地方議会議員研修会「地域医療再生セミナー」H27年2月16、17日

江津市議会議長
藤田
厚様
平成27年3月24日
江津市議会議員
永岡静馬
地方議会議員研修会参加報告
【日
程】 平成27年2月16日(月)~17日(火)
【会
場】 新大阪丸ビル別館
【主
催】 地方議員研究会
【研修テーマ】 「地域医療再生セミナー」
講 師
伊関友伸 (城西大学経営学部教授)
【研修内容】
≪1 日目≫
2月16日
Ⅰ.地域医療再生への処方箋1(理論編)
・なぜ、医師不足が起きるのか
・これから地域医療に起きること~税・社会保障の一体改革の意義と地域への影響
・自治体病院と地域医療
・議員質問につなげるポイント
・地域医療再生に向けて
Ⅱ.地域医療再生への処方箋2(実践編)
・税と社会保障一体改革とは?
・国・地方自治体の機能不全
・国民県保健制度と地域医療
・自治体議員の果たすべき役割
・孤独死と孤立化問題
・国保は都道府県単位の運営に
≪2日目≫
2月17日
Ⅲ.新公立病院ガイドラインの方向性を読む
・現在、総務省は、平成26年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針
2014」に基づき、新たな公立病院改革ガイドラインの策定に向けた準備を進めて
いる。平成19年に出された公立病院改革ガイドラインの成果と今回の新たなガイド
ラインの方向性、わが地域の病院の生き残り策について考える。
Ⅳ.自治体病院の経営指標を読む
・自治体病院の経営については、公営企業会計のほか、病床利用率・平均在院日数など
医療や病院経営に関する指標が存在し、分かりにくいものとなっている。
今回、地方公営企業年鑑を通じた自治体病院決算の読み方と主要な自治体病院を評価
する経営指標について、分かりやすく講義する。
Ⅰ.
【地域医療再生への処方箋1(理論編)
】
1.医師不足問題
全国で医師不足が深刻な社会問題になっている。
医師不足の原因
・少ない医師数 ・医療の高度・専門化 ・インフォームドコンセント、
・女性医師の増加
・劣悪な労働環境
・新臨床研修制度、医局制度の崩壊
・国民の医療への不理解
・健康について不勉強な患者の存在
・患者のコンビニ医療志向
○少ない医師数
・これまで国は、昭和40~50年代の医科大学の新設ブームの反動で、医師数の抑制を
する政策を行ってきた。
(昭和56年閣議決定:医師については全体として過剰を招かないように配慮)→(平成
9年閣議決定:大学医学部の整理・合理化も視野に入れつつ引き続き医学部定員の削減に
取り組む)→(平成21年閣議決定:早急に過去最大程度まで増員する)
○医療の高度化・専門化
・医療は世界レベルで、日々進歩している。
・20年前であれば、1人の医師が患者の病気を診ていたが、現在では複数の専門科の医師
が1人の患者の疾病を診ることになる。
○人口の急激な高齢化
・人口が高齢化し、高齢者が増大している。
・高齢者は、がんや生活習慣病など、長い期間、医療を受ける病気にかかることが多い。
・体調をくずす高齢者が、救急外来に数多く集まり、救急病床は高齢者で一杯という病院も
多い。
・さらに、病院で亡くなる人の割合が増加している。
・病院での看取りの増加は、医療者の負担を増やすことになる。
○インフォームドコンセント
・医療現場にインフォームドコンセントの考えが入ってきた。
・重要ではあるが、医師の仕事は増えることになる。
○女性医師の増加
・医師における女性医師の数は年々増えている。
・男女共同参画の考え方からは当然のことである。
・女性医師の場合、出産、子育てで臨床の現場から離れる人が多い。
・男性も女性も子育てしやすい社会をつくる必要がある。
○劣悪な労働環境
・少ない医師で、多くの仕事をこなさなければならないことから、日本の医師の労働環境は
非常に劣悪な状況になっている。
・特に医師不足が深刻な産科、小児科、救急などの現場では、過労死寸前の状況になってい
る。
〔常勤医師1週間当たりの勤務時間 :平均66.4時間/週
最大152.5時間〕
〔時間外も医師は仕事をしている。〕
〔1か月で休日がない・1~4日の医師が46.3%〕
〔18%近くの医師が精神的に追い込まれている。〕
○新臨床研修制度(2004年)
・新人医師が、医師としての基本を身に着けるための制度
・新制度では、新人医師が研修を受けたい病院を選び、病院側の希望と突き合せる制度が導
