極真空手侵害事件

最 新判 決情報
2014 年
〔12 月 分 〕
〇極 真 空 手 侵 害事 件
東 京 地 裁 H26.12.4 H24(ワ)25506 商 標 権 侵 害 差 止 等 請 求 事 件 (高 野 輝 久 裁 判 長 )
極 真 空 手 に関 する商 標 事 件 はこれまで多 数 あったが、今 回 の判 決 は、権 利 能 力 なき社 団 である極 真 会 館
との契 約 により極 真 空 手 関 係 の商 標 の使 用 を許 諾 されていた被 告 が、極 真 会 館 を退 館 した後 も、極 真 商 標
の使 用 を 続 けたため、商 標 権 侵 害 と 不 法 行 為 、 契 約 違 反 に基 づく 違 約 金 の 支 払 い が求 められた事 案 であ
る。
原 告 A は、極 真 空 手 の創 始 者 の相 続 人 であり、原 告 極 真 会 館 の
代 表 者 として極 真 会 館 を運 営 している。極 真 会 館 は権 利 能 力 なき社
団 であるので、原 告 A が商 標 登 録 名 義 人 となり、第 25,41 類 を指 定
商 品 ・指 定 役 務 とする「極 真 /KYOKUSIN」、「極 真 空 手 /KYOKUSIN KARATE」(右 上 図 )、
「極 真 会 館 /KYOKUSINKAIKAN」などの商 標 権 者 となっている。なお第 41 類 の登 録 商 標 「極
真 会 (ロゴ)」(右 下 図 )は、原 告 (有 )マス大 山 エンタープライズが商 標 権 者 となっている。
被 告 は極 真 商 標 を契 約 終 了 後 も使 用 していたので、商 標 権 侵 害 は免 れないが、抗 弁 事 由 と
して、原 告 登 録 商 標 の無 効 、普 通 名 称 又 は慣 用 商 標 としての使 用 、権 利 の濫 用 などを主 張 し
たが、判 決 ではいずれも斥 けられている。
そこで争 点 は損 害 論 となるが、被 告 は、原 告 A は自 ら空 手 の教 授 等 を行 っていないから損 害 はないとして、
侵 害 者 の利 益 を権 利 者 の損 害 と推 定 する商 標 法 38 条 2 項 の適 用 はないと主 張 した。判 決 は、同 項 の適 用
が認 められるためには、原 告 A につき、被 告 の商 標 権 侵 害 行 為 がなかったならば利 益 が得 られたであろうと
いう事 情 があれば足 りるとし、原 告 A は原 告 極 真 会 館 の代 表 者 として空 手 道 場 を運 営 しているのであるから、
被 告 の侵 害 行 為 がなかったならば原 告 A が利 益 を得 られたであろうという事 情 が認 められるとして、38 条 2
項 の適 用 を認 めた。
そして、空 手 の教 授 という役 務 についての商 標 の寄 与 率 を検 討 した。いわく、空 手 の教 授 は、指 導 者 の直
接 対 面 的 指 導 が必 須 であるという性 質 上 、立 地 条 件 が重 要 な要 素 となる役 務 であり、周 辺 にある他 の空 手
道 場 の存 否 や教 授 方 法 等 によっても売 上 げが左 右 されるものであるので、法 38 条 2 項 の適 用 に当 たっては、
被 告 の利 益 のうちの一 部 のみが本 件 商 標 に起 因 するものとして原 告 の損 害 になるとした。
また損 害 推 定 の覆 滅 事 由 として、立 地 条 件 の重 要 性 に鑑 みると、被 告 標 章 に誘 引 された被 告 道 場 の入 門
生 についても、本 件 商 標 権 侵 害 行 為 がなければ原 告 らの道 場 を選 択 したはずであるとの推 定 を覆 す事 情 が
あるので、被 告 が得 た利 益 については、その大 部 分 は原 告 の損 害 と見 ることはできないとして、500 万 円 の利
益 の 5%が商 標 の寄 与 率 であり、25 万 円 が原 告 A の損 害 であるとした。
つまり、新 たに極 真 空 手 を学 ぼうとする者 は、近 隣 の道 場 から探 すので、もし被 告 の道 場 がなかった場 合
にも遠 く離 れた原 告 の道 場 ではなく、他 派 である近 隣 の松 井 派 道 場 を選 択 していたであろうから、商 標 によっ
て道 場 を選 択 したという可 能 性 は低 いものであると判 断 されたことになる。
この点 、判 決 は被 告 の抗 弁 をすべて斥 けているが、極 真 空 手 道 場 が原 告 ら以 外 にも存 在 することから、損
害 論 において、被 告 の主 張 の趣 旨 がいくぶんか取 り入 れられたように思 料 される。
その他 、空 手 大 会 の開 催 についての原 告 A 商 標 の寄 与 率 は 5%、周 知 性 のある原 告 会 社 の登 録 商 標 「極
真 会 (ロゴ)」について、法 38 条 3 項 の使 用 料 相 当 額 として 2%の損 害 を認 めている。
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使 用 料 相 当 額 の損 害 をも否 定 したカシエ(Cache)事 件 (大 阪 地 裁 H25.1.24)のように、人 的 要 素 や地 域
性 の高 いサービスマークの侵 害 においては、侵 害 に対 する差 止 めは認 められても、損 害 については、営 業 圏
の相 違 などが考 慮 されることになる。しかし、インターネットを活 用 した事 業 展 開 があった場 合 、営 業 圏 が異 な
っても高 額 の損 害 賠 償 が認 められたひかり司 法 書 士 法 人 事 件 (東 京 地 裁 H23.10.28)などもある。
〇軽 井 沢 浅 間 高 原ビール事 件
知 財 高 裁 H26.12.8 H26(行 ケ)10112 審 決 取 消 請 求 事 件 (清 水 節 裁 判 長 )
第 32 類 「ビール」を指 定 商 品 とする登 録 商 標 「 軽 井 沢 浅 間 高 原 ビール」
(標 準 文 字 )が、先 登 録 商 標 「軽 井 沢 高 原 ビール」(引 用 商 標 3:右 上 )を引
用 商 標 とした無 効 審 判 により無 効 とされたため、当 該 審 決 の取 消 しが求 めら
れた事 案 である。
原 告 (審 判 被 請 求 人 )は軽 井 沢 ブルワリー(株 )、被 告 は引 用 商 標 3 の商 標 権
者 (株 )星 野 リゾートと、その子 会 社 であり「軽 井 沢 高 原 ビール」(引 用 商 標 2:使
用 商 標 は右 下 )を製 造 販 売 する(株 )ヤッホーブルーイングである。
争 点 は、本 件 商 標 と引 用 商 標 との単 純 な類 否 を争 う法 4-1-11 号 ではなく、引
用 商 標 の周 知 性 と出 所 混 同 のおそれを要 件 とする法 4-1-15 号 の該 当 性 である。
本 件 商 標 「軽 井 沢 浅 間 高 原 ビール」と引 用 商 標 「軽 井 沢 高 原 ビール」とでは、本 件 商 標 の中 間 に位 置 する
「浅 間 」の語 の相 違 があるので、問 題 はこの部 分 をどのように評 価 するかである。
結 論 として判 決 は、両 商 標 が外 観 、称 呼 、観 念 上 類 似 すると認 定 したが、「軽 井 沢 浅 間 高 原 」の部 分 につ
いては、「軽 井 沢 」と「浅 間 高 原 」とでは重 複 する地 域 を連 記 するものであり、一 定 の地 域 を異 なる語 で連 記 し
て場 所 の特 定 を強 調 する例 に倣 ったものとして、「軽 井 沢 及 びその周 辺 の浅 間 山 山 麓 に位 置 する高 原 地 域 」
ほどの意 味 合 いを認 識 させると認 定 した。
そして、引 用 商 標 「軽 井 沢 高 原 ビール」とは、いずれも「軽 井 沢 及 びその周 辺 の高 原 地 域 で製 造 又 は販 売
されるビール」との観 念 において類 似 すると理 由 付 けしている。
引 用 商 標 2 の独 創 性 について判 決 は低 いとしながらも、各 種 新 聞 雑 誌 で度 々取 り上 げられ紹 介 されたとの
事 実 、需 要 者 のアンケート調 査 結 果 、出 荷 量 、販 売 地 域 等 を総 合 的 に判 断 し、被 告 ヤッホーの業 務 に係 るビ
ールを表 示 するものとして周 知 性 を獲 得 していたと認 定 した。
最 後 の要 件 の出 所 混 同 の可 能 性 ついては、原 告 商 品 における表 示 態 様 が、「軽 井 沢 」「浅 間 高 原 」「ビー
ル」と三 段 書 きされ、中 央 の「浅 間 高 原 」の文 字 が、上 下 の「軽 井 沢 」「ビール」の文 字 の 2 分 の 1 以 下 の小 さ
な文 字 で表 記 され、「軽 井 沢 ビール」とも読 める構 成 であるという取 引 の実 情 を考 慮 し、出 所 混 同 のおそれが
あるとして、審 決 を支 持 した。
確 かに、原 告 サイトを見 ると、「軽 井 沢 ブルワリー:軽 井 沢 ビール公 式 サイト」と題 して自 らを「軽 井 沢 ビール」
と称 して紹 介 しているので、「軽 井 沢 」=「 高 原 」と理 解 されることを考 えると、引 用 商 標 とは近 似 してくると言
わざるを得 ないようである。
かくして原 告 登 録 商 標 が無 効 とされると、次 は原 告 商 品 の使 用 差 止 めの可 否 が問 題 になるが、もし原 告 が
商 品 名 を変 更 しようとした場 合 、仮 に単 に「浅 間 高 原 ビール」とした場 合 には問 題 なさそうではあるが、この場
合 でも「軽 井 沢 及 びその周 辺 の浅 間 山 山 麓 に位 置 する高 原 地 域 」に近 い観 念 を想 定 できそうであるので、問
題 があるかも知 れない。
また原 告 が現 在 使 用 しているように、単 に「軽 井 沢 ビール」とした場 合 、確 かに被 告 「軽 井 沢 高 原 ビール」と
は同 じ意 味 合 いにも取 れるが、そもそも軽 井 沢 で製 造 したビールを「軽 井 沢 ビール」と表 記 することは法 26 条
によって許 される余 地 もあるので、問 題 の解 決 は容 易 ではないようである。
筆 者 の感 想 としては、「軽 井 沢 高 原 ビール」と「浅 間 高 原 ビール」とであれば、混 同 を生 ずることなく、並 存 は
可 能 のように思 われる。
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〇頭 蓋 骨 図 形 商 標侵 害 控 訴事 件
知 財 高 裁 H26.12.17 H26(ネ)10005 商 標 権 侵 害 行 為 差 止 等 請 求 控 訴 事 件 (清 水 節 裁 判 長 )
先 月 11 月 26 日 に知 財 高 裁 判 決 があった審 決 取 消 訴 訟 判 決 に関 連 する侵 害 事 件
である。
第 1 審 は東 京 地 裁 で行 われ、頭 蓋 骨 と 2 本 の骨 から成 る図 形 商 標 (右 図 )の商 標
権 者 である原 告 が、同 じく頭 蓋 骨 と 2 本 の骨 から成 る下 記 を含 む 6 件 の被 告 商 標 に対
し、商 標 権 侵 害 と不 競 法 違 反 により、使 用 差 止 と損 害 賠 償 を求 めた。しかし、被 告 が答 弁 書 を提 出 せず、ま
た口 頭 弁 論 にも出 頭 しなかったため、擬 制 自 白 により原 告 の主 張 が認 められた欠 席 裁 判 となった。
これに対 する控 訴 審 が本 件 である。
そこで商 標 の類 否 が問 題 になった先 月 11 月 26 日 の知 財 高 裁 判 決 であるが、対 象 となった商 標 は引 用 商
標 である被 控 訴 人 (原 審 原 告 )登 録 商 標 (右 上 )と上 記 4 商 標 のうち左 端 の控 訴 人 (原 審 被 告 )商 標 (控 訴 人
標 章 1)である。11 月 26 日 判 決 では、これに先 立 ち両 商 標 の類 否 について知 財 高 裁 (H25.6.27 判 決 )です
でに類 似 と判 断 されているので、指 定 商 品 が異 なるとは言 え、同 じ事 実 関 係 において再 度 類 似 性 を争 うこと
は、別 件 ですでに確 定 した判 決 の判 断 を蒸 し返 すものとして、訴 訟 法 上 の信 義 則 に反 し許 されないので、訴
えを却 下 するというものであった。
ということは、本 件 侵 害 事 件 においても、控 訴 人 (被 告 )商 標 (控 訴 人 標 章 1)と被 控 訴 人 (原 告 )商 標 との
類 似 性 はすでに確 定 していることになる。ちなみに、原 告 (本 件 控 訴 人 )の訴 えを却 下 した 11 月 26 日 の知 財
高 裁 事 件 の裁 判 長 と本 件 侵 害 控 訴 事 件 の裁 判 所 は、同 じ清 水 節 裁 判 長 である。
而 して、今 回 の判 決 も、審 決 取 消 訴 訟 と侵 害 事 件 とでは、訴 訟 物 は異 なるとしながらも、類 否 対 象 商 標 の
同 一 性 や当 事 者 の利 害 関 係 も同 視 できる点 から、訴 訟 のいずれも、実 質 上 同 じ商 標 の類 否 を争 うものであ
るとして、控 訴 人 標 章 1については、11 月 26 日 知 財 高 裁 判 決 と同 様 に、非 類 似 を主 張 する控 訴 人 の主 張 は、
訴 訟 上 の信 義 則 に反 し許 されないとして、主 張 が斥 けられている。
さらに判 決 は、以 下 控 訴 人 標 章 2~6 について順 次 類 否 を検 討 し、相 違 はいくつかあるものの、いずれも外
観 が類 似 するとして、商 標 権 侵 害 であると判 断 している。
また不 競 法 違 反 についても、被 控 訴 人 標 章 は遅 くとも平 成 20 年 8 月 の時 点 において、周 知 性 を獲 得 して
いて、控 訴 人 標 章 はこれと混 同 を生 じさせるとして、不 競 法 違 反 を認 めている。
損 害 論 については、控 訴 人 の利 益 率 は 30%であるので、約 9000 万 円 の利 益 を得 ているところ、控 訴 人 標
章 は頭 蓋 骨 と骨 とを組 み合 わせた特 長 ある態 様 であり、商 品 購 入 者 の大 半 を占 めるスカルファッション愛 好
家 に対 して相 当 の顧 客 吸 引 力 を有 することに鑑 みて控 訴 人 標 章 の寄 与 率 は 3 割 と認 定 し、2700 万 円 の損
害 賠 償 と、弁 護 士 費 用 300 万 円 の支 払 いを命 じた。
特 許 庁 の判 断 を争 う審 決 取 消 訴 訟 と民 事 事 件 である侵 害 訴 訟 とでは、当 然 異 なる判 断 があってもよいが、
侵 害 の成 否 はともかくも、こと商 標 の類 否 自 体 については、同 じ裁 判 所 が異 なる判 断 をするとは考 えにくいの
で、本 件 は、先 行 する裁 判 の訴 訟 活 動 を抜 かりなく遂 行 することが重 要 であることを示 す先 例 であろう。
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〇ドメイン名 登 録 者「ラヴィ」情 報 開 示請 求 事 件
東 京 地 裁 H26.12.18 H26(ワ)18199 発 信 者 情 報 開 示 請 求 事 件 (高 野 輝 久 裁 判 長 )
他 人 (原 告 )のドメイン名 に類 似 するドメイン名 を使 用 して、他 人 の商 品 サイトを自 社 の商 品 サイトに誘 導 す
る広 告 の掲 載 を行 ったレンタルサーバー(被 告 )に対 して、そのサーバー利 用 者 である契 約 者 情 報 の開 示
が求 められた事 案 である。
原 告 は、インターネットの「 ケノン公 式 ショップ」において、家 庭 用 脱 毛 器 に「 ケノン」との特 定 商 品 表 示 (商
標 )を付 して販 売 している。
被 告 は、レンタルサーバーを保 有 、管 理 する業 者 であり、被 告 サイトに掲 載 されたウエブページのドメイン名
は、(1)「ケノン.asia」(登 録 者 :LAVIE Inc.)、(2)「脱 毛 器 徹 底 比 較 .com」(登 録 者 : LAVIE Inc.)、(3)
「脱 毛 器 徹 底 比 較 .jp」(登 録 者 :株 式 会 社 LAVIE)である。
そこで、不 競 法 2-1-12 号 、同 13 号 の不 正 競 争 によって権 利 を侵 害 されたとする原 告 が、当 該 不 正 競 争 を
行 った者 に対 して損 害 賠 償 請 求 権 等 を行 使 するために、プロバイダ責 任 制 限 法 4 条 1 項 に基 づき、情 報 管
理 者 である被 告 に対 し発 信 者 情 報 の開 示 を求 めた事 案 である。
したがって、本 件 事 案 の解 決 には、本 件 サイトが不 競 法 2-1-12 号 及 び同 13 号 の不 正 競 争 を行 ったか否 か
の判 断 が前 提 とされ、これが肯 定 された場 合 にプロバイダ責 任 制 限 法 に基 づき、被 告 に対 して登 録 者 の情 報
開 示 を命 ずることができる。
而 して、本 件 サイト(1)は、人 気 脱 毛 器 である原 告 商 品 「ケノン」を検 証 の結 果 、優 れた点 とともに、弱 点 とし
て価 格 や性 能 を挙 げ、類 似 品 (商 品 名 「ラヴィ」)を安 価 で販 売 する訴 外 (株 式 会 社 LA VIE)の商 品 の販 売
サイトへとリンクが張 られている。
本 件 サイト(2)では、原 告 商 品 のパワーが 52 ジュールであるのに対 して、訴 外 会 社 商 品 のパワーが 78 ジュ
ールであり、業 界 ナンバー1として記 載 され、利 用 者 の口 コミレビューが紹 介 されている。
本 件 サイト(3)も同 様 であり、パワー、価 格 等 の比 較 ランキングの結 果 、訴 外 会 社 商 品 が 1 位 、原 告 商 品 が
2 位 と記 載 され、口 コミレビューが紹 介 されている。
而 して、原 告 の主 張 は、本 件 サイト(1)のドメイン名 「ケノン.asia」が原 告 の商 品 名 (商 標 )「ケノン」に類 似 し
(不 競 法 2-1-12 号 )、また本 件 サイト(2)及 び(3)については、商 品 の広 告 にその商 品 の品 質 を誤 認 させる表
示 を行 なった(不 競 法 2-1-13 号 )というものである。
結 果 として判 決 は、原 告 の主 張 を認 めて、被 告 に対 して登 録 者 情 報 を開 示 することを命 じた。
まず本 件 サイト(1)「ケノン.asia」のうち、「.asia」はトップレベルドメインで識 別 力 が弱 く、要 部 は「ケノン」であ
るので、原 告 特 定 商 品 表 示 とは外 観 、称 呼 が類 似 するとして、12 号 の不 正 競 争 を認 定 した。
次 に、本 件 サイト(2)(3)についても、脱 毛 器 のパワーの出 力 単 位 とするジュール数 の計 測 方 法 には統 一 基
準 ない上 に、測 定 条 件 によって数 値 が大 きく異 なるところ、原 告 商 品 を訴 外 商 品 と同 一 の測 定 条 件 で計 測 し
たところ、本 件 サイトがいう 52 ジュールの約 1.4 倍 の 110 ジュールであったので、訴 外 商 品 の出 力 性 能 を断
定 的 に記 載 することは、商 品 の品 質 について誤 認 させる表 示 であると認 定 した。したがって、訴 外 商 品 の広
告 にその商 品 の品 質 について誤 認 させる行 為 であるとして 13 号 の不 正 競 争 を認 定 した。
以 上 より、本 件 サイトの各 契 約 者 は、それぞれ本 件 各 サイトにかかる情 報 を本 件 レンタルサーバーに入 力 し
たものであるから、これらの者 がプロバイダ責 任 制 限 法 4 条 1 項 にいう侵 害 情 報 の発 信 者 に当 たり、また本
件 レンタルサーバーを保 有 、管 理 する被 告 が同 項 の開 示 関 係 役 務 提 供 者 に当 たるとして、原 告 が不 競 法 に
基 づく損 害 賠 償 請 求 権 の行 使 のため、各 情 報 の開 示 を受 ける必 要 があると判 断 した。
筆 者 もこの種 の事 件 の専 門 家 でもなく、また経 験 がある訳 ではないが、興 味 があれば、研 究 会 で取 り上 げて
みてはどうであろうか。
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