スプライ ン平滑化による標準 身体発育曲線の作成

統計数理第34巻第2号(1986)
スプライン平滑化による標準
身体発育曲線の作成
統計数理研究所大野優子
こどもの城小児保健部
東京女子医科大学第二病院小児科
石
村
島 央 子
田 光 範
(!986年7月受付)
1.はじめに
小児の成長発育評価は,乳幼児期では身体の発育と脳・神経系の発達との関係が深いことか
ら,また,先天性疾患や内分泌系疾患などによる成長障害の早期発見・経過観察の点からも重
要である.わが国では,身長・体重などの計測値は,出生時から定期的に各施設や学校で測定・
記録され,本人もそのデータを保存しており,成長発育評価にはこれらの計測値を利用するの
が,もっとも実用的で簡便な方法といえる.
ところで,小児の身体発育パタンには個人差があり,その評価は,1)現時点での身体発育状
況,2)その発育経過,および3)小児全体のなかでの両者の評価から総合的に為されることが
必要である.これは「標準的」な身体成長曲線があればそれを用いることで同時に可能となる.
本来,個人個人で発育のしかたは異なるので,個人の発育を縦断的に多数追跡調査し,バタン
わけして「標準成長曲線」を作成することが望ましい.しかし,現状では公表されている資料
もなく,新たに調査するにしても時間・経費の点で簡単には実現できたい.そこで,一般的に
標準成長曲線は,公表されている横断的資料に基づき,各年齢ごとの身長・体重集計からパー
センタイル値や,平均値・標準偏差値を求めて作成されている.ただし,その作成方法は標準
化されておらず,公表されている身体計測値をそのままプロットしたり(東京女子医大第二病
院小児科(1982)),滑らかな成長曲線を得るために公表値を目分量で均したり(神奈川県こど
も医療センター(1982)),原データを修正移動平均法により平滑化する(小児保健協会編(1981))
などの方法が採られている.しかし,現場でこれらの図を使う場合,0歳からの一貫した統計資
料に基づいた図がたく使いにくい.公表値では乳児期・幼児期・学童期で測定間隔が異なるが
それぞれの期間で成長曲線を作図しているため身体発育経過の全体像がつかみにくい,しかも
施設間で用いている成長曲線図の作成法が異なることもあるため簡単には比較しにくいなどの
難点があった.また,作成されたいろいろた成長曲線図についても,原データの統計誤差と図
の凸凹との関係が明瞭でない,再現性に乏しい,病的た発育障害児の成長は基準曲線から大き
く外れるため,既存のパーセンタイル値に基づく図では評価しにくいたどの欠点があった.
このような事情から,前々から汎用性の高い,O歳からの一貫した標準成長曲線図作成法の確
立が望まれていた.昨年末,国立児童総合センター(通称こどもの域)開設を機に,臨床との
フィードバックのうちに作成法の再検討が試みられ,その結果,スプライン平滑化法を用いた
実用的な成長曲線の作成法を考案した.本方法の特徴は1)原データの測定間隔の違いにもう
まく対処できる,2)プログラムの移植が容易である,3)将来,縦断的資料が入手できた場合
222
統計数理 第34巻 第2号 1986
でも基本的には同じアルゴリズムで処理でき,成長速度曲線など発達関連の研究にも応用でき
る,たどである.
2.資料の検討
本研究において用いた資料は下記の2点である.資料の特性に関して吟味を行う.
1)乳幼児の身体計測値(厚生省):満2歳までは月齢ごとに,満6歳までは半年ごとに身
長・体重・胸囲・頭囲などが調べられている.10年毎に全国的た調査が行われ,最近では昭和
55年にその資料が公表されている.公表値は,パーセンタイル値・平均値および標準偏差値で
ある.
2)学校保健統計調査報告書(文部省):学校保健法では児童生徒を対象に毎年4∼6月に身
長,体重,胸囲,座高を測定することが定められており,これは毎年,学年ごとに集計され公
刊されている.公表値は,平均値および標準偏差値である.
ただし,これらの資料は,年次によっては標準偏差が併記されていない場合もあり,度数分
布が無い場合も多い.
0歳から18歳まで,連続した成長曲線を作成するためにはこの範囲の年齢での一貫した指標
が必要である.学校保健統計では平均値と標準偏差値しか記載されていたいので,乳幼児身体
発育値も平均値と標準偏差を用い,最新の乳幼児の身体計測値が昭和55年の調査のもの(小児
保健協会編(1981))であることから,学校保健統計も昭和55年度のもの(文部省(1981))を
採用した.年齢計算は,学童期以後では,小学校1年,年齢6∼7歳では6.5歳,2年,7∼8歳
では7.5歳だどとして行った.
