1-1 提案の名称 伝統的建築物を活かしたまちづくりと地域型住宅を目指す<奥越大工塾> 1-2 事業テーマ ⑤ 手刻み加工や墨付け等の伝統的な技術を活用した木造住宅の施工を担う大工技能者等の育成に向 けた技術講習及び実技指導 1-3 事業内容の概要、具体の取組内容 (事業概要)福井県奥越地域は、住宅建設が地域の重要な産業であるが、プレカットの割合は飛躍的に増加するな かで、高度な大工技術は継承されておらず、地域の景観の核となる伝統的建築物も取り壊されつつある。伝統的建 築物を活かしたまちづくりと地域型住宅を目指す大工技能者の育成を行うため座学と実技演習を実施した。 (具体の取り組み)座学は 10 月 28 日、11 月3日、12 月8日の3回に分けて実施した。1日目は「①奥越大 工塾ガイダンス」ののち、 「②伝統的建築物を活かしたまちづくりと地域型住宅づくり」の全国的、先進的事例を 通して、68 名の受講者がその理念を学んだ。2日目午前は大工技術を活かしたまちづくりを実践している白山市 白峰地区を視察、午後からは「③木材のくせや性質を読み取る技術」として座学とあわせて、立木を伐採・製材す るまでの過程を見学、32 名の受講者が参加した。3日目は地域型住宅づくりの座学とあわせて、 「④架構設計や 木組みに関する技術」 、 「⑤リフォーム技術や景観形成に役立つ地場産材利用技術」の座学を開講、46 名の受講者 が参加した。1・2日目座学は大野市学びの里「めいりん」 、3日目座学は大野市九頭竜流森林組合にて開講した。 実技演習は 11 月 23 日・24 日・25 日と12月1日・2日の計5日間、勝山市内の九頭竜流森林組合保管倉 庫にて実施した。演習課題は、奥越の伝統的架構による1坪住宅であり、難易度に差をつけて2種類の課題(丸太 梁と登り梁)を用意し、約4名が 1 組となり計5棟製作した。リフォーム演習として、課題にはリフォームで使 う仕口・継手を盛り込んだ。1日目午前に実技ガイダンスとして、尺竿や原寸図(火打ち定規)の制作方法、番付・ 墨付け記号、仕口・継手について解説を受けたあと、尺竿・火打ち定規の製作および小屋組みの墨付けをおこなっ た。2日目午前には軸組みの墨付けを行ない、大工道具の手入れ方法としてノミ・カンナの研ぎについて実演指導 を受けたあと、午後より小屋組み・軸組みの加工を行った。3日目・4日目には加工を継続して行った。建て方は 4日目の午後に1棟、5日目に4棟実施し、母屋・垂木までの軸組みを完成させた。実技受講生は 23 名、延べ8 日間の受講料として 1 人当たり5千円の参加費を徴収し、実技講習テキスト費に充当した。なお、座学および実 技の経過はビデオにより記録した。また、まちづくりと地域型住宅の手本を発掘するためのデザインサーベイとコ ンテストを実施した。 1-4 カリキュラムの内容 (丸数字は座学であり、上記本文①-③に対応している) 午前内容 午後内容 ①奥越大工塾の目指すもの ①木・風土・大工技術 ①奥越の杉、現状と課題 ②なぜ今、 「地域型住宅づくり」なのか ②これからの木造住宅・木造建築との取り組み について考える 10/28 ②市民と行う古民家再生 丹波篠山 ②奥越における伝統建築物の改修について ③木材の木どりと製材 11/3 ②大工技術を活かしたまちづくり(視察:白山市) ③林地見学/製材見学 ④県産杉の強度と仕口 ②大野の住まいづくりと四十八手 ④架構と大工技術を魅せる家づくり ②新潟県旧山古志村における地域型復興すまいづくり 12/8 ⑤土壁と左官の技術 奥越の家コンテスト受賞作プレゼンテーション ⑤瓦の魅力と雪国の屋根葺き技術 シンポジウム 「奥越の家」次なる展開方法の検討 11/24・25・26 12/1・2・ 実技<一坪住宅の製作> 実技ガイダンス→尺竿・原寸図(火打ち定規)の制作→ 小屋組みの墨付け、番付・墨付け記号→軸組みの墨付け→大工道具の手入れ方法(ノミ・カンナ)→ 小屋組み・軸組みの加工、リフォーム演習(継手加工)→建て方(母屋・垂木)→解体演習 1/4 2 事業の成果(事業によって得られた成果、事業実施の意義等(将来発現が見込まれるものを含む)) 実技では、受講者の経験年数が異なることを考慮して、課題の難易度に差をつけて、奥越の伝統的民家に採用さ れている2種類の小屋組みを用意した。