2015 年 2 月 19 日 【カンボジア自然災害リスク<最終回>】 カンボジアの地震リスクについて インターリスクアジアタイランド シリーズ最終回はカンボジアの地震リスクについてご紹介します。カンボジアの地震リスクは、日本と比較して低いものと考え られます。 1. 地震ハザードの概要 カンボジアはユーラシアプレートの南端付近に位置しており、地震が非常に少ない国です。 米国地質調査所(USGS:United States Geological Survey、以下 USGS)のデータを基に作成された過去の地震発生 地点を下図に示します。カンボジアにおいては震源を表す赤丸がなく、また、震源が帯状に分布しているプレート境界 からの距離もある程度離れていることがわかります。 【図 1】 主なプレートと地震活動(出典:気象庁資料を基に作成) © Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page | 1 2. 過去の地震 前述のとおり、カンボジアは地震が非常に少ない地域に位置しています。 下表に東南アジアにおける地震の発生データを示します ※ 。当データは、Incorporated Research Institutions for Seismology (IRIS)、US National Earthquake Information Center (NEIC)、Global CMT Catalogue (CMT)、Thai Meteorological Department (TMD)のデータベースを基に作成されたものです。カンボジア(タイ東部を含む)周辺の地 域は、東南アジアの中でも地震発生回数が少なく、発生した地震の規模(マグニチュード)も小さいことがわかります。 なお、Earthquake Track.com (http://earthquaketrack.com/kh-11-phnum-penh/recent)によれば、カンボジアにおいては、 ここ数年でマグニチュード 1.5 以上の地震は発生していません。 【表 1】 東南アジア地域の地震発生回数と最大・最小マグニチュード Zone code Zone A Zone B Zone C Zone D Zone E Zone F Zone G Zone H Zone I Zone J Zone K Zone L Zone M Zone N Zone O Zone P Zone Q Zone R Zone S Zone T Zone U Zone name Andaman subduction West-Central Myanmar East-Central Myanmar Mae Hong SonMatabar Muang Pan-Chiang Rai Chiang Mai-Luang Pra Bang Central Thailand Petchabun-Wang Wiang Khorat Plateau Song Ca Northern Vietnam Eastern ThailandCambodia Andaman Arc Andaman Basin Western Thailand Mergui Gulf of Thailand Malaysia-Malacca Aceh-Mentawai Tenasserim Sumatra Island 地震発生 回数 101 マグニチュード 最大 最小 9.0 4.0 61 6.9 4.0 87 6.5 4.0 293 6.2 4.0 140 6.4 4.0 643 6.6 4.0 7 5.0 4.0 26 5.5 4.0 16 21 17 5.8 5.3 5.8 4.0 4.0 4.0 【図 2】 Zone code 3 4.6 4.0 (カンボジア) 131 190 83 36 4 33 210 14 250 8.6 6.6 6.5 5.7 5.4 5.6 8.4 6.2 7.4 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 (出典:下記文献からインターリスクアジアタイランド作成 Terr. Atmos. Ocean. Sci., Vol. 21, No. 5, 757-766, October 2010, Santi Pailoplee, Yuichi Sugiyama, and Punya Charusiri1,” Probabilistic Seismic Hazard Analysis in Thailand and Adjacent Areas by Using Regional Seismic Source Zones” ) © Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page | 2 3.地震ハザードマップ 3.1 UN OCHA 版ハザードマップ OCHA の地震ハザードマップを下図に示します。 同ハザードマップは、50 年発生確率 20%(再現期間 220 年)で想定される揺れの強度を改正メルカリ震度階級※で表 しています。 カンボジアは改正メルカリ震度階級Ⅰ-Ⅴが想定されており、最も揺れの強度が低いカテゴリーに分類されています。 日本で想定されている震度階級は最も低い地域でもⅦであり、日本と比較するとカンボジアの地震ハザードは低いと いえます。 【図 3】 地震ハザードマップ(出典:UN OCHA) ※改正メルカリ震度階級 ある地点における地震による揺れの強さを表す指標であり、アメリカなど世界中で用いられています。地震計による計 測値から算出する日本の気象庁震度とは異なり、人による感じ方や食器、本の状態、構造物の損傷状況等に基づいて 判断されます。 それぞれの震度階級で想定される状態を次ページに示します。 © Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page | 3 <改正メルカリ震度階における各震度階の状況 (出典:USGS のホームページを和訳)> ※カンボジアで想定される地震は震度階Ⅰ~Ⅴ(下記のうち枠で囲った部分)。 I. ほとんどの人は揺れを感じない。 II. 建物の上層階などで、座っている人のうち何人かは揺れを感じる。 III. 建物の上層階などにいる人の多くが揺れを感じる。多くの人は揺れの原因が地震であることに気が付かない。止まっ ている車が少し揺れる。トラックが走った時と同じような振動を感じる。 IV. 日中、屋内にいる多くの人が揺れを感じる。夜間は目覚める人もいる。皿、窓、ドアが動き、壁がひび割れるような音 がする。