本研究の目的は,こどもの城小児保健部の健康教室などにおける臨床経験を踏まえ,極端な
成長障害や肥満児にも適用しうるように平均値±4SDまでの範囲の標準成長曲線を作成する
ことにおいた.
図1∼4に原データから得た成長曲線,および平均と標準偏差から平均値±々SD(后=1,…,4)
を計算した図を示した.データ測定間隔が異なるため,月ごとに計測している2歳まではグラ
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図1、原データのプロット(男子身長)原
データの成長曲線および平均と標準
偏差から平均値±々SD(々=1,...,4)
を求めた図
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図2.原データのプロット(男子体重)
223
スプライン平滑化による標準身体発育曲線の作成
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図3.原データのプロット(女子身長)
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図4、原データのプロット(女子体重)
フは細かく振動しているが,以後,半年ごと,1年ごとと測定間隔が延びるにしたがい,細かい
凸凹はなくなっていく.全グラフで6歳ごろ分散カミ急に広がるのは,学童期以後では誕生日で
はなく学年で年齢群を構成するので,同じ年齢としてまとめられているグループ内でも約1歳
の年齢幅を有するためである.また,男女とも原データの標準偏差は,10∼12歳前後が最大ど
たり15歳前後から一定とたるか,かえって小さくなっている.これは思春期のころが身体発育
の個人差がもっとも大きくたり,身長・体重とも分布のすそが広がるためで,この時期を過ぎ
るとまた分散が小さくたり安定した分布とたる.この結果,10∼12歳のあたりで平均値一4SD
の値が6∼7歳のころよりも小さい場合もおこり,一方,15歳以降では,成長曲線全体がほぼ一
定値をとる傾向を示している.
3.平滑化の方法
平滑化法は,与えられた観測値列から極端な外れ値や観測誤差による変動などを除いて,全
データの情報を基に全体として滑らかな曲線が得られるように点系列を求める手法である.成
長曲線作成において,従来は滑らかな曲線を得るために,雲型定規を用い部分部分をつなげる
こともあったが,スプライン関数は,区分ごとの平滑化曲線をつなげていくという点で原理的
には似ている.
いま,節点列α5(ノ=1,…,n)をもつm次のスプライン関数5(κ)は,切断べき関数を用いる
と次式で表される(市田・吉本(1979)).
∫(κ)=Pm(κ)×ΣC。・(κ一の)椛十
5=1
ただし
(/一州一/11.の戸,:㌶;
Pm(κ)はm次の多項式,Cゴ(ノ=1,一,n)は定数である.S(κ)は,区間[の,o5.1]において
個別に定義されるm次の多項式であり,導関数はm−1次まで連続である.実際のスプライン
関数の計算には,計算量が少なく複雑なパタンの平滑化でも数値的に安定した性質の良い解が
得られるため一般にもよく用いられている}スプラインを用いた.
224
統計数理 第34巻 第2号 1986
S’(κ)の推定において,次数mと節、さク.・の数および位置の決定が重要となる.次数について
は,高次にすると曲線の当てはまりはよくたるが数値的た安定性にかける,経験的に3次関数
で一般の曲線が近似できることがわかっている(赤池(1976))だとの理由から,通常3次関数
が用いられている.本研究でも3次スプライン関数による平滑化を行った.節点の数および位
置の決定については,以下に説明する等サンプル法を用いた.たお,比較のための一般の計算
機数値計算サブルーチンにも収録されている等間隔法による推定も試みた.
等サンプル法によるスプライン関数決定規準は次のとおりである.
a)次数を3次とする.
b)、節点により分割される区間内のデータ数を均等化する.
c)平滑化した値と原データ値との残差2乗和を最小化する.
d)節点数mの決定にAIC(赤池の情報量規準(赤池(1976)))値を用いる.
スプライン関数決定についての詳細は以下のとおりである.
(1)身長,体重の年齢ル(ゴ=1,…,M)における観測値列をル(ゴ=1,…,N)とし,これに
対応する標準偏差値列を∫{(ゴ=1,…,M),求めるべき平滑値を正(ト1,…,M)とする.
