ダンゴムシはジグザグが好き!? 生物3班 角間美咲 川井奎南 近村勇之助 筒井元彌 <研究の動機> 私たち生物3班は、六年間の絶食や、初めて脱皮の撮影に成功したなどと最近話題のダイオウグ ソクムシに興味を持った。しかしそれを使った実験は費用や膨大な時間がかかるため難しいと考え、 その代わりにその仲間である身近なダンゴムシについて探求することにした。そして、最終的に私 たちはダンゴムシの生態と、[交替性転向反応]をよ り知るために実験を行った。 [交替性転向反応]とは何かというと、進行中に壁 へぶつかると左右交互に曲がるという反応のこと である。例えば、図 1 の迷路図においてダンゴムシ が最初に壁にぶつかったとき右に行ったとすると、 次に壁にぶつかったとき曲がるのは左となり、その 次は右に曲がる。また、この反応はダンゴムシだけ ではなく他の無セキツイ動物にも多く見られる。 図1 交替性転向反応 〇ダンゴムシについて 今回実験で使用したダンゴムシは、節足動物門ワラジムシ亜目オカダンゴムシ科のオカダンゴム シと呼ばれる種類で、これは日本中に多く生息しているダンゴムシである。背中が黒光りしている のが雄で、背中の黒色が少し薄いのが雌である。また、寒さに非常に弱いため北海道などの寒い地 域では生息しているオカダンゴムシの個数は少なくなる傾向がある。 <研究内容> 私たちは交替性転向反応について2つの疑問を持った。1 つ目は、ダンゴムシは最初に曲がる方向 をどのように決めているのかということである。2 つ目は、視覚によって交替性転向反応に変化が起 こるのかということである。なぜならダンゴムシが目を使って周りの色を識別することにより、交 替性転向反応に変化が起こるのではないかと考えたからである。 〇仮説 今回の実験装置においてダンゴムシは図2 のように触角を使って交替性転向反応を行うと考え た。まずダンゴムシが壁に向かって直進したとき左 の触角があたる。この時にダンゴムシが右に曲がり 壁に沿って直進する。そして突き当りで壁に触角が ぶつかると左に曲がる。つまり、寄った壁の方向と 同じ方向に曲がるのではないかと仮説を立てた。 図2 仮説(左寄りで左に曲がった場合)→ - 23 - <研究方法> 〇用意したもの オカダンゴムシ 30 匹、透明、黒色、 白色、鏡のプラスチック製のパネル各 1 枚ずつを用意した。(今後オカダンゴシ と各パネルのことをダンゴムシ、パネル とする。) 鏡のパネルを用意したのはダンゴム シが鏡に映る自分の姿を見たときに交 替性転向反応に変化が出るのかを調べ るためである。 〇実験方法 ① 各パネルで T 字路を作成する。 ② 作成した T 字路の上でダンゴムシを 1 匹につき 3 回歩かせる。 図3 T 字路の仕組み ※実験結果は各パネルで 90 回ずつである。 今回の実験で T 字路を用いたのは、迷路で実験を行うと実験デーが膨大になり実験データの処理が 困難になるためである。 T 字路の仕組みは図3の通りである。スタートの幅は成体のダンゴムシの横幅より大きくし両方の触 角が壁とぶつからないようにするために 20 ㎜にしたのである。また、10 ㎜の幅は直進後どちらか一方 の触角が壁に当たるようにするためである。 〇記録方法 まずダンゴムシをスタート地点(左右の壁にぶつからない平行な位置)に置き直進させて右の壁に 寄ってその後つきあたりで右に曲がったものを「右(右寄り)」とし、右の壁に寄り左に曲がったもの を「左(右寄り)」として記録した。同様に、左寄りから右、左に曲がったものを「右(左寄り)」、 「左(左 寄り)」とする。 <研究結果> 実験結果は次貢図4のようになった。各パネルのデータはそれぞれ 90 回である。 また、「戻る」、「その他」の項目について、「戻る」…直進後またスタートに戻った場合。「その 他」…スタートで壁に寄らずに真ん中を通って曲がった場合や曲がった後に方向転換をした場合。 - 24 - ○各パネルでの結果 4 枚のパネルにそれぞ れについてこのような 結果がみられた。透明の パネルでは「右(右 寄り)」のときと「左(左 寄り)」のときのデータ にあまり差は見られず、 「その他」のときのデー タは少なかった。 鏡のパネルでは「右(右 寄り)」のときのデータ が「左(左寄り)」のとき より多かった。「戻る」 のときのデータが多か った。黒色のパネルでは「右(左寄り)」のときのデータと「左(右寄り)」のときでの差があまり見られ なかった。 「戻る」のときのデータが多かった。白色のパネルでは「左(左寄り)」のときのデータが「右 (右寄り)」のときより多かった。 ○比較結果 以上より、右寄りだったダンゴムシは右に曲がることが分かった。これは左での反応でも同様であ る。また、実験の様子より、ダンゴムシは触覚を使って交替性転向反応を行うことが分かった。また、 色の違いによる交替性転向反応の変化はあまり見られなかったことから、ダンゴムシは目だけを頼り に行動していないことが分かった。 <考察> ① パネルの色(明るさ)について 各パネルの色(明るさ)によってダンゴムシの交替性転向反応にあまり変化が生じなかった。 これより、ダンゴムシは目だけを頼りに行動していないと考えた。 ② 私たちの仮説について ダンゴムシが T 字路の壁で沿った方向と直進後の分岐点で曲がった方向がほぼ関係していた。 これより、私たちの仮説は証明することができた。スタート地点から分岐点までの距離を変えず に同じように左右交互に分岐点を増やすとそのまま交替性転向反応を行うのではないかと考えら れる。 ③ 実験結果のグラフの項目について 鏡のパネルでの実験結果がほかの実験結果と比べて「戻る」の反応が少なかったのは、光を全 反射する鏡パネルの性質が T 字路の行路が明るくなり、ダンゴムシの視野が明るくなったので、 ダンゴムシは行動がしやすくなったからだと考えた。また、 「左(右寄り)」、 「右(左より)」の反 - 25 - 応が見られたのは、ダンゴムシの触角がどちらかが短い、または脱皮したてといった触角に何ら かの異常があったからではないかと考えた。 <今後の展望・反省> ○今後の展望について 実験結果よりダンゴムシは触角を使って交替性転向反応を行っていたことより、ダンゴムシの 触角を片方または両方を切断すると交替性転向反応はどう起こるのかということ。 T 字路の縦の長さを長くあるいは短くすると交替性転向反応に影響が出るのかということである。 ほかの交替性転向反応が見られる生き物でこの実験を行うと、ダンゴムシの実験と同じような実 験結果がでるのかということや交替性転向反応は自発的な反応なのかということ。 ダンゴムシに学習能力、記憶力はあるのかということについて今後調べていきたいと考えた。 ○反省点 視覚と触角での交替性転向反応の関係性についてあまり確信的な結果が取れなかったこととい う点や観察時による観察環境の温度設定が曖昧であったという点が挙げられる。 <参考文献> ・オカダンゴムシの交替性転向反応はなぜ起こるのか?(筑波大学生物学類) (http://www.biol.tsukuba.ac.jp/tjb/Vol12No7/TJB201307YH.pdf) ・教室生き物ワールド(http://ikimono.ciao.jp/dango/dango.html) ・ダンゴムシの本(出版社:DU BOOKS 著者:奥山 ・ダンゴムシに心はあるのか(出版社:PHP 出版社 - 26 - 風太郎) 著者:森山 徹)
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