- MAHO KUBOTA GALLERY

PRESS RELEASE
ギャラリー開設
および
長島有里枝個展のご案内
早春の候、皆様におかれましては益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
日頃は格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。
この度、東京・神宮前に MAHO KUBOTA GALLERY を開設することとなりました。
地下鉄外苑前の駅からほど近い、文化・流行の発信地である外苑西通りと歴史ある古道・勢揃
坂の間の静かな一角にあり、付近は 2020 年の東京オリンピックに向けて大きく変化しつつあ
る神宮外苑の空の広がりを感じさせる環境でもあります。
ギャラリーは長島有里枝の新作展「家庭について/about home」でスタートいたします。
1993 年のアーティストデビュー以来一貫して家族をテーマに創作に取り組んできた長島の新
境地を開く展覧会となる本展は、アーティストが母親と共作した作品と大小の写真群が空間を
構成するインスタレーションの展開となる予定です。
2010 年に発表した写真集「SWISS」の制作過程で、祖母の残した大量の花の写真にインスパ
イアされた長島は、名もなき表現者であった祖母の創作の情熱の秘密をさらに探求していきま
す。その探求は「家庭」という誰にとっても明らかなようで実は大変に曖昧である概念、「家
庭」と紐付けて語られることの多かった女性にとっての創作、そして創作におけるプロフェッ
ショナルとアマチュアを分かつ境界線といった問題にアーティストのまなざしを向けさせてい
くこととなります。長島の問いかけにより、私たちは普段当たり前だと感じ受けとめている社
会通念のようなものが、実際には大きな矛盾や葛藤をかかえ、不完全なままに社会を支配して
きたことに気づかされます。「わけのわからないもの」にカメラのレンズを向けることで主題
に対峙し、自らの創造言語を用いて表現し続けてきたアーティスト長島有里枝。静かな創作の
戦いの記録の中で獲得した、ストレートで力強い表現空間が出現します。
<展覧会概要>
展覧会名
長島有里枝展「家庭について/about home」
展覧会会期
2016 年3月 16 日(水)- 4月 23 日(土)
12:00-7:00pm
会期中
会場
日・月および祝日は休廊
MAHO KUBOTA GALLERY
東京都渋谷区神宮前 2-4-7 1F
tel 03-6434-7716
http://www.mahokubota.com
入場無料
長島有里枝
1973 年東京生まれ。1995 年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業、1999 年 California
Institute of the Arts、Master of Fine Arts 修了。
1993 年 Tokyo Urbanart#2 パルコ賞受賞、2001 年第 26 回木村伊兵衛賞受賞。
2010 年には『背中の記憶』(講談社)で第 26 回講談社エッセイ賞を受賞した。
アーティストとしてのデビューを決定づけた Tokyo Urbanart#2 出展の家族の写真から一貫し
て「家族」を主要なテーマに据えた写真作品を発表している一方、90 年代前半に現れた「ガー
リーフォト」ムーブメントのアイコン的存在として国内外で高く評価されている。
近年の主
な展覧会には 2015 年「5 Comes After 6」(UTRECHT/東京)、2014 年「拡張するファッ
ション」
(水戸芸術館現代美術ギャラリー/茨城
および丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 /香川 )、
2012 年「開館 10 周年記念展 庭をめぐれば」
(ヴァンジ彫刻庭園美術館/静岡)、2008 年「THE
FURIOUS GAZE」(El Centro Cultural Montehermoso/ヴィットリア、スペイン)などが
ある。
<展覧会について>
本展は長島有里枝が母親と共作したテントと大小の写真群によって構成されるインスタレー
ション展示となります。
テントは長島の家で使われていた衣服や家事の道具など、様々な要素で構成されます。
テントと一緒に展示される写真群にはテントを制作する過程で撮り下ろされたものと、テント
を作るにいたる前からアーティストが撮り続けてきた「暮らし」のドキュメント写真が混在し
ます。アーティストの言葉によればテントと写真の間には明確な線引きはなく、空間を構成す
る作品要素として並列に存在することとなります。
長島は、今回自身の制作活動の中で初めて母親との共作という形を選択した背景に、「テン
トを作るという作業を通じて、母とわたしの関係性ー家族という関係性(中略)に変化を起こ
すことは可能か」という問いがあると言います。
制作にいたる過程には、2010 年発表の「SWISS」(赤々舎)という作品集をまとめるにあ
たって強くインスパイアされた亡き祖母の残した写真、そしてその他の膨大な「作品」から気
づかされた社会の中での女性の立場や名もなき表現者の創作への情熱、そして芸術家としての
アマチュアとプロフェッショナルを分かつ境界線といったテーマが大きく存在し、並行して撮
り続けてきた写真からは「家庭」という場についての疑問、「家族」の歴史、様々な経験を通
じて起こりえた自身の成長や変化などが見えてきます。
軸足を「社会における表現者としての女性」の難しさにおいた一連の作品の方向性は、「『女
性の経験』は、いまだに社会一般に共有されていません。わたしたちの社会は男性を中心に構
築されていて、あらゆる価値基準や道徳は、男性の経験に基づいて定義されているようにわた
しには見えます。女性に振り分けられてきた経験は長いあいだ『重要ではないもの』として、
社会の日陰に追いやられてきました。それらについて語り、自分の置かれた立場を明らかにす
ることが、いまとても重要だと感じます。」という長島の言葉が鮮烈に指し示すものです。
そうした社会的な大きなテーマが取り上げられる一方、アーティストは個人の生活の営みや、
ごくパーソナルな記憶、何かを作り出そうとする名もない人たちのへのリスペクトを丁寧に拾
いあげていきます。
長島自身は本展のコンセプト文の中で、「写真はわたしにとって、わか
らないものを凝視する手段であり、意味を持たないひらめきを、かたちにする手段でもありま
す。「家庭」という、まったくわからないものが自分にとってなんであるのか。そのような
問いは、おそらくカメラを向ける対象の選択方法にも、大きな影響を与えています。」と述べ
ています。
創作に向かう際、問題にどう立ち向かい、見つめなおし、自身の表現手段の中で選択しアウ
トプットしていくのか。そしてアートが近しい人との関係性や社会の中でどういった可能性を
持ち得るのか。2011 年より4年間、大学院で社会学を学び直し自己との真摯な対話を続けてき
た長島が、現在到達した新境地ともいうべき本展に是非ご期待ください。
広報お問合せ:[email protected]
©Yurie Nagashima/ MAHO KUBOTA GALLEY
2015 年
© Yurie Nagashima/ Maho Kubota Gallery
© Yurie Nagashima/ Maho Kubota Gallery
2015 年
2015 年