夕F∫(篶)
節点数をm(ただしm<N/2)としたとき,節点α5(ノ=1,…,m)について,
α1=κ1
α〃=κM
とおき,の(ノ=2,…,m−1)の位置を,κの全区間[κ1,舳]を(m−1)個に分割したとき各区間
の原データ数が均等になるように決める.
(2)いま,
力=1+[(N−1)/(m−1)]・(ノー1)
とすると,
ゴを力の整数部
αを力の小数部
として,のは,
の=(1一α)・灼十α・舳1
であらわされる.
(3) このの(プ=1,…,m)のもとで,
N
ξ,、=Σ[(yrS(κ{))/∫{12
ゴ=1
で与えられるξ。を最小にするスプライン関数S(κ)を求め,同時にAIC値も次式により計算
する.
w
AIC、=M・1ogΣ[(ツr∫(ル))/∫{]2+2・(m+m−1).
ゴ=1
ただし,3次スプライン関数を仮定しているので,m=3である.たお,標準偏差値の平滑化の
場合は∫F1とした.
(4)以上,(1)から(3)をm=3,…,N/2まで変化させ計算し,AIC値の最小となったときの
節点数,平滑化スプライン関数を最適のものとした.
225
スプライン平滑化による標準身体発育曲線の作成
等間隔法による3次スプライン関数の推定は,原データとの残差2乗和がある基準以下にた
るまで節点を追加する方針で行われる.具体的には,次式のように最大許容値を∫ゴの后2倍(た
だし,0<々<1)と設定した.
M
Σ{(ツr∫(篶))/∫ゴ}2<々2・N
ゴ=1
これは年齢により身長・体重とも測定値・分布に差があるため,誤差の許容範囲をそれらに応
じて定めることを意味する.
設定された節点のもとで,各節点間に最小2乗を適用し,最適スプライノ関数を求めるが,こ
の条件を満たさない場合は,各節点問の中点を新しい節点の候補とし,その中でAIC値を最大
にするものを最適追加点とする.ただし,節点数がN/2より大きくたる場合は,この条件下で
は収束しないものとして,々値を緩和し,初めからやり直す(々>1となる場合には,平滑化で
きないものとみなす).
以上の2方法を男女別年齢別の身長,体重の平均値と標準偏差値とに適用し,平均値,平均
値±!SD,平均値±2SD,平均値±3SD,平均値±4SDの値をもとめた.
4.平滑化の結果
両方法により身長,体重,それぞれ男女別に,平均値±4SDまで9組の平滑化スプライン曲
線を得た(図5∼10).等間隔法については,比較のため,男子の身長・体重の場合のみ示した.
これらの平滑化平均値スプライン曲線に関する一次微分値のプロットも掲げた(図11∼16).等
サンプル法の各回における節点数,AIC値の変化,実測値,推定値および両者の残差は,平滑
化平均値スプライン曲線について図表に掲げた(図17∼20).
等サンプル法の場合,0歳から18歳まで全範囲のグラフでも,年齢軸を部分拡大しても振動
していないことが確かめられた.また,一次微分値のグラフも振動していない滑らかたものが
得られた(図11∼14).
等間隔法の場合,々値が0.05以下だと類似した平滑化曲線がえられ,0.03から0.04では誤差
もほとんど同じ図が得られた.0.02以下では収束したかった(図9∼ユ0).ただし,0歳から18
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図5、等サンプル法による平滑化曲線
(男子身長)
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図6、等サンプル法による平滑化曲線
(男子体重)
226
統計数理 第34巻
第2号 1986
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図7.等サンプル法による平滑化曲線
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図8.等サンプル法による平滑化曲線
(女子体重)
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図9.等問隔法による平滑化曲線
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図10.
等間隔法による平滑化曲線
(男子体重)
(男子身長)
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(男子身長)
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等サンプル法における1次微分曲線
図12、
(男子体重)
227
スプライン平滑化による標準身体発育曲線の作成
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図13.等サンプル法における1次微分曲線
(女子身長)
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図14.等サンプル法における1次微分曲線
(女子体重)
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図15.等問隔法における1次微分曲線
(男子身長)
図16.等間隔法における1次微分曲線
(男子体重)
歳まで全範囲の図では明確ではないが,拡大すプ」=原動しており,1次微分値のグラフにすると
それが顕著に現れた(図15∼16).
5.結果と手法の評価
本研究では,O∼18歳まで,年齢間隔の異なる身長・体重の平均値と標準偏差から,スプライ
ン平滑化法を用いて標準身体成長曲線作成図を構成した.