ビルはトラックが衝突したような衝撃を受ける。止まっている車が揺れる。 V. ほぼ全ての人が揺れを感じ、多くの人が目覚める。皿、窓などが割れ、固定していないものが倒れることがある。振り 子時計が止まる。 VI. 全ての人が揺れを感じ、多くの人が恐怖を感じる。重い家具が動く。壁土が崩れた事例があるが被害は軽微である。 VII. 耐震性の高い建物はほとんど被害がなく、中程度の耐震性を有する建物の被害は軽微である。耐震性の低い建物 は顕著な被害を受け、いくつかの煙突が壊れる。 VIII. 高い耐震性を有する建物の被害は軽微であるが、通常の耐震性を有する建物は部分的に壊れる。耐震性の低い 建物は大きな被害を受け、煙突、積荷、記念碑、壁が壊れる。重い家具が転倒する。 IX. 高い耐震性を有する建物が大きな被害を受け、耐震性の高い建物が半壊する。 X. 木造の建物が倒壊し、耐震性の高い建物の多くが半壊する。電車のレールが曲がる。 XI. ほぼ全ての建物、橋が倒壊する。電車のレールが著しく曲がる。 XII. 全てが崩壊する。物が空中を飛ぶ。 © Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page | 4 3.2 GSHAP 版ハザードマップ GSHAP(Global Seismic Hazard Assessment Program)の地震ハザードマップを下図に示します。 同ハザードマップは、50 年発生確率 10%で想定される地表面最大加速度の分布を表しています。 カンボジアは地表面最大加速度 0.4m/sec2(約 40gal)が想定されており、二番目に地表面最大加速度が小さいカテゴ リーに分類されています。 日本で想定されている地表面最大加速度は最も低い地域でも 1.6m/sec2(約 160gal)であり、GSHAP のハザードマッ プにおいても日本と比較するとカンボジアの地震ハザードは低いといえます。 【図 4】 地震ハザードマップ(出典:GSHAP) © Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page | 5 4. 建築基準 カンボジアでは、Ministry of Land Management および Urban Planning and Construction が国土管理、都市計画、建 築、土地台帳管理等を管轄しています。 Web による調査では、構造安全性、消防、衛生、建物設備(排水、階段等)、ユーティリティ(電気・燃料)、建物へのア クセス等を規定した Building Regulations に言及する資料を収集しましたが、規定の詳細まで確認できませんでした。 Asia Insurance (Cambodia)、プノンペン経済特区、JICA へのヒアリング調査では、いずれも建築基準や消防基準はカン ボジアに存在しないとのことであり、仮に Building Regulations が存在していたとしても工場や土木構造物の建設には用 いられていないものと推察されます。 以上 Reference: United Nation Office for Coordination of Humanitarian Affairs (UN OCHA) Relief Web, OCHA United States Geological Survey (USGS) 気象庁 GSHAP Global CMT Catalogue (CMT) Thai Meteorological Department (TMD) Ministry of Land Management Urban Planning and Construction Incorporated Research Institutions for Seismology (IRIS)、US National Earthquake Information Center (NEIC) Asian Disaster Reduction Center (ADRC) Strategic National Action Plan for Disaster Risk Reduction 2008~2013 Asian Disaster Preparedness Center(ADPC) Livre Blanc Master Plan 2007, Bureau des Affaires Urbaines Google Map 株式会社インターリスク総研は、MS&AD インシュアランスグループに属する、リスクマネジメントに関する調査研究およびコンサルティ ングを行う専門会社です。タイ進出企業さま向けのコンサルティング・セミナー等についてのお問い合わせ・お申込み等はお近くの三 井住友海上、あいおいニッセイ同和損保の各社営業担当までお気軽にお寄せ下さい。 お問い合せ先 ㈱インターリスク総研 総合企画部 国際業務チーム TEL.03-5296-8920 http://www.irric.co.jp/ インターリスクアジアタイランドは、タイに設立されたMS&ADインシュアランスグループに属するリスクマネジメント会社であり、お客 様の工場・倉庫等へのリスク調査や、BCP策定等の各種リスクコンサルティングサービスを提供させて頂いております。お問い合わ せ・お申し込み等は、下記の弊社お問い合わせ先までお気軽にお寄せ下さい。 お問い合わせ先 : InterRisk Asia(Thailand) Co., Ltd. 175 Sathorn City Tower 9th Floor. South Sathorn Road. Thungmahamek. Sathorn. Bangkok 10120. Thailand http://www.interriskthai.co.th/ Direct: +66-(0)-2679-5276 Fax: +66-(0)-2679-5278 本誌は、カンボジア国の現地調査、研究機関より公開されている情報等に基づいて作成しております。 また、本誌は、読者の方々および読者の方々が所属する組織のリスクマネジメントの取組みに役立てていただくことを目的としたもの であり、事案そのものに対する批評その他を意図しているものではありません。 Copyright InterRisk Asia Thailand 2015 © Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page | 6
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