入された。
・若い医師の多くが、都会の大病院を研修先に選ぶ結果となった。
〔急性期を指向する医師は、高度・専門化に対応し、医師数の多い病院に集まる。〕
〔医師の集まる病院に、さらに医師が集まるという構造になっている。〕
○病院の2極化現象
・医療の高度・専門化に対応し、医師・看護師が集まる病院は収益が上がり、医療機能の向
上のための再投資がしやすい。
・医師・看護師の集まらない病院は、収益が上がらず、医療機能向上のための再投資ができ
ない。
・成長する病院と衰退する病院に2極化している。
○コンビニ医療
・患者が医師の疲弊を考えず、自由気ままに休日・夜間診療を受ける。
・昼間働いて夜、診察を受ける。
・早く診てもらえると必要ないのに救急車を使う。
・軽い切り傷や水虫で深夜診察を受ける。
→(このような患者のいる地域から医師は立ち去っていく)
○病院がなくなる?
・医師がいなければ医療行為はできない。
・医療行為ができなければ収益が上がらない。→病院の経営は大赤字になる。
・その結果、病院財政は破綻、病院を閉鎖しなければならなくなる。
〔舞鶴市民病院の実例〕
・全国有数の一般内科医研修を行っていた病院であるが、2004年にその中
心となった副病院長の退職を機に内科医が大量退職。
・市長の医師への感情に配慮しない行動や発言もあって、2006年7月には、
常勤の医師全員が退職、医師不在の病院になった。
・一時期は2人の入院患者に91人の看護師や事務職員が存在するという異常
事態に追い込まれる。
2.どのようにして医師が勤務する地域にしていくか
○医師が勤務したくなるような地域にするには
・行う医療を明確にする(あれもこれも求めない)
・過酷すぎない勤務
・医療技術を学べる、自己が成長できる病院であること
・専門医の資格が取れる施設である。
・適切な報酬があること。
・住民の感謝があり、適切な受診行動が行われる地域である
○病院機能の再編
・医療の高度・専門化に対応し、医師が集まる医療機関にするには、病院機能の再編を行い、
医師を中核的な病院に集める必要がある。
・医師が中核的な病院に集まることで、1人当たりの負担も軽減される。
・専門医資格が取れる医療機関にすることが可能となる。
○現場で働く医師の話をよく聞くこと
・医療機能の再編でよくある話として、現場で働く医師を蚊帳の外において、行政や住民が
勝手に「推進」「反対」の議論をすることが多い。
・現場の医師の話をよく聞かなければ、医療機能の再編はうまくいかない。
○地域で「医師を育てる」
・全国の有力病院や地域の病院で、大学医局と連携したり、または病院独自に「医師を育て
る」働きが起きている。
・過度に大学医局に依存せず、地域自らが医師を育てていくことも重要である。
→全国に161のPC連合学会認定後期研修プログラムがある。
○総合診療医の必要性
・人口が高齢化する中で、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の患者が増大し、症状も複数の
臓器にまたがるものが多くなっている。
・これらの患者については、特定の臓器だけを専門的に診るよりも、患者の生活習慣の指導
も含めて、その人の体すべてを診ることのできる総合診療医が診療を行うことが効果的で
ある。
≪それぞれの病気を専門医にかかると≫
①高血圧症
循環器内科
②狭心症
循環器内科
③糖尿病
内分泌内科
④慢性胃炎
消火器内科
⑤変形性膝関節症
整形外科
総合診療医→専門医へつなぐ
⑥前立腺肥大症
泌尿器科
⑦慢性湿疹
皮膚科
⑧白内障
眼科
○総合診療医に求められる能力
・地域住民の生活習慣を含めた体のすべてを診る能力
・大病院の臓器別専門医に紹介しなければならない病気を迅速かつ的確に見つけ出し、専門
医に送る能力
・住民の健康に関して、住民や行政に働きかけ、連携する力
・社会的なコミニケーション能力が求められ、このような力は、地域の病院で勤務すること
で身に着けることができる。
○地域の病院で総合診療医を育てる。
・大学病院は、世界水準で進歩する専門医療を研究するという性格から、総合診療医を養成
しにくい体質にある。
・地域の病院で、総合的に患者を診ることができる総合診療医を養成していくことが必要と
なる。
多数の臓器別
専門内科医の
寄合所帯
多数の総合診療
医と少数の臓器
別専門内科医
Ⅱ.