スプライン関数による平滑化では,節点の数および位置の決定が関数推定の重要た因子とた
る.本研究では,等サンプル法,等間隔法の2とおりの規準を設け,結果を比較した.
等間隔法は,(i)’節点の初期値を両端点にとり,その後の追加節点の位置は各節点問の2等
分点を候補としていく,(ii)残差2乗和の最大許容値は各年齢における標準偏差の関数と
たっている,ことが特徴である.これらの規準は,平滑化スプライン関数決定の節点追加方式
のアルゴリズムとして一般的なものといえるが,平滑化成長曲線の作図法としては次のようだ
228
統計数理 第34巻
COEFFICIENT OF Y(X)一FOR
3
4.640
80.595
4
2.263
49.574
5
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7
0.4フ
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8
0.291
−36,856
9
−35,001
0.290
10
−31.皿9
0.299
11
−31.8仙
0.284
12
一33,162
0.265
13
−37,196
0.232
14
0.170
−49,408
ユ5
−56,628
0.139
16
0.ユ32
コ7
0.125
0.123
0.090
18
19
20
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21
0.089
0.052
0.069
22
23
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−40
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45,702
5
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0.485
0.398
0.362
0.3亙
0.332
0.270
ユ2
0.一206
ユ3
0.ユ94
−5,204
−17,278
−24,392
−26,699
−27,998
−26,781
−34,292
一仏.724
−45,384
14
15
16
17
18
0.ユ50
−55.ユ89
0.116
一幽.954
0.u7
−62.6ユ7
0.α∋7
8
9
ユO
ユユ
20
0.090
−69,403
−59,216
−63,042
−66,787
21
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22
23
0.061
0.083
−80,989
−64.635
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図18、
KNOT
等サンプル法における節点数に対するAICと残差の変化(男子身長)
4
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FOR
5
−571592
−56,282
−68,692
−65,937
−65,312
−88,226
−72.8亙
COEFFICIENT OF Y(X) FOR
3
5.196
85.801
6
FOR KNOT’
80
60
40
20
0
図17.
第2号 1986
10 12 14 16 18 20 22 24
等サンプル法における節点数に対するAICと残差の変化(男子体重)
問題をもっている.
(1)基礎資料のデータ間隔は2歳まで,6歳まで,それ以上の年齢で異なり,次第に延びてい
く.したがって,乳幼児期に原データ点分布が偏り,しかもその時期では標準偏差も小さいた
め学童期以降では節点決定の際,節点間に原データ点を含まない区間が存在する可能性がある.
その場合スプライン曲線は自由度が高すぎて不安定どたり振動しやすくたる.
(2)同様の理由で,残差計算の場合に乳幼児期では重みが大きくなる.すなわち,0歳から18
歳までの全区間でみた場合,乳幼児期でのあてはまりを重視するかわりに学童期以降を丸める
可能性がある.これを是正するためには,たとえば,最大許容値の表現を次のようにかえるこ
229
スプライン平滑化による標準身体発育曲線の作成
COEFF I C I ENT OF Y(X) FOR FEト1ALE−HE I GHT
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0.169
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1
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1.
1
1
1
n
l1
li
11
ll
1 .
I
1
FOR 81012141618202224
KNOT
ρ O ■( ■∩ ■■ ρ ■O ∩∩ n∩ 〇一
6zA早sA
−75,518
j一
1
1
1
1
0 ∩2
0.lll
O.081
2
^)1−1L⊥、∪1
−20
−40
−60
−80
−63,251
0
図19.
FOR KNOT
AIC’1^)
100
80
60
−7,353
−25,155
−17,037
−18,049
−23,766
−42,759
’55,741
−59,817
−59,623
−53,145
−53,936
−51,270
3
2」
1−
4
6
01
8 10 12 14 16 18 20 22 24
等サンプル法における節点数に対するAICと残差の変化(女子身長)
COEFFICIEト』T OF Y(X) FOR FEM(LE−WEIGト「「
3
4.679
2.230
0.449
0.247
0.205
4
5
6
7
8
9
0.201
0.208
0.188
0.167
コO
u12
80.981
48,888
0.135
0.ユ25
−6ユ.7ユ5
ユ6
0.135
ユ7
0.ユ27
18
i9
20
0.108
0.075
0.054
0.060
0.055
0.056
−55,957
−56,875
−62,274
‘η.283
−90.2フ
ー83,095
13
14
15
01138
2ユ
22
23
5
4
3
2
1
−85.47ユ
ー82.347
1■!