そのため、どのレベルの受講者も最後まで熱心に取り組むことができ、受 講者の満足度は非常に高かった。現場では経験することが少くなった墨付け・手刻み加工の技術を習得し、かつ伝 統的な架構で実際に組み上げたことは、大工技能の後継者として大きな自信につながった。また、若手大工同士が 勤務先以外に横の繋がりをつくることができたことも成果である。 実技には継続した参加が求められるが、座学を実施したことにより、住宅単体としてだけでなく、まちづくりと しても地域の大工技術の果たす役割が大きいことを、より多くの人に認識してもらうことができた。新聞での記事 掲載は計6回に及び、記事を通して地域社会へ大工技能継承の必要性をアピールできた。講座終了後には、福井県 庁ホールにて事業内容に関するパネル展示の要請があった。今回の事業が地域の中で大きく注目されていたことを 示すと同時に、パネル展を通して事業成果を広く県民に公開できた。 3 今後の取組に向けた点検等 3-1 目標設定、実施内容等の妥当性等の点検と今後の取組 今回の事業は、地域のまちづくりを一層進め、伝統的建築物のリフォームニーズを増やすこと、そして木材等の 地場産材を多く使い、大工技術を高める地域型住宅の需要拡大を図ることを目指した。伝統的建築物の修繕等は伝 統的大工技術の得意とすることであり、伝統的技術を学ぶ実技と、大工技術を活かしたまちづくりの座学によって 大工技術継承に取り組む気運をつくることができた。 しかし、地域型住宅の需要拡大を図るためには、伝統的大工の技術以外の新しい大工技術、耐震性や省エネ性向 上等の技術の習得が必要である。大工技術継承の取り組みと合わせて、奥越の気候風土を反映した仕様書やモデル プラン等の整備などを視野に入れ、今後取り組んでいく。 3-2 平成 25 年度以降に必要となる補助金額とその考え方 なし 4 取組の様子 10 月 28 日座学 5 11 月 25 日実技 その他 なし 2/4 カリキュラム詳細 1 ●10 月 28 日(日)~オープニング・セレモニー 【座学】大工技術を活かした奥越の地域づくりを考える 会場:学びの里「 めいりん」(大野市城町 9-1) 9:30- 9:40 開会あいさつ 福井県建築組合連合会奥越ブロック会 会長 竹島正和 9:40-10:00 奥越大工塾の目指すもの 講師:奥越大工塾事務局 奥田 徹 10:00-10:20 木・風土・大工技術 講師:上村建設 上村豊彦 10:20-10:50 奥越の杉、現状と課題 講師:大野市農林整備課 課長 朝日俊雄 11:00-12:30 なぜ今、 「地域型住宅づくり」なのか 講師:(独)建築研究所上席研究員 筑波大学教授 岩田 司 12:30-13:30 <各自昼食> 13:30-15:00 これからの木造住宅・木造建築との取り組みについて考える 講師:アルセッド建築研究所代表 芝浦工業大学名誉教授 三井所 清典 15:10-16:10 市民と行う古民家再生 丹波篠山 講師:才本 建築事務所 才本 謙二 16:10-16:40 奥越における伝統的建築物の改修について 講師:大野建築研究会会長 石田建築設計事務所 石田 芳夫 ●11 月 3 日(祝日) 8:30- 8:45 【視察と座学】木材と大工技術による景観形成 集合 九頭竜森林組合大野工場(大野市吉 6-7) 8:45- 9:45 <バス移動> 9:45-10:45 リフォームと景観形成を同時に行う白山市白峰地区のまち歩き 案内:白山市職員 10:45-11:30 白峰地区のまちづくりについて(@白峰地区行勧寺) 11:30-12:15 <各自昼食> 