橈骨遠位端骨折 透視下での戦略~まとめ

GE Healthcare
橈骨遠位端骨折治療 透視下での戦略
国家公務員共済組合連合 平塚共済病院
整形外科・手の外科センター 部長 兼
横浜市立大学大学院医学研究科 運動器病態学(整形外科) 客員教授
坂野 裕昭
先生
healthymagination
GE Healthcare
国家公務員共済組合連合 平塚共済病院
整形外科・手の外科センター 部長 兼
横浜市立大学大学院医学研究科
運動器病態学(整形外科) 客員教授
坂野 裕昭
はじめに
透視下で橈骨遠位端骨折治療を行う際に、安全かつ効果的
にスクリューを打っていく為には、軟骨下骨を明瞭に同定
し、軟骨下骨の端を狙っていく必要がある。また、治療に
使用する、掌側のロックングプレートは近年、金属製の部
品が非常に多くなっており、複数のKワイヤーやスクリュー
が重なり合う為、ドリルを正確に打ち込んでいくのに非常
に難渋していた。
金属製インプラントの影響
1.ヒストグラム化
一般的な透視装置には、金属製インプラントの影響を受け
て骨の画像が白く飛んでしまうという現象が起きる。この
現象が起きると、骨量構造が淡くなってしまい、観察しに
くい。OEC 9900 EliteにはSmartMetalという、金属を自動で
検知、画像最適化する機能が搭載されている。透視の画像
の中には金属成分、骨成分、空気成分が画面全体にある。
OEC 9900 Eliteはこれをヒストグラムで表し、全体を考慮し
て画像を最適化している。
2.SmartMetal
SmartMetalをOnにすると、金属成分をまとめて1つとして
一般の透視装置では金属の影響を受
けてしまい、画面が真っ白になる。
こちらがSmartMetal Offと同じ状態。
金属
OEC 9900 Eliteは従来の装置とは違
い、すべての画像成分をヒストグラ
ム化し、画像を最適化。
扱い、金属の原子量による、放射線吸収の差は無視して、
黒く塗りつぶした状態となる。残りの部分をヒストグラム
化する為、骨量構造が非常に明瞭に観察可能になる。
3.金属に影響されず、骨折部を観察
SmartMetalにはOn,Offのボタンの他にCアーム本体にUp・
Downのボタンがある。SmartMetalのレベルを上げていくと
、金属成分の幅を広くとっていき、その分、金属成分はさ
らに濃くなる。残りの部分をヒストグラム化することで、
骨部分のコントラストが強く出てくる。SmartMetalで骨を
見やすくすることが、一般的なSmartMetalの目的である。
4 金属の重なりを観察
それに対して、SmartMetalのレベルを下げていくと、金属
成分の中にもヒストグラム表示するところが増えてくる。
金属成分の中での原子量の差による放射線吸収の違いによ
り濃淡が出る為、金属間の色分けが可能になる。つまり、
チタン製のスクリュー、ステンレス製のドリルの判別が可
能になる。実際、術中にスクリューがたくさん入り、重な
ってくると、ドリルの通る位置の同定ができず難渋してい
たが、このSmartMetalの活用によりドリルの通る位置を同
定可能になる。
SmartMetal Up
SmartMetal Down
SmartMetal のレベルを上げると、骨
部分のコントラストが強くなり、骨
の観察がしやすくなる。
SmartMetal のレベルを下げると違う
金属間で色分ができ、重なりが観察
可能になる。
SmartMetal On
SmartMetal Off
SmartMetal を On にすると画面の広
範囲に金属が入ってきても、骨を明
瞭に観察可能。
金属
SmartMetal を On にすると画像の中
の金属成分を自動的に取り除き画像
最適化。
先生
金属
SmartMetal のレベルを上げると金属
とみなす範囲が広がり、矢印の範囲
を最適化。
金属
SmartMetal のレベルを下げると金属
とみなす範囲が狭くなり、より広い
範囲を最適化。
Advanced Case
OEC9900 Elite
SmartMetal
Up/Down
SmartMetal
On/Off
SmartMetalの臨床での応用方法
<Die-punch fragmentの捕捉>
Die-punch fragment(橈骨背尺側骨片)を捉える際、背尺
側までドリリングをする必要があるが、背側を貫通し
たくないので、通常の状況からSmartMetalのレベルを
下げると、画像が飛んで見えなくなり、どこまで打つ
べきかわからなくなる。背尺側の部分で、SmartMetal
のレベルを上げて対応をすれば、軟骨下骨のラインま
で打つことが可能となる(画像①)。
<ドリル・スクリュー挿入時の調節>
掌側にロックングプレートをあてた状態で、軟骨下骨
のすぐ際にロッキングピンを打っていく。最初に
SmartMetalのレベルを上げ、軟骨下骨の位置をしっか
り同定し、Kワイヤーやピンを打っていく(画像②)
。その後、ドリルを入れていくと、ドリルやスクリュ
ーが重なり、ドリルの入ってくる位置が同定できなく
なる。そこで、SmartMetalのレベルを下げていくと、
ステンレスとチタンとの原子量の違いにより、ステン
レスのドリルが走る様子が明瞭に同定可能となる(画
像③)。これにより、背側皮質の貫通、つまり、伸筋
腱にドリリングをする等の合併症を減らすことが可能
となる。
(画像①)SmartMetal On(左)からSmartMetal のレベルを上げ(右)軟骨下
骨のラインを同定。
(画像②)SmartMetal On(左)からSmartMetal のレベルを上げ(右)軟骨下
骨のラインを同定し、ワイヤーやピンを打つ。
(画像③)SmartMetal のレベルを下げ(右)素材の違う金属の重なりを同定し
、正確にドリリングを行う(左)。
まとめ/今後の展望
今日の橈骨遠位端骨折治療において、掌側ロッキングプレ
ート固定術はgold standardになっている。更に遠位の固定
スクリューは関節面の固定性向上に向け2列配列になって
いる為、スクリューの数は7~8本に及ぶことが多い。この
状況で的確な手術を行う為には、透視において金属製イン
プラントが透視画像へ与える影響を最大限減じるべきであ
る。 OEC 9900 EliteはSmart Metal機構を備え、術中に術者
の希望する画像を描出することができる。本機能により適
切な位置にインプラントを刺入することで、関節面の固定
性が向上すると共に合併症も予防できる。いわゆる、ロッ
キングプレート本来の機能を最大限発揮できる術中環境を
提供してくれるのである。今後はこのSmart Metalの精度
を更に向上させ、より容易に術者の希望する最適画像を描
出できるようなUP GRADEに期待したい。
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販売名称:OEC9900シリーズ
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