1■
ll lll
ll 1■
■ll
一1
ll
1
I
1
I
1
I
1
1,1
I
\
1
1
1
ll
l l 12 14 16 18 20 22 24
10
I
0 2 4 6 8
6
1
1
−20
−40
−60
−80
0
図20.
ll
ll
0
−56−380.
一58,850
−60,957
−60,047
0.ユ51
FOR KNOT
100 AIC
80
60
40
20
−22,803
−48,411
−54,936
−53,862
−50,242
−52,831
ZANSA
FOR KNOT
い
1
I
ll
1
I
I I
I
\
I 1 1
1
ll
0 2 4 6
8
10 12 14 16 18 20 22 24
等サンプル法における節点数に対するAICと残差の変化(女子体重)
とが考えられる.
M
M
Σ(ツr∫(κ{))2<々2・Σ∫ゴ
ゴ=I
ゴ=I
この条件では,全年齢にわたってほぽ平均レた情報の重み付けとたるため,より低年齢側を丸
め,高年齢側の情報を拾う.しかし,実際に計算すると等問隔法では(1)の影響が効いて,かえっ
て学童期以降のグラフの振動が大きくなり成長曲線図としては改善されなかった(図21∼22).
理論的な困難としては々値の決定が試行錯誤的である点があげられる.
等サンプル法は等問隔法の以上挙げた問題を改善するために考えたもので,(i)新たに追
230
統計数理 第34巻 第2号 1986
200
100
P75
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一
P50
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P25
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024681012141618
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0
2
4
6
8 10 12 14 16 18
図21.等間隔法において残差許容値条件を 図22.等間隔法において残差許容値条件を
変えた場合の平滑化曲線(男子身長)
変えた場合の平滑化曲線(男子体重)
加される節点は,もとの区間での原データ数を均等に分割するように定める,(ii)標準偏差の
重みつき残差2乗和の最小化(標準偏差値の場合は重みは1)とともにAIC値も計算し,節点
数決定の参考とする,たどを特徴とする.
たびたび述べるように公表されている統計数値では,乳幼児期の方が成長も速いためデータ
間隔が細かく,分散の絶対値も小さい.したがって,節点を追加するとき,等間隔法のように
節点間の2等分点を採択していく方法では,上記の(1),(2)のような問題が起きる.この点,原
データの個数を均等化していく方針では,いずれの節点問にも一定数以上の原データ点を必ず
含むことになり,スプライン曲線は安定したものとたり,振動の発生を防ぐことができる.結
果をみても,観測データにできるだけ近い値でしかも安定した平滑化曲線を求めることに成功
したといえる.本研究の対象のようにデータ間隔が一定でないときは,等サンプル法を実用的
た平滑化法として採用することが望ましいと考える.
AICは,得られた関数のあてはまりの良さとパラメータ数とを同時に評価する指標で,一般
にAIC値が小さいほど良いモデルと評価される.節点数を多くすると,当てはまりの良さ,す
たわち残差の2乗和の値は小さくたると期待されるが,パラメータ数が増えるため,いちがい
に良いモデルにたるとはいえたい.そのかねあいを示す一つの規準が,AICである.今回は,等
問隔法でもAIC値を計算したが,作図してみるとAICが最小のグラフでも凹凸が不自然で,后
値の方があてはまりの指標としては有効であった.一方,等サンプル法では,AIC値最小のグ
ラフが実用的にも妥当で,そのままスプライン関数選択の指標として用いることができた.以
上の点から,成長曲線作成への等サンプル法による平滑化スプライン関数の適用は有効と考え
る.
6.適用の可能性
臨床応用からいうと,本研究によりえられた成長曲線作成法は次のような意味を持つ.
はじめに述べたように,小児の発育評価や保健指導を行う場合,現時点での身体計測値とと
もにその発育経過も考慮し,「標準」と比較することが重要である.小児の発育パタンにはおお
まかなルールがあるとはいえ,個人差があり,たとえば思春期をはさんだ身長・体重の急増期
や就学時前後の発育期などにおいては,病的・正常の判別が難しいこともある.一般に身体発
スプライン平滑化による標準身体発育曲線の作成
231
青パタンという場合は,身長・体重の計測値÷年齢との関係を表した成長曲線と,それら計測
値の年間変化量と年齢との関係を表した成長速度曲線を意味する(高石(1979)).本研究もふ
くめ,いままでの研究は,おもに成長曲線について為されてきた.その理由は,公表されてい
る横断的データをもとに成長速度曲線を描いた場合,データ間隔が比較的細かい乳幼児期では
グラフは極端に凸凹し,また横断的データでは各凸凹の意味づけが明瞭ではたいからである.こ
の点,本研究の方法で得られた成長曲線の一次微分曲線は,そのまま成長速度曲線を意味して
おり(図11∼!4),大局的な身体発育の成長速度バタンの把握に役立つものと考えられる.現在,
著者らは個人6縦断的データを収集中であり,本手法の適用により個人の成長曲線および成長
速度曲線の作成,さらには標準化成長速度曲線の研究へと拡張を計画している.