【地域医療再生への処方箋2(実践編)
】
今、地域に起きていて、これから一層進むこと
1.国際化・情報化の進展と社会の二極化
2.急激な人口の高齢化
3.地域での個の孤立の拡大
4.国・地方政府の機能劣化
1.国際化・情報化の進展と社会の二極化
○国際化・情報化は国の境目を超えた
・人・物・情報・資本は、国の壁を越えて自由に移動する時代となってきている。
・同時にITの進歩は、われわれの生活を大きく変えた。
・われわれの生活に豊かさをもたらしたと同時に負の側面も無視できないほど大きくなっ
ている。
→悪いことと良いことがセットになっている。悪いことをなくそうとすると、良いことまで
が影響を受けてしまう。
○環太平洋戦略経済連携協定(TPP)とは
・2006年にニュージランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4か国が発行させた、貿
易自由化を目指す経済的枠組み。
・工業製品や農産品、金融サービスなどをはじめ、全品目について、2015年をめどに関
税全廃を実現するべく協議が行われている。
・2010年11月の時点で、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの5
か国がTPPへの参加を表明している。
PS:連携協定の対象
・工業製品、農産物、繊維、衣料品の関税撤廃 ・金融、電子取引、電気通信等のサービス
・公共事業や物品などの政府調達方法 ・技術の特許、商標などの知的財産権
・投資のルール ・衛生・検疫 ・労働規制や環境規制の調和
・貿易の技術的障害の解決 ・貿易紛争の解決
○グローバルサタンダード
・世界的に通用・普及・定着している標準や規格、規則を示す言葉。
・「規制をできるだけなくすことが正しい」という価値基準が世界の基準になっている。
・単なる関税をゼロにするだけでなく、非関税障壁として制度の変更を迫られる。
例:A国の食品基準がB国の基準より高い場合
A国
B国
(基準が高い)
(基準が低い)
【非関税障壁】
A国の商品をB国は受け
入れられるが、B国の
商品はA国は受け入れ
られない。
○日本の医療への影響は?
・TPPに参加した場合、非関税障壁として原則認められていない「混合診療」や株式会社
の医療参入を全面的に解禁することを求められる可能性がある。
・日本医師会は、TPP参加は国民皆保険制度を崩壊させる可能性があると反対している。
○混合診療
・
「混合診療」は、保険診療と自由診療を併用して医療を受けること。今は認められていない。
・組み合わせると全額自己負担になる。
・実際は、先進医療や選定療養費という形で部分的に認められている。
○無制限に混合診療を認めると
・混合診療は、より質の高い医療を受けられる点で良いように思われる。
・自由に認められると、お金持ちは良い医療を受けられて、お金のない人は医療を受けられ
ない格差を生む可能性がある。
・利益の上がる最先端医療ができるのは都市、医師の地域偏在が加速する可能性がある。
○厳しい混合診療禁止のルールだから
・国民が保険を受けられる治療方法が限定されて、医療費がある程度抑制される。
・当然、医療の進歩に合わせた治療行為の保険適用を行う必要がある。
○アメリカの医療
・医療政策が明らかに失敗している国
・公的な医療保険は人口の約3割しかカバーしていない
・民間の医療保険が人口の6割、多くは企業提供のもので保険料が高く、企業の経営を圧迫
している。
・民間の医療保険は入る保険の金額によって提供される医療に差がある。
・対GDP当りの医療費16%で世界一、日本は8%。
○国際化や情報化は社会の二極化を加速させる。
・国際化や情報化は、不可避な反面、その反映である自由競争の社会は、社会の二極化、格
差社会を生む面がある。
・社会格差は、これまで格差が少なく、安定的であった日本の社会を不安定にさせることに
なる。
2.急激な高齢化
・これから確実に起きることは、急激な高齢化が起きることである。
・特に1都3県を中心に都市部の都道府県で高齢化が進展する。
○高齢化のピークで起きること
・医療、介護の絶対的な資源不足
・医療、福祉、年金の支出の増大
・税収の減少
・その一方、地域には元気な高齢者が存在
・地域が崩壊しかねない危険性
3.地域における個人の孤立の拡大
・現在、確実に進んでおり、これからもさらに深刻化する可能性の高いことが地域における
個人の孤立の拡大である。
○遺品整理業者が見る日本の「孤独死」
・
「孤独死は、賃貸住宅に住んでいる人がほとんど。公団よりも民間の1DK、2Kのマンシ
ョンや、アパートの住人に多く見られます。
遺品整理の専門業者「キーパーズ」(愛知県)の青山耕三・東京支社長の談話。
・2000件のうち、1900件が一人住まいで、内訳は900人は病院などで亡くなり、
1000人が自宅での孤独死。
・依頼の半数近くは、東京で、孤独死が多いのは、50~65歳の男性だという。
・孤独死した男性の部屋からは、生活が崩れていることを感じることが多いという。
・
「食事はコンビニ弁当とインスタント食品ですませ、電気製品は壊れたまま。病院にも行か
ず、薬局の市販薬を服用している。その一方で、高度成長期を担ってきたという自負だけ
はあり、勝ち負けを特に意識しているのがうかがえる。」
○個人の孤立化で何が起きるか
・悲惨な事件の増大
・社会不安の増大
・行政不信の増大
・地域住民の相互不信
・社会的コスト、行政コストの増大
4.国・地方自治体の機能劣化
・社会不安が深まる一方、国・地方自治体は、政治家・行政職員が共に機能劣化している。
○戦後の日本の公務員組織
・戦後、日本の公務員組織は、廃墟の時代から欧米諸国に追いつくため一生懸命努力してき
た。
・そして、その仕事の多くは、不足する住宅、交通、産業、教育、保健、医療などの人的、
物的な基盤を整備することに力がそそがれた。
→S20年代は、学校建設が中心となっていた。
○集権的なシステムが機能
・中央省庁を頂点とする集権的行政システムが機能
・国が税金を集め、各省庁が全国に計画的に分配
・その結果、全国どこの地域も物質的には豊かになった。
・個別の問題はあったかもしれないが、日本の公務員組織は成果を上げてきた。
○豊かさゆえの問題の発生
・しかし、世界有数の経済大国となり、社会資本も一定の水準に達した日本では、豊かさゆ
えの新しい問題に直面することになった。
例:児童虐待やひきこもり、ホームレス
・これらの問題は、中央官庁や都道府県の指示に従っていれば解決できるという問題ではない
・現場に一番近い市町村が関係者と知恵を絞って問題を解決するのが一番効果的である。
○公務員が少なく国民が「お任せ」意識
世界の国の人口千人当たりの公務員数(人)比較
・日本
42.2人
ドイツ 69.6人
アメリカ
・イギリス 78.3人
フランス 95.8人
73.9人
・ミスをしたら、マスコミ、議員、住民は犯罪を犯したかのように公務員を叩く。
・批判されるばかりの公務員がリスクをもって新しい仕事をするであろうか。
・このようにして、必要以上のことをしない、ことなかれの公務員が増える。
○社会問題解決には人が必要
・新しい社会問題の解決には人が必要だが、社会問題はどんどん難しくなってきている。
・しかし、国民はさらに公務員を減らすことが正義と考えている。
→これでは社会問題を解決できない。
○地域の最重要課題は高齢者をいかに支えるか
・これからの日本にとって最重要課題は、激増する高齢者の生活をいかに支え、看取ってい
くかである。
○絶対的な医療資源不足
・爆発的な高齢者の増加に対し、絶対的に医師・看護師などのマンパワーや入院病床などの
医療資源が不足することが予測される。
・入院のための病床・スタッフ不足
・救急のためのスタッフ不足
・専門外来のためのスタッフ不足
・医療のための財源不足
5.国の社会保障政策はどのように動くか
○福田内閣「社会保障国民会議」
・現在の改革である「社会保障・税の一体改革」の議論は、平成20年1月福田内閣の「社
会保障国民会議」からの流れである。
・平成22年10月、民主党の管直人内閣が「政府・与党社会保障改革検討本部」を設置。
・平成24年2月には、社会保障・税一体改革大綱が閣議決定された。
・同年8月、民主・自民・公明の3党合意で「社会保障と税の一体改革関連法案」が成立。
≪社会保障給付費の推移≫
単位:兆円
1970年
1980年
1990年
2000年
2012年
給付総額
3.5
24.8
47.2
78.1
109.5
年金
0.9
10.5
24.0
41.2
53.8
医療
2.1
10.7
18.4
26.0
33.6
福祉・その他
0.6
3.6
4.8
10.9
20.6
○社会保障・税一体改革が目指す医療・介護サービス提供体制改革
・入院医療の機能分化・強化と連携
急性期への医療資源集中投入。亜急性期、慢性期医療の機能強化 等
・地域包括ケア体制の整備
在宅医療の充実、在宅介護の充実
≪医療・介護サービス保障の強化≫
病気になったら
急性期病院
地域の連携病
院
亜急性期・回復期
リハビリ病院
かかりつけ医
退院
包括的マネジ
メント
・在宅医療連
携拠点
・地域包括支
援センター
退院したら
<地域包括ケアシステム>
医療
住まい
生活支援・介護予防
介護
○医療機関の機能分化
・一般病床の中に新たな類型として「急性期病床群」を創設
・医師や看護師などの医療人材を集中して投入
・一般急性期、亜急性期、長期療養の医療機関と医療連携を行う。
○H26年診療報酬改定
・現在、地域の病院に大きな影響を与えているのが、H26年度診療報酬改定
・急性期病院の生き残りをかけた競争
○総合入院体制加算
・平成26年度診療報酬では、一定の実績を持つ医療機関に対して、「総合入院体制加算1」
をつくり、評価を行う。
・総合的に急性期医療を担う基幹病院が目指す施設基準。
・これからも実績を有する高度急性期病院への評価を充実する動きは進むと考える。
平成26年度診療報酬改定
高度急性期と一般急性期を担う病床の機能分化
総合的かつ専門的な急性期医療を担う医療機関の評価
総合入院体制加算について、一定の実績等を有する医療機関に対し、より充実した評価を
行う。なお、従前の総合入院体制加算については、総合入院体制加算2として引き続き評価
を行う。
(新)
総合入院体制加算1(1日につき・14日以内)
240点
【施設基準】
①全身麻酔による手術件数が年800件以上である。なお、併せて以下のアからカの全てを
満たすこと。
ア人工心肺を用いた手術 40件/年以上
エ放射線治療
4000件/年以上
イ悪性腫瘍手術
400件/年以上
オ化学療法
4000件/年以上
ウ腹腔鏡下手術
100件/年以上
カ分娩件数
100件/年以上
②救急救命医療として24時間体制の救急を行っていること。
③医療法上の精神病床を有する医療機関であること。また、精神病棟入院基本料(中略)を
届け出ており、現に精神疾患患者の入院を受け入れていること。
④地域包括ケア病棟入院料、地域包括ケア入院医療管理料および療養病棟入院基本料の届け
