3 サヤインゲンの品種比較試験 試験の目的 市内のサヤインゲンは,つる無し・丸莢(さや)の「サマーキセラ」を基幹品種としてい ますが,種子販売元の都合により近い将来に販売が中止される見通しとなりました。そ こで,市内での栽培に適する代替品種を選定するため,品種比較試験を行いました。 関係先 旭川青果物生産出荷協議会 さやいんげん部会(以下「部会」と表記します。) 供試品種 サマーキセラ(標準品種),キセラ,ピテナ:販売はいずれも雪印種苗 耕種概要 (1)試験作期:2作期 ・作期1:5月8日は種,5月 28 日定植,7月7日収穫調査開始,8月7日終了 ・作期2:7月1日は種,7月 15 日定植,8月 25 日収穫調査開始,10 月2日終了 ※欠株防止のため 72 穴セルトレイで育苗し,移植しました。 (2)作型:雨よけハウス半促成栽培(無加温) (3)栽植密度:床幅 90cm(条間 50cm×株間 30cm,2 条千鳥植え),通路幅 90cm,370 株/a (4)規格等:部会出荷基準に準拠(12cm 以上の莢を収穫) ※A莢…曲り 1cm 以内/B莢…同 1~2cm 以内/規格外…同 2cm 以上,不稔,過熟など 試験結果 (1)規格別莢数割合(作期1:表1/作期2:表4) ・サマーキセラ,ピテナはA莢率が高い。 ・キセラはB莢率,曲がり莢率が高い。 ・ピテナは不稔莢率がやや高いものの商品価値を失う程度ではなく,規格の定め方 次第ではB莢などで扱うことも可能と考えられる。 (2)収穫本数・収穫量(作期1:表1/作期2:表4) ・収穫本数は,全規格・A莢ともにサマーキセラが最も多い。 ・ピテナは,収穫本数は少ないが,収穫量は全規格・A莢ともに最も多い。 (3)莢の品質(作期1:表2/作期2:表5) ・サマーキセラは莢が細く,軽い。 ・ピテナは莢が太く,重い。 (4)重量減少率(作期1:表3/作期2:表6) ・莢のしなびにくさを把握するため,各品種の規格内莢を5℃の冷蔵庫で一週間程 度保管し,保管前後における重量の減少率を調査した。 ・ピテナは,他の2品種より重要減少率が小さく,視覚的にもしなび方が少ないと 感じられた。 品種 サマーキセラ キセラ ピテナ 品種 サマーキセラ キセラ ピテナ A莢 35% 18% 32% 表2 A莢の莢長・莢幅・一莢重(作期1) A莢の品質 Sサイズ(12~14cm) Mサイズ(14~16cm) 莢長 莢幅 一莢重 莢長 莢幅 一莢重 13.0cm 6.0mm 2.8g 14.5cm 6.5mm 3.7g 13.2cm 6.8mm 3.8g 14.8cm 7.4mm 5.1g 13.0cm 7.2mm 4.3g 14.5cm 7.7mm 5.5g 品種 サマーキセラ キセラ ピテナ 品種 サマーキセラ キセラ ピテナ 表1 規格別莢数割合,1株あたり収穫本数・収穫量(作期1) 規格別莢数割合 1株あたり収穫本数 規格内 規格外 全規格 B莢 小計 曲り 不稔 過熟 小計 うちA莢 41% 76% 13% 8% 3% 24% 186 本 65 本 35% 53% 29% 13% 5% 47% 157 本 27 本 24% 56% 9% 26% 9% 44% 147 本 47 本 A莢 46% 12% 40% 各品種の特性 (1)サマーキセラ ・莢が細く,軽い。 ・収穫本数は多いが,収量は少ない。 ・しなびにくいとは言えない。 (2)キセラ ・曲り莢が多く,A莢は少ない。 ・しなびやすさはサマーキセラとほぼ同等。 (3)ピテナ ・莢が太く,重い。 ・収穫本数は少ないが,収量は多い。 ・サマーキセラよりしなびにくい。 全規格 587g 556g 609g うちA莢 188g 112g 216g 表3 収穫後の重量減少率(作期1) 重量減少率 品種 (収穫 6~8 日後) ※調査3回の平均 サマーキセラ -9.6% キセラ -9.6% ピテナ -8.2% 表4 規格別莢数割合,1株あたり収穫本数・収穫量(作期2) 規格別莢数割合 1株あたり収穫本数 規格内 規格外 全規格 B莢 小計 曲り 不稔 過熟 小計 うちA莢 24% 70% 8% 9% 13% 30% 119 本 55 本 25% 37% 46% 10% 7% 63% 119 本 14 本 27% 67% 11% 16% 6% 33% 109 本 43 本 表5 A莢の莢長・莢幅・一莢重(作期2) A莢の品質 Sサイズ(12~14cm) Mサイズ(14~16cm) 莢長 莢幅 一莢重 莢長 莢幅 一莢重 13.3cm 6.7mm 3.2g 14.6cm 6.9mm 3.8g 13.3cm 7.0mm 4.2g 14.7cm 7.4mm 5.4g 13.2cm 7.4mm 4.6g 14.6cm 7.7mm 5.4g 1株あたり収穫量 1株あたり収穫量 全規格 388g 451g 477g うちA莢 183g 64g 205g 表6 収穫後の重量減少率(作期2) 重量減少率 品種 (収穫 4~6 日後) ※調査9回の平均 サマーキセラ -4.6% キセラ -4.7% ピテナ -4.0% A・S莢(12~14cm)の比較写真 市内での栽培における適合性 今回供試した品種でサマーキセラの代替となり得るのは,収量が多く,かつ,莢がし なびにくいピテナでした。ただし,ピテナは莢の太さなどサマーキセラとは異なる特性 を有することから,ピテナの品種特性を活かした規格の検討など品種の切替準備を事前 に行うことが重要だと考えられます。
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