また,実際の発育相談の場では,2年から3年など比較的短期問の成長曲線が必要なことが多
いが,その年齢区間の原データに基づいて成長曲線を作成すると,標準偏差による凸凹も大き
くなり,臨床上判断に困ることが多かった.本手法に基づく平滑化ではこの点も改善され,作
成した曲線を基に,任意の年齢区分を拡大,縮小しても安定した成長曲線が得られることが確
かめられた.
以上,臨床的た意義の他,実用的意義として,得られた平滑化データをパーソナルコンピュー
タに移植し,任意の施設で,この成長曲線作成標準図を利用する事ができ,原データが更新さ
れるごとに(例えば,次回,昭和65年度の統計調査報告公表時),同じ手法を用いて新たな成
長曲線作成標準図を作成・比較しうることがあげられる.また,外国でも平均値と標準偏差値
は公表しているところが多いので従来は難しかった国際比較も可能となり,今後この方面の研
究の発展に寄与すると期待される.
謝
辞
本論文をまとめるにあたり,柳本武美教授(統計数理研究所)には数々の有益たコメントを
いただきました.査読者たらびに編集委員の方々には適切な助言をいただきました.ここに深
く感謝いたします.
参考 文 献
赤池弘次(1976).情報量規準AICとは何か,数理科学,153号,5−11.
市田浩三,吉本富士市(1979)、 スプライン関数とその応用,新しい応用の数学シリーズ20,教育出版,東
京.
神奈川県こども医療センター(1982).身体発育曲線標準図.
文部省(1981).昭和55年度学校保健統計調査報告書,大蔵省印刷局.
小児保健協会編(1981).乳幼児身体発育値.
高石昌弘(1979).発育バターンの個人差と年次的推移,小児科MOOK,6,小児の発育障害,金原出版,東
京,1−15.
東京女子医大第二病院小児科(1982).身体発育曲線標準図.
232
Proceed兵ngs of the Institute of Statistical Mathematics Vo1.34,No.2(1986)
The Smoothed Growth Curves for Chi1dren
App1ication of the Sp1ine Smoothing
to the Different Interva1Data
Yuko Ohno
(The Institute of Statistical Mathematics)
Hiroko Ishijima
(We11Chi1d Clinic Laboratory of the Nationa1Children’s Cast1e)
Mitmori Murata
(Tokyo Women’s Medica1Co11ege,Daini Hospita1)
In the chi1dhood,the re1ationship between the physica1deve1opment and the menta1and
neuro1ogica1deve1opmemt is very c1ose.So it is important for the chi1d to check one’s
physique comparing with some standard chart.For this purpose,the growth curves have
been devised by severa1c1inica1pediatricians.But these have some di箭。u1ties in c1inica1
use,and there is no standard drawing method.
In this paper,a method based on the sp1ine smoothing technique was app1ied to make
the stan−ard growth curves for chi1dren.The features of the method are,(i)the every
new knot is chosen so as to devide into two ha1ves the number of the origina1data points
in the interva1,and(ii)the de丘nition of the number of knots is based on the AIC.App1ying
the method to the growth data[heights and weights of ma1e and fema1e children,which are
reported month1y(0−2years o1d〉,every a ha1f of the year(2−6years o1d)and year1y(6−18
years oId)],the e伍。iency of the new method is discussed comparing with the same interva1
sp1ining method.
The obtained curves showed fo11owing characteristics,(i)the method showed good
smoothing results in case of the different measurement time interva1data,(ii)as the method
using no particu1ar operation,the program cou1d be easi1y transp1anted to any medica1
institution or schoo1,(iii)using the irst−order differentia1curves,the method wou1d a1so
he1p the studies on the ve1ocity of the physica1deve1opment、
Key words:Smoothing,sp1ine curve,different intemal data,AIC,growth cu岬e.