出を行っていない医療機関であること。
⑤当該保険医療機関の敷地内が禁煙であること。
⑥総合入院体制加算2の要件を全て満たすこと。
総合入院体制加算2(1日につき・14日以内)
120点
○7対1入院基本料要件の厳格化
・H26年改定で、診療報酬単価の高い7対1入院基本料の要件が厳格化された。
・7対1病院だけでなく、高齢者を多数受け入れている中小病院が影響を受ける結果となっ
た。
○在宅復帰力のない病院には患者が回ってこない
・患者の集まっている7対1病院は、自宅、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア
病棟、在宅復帰機能強化加算を取った療養病棟、居宅系介護施設等、在宅強化型老健施設
にしか患者を送らなくなった。
○一般病床における入院基本料要件の厳格化
・平均在院日数の算定の基礎となる短期滞在手術の除外。
・重症度、看護必要度の見直し。
・90日を超えた患者の報酬見直し。
・高齢者の長期入院中心の病院が減収となる改定が行われた。
○中小病院の存続の危機
・入院患者を減らし、1日入院単価の伸びない中小病院は、手持ち現金を使い果たし、経営
の危機に陥っているところも少なくない。
○医療・介護総合推進法の成立
・平成26年6月、医療・介護総合推進法が成立した。
・第1次ベビーブーム世代が75歳以上の高齢者となる2025年を見据えて、医療と介護
の在り方を見直し、持続可能なサービス提供体制の確立を目指す法律。
○医療・介護総合推進法の概要
1.新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等)
①都道府県の事業計画に記載した医療・介護の事業(病床の機能分化・連携、在宅医療・
介護の推進等)のため、消費税分を活用した新たな基金を都道府県に設置する。
②医療と介護の連携を強化するため、厚生労働大臣が基本的な方針を策定する。
2.地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)
①医療機関が都道府県知事に病床の医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)等
を報告し、都道府県はそれをもとに地域医療構想(ビジョン)
(地域の医療提供体制の将
来あるべき姿)を医療計画において策定する。
②医師確保支援を行う地域医療支援センターの機能を法律に位置付けた。
→医療政策における都道府県の果たす役割が大きくなる
○都道府県から勧告も出せる
・地域医療構想(ビジョン)は、厚労省からのガイドラインと詳細なデータにより策定され
る予定である。
・都道府県は病床機能の分化、連携推進を進めるための要請に従わない場合、医療機関名の
公表や各種補助金の交付対象から外す権限を有する。
○選択を迫られる病院
・地方の病院は、患者のかなりの数を高齢者が占め、急性期病院としての存続はぎりぎりと
いう病院も少なくない。
・急性期病院としての存続をあきらめると大学医局からの医師引き上げが起きる危険性もあ
る。
6.国民健康保険の保険者問題
○「医療保険制度改革骨子」
H27.1.13社会保障制度改革推進本部が決定
・
「国民健康保険の安定化」として、平成30年度から都道府県が財政運営の責任主体となる
ことが位置付けられる。
・国保の財政基盤の強化のために、平成27年度から保険者支援制度の拡充(約1700億)
を実施する。
・必要な予算措置を講ずるとともに、平成27年の通常国会に所要の法案を提出する。
○都道府県が財政運営の責任者に
・都道府県は県内の統一的な国保の運営方針を定め、市町村ごとの分賦金決定及び標準保険
料等の設定、保険給付に要する費用の支払い、市町村の事務の効率化、広域化等の促進を
実施する。
・市町村は、地域住民と直接顔の見える関係の中、保険料の徴収、資格管理、保険給付の決
定、保健事業など、地域におけるきめ細かい事業を引き続き担う。
・財政運営に当たっては、都道府県が医療費の見込みを立て、市町村ごとの分賦金の額を決
定することとし、市町村ごとの分賦金の額は、市町村ごとの医療費水準及び所得水準を反
映する。
・国の普通調整交付金については、都道府県間の所得水準を調整する役割を担うよう適切に
見直す。
○後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入
・被用者保険者の後期高齢者支援金について、より負担能力に応じた負担とし、制度の持続
可能性を確保する観点から、総報酬割部分(現行制度では1/3)を平成29年度から全
面総報酬割を実施する。
→収入の多い企業組合、共済保険の負担が増加する
○被用者保険・国保の高額所得者の負担増
・今回の医療保健制度の改革では、被用者保険の標準報酬月額上限の引き上げ、国保の保険
料の賦課限度額の引き上げが行われる。
・高額所得者の負担増がなされている。
○財政基盤強化策の恒久化
・H22年度から25年度までの暫定措置である市町村国保の財政基盤強化策(保険者支援
制度・共同事業)を恒久化する。
→保険料軽減の対象となる低所得者数に応じて、保険者に対して財政支援する制度
(国、都道府県、市町村が2:1:1で負担)
・高額療養費共同事業(1件80万以上の医療費への補助)
・保険財政共同安定化事業(1件30万以上の医療費への補助)
→対象を全ての医療費に拡大する。
→そのため都道府県調整交付金を給付費等の7%から9%に引き上げる。
※これに伴い、定率国庫負担を給付費等の32%とする。
○地域包括ケアの推進で重要なこと
・キーワードは「連携」
・膨大な高齢者を少ない医療・介護の資源でケアしなければならないことから、関係者が「連
携」して、高齢者を支えることが重要となる。
○市町村の役割の重要性
・関係者が連携するために、コミュニケーションを図ることが重要となる。
・さまざまな関係者をつないでいくために、市町村の役割は大きい。
・コミュニケーション能力がある職員を地域包括ケアの担当に配置すべき。
○地域存続の危機
・これから、地域は本格的な高齢化により、かつてない存続の危機に直面することになる。
・変化に対応できない地域は、存続できない。
・地域の高齢者が安心して亡くなっていくことができない地域は、存続できない。
Ⅲ.
【新公立病院ガイドラインの方向性を読む】
1.公立病院改革ガイドラインの経緯
○2007年公立病院改革懇談会
・改革を通じ、公・民の適切な役割分担の下、地域において必要な医療提供体制の確保を図
ることにあるとする。
○総務省公立病院に関する財政措置の在り方検討会
・総務省が2008年7月に設置。検討会では相次ぐ自治体病院の崩壊を受け、地域医療を
守るためには、必要な財政支援を行うべきという議論が多く出された。
・
「必要な医療を効率的に提供するため、公立病院改革推進の視点も必要」という意見に加え、
「地域医療の確保の観点から、過疎地における医療、産科・小児科・救急医療に関する財政
措置は充実の方向で対処すべき。
・
「各地方公共団体においては、所定の経費負担区分ルールに従い、一般会計から適切な繰り
入れが必要」などの意見が盛り込まれる。
2.経済財政運営と改革の基本方針2014
・安部内閣が平成26年6月24日に閣議決定。
・
「『公立病院改革プラン(5カ年計画)』に基づく取り組みの成果を総務省・厚生労働省が連
携して評価したうえで、地域医療構想の策定に合わせ、今年度中に、新たな公立病院改革
ガイドラインを策定する。」
○新ガイドラインのポイント①
・国の進める社会保障・税の一体改革に基づき、都道府県が策定する地域医療構想(ビジョ
ン)のガイドラインを厚生労働省が検討していることを踏まえ、公立病院改革プランに「地
域医療ビジョンを踏まえた役割の明確化」を新たに盛り込むことを求める。
○新ガイドラインのポイント②
・病院の新設・建て替えに対して、現行では元利償還金の30%を地方交付税で措置してい
るが、「再編・ネットワーク化」に伴う整備の場合には40%に引き上げる。
・それ以外の老朽化による建て替えなどの場合は元利償還金の25%に引き下げる。
○新ガイドラインのポイント③
・公立病院の運営費に係る地方交付税措置(病床当り単価:H26年度707千円)に関し
て、
・算定基礎を従来の「許可病床数」から「稼働病床数」に見直す。
・病床機能報告制度の開始により稼働病床数の把握が可能になったことに基づく。
○新ガイドラインのポイント④
・建設資材高騰などを踏まえ、地方交付税措置の対象となる建築単価を引き上げ
・建築単価の上限を1平方メートル当たり30万円から36万円とする。
○交付税措置の算定基礎が「稼働病床数」になることで、医師不足で病床利用率を落として
いる自治体病院の交付税が大幅に減少する危険性がある。
→H28年の改定に注意が必要!!
3.自治体病院の経営形態について
○病院機能の再編
・医療の高度・専門化に対応し、医師が集まる医療機関にするには、病院機能の再編を行い
医師を中核的な病院に集める必要がある。
・医師が中核的な病院に集まることで、1人あたりの負担も軽減される。
・専門医資格が取れる医療機関にすることが可能となる。
○国の財政的支援
・これまでは、「地域医療再生基金」による支援と病院建築への地方交付税措置があった。
・今回は、公立病院の再編・ネットワーク化に係る施設等の整備に、病院事業債(特別枠)
による元利償還金の40%の交付税措置と、都道府県地域医療ビジョン推進に係る「地域
医療介護総合確保基金」の支援が創設。
○自治体病院の地方独立行政法人化
・自治体病院が地方独立行政法人を目指す大きな要因は職員雇用の弾力化をするため。
・現在の医療は、人を雇用することで加算を取り、収益を向上させる。
・職員定数で人の採用を制約することは病院経営にとっては、マイナスでしかない。
○病院の提供する医療サービスの性格が変わってきている。
・昭和の時代は、薬や注射などに診療報酬が重点的に配分された。
→病院は、薬や注射を売る小売業的性格であった
→できるだけ人を減らして利益を得る。
・現在は、診療報酬は技術に対して適切に配分されることを目指している。
→サービスを提供して収益を上げる業態になっている。
→人を雇わなければ利益が得られない。
○職員が研修していないと加算がとれない
・職員が研修していないと加算が取れない。病院管理の進歩に遅れていく。
・職員が研修できる余裕を持たなければならない。
4.指定管理者の導入
○病院マネジメントの限界
・医師数20~30人ていどまでの中小規模の病院で
・医師招へいを含めて病院マネジメントが限界である場合
・地域医療を残すために指定管理者制度の導入を図ることもやむを得ない場合もある。
○指定管理・廃止・譲渡の場合の問題点
・職員を全員分限解雇しない限り、自治体に残りたいという職員を雇用し続けなければなら
なくなる問題がある。
5.バッファー(緩衝器)の医療
○制度のすきまを埋める重要性
・地域の人々のつながりが希薄化し、個人・家庭が孤立している。
・制度のすき間からこぼれ落ちる人が増えている。
・国の進める診療報酬や介護報酬の抑制政策は、制度のすき間からこぼれ落ちる人を増大さ
せている。
○バッファー(緩衝器)の医療
・バッファーの役割は、自治体病院だけでなく、済生会や赤十字などの公的病院や弱者を守
ることを理念として明確に示している民間病院の一部でも積極的に担われている。
・自治体病院は、数も多く、その公的な意義から、バッファーとしての役割を多く担ってい
る。
・バッファーがないと、行き先がなくなる人がでてくる。
6.正念場の病院経営
・国の医療システム改革が進む中で、自治体病院も生き残りのための取り組みが求められる
時代となっている。
・新しい公立病院改革ガイドラインは、病院生き残りのための契機とすべきである。
以下、重複した内容が多いため省略します。
【感 想】
医療に関しては、かなり専門的な知識を要求される内容であるが、豊富なデータと講師の
実績に裏打ちされた話は興味深かった。江津済生会病院に直接、役に立つものがあるのかな
いのか判断ができないが、教授の話を職員や議員、病院関係者にも是非聞いてもらえれば、
何らかの打開策が発見できるのではないかとの認識を持つことができた。近いうちに、教授
に江津に来てもらい、講義をしていただきたいと考える。