12:15-12:45 講師:白山市白峰支所職員ほか <バス移動> 12:45-13:45 林地見学 (@勝山市村岡町山林) 案内:九頭竜森林組合職員 13:45-14:15 <バス移動> 14:30-15:15 座学:木材の木どりと製材(@九頭竜森林組合大野工場) 15:15-16:30 製材見学(@九頭竜森林組合大野工場) ●11 月 23 日(祝日) 【実技演習1】 一坪住宅の製作 1 9:00-12:00 講師:石谷工務店 石谷武洋 会場:九頭竜森林組合保管倉庫 (勝山市長山2-5-25) 実技ガイダンス (実技講師 5 名) 尺竿・原寸図(火打ち定規)の制作方法、大工道具の使い方・番付・墨付け記号、リフォー ムに使う継手の解説/尺竿・原寸図(火打ち定規)の制作 12:00-13:00 <各自昼食> 13:00-17:00 演習:小屋組みの墨付け(実技講師 5 名) カリキュラム詳細 2 ●11 月 24 日(土) 9:00-12:00 【実技演習2】 一坪住宅の製作 2 会場:九頭竜森林組合保管倉庫(勝山市長山2-5-25) 演習:軸組みの墨付け/大工道具の手入れ方法(ノミ・カンナ)(実技講師 5 名) 12:00-13:00 <各自昼食> 13:00-17:00 演習:小屋組み・軸組みの加工(実技講師 5 名) 3/4 ●11 月 25 日(日) 9:00-12:00 12:00-13:00 13:00-17:00 ●12 月 1 日(土) 9:00-12:00 【実技演習3】 一坪住宅の製作 3 会場:九頭竜森林組合保管倉庫(勝山市長山2-5-25) 演習:小屋組み・軸組みの加工(実技講師 5 名) <各自昼食> 演習:小屋組み・軸組みの加工/リフォーム演習(追い掛け大栓継ぎ加工) (実技講師 5 名) 【実技演習4】 一坪住宅の製作 4 会場:九頭竜森林組合保管倉庫(勝山市長山2-5-25) 演習:小屋組み・軸組みの加工/リフォーム演習(金輪継ぎ加工) (実技講師 5 名) 12:00-13:00 <各自昼食> 13:00-17:00 演習:小屋組み・軸組みの加工/1棟の建て方演習(実技講師 5 名) ●12 月 2 日(日) 9:00-12:00 【実技演習5】 一坪住宅の製作 5 会場:九頭竜森林組合保管倉庫(勝山市長山2-5-25) 演習:小屋組み・軸組みの加工/建て方演習(実技講師 5 名) 12:00-13:00 <各自昼食> 13:00-16:00 演習:建て方演習 /解体演習(実技講師 5 名) ●12 月 8 日(土)~エンディングセレモニー 【座学】地域の職人技術が明日を拓く 会場:学びの里「 めいりん」(大野市城町 9-1) 9:30-10:15 県産杉の強度と仕口 講師:福井県総合グリーンセンター 林業試験部 10:15-10:50 土壁と左官の技術 11:00-11:45 架構と大工技術を魅せる家づくり 11:45-12:30 瓦の魅力と雪国の屋根葺き技術 池田 実 講師:福井県左官業工業組合勝山支部長 山本左官工業 山本英樹 おだ住建 織田 清 講師:福井県屋根工事業協同組合指導委員 やねやの猪島 猪島具幸 12:30-13:30 <各自昼食> 13:30-13:40 景観計画の概要 美しい景観保全のために 講師:勝山市建設部都市政策課長 渡辺寿彦 13:40-14:10 大野の住まいづくり四十八手 講師:大野建築研究会副会長 長田工務店 長田博幸 14:10-15:00 「新潟県旧山古志村における地域型復興住まいづくり」 講師:(独)建築研究所上席研究員 筑波大学教授 15:10-15:40 奥越の家コンテスト受賞作プレゼンテーション 15:40-16:20 パネルディスカッション「奥越の家」 、次なる展開方法の検討 16:20-16:30 修了証書授与 16:30 閉会あいさつ 4/4 岩田 司
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