陸域からの栄養塩供給とノリ養殖 【背景・目的・成果】水質汚濁防止の施策や社会的協力により、播磨灘の水質はかなり回復してきま した。一方で、水中の栄養塩(特に溶存態無機窒素、DIN)が不足することによって生じる「ノリの色 落ち」が、近年、兵庫県の漁業で大きな課題となっています。加古川河口域で栄養塩の動態とノリ の生産状況を調べた結果、海域が貧栄養化した現状においては、陸域からの栄養塩供給源(河川、 下水処理、産業排水等)が、近隣ノリ漁場への重要な窒素供給源となっていることがわかりました。 色落ち 正常 正常な乾海苔と色落ちノリの乾海苔 色落ちしたノリは、外観が悪い(色、つや)ほか アミノ酸量の減少等によって食味も悪くなるた め、販売されないか非常に安い値段で取引さ れてしまいます。 加古川河口域の主な栄養塩供給源 沿岸ノリ色調 DIN 沿岸 8 7 現場観測では、加古川河口左岸沿岸にDIN高濃度域 の分布が確認できる場合が多く認められました。 12 10 8 6 3月下旬 3月中旬 0 3月上旬 0 2月下旬 2 2月中旬 1 2月上旬 Hは高濃度、Lは低濃度の箇所 14 4 1月下旬 加古川河口域のDIN濃度分布例 ノリの 色良い 16 2 1月中旬 8 3 1月上旬 播磨灘 4 12月下旬 10 5 12月中旬 H H 6 12月上旬 DIN濃度(μmol/L) L 加古川市 10 ノリ網張り替え時期 8 沖側ノリ色調 DIN 沖側 ノリの色調(SPAD値) 9 加古川 陸域からの栄養塩供給の影響を受けやすい漁場の 沿岸側でDIN濃度は高く、ノリの色調も良好でした。 【技術の活用】 調査結果は、「豊かな海」の復活を目指して、これからの瀬戸内海の水質管理の あり方を検討する情報として活用します。 兵庫県立農林水産技術総合センター 水